説明

フィルターユニット、液体噴射装置、及び、気泡除去方法

【課題】フィルターユニット内の液体からの気泡除去性を改善すること。
【解決手段】液体が通過する空間部であって、軸方向に対して交差する方向に切った外周の断面形状が円形又は多角形である空間部と、前記空間部の前記軸方向における一端側の面に設けられたフィルターと、前記空間部の前記軸方向における他端側の面に設けられ、前記空間部の前記一端側の面の中央部に向かって突出した突出部材と、前記空間部の側周面の接線方向から前記空間部に液体を流入させる流入路と、前記フィルターを通過させて前記空間部から液体を流出させる流出路と、を備えるフィルターユニットである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルターユニット、液体噴射装置、及び、気泡除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置の一例として、ヘッドに設けられたノズルからインク(液体)を噴射させるインクジェットプリンター(以下、プリンター)が知られている。このようなプリンターでは、ノズルと連通し且つインクが充填されたインク室内のインクを加圧することによって、ノズルからインクが噴射される。そのため、ヘッド内のインクに気泡が混入していると、インクを適切に加圧することができずに噴射不良などが起こってしまう。
【0003】
そこで、インクに混入した気泡を印刷モード時に捕捉するためのフィルターをヘッド内に設け、メンテナンスモード時に気泡がフィルターを通過するようにして、気泡をヘッド外に排出するプリンターがある。更に、メンテナンスモード時に気泡がフィルターを通過し易いように、気泡がフィルターに当接してフィルターの一定領域を閉塞する状態を維持するための気泡係止手段を備えたプリンターが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−313703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、微小な気泡は、インクの流れに乗り難く、また、浮力により上昇してしまうとフィルターに当接し難いため、メンテナンスモード時に微小な気泡がフィルターを通過できずにフィルターユニット内に残留する問題があった。特に、ヘッド内のインクを加圧することによってノズルからインクを噴射させるメンテナンスを実行する場合には、気泡が圧縮されて小さくなってしまうため、フィルターユニット内に気泡がより残留してしまう。
【0006】
そこで、本発明では、フィルターユニット内の液体(インク)からの気泡除去性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する為の主たる発明は、液体が通過する空間部であって、軸方向に対して交差する方向に切った外周の断面形状が円形又は多角形である空間部と、前記空間部の前記軸方向における一端側の面に設けられたフィルターと、前記空間部の前記軸方向における他端側の面に設けられ、前記空間部の前記一端側の面の中央部に向かって突出した突出部材と、前記空間部の側周面の接線方向から前記空間部に液体を流入させる流入路と、前記フィルターを通過させて前記空間部から液体を流出させる流出路と、を備えるフィルターユニットである。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1Aはプリンターの全体構成ブロック図であり、図1Bはプリンターの概略断面図である。
【図2】インクの供給経路を説明する図である。
【図3】図3Aはフィルターユニットの構成を説明する図であり、図3Bはフィルターユニットを通過するインクの流れを説明する図である。
【図4】図4Aは印刷モード時におけるインク及び気泡の流れを説明する図であり、図4Bはメンテナンスモード時におけるインク及び気泡の流れを説明する図である。
【図5】図5A及び図5Bは比較例のフィルターユニットを説明する図である。
【図6】突出部の傾斜角を説明する図である。
【図7】変形例のフィルター室を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
【0010】
即ち、液体が通過する空間部であって、軸方向に対して交差する方向に切った外周の断面形状が円形又は多角形である空間部と、前記空間部の前記軸方向における一端側の面に設けられたフィルターと、前記空間部の前記軸方向における他端側の面に設けられ、前記空間部の前記一端側の面の中央部に向かって突出した突出部材と、前記空間部の側周面の接線方向から前記空間部に液体を流入させる流入路と、前記フィルターを通過させて前記空間部から液体を流出させる流出路と、を備えるフィルターユニットである。
このようなフィルターユニットによれば、空間部に流入する液体の流速を調整して、空間部内に液体の旋回流を発生させることで、遠心力により気泡を空間部の中央部に向かわせつつ、突出部材により気泡をフィルターに向かわせることができるため、より多くの気泡をフィルターの下流側に流出させることができる。従って、フィルターユニット内の液体からの気泡除去性を改善することができる。
【0011】
かかるフィルターユニットであって、前記突出部材は、前記空間部の前記軸方向における前記一端側を頂部とする円錐形状であるフィルターユニットである。
このようなフィルターユニットによれば、気泡をスムーズにフィルターに向かわせることができ、また、突出部材での気泡の滞留を防止できるため、より多くの気泡をフィルターの下流側に流出させることができる。
【0012】
かかるフィルターユニットであって、前記突出部材の頂部が前記フィルターに当接しているフィルターユニットである。
このようなフィルターユニットによれば、突出部材とフィルターの間隔がより狭くなるため、微小な気泡もフィルターに当接させることができ、また、突出部材とフィルターとの間での気泡の滞留を防止できるため、より多くの気泡をフィルターの下流側に流出させることができる。
【0013】
また、前記フィルターユニットと、液体を貯留する液体貯留部と、液体を噴射可能なノズルが設けられたヘッドと、を備え、前記フィルターユニットは、前記液体貯留部と前記ノズルとの間に設けられ、液体に含まれる気泡を前記フィルターの下流側に流出させない流速で前記流入路から前記空間部に液体を流入させる第1のモードと、液体に含まれる気泡を前記フィルターの下流側に流出させる流速で前記流入路から前記空間部に液体を流入させる第2のモードと、を備える液体噴射装置である。
このような液体噴射装置によれば、気泡によりヘッド内の液体が適正に加圧されなかったり、気泡によりヘッドへの液体供給が妨げられたりすることを防止できるため、ノズルからの液体噴射不良を防止することができる。
【0014】
かかる液体噴射装置であって、前記第2のモードにおいて液体に加えられる動圧は、液体に含まれる気泡が前記フィルターを通過可能な圧力であること。
このような液体噴射装置によれば、第2のモード時に気泡をフィルターの下流側に流出させることができる。
【0015】
かかる液体噴射装置であって、前記第2のモードでは、前記液体貯留部から前記ヘッド内へ液体を圧送して前記ヘッド内の液体を加圧することで、前記ノズルから液体を噴射させること。
このような液体噴射装置によれば、気泡が小さくなりフィルターを通過し難くなる場合であっても、フィルターユニット内の液体からの気泡除去性を改善することができる。
【0016】
また、前記第2のモードを実行することによって、前記フィルターユニット内の液体に含まれる気泡を除去する気泡除去方法である。
このような気泡除去方法によれば、空間部内に液体の旋回流を発生させることで、遠心力により気泡を空間部の中央部に向かわせつつ、突出部材により気泡をフィルターに向かわせることができるため、より多くの気泡をフィルターの下流側に流出させることができる。従って、フィルターユニット内の液体からの気泡除去性を改善することができる。
【0017】
===印刷システム===
「液体噴射装置」をインクジェットプリンター(以下、プリンター)とし、プリンターとコンピューターが接続された印刷システムを例に挙げて、実施形態を説明する。
図1Aは、プリンター1の全体構成ブロック図であり、図1Bは、プリンター1の概略断面図である。図2は、インクの供給経路を説明する図である。
【0018】
コンピューター60は、プリンター1と通信可能に接続されており、プリンター1に画像を印刷させるための印刷データをプリンター1に出力する。
【0019】
プリンター1内のコントローラー10は、プリンター1における全体的な制御を行うためのものである。インターフェース部11は、外部装置であるコンピューター60との間でデータの送受信を行う。CPU12は、プリンター1の全体的な制御を行うための演算処理装置であり、ユニット制御回路14を介して各ユニットを制御する。メモリー13は、CPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。また、プリンター1内の状況を検出器群50が監視し、コントローラー10はその検出結果に基づいて各ユニットを制御する。
【0020】
搬送ユニット20は、用紙、布、フィルム等の被記録媒体(以下、媒体S)を搬送方向の上流側から下流側へ搬送するためのものである。媒体Sは、図1Bに示すように、搬送ローラー21A,21Bによって回転する搬送ベルト22上を、ヘッドユニット30の下面と対向しながら停まることなく一定の速度で搬送される。
【0021】
ヘッドユニット30は、対向する媒体Sに向けてノズルからインクを噴射するためのものである。ヘッドユニット30の下面には、4個のヘッド31(1)〜31(4)が搬送方向と交差する紙幅方向に並んで設けられている。各ヘッド31の下面には、インクを噴射可能なノズル開口が設けられている。従って、ヘッドユニット30の下を搬送方向に移動する媒体Sに向けてノズルからインクが噴射されることで、搬送方向に沿う複数のドット列が紙幅方向に並んだ2次元の画像が印刷される。
【0022】
各ヘッド31は、図2に示すように、ノズルNzと、ノズルNz毎に設けられ且つ各ノズルNzと連通するインク室311と、複数のインク室311に連通する共通インク室312と、フィルターユニット70と、を有する。フィルターユニット70は、共通インク室312よりもインク供給経路における上流側に設けられ、印刷モード時に気泡や異物(増粘インクやゴミ等)が共通インク室312へ流れていってしまうことを防止するためのものである(詳細は後述)。
【0023】
なお、ノズルからのインク噴射方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけてノズルと連通するインク室311を膨張・収縮させることによりインクを噴射させるピエゾ方式でもよいし、駆動素子(発熱素子)によりノズルNz内に気泡を発生させ、その気泡でインクを噴射させるサーマル方式でもよい。
【0024】
メンテナンスユニット40は、ヘッド31やインク流路内にインクを供給・充填し、ヘッド31やインク流路内のインクから気泡を除去するためのものである(詳細は後述)。
【0025】
===メンテナンスユニット40の構成===
メンテナンスユニット40は、供給ポンプP1と、圧力調整ポンプP2及びそれに接続する空気チューブ46と、循環ポンプP3と、インクを貯留するインクカートリッジ43及びサブタンク45と、供給チューブ44と、循環チューブ47と、開閉弁431と、インク受け部41と、キャップ42と、廃液タンク48と、を有する。メンテナンスユニット40は、印刷領域(媒体Sが搬送ベルト22上を搬送される領域)よりも紙幅方向奥側の非印刷領域に位置する。
【0026】
インクカートリッジ43とサブタンク45は供給チューブ44を介して連通し、供給チューブ44の途中に開閉弁431と供給ポンプP1が設けられている。供給ポンプP1の稼働により、インクカートリッジ43内のインクがサブタンク45に供給される。
【0027】
サブタンク45には、循環チューブ47の両端が設けられ、循環チューブ47の途中には、循環ポンプP3と4個のヘッド31(1)〜31(4)が設けられている。従って、サブタンク45内のインクは、循環ポンプP3の稼動により、循環チューブ47内を流れつつヘッド31内を通過して、再びサブタンク45に戻ることができる。即ち、サブタンク45内のインクは循環される。なお、循環ポンプP3は、ヘッド31よりもインク供給経路の上流側に設けられている。また、サブタンク45の空気層には、圧力調整ポンプP2に接続された空気チューブ46の端部が設けられている。
【0028】
キャップ42は、略直方体形状の部材(例:弾性部材)であり、ヘッド31毎に設けられている。4個のキャップ42は、ヘッドユニット30における4個のヘッド31(1)〜31(4)の配置と同じ配置で、非印刷領域に設けられている。従って、メンテナンスモード時にヘッドユニット30が非印刷領域に移動すると、ヘッド31のノズル開口面(下面)とキャップ42が対向した状態となる。キャップ42は、鉛直方向に昇降可能であり、ヘッド31のノズル開口面に密着(当接)することができる。ヘッド31のノズル開口面にキャップ42が密着すると、各ノズル開口はそれぞれ独立して封止されて大気と連通しない状態となる。
【0029】
インク受け部41は、メンテナンスモード時に、ヘッド31のノズル開口面と対向する位置(キャップ42の下方)に設けられ、ノズルNzから噴射されたインクを受けるためのものである。インク受け部41が受けたインクは廃液タンク48に回収される。
【0030】
===印刷モードとメンテナンスモード===
<<印刷モード>>
本実施形態のプリンター1は、印刷モードとメンテナンスモードを備える。印刷モードは、媒体Sに画像を印刷するモードである。印刷モード時のヘッドユニット30は、搬送ベルト22上に位置し、搬送ベルト22上を搬送される媒体Sと対向している。
【0031】
印刷モード時に、コントローラー10は、圧力調整ポンプP2を稼働してサブタンク45の空気層に空気を供給し、サブタンク45内の圧力を大気圧よりも高い圧力に加圧する。そうすることで、印刷のためにヘッド31内からインクが消費されても、サブタンク45内のインクを、循環チューブ47を介してヘッド31に供給することができる。
【0032】
<<メンテナンスモード>>
メンテナンスモードは、ヘッド31やインク流路内に混入する気泡を除去するするモードである。プリンター1の使用を長時間に亘って停止する場合、ヘッド31のノズル開口面とキャップ42を密着させることで、ノズル開口からの空気の混入を抑制することができる。しかし、空気の混入を完全に防止することは難しく、長時間に亘って停止したプリンター1では、ヘッド31やインク流路内のインクに気泡(空気)が混入した状態となる。また、インクカートリッジ43などを交換する場合にも、ヘッド31やインク流路内に空気が混入し易い。
【0033】
ヘッド31やインク流路内のインクに気泡が混入していると、気泡がインクの流れを妨げてインク供給が不十分になったり、インク室311内のインクを適切に加圧することが出来ずにノズルNzから正しくインクが噴射されなかったりしてしまう。
【0034】
そこで、本実施形態のプリンター1は、長時間に亘って停止した後(例:一日における運転開始時)やインクカートリッジ43などを交換した後に、メンテナンスモードを実行する。ただし、これに限らず、例えば、印刷処理中に定期的にメンテナンスモードを実行してもよい。また、メンテナンスモードを実行することでヘッド31やインク流路内にインクが充填される。そこで、ヘッド31やインク流路を洗浄・交換した後などにインクを初期充填することを目的とした場合にも、メンテナンスモードを実行してもよい。
【0035】
以下、具体的なメンテナンスモードの流れについて説明する。
まず、プリンター1のコントローラー10は、供給チューブ44の途中に設けられた開閉弁431を開いて、供給ポンプP1を稼働し、所定量のインクをインクカートリッジ43からサブタンク45に補充する。サブタンク45へのインク補充が終了すると、コントローラー10は開閉弁431を閉じて、インクカートリッジ43とサブタンク45の間でのインクの往来を抑制する。
【0036】
次に、コントローラー10は、ヘッド31のノズル開口面とキャップ42の上面を対向させて、その後、キャップ42を上昇させてヘッド31のノズル開口面とキャップ42を密着させる。その結果、各ヘッド31のノズル開口はそれぞれ独立して封止されて大気と連通しない状態となる。
【0037】
次に、コントローラー10は、循環ポンプP3を稼働し、サブタンク45、ヘッド31、及び、循環チューブ47内のインクを循環する。具体的には、まず、サブタンク45内のインクが循環チューブ47を通ってヘッド31に圧送され、ヘッド31内のインクが循環チューブ47を通ってサブタンク45に戻される。なお、この時のサブタンク45内の空気層は大気圧である。また、ヘッド31のノズル開口面とキャップ42が密着しているため、ノズル開口からのインク漏れが抑制される。
【0038】
このように、サブタンク45、ヘッド31、及び、循環チューブ47内のインクを循環することで、ヘッド31や循環チューブ47内のインクに混入している気泡がインクと共にサブタンク45に送られる。サブタンク45では、気泡がインクの液面で弾けて消滅し、サブタンク45内のインクから気泡が除去される。こうして、ヘッド31及び循環チューブ47内のインクから気泡が除去され、ヘッド31及び循環チューブ47内にインクが充填される。
【0039】
ただし、ノズルNzのような微小な空間にはインクが充填され難く、循環ポンプP3によるインク循環後もノズルNz内に気体(気泡)が残留している虞がある。そこで、コントローラー10は、次に、圧力調整ポンプP2を稼働してサブタンク45の空気層に空気を供給し、サブタンク45内の圧力を大気圧よりも高い圧力に加圧する。そうすると、サブタンク45内のインクが加圧され、サブタンク45からヘッド31にインクが圧送され、ヘッド31内のインクも加圧される。
【0040】
その後、コントローラー10は、ヘッド31のノズル開口面に密着していたキャップ42を下降させて、ヘッド31とキャップ42を離間させる。そうすると、圧力調整ポンプP2によりヘッド31内のインクは加圧されていたため、ノズルNzからインクが勢いよく噴射される。その結果、ノズルNzからインクと共に気体が排出され、ノズルNz内にもインクが充填される。コントローラー10は、ノズルNzから所定量のインクを噴射させた後に、圧力調整ポンプP2の稼働を停止する。こうして、ヘッド31及び循環チューブ47内のインクから気泡を除去しつつ、ヘッド31及び循環チューブ47にインクを充填することができる。
【0041】
なお、ヘッド31とキャップ42を離間させてから圧力調整ポンプP2によりサブタンク45内のインクを加圧して、ノズルNzからインクを噴射させてもよい。また、サブタンク45を設けずに、インクカートリッジ43とヘッド31を繋ぐ循環チューブによってインクを循環してもよい。
【0042】
===フィルターユニット70===
<<フィルターユニット70の構成>>
図3Aは、フィルターユニット70の構成を説明する図であり、図3Bは、フィルターユニット70を通過するインクの流れを説明する図である。図3Aの上図は、フィルター蓋74を外した状態のフィルターユニット70を上から見た図であり、図3Aの下図は、フィルターユニット70の縦方向における中央部(位置AA’)にて鉛直方向に切ったフィルターユニット70の断面図である。また、図3Bは、フィルターユニット70の本体部71と循環チューブ47を鉛直方向と交差する縦方向に見た外観図であり、本体部71内に設けられたフィルター室72等を点線にて仮想的に示す。
【0043】
フィルターユニット70は、本体部71と、フィルター室72と、フィルター73と、フィルター蓋74と、インク流入路75と、インク流出路76と、を有する。フィルター室72、インク流入路75、及び、インク流出路76は、インクが通過する空間である。フィルター73は、多数の微小孔が設けられた円形上の薄板(例:金属メッシュ)である。
【0044】
フィルター室72は、図3Aの上図に示すように、鉛直方向(フィルター室72の軸方向)に対して交差する面方向に切った外周の断面形状が円形の空間である。そして、図3Aの下図に示すように、フィルター室72の底面72a(鉛直方向下側の面)にフィルター73が設けられている。また、フィルター蓋74の底面74aには、鉛直方向下側を頂部とする円錐形状の突出部741が設けられている。この突出部741は、フィルター室72の上面72bの一部として構成され、フィルター室72の底面72a及びフィルター73の中心部Oに向かって突出するように設けられている。即ち、フィルター室72の上面72bは、外周部から中心部Oに向かって下方に傾斜している。このように、フィルター室72は、円柱の中央部が逆円錐形に窪んだ形状の空間である。
【0045】
インク流入路75は、フィルター室72にインクを流入させる空間であり、本体部71の底面71aからフィルター蓋74の底面74aまで鉛直方向に延びた第1インク流入路751と、図3Aの上図に示すように、湾曲しながら延びた第2インク流入路752と、フィルター室72の側周面の接線方向に延びた第3インク流入路753と、を有する。第2インク流入路752及び第3インク流入路753の高さ(鉛直方向の位置)は、フィルター室72の高さ(鉛直方向の位置)と同じである。
【0046】
インク流出路76は、フィルター73の鉛直方向下側に設けられ、フィルター73を通過させてフィルター室72からインクを流出させる空間である。また、インク流出路76は、フィルター73から本体部71の底面71aまで鉛直方向下側に延び、鉛直方向の途中から流路が狭くなっている(鉛直方向と交差する面方向の断面積が小さくなっている)。
【0047】
フィルターユニット70は、図2に示すように、ヘッド31内に組み込まれ、共通インク室312よりもインク供給経路における上流側に設けられている。従って、サブタンク45内のインクは、循環チューブ47を通って、フィルターユニット70を通過してから共通インク室312に供給される。フィルターユニット70を通過するインクは、図3Bに示すように、第1インク流入路751、第2インク流入路752、第3インク流入路753を順に通過してフィルター室72に流入し、その後、フィルター73を通過してインク流出路76からフィルターユニット70の外部に流出する。
【0048】
<<フィルターユニット70の目的>>
前述のように、ノズルNzと連通するインク室311内のインクに気泡が混入していると、駆動素子によりインク室311内のインクを適切に加圧することができず、ノズルNzからのインク噴射不良が生じてしまう。従って、印刷モード時は、共通インク室312やインク室311に気泡を送りたくない。即ち、印刷モード時は、インクに含まれる気泡を、フィルターユニット70(フィルター73)の下流側に流出させることなく、フィルター73で捕捉したい。
【0049】
一方、フィルター73で気泡を捕捉したままにすると、フィルター73を通過するインクの流れが気泡によって妨げられてしまう。そうすると、共通インク室312やインク室311へのインク供給が不十分となり、ノズルNzからのインク噴射不良が生じてしまう。従って、メンテナンスモード時は、フィルター73が捕捉していた気泡をフィルターユニット70(フィルター73)の下流側に流出させて、気泡をサブタンク45に送ったり、ノズルNzから気泡をヘッド31外に排出させたりしたい。
【0050】
つまり、印刷モード時は気泡がフィルター73を通過しないようにし、メンテナンスモード時は気泡がフィルター73を通過するようにすることで、ノズルNzからのインク噴射不良を防止する。
【0051】
また、フィルター73によって、インクに含まれる気泡だけでなく、増粘インクやゴミ等の異物も捕捉することができる。そうすることで、ノズルNzの目詰まりを抑えることができる。なお、異物によるフィルター73の目詰まりを防止するために、適宜フィルター73を洗浄・交換するとよい。
【0052】
<<フィルターユニット70の作用>>
図4Aは、印刷モード時におけるインク及び気泡の流れを説明する図であり、図4Bは、メンテナンスモード時におけるインク及び気泡の流れを説明する図である。図4A及び図4Bにおける各上図は、第3インク流入路753やインク室72等を上から見た図であり、各下図は、第3インク流入路753やインク室72等を鉛直方向と交差する縦方向から見た断面図である。
【0053】
印刷モード時(即ち、ヘッド31へのインク供給時)は、メンテナンスモード時(即ち、循環ポンプP3によるインク循環時や圧力ポンプP2の加圧によるノズルNzからのインク噴射時)に比べて、サブタンク45からヘッド31に供給されるインクの流速が遅くなるように設定されている。換言すると、印刷モード時は、メンテナンスモード時に比べて、サブタンク45からヘッド31に供給される単位時間あたりのインク流量が少なくなるように(例えば、半分のインク流量となるように)設定されている。
【0054】
そのために、コントローラー10は、印刷モード時に圧力調整ポンプP2がサブタンク45内のインクをヘッド31に圧送する力を、メンテナンスモード時に循環ポンプP3や圧力調整ポンプP2がサブタンク45内のインクをヘッド31に圧送する力よりも弱くする。
【0055】
従って、印刷モード時は、第3インク流入路753からフィルター室72に流入するインクの流速も遅いので(単位時間あたりのインク流入量も少ないので)、第3インク流入路753によってフィルター室72の側周面の接線方向からフィルター室72にインクが流入したとしても、図4Aに示すように、フィルター室72内にインクの旋回流が発生しない。そのため、フィルター室72に流入したインクは、逆円錐形状である突出部741の周囲を旋回することなくフィルター73を通過し、インク流出路76へ流れる。
【0056】
印刷モード時のようにインクの流速が遅いと、インクに含まれる気泡はインクの流れに乗り難い。よって、気泡は、インクと共に鉛直方向下側に位置するフィルター73に向かうことなく、浮力により鉛直方向上側(即ち、フィルター蓋74やフィルター室72の上面72b)に向かって浮上する。浮上した気泡は、インクの流れが緩やかなフィルター室72の外周部(隅部)などに滞留する。
【0057】
つまり、印刷モード時は、気泡がフィルター73を通過することなくフィルター室72内に留まり、インク室311に気泡が流れていってしまうことを防止できる。よって、駆動素子によりインク室311内のインクを適切に加圧することができ、ノズルNzからのインク噴射不良を防止することができる。
【0058】
一方、メンテナンスモード時は、印刷モード時に比べて、第3インク流入路753からフィルター室72に流入するインクの流速が速くなるように設定されている。換言すると、メンテナンスモード時は、印刷モード時に比べて、第3インク流入路753からフィルター室72に流入する単位時間あたりのインク流量が多くなるように(例えば、2倍のインク流量となるように)設定されている。
【0059】
従って、メンテナンスモード時に、第3インク流入路753によってフィルター室72の側周面の接線方向からフィルター室72にインクが流入すると、図4Bに示すように、フィルター室72内にインクの旋回流(渦流)が発生する。そのため、フィルター室72に流入したインクは、逆円錐形状である突出部741の周囲を旋回し、その後、フィルター73を通過してインク流出路76へ流れる。
【0060】
メンテナンスモード時のようにインクの流速が速いと、インクに含まれる気泡はインクの流れに乗り易い。よって、気泡は、インクと共に突出部741の周囲を旋回しながら、浮力に抗して鉛直方向下側に位置するフィルター73に向かう。そうして、気泡はフィルター73に当接する。
【0061】
更に、フィルター室72内のインクの旋回流に伴って発生する遠心力により、比重の重いインクはフィルター室72の外周部に集まろうとし、比重の小さい気泡はフィルター室72の中心部に集まろうとする。そのため、印刷モード時にフィルター室72の外周部(上方の隅部)に滞留していた気泡や、インクの流れに乗り難い微小な気泡も、図4Bに示すように、フィルター室72の中心部に向かう。
【0062】
フィルター室72内には、フィルター室72の底面72a(フィルター73)の中心部Oに向かって突出する逆円錐形状の突出部741が設けられている。よって、フィルター室72の外周部から中心部にかけて、フィルター室72の上面72bと底面72aの間隔(フィルター蓋74とフィルター73との間隔)が徐々に狭くなっている。そのため、インクの旋回流に伴って発生する遠心力の影響で気泡がフィルター室72の中心部に向かうと、気泡72は突出部741の側周面に沿って鉛直方向下側に向かうことになる。そうして、気泡はフィルター73に当接する。つまり、突出部741は、フィルター室72の中心部に向かう気泡の浮力を押さえて、気泡を鉛直方向下側に位置するフィルター73に向かわせる役割を果たす。
【0063】
こうして、気泡がフィルター73に当接すると、フィルター室72からフィルター73を通過してインク流出路76へ流れようとするインクによって、気泡に圧力が掛かる(気泡を押し付ける力が発生する)。気泡にかかる圧力が、フィルター73の毛細管力(インクがフィルター73の微小孔を通過する圧力)を超えると、気泡はフィルター73を通過する。このようにメンテナンスモード時に気泡がフィルター73を通過するように、メンテナンスモード時には、インクに加えられる動圧が、インクに含まれる気泡がフィルター73を通過可能な圧力となるようにしている。そのために、フィルター室72に流入するインクの流速等が調整されている。フィルター73を通過した気泡は、インク流出路76を介してフィルターユニット70から流出し、その後、サブタンク45に送られてインクの液面で消滅したり、ノズルNzからヘッド31外に排出されたりする。
【0064】
図5A及び図5Bは、比較例のフィルターユニットを説明する図である。図5Aではフィルター室72の中心部に向かって半径方向からフィルター室72にインクが流入し、図5Bでは、フィルター室72の上面72bからフィルター室72にインクが流入する。
【0065】
これらの場合、フィルター室72に流入するインクの流速が速くとも、フィルター室72内にインクの旋回流が発生しない。そうすると、気泡がフィルター室72の中心部に向かうことなく、図5Aのようにフィルター室72に突出部741が設けられていたとしても、突出部741により気泡をフィルター73に向かわせることが出来ない。そのため、比較例のフィルターユニットでは、メンテナンスモード時にも、気泡をフィルター73の下流側に流出させることが出来ず、気泡がフィルター室72の外周部(上方の隅部)に滞留してしまう。
【0066】
そこで、本実施形態のフィルターユニット70のように、第3インク流入路753によりフィルター室72の側周面の接線方向からフィルター室72にインクを流入させることで、フィルター室72内にインクの旋回流を発生させることができる。そうすると、気泡をフィルター室72の中心部に向かわせつつ、突出部741に沿わせて気泡をフィルター73に向かわせて、気泡とフィルター73を当接させることができ、フィルター室72から気泡を除去することができる。従って、共通インク室312やインク室311に供給するインクの流れを気泡が妨げてしまうことを防止でき、共通インク室312やインク室311に十分にインクを供給することができるため、ノズルNzからのインク噴射不良を防止することができる。
【0067】
<<まとめ>>
本実施形態のフィルターユニット70は、インクが通過する空間部であって、軸方向(図3Aの鉛直方向)に対して交差する方向(面方向)に切った外周の断面形状が円形であるフィルター室72(空間部に相当)と、フィルター室72の軸方向における一端側の面(図3Aの底面72a)に設けられたフィルター73と、フィルター室72の軸方向における他端側の面(図3Aの上面72b)に設けられ、フィルター室72の一端側の面(底面72a)の中央部に向かって突出した突出部741(突出部材に相当)と、フィルター室72の側周面の接線方向からフィルター室72にインクを流入させるインク流入路75(流入路に相当)と、フィルター73を通過させてフィルター室72からインクを流出させるインク流出路76(流出路に相当)と、を備える。
【0068】
このようなフィルターユニット70によれば、インク流入路75から速い流速でフィルター室72にインクが流入した場合に、フィルター室72内にインクの旋回流を発生させることができる。そうすると、インクの旋回流に伴って発生する遠心力により、インクよりも軽い気泡をフィルター室72の中心部に向かわせることができる。その際に、フィルター室72の外周部から中心部に向かって下方に傾斜する突出部741に沿わせて気泡をフィルター73に向かわせることができる。そうすることで、インクの流れに乗り難く、また、フィルター73に当接し難い微小な気泡や、フィルター室72の外周部で滞留している気泡も、フィルター73に当接させることができ、気泡をフィルター73の下流側に流出させることができる。
【0069】
つまり、本実施形態のフィルターユニット70によれば、メンテナンスモード時に、より多くの気泡をフィルター73の下流側に流出させることができ、フィルターユニット70内のインクからの気泡除去性を改善することができる。そのため、印刷モード時に、気泡がインク室311に流れたり、気泡がインク供給の妨げになったりすることを防止でき、ノズルNzからのインク噴射不良を防止することができる。
【0070】
一方、インク流入路75から遅い流速でフィルター室72にインクが流入した場合には、フィルター室72内にインクの旋回流が発生しないため、気泡は、フィルター室72の中心部に向かうことなく、突出部741に沿ってフィルター73に向かうこともない。この場合、気泡がフィルター73の下流側に流出してしまうことを防止できる。
つまり、フィルター室72に流入するインクの流速を調整し、フィルター室72内にインクの旋回流を発生させるか否かによって、適宜、フィルター73の下流側に気泡を流出させたり気泡の流出を防止したりできる。
【0071】
また、本実施形態のプリンター1は、インクを貯留するサブタンク45(液体貯留部に相当)と、インクを噴射可能なノズルNzが設けられたヘッド31とを備え、共通インク室312の上流側(サブタンク45とノズルNzの間)にフィルターユニット70が設けられている。そして、プリンター1は、インクに含まれる気泡をフィルター73の下流側に流出させない流速で第3インク流入路753からフィルター室72にインクを流入させる印刷モード(第1のモードに相当)と、インクに含まれる気泡をフィルター73の下流側に流出させる流速で第3インク流入路753からフィルター室72にインクを流入させるメンテナンスモード(第2のモードに相当)と、を備える。
【0072】
更に言えば、印刷モード時は、フィルター室72内にインクの旋回流を発生させない流速で第3インク流入路753からフィルター室72にインクを流入させ、インクに含まれる気泡をフィルター73の下流側に流出させないようにし、メンテナンスモード時は、フィルター室72内にインクの旋回流を発生させる流速で第3インク流入路753からフィルター室72にインクを流入させ、インクに含まれる気泡をフィルター73の下流側に流出させるようにする。
【0073】
このようなプリンター1によれば、印刷モード時には、インク室311に気泡が流れていってしまうことを防止でき、駆動素子によりインク室311内のインクを適切に加圧することができるため、ノズルNzからのインク噴射不良を防止することができる。一方、メンテナンスモード時には、フィルター73を通過するインクの流れを気泡が妨げてしまうことを防止し、共通インク室312やインク室311に十分にインクを供給することができるため、ノズルNzからのインク噴射不良を防止することができる。
【0074】
また、本実施形態のプリンター1では、メンテナンスモードにおいてインクに加えられる動圧を、インクに含まれる気泡がフィルター73を通過可能な圧力にしている。
換言すると、印刷モード時に、フィルター73を通過するインクが気泡に掛ける圧力がフィルター73の毛細管力以下となるようにフィルター室72に流入するインクの流速等が設定され、メンテナンスモード時に、フィルター73を通過するインクが気泡に掛ける圧力がフィルター73の毛細管力よりも大きくなるようにフィルター室72に流入するインクの流速等が設定されている。
そうすることで、印刷モード時には、気泡をフィルター73の下流側に流出させないようにすることができ、メンテナンスモード時には、気泡をフィルター73の下流側に流出させることができる。
【0075】
図6は、突出部741の傾斜角θを説明する図である。メンテナンスモード時にフィルター室72内に旋回流が生じると、遠心力により、比重の重いインクはフィルター室72の外周部に集まろうとし、比重の軽いインクはフィルター室72の中心部に集まろうとする。図6では、気泡がフィルター室72の中心部に向かう力を「F」と表し、気泡の浮力を「f」と表す。また、突出部741の傾斜角、即ち、フィルター室72の上面72bと突出部741の側周面741aとが成す角度を「θ」と表す。
【0076】
気泡がフィルター室72の中心部に向かう力Fのうち、突出部741の側周面741aに沿う方向の力の成分「Fa(=F・COSθ)」が、気泡をフィルター73に向かわせる力である。一方、気泡の浮力fのうち、突出部741の側周面741aに沿う方向の力の成分「fa=(f・COS(90°−θ))」が、気泡をフィルター室72の上面72bに向かわせる力である。メンテナンスモード時に、気泡をフィルター73に向かわせる力「Fa」を、気泡をフィルター室72の上面72bに向かわせる力「fa」よりも大きくすることで、気泡をフィルター73に向かわせることができる。
【0077】
そのため、本実施形態のフィルターユニット70では、メンテナンスモード時に気泡が浮力fに抗してフィルター73(鉛直方向下側)に向かうように、フィルター室72の上面72bに対する突出部741の側周面741aの傾きθが設定されている。そうすることで、メンテナンスモード時に気泡とフィルター73を当接させることができ、気泡をフィルター73の下流側に流出させることができる。
【0078】
また、本実施形態のフィルターユニット70における突出部741を、フィルター室72の軸方向(図3Aの鉛直方向)における一端側(フィルター73が設けられた鉛直方向下側)を頂部とする円錐形状とする。
そうすることで、突出部741の滑らかな側周面に沿わせて、気泡をスムーズにフィルター73に向かわせることができる。仮に、突出部741が階段形状であると、角部に気泡が滞留してしまう虞がある。そのため、突出部741を円錐形状にすることで、気泡の滞留を防止でき、メンテナンスモード時により多くの気泡をフィルター73の下流側に流出させることができる。
【0079】
また、本実施形態のフィルターユニット70では、突出部741の頂部をフィルター73に当接させる。
そうすることで、突出部741の側周面とフィルター73との間隔をより狭くすることができ、微小な気泡であってもフィルター73と当接させることができる。また、仮に、突出部741の頂部がフィルター73に当接していないと、突出部741の頂部とフィルター73の間の空間に気泡が滞留してしまう虞がある。そのため、突出部741の頂部とフィルター73を当接させることで、気泡の滞留を防止でき、メンテナンスモード時により多くの気泡をフィルター73の下流側に流出させることができる。
【0080】
また、本実施形態のプリンター1では、メンテナンスモード時に、循環ポンプP3によりサブタンク45内のインクをヘッド31に圧送し、ヘッド31内のインクをサブタンク45に戻す。その後、圧力調整ポンプP2によりサブタンク45内のインクをヘッド31に圧送してヘッド31内のインクを加圧し、ノズルNzからインクを噴射させる。つまり、メンテナンスモード時に、サブタンクからヘッド31内へインクを圧送してヘッド31内のインクを加圧し、ノズルNzからインクを噴射させる。
【0081】
このように、ヘッド31内のインクが加圧されると、ヘッド31内(フィルター室72内)のインクに含まれる気泡が小さくなってしまう。前述のように、微小な気泡は、インクの流れに乗り難く、また、浮力により上昇してしまうとフィルター73に当接し難くなるため、フィルター73を通過し難い。つまり、メンテナンスモード時にヘッド31内のインクを加圧する場合、フィルター室72内の気泡が小さくなり、フィルターユニット70からの気泡除去性が悪くなる。
【0082】
そのような場合であっても、本実施形態のフィルターユニット70を用いることで、旋回流に伴って発生する遠心力により気泡を中心に向かわせつつ、突出部741により気泡をフィルター73に向かわせることができる。よって、微小な気泡であってもフィルター73に当接させることができ、フィルターユニット70からの気泡除去性を改善することができる。
【0083】
===変形例===
図7は、変形例のフィルター室72を説明する図である。図は、フィルター室72等を上から見た図である。フィルター室72の軸方向と交差する面方向に切った外周の断面形状が多角形(図7では八角形)の空間であってもよい。つまり、多角柱の中央部が逆円錐形に窪んだ形状の空間であるフィルター室72であってもよい。
【0084】
このようなフィルター室72であっても、メンテナンスモード時に、フィルター室72の側周面の接線方向に延びた第3インク流入路753からフィルター室72にインクを流入させることで、フィルター室72内にインクの旋回流を発生させることができる。
【0085】
また、前述の実施形態では、第3インク流入路753がフィルター室72の側周面の接線方向に延びるとしているが、これに限らず、第3インク流入路753が接線方向から多少ずれた角度の方向に延びていてもよい。この場合であっても、メンテナンスモード時にフィルター室72内にインクの旋回流を発生させることができる。つまり、フィルター室72の側周面の厳密な接線方向からフィルター室72にインクを流入させるに限らず、インクの旋回流を発生させられる方向(略接線方向)からフィルター室72にインクを流入させればよい。
【0086】
また、前述の実施形態では、フィルター室72内に位置する突出部741の形状を円錐形状としているが、これに限らない。例えば、突出部741が、三角錐形状や、半球形状、円錐台形状、段差の小さい階段形状であってもよい。つまり、突出部741の形状は、遠心力によりフィルター室72の中心部に向かう気泡を下方に位置するフィルター73に向かわせることのできる形状であればよい。
【0087】
また、前述の実施形態では、突出部741の頂部がフィルター73の中心Oに当接するとしているが、これに限らない。例えば、突出部741の頂部がフィルター73の中心Oからずれた位置に当接していてもよいし、突出部741の頂部とフィルター73が当接していなくてもよい。
【0088】
また、前述の実施形態では、メンテナンスモード時に、循環ポンプP3によりサブタンク45内のインクを循環して気泡をサブタンク45に送ったり、圧力調整ポンプP2によりヘッド31内のインクを加圧してノズルNzから気泡を排出させたりしているが、これに限らない。例えば、メンテナンスモード時に、ヘッド31のノズル面とキャップの間に密閉空間が生じるようにヘッド31とキャップを当接させて、その密閉空間を吸引ポンプで負圧にすることによってノズルNzからインクと共に気泡を排出させてもよい。
【0089】
また、前述の実施形態では、フィルター73がフィルター蓋74よりも鉛直方向下側に位置する姿勢で、フィルターユニット70がヘッド31に組み込まれているとしているが、これに限らない。例えば、図3Aの下図に示すフィルターユニット70を90度回転させて、フィルター73の面が鉛直方向に沿う姿勢にしてもよいし、更にフィルターユニット70を45度回転させて、フィルター73がフィルター蓋74よりも鉛直方向の上側に位置し、フィルター73の面が鉛直方向の斜め方向に沿う姿勢にしてもよい。ただし、図3Aの下図に示すフィルターユニット70を180度回転させてしまうと、フィルター73がフィルター蓋74よりも完全に鉛直方向の上側に位置してしまうため、印刷モード時にも気泡が浮力によりフィルター73に当接し、気泡がフィルター73を通過してしまう虞がある。
【0090】
また、前述の実施形態では、ヘッド31内にフィルターユニット70が組み込まれ、フィルターユニット70が共通インク室312の直上に設けられているが、これに限らない。フィルターユニット70が、サブタンク45とノズルNzの間の何れの位置に設けられていてもよい。
【0091】
===その他の実施の形態===
上記の実施形態は、主として液体噴射装置について記載されているが、フィルターユニット、気泡除去方法等の開示が含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0092】
<液体噴射装置>
前述の実施形態では、液体噴射装置として、インクジェットプリンターを例に挙げているが、これに限らない。例えば、カラーフィルター製造装置、ディスプレイ製造装置、半導体製造装置、及び、DNAチップ製造装置などの液体噴射装置でもよい。
【0093】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、固定された複数のヘッド31の下を媒体Sが通過するプリンター1を例に挙げているが、これに限らない。例えば、所定方向に移動するヘッドからインクを噴射させる動作と、所定方向と交差する方向に媒体を搬送する動作とを、繰り返すプリンターでもよいし、所定方向に移動するヘッドからインクを噴射させる動作と、媒体に対して所定方向と交差する方向にヘッドを移動する動作と、を繰り返すプリンターでもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 プリンター、10 コントローラー、11 インターフェース部、
12 CPU、13 メモリー、14 ユニット制御回路、
20 搬送ユニット、21A 搬送ローラー、21B 搬送ローラー、
22 搬送ベルト、30 ヘッドユニット、31 ヘッド、
40 メンテナンスユニット、P1 供給ポンプ、P2 圧力調整ポンプ、
P3 循環ポンプ、41 インク受け部、42 キャップ、
43 インクカートリッジ、431 開閉弁、44 供給チューブ、
45 サブタンク、46 空気チューブ、47 循環チューブ、
48 廃液タンク、50 検出器群、60 コンピューター、
70 フィルターユニット、71 本体部、72 フィルター室、
73 フィルター、74 フィルター蓋、75 インク流入路、
751 第1インク流入路、752 第2インク流入路、
753 第3インク流入路、76 インク流出路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が通過する空間部であって、軸方向に対して交差する方向に切った外周の断面形状が円形又は多角形である空間部と、
前記空間部の前記軸方向における一端側の面に設けられたフィルターと、
前記空間部の前記軸方向における他端側の面に設けられ、前記空間部の前記一端側の面の中央部に向かって突出した突出部材と、
前記空間部の側周面の接線方向から前記空間部に液体を流入させる流入路と、
前記フィルターを通過させて前記空間部から液体を流出させる流出路と、
を備えるフィルターユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルターユニットであって、
前記突出部材は、前記空間部の前記軸方向における前記一端側を頂部とする円錐形状であるフィルターユニット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のフィルターユニットであって、
前記突出部材の頂部が前記フィルターに当接しているフィルターユニット。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載のフィルターユニットを備えた液体噴射装置であって、
液体を貯留する液体貯留部と、液体を噴射可能なノズルが設けられたヘッドと、を備え、
前記フィルターユニットは、前記液体貯留部と前記ノズルとの間に設けられ、
液体に含まれる気泡を前記フィルターの下流側に流出させない流速で前記流入路から前記空間部に液体を流入させる第1のモードと、
液体に含まれる気泡を前記フィルターの下流側に流出させる流速で前記流入路から前記空間部に液体を流入させる第2のモードと、を備える、
液体噴射装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液体噴射装置であって、
前記第2のモードにおいて液体に加えられる動圧は、液体に含まれる気泡が前記フィルターを通過可能な圧力である、
液体噴射装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の液体噴射装置であって、
前記第2のモードでは、前記液体貯留部から前記ヘッド内へ液体を圧送して前記ヘッド内の液体を加圧することで、前記ノズルから液体を噴射させる、
液体噴射装置。
【請求項7】
請求項4から請求項6の何れか1項に記載の前記第2のモードを実行することによって、前記フィルターユニット内の液体に含まれる気泡を除去する気泡除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−43312(P2013−43312A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181291(P2011−181291)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】