説明

フィルタユニット及びそれを備えた車両用空気調和装置

【課題】空気を除菌する除菌部の取り付けやメンテナンスを容易にできる車両用空気調和装置及びそれに用いるフィルタユニットを提供することを目的とする。
【解決手段】空気中の塵埃を捕集するフィルタ14aとフィルタ14aを保持するフレーム14bとを備えて車両用空気調和装置2に対して着脱自在に設けられるフィルタユニット14において、空気を除菌するイオン発生装置18(除菌部)をフレーム14bに設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の塵挨を捕集するフィルタユニット及びそれを備えた車両用空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフィルタユニット及びそれを備えた車両用空気調和装置は特許文献1に開示されている。図13はこの車両用空気調和装置の概略構成を示す側面断面図である。車両用空気調和装置2は、人が乗る車室とエンジンが収容されるエンジンルームとの間の機器室内に配置されている。
【0003】
車両用空気調和装置2はハウジング10を有し、ハウジング10には吸込口11と吹出口12とが開口している。吸込口11は車外の空気(外気OA)を吸い込む外気吸込口11aと車室内の空気(内気IA)を吸い込む内気吸込口11bとから成る。吹出口12は車室内に調和空気CAを吹き出す。ハウジング10内には、外気吸込口11a及び内気吸込口11bと吹出口12とを連通させる送風経路13が設けられている。
【0004】
送風経路13内には外気吸込口11a及び内気吸込口11bから吹出口12に向かって、切換ダンパ31、フィルタユニット14、送風機15、イオン発生装置18(除菌部)、蒸発器16、ヒーターコア17が順に配されている。切換ダンパ31によって外気・内気の吸込みが切り替えられる。送風機15の駆動によって外気吸込口11a及び内気吸込口11bの一方から空気が送風経路13内に吸い込まれる。空気に含まれる塵挨や花粉等の浮遊微粒子はフィルタユニット14のフィルタ14aによって除去される。塵挨等が除去された空気は蒸発器16で冷却された後に吹出口12から車室内に送出される。または、ヒーターコア17によって加熱された後に吹出口12から車室内に送出される。これにより、車室内の空気が調和される。
【0005】
このとき、イオン発生装置18によって発生したイオンやオゾンが送風経路13を流通する空気に含まれる。これにより、結露水によって特に細菌等が増殖しやすい蒸発器16及び蒸発器16の周辺部材等を除菌できるとともに車室内を除菌できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−42750号公報(第6頁、第7頁、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の構成では、イオン発生装置18は特定の車種の車両用空気調和装置2にのみ設置されており、全車種の車両用空気調和装置2に設置されているわけではない。ここで、特定車種以外の車種にも追加オプションとして車両用空気調和装置2にイオン発生装置18を取り付けることはできる。しかしながら、イオン発生装置18は送風経路13内の送風機15と蒸発器16との間の位置に設けられ、使用者の手が届きにくい位置に配置される。このため、使用者自身が行うのは困難であり、送風経路13内部に配されるイオン発生装置18は自動車メーカーやその販売代理店により取り付け作業が行われる。
【0008】
また、使用者自身でイオン発生装置18のメンテナンスや交換を容易に行うことができないという問題もあった。
【0009】
本発明は、空気を除菌する除菌部の取り付けやメンテナンスを容易にできる車両用空気調和装置及びそれに用いるフィルタユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、空気中の塵埃を捕集するフィルタと前記フィルタを保持するフレームとを備えて車両用空気調和装置に対して着脱自在に設けられるフィルタユニットにおいて、空気を除菌する除菌部を前記フレームに設けたことを特徴としている。
【0011】
この構成によると、フィルタユニットは車両用空気調和装置に対して着脱自在に取り付けられる。車両用空気調和装置に吸い込まれる空気中の塵埃はフィルタによって捕集される。また、空気中の浮遊菌等はフレームに設けた除菌部によって除菌される。これにより、車両用空気調和装置内及び車室内が除菌される。
【0012】
また本発明は、上記構成のフィルタユニットにおいて、前記除菌部は通電によってイオン及びオゾンの一方または両方を発生させて空気中に放出すると好ましい。この構成によると、イオン及びオゾンの一方または両方によって車両用空気調和装置内及び車室内が除菌される。
【0013】
また本発明は、上記構成のフィルタユニットにおいて、前記除菌部は前記フィルタの排気面と同じ側の面に設けられているとより好ましい。
【0014】
また本発明は、上記構成のフィルタユニットにおいて、前記除菌部の駆動電圧がDC12Vであることが好ましい。
【0015】
また本発明は、上記構成のフィルタユニットにおいて、車両のシガーソケットに挿入されるプラグを有することが好ましい。
【0016】
また本発明は、上記構成のフィルタユニットにおいて、前記除菌部が薬剤を空気中に放出して除菌を行う着脱自在の薬剤放出部材をさらに有することが好ましい。
【0017】
また本発明の車両用空気調和装置は、上記構成のフィルタユニットを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、空気を除菌する除菌部をフィルタユニットのフレームに設けているので、空気を除菌する除菌部を使用者が車両用空気調和装置に容易に後付け設置でき、車両用空気調和装置内及び車室内を除菌できる。また、使用者が容易に除菌部のメンテナンスや交換を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態のフィルタユニットを備えた車両用空気調和装置を取り付けた車両の側面断面図
【図2】本発明の第1実施形態のフィルタユニットを備えた車両用空気調和装置の概略構成を示す側面断面図
【図3】本発明の第1実施形態のフィルタユニットをフィルタの排気側から見た斜視図
【図4】本発明の第1実施形態のフィルタユニットを車両用空気調和装置に取り付けた状態を示す上面断面図
【図5】本発明の第1実施形態のフィルタユニットを車両用空気調和装置に取り付けた状態を示す側面断面図
【図6】本発明の第1実施形態のフィルタユニットに設けたイオン発生装置の一部を破断した斜視図
【図7】本発明の第1実施形態のフィルタユニットに設けたイオン発生装置と駆動電源との接続を示す回路図
【図8】本発明の第2実施形態のフィルタユニットをフィルタの排気側から見た斜視図
【図9】本発明の第2実施形態のフィルタユニットに設けたイオン発生装置と駆動電源との接続を示す回路図
【図10】本発明の第3実施形態のフィルタユニットをフィルタの排気側から見た斜視図
【図11】本発明の第3実施形態のフィルタユニットに設けた薬剤放出部材を示す正面斜視図
【図12】本発明の第3実施形態のフィルタユニットに設けた薬剤放出部材を示す側面断面図
【図13】従来のフィルタユニットを備えた車両用空気調和装置の概略構成を示す側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の第1実施形態を図面を参照して説明する。説明の便宜上、前述の図13に示す従来例と同様な部分には同一の符号を付している。図1は車両用空気調和装置を備えた車両を示す側面断面図である。車両1は、エンジンルーム5、機器室4及び車室6に区画されている。エンジンルーム5と機器室4との間は隔壁7によって仕切られるとともに、機器室4と車室6との間はインストルメントパネル8によって仕切られている。
【0021】
エンジンルーム5の上面はボンネット3に覆われてエンジン(不図示)を収容している。車室6は乗員が乗り込む空間であり、椅子60が備え付けられる。インストルメントパネル8の車室6に面する位置にはシガーソケット9が設けられる。機器室4には車両用空気調和装置2(HVAC:Heating, Ventilation, and Air-Conditioning)が配置されている。
【0022】
図2は車両用空気調和装置の概略構成を示す側面断面図である。車両用空気調和装置2はハウジング10を有し、ハウジング10には吸込口11と吹出口12とが開口する。吸込口11は外気吸込口11aと内気吸込口11bとから成る。外気吸込口11aは車両1の外部に連通して車両1外の空気(外気OA)を吸い込む。一方、内気吸込口11bは車室6に連通して車室6内の空気(内気IA)を吸い込む。吹出口12は車室6に連通して車室6内に調和空気CAを吹き出す。そして、ハウジング10内には外気吸込口11a及び内気吸込口11bと吹出口12とを連通させる送風経路13が設けられる。
【0023】
送風経路13内には外気吸込口11a及び内気吸込口11bから吹出口12に向かって(気流の上流側から下流側に向かって)、切換ダンパ31、フィルタユニット14、送風機15、蒸発器16、ヒーターコア17が順に配されている。切換ダンパ31は、外気吸込口11a及び内気吸込口11bを択一的に開閉して、外気OA及び内気IAの吸込みの切換えを行う。フィルタユニット14はフィルタ14aとフレーム14bとを有し、フィルタ14aによって空気中の塵埃や花粉等の浮遊微粒子を除去する(図3参照)。また、フィルタユニット14にはイオン発生装置18(除菌部)が設けられている。イオン発生装置18はイオン及びオゾンを発生して空気中に放出する。フィルタユニット14及びイオン発生装置18の詳細については後述する。
【0024】
送風機15は例えばモータにより回転されるファンを有するシロッコファンから構成される。送風機15の駆動により外気吸込口11a及び内気吸込口11bの一方から送風経路13内に空気が取り込まれ、送風経路13内に吹出口12へ向かう気流が発生する。
【0025】
蒸発器16は気流の流通方向で送風機15の下流側に送風経路13を塞ぐように配されている。蒸発器16は、入口配管(不図示)から流入した冷媒が流通する複数のチューブ(不図示)と表面を空気が流通するように配された複数のコルゲートフィン(不図示)とを有する。
【0026】
蒸発器16はエンジンルーム5(図1参照)と機器室4(図1参照)との間を流通する冷媒の循環流路(不図示)内に設けられている。循環流路には、圧縮機、凝縮器、レシーバ及び膨張弁が設けられている(いずれも不図示)。エンジンからVベルト(不図示)を介して圧縮機に動力が伝達されると、圧縮機は循環流路内で冷媒を循環させる。冷媒は蒸発器16で気化する。冷媒が気化しているときに蒸発器16のコルゲートフィン間を空気が通過することによって、空気は気化熱を奪われて冷却される。これにより、車室6内の冷房が行われる。
【0027】
ヒーターコア17は気流の流通方向で蒸発器16の下流側に配されている。ヒーターコア17はコルゲートチューブ(不図示)とコルゲートチューブの周りに設けられた多数の放熱フィンとを有する。ヒーターコア17は、エンジンルーム5と機器室4との間を流れるエンジン冷却水の分流路(不図示)内に温水バルブ(不図示)とともに設けられている。分流路は、エンジンとラジエータ(不図示)との間を循環するエンジン冷却水の循環流路(不図示)にヒーターコア17とラジエータとが並列になるように接続されている。エンジン冷却水が循環流路を循環しているときに温水バルブが開かれると、エンジンで加熱された冷却水(温水)が分流路に流入してヒーターコア17のコルゲートチューブ内に流入する。そして、ヒーターコア17の放熱フィン間を空気が通過することによって、空気は加熱される。これにより、車室6内の暖房が行われる。なお、冷房・暖房の切換はインストルメントパネル8に設けられた切換スイッチ(不図示)を使用者が操作することにより行われる。
【0028】
送風機15の駆動によって外気吸込口11a及び内気吸込口11bの一方から空気が送風経路13内に吸い込まれ、送風経路13内に吹出口12へ向かう気流が発生する。空気に含まれる塵挨や花粉等の浮遊微粒子はフィルタユニット14のフィルタ14aによって除去される。塵挨等が除去された空気は冷房運転時には蒸発器16で冷却される。その後、吹出口12から車室6内に空気が送出される。これにより、車室6内の冷房が行われる。暖房運転時には、塵挨等が除去された空気はヒーターコア17によって加熱されて吹出口12から車室6内に送出される。これにより、車室6内が暖房される。
【0029】
図3はフィルタユニット14をフィルタ14aの排気側から見た斜視図である。Sは送風機15の駆動により発生した気流を示している。フィルタ14aは、外気吸込口11a及び内気吸込口11bから吸い込まれた空気に含まれる塵挨や花粉等の浮遊微粒子を除去する。フィルタ14aとしては、例えば不織布で構成された多孔質の濾過材を使用することができる。なお、表面積を大きくするためにフィルタ14aを波形形状にしている。
【0030】
フレーム14bは中央部に開口部14cを有する枠形状に形成されている。フレーム14b内にフィルタ14aはフレーム14bに対して着脱自在に保持される。これにより、フィルタ14aをフレーム14bから取り外して容易に交換できる。また、フレーム14bは例えば樹脂から構成される。これにより、フレーム14bの加工が容易になる。フレーム14bの形状に特に限定はなく、フィルタ14aの排気側から見て円形形状や楕円形状であってもよい。
【0031】
フレーム14bのフィルタ14aの排気面と同じ側の面には凹部14dが設けられる。
凹部14dにはイオン発生装置18(除菌部)がフレーム14bに対して着脱自在に取り付けられる。この時、イオン発生装置18はイオン発生部18a、18bがフィルタ14aの風下側を向くように配置される。これにより、イオン発生装置18により発生したイオンやオゾンがフィルタ14aに衝突して消滅することを防止できる。従って、車両用空気調和装置2内及び車室6内を効率良く除菌することができる。
【0032】
凹部14dの側面にはイオン発生装置18に設けられたコネクタ184(図6参照)が嵌合するコネクタ嵌合部(不図示)が設けられる。コネクタ嵌合部には電源ケーブル19の一端が接続され、電源ケーブル19の他端はフレーム14bの側面から引き出されて駆動電源20に接続される。駆動電源20はシガーソケット9(図1参照)に挿入されるプラグ20aを有する。
【0033】
また、駆動電源20には駆動回路20b、第1昇圧回路20c及び第2昇圧回路20d(いずれも図7参照)とマイクロコンピュータからなる制御装置(不図示)とが内蔵されて電源制御される。これにより、駆動電源20にはシガーソケット9から例えばDC12Vの電圧が印加され、イオン発生装置18に電力が供給される。なお、車両1のバッテリー(不図示)から駆動電源20に直接電圧(例えば、DC12V)が印加されてもよい。
【0034】
イオン発生装置18に電力が供給されると、放電によりイオン及びオゾンを発生し、フィルタ14aを通過した空気にイオン及びオゾンを放出する。なお、イオン発生装置18の詳細は後述する(図6参照)。
【0035】
図4、図5はフィルタユニット14を車両用空気調和装置2に取り付けた状態を示している。図4はフィルタユニット14の上面断面図、図5はフィルタユニット14の側面断面図である。フィルタユニット14はフィルタ14aの排気面側を下にして車両用空気調和装置2に取り付けられている。
【0036】
Sは送風機15の駆動により生じた気流である。ハウジング10の内壁には凹部41が設けられている。使用者がインストルメントパネル8(図1参照)に設けられたグローブボックス(不図示)を取り外してフィルタユニット14を凹部41内に挿入することができる。これにより、フィルタユニット14は車両用空気調和装置2に対して着脱自在に取り付けられる。従って、フィルタユニット14を容易に交換できる。
【0037】
この時、イオン発生装置18のイオン発生部18a、18bが送風経路13に面するように取り付けられる。そして、電源ケーブル19はグローブボックスとインストルメントパネル8との間の隙間から車室6内に引き出され、プラグ20aがシガーソケット9(図1参照)に挿入される。
【0038】
フィルタユニット14を車両用空気調和装置2に取り付けた状態では、フィルタ14aは気流S中に配置される。これにより、気流S中に含まれる塵挨や花粉等の浮遊微粒子はフィルタ14aによって除去される。また、イオン発生装置18は気流S中に配置されるとともに、イオン発生部18a、18b(図3、図6参照)が気流Sの流通方向でフィルタユニット14の下流側を向くように配置されている。これにより、イオン発生装置18により発生したイオンやオゾンがフィルタ14aに衝突して消滅することを防止できる。
【0039】
図6は、イオン発生装置18の一部を破断した斜視図を示している。イオン発生装置18は絶縁体から成るハウジング180により覆われている。ハウジング180内には、基板183が設けられている。基板183には針状の放電電極181a、181bが互いに離れて配置されているとともに、放電電極181a、181bに対向する環状の対向電極182a、182bが配置されている。放電電極181a、181bと対向電極182a、182bとの間にはそれぞれイオン発生部18a、18bが形成される。
【0040】
ハウジング180には放電電極181aに対向する貫通孔(不図示)、放電電極181bに対向する貫通孔185bが設けられる。これにより、イオン発生部18a、18bがハウジング180の外部に露出する。放電電極181a、181bには対向電極182a、182bに対して負極性または正極性の高電圧(例えば、約2kV)がそれぞれ印加される。これにより、イオン発生部18a、18bに例えばコロナ放電によりそれぞれマイナスイオン、プラスイオンが発生する。
【0041】
例えば、一方の放電電極181bには正電圧が印加され、電離により発生するイオンが空気中の水分と結合して主としてH+(H2O)mから成る電荷が正のクラスタイオンを発生する。他方の放電電極181aには負電圧が印加され、電離により発生するイオンが空気中の水分と結合して主としてO2-(H2O)nから成る電荷が負のクラスタイオンを発生する。ここで、m、nは任意の自然数である。H+(H2O)m及びO2-(H2O)nは空気中の浮遊菌、車両用空気調和装置2及び車室6に付着した付着菌、及び臭い成分の表面で凝集してこれらを取り囲む。
【0042】
そして、式(1)〜(3)に示すように、衝突により活性種である[・OH](水酸基ラジカル)やH22(過酸化水素)を微生物等の表面上で凝集生成して浮遊菌等や臭い成分等を破壊する。ここで、m’、n’は任意の自然数である。従って、プラスイオン及びマイナスイオンを発生してフィルタ14aを通過した気流Sに放出することにより、車両用空気調和装置2内及び車室6内の殺菌、ウイルスの不活化及び臭い除去を行うことができる。
【0043】
また、放電電極181a、181bに印加する電圧をより高くすると、放電によってイオン発生部18a、18bからイオン及びオゾンが放出される。オゾンの酸化力によって殺菌及び脱臭を行うことができる。
【0044】
+(H2O)m+O2-(H2O)n→・OH+1/2O2+(m+n)H2O ・・・(1)
+(H2O)m+H+(H2O)m’+O2-(H2O)n+O2-(H2O)n’
→ 2・OH+O2+(m+m'+n+n')H2O ・・・(2)
+(H2O)m+H+(H2O)m’+O2-(H2O)n+O2-(H2O)n’
→ H22+O2+(m+m'+n+n')H2O ・・・(3)
【0045】
また、ハウジング180には側面から突出したコネクタ184が設けられる。コネクタ184はフレーム14bのコネクタ嵌合部に嵌合する。これにより、イオン発生装置18に電力が供給される。
【0046】
図7は、イオン発生装置18と駆動電源20との接続を示す回路図である。駆動電源20は駆動回路20bと第1昇圧回路20cと第2昇圧回路20dとを有する。駆動回路20bはイオン発生装置18を駆動する。第1昇圧回路20cは電源入力V1及び接地入力G1の間に印加された電圧を昇圧する。第2昇圧回路20dは第1昇圧回路20cが昇圧した電圧をさらに昇圧する。イオン発生装置18には第2昇圧回路20dが昇圧した電圧が印加される。
【0047】
駆動回路20bはNPNトランジスタQ1と抵抗R1と抵抗R2とを有する。NPNトランジスタQ1はコレクタが電源入力V1に接続されているとともにエミッタが抵抗R2の一端に接続されている。抵抗R2はNPNトランジスタQ1のベースとエミッタとの間に接続されている。抵抗R1はNPNトランジスタQ1のベースと制御入力M1との間に接続されている。
【0048】
第1昇圧回路20cは、ダイオードD1、D2、D3、抵抗R3、起動抵抗R4、制限抵抗R5、NPNトランジスタQ2、コンデンサC1、及び昇圧トランスT1を有する。昇圧トランスT1は一次巻線T1a、ベース巻線T1b及び二次巻線T1cを有する。
【0049】
ダイオードD1のアノードは駆動回路20bの一端に接続され、カソードは抵抗R3の一端に接続されている。抵抗R3の他端は起動抵抗R4の一端と一次巻線T1aの一端との接続点に接続されている。起動抵抗R4の他端はダイオードD2のカソードとNPNトランジスタQ2のベースと制限抵抗R5の一端と二次巻線T1cの一端とに接続されている。
【0050】
ダイオードD2のアノードは接地電位に接続されている。制限抵抗R5の他端はベース巻線T1bの一端に接続されている。ベース巻線T1bの他端は接地電位に接続されている。NPNトランジスタQ2のコレクタは一次巻線T1aの他端に接続され、エミッタは接地電位に接続されている。二次巻線T1cの他端は、ダイオードD3のアノードに接続され、ダイオードD3のカソードは、他端が接地電位に接続されたコンデンサC1の一端及び第2昇圧回路20dに接続されている。
【0051】
第2昇圧回路20dは二端子サイリスタS1と昇圧トランスT2とを有する。昇圧トランスT2は一次巻線T2aと二次巻線T2bとを有する。一次巻線T2aの一端は二端子サイリスタS1を介して第1昇圧回路20cに接続され、他端は接地電位に接続されている。二次巻線T2bは両端がイオン発生装置18に接続されている。
【0052】
イオン発生装置18はダイオードD4、D5と放電電極181a、181bと対向電極182a、182bとを有する。ダイオードD4のカソード及びダイオードD5のアノードは二次巻線T2bの一端に接続され、ダイオードD4のアノード及びダイオードD5のカソードは各々放電電極181a、181bに接続されている。二次巻線T2bの他端は対向電極182a、182bに接続されている。
【0053】
図7の回路構成において、マイクロコンピュータからなる制御装置(不図示)によって制御入力M1に駆動信号が与えられると、NPNトランジスタQ1がオンになる。そして、電源入力V1及び接地入力G1の間にシガーソケット9(直流電源E1)のDC12Vが印加される。このとき、ダイオードD1、抵抗R3及び起動抵抗R4を介して流入したベース電流により、NPNトランジスタQ2のコレクタ電流が流れ始める。そして、昇圧トランスT1の一次巻線T1aの両端に電圧が発生する。これにより、ベース巻線T1bの両端に一次巻線T1a及びベース巻線T1bの巻数比に応じた電圧が発生する。
【0054】
ここで、昇圧トランスT1のベース巻線T1bは一次巻線T1aと同極性である。そのため、ベース巻線T1bの両端に発生した電圧はNPNトランジスタQ2のコレクタ電流の増加を加速させて一次巻線の両端の電圧を増加させるように作用する。このとき、二次巻線T1cの極性はダイオードD3が導通しない方向の電圧が発生するように設定されている。このため、二次巻線T1cには電流が流れない。
【0055】
その後、NPNトランジスタQ2のコレクタ電流が増加する割合が減少した場合、一次巻線T1aの両端の電圧は低下し始める。また、ベース巻線T1bの両端の電圧も低下してベース電流及びコレクタ電流が減少する。そのため、一次巻線T1aの両端の電圧はさらに加速度的に低下する。このとき、二次巻線T1cの両端にはダイオードD3が導通する方向に電圧が発生してコンデンサC1を充電する。
【0056】
コンデンサC1の充電が進行して電圧が二端子サイリスタS1のブレークオーバー電圧(例えば、約100V)に達した場合、二端子サイリスタS1はツェナーダイオードのように導通し始める。導通する電流がブレークオーバー電流(例えば1mA)に達した場合、二端子サイリスタS1は略短絡状態となり、コンデンサC1に充電された電荷が昇圧トランスT2の一次巻線T2aを通じて接地電位に放電する。
【0057】
このとき、二次巻線T2bには、昇圧されたインパルス状の高電圧が発生する。これにより、昇圧トランスT2の二次巻線T2bからダイオードD4、D5を介してイオン発生装置18に高電圧(例えば、2kV)が印加される。そして、放電電極181aと対向電極182aとの間でマイナスイオンを発生させるとともに、放電電極181bと対向電極182bとの間でプラスイオンを発生させる。
【0058】
本実施形態によると、空気を除菌するイオン発生装置18(除菌部)をフィルタユニット14のフレーム14bに設けているので、使用者はイオン発生装置18を車両用空気調和装置2に容易に後付け設置でき、車両用空気調和装置2内及び車室6内を除菌することができる。また、使用者は容易にイオン発生装置18のメンテナンスや交換を行うことができる。
【0059】
また、通電によってイオン及びオゾンを発生させて空気中に放出するイオン発生装置18をフレーム14bに設けているので、簡単な構成で確実に除菌効果を得ることができる。
【0060】
また、イオン発生装置18はフィルタ14aの排気面と同じ側の面に設けられているので、気流Sに放出されたイオン及びオゾンがフィルタ14aに衝突して消滅することを防止できる。
【0061】
また、イオン発生装置18の駆動電圧がDC12Vであるので、車両1のバッテリーから簡単に電源供給できる。
【0062】
また、フィルタユニット14は車両1のシガーソケット9に挿入されるプラグ20aを有するので、使用者は面倒な配線をすることなく、車室6内での作業のみでイオン発生装置18に簡単に電源供給できる。
【0063】
次に第2実施形態について説明する。本実施形態は第1実施形態のフィルタユニットに2つのイオン発生装置18、18を設置している点で第1実施形態とは異なっている。その他の部分は第1実施形態と同様である。図8は、本実施形態のフィルタユニット24をフィルタ14aの排気側から見た斜視図である。なお、説明の便宜上、前述の図3に示す第1実施形態と同様な部分には同一の符号を付している。
【0064】
2つのイオン発生装置18、18はフレーム14bの凹部14d、14dに配置され、フィルタ14aの排気面と同じ側の面に配されている。これにより、イオン発生装置18、18により発生したイオン及びオゾンがフィルタ14aに衝突して消滅することを防止できる。また、イオン発生装置18、18はフィルタ14aに対して互いに反対側の位置に設けられる。これにより、フィルタ14aを通過した気流Sに均一にイオン及びオゾンを含ませることができる。したがって、除菌効果がより向上する。なお、イオン発生装置18を3つ以上設けてもよい。
【0065】
図9は、フィルタユニット24に設けたイオン発生装置18、18と駆動電源20との接続を示す回路図である。説明の便宜上、前述の図7に示す第1実施形態と同様な部分には同一の符号を付している。なお、駆動電源20及びイオン発生装置18の回路構成は第1実施形態(図7参照)と同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0066】
イオン発生装置18はコネクタ184(図6参照)がコネクタ嵌合部52に嵌合することによって駆動電源20から電力が供給される。本実施形態では、2つのイオン発生装置18、18に対応させて2つのコネクタ嵌合部52がフレーム14bに設けられている。電源ケーブル19の一端は駆動電源20に接続されるとともに、他端は一方のコネクタ嵌合部52に接続される。そして、一方のコネクタ嵌合部52には連結ケーブル19aの一端が接続されるとともに、連結ケーブル19aの他端は他方のコネクタ嵌合部52に接続される。これにより、一つの駆動電源20から2つのイオン発生装置18、18に電力を供給することができる。
【0067】
なお、一方のイオン発生装置18をフィルタ14aの排気面と同じ側の面に配置するとともに、他方のイオン発生装置18をフィルタ14aの吸気面と同じ側の面に配置してもよい。これにより、フィルタ14aの吸気側も除菌できる。
【0068】
また、2つのイオン発生装置18、18をフィルタ14aに対して同じ側の位置に並設してもよい。これにより、連結ケーブル19aの長さを短くすることができる。従って、連結ケーブル19aの断線のおそれが少なくなる。また、製造コストを削減できる。
【0069】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様な効果を奏する。また、フレーム14bにはイオン発生装置18を2つ設けているので、送風経路13内のイオンやオゾンの濃度を容易に上昇させることができる。従って、除菌効果を一層向上できる。
【0070】
次に第3実施形態について説明する。図10は本実施形態のフィルタユニット34をフィルタ14aの排気側から見た斜視図である。本実施形態では、第1実施形態のフィルタユニットにイオン発生装置18に加えて薬剤放出部材35をさらに設けた点で第1実施形態と異なっている。その他の部分は第1実施形態と同様である。なお、説明の便宜上、前述の図3に示す第1実施形態と同様な部分には同一の符号を付している。
【0071】
薬剤放出部材35は薬剤を空気中に放出して除菌を行う。イオン発生装置18及び薬剤放出部材35はフレーム14bの凹部14d内に設けられ、フィルタ14aの排気面と同じ側の面に配されている。
【0072】
これにより、イオン発生装置18により発生したイオン及びオゾンがフィルタ14aに衝突して消滅することを防止できるとともに、薬剤放出部材35から放出された薬剤がフィルタ14aに吸着することを防止できる。また、薬剤放出部材35はフレーム14bに対して着脱自在に設けられる。これにより、薬剤放出部材35を容易に交換できる。
【0073】
また、薬剤放出部材35はフィルタ14aに対してイオン発生装置18と反対側の位置に設けられる。これにより、イオン発生装置18と薬剤放出部材35とは互いに離れた位置に配される。従って、イオン発生装置18によって発生して空気中に放出されたイオン及びオゾンと薬剤放出部材35から空気中に放出された薬剤とが放出直後に相互作用することを防止できる。その結果、各々による除菌効果が減殺されることを防止できる。
【0074】
図11は薬剤放出部材35を示す正面斜視図である。図12は薬剤放出部材35を示す側面断面図である。薬剤放出部材35は、薬剤を保持するペレット35bを収容するケース35aを有する。ケース35aの一面には複数の開口部35cが設けられる。そして、薬剤放出部材35は開口部35cが送風経路13に面するようにフレーム14bに設けられる。ペレット35bから放出された薬剤は開口部35cを介してケース35a外に放出される。これにより、フィルタ14aを通過する気流Sに薬剤が含まれる。なお、ペレット35bはろ紙などに置き換えてもよい。この場合、薬剤をろ紙に染み込ませる。
【0075】
薬剤としては、例えばオルトフェニルフェノール、ジフェニル、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、ヒノキチオール等の揮発性の除菌剤を使用できる。なお、専らイオン発生装置18に除菌機能を担わせる場合には、薬剤放出部材35の薬剤を除菌剤に替えて芳香剤としてもよい。これにより、車両用空気調和装置2内及び車室6内を除菌しながら車室6内で好みの香りを楽しむことができる。
【0076】
なお、イオン発生装置18及び薬剤放出部材35の一方をフィルタ14aの排気面と同じ側の面に配置するとともに、他方をフィルタ14aの吸気面と同じ側の面に配置してもよい。これにより、フィルタ14aの吸気側も除菌できる。
【0077】
また、薬剤放出部材35をシート状にしてもよい。この時、シートの一面に薬剤を塗布するとともに他面に接着剤を塗布してフレーム14bに貼付すると好ましい。これにより、フレームユニット34の製造効率を向上できる。
【0078】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様な効果を奏する。また、イオンやオゾンで除菌しきれない微生物等を薬剤で除菌することができる。また、車両1が駐車中でシガーソケット9から電源供給されない場合でも薬剤放出部材35から空気中に薬剤が放出される。従って、車両用空気調和装置2内及び車室6内を一層確実に除菌することができる。
【0079】
第1〜第3実施形態において、イオン発生装置18に特に限定はなく、例えば誘電体で形成した基板上に放電電極を印刷して形成したイオン発生装置でもよい。また、管状の絶縁体表面および内面に金属電極を設けたイオン発生装置であってもよい。
【0080】
第1〜第3実施形態では、除菌部としてイオン発生装置18を用いたが、オゾンのみを発生して空気中に放出するオゾン発生装置を用いてもよい。例えば、無声放電によってオゾンを生成するオゾナイザを使用することができる。この時、人体への影響を考慮してオゾン濃度を日本産業衛生協会の許容濃度である0.1ppmよりも低くなるように制御するのが好ましい。また、車両用空気調和装置2の吹出口12にオゾン触媒を設けて、オゾン触媒を通過する空気に含まれるオゾンを吸着及び分解してもよい。これにより、車室6内にオゾンを漏出させずに車両用空気調和装置2内のオゾン濃度を上昇させて車両用空気調和装置2内を一層確実に除菌できる。また、送風経路13内を流通する空気を一層確実に除菌できる。
【0081】
第1〜第3実施形態では、イオン発生装置18をフィルタ14aの排気面と同じ側の面に配置しているが、フィルタ14aの吸気面と同じ側の面に配置してもよい。この場合、発生したイオンやオゾンがフィルタ14aに衝突して多少減少するが、除菌効果を得ることはできる。
【0082】
また、第1〜第3実施形態では、車両用空気調和装置2に配置されるフィルタユニットについて説明したが、その他の空気調和装置や空気清浄機等に配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、空気中の塵挨を捕集するフィルタユニット及びそれを備えた車両用空気調和装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 車両
2 車両用空気調和装置
3 ボンネット
4 機器室
5 エンジンルーム
6 車室
7 隔壁
8 インストルメントパネル
9 シガーソケット
10 ハウジング
11 吸込口
11a 外気吸込口
11b 内気吸込口
12 吹出口
13 送風経路
14、24、34 フィルタユニット
14a フィルタ
14b フレーム
15 送風機
16 蒸発器
17 ヒーターコア
18 イオン発生装置(除菌部)
19 電源ケーブル
20 駆動電源
20a プラグ
35 薬剤放出部材
35a ケース
35b 薬剤ペレット
35c 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中の塵埃を捕集するフィルタと前記フィルタを保持するフレームとを備えて車両用空気調和装置に対して着脱自在に設けられるフィルタユニットにおいて、
空気を除菌する除菌部を前記フレームに設けたことを特徴とするフィルタユニット。
【請求項2】
前記除菌部は通電によってイオン及びオゾンの一方または両方を発生させて空気中に放出することを特徴とする請求項1に記載のフィルタユニット。
【請求項3】
前記除菌部は前記フィルタの排気面と同じ側の面に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のフィルタユニット。
【請求項4】
前記除菌部の駆動電圧がDC12Vであることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のフィルタユニット。
【請求項5】
車両のシガーソケットに挿入されるプラグを有することを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載のフィルタユニット。
【請求項6】
前記除菌部が薬剤を空気中に放出して除菌を行う着脱自在の薬剤放出部材をさらに有することを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれかに記載のフィルタユニット。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載のフィルタユニットを備えたことを特徴とする車両用空気調和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−18451(P2013−18451A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155249(P2011−155249)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】