説明

フィルターの洗浄装置および洗浄方法

【課題】フィルター洗浄能力を上げ、この洗浄期間の短縮を図ることによって、従来並の洗浄期間でフィルム破断を起こさない、充分に清浄な再生フィルターとするためのフィルター洗浄方法を提供する。
【解決手段】フィルターの樹脂濾過方向とは逆方向に加温したアルカリ洗浄液を流しながら、フィルターを洗浄浴槽中で洗浄液に浸漬して超音波洗浄とアルカリ洗浄とを同時に行うフィルターの洗浄装置と洗浄方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、特にポリエステル樹脂組成物の溶融押出において使用するポリマーフィルターについて、使用後の樹脂及び異物を除去して、再使用できるようにするフィルターの洗浄装置と洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂組成物、特にポリエステル樹脂組成物のフィルム製造工程においては、ポリマーフィルターとして多くはドーナツ状の円板であるリーフフィルターが使用されている。その使用枚数は時に一度の使用で100枚を超え、単価も数万円であり、使い捨てで使用していては大きなコスト増となる。したがって、使用後のフィルターを洗浄し再使用することは一般的である。
【0003】
しかしながら、樹脂への添加物の量が多い場合や、共重合成分や異種ポリマーのブレンド使用の場合は、汚れが落ち難い。また不織布フィルターに対して粒焼結のフィルターは空隙率が小さい事もあって、なおさら汚れが落ち難い。このような理由から、これらの洗浄には通常の添加剤の少ない透明フィルム生産で使用した物に比較し、数倍の繰り返し洗浄を行っている。そのため、かつては低コストのブロンズ製のフィルターを使い捨てで使用していたが、昨今入手困難となっている。
【0004】
ポリマーフィルターの洗浄は、一般にフィルターユニットのハウジングから、シャフトに装着されたフィルターエレメントを抜き取ったのち、シャフトからフィルターエレメントを抜き取るための処理を行う。それは時にユニットごと実施される場合もあるが、熱分解炉や加水分解炉、トリエチレングリコールやエチレングリコールのオートクレーブにて、溶融や燃焼、解重合等によって樹脂を除去する。
【0005】
その後、湯洗浄や水洗を挟んで、アルカリ洗浄や酸洗浄の薬液洗浄と、ジェット水、スチームや超音波等で、物理的な力で異物を落とす洗浄を組み合わせる。この各洗浄の詳細条件やそれらをどう組み合わせるかはノウハウであり、公知となっていない部分も多い。しかし、特許文献1あるいは特許文献2などにおいて、有機物の除去に対してはアルカリ洗浄が有効と言われ、95℃に加熱した水酸化ナトリウムの循環を3時間にわたってそれぞれ2回程度行うのが一般的である。
【0006】
ポリマーフィルターの洗浄には、上記のように、多種多様な工程が繰り返し実施されており、1ロットの洗浄を完了する期間として1か月程度を要している。さらに汚れが多いケース、あるいは汚れが落ち難いケースではフィルターの中に残った異物の残渣が、製膜工程でのフィルム破断頻度を数倍に増やしてしまうので、この対策として現状は繰り返し洗浄を実施しており、このために3倍以上の期間を要する事がある。そうすると、フィルターの在庫を大量に持つ必要も発生してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平7−2204号公報
【特許文献2】特公昭64−4807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上に述べた従来技術が有する諸問題に鑑み、本発明の目的は、従来行われていた幾つかの洗浄工程を省略してもフィルター洗浄能力は維持、あるいは向上し、その結果、洗浄期間の短縮を図れて、従来並あるいはそれよりも短い洗浄期間でフィルム破断を起こさず、充分に清浄な再生フィルターとできるフィルターの洗浄装置と洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここに、前記課題は下記の(1)〜(5)に係る発明によって解決される。
(1)フィルムの製造工程で使用する溶融樹脂組成物を濾過するためのフィルターに対して水酸基を有する化合物の存在下で使用後の前記フィルターに付着している溶融樹脂組成物を加熱分解した後に少なくともアルカリ洗浄して再生するフィルター洗浄装置であって、前記フィルターの洗浄液としてアルカリ洗浄液を充填した洗浄浴槽と、前記洗浄浴槽中に浸漬した前記フィルターを浸漬した状態で保持して回転させる保持回転機構と、製造工程で前記樹脂組成物を濾過する方向とは逆方向へ前記アルカリ洗浄液を循環させる循環ポンプと、前記フィルターを超音波洗浄するために前記洗浄浴槽中に設けられた超音波振動子とを少なくとも備え、回転する前記フィルターに対して樹脂組成物の濾過方向とは逆方向に前記洗浄液を循環させて流しながら超音波洗浄することを特徴とするフィルターの洗浄装置。
【0010】
(2)洗浄対象の前記フィルターから脱落して循環する前記洗浄液中に含まれる異物を濾過精度0.5〜10μmで濾過する循環フィルターを備えたことを特徴とする(1)に記載のフィルターの洗浄装置。
【0011】
(3)前記循環ポンプが、前記洗浄液の循環流量(Q[L/分])と洗浄対象となる前記フィルターの全ての濾過面積を合計した合計濾過面積(A[m])とで算出される単位濾過面積当りの循環流量(Q/A)が50<Q/A<800という範囲になるように前記フィルターに対して前記洗浄液を注入するポンプであることを特徴とする(1)または(2)に記載のフィルターの洗浄装置。
【0012】
(4)(1)〜(3)の何れかに記載の洗浄装置を使用して、アルカリ洗浄液として、水酸化ナトリウムを主成分として、その濃度が7〜17重量%であって、かつ温度が60〜95℃の洗浄液を使用することを特徴とするフィルターの洗浄方法。
【0013】
(5)使用後の前記フィルターに付着する樹脂組成物を、水酸基を有する化合物からなる溶媒の存在下で加熱分解した後、湯洗を行ったのみで直ちに、前記超音波洗浄と前記アルカリ洗浄とを併合して同時に行い、引き続きアルカリ洗浄液をイオン交換水に替えて、常温にてイオン交換水による循環洗浄を行うことを特徴とする(4)に記載のフィルターの洗浄方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の洗浄装置と洗浄方法によれば、再生するフィルター内の残渣によるフィルム切断を回避するために、従来技術では3倍の洗浄期間を必要とする、添加物が多くかつ洗浄し難い粒子焼結タイプのフィルターであっても、従来比でより短い期間でフィルム破断を引き起こさない清浄なフィルターを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のフィルター洗浄方法で使用する洗浄装置の一実施形態に関し、その概略装置構成を例示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を必要に応じて図面を参照しながら詳細に説明する。
先ず、本発明では、例えば樹脂組成物としてポリエステル樹脂組成物の溶融押出工程において使用した使用済のフィルターを従来通り、水酸基を有する化合物からなる溶媒の存在下で加熱して1枚づつに分解する。例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂では280℃程度に加熱したトリエチレングリコールで3時間以上の処理を行うのが望ましい。
【0017】
その後、以下に説明する洗浄方法によって洗浄を行う。
図1は、本発明の線状方法に好適に使用できる洗浄装置の一実施形態例を説明するための概略装置構成図である。この図1において各符号を簡単に説明すると、1は洗浄浴槽、2は超音波振動子、3は保持回転機構、4は液循環系、4aは循環フィルター、4bは液循環ポンプ、5はリーフフィルターからなるフィルターエレメント、そして、6は洗浄液をそれぞれ示す。
【0018】
なお、この図1に例示した洗浄装置は、ドーナツ状の中空円盤形状を有する1枚のリーフフィルター(以下、単に「フィルター」という)を処理する実施形態であるが、超音波洗浄の性能が維持されるのであれば、洗浄浴槽1を大きくし、複数のフィルターを同時に洗浄しても良い。また、図1の実施形態では、1枚のフィルターを両面から洗浄処理するタイプを例示したが、片面洗浄として、途中で洗浄面を取り交換する方式でも良い。
【0019】
以上に説明した洗浄装置の実施形態例において、洗浄浴槽1中に後述する洗浄液6が充填され、この洗浄液6にフィルター5が回転支持機構3上に戴置された状態で浸漬される。更に、洗浄液6中に浸漬されたフィルター5を挟んでその前後あるいは左右に超音波振動子2が設けられ、この超音波振動子2によって発生させられた超音波振動が洗浄液6中を伝播してフィルター5に作用することにより、超音波洗浄が行われる。
【0020】
なお、前記洗浄装置に使用される洗浄浴槽1の材質としては、洗浄液6としてアルカリ洗浄剤を使うために耐アルカリ腐食性が高い材料で作られている必要があり、例えば、好ましい材質を挙げるならばステンレス製、特にはSUS304製が望ましい。また、図中に記載した超音波振動子2は投げ込み式超音波振動子であるが、アルカリに対する耐食性と95℃程度までの耐熱性を満足していれば市販品で構わない。
【0021】
更に、本発明においては、洗浄対象であるフィルター5を洗浄液6中で回転させながら洗浄を行う。したがって、この目的を達成するために、フィルター5の保持回転機構3を備えていおり、フィルター5をセンターポストで把持して回転させる機構となっている。なお、センターポストとフィルター5のハブ部分は密着されており、この把持部のセンターポストはロータリージョイントとしての役割も併せ持っており、洗浄液6を注入する配管やホースが接続されている。洗浄液6はこの把持部からフィルター5の内部に注ぎ込まれ、フィルター5の内部から外部へと流れる。なお、この流れの方向は、実工程で溶融樹脂が流れるフィルター5の外部方向から内部方向への流れと逆である。
【0022】
次に、図1中に示した符号4は、洗浄液循環系を示し、4aは除去した異物をトラップするための循環フィルターであり、4bは循環ポンプである。ここで、先ず前者の循環フィルター4aについて説明すると、その濾過精度は0.5〜10μm、望ましくは1〜5μmであって、粒状ステンレス鋼の焼結タイプが好ましい。また、後者の循環ポンプ4bに関しては、その洗浄表面積、すなわち洗浄対象とするフィルター5に関しては概ね全ての濾過面積の合計である合計濾過面積を洗浄対象とするので、これにに対して十分な循環流量を持つ循環ポンプ4bを選定する必要がある。
【0023】
ここで、洗浄液6の流量をQ[L/分]、フィルター5の合計濾過面積をA[m]とすると、単位濾過面積当りの循環流量Q/Aの値として50〜800である必要があり、望ましくは100〜400である。なお、添加剤が多いフィルター5を洗浄する場合は、除去した異物をトラップする循環フィルター4aの目詰まりが著しいので、分岐弁を設けて循環フィルター4aを連続的に交互に切り替えるとか、フィルター・チェンジャーを設ける等の方策を講じても良い。
【0024】
本発明で洗浄液6として使用するアルカリ洗浄剤は、pH13以上の強アルカリ性が好ましいが、特開2002−180918号公報にも記載されているように、あまり粘度が高くてはいけない。したがって、10重量%前後の濃度の水酸化ナトリウムを主体としたものを60〜95℃の加熱温度で使用するのが良い。
【0025】
なお、市販されている水酸化ナトリウム主体の洗浄剤には洗浄効果をあげるため界面活性剤等の添加を行っているものがある。これらが純粋な水酸化ナトリウムより多くの場合洗浄効果が上がることが知られており、これらを使用する場合は、加熱温度として60〜85℃、望ましくは80℃前後が良い。その上限は添加剤の耐熱性より決定される。
【0026】
また、その濃度に関しても適当な範囲がある。何故ならば、水酸化ナトリウムの割合を増加させてpH値を高くしようとすると、洗浄剤の粘度が高くなると言う弊害が生じるからである。この場合、洗浄液6の特性として強アルカリ性の方が一見洗浄力があるように思えるが、洗浄効果を上げるためには絶えず洗浄対象の表面が清浄な洗浄液6に置換される事が重要であり、そのためにはある程度流動性が必要とされ、その結果として粘度を抑える必要がある。
【0027】
本発明で洗浄液6として使用するアルカリ洗浄剤は、pH13以上の強アルカリ性が好ましいが、特開2002−180918号公報にも記載されているように、あまり粘度が高くてはいけない。したがって、10重量%前後の濃度の水酸化ナトリウムを主体としたものを60〜95℃の加熱温度で使用するのが良い。
【0028】
なお、市販されている水酸化ナトリウム主体の洗浄剤には洗浄効果をあげるため界面活性剤等の添加を行っているものがある。これらが純粋な水酸化ナトリウムより多くの場合洗浄効果が上がることが知られており、これらを使用する場合は、加熱温度として60〜85℃、望ましくは80℃前後が良い。その上限は添加剤の耐熱性より決定される。
【0029】
また、その濃度に関しても適当な範囲がある。何故ならば、水酸化ナトリウムの割合を増加させてpH値を高くしようとすると、洗浄剤の粘度が高くなると言う弊害が生じるからである。この場合、洗浄液6の特性として強アルカリ性の方が一見洗浄力があるように思えるが、洗浄効果を上げるためには絶えず洗浄対象の表面が清浄な洗浄液6に置換される事が重要であり、そのためにはある程度流動性が必要とされ、その結果として粘度を抑える必要がある。
【0030】
しかも、本発明は超音波洗浄と組み合わせることに特徴があるので、その超音波の減衰は望ましくなく、このような理由からやはり高い粘度は好ましくない。そこで、本発明者は、強アルカリによる洗浄力と、洗浄液6の置換の効果と、超音波の効果とからなる三つの効果を相乗的に発揮させるためには、洗浄液6中の水酸化ナトリウムの濃度は7〜17重量%で、洗浄液6の温度は60〜85℃が良く、特に10重量%前後で80℃前後が良好であることを究明した。
【0031】
その際、洗浄対象に接する洗浄液はできるだけ清浄な方が望ましいのは言うまでもない。しかしながら、大量の洗浄液6を使用することは好ましくないので洗浄浴槽1へ洗浄液6を循環させるための前述の循環装置を設けて、洗浄剤の消費量を抑える事が好ましい。
【0032】
本発明においては、洗浄効果を高めるために超音波洗浄を併用するが、この超音波洗浄は、フィルター5を損傷させなければできるだけ強力な方が良いのは当然である。洗浄対象との距離も超音波による洗浄効果が最大になるようにセッティングする。なお、本発明者らの実験によれば、容易に入手できる最大ワット密度が0.73W/cmの出力を有する超音波洗浄でフィルター5の損傷もなく、かつ十分な洗浄効果を得られた。
【0033】
洗浄液6の加熱方法は、特に指定しないが、超音波振動子2やフィルター5の支持具などへの加熱を考慮すると、洗浄浴槽1を外壁側から加熱して洗浄液6を加熱するよりも、投げ込み式の電気ヒーターや循環途中で加熱する温水ボイラーのように直接洗浄液6を加熱する方法が良い。
【0034】
フィルター5から除去した異物の脱落と沈殿を促進するためにフィルター5を回転運動させるが、その回転数は5〜100rpm、望ましくは10〜20rpmが良い。何故ならば、この回転数が速過ぎると超音波洗浄の効果が薄れる懸念があり、遅すぎると超音波振動子2のサイズによっては暴露時間の差が生じて、洗浄斑を生むことになる。なお、暴露時間は少なくても15分以上になるようにしなければならない。望ましくは30分から3時間、さらに望ましくは1時間〜2時間である。
【0035】
フィルター5は加温したアルカリ洗浄剤の中で、超音波洗浄を行った後、少なくてもイオン交換水での水洗を行う。上述の洗浄浴槽1中での音波洗浄にて、アルカリ洗浄水を抜き、新たにイオン交換水を張り、同様に超音波洗浄と望ましくは循環フィルター4aを介した水循環を行うことが望ましい。温度は常温で、暴露時間は15分以上が必要で、望ましくは30〜1時間での処理が望ましい。この場合、異物はほとんど落ちているので、循環系での循環フィルターの使用は必須ではないが、使用する事が望ましい。
【0036】
本発明で、アルカリ洗浄剤とイオン交換水で洗浄した後のフィルターは、そのまま乾燥の後、使用する事ができる。一般にはダストチェックやバブルポイント測定をした後、ギヤオーブンで乾燥し、最後に通気測定を実施した後に使用される。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明のフィルター洗浄方法を詳述する。
本実施例において、対象とするフィルターは、TiOを含有するポリエステル樹脂組成物の2軸延伸フィルムを製造する工程で使用された12インチサイズのリーフフィルターである。ただし、フィルム製造工程とは、平均粒径1.5μmの酸化チタンを約10重量%添加したPETマスターチップと、先に該当工程で生産された屑フィルムを粉砕した後、溶融生成した回収チップを50:50に混合して、チップ乾燥機にて連続的に170℃で約3時間乾燥した後、溶融混練押出機から押し出して計量供給されたスリットダイよりシートとして押し出し、冷却ドラムで固化して引き取り、その後、縦延伸と横延伸とを逐次実施して、2軸延伸ポリエステルフィルムを得る工程である。
【0038】
フィルターはステンレス粒子を焼結したタイプの濾材を使用したリーフフィルターで、内部のバックメタルとリテーナーは金網という、極めて一般的に慣用されている物を用いた。このフィルターは、ACFTDのシングルパスのコンタミテストで「捕集効率95%の濾過精度」が約50μmというものである。なお、当該工程ではこのフィルター約100枚を使用し、ポリマーの濾過量に換算して約300トンで交換したものである。
【0039】
このフィルターをトリエチレングリコールのオートクレーブにて280℃の液温設定で6時間保持し、ポリエステル樹脂組成物を除去する。なお、液を交換してこの処理を2回実施した後、本発明の洗浄装置にて、アルカリ洗浄と水洗浄を行った。
【0040】
このとき用いた洗浄装置は、ステンレス鋼(SUS304)製の約60Lの洗浄浴槽に1.5kWの投げ込みヒーターと超音波振動子とリーフフィルターの支持コロが設けた。ただし、超音波振動子は190mmx145mmで200W、26kHzの固定周波数タイプを使用し、フィルターに対して平行になるようにその左右両面側に配置した。また、フィルターからの超音波振動子の距離はアルミ箔を超音波振動子の正面に置き、激しく穴が開く距離を確認し、その位置とした。この場合、フィルター表面から約200mmの位置となった。
【0041】
洗浄液は佐々木化学薬品社のエスバックH−190Nを希釈して10重量%の水酸化ナトリウム濃度で使用した。また、液温度は80℃で温度コントロールした。逆洗浄でもある循環流量は20L/分でQ/Aは約130とした。時間は1枚あたり2時間で、フィルターは15rpmで回転させたので、暴露時間としてはおおよそ1.3時間程度であった。
【0042】
その後、引き続きアルカリ洗浄液を浴槽から抜き取り、洗浄液をイオン交換水に交換した後、常温で超音波洗浄を1時間実施した。このとき、フィルターの回転速度は15rpmなので、暴露時間としてはおよそ0.7時間であった。このフィルターを一般的な浴槽で超音波洗浄機により洗浄し浴槽内の残渣によるダストチェックを行った後、初期バブルポイントチェックを行い、オーブンで熱風乾燥して通気抵抗チェックを行った。
【0043】
残渣チェックの結果は、後述する比較例よりも残渣は少なかった。また、この洗浄フィルターを再び組立て、フィルムの製造ラインに使用したが、5日間無破断で生産が可能であった。むろん、初期バブルポイントや通気抵抗の回復には何ら問題はなかった。
【0044】
[比較例]
実施例と同一のフィルム生産で使用し、ほぼ同一の濾過量で交換した同形式のフィルターを、トリエチレングリコールのオートクレーブにて280℃の液温設定で6時間保持し、ポリエステル樹脂組成物を除去した。但し、液を交換して3回実施した。その後、エスパック10重量%で5時間煮沸し、その後、沸騰した水による湯洗浄を3時間実施した。さらに硝酸5重量%で3時間の酸洗浄を行い、水でのリンスの後、再度エスパックでのアルカリ洗浄を行った。さらに湯洗浄を行った後、イオン交換水での浴槽超音波を1枚1時間ずつ実施した。
【0045】
その結果、ダストチェックでは、通常の透明フィルムで使用したフィルター洗浄時の残渣レベルになかった。そのため再度、最初のエスパックでのアルカリ洗浄から洗浄を3回繰り返し、何とか通常の残渣レベルとなるように調整を行った。このとき、初期バブルポイントや通気抵抗は何ら問題なかった。しかし、ここで洗浄したフィルターを実際の製造ラインで使用したところ、1日に数回程度でフィルムの破断が発生し、ラインを休止してフィルターを交換する事になってしまった。破断の原因は突き止められていないが、何らかの洗浄残渣が漏れ出して来て、原因物になっているものと考えられる。
【符号の説明】
【0046】
1:浴槽
2:超音波振動子
3:支持回転機構
4:液循環系
4a:濾過用フィルター
4b:液循環ポンプ
5:リーフフィルター
6:洗浄液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの製造工程で使用する溶融樹脂組成物を濾過するためのフィルターに対して水酸基を有する化合物の存在下で使用後の前記フィルターに付着している溶融樹脂組成物を加熱分解した後に少なくともアルカリ洗浄して再生するフィルター洗浄装置であって、前記フィルターの洗浄液としてアルカリ洗浄液を充填した洗浄浴槽と、前記洗浄浴槽中に浸漬した前記フィルターを浸漬した状態で保持して回転させる保持回転機構と、製造工程で前記樹脂組成物を濾過する方向とは逆方向へ前記アルカリ洗浄液を循環させる循環ポンプと、前記フィルターを超音波洗浄するために前記洗浄浴槽中に設けられた超音波振動子とを少なくとも備え、回転する前記フィルターに対して樹脂組成物の濾過方向とは逆方向に前記洗浄液を循環させて流しながら超音波洗浄することを特徴とするフィルターの洗浄装置。
【請求項2】
洗浄対象の前記フィルターから脱落して循環する前記洗浄液中に含まれる異物を濾過精度0.5〜10μmで濾過する循環フィルターを備えたことを特徴とする、請求項1に記載のフィルターの洗浄装置。
【請求項3】
前記循環ポンプが、前記洗浄液の循環流量(Q[L/分])と洗浄対象となる前記フィルターの全ての濾過面積を合計した合計濾過面積(A[m])とで算出される単位濾過面積当りの循環流量(Q/A)が50<Q/A<800という範囲になるように前記フィルターに対して前記洗浄液を注入するポンプであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のフィルターの洗浄装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の洗浄装置を使用して、アルカリ洗浄液として、水酸化ナトリウムを主成分として、その濃度が7〜17重量%であって、かつ温度が60〜95℃の洗浄液を使用することを特徴とするフィルターの洗浄方法。
【請求項5】
使用後の前記フィルターに付着する樹脂組成物を、水酸基を有する化合物からなる溶媒の存在下で加熱分解した後、湯洗を行ったのみで直ちに、前記超音波洗浄と前記アルカリ洗浄とを併合して同時に行い、引き続きアルカリ洗浄液をイオン交換水に替えて、常温にてイオン交換水による循環洗浄を行うことを特徴とする、請求項4に記載のフィルターの洗浄方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−274238(P2010−274238A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131954(P2009−131954)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】