説明

フィルターの製造方法及び液体噴射ヘッド並びに液体噴射装置

【課題】フィルターの反りを抑制してフィルターの破壊を抑制することができるフィルターの製造方法及び液体噴射ヘッド並びに液体噴射装置を提供する。
【解決手段】パンチにより金属板51に複数の貫通孔を設けるフィルターの製造方法であって、軟質部材の上に載置された前記金属板51にパンチを貫通させて抜き打ち片を軟質部材の内部に押し込むことで、前記金属板51に前記貫通孔を穿孔する工程と、前記貫通孔を穿孔する工程の前に、前記金属板51を前記パンチの貫通方向に向かって当該パンチ側が凸となるように反らせるように圧延する工程と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板に複数の貫通孔が設けられたフィルターの製造方法及び液体噴射ヘッド並びに液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドには、流路内の気泡や異物などを取り除くための平板状のフィルターが設けられている。このフィルターとして、薄板にパンチ加工によって複数の貫通孔を設けたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながらパンチによって貫通孔を形成したフィルターは、多数の貫通孔が形成されることに基づく曲がり方向の残留応力によってカール(反り)が発生してしまうため、金属板を屈曲させて凹凸を形成し、凹凸によってフィルターの剛性を高めることで反りを抑制していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−272631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、凹凸によってフィルターの反りを抑制する場合、凹凸によってフィルターに亀裂等の破壊が発生する虞があるという問題がある。
【0006】
また、フィルターの剛性を高めるために大きな起伏の凹凸を形成すると、開口率の低下や余分な材料が必要になるなどの不具合が生じる虞があるという問題がある。
【0007】
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッド等の液体噴射ヘッドに搭載されるフィルターに限定されず、他の装置に搭載されるフィルターにおいても同様に存在する。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑み、フィルターの反りを抑制してフィルターの破壊を抑制することができるフィルターの製造方法及び液体噴射ヘッド並びに液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の態様は、パンチにより金属板に複数の貫通孔を設けるフィルターの製造方法であって、軟質部材の上に載置された前記金属板にパンチを貫通させて抜き打ち片を軟質部材の内部に押し込むことで、前記金属板に前記貫通孔を穿孔する工程と、前記貫通孔を穿孔する工程の前に、前記金属板を前記パンチの貫通方向に向かって当該パンチ側が凸となるように反らせるように圧延する工程と、を具備することを特徴とするフィルターの製造方法にある。
かかる態様では、パンチによって金属板に貫通孔を形成する前に、予め金属板を反対方向に反らせるように圧延することで、パンチによって金属板に貫通孔を形成しても、カール(反り)が発生するのを抑制することができる。したがって、カール取りのための凹凸の形成が不要となり、フィルターの破断等を抑制することができる。
【0010】
ここで、前記金属板に前記貫通孔を穿孔する工程の後、前記金属板を前記パンチの貫通方向と同じ方向に打ち抜く工程をさらに具備することが好ましい。これによれば、1つのフィルターサイズに打ち抜く工程によっても発生する反りを低減できる。
【0011】
また本発明の他の態様は、上記態様の製造方法によって製造されたフィルターを有することを特徴とする液体噴射ヘッドにある。かかる態様では、フィルターの破断を抑制して歩留まりを向上することができると共に信頼性を向上した液体噴射ヘッドを実現できる。
【0012】
さらに本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。かかる態様では、信頼性を向上した液体噴射装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1に係る記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの断面図である。
【図4】本発明の実施形態1に係るフィルターの平面図である。
【図5】本発明の実施形態1に係るフィルターの製造方法を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態1に係る金型装置を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態1に係るフィルターの製造方法を示す断面図である。
【図8】本発明の実施形態1に係るパンチの他の例を示す斜視図及び平面図である。
【図9】本発明の実施形態1に係るパンチの他の例を示す斜視図及び平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
ここで本発明のフィルターの製造方法により製造したフィルターを具備する液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置について説明する。なお、図1は、本発明の液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置の概略斜視図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の液体噴射装置であるインクジェット式記録装置1は、例えば、ブラック(B)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)等の複数の異なる色のインクが貯留される貯留室を有するインクカートリッジ(液体貯留手段)2が装着されたインクジェット式記録ヘッド10(以下、記録ヘッド)を具備する。記録ヘッド10はキャリッジ3に搭載されており、記録ヘッド10が搭載されたキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、キャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙装置等により給紙された紙等の被記録媒体Sがプラテン8上を搬送されるようになっている。
【0016】
次に、本実施形態に係る記録ヘッド10について説明する。なお、図2は、実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図であり、図3はその断面図である。
【0017】
図2及び図3に示すように、インクジェット式記録ヘッド10を構成するヘッドホルダーの一例であるカートリッジケース11は、上述したインクカートリッジ(図示なし)が装着されるカートリッジ装着部12を有する。例えば、本実施形態では、このカートリッジ装着部12に、ブラックインク及び複数色のカラーインクが充填された各インクカートリッジがそれぞれ装着されるようになっている。また、カートリッジケース11の底面には、一端が各カートリッジ装着部12に開口し、他端が後述するヘッドケース側に開口する複数のインク連通路(第1の液体流路)13がそれぞれ形成された管状の流路形成部14が突設されている(図3参照)。
【0018】
カートリッジケース11の上面側、すなわち、カートリッジ装着部12のインク連通路13の開口部分には、インクカートリッジに挿入される複数のインク供給針15が、インク内の気泡や異物を除去するためのフィルター16を介して固定されている。
【0019】
カートリッジケース11の下面側には、シール部材17及び回路基板18を挟んで、ヘッド部材19が固定されている。本実施形態に係るヘッド部材19は、複数の圧電素子を有する圧電素子ユニット20を収容するための中空箱体状の部材であるヘッドケース21と、このヘッドケース21のカートリッジケース11とは反対側の端面に固定されるヘッド本体22とで構成されている。ヘッド本体22は、複数のノズル23が穿設されたノズルプレート24と、ノズル23に連通する圧力発生室25を含む流路が形成された流路形成基板26と、流路形成基板26のノズルプレート24とは反対面側に配される振動板27とで構成されている。これらノズルプレート24及び振動板27と流路形成基板26とはそれぞれ接着剤によって接合されている。またヘッドケース21には、一端側が圧力発生室25に連通すると共に他端側がカートリッジケース11のインク連通路13に連通するインク供給路28が設けられている。インク連通路13とインク供給路28との接続部分は、シール部材17によって密封されている。
【0020】
このようにカートリッジケース11の下面側に、シール部材17、回路基板18、ヘッド部材19を構成するヘッドケース21及びヘッド本体22の順で配し、これら各部材の外側にヘッド本体22のノズル23を露出する窓部29を有する枠体30をはめ込み、ネジ31によってカートリッジケース11に固定することで、インクジェット式記録ヘッド10が形成される。
【0021】
上述した記録ヘッド10に設けられたフィルター16が、本発明の実施形態1に係る製造方法によって製造される。ここで、フィルター16について詳細に説明する。なお、図4は、フィルターの平面図である。
【0022】
図4に示すように、フィルター16は、ステンレス(SUS)等の金属材料からなる平坦な金属板51(例えば、厚さ15μm)に多数の微細な貫通孔52(例えば、内径が15μmの穴が1cmに数万穴)を穿設して円形に切断したものであり、直径は例えば、8〜9mm程度とされている。貫通孔52の内径は、ノズル23よりも小さく設定されている。なお、フィルター16の貫通孔52としては、正方形や六角形の穴とすることも可能であり、この場合、対角線の長さがノズル23よりも小さく設定されていればよい。また、本実施形態では、貫通孔52は、隣接する貫通孔52のピッチが、例えば、4μm程度に設定されている。
【0023】
ここで、本実施形態のフィルター16の製造方法について説明する。なお、図5は、本発明の実施形態1に係るフィルターの製造方法を示す断面図である。
【0024】
まず、フィルター16となる金属板51を圧延する。本実施形態では、図5(a)に示すように、金属板51の厚みよりも幅狭の間隔で設けられた2つのロール100、101の間に金属板51を通すことで圧延した。なお、圧延方法は特にこれに限定されず、例えば、2枚の板状部材の間で金属板51を挟持させて、板状部材で金属板51を加圧することで行ってもよい。2枚の板状部材を用いる場合には、2枚の板状部材のそれぞれの表面を、金属板51の反りに合わせて凹状及び凸状に反らせておけばよい。このような圧延工程では、後の工程で、丸パンチ57によって金属板51に貫通孔52を形成する際に、丸パンチ57側が凸となるように反らせるように圧延する。具体的には、2つのロール100、101の内、一方のロール101の外径を他方(ロール100)に比べて大きくして回転数を同じにすることで、大径のロール101側が凸となるように金属板51を圧延することができる。
【0025】
次に、金属板51に貫通孔52を形成してフィルター16を形成する。具体的には、図6に示す金型装置54を用いてフィルター16を形成する。なお、図6(a)には本発明の一実施形態にかかる金型装置により打ち抜きを行っている状態の断面、図6(b)には打ち抜き後の金属板と軟質部材の断面、図6(c)には打ち抜き後の金属板と軟質部材の平面を示す。
【0026】
図6(a)に示すように、金型装置54は、平盤状の下受けダイ55の上部にはストリッパー56を介してパンチとしての丸パンチ57が設けられ、下受けダイ55の上面には軟質材としてPET(ポリエチレンテレフタレート:高分子材料)からなる軟質部材58が設けられている。
【0027】
丸パンチ57の先端57aの径はフィルター16の貫通孔52の径に対応しており、軟質部材58には丸パンチ57の先端57aが挿入されるようになっている。なお、下受けダイ55の軟質部材58側の表面は凹凸がなく平坦であるため、軟質部材58に多数の金属板51の打ち抜き片62を押し込む際に、押し込み量を均一にすることができ、多数の打ち抜き片62を確実に軟質部材58の内部に留めることができる。
【0028】
なお、軟質部材58に用いる軟質材の高分子材料としては、PC(ポリカーボネート)、POM(ポリアセタール)、ABS(ABS樹脂)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等を用いることも可能であり、硬さは、金属板51の厚さや貫通孔52の大きさ、ピッチ等により種々選択することが可能である。
【0029】
このような金型装置54を用いてフィルター16の製造を行うには、軟質部材58上に丸パンチ57側が凸となるように金属板51を載置し、金属板51の反りを伸ばして平坦とした状態で金属板51に丸パンチ57の先端57aを貫通させて貫通孔52を打ち抜く。このとき、金属板51を貫通した丸パンチ57の先端57aは、軟質部材58に挿入され、打ち抜き片62は軟質部材58の内部に留まる。つまり、図6(b)、(c)に示すような状態となる。このため、下受けダイ55側に丸パンチ57の先端57aを受けるための凹部を設けることなく、貫通孔52を打ち抜くことが可能になる。ちなみに、軟質部材58上で金属板51の反りを伸ばすには、金属板51の反りを伸ばして平坦にした状態で、下受けダイ55に軟質部材58と共に保持させればよい。
【0030】
軟質部材58の厚さは、少なくとも金属板51の厚さの2倍以上であり、0.1mm〜0.2mm程度が好ましい。軟質部材58を0.1mm〜0.2mm程度とすることで、必要以上に厚さを厚くすることなく、軟質部材58の内部に打ち抜き片62を確実に留めることができると共に、金属板51は完全に貫通させることができるので、貫通不良などによる貫通孔52の周縁部のバリ発生を抑制できる。
【0031】
したがって、上述した金型装置54を用いることで、打ち抜き片62を軟質部材58の内部に留めて貫通孔52を穿孔することで丸パンチ57の先端57aを受ける凹部を形成する必要がなくなると共に丸パンチ57の先端57aと凹部との位置合わせが不要になり、貫通孔52が形成された金属板51からなるフィルター16を容易に製造することができる。
【0032】
このような金型装置54を用いた打ち抜き工程について詳細に説明する。図7(a)に示すように、ストリッパー56を下受けダイ55側に移動させることで丸パンチ57の先端57aが金属板51に打ち込まれて丸パンチ57の先端57a及び打ち抜き片62が軟質部材58に挿入される。ストリッパー56を上昇させ打ち抜き片が軟質部材58内留まった状態で、図7(b)に示すように、軟質部材58と共に金属板51を1ピッチ分移動させて再び丸パンチ57の先端57aを金属板51に打ち込む。この動作を繰り返すことで、多数の貫通孔52を金属板51に形成する。
【0033】
軟質部材58と共に金属板51を1ピッチ分移動させて丸パンチ57による打ち込みが繰り返されるため、かえりが発生してもストリッパー56の端面につぶされる等の横かえりが発生する虞が全くない。ちなみに、下側に丸パンチ57の先端57aが挿入される凹部を備えたダイを使用した場合、金属板51を移動させると、凹部以外のダイの上面とストリッパー56の端面との間でかえりが潰されて貫通孔52が変形する虞がある。上述した金型装置54を用いることで、貫通孔52が変形する虞が生じない。
【0034】
ここで、PETからなる軟質部材58を用いた場合、4μm〜5μm程度のかえりが確認され、丸パンチ57の破損がほとんど生じないことが確認された。また、PETよりも硬いPCからなる軟質部材58を用いた場合、2μm〜3μm程度のかえりが確認された。このため、軟質部材58を用いることでかえりを抑えて丸パンチ57の破損を最小限に抑えることができることが判る。また、比較的硬い軟質材を用いることでかえりを小さくすることができる。
【0035】
上述したように、フィルター16は金属板51に丸パンチ57の打ち込みが繰り返し行われて形成されるため、完成したフィルター16は、多数の貫通孔52が穿孔されたことに基づく曲がり方向の残留応力によって、打ち込み方向(下受けダイ55側)に向かって凸となるようにカール(反り)が発生する。しかしながら、本発明では、予め金属板51を、反対向き、すなわち丸パンチ57側が凸となるように反らせる圧延を行っているため、圧延による反りと、丸パンチ57の打ち込みによる反りとが打ち消し合い、フィルター16に生じるカール(反り)を抑制することができる。
【0036】
したがって、フィルター16のカール取りのために、フィルター16を凹凸状に変形させた凹凸部を設ける必要がなくなる。このため、フィルター16に凹凸部を形成する際の変形による破れ等の破壊が発生するのを確実に抑制することができる。特に、極薄のフィルター16であっても、凹凸を設けることなくカールを除去して平坦状態を維持することができるため、フィルター16の破れを抑制することができ、歩留まりを向上してコストを低減することができる。また、フィルター16の反り(カール)を抑制することで、フィルター16の取り扱いが容易になって組み立て時の生産性を向上させることが可能となる。
【0037】
ちなみに、フィルター16は、一枚の金属板51に複数個一体的に形成された後、1枚のフィルター16のサイズに打ち抜く(切り抜く)ことで形成することができる。このときにも、フィルター16には打ち抜きの圧力によってカール(反り)が発生する虞があるが、1枚のフィルター16のサイズに切り抜くための打ち抜きを、予め圧延により形成した反りとは反対側(凸側)から行うことで、フィルター16のかえりを抑制することができる。すなわち、金属板51に貫通孔52を形成する前に、予め圧延によって発生させる反り量は、丸パンチ57での打ち抜きによる反り量と、1枚のフィルター16のサイズに切り抜く際の打ち抜きによる反り量とを考慮して適宜設定すればよい。もちろん、金属板51に貫通孔52を形成した際に、金属板51が予め圧延することにより形成した反りとは反対側に反ってしまった場合には、1枚のフィルター16のサイズに切り抜く打ち抜きを、丸パンチ57のパンチ方向とは反対側から行えばよい。
【0038】
なお、パンチは、上述した丸パンチ57に限定されるものではない。ここで、パンチの他の例を図8に示す。図8に示すように、パンチ71は、立方体状の本体の端面に複数本(図示例では16本)の角型の先端部73が設けられている(剣山型)。先端部73の一辺は、例えば、13μmに形成され、図8(b)に示すように、金属板51の貫通孔52の対角線の長さが約15μmにされている。なお、先端部73の形状は円形であってもよい。図8に示したパンチ71を使用することにより、一度の打ち抜きで複数(図示例では16個)の貫通孔52を形成することができる。
【0039】
また、図9に示すようにパンチ81は、矩形体状の本体82の端面に複数本(図示例では5本)の角型の先端部83が設けられている(櫛歯型)。先端部83の一辺は、図9に示したものと同様に、例えば、13μmに形成され、図9(b)に示すように、金属板51の貫通孔52の対角線の長さが約15μmにされている。なお、先端部83の形状は円形であってもよい。図9に示したパンチ81を使用することにより、一度の打ち抜きで一列に並んだ複数(図示例では5個)の貫通孔52を形成することができる。
【0040】
このような図8及び図9に示すパンチ71、81であっても、上述した実施形態1と同様に、パンチ71、81の打ち抜きによって金属板51(フィルター16)に反りが発生するが、金属板51に貫通孔52を形成する前に、予め金属板51を圧延することにより金属板51に反対方向の反りを形成しておくことで、貫通孔52を形成した際のフィルター16の反りを抑制することができる。
【0041】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、カートリッジケース11とインク供給針15との間に設けられたフィルター16について説明したが、本発明のフィルターは、インクジェット式記録ヘッド10に代表される液体噴射ヘッドに用いられたフィルターであれば、その設置場所等については特に限定されるものではない。もちろん、フィルター16は、インクジェット式記録ヘッド10以外に、インクジェット式記録装置1に代表される液体噴射装置に搭載されるものであってもよい。液体噴射装置に搭載されるフィルターとしては、例えば、インク等の液体を貯留する貯留タンクなどの貯留手段が、キャリッジ3に搭載されず、装置本体4に固定されるものにおいて、貯留手段とインクジェット式記録ヘッド10との間に設けられたフィルターなどであってもよい。
【0042】
もちろん、上述したインクジェット式記録装置1では、インクジェット式記録ヘッド10がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、インクジェット式記録ヘッド10が固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
【0043】
また、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも適用することができる。
【0044】
また、本発明は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに搭載されるフィルターの製造方法に限られず、他の装置に搭載されるフィルターの製造方法にも適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 10 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 11 カートリッジケース、 12 カートリッジ装着部、 13 インク連通路、 14 流路形成部、 15 インク供給針、 16 フィルター、 17 シール部材、 18 回路基板、 19 ヘッド部材、 20 圧電素子ユニット、 21 ヘッドケース、 22 ヘッド本体、 23 ノズル、 24 ノズルプレート、 25 圧力発生室、 26 流路形成基板、 27 振動板、 28 インク供給路、 29 窓部、 30 枠体、 31 ネジ、 51 金属板、 52 貫通孔、 54 金型装置、 55 下受けダイ、 56 ストリッパー、 57 丸パンチ、 57a 先端、 58 軟質部材、 62 打ち抜き片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチにより金属板に複数の貫通孔を設けるフィルターの製造方法であって、
軟質部材の上に載置された前記金属板にパンチを貫通させて抜き打ち片を軟質部材の内部に押し込むことで、前記金属板に前記貫通孔を穿孔する工程と、
前記貫通孔を穿孔する工程の前に、前記金属板を前記パンチの貫通方向に向かって当該パンチ側が凸となるように反らせるように圧延する工程と、を具備することを特徴とするフィルターの製造方法。
【請求項2】
前記金属板に前記貫通孔を穿孔する工程の後、前記金属板を前記パンチの貫通方向と同じ方向に打ち抜く工程をさらに具備することを特徴とするフィルターの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法によって製造されたフィルターを有することを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項4】
請求項3記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−158635(P2010−158635A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3247(P2009−3247)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】