説明

フィルターダクト及び空調システム

【課題】フィルターダクトの粒子捕集性能を確保すると共に、一層の軽量化と形状安定性の向上を図る。
【解決手段】フィルターダクトは、気体が流入する開口部を備えた袋状の繊維配列積層体101を有し、開口部から内部に流入した気体が繊維配列積層体101を通して外部に流出するようにされている。繊維配列積層体は、繊維103A〜103Dが一方向に略直線状に配列した繊維配列層101A〜101Dを複数枚積層して形成され、一部の繊維配列層101A,101Cと他の繊維配列層101B,101Dは、繊維の延伸方向105A〜105Dが互いに直交するように積層されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルターダクト及び空調システムに関し、特にフィルターダクトの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フィルターダクトまたはソックフィルターと呼ばれるフィルターが知られている。フィルターダクトとは、薄い濾材を一端が開口し他端が閉止した細長い袋状に成形したフィルターである。フィルターダクトの開口部は、給気チャンバ、ダクト等を介して、ファン、ブロア等の給気手段に接続されている。給気手段から所定の風量が供給されると、濾材の圧力損失によってフィルターダクトの内圧が外部圧力よりも高くなる。この結果、フィルターダクトは膨張して管状の形状を呈し、その形状を保持する。本明細書では、このように、フィルターダクトが内圧によって自身の形状を保持する機能を形状保持機能という。空気は濾材で濾過され、塵埃が除去されたクリーンな空気が周辺に供給される。このようなフィルターは従来の金属ダクト等のように空気の吹き出し口が限定されておらず、フィルターの外面全体から一様に空気が供給されるので、空気を均等に、むらなく、かつ低流速で供給できるという長所がある。このため、フィルターダクトは食品加工工場を中心に、病院、図書館、半導体工場等の多くの設備において、空調システムの一部として用いられている。
【0003】
従来は、フィルターダクトの濾材として織物が使用されていたが、粒子捕集性能を確保するために厚くて重い構成になる。そこで、メルトブロー不織布とスパンボンド不織布とを積層した濾材から構成されるフィルターダクトが提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−272316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィルターダクトは、内圧によって自身の形状を保持し、それによって外部との接触面積、すなわち空気の流出面積を確保している。従って、形状保持機能は空気の流出面積を確保するための本質的な機能である。しかし、フィルターダクトの重量が大きすぎると、自重に打ち勝って形状保持機能を維持するためにかなりの内圧を与える必要があり、ファン動力の増加による運転コストの増加や、フィルターダクトの早期劣化につながる。特許文献1に記載されたフィルターダクトは不織布を濾材として用いているが、繊維が屈曲していたり、ランダムな方向を向いていたり等の理由によって、目付(単位面積当たりの重量)が大きくなりやすく、軽量化には必ずしも最適とはいえない。また、繊維が屈曲しているため、内圧を受けたときに繊維が伸びやすく、その結果フィルターダクト自体の外径や長さが変動しやすい。フィルターダクトは通常サポートによって支持されているため、外径や長さが変化するとサポートとの間に相対変位が生じ、破損の原因となる。
【0005】
本発明は、粒子捕集性能を確保すると共に、一層の軽量化と形状安定性の向上を図ったフィルターダクト、及びかかるフィルターダクトを用いた空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のフィルターダクトは、気体が流入する開口部を備えた袋状の繊維配列積層体を有し、開口部から内部に流入した気体が繊維配列積層体を通して外部に流出するようにされている。繊維配列積層体は、繊維が一方向に略直線状に配列した繊維配列層を複数枚積層して形成され、一部の繊維配列層と他の繊維配列層は、繊維の延伸方向が互いに直交するように積層されている。
【0007】
このような繊維配列積層体は繊維配列層の重量が小さく、軽量化に好適である。また、繊維の延伸方向が互いに直交するように積層されているので、繊維の交差によって生じる開口の面積を調整することが容易である。開口の面積はそれを通過できる粒子の大きさと密接に関連するため、繊維の粒径や配列ピッチを調整することによって、所望の粒子捕集性能を容易に実現できる。さらに、繊維が屈曲している従来の不織布と異なり、繊維が直線状に配列しているので、フィルターダクトの内圧が上昇したときの繊維の伸びが抑制され、優れた形状安定性を発揮する。
【0008】
本発明の空調システムは上述のフィルターダクトと、開口部に接続された給気手段と、を有している。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明によれば、粒子捕集性能を確保すると共に、一層の軽量化と形状安定性の向上を図ったフィルターダクト、及びかかるフィルターダクトを用いた空調システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明のフィルターダクト及び空調システムを詳細に説明する。第1図は、本発明の空調システムの一実施形態を示す概念図である。同図(a)は、空調設備が配置された建物の平面図を、同図(b)は同図(a)中、b−b線に沿った断面図を、同図(c)はフィルターダクト及び給気チャンバの斜視図を示す。空調システム1は、空間2を空調の対象としている。空間2の天井14付近には複数のフィルターダクト3a〜3dが配置されている。後述するように、各フィルターダクト3a〜3dは細長い袋状の形状の繊維配列積層体101から構成され、内部を空気によって加圧すると細長い管状の形状を呈する。空気は繊維配列積層体101を通して外部に流出するようにされている。フィルターダクト3a〜3d(袋状の繊維配列積層体101)の一端は開口部4a〜4dとなっており、他端は閉止部5a〜5dとなっている。フィルターダクト3a〜3dは、開口部4a〜4dを介して給気チャンバ6に接続されている。給気チャンバ6はダクト8を介して隣接する空間9に設けられた、給気手段であるファン7に接続されている。空間9には空気取り入れ口10が設けられ、外部から空気を導入する。空気取り入れ口10は、ダクト11を介して、空気の温度調整及び湿度調整を行うファンコイルユニット12に接続され、ファンコイルユニット12はファン7に接続されている。空間2には空気排出口13a,13bが設けられている。
【0011】
空気取り入れ口10から取り込まれた空気は、ファンコイルユニット12で適切な温度及び湿度に調整され、ファン7によって給気チャンバ6に送られ、開口部4a〜4dを通ってフィルターダクト3a〜3dの内部に送られる。フィルターダクト3a〜3dから空間2内に供給された空気は空気排出口13a、13bから外部に排出される。図1(c)に示すように、フィルターダクト3a〜3dは内圧によって膨張し、上述の形状保持機能によってほぼ水平方向に延びた形状を維持する。従って、作動時にはサポートが無くても問題はないが、非作動時には内部の空気が抜け、形状保持機能が失われる。そこで、非作動時のフィルターダクト3a〜3dの垂れ下がりを防止するため、数箇所に設けられた吊り具15を介して、天井14付近に設けたビーム16で水平に保持されている。
【0012】
図2は、フィルターダクトを構成する繊維配列積層体の部分分解斜視図である。繊維配列層はやや湾曲して描かれており、図中左右方向がフィルターダクトの円周方向、図中手前−奥行き方向がフィルターダクトの長軸方向である。繊維積層体101は、繊維が一方向に配列した繊維配列層が複数枚積層されて形成されている。図では4枚の繊維配列層102A,102B,102C,102Dを示しているが、積層する枚数は用途に応じて適宜定めることができる。繊維配列層102A,102B,102C,102Dは互いに熱圧着されて、全体として一つの繊維積層体101を形成している。
【0013】
図3は、繊維配列層の一部を拡大して示す部分斜視図である。同図には繊維配列層102A,102Bだけが示されているが、他の繊維配列層も同様の構成となっている。図示するように、繊維配列層102Aは、互いに平行にかつ直線状に延びる多数の連続長繊維103Aの集合体である。同様に、繊維配列層102Bは、互いに平行にかつ直線状に延びる多数の連続長繊維103Bの集合体である。直交する繊維配列層102A,102Bによって隙間106が形成されている。隙間106は空気の通過部として機能し、隙間106より大きな粒子は繊維積層体101に捕捉される。繊維103A,103Bは途中で折り畳まれたり、2層以上積層されたりしている場合もある。繊維配列層102Aは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン、フッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂およびこれらの変性樹脂から作成することができる。ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂等の湿式または乾式の紡糸手段による樹脂も使用することができる。繊維配列層102Bも同様である。各繊維103A,103Bの直径は例えば10μm程度であるが、紡糸条件を変えることによって任意の直径の繊維を作ることができる。このため、粒子捕集性能の調整が容易である。繊維配列層102A,102Bは、繊維配列層102Aの繊維103Aの延伸方向105Aと繊維配列層102Bの繊維103Bの延伸方向105Bとが互いに直交するように積層されている。繊維配列層102Cの繊維103Cの延伸方向105Cは繊維配列層102Bの繊維103Bの延伸方向105Bと直交している。同様に、繊維配列層102Dの繊維103Dの延伸方向105Dは繊維配列層102Cの繊維103Cの延伸方向105Cと直交している。繊維配列層の繊維の向きは隣接する繊維配列層同士で互いに直交している必要はなく、同じ延伸方向を持つ2枚またはそれ以上の繊維配列層が連続して設けられていてもよい。
【0014】
各繊維配列層102A,102B,102C,102Dの繊維103A,103B,103C,103Dは延伸方向105A,105B,105C,105D以外の向きに屈曲したり、ランダムな方向を向いていたりすることがなく、極めて高い直線性と方向性を備えている。従って、繊維の延伸方向に引張り力が加わっても繊維の伸びはほとんど生じない。これに対して、繊維の延伸方向と直交する方向の引張り力に対してはほとんど抵抗力が生じないため、各繊維配列層102A,102B,102C,102Dが単独で設けられている場合には、これらの繊維配列層は自由に変形する。例えば、繊維配列層102Aが単独で設けられている場合、延伸方向105Aの引張り力に対してはほとんど変形しないが、延伸方向105Aと直交する方向の引張り力に対しては自由に変形する。本実施形態では、繊維配列層102A,102B,102C,102Dが積層して設けられ、繊維配列層102A,102Cの繊維103A,103Cは各々延伸方向105A、105C(以下、総称して第1の方向S1という。)を向いて延び、繊維配列層102B,102Dの繊維103B,103Dは各々延伸方向105B,105D(以下、総称して第2の方向S2という。第2の方向S2は第1の方向S1と直交している。)を向いて延びている。このように繊維配列層を繊維の延伸方向が互いに直交するように積層することによって、どの方向からの引張り力に対しても大きな強度と耐変形性が生じる。
【0015】
表1は、いくつかの実施例における目付とフラジール通気度の対応を示す表である。フラジール通気度と粒子捕集性能はほぼ反比例の関係にあり、フラジール通気度は粒子捕集性能を示す一つの指標として用いることができる。各実施例では、目付は10〜40g/m2の範囲にあり、これに対応する繊維配列積層体のフラジール通気度は50〜500cm3/cm2・秒の範囲にある。目付が小さいほど繊維配列積層体の圧力損失が減少し、フラジール通気度は増加する。従って、細かい粒径の粒子を捕捉する場合には、より目付の大きい繊維配列積層体を用いることが望ましい。
【0016】
【表1】

【0017】
上述したように、本実施形態の繊維配列積層体では、直線状に延びる連続長繊維を延伸方向が互いに直交するように積層している。このような特性から、以下のメリットが得られる。
【0018】
(1)本実施形態の繊維配列積層体は、強度及び粒子捕集性能を確保しつつ軽量化を図ることが容易である。すなわち、従来技術のフィルターダクトでは繊維がランダムに屈曲しており、引張り力を受けても変形するだけで張力を生じない繊維が多く含まれていた。すなわち、引張り力を有効に負担することができる繊維が限られていた。これに対して、本実施形態では繊維は直線状に延伸しているので、各繊維が引張り力を有効に負担することができる。これは、少ない繊維量(目付)で同程度の引張り力に耐えられること、すなわち、同一の強度を確保しながら軽量化を図ることが容易であることを意味する。また、従来技術のフィルターダクトでは、繊維が複雑に交絡することによって所望の粒子捕集性能を確保していたが、本実施形態では、繊維が互いに直交することによって粒子の通過を阻止する隙間106(図3参照)、すなわち「目」を作っている。このため、粒子の捕捉部を極めて効率的に形成することができる。
【0019】
メルトブロー不織布をスパンボンド不織布で補強した従来のフィルターダクトの場合、捕集層であるメルトブロー不織布について100g/m2程度の目付けのものを、補強層であるスパンボンド不織布として40g/m2程度の目付のものを用いることが、一例として考えられる。この場合、総目付は140g/m2にもなる。粒子捕集性能を示す指標としてフラジール通気度を用いると、本実施形態では、10〜20g/m2の目付で同程度のフラジール通気度を得ることができ、従来技術に比べて約1/10に軽量化することが可能である。
【0020】
フィルターダクトの軽量化は、具体的には以下のメリットを生じる。まず、フィルターダクトには、形状保持機能を実現するためにある程度の内圧を付与する必要がある。本実施形態のフィルターダクトは軽量構造であるため、小さな内圧でもフィルターダクトの自重に打ち勝てるため、形状保持機能の実現が容易である。これはファン等の動力費の低減(運転コストの低減)やフィルターダクトの長寿命化につながる。次に、クリーンルーム、セミクリーンルーム等の環境でフィルターダクトを用いる場合、常に高い性能が要求されるため、繊維配列積層体を頻繁に交換する必要がある。本実施形態のフィルターダクトは、軽量であるため交換作業が容易である。使用済みの繊維配列積層体を廃棄する場合にも、軽量であることから廃棄物の減量化につながる。さらに、本実施形態の繊維配列積層体は繊維が整列しているために嵩薄く折り畳みやすいという特徴があり、減量だけでなく減容化にも有利である。
【0021】
(2)本実施形態の繊維配列積層体は寸法安定性に優れている。従来構造では繊維の屈曲部が多く、引張り力を受けることによって屈曲部が直線状に変形しようとするため、フィルターダクト自体も大きく変形する可能性があった。これに対して、本実施形態では繊維は直線状に延伸しているので、繊維が伸びる余地が少なく、高い寸法安定性を示す。このため、運転中にフィルターダクトが過大に変形することがなく、サポート(吊り具15)との相対変位が抑えられ、フィルターダクトやサポートの破損防止に寄与する。
【0022】
(3)本実施形態の繊維配列積層体は繊維の切片屑による汚染が少ない。従来の不織布を用いたフィルターダクトでは、繊維が実質的に寸断されたメルトブロー不織布を用いるため、繊維の切片屑がフィルターダクトから飛散するという問題があった。しかし、本実施形態の連続長繊維からなる繊維配列積層体はこうした切片屑が発生しないため、特にこうした切片屑の発生を嫌うクリーンルーム、セミクリーンルーム向けのフィルターダクトとして優れている。
【0023】
このように、本実施形態のフィルターダクトは様々なメリットを有しているが、さらに繊維配列積層体自体に抗菌、防カビ、防臭などの加工を施すこともできる。
【0024】
次に、以上説明した繊維積層体の製造方法について説明する。図4は、繊維配列層の作成に用いられる製造装置の概略図を示す。繊維配列層製造装置21は、主にメルトブローンダイス24とコンベア25とで構成される紡糸ユニット22と、延伸シリンダ26a,26b、引取ニップローラ27a,27b等で構成される延伸ユニット23と、を有している。メルトブローンダイス24は、先端(下端)に、紙面に対して垂直な方向に並べられた多数のノズル28を有している(図では1つのみ表示している。)。ギアポンプ(図示せず)から送入された溶融樹脂30がノズル28から押出されることで、多数の繊維31が形成される。各ノズル28の両側にはそれぞれエアー溜32a,32bが設けられている。樹脂の融点以上に加熱された高圧加熱エアーは、これらエアー溜32a,32bに送入され、エアー溜32a,32bと連通してメルトブローンダイス24の先端に開口するスリット33a,33bから噴出される。これにより、ノズル28から押出される繊維31の押出し方向とほぼ平行な高速気流が生じる。この高速気流により、ノズル28から押出された繊維31はドラフト可能な溶融状態に維持され、高速気流の摩擦力により繊維31にドラフトが与えられ、繊維31が細径化される。高速気流の温度は、繊維31の紡糸温度よりも80℃以上、望ましくは120℃以上高くする。メルトブローンダイス24を用いて繊維31を形成する方法では、高速気流の温度を高くすることにより、ノズル28から押出された直後の繊維31の温度を繊維31の融点よりも十分に高くすることができるため、繊維31の分子配向を小さくすることができる。
【0025】
メルトブローンダイス24の下方にはコンベア25が配置されている。コンベア25は、駆動源(図示せず)により回転されるコンベアローラ29やその他のローラに掛け回されており、コンベアローラ13の回転によりコンベア25を駆動することで、ノズル28から押出された繊維31は図示右方向へ搬送される。
【0026】
繊維31は、ノズル28の両側のスリット33a,33bから噴出された高圧加熱エアーが合流した流れである高速気流に沿って流れる。高速気流は、スリット33a,33bから噴出された高圧加熱エアーが合流して、コンベア25の搬送面とほぼ垂直な方向に流れる。
【0027】
メルトブローンダイス24とコンベア25との間には、スプレーノズル35が設けられている。スプレーノズル35は、高速気流中へ霧状の水を噴霧するもので、これにより繊維31が冷却され、急速に凝固される。スプレーノズル35bは実際には複数個設置されるが、図4では1個のみを示している。スプレーノズル35から噴射される流体は、繊維31を冷却することができるものであれば必ずしも水分等を含む必要はなく、冷エアーであってもよい。
【0028】
メルトブローンダイス24の近傍の、スリット33a,33bによる高速気流が発生している領域には、楕円柱状の気流振動機構34が設けられている。気流振動機構34は、コンベア25上での繊維31の搬送方向Dとほぼ直交した、すなわち製造すべき繊維配列層の幅方向とほぼ平行に配置された軸34aの周りを、矢印A方向に回転させられる。一般に、気体や液体の高速噴流近傍に壁が存在しているとき、噴流は壁面に沿った方向の近くを流れる傾向があり、これはコアンダ効果といわれる。気流振動機構34は、このコアンダ効果を利用して繊維31の流れの向きを変える。図4の場合、気流振動機構34の楕円形の長軸が高速気流の向き(図面の上下方向)に一致するとき、繊維31はコンベア25に向けてほぼ鉛直に落下する。気流振動機構34が軸34aの周りを90度回転し、気流振動機構34の楕円形の長軸が高速気流の向きと直交するとき、繊維31はコンベア25の搬送方向D(図中右側)に偏位し、偏位量はこのときが最大となる。さらに気流振動機構34が軸34aの周りを回転すると、繊維31のコンベア25への落下位置は搬送方向Dに対して前後方向に周期運動する。すなわち、凝固した繊維31は、縦方向に振られながらコンベア25上に集積し、縦方向に部分的に折り畳まれて連続的に捕集され、連続長繊維が形成される。
【0029】
コンベア25上に捕集された繊維31は、コンベア25により搬送方向Dに搬送され、延伸温度に加熱された延伸シリンダ26aと押えローラ36とにニップされ、延伸シリンダ26bに移される。その後、繊維31は、延伸シリンダ26bと押えゴムローラ37とにニップされて延伸シリンダ26bに移され、2つの延伸シリンダ26a,26bに密着される。このように繊維31が延伸シリンダ26a,26bに密着しながら送られることで、繊維31は、縦方向に部分的に折り畳まれた状態のまま、隣接する繊維31同士が融着したウェブとなる。
【0030】
延伸シリンダ26a,26bに密着して送られることにより得られたウェブは、さらに、引取ニップローラ27a,27b(後段の引取ニップローラ27bはゴム製)で引き取られる。引取ニップローラ27a,27bの周速は延伸シリンダ26a,26bの周速よりも大きく、これによりウェブは縦方向に延伸され、縦延伸繊維配列層38となる。このように、紡糸したウェブを縦方向に延伸することにより、フィラメントの配列性をさらに向上することができる。繊維31が十分に急冷されることによって、延伸応力が小さく伸度が大きい繊維31が形成される。これは、上述したようにスプレーノズル35から霧状の水を噴霧し、高速気流に霧状の液体を含ませることによって実現される。以上述べた方法で形成された繊維配列層は、繊維の向きが一方向に揃えられている。
【0031】
このようにして製造した繊維配列層を、繊維の方向が互いに直交するように順次積層し熱圧着することによって上述した繊維配列積層体が完成する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の空調システムの一実施形態を示す概念図である。
【図2】フィルターダクトを構成する繊維配列積層体の部分分解斜視図である。
【図3】繊維配列層の一部を拡大して示す部分斜視図である。
【図4】繊維配列層の作成に用いられる製造装置の概略図である。
【符号の説明】
【0033】
1 空調システム
2,9 空間
3a〜3d フィルターダクト
4a〜4d 開口部
5a〜5d 閉止部
6 給気チャンバ
7 ファン
8,11 ダクト
10 空気取り入れ口
12 ファンコイルユニット
13a,13b 空気排出口
101 繊維積層体
102A,102B,102C,102D 繊維配列層
103A、103B、103C,103D 繊維
105A,105B,105C、105D 延伸方向
106 隙間
S1 第1の方向
S2 第2の方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体が流入する開口部を備えた袋状の繊維配列積層体を有し、
前記開口部から内部に流入した気体が前記繊維配列積層体を通して外部に流出するようにされ、
前記繊維配列積層体は、繊維が一方向に略直線状に配列した繊維配列層を複数枚積層して形成され、一部の前記繊維配列層と他の前記繊維配列層は、前記繊維の延伸方向が互いに直交するように積層されている、
フィルターダクト。
【請求項2】
前記繊維配列積層体のフラジール通気度は50〜500cm3/cm2・秒の範囲にあり、目付は10〜40g/m2の範囲にある、請求項1に記載のフィルターダクト。
【請求項3】
前記内部を前記気体によって加圧したときに細長い管状の形状を呈する、請求項1または2に記載のフィルターダクト。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のフィルターダクトと、
前記開口部に接続された給気手段と、
を有する、空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−41879(P2009−41879A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209397(P2007−209397)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(591089800)日本メディカルプロダクツ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】