説明

フィルターエレメントを固定するためのアダプター

本発明は、フィルターハウジング下部の底部分の円筒状受入開口部においてフィルターエレメントを固定するためのアダプターに関する。該アダプターは、非ろ液チャンバーを流体密に仕切るための、アダプター周囲の周辺溝に配置される少なくとも1つのシールを含み、フィルターの外側ジャケットを囲み、ろ過される溶液をフィルターへと供給することができ、ろ液チャンバーへののろ液をフィルターから導入することができる。シールは、周辺溝の基部領域上へ連結する方法で射出成形され、溝の少なくとも1つの側壁から一定の距離があり、該側壁は基部領域の境界を定める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルターハウジング下部の底部分の円筒状受入開口部においてフィルターエレメントを固定するためのアダプターであって、かかるアダプターは、非ろ液チャンバーの流体密の仕切りを可能とするための、アダプター周囲の周辺溝に配置される少なくとも1つのシールを含み、フィルターの外側ジャケットを囲み、ろ過される溶液をフィルターへと供給することができ、ろ液チャンバーへのろ液をフィルターから導入することができる、前記アダプターに関する。
【背景技術】
【0002】
DE 33 35 938 C1は、流体の圧力ろ過のための複数部フィルターハウジングであって、ハウジング上部およびハウジング基部を備えるハウジング底部を有し、前記ハウジング基部は、フィルターキャンドルまたはフィルターエレメントを、アダプターを介して受入れるための円筒状開口部を有し、フィルターキャンドルの外側ジャケットを囲む非ろ液チャンバーは、フィルターキャンドルが連結される中央排出口を介して、ろ液チャンバーから仕切られる、前記フィルターハウジングを開示する。フィルターキャンドルは、その縦方向の下端部に、管状アダプターが連結される中央排出口を備える流体密の環状端部キャップを有し、フィルターキャンドルは、前記管状アダプターを介して、ハウジング底部の円筒状開口部へ挿入される。フィルターキャンドルは、その流体透過性の外側ジャケットと共に、非ろ液チャンバーに位置し、ハウジング底部から離れた方向にある上縁部を有する環状端部キャップが、外側ジャケットへ流体密の移行領域を形成する。ハウジング底部の円筒状開口部におけるアダプターをシールするため、既知のアダプターは2つの並行する周辺溝を有し、それぞれにはO−リングがシールとして配置されている。
【0003】
既知のアダプターにおいて見つかった原理上の不利益は、O−リングまたはひも状シールが、別々に取り付けられる必要があることである。これは、少なくとも利用者によってはめられる不正確なシール、またはシールの1つが省略され得ることを意味する。
【0004】
DE 43 25 997 A1は、液体排出ノズル上のフィルターエレメントを固定するためのアダプターを開示する。液体排出ノズルに向けられた内部壁の上に、アダプターは、非ろ液チャンバーの流体密の仕切りのための、そこへ配置されるシールを備えた周辺溝を有し、それはフィルターの外側ジャケットを囲み、そこからろ過される溶液がろ過後にフィルターへと供給される。シールは、溝の基部表面の境界を定める少なくとも片側の壁から一定の距離がある。
【0005】
DE 43 25 997 A1の教示によると、信頼できるシールは、ろ過されて、液体フィルターを通して流れる液体によって提供されるが、それはこの液体が、フィルター挿入部を通して流れるときに生じる圧力差の結果として、低い液体圧とともに、液体フィルター部分の方向に溝の内側の封止リングを押し出すためである。この方法において、液体フィルターまたはフィルターエレメントの作業の間に、シールは、封止リングまたはシールの、低いまたは存在さえしない弾性プレテンションにもかかわらず、ここで確かめるように封止リングまたはシールが、液体排出ノズルおよびそこに隣接した溝の境界表面上に圧迫される。
【0006】
DE 43 25 997 A1の装置において、封止リングまたはシールが、端部ディスク部分の隣接位置に上向きに圧迫されることを確かめるため、ろ過される流体は、環状ギャップを通して溝の中へ流れる必要が常にあり、そのとき初めて封止が達成される。
【0007】
DE 20 2006 014 784 U1は、フィルター本体の端部を覆う端部ディスクが、有孔ディスクおよび後者に配置されるカラー(collar)によって1つに形成される、環状フィルター挿入部を開示する。カラーは、軸方向の支持表面および放射状の支持表面を有する。熱エネルギー除去のためのポケットを有する放射状封止リングは、二成分プロセス(two-component process)において、または射出成形によって、これら支持表面に適用可能である。この放射状封止リングは、軸方向の支持表面によって底部、および放射状の支持表面によって側面だけに制限され、ろ液の流出方向において、それは開放している。放射状封止リングは、端部ディスクのカラー、すなわち、アダプター内部の周囲で一体化して形成される。
【0008】
中空ポケットのため、放射状封止リングは、製造するのに非常に複雑であり、特に、材料ウェブ(web)または中空ポケット底部の破損および漏洩が結果としてそこに生じた場合、その製造の間の放射状封止リングの欠陥は、光学的に検出することが困難でしかない。
【0009】
さらに、EP 1 156 538 B1は、気密の方法で蓄電池の電池通気口を閉じるための栓の配置を開示する。密閉栓は、そこに一体化形成された環状シールとともに、その周囲に溝を有する。環状シールは、二成分射出成形プロセスで形成された。溝は、環状シールによって完全に満たされている。
【0010】
さらに、DE 10 2005 033 665 A1は、内部の周辺溝において、射出成形されたシールを有する栓のための受入部を開示する。ここにおいても、溝は封止材によって完全に満たされている。
【0011】
シールの材料で溝を完全に満たすことの不利益は、容積変形に必要な隙間を、溝の外側に作る必要があることである。
【0012】
特別な不利益は、アダプターと受入開口部との間の許容範囲を、容積変形のための隙間を作るために、変化させる必要があることである。
【0013】
さらに、DE 44 22 842 C1は、流体密となるように、弾性のある封止材を使用して一緒にはめられた、少なくとも2つの個々の部分を有するハウジングがある装置を開示する。個々の部分の少なくとも1つは、2つの材料成分を含み、1つは封止材であってシールを提供し、ここで、これら2つの材料成分の多くても1つは前成形として、または噴霧によって、封止材とともに射出成形金型の挿入部として結合させ、または、両成分は二成分射出成形金型、すなわち、2つの穴がある射出成形金型において、一緒に噴霧される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
それゆえに本発明の目的は、シールを別々に適合させることを回避可能とするように、底部分の円筒状受入開口部におけるフィルターエレメントの固定のための既知のアダプターを改善することである。さらに、新規アダプターおよび既存の受入開口部における従来の既知アダプターも使用可能とするため、アダプターと受入開口部との間の許容範囲の変化は、可能な限り避けられる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
目的は、請求項1の前文(preamble)と関連して、シールが射出成形によって、周辺溝の基部表面に連結される事実によって達成され、シールは、溝の基部表面の境界を定める少なくとも1つの側壁から一定の距離がある。
【0016】
シールが、周辺溝の基部表面に射出成形されているという事実のおかげで、別々に適合させる手間が省ける。同時に、製造業者によって販売され、目的の材料で作られた正確な封止リングが、アダプターの溝に配置されることを確実にする。シールと溝の基部表面の境界を定める少なくとも1つの側壁との間の距離は、底部分の円筒状受入開口部への挿入時に、シールの変形容積を吸収するための空間をもたらす。したがって、円筒状受入開口部およびアダプター外形との間の許容範囲の変化を避けることが可能となる。これは、本発明によるアダプターとともに新規フィルターエレメント、および既知アダプターとともに従来のフィルターエレメントを、既知フィルターハウジングまたはそれらの底部プレートの既存の円筒状開口部に挿入可能であることを意味する。
【0017】
本発明の好ましい態様によると、シールは、溝の中央に配置され、溝の基部表面の境界を定める両側壁から一定の距離がある。これは、特に、単一の溝にシールを射出成形する場合に、比較的簡単に行うことができる。好ましい態様によると、第二のシールは、第二の周辺溝における基部表面上に射出成形される。第一および第二のシールは、2つの相互に並行する溝の基部表面上に射出成形され、シールは、溝の2つの相互に向き合う内側側壁を直接支える。隔たりは、射出成形の間に、適した挿入具によって充填される。
【0018】
2つのシールが、少なくとも1つのウェブ、好ましくは3または4の軸方向に延びるウェブによって互いに連結された場合、特に有利であることが証明された。このようにして、2つの相互接続されたシールは、非ろ液チャンバーと、アダプターとともにフィルターエレメントを含むフィルターハウジングのろ液チャンバーとの間に、特に密なバリアを形成する。
【0019】
本発明の好ましい態様によると、フィルターエレメントの端部キャップ領域中の周辺溝において、第三のシールが溝の基部表面上に射出成形される。アダプターに隣接するフィルターエレメントの端部キャップ領域中の第三のシールの配置のおかげで、端部キャップを含むフィルターエレメントは、非ろ液チャンバーに実質的にデッドスペースがないように、かつ、非ろ液チャンバーに置かれるろ過される溶液のすべてが、フィルターを通してろ過され、ろ液チャンバーに運ばれるように、底部分の対応する受入開口部中に挿入することができる。
【0020】
本発明の好ましい態様によると、シールは、熱可塑性エラストマー、熱可塑性ウレタン、またはシリコーンで作られる。
【0021】
本発明の好ましい態様によると、アダプターは封入された補強リングを備える本体を有する。アダプターは、好ましくはフィルターエレメントの端部キャップに接合される。しかしながら、端部キャップ上に一体化して形成することもできる。
【0022】
本発明のさらなる特徴は、続く詳細な記載、および本発明の好ましい態様が例示によって図解される添付図面から明確になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図において:
【図1】図1は、2つの並行するシールを有するアダプターの断面における側面図を示す。
【図2】図2は、図1のアダプターの側面図を示す。
【図3】図3は、端部キャップおよびアダプターを有し、フィルターハウジングの(破線で示される)底部プレートを有する、フィルターエレメントの側面図を示す。
【図4】図4は、フィルターエレメントの端部キャップの溝における第三のシールを有する、別のフィルターエレメントの側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
アダプター1は、基本的に、本体2、周辺溝3およびシール4を含む。
【0025】
周辺の第一の溝3と並行して、周辺の第二の溝5が、アダプター1の本体2に配置される。周辺溝3、5はそれぞれ、基部表面6、第一の周辺溝における基部表面6上に射出成形されるシール4、および第二の周辺溝における基部表面6上に射出成形される第二のシール7を有する。シール4、7は、その内側表面8、9が、隣接する溝3、5の内側側壁10、11上に直接位置しており、または射出成形によって側壁10、11と連結している。シール4、7の内側表面8、9から離れた方向にある外側表面14、15は、内側側壁10、11から離れた方向にある外側側壁12、13からそれぞれ一定の距離16、17があり、その距離16、17は、アダプター1が底部分19の円筒状開口部18の中へ挿入された場合、シール4、7の変形容積を吸収するための空間を提供する。
【0026】
シール4、7は、ウェブ20によって互いに連結される。ウェブ20の1つは、射出点21として使用することができる。しかしながら、射出点23とともに追加ウェブ22を提供することもできる。
【0027】
図3によると、アダプター1は、フィルターエレメント25の下側の端部キャップ24の中へ挿入され、そこへ接合される。しかしながら、図4に示される例示の実施態様によると、アダプター1’は、フィルターエレメント25’の下側の端部キャップ24’上に一体化して形成することもできる。
【0028】
図4における例示の実施態様によると、下側の端部キャップ24’は、その周囲に第三の周辺溝26を有し、前記溝の基部表面27上には、その側面29、30が、第三の溝26の側壁32、33からそれぞれ一定の距離31となるように、第三のシール28が中央に射出成形される。
【0029】
アダプター1、1’を製造するための道具(図示されていない)は、例えば、固定された工具部分内の2つの空洞および可動式工具部分上の回転式工具プレートからなる。各射出作業の後、工具は開き、回転式工具プレートは、第一の空洞に作られたプラスチック部分を、第二の空洞正面の位置へ運ぶ。これは、次に続く方法の工程を含む。
a)補強リング34が、第一の空洞にはめられる、
b)工具が閉じる、
c)本体2が、第一の空洞中の補強リング34の周りに射出される、
d)工具が開く、
e)工具プレートが回転し、本体2が第二の空洞へ運ばれる、
f)補強リング34が、第一の空洞へはめられる、
g)工具が閉じる、
h)本体2が、第一の空洞中の補強リング34の周りに射出され、シール4、7が、第二の空洞中のアダプター1上に射出される、
i)工具が開く、
j)第二の空洞に作られたアダプター1が、取り除かれる、
k)工具プレートが回転する、
a)補強リング34が、再び第一の空洞にはめられる、
b)工具が閉じ、工程c)からk)が繰り返される。
当然、工具は、固定工具半分において3またはそれ以上の空洞および可動式工具半分の回転式工具プレートからなることもできる。
【0030】
各射出作業の後、工具は開き、回転式工具プレートは、第一の空洞に作られたプラスチック部分を、第二の空洞正面の位置へ運び、第二の空洞に作られたプラスチック部分を、第三の空洞正面の位置へ運ぶ。
【0031】
当然、説明において検討され、および図によって示された態様は、本発明の例示的態様にすぎない。本願明細書の開示を考慮すると、可能な変化が広範囲であることが、当業者には明白である。
【0032】
例えば、シール4、7、28は、基部表面6、27から離れる側に、凸状である。しかしながら、原則として、それらは他の形を有することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルターハウジング下部の底部分(19)の円筒状受入開口部(18)においてフィルターエレメント(25、25’)を固定するためのアダプター(1、1’)であって、
該アダプターは、非ろ液チャンバーの流体密の仕切りを可能とするための、アダプター周囲の周辺溝(3、5)に配置される少なくとも1つのシール(4、7)を含み、フィルターの外側ジャケットを囲み、ろ過される溶液をフィルターへと供給することができ、ろ液チャンバーへのろ液をフィルターから導入することができ、
シール(4、7、28)は、射出成形によって周辺溝(3、5、26)の基部表面(6)に連結され、シール(4、7、28)が、溝(3)の基部表面(6)の境界を定める少なくとも1つの側壁(12、13、32、33)から一定の距離(16、17、31)があることを特徴とする、前記アダプター。
【請求項2】
シール(28)が溝(26)の中央に配置され、溝(3)の基部表面(6)の境界を定める両側壁(32、33)から一定の距離(31)があることを特徴とする、請求項1に記載のアダプター。
【請求項3】
第二のシール(7)が、第二の周辺溝(5)における基部表面(6)上に射出成形されることを特徴とする、請求項1または2に記載のアダプター。
【請求項4】
2つのシール(4、7)が、相互に並行する溝(3、5)に配置され、シール(4、7)が、溝(3、5)の2つの相互に向き合う内側の側壁(10、11)に接していることを特徴とする、請求項3に記載のアダプター。
【請求項5】
2つのシール(4、7)が、軸方向に延びる少なくとも1つのウェブ(20)によって互いに連結されることを特徴とする、請求項4に記載のアダプター。
【請求項6】
2つのシール(4、7)が、軸方向に延びる2つのウェブ(20)によって互いに連結されることを特徴とする、請求項5に記載のアダプター。
【請求項7】
第三のシール(28)が、フィルターエレメント(25’)の端部キャップ(24’)領域中の周辺溝(26)において、溝(26)の基部表面(6)上に射出成形されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のアダプター。
【請求項8】
シール(4、7、28)が、熱可塑性エラストマー、熱可塑性ウレタン、またはシリコーンで作られることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のアダプター。
【請求項9】
アダプター(1、1’)が、封入された補強リング(34)を備える本体(2)を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のアダプター。
【請求項10】
アダプター(1、1’)が、フィルターエレメント(25、25’)の端部キャップ(24、24’)に接合され、または端部キャップ(24、24’)上に一体化して形成される、請求項1〜9のいずれか一項に記載のアダプター。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2011−526201(P2011−526201A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515142(P2011−515142)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003759
【国際公開番号】WO2010/000356
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(507266912)ザトーリウス ステディム ビオテーク ゲーエムベーハー (10)