説明

フィルタプレス脱水装置

【課題】ろ布の案内ローラの個数を低減することで、コストダウンが可能なフィルタプレス脱水装置を提供する。
【解決手段】無端状のろ布7の支持機構10は、ろ板20の下端側に配置された下部支持ローラ10aと上端側に配置された上部支持ローラ10bと、下部支持ローラ10a及び上部支持ローラ10bの一つ置き(ろ板20の一枚置き)に配置された案内ローラ10cとを備え、ろ布7は、案内ローラ10cを備えた特定ろ板20aの一面側で、隣接するろ板20bの上部支持ローラ10bを経由して案内ローラ10cの前記一面側の周面を介して特定ろ板20aの下部支持ローラ10aに張架され、特定ろ板20aの他面側で、案内ローラ10cの前記他面側の周面を介して特定ろ板20aの上部支持ローラ10b及び前記他面側に隣接するろ板20cの下部支持ローラ10bに張架されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧接状態と離隔状態とに移動可能な複数のろ板と、前記圧接状態で各ろ板に挟持される無端状のろ布と、前記離隔状態で前記ろ布を各ろ板と離隔して走行可能に支持する支持機構とを備えているフィルタプレス脱水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浄水場や下水処理場で発生する汚泥を脱水してろ液とケーキに分離する汚泥処理工程、或は、カーボン製品やチタン製品等の製造工程で必要となる固液分離工程等、様々な分野で固液分離のためにフィルタプレス脱水装置が用いられている。
【0003】
図3(a)には、特許文献1に開示された従来のフィルタプレス脱水装置80が示されている。フィルタプレス脱水装置80は、前フレーム81と後フレーム82の間に架設された一対のサイドフレーム83に複数のろ板84が圧接状態と離隔状態との間で摺動可能に配設され、前フレーム81に設置された油圧シリンダ86の進出作動に伴なって、当該油圧シリンダ86に連結された押圧部材85を介して、各ろ板84が後フレーム82方向に押圧された圧接状態に移行し、当該油圧シリンダ86の引退作動に伴なって、各ろ板84が互いに離隔した離隔状態に移行するように構成されている。
【0004】
ろ板84は無端状のろ布88を支持する支持機構87を備え、支持機構87によってろ板84間にろ面が対向するようにろ布88が張架され、圧接状態で各ろ板84に挟持されたろ布88で区画された空間にろ過室が形成される。原液をろ過室に供給した状態で、ろ板84に備えたダイヤフラムを膨張させることにより、原液が圧搾されて固液分離され、圧搾後に各ろ板84が離隔状態に移行すると、脱水ケーキはろ布88から剥離落下する。
【0005】
前フレーム81と後フレーム82の間であって、各ろ板84の上方空間に上フレーム89が架設され、当該上フレーム89に、各ろ過室を形成する無端状のろ布88を走行させる駆動ローラ90と、駆動ローラ90によって巻き上げられたろ布88を洗浄する洗浄機構91と、洗浄後のろ布88に所定の張力を付与する緊張機構92と、緊張されたろ布88の幅方向走行位置を規制する蛇行修正機構93とが設置され、洗浄されたろ布88が再度ろ板84に向けて循環走行するように構成されている。
【0006】
ここで、支持機構87について説明する。図3(b)に示すように、支持機構87は、下部支持ローラ87aと、上部支持ローラ87bを備えている。
【0007】
下部支持ローラ87aはろ板84の下端部にブラケットを介して支持され、ろ布88を下部支持ローラ87が備えられたろ板84の両面に折り返し、上部支持ローラ87bはろ板84の上端部にブラケットを介して支持され、ろ布88を隣接するろ板84との間に折り返すように構成されている。
【0008】
下部支持ローラ87aによってろ板84の両面に折り返されたろ布88が、各ろ板84の離隔状態でろ板84の表面に接触しないように間隔を隔てて走行するためには、下部支持ローラ87aはろ板84の厚みより大きい直径に形成されている必要がある。
【0009】
一方、上部支持ローラ87bによって隣接するろ板84間に折り返されたろ布88が、隣接するろ板84の表面に接触しないように間隔を隔てて走行するためには、上部支持ローラ87bは、各ろ板の84の離隔状態で各ろ板84の間隔より小さい直径に形成されている必要がある。
【0010】
上部支持ローラ87bの直径を小さくすると、ろ布88の走行時に撓みが発生してろ布88に皺がよったりするため好ましくない。よって、強度の観点から、その直径をある程度の大きさに設定する必要がある。
【0011】
しかし、上部支持ローラ87bの直径を大きくしすぎると、隣接するろ板84の間隔が広くなりすぎ、それによりフィルタプレス装置80の機長が長くなり、大型化してしまうため好ましくない。
【0012】
そこで、上部支持ローラ87bの近傍に案内ローラ87cを設けて、上部支持ローラ87bにより折り返されるろ布88の間隔を狭めて、隣接するろ板84間に案内することで、上部支持ローラ87bの直径をある程度の大きさにしながらも、隣接するろ板84の距離を狭くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平5−15710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このように、上部支持ローラ87bの近傍に案内ローラ87cを設けることで、上部支持ローラ87bの強度を確保しつつ、フィルタプレス装置80の大型化を回避できるようになったが、各ろ板84に案内ローラ87cを備えるため、部品点数が多くなってしまうという問題があった。
【0015】
また、各ろ板84に案内ローラ87cを備えると、各ろ板84の離隔状態でろ布88を走行させる際に走行の抵抗が大きくなるという問題があった。
【0016】
本発明は、ろ布の案内ローラの個数を低減することで、コストダウンが可能なフィルタプレス脱水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の目的を達成するため、本発明によるフィルタプレス脱水装置の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、圧接状態と離隔状態とに移動可能な複数のろ板と、前記圧接状態で各ろ板に挟持される無端状のろ布と、前記離隔状態で前記ろ布を各ろ板と離隔して走行可能に支持する支持機構と、を備えているフィルタプレス脱水装置であって、前記支持機構は、前記ろ板の一端側に配置され、前記ろ板の厚みより大径に形成された第一支持ローラと、前記ろ板の他端側に配置された第二支持ローラと、前記ろ板の他端側に前記第一支持ローラと第二支持ローラの間に一つ置きに配置され、当該ろ板の厚みより大径に形成された案内ローラとを備えて構成され、前記離隔状態で、前記ろ布は、前記案内ローラの両面側に接触することで、当該ろ板と離隔して走行可能に張架されている点にある。
【0018】
案内ローラを備えたろ板の一端側に配置された第一支持ローラにより折り返されるろ布のうち、当該ろ板の一面側に折り返されるろ布は、該第一支持ローラと該案内ローラの一面側の周面で当該ろ板の一面側に張架される。
【0019】
前記第一支持ローラにより折り返されるろ布のうち、他面側に折り返されるろ布は、前記第一支持ローラと該案内ローラの他面側の周面で当該ろ板の他面側に張架される。第一支持ローラ及び案内ローラは、ろ板の厚みより大径に形成されているので、各ろ板の離隔状態でろ板の両面からろ布が離れた状態となる。
【0020】
また、案内ローラを備えていないろ板では、第二支持ローラと第一支持ローラによって、各ろ板の離隔状態でろ布がろ板の両面から所定の間隔を隔てるように張架される。
【0021】
このように、一つの案内ローラは、当該案内ローラを備えたろ板の一面側の周面で、当該ろ板に隣接する第二支持ローラにろ布を案内し、他面側の周面で当該ろ板の第二支持ローラにろ布を案内するため、従来技術のように、上部支持ローラの全てに対応した案内ローラを備える必要は無く、支持ローラ一つ置きに備えればよいため、案内ローラの個数を低減することができる。
【0022】
また、案内ローラの個数を低減するとができるので、ろ布の走行時にろ布に接触するローラの個数を低減でき、走行の抵抗を低減できる。なお、案内ローラは一面側及び他面側の夫々の周面でろ布を案内するため、一面側又は他面側の何れかの周面のみでろ布を案内する構成に比べて、ろ布が案内ローラから受ける抵抗を低減することができる。
【0023】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記離隔状態で、前記第二支持ローラはその周面を介して張架されたろ布が隣接するろ板と離隔する位置に設置されている点にある。
【0024】
上述の構成によれば、ろ板が互いに間隔を隔てて移動した離隔状態で、ろ布が案内ローラの両面側に接触することでろ板と離隔した状態が保持されるとともに、当該ろ板に対向する各ろ板に対して第一支持ローラと第二支持ローラにより各ろ板と離隔した状態が保持される。
【0025】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に加えて、前記第一支持ローラ及び第二支持ローラは、前記圧接状態で互いに接当しないように隣接するローラ間でその軸心位置が同位相で上下に偏在するように配置され、前記案内ローラは、前記第一支持ローラ及び第二支持ローラが下側に偏在したろ板に設けられている点にある。
【0026】
前記第一支持ローラ及び第二支持ローラが、前記圧接状態で互いに接当しないように隣接するローラ間でその軸心位置が逆位相で上下に偏在するように配置されたり、前記圧接状態で互いに接当しないように隣接するローラ間でその軸心位置が同位相で上下に偏在するように配置されていても、案内ローラが、前記第一支持ローラ及び第二支持ローラが上側に偏在したろ板に設けられたりする場合に比べて、第一支持ローラ及び第二支持ローラ間や、第一支持ローラ及び案内ローラ間の距離差を減らすことができるので、張架されるろ布のテンションの差を低減することができる。
【0027】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記第一支持ローラ、第二支持ローラ、及び案内ローラは何れも同径に形成されている点にある。
【0028】
上述の構成によれば、第一支持ローラ、第二支持ローラ、及び案内ローラを夫々共用することができるので、量産効果によりコストダウンを図ることができる。また、同じローラを用いることができるので、装置の組立作業を簡素にすることができる。さらに、在庫の管理が容易となる。
【0029】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第四特徴構成に加えて、前記案内ローラを備えた特定ろ板の第二支持ローラ、及び前記特定ろ板の一面側のろ板の第二支持ローラは、前記案内ローラの軸心位置から水平方向に各ローラの半径以上離隔するように軸心位置が設定されている点にある。
【0030】
特定ろ板の第二支持ローラ、及び前記特定ろ板の一面側のろ板の第一支持ローラが水平方向に位置する場合であっても、案内ローラの軸心位置から水平方向に各ローラの半径以上離隔するように軸心位置が設定されているので、各ろ板の圧接状態で隣接する第二支持ローラが互いに干渉することを回避できる。
【0031】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第四特徴構成に加えて、前記案内ローラを備えた特定ろ板の第二支持ローラ、及び前記特定ろ板の一面側のろ板の第二支持ローラは、前記案内ローラの軸心位置から水平方向に少なくとも各ローラの半径以内に近接し、且つ上下に偏在するように軸心位置が設定されている点にある。
【0032】
特定ろ板の第二支持ローラ、及び前記特定ろ板の一面側のろ板の第二支持ローラは、前記案内ローラの軸心位置から水平方向に少なくとも各ローラの半径以内に近接し、且つ上下に偏在するように軸心位置が設定されているので、各ろ板の離隔状態で、隣接するろ板の間隔を狭くすることができる。
【発明の効果】
【0033】
以上説明した通り、本発明によれば、ろ布の案内ローラの個数を低減することで、コストダウンが可能なフィルタプレス脱水装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明によるフィルタプレス脱水装置の概略図
【図2】支持機構の説明図
【図3】従来のフィルタプレス脱水装置の説明図であって、(a)は概略図、(b)は要部の説明図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明によるフィルタプレス脱水装置を説明する。
【0036】
図1に示すように、フィルタプレス脱水装置1は、前フレーム2と、後フレーム3と、前フレーム2と後フレーム3との間に架設された一対のサイドフレーム4を備えている。
【0037】
サイドフレーム4には複数のろ板20が摺動可能に支持され、各ろ板20は、前フレーム2に設置された進退機構5により各ろ板20が圧接状態と離隔状態との二状態の何れかに移動するように構成されている。
【0038】
各ろ板20の正面及び背面側には、上下に一対の係合ピン11が突設され、隣接する一対のろ板20の係合ピン11同士が、連結金具に形成された長孔に係合したリンク機構12で連結されている。そして、左端のろ板20が後フレーム3と連結され、右端のろ板20が進退機構5と連結されている。
【0039】
進退機構5はロッド5aの先端に押圧部材5bを備えた油圧シリンダ5cで構成されている。油圧シリンダ5cによりロッド5aを進出作動させると、押圧部材5bを介して各ろ板20が後フレーム3に向けて押圧された圧接状態に移行し、ロッド5aを引退作動させると、前フレーム2に向けて各ろ板20が移動して、連結金具に形成された長孔で規定される距離だけ離隔した離隔状態に移行する。
【0040】
前フレーム2の上部には無端状に形成されたろ布7を繰り出す駆動ローラ6が配置され、後フレーム3の上部にはろ布7を洗浄する洗浄機構8が配置されている。
【0041】
駆動ローラ6で繰り出されたろ布7は、同じく前フレーム2に設置された緊張機構9によって所定の張力に調整された後に、各ろ板20に備えら得た支持機構10によってろ面が対向するように掛け渡され、前記離隔状態でろ布7を各ろ板20と離隔して走行可能に支持され、各ろ板20から繰り出された後に洗浄機構8に導かれるように配置されている。
【0042】
図2に示すように、各ろ板20には、配列方向に沿って一方の面にダイヤフラム21が取付けられている。各ろ板20の下方に備えられた加圧水流路22から加圧水を供給して、ろ板20に取付けられたダイヤフラム21をろ室側に膨らませることにより、処理対象物が圧搾される。
【0043】
進退機構5によってろ板20が圧接状態に移行したときに、当該ダイヤフラム21と隣接するろ板20の背面とで仕切られる空間にろ室が形成される。このとき、ろ布7は、各ろ板20に挟持されてろ過室を形成する。つまり、ろ室内でろ布7によって仕切られる空間がろ過室となる。
【0044】
ここで、上述した支持機構10について詳述する。
支持機構10は、ろ板20の下端側に固定されたブラケットに支持された下部支持ローラ10aと、ろ板20の上端側に固定されたブラケットに支持された上部支持ローラ10bを備え、下部支持ローラ10a及び上部支持ローラ10bは、前記圧接状態で互いに接当しないように隣接するローラ間でその軸心位置が同位相で上下に偏在するように配置されている。
【0045】
さらに、支持機構10は、下部支持ローラ10a及び上部支持ローラ10bが下側に偏在したろ板に、案内ローラ10cを備えている。つまり、案内ローラ10cは、各ろ板20一枚置きに、上部支持ローラ10bを支持するブラケットに、該上部支持ローラ10bより下方で支持されている。
【0046】
即ち、下部支持ローラ10aが、ろ板20の一端側に配置され、ろ板20の厚みより大径に形成された第一支持ローラとなり、上部支持ローラ10bが、ろ板20の他端側に配置された第二支持ローラとなり、案内ローラ10cが、ろ板20の他端側に第一支持ローラと第二支持ローラの間に一つ置きに配置され、当該ろ板の厚みより大径に形成されている。また、離隔状態で、ろ布7は、案内ローラ10cの両面側に接触することで、当該ろ板20と離隔して走行可能に張架されている。
【0047】
尚、本実施形態では、ろ板の一端側が下端側を指し、他端側が上端側を指す態様を説明するが、ろ板の一端側が上端側を指し、他端側が下端側を指す態様や、ろ板の一端側が左右横方向の何れか一端側を指し、他端側が左右横奉公の何れか他端側を指す態様で支持機構を構成することも可能である。
【0048】
各ろ板20の圧接状態で、下部支持ローラ10a及び上部支持ローラ10bが互いに接当しないように、隣接するローラ間でその軸心位置が上下に偏在するとともに、上端側と下端側で逆位相となるように配置されたり、隣接するローラ間でその軸心位置が上下に偏在するとともに、上端側と下端側で同位相となるように配置されていても、案内ローラ10cが、下部支持ローラ10a及び上部支持ローラ10bが上側に偏在したろ板20に設けられたりする場合に比べて、下部支持ローラ10a及び上部支持ローラ10b間や、下部支持ローラ10a及び案内ローラ10c間の距離差を減らすことができるので、張架されるろ布7のテンションの差を低減することができる。
【0049】
尚、下部支持ローラ10a、上部支持ローラ10b、及び案内ローラ10cを同径に構成すれば夫々を共用できるようになり、部品の管理費を含めて量産効果による更なるコスト低減を図ることができる点で好ましいが、必ずしも全てのローラ10a,10b,10cを同径に構成しなくとも、案内ローラ10cの部品点数を減少させて一定のコスト低減を図ることができる。
【0050】
また、下部支持ローラ10a、上部支持ローラ10b、及び案内ローラ10cに同じローラを用いることができるので、ローラの使用位置をローテーションすることにより一つのローラの耐用期間を延ばすことができる。さらに、在庫の管理が容易となる。
【0051】
尚、少なくとも案内ローラ10cと下部支持ローラ10aとを共通化すれば、コストダウンが可能となる。さらに、案内ローラ10cと下部支持ローラ10aのローテーションが可能となり、在庫の管理が容易となる。
【0052】
ろ布7は、案内ローラ10cを備えた特定ろ板20aの一面側で、隣接するろ板20bの下部支持ローラ10a及び上部支持ローラ10bを経由して案内ローラ10cの前記一面側の周面を介して特定ろ板20aの下部支持ローラ10aに張架され、特定ろ板20aの他面側で、特定ろ板20aの下部支持ローラ10aと案内ローラ10cの前記他面側の周面を介して特定ろ板20aの上部支持ローラ10b及び前記他面側に隣接するろ板20cの下部支持ローラ10aに張架されている。
【0053】
特定ろ板20aの下端側に配置された下部支持ローラ10aにより折り返されるろ布7のうち、一面側(ろ板20b側)に折り返されるろ布7aは、該下部支持ローラ10aと該案内ローラ10cの一面側(ろ板20b側)の周面で特定ろ板20aの一面側に張架される。
【0054】
特定ろ板20aの下端側に配置された下部支持ローラ10aにより折り返されるろ布7のうち、他面側(ろ板20c側)に折り返されるろ布7bは、下部支持ローラ10aと該案内ローラ10cの他面側(ろ板20c側)の周面で特定ろ板20aの他面側に張架される。下部支持ローラ10a及び案内ローラ10cは、ろ板20の厚みより大径に形成されているので、各ろ板20の離隔状態でろ布7がろ板20の両面から所定の間隔を隔てて張架される。
【0055】
また、案内ローラ10cを備えていないろ板20bでは、上部支持ローラ10bと下部支持ローラ10aによって、各ろ板20の離隔状態でろ布がろ板20bの表面から所定の間隔を隔てるように張架される。
【0056】
同様に、ろ板20cでは、特定ろ板20aの上部支持ローラ10bと、ろ板20cの下部支持ローラ10aによって、各ろ板20の離隔状態でろ布がろ板20cの表面から所定の間隔を隔てるように張架される。
【0057】
離隔状態で、ろ布の間隔が下部支持ローラ10aの径と同じになるように構成すると、各ろ板、ろ布の間隔を均等にできる。例えば、上部支持ローラ10bの径を大径に構成することにより実現できる。
【0058】
このように、一つの案内ローラ10cは、特定ろ板20aの一面側の周面で、特定ろ板20aに隣接するろ板20bの上部支持ローラ10bにろ布7を案内し、他面側の周面で特定ろ板20aの上部支持ローラ10bにろ布7を案内するため、複数のろ板20の全てに案内ローラ10cを備える必要は無く、各ろ板20一枚置きに備えればよいため、案内ローラ10cの個数を低減することができる。
【0059】
案内ローラ10cの個数を低減するとができるので、ろ布7の走行時にろ布7に接触するローラの個数を低減でき、走行の抵抗を低減できる。
【0060】
また、案内ローラ10cは一面側及び他面側の夫々の周面でろ布7を案内するため、一面側又は他面側の何れかの周面のみでろ布7を案内する構成に比べて、ろ布7が案内ローラ10cから受ける抵抗を低減することができる。
【0061】
尚、特定ろ板20aの上部支持ローラ10b、及び特定ろ板20aの一面側のろ板20bの上部支持ローラ10bは、案内ローラ10cの軸心位置から水平方向に各ローラの半径以上離隔するように軸心位置が設定されていてもよい。
【0062】
特定ろ板20aの上部支持ローラ10b、及び特定ろ板20aの一面側のろ板20cの上部支持ローラ10bが水平方向に位置する場合であっても、案内ローラ10cの軸心位置から水平方向に各ローラの半径以上離隔するように軸心位置が設定されているので、各ろ板20の圧接状態で隣接する上部支持ローラが互いに干渉することを回避できる。
【0063】
図1に戻り、各ろ板20の間には口金13が設けられ、圧接状態で口金13によって各ろ板20の厚み方向に貫通形成された貫通孔が連通するように構成されている。そして、圧接状態で後フレーム3に備えた供給口から当該貫通孔に処理対象物が供給され、口金13に形成された分岐路を介して各ろ過室に処理対象物が充填され、その後脱水される。
【0064】
脱水処理の後に進退機構5が引退作動した離隔状態で、脱水ケーキをろ布7から離脱させるべく、駆動ローラ6によって所定距離だけろ布7を走行させる走行処理が実行され、その後、進退機構5が進出作動して、同様の処理が繰り返される。尚、駆動ローラ6は減速機構を介して駆動モータに駆動連結され、駆動ローラ6と減速機構と駆動モータによって駆動機構が構成されている。
【0065】
最終段のろ過ユニット20から繰り出されたろ布7は、後フレーム3に備えた洗浄機構8によって洗浄された後、蛇行修正機構15を経由して駆動ローラ6に掛け渡される。
【0066】
洗浄機構8と駆動ローラ6との間に備えた蛇行修正機構15は、ろ布7の幅方向走行位置を規制する機構であり、前フレーム2の上部に取り付けられた上部フレーム14に設置されている。
【0067】
駆動ローラ6のろ布7の走行経路の下流側には、緊張機構9が備えられている。緊張機構9は、前フレーム2に固定された複数の固定ローラと、固定ローラに対して接近、離間する複数の移動ローラと、移動ローラに張力を掛けて移動させる移動機構とを備え、移動ローラが固定ローラに対して接近、離間することによって、ろ布7に所定の張力が付与される。所定の張力とは、駆動ローラ6とろ布7がスリップせず安定走行可能な張力をいう。
【0068】
ろ布7が駆動ローラ6により安定して搬送されるためには、駆動ローラ6の前後で十分な張力が作用している必要があるが、上述の構成によれば、ろ布7に対する張力が小さくなる駆動ローラ6の下流側で、緊張機構9によってろ布の張力が適正な値に調整されるので、ろ布7が安定して駆動ローラ6で駆動され、その下流側に設置されたろ板20に向けて搬送されるようになる。
【0069】
ろ板20を圧接状態と離隔状態との間で移動させる機構は、上述した油圧シリンダを備えた進退機構5で構成されるものに限らず、前フレーム2と後フレーム3に備えたスプロケット間に配設したチェーンに各ろ板20を懸架して、スプロケットを駆動しチェーンを移動させることで、当該チェーンに懸架された各ろ板20を、圧接状態と離隔状態との間で移動させる構成であってもよい。
【0070】
上述した実施形態は、何れも本発明の一例であり、当該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0071】
1:フィルタプレス脱水装置
2:前フレーム
3:後フレーム
4:サイドフレーム
5:進退機構
5a:ロッド
5b:押圧部材
5c:油圧シリンダ
6:駆動ローラ
7:ろ布
10:支持機構
10a:下部支持ローラ
10b:上部支持ローラ
10c:案内ローラ
20:ろ板
20a:特定ろ板
21:ダイヤフラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧接状態と離隔状態とに移動可能な複数のろ板と、
前記圧接状態で各ろ板に挟持される無端状のろ布と、
前記離隔状態で前記ろ布を各ろ板と離隔して走行可能に支持する支持機構と、
を備えているフィルタプレス脱水装置であって、
前記支持機構は、前記ろ板の一端側に配置され、前記ろ板の厚みより大径に形成された第一支持ローラと、前記ろ板の他端側に配置された第二支持ローラと、前記ろ板の他端側に前記第一支持ローラと第二支持ローラの間に一つ置きに配置され、当該ろ板の厚みより大径に形成された案内ローラとを備えて構成され、
前記離隔状態で、前記ろ布は、前記案内ローラの両面側に接触することで、当該ろ板と離隔して走行可能に張架されているフィルタプレス脱水装置。
【請求項2】
前記離隔状態で、前記第二支持ローラはその周面を介して張架されたろ布が隣接するろ板と離隔する位置に設置されている請求項1記載のフィルタプレス脱水装置。
【請求項3】
前記第一支持ローラ及び第二支持ローラは、前記圧接状態で互いに接当しないように隣接するローラ間でその軸心位置が同位相で上下に偏在するように配置され、前記案内ローラは、前記第一支持ローラ及び第二支持ローラが下側に偏在したろ板に設けられている請求項1または2記載のフィルタプレス脱水装置。
【請求項4】
前記第一支持ローラ、第二支持ローラ、及び案内ローラは何れも同径に形成されている請求項1から3の何れかに記載のフィルタプレス脱水装置。
【請求項5】
前記案内ローラを備えた特定ろ板の第二支持ローラ、及び前記特定ろ板の一面側のろ板の第二支持ローラは、前記案内ローラの軸心位置から水平方向に各ローラの半径以上離隔するように軸心位置が設定されている請求項4記載のフィルタプレス脱水装置。
【請求項6】
前記案内ローラを備えた特定ろ板の第二支持ローラ、及び前記特定ろ板の一面側のろ板の第二支持ローラは、前記案内ローラの軸心位置から水平方向に少なくとも各ローラの半径以内に近接し、且つ上下に偏在するように軸心位置が設定されている請求項4記載のフィルタプレス脱水装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate