説明

フィルター及びフィルターの製造方法

【課題】フィルターに、湿気や有害物質の吸着等の機能を適宜持たせ、かつその機能を十分に発揮させる。
【解決手段】本発明のフィルター1は、異物の吸着等の機能を持つ粉状粒状物3を表面に食い込ませた繊維2を互いに絡ませて加熱、圧縮してシート状等に成形した。このフィルター1の製造方法は、目的に応じた暑さの合成樹脂製の繊維を互いに絡ませて肉厚の板状又はブロック状に成型する第1工程と、前記互いに絡ませた繊維の表面に粉状粒状物を付着させる第2工程と、前記互いに絡ませた繊維をその表面が僅かに溶ける程度に加熱する第3工程と、前記互いに絡ませた繊維を圧縮して当該繊維の表面の前記粉状粒状物がその表面に食い込んだ状態でシート状、板状またはブロック状に成型する第4工程とを備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気や有害物質の吸着等の目的に応じた機能を持たせたフィルター及びフィルターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シックハウス症候群の原因物質等の有害物質の吸着や湿気の吸着等の機能を持たせたフィルターは一般に知られている。このようなフィルターとしては、鉱物等を混ぜるのが一般的である。鉱物等には種々の機能を持ったものがある。その機能を利用するために、合成樹脂の繊維に鉱物の粉を混ぜて形成したフィルターがある。この合成樹脂の繊維に鉱物の粉を混ぜる方法としては、合成樹脂に鉱物等を練り込んで、繊維を成形するのが一般的である。また、接着剤で鉱物等を接着したものや、鉱物等の粉体を焼結したもの等もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記構成のフィルターにおいては次のような問題がある。
【0004】
合成樹脂に鉱物等を練り込んだ繊維の場合は、鉱物等が繊維の内部に入って表面に出てこないことが多く、鉱物等の持つ機能を十分に発揮することができない。
【0005】
接着剤で鉱物等を接着する場合は、繊維の表面に鉱物等を確実に付着させるのが容易でない。また、接着剤で繊維同士が接着して通気孔が塞がることもある。さらに、合成樹脂に鉱物等を練り込んだ繊維の場合と同様に、鉱物等が接着剤の内部に入って表面に出てこないことが多く、鉱物等の持つ機能を十分に発揮することができない。
【0006】
また、鉱物等の粉体を焼結したものの場合は、鉱物等を高温に加熱して焼結するため、高温で性質が変わるものは用いることができない。鉱物の種類によっては、高温をかけると性質が変わるものがあり、このような鉱物は用いることができない。
【0007】
本発明は上述した点に鑑みてなされたもので、湿気や有害物質の吸着等の目的に応じた機能を適宜持たせるこができるフィルター及びフィルターの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために第1の発明に係るフィルターは、互いに絡ませた合成樹脂製の繊維に、異物の吸着等の機能を持つ鉱物の粉状粒状物を付着させて、当該互いに絡ませた繊維を加熱、圧縮して、前記繊維の表面に前記粉状粒状物を食い込ませて固定したことを特徴とする。
【0009】
この構成により、前記繊維の表面に食い込ませた粉状粒状物が、フィルターに通された気体や液体から異物の吸着をしたり、化学反応を促進させたりする。
【0010】
前記フィルターにおいては、互いに絡ませて厚く積層した前記繊維を圧縮してシート状、板状又はブロック状に成形することが望ましい。
【0011】
上記構成により、シート状、板状又はブロック状に圧縮して成形されたフィルターが、気体通路に設けられたり、部屋の壁紙や壁板、タイル等として用いられたりする。
【0012】
前記フィルターにおいては、前記粉状粒状物が、気体や液体中から異物を吸着し、又は化学反応を促進する触媒機能を備えることが望ましい。
【0013】
前記構成により、気体や液体中に置かれた前記粉状粒状物が、気体や液体中から異物を吸着し、又は化学反応を促進させて有害物質を除去する。
【0014】
前記フィルターにおいては、前記繊維が、不織布状又は網状に成形されることが望ましい。
【0015】
前記構成により、不織布状又は網状の前記繊維を圧縮することで、互いに絡んだ前記繊維が押し縮められて、各繊維の表面の粉状粒状物が繊維の表面から押し込まれて繊維の表面に食い込む。これにより、粉状粒状物が繊維の表面に固定されて、異物の吸着等の機能を持つ。
【0016】
本発明に係るフィルターの製造方法は、目的に応じた暑さの合成樹脂製の繊維を互いに絡ませて肉厚の板状又はブロック状に成型する第1工程と、前記互いに絡ませた繊維の表面に粉状粒状物を付着させる第2工程と、前記互いに絡ませた繊維をその表面が僅かに溶ける程度に加熱する第3工程と、前記互いに絡ませた繊維を圧縮して当該繊維の表面の前記粉状粒状物がその表面に食い込んだ状態でシート状、板状またはブロック状に成型する第4工程とを備えて構成されたことを特徴とする。
【0017】
前記構成により、第1工程で前記繊維を互いに絡ませて肉厚の板状又はブロック状に成型し、第2工程で前記繊維の表面に粉状粒状物を付着し、第3工程で前記繊維の表面を僅かに溶ける程度に加熱し、第4工程で前記繊維を圧縮してその表面の前記粉状粒状物を表面に食い込ませた状態でシート状、板状またはブロック状に成型する。
【0018】
前記フィルターの製造方法においては、前記第2工程が、前記互いに絡ませた繊維に静電気を発生させてその表面に前記粉状粒状物を付着させることが望ましい。
【0019】
前記構成により、前記繊維に静電気を発生させることで、各繊維の表面に前記粉状粒状物がほぼ均等に付着する。
【0020】
前記フィルターの製造方法においては、前記第2工程が、前記互いに絡ませた繊維を振動させて当該繊維に静電気を発生させると共に前記粉状粒状物を全体に行き渡らせて当該粉状粒状物を当該繊維の表面に付着させることが望ましい。
【0021】
前記構成により、前記繊維に静電気を発生させることで、前記粉状粒状物が各繊維の表面に付着しやすくなると共に、前記粉状粒状物を全体に行き渡らせることで、各繊維の表面に前記粉状粒状物がほぼ均等に付着させることができる。
【0022】
前記フィルターの製造方法においては、前記第2工程が、前記互いに絡ませた繊維及び前記粉状粒状物をそれぞれ逆の電極に帯電させて互いに引き合わせて前記粉状粒状物を前記繊維の表面に付着させることが望ましい。
【0023】
前記構成により、前記繊維及び前記粉状粒状物をそれぞれ逆の電極に帯電させて互いに引き合わせるため、前記粉状粒状物を前記繊維の表面にほぼ均等に付着させることができる。
【0024】
前記フィルターの製造方法においては、前記第3工程で、前記繊維をその上下から離型性シートで挟むことが望ましい。
【0025】
前記構成により、前記繊維をその上下から離型性シートで挟んで加圧することで、粉状粒状物が表面に付着した繊維を効率的に加圧することができる。
【0026】
前記フィルターの製造方法においては、前記第3工程及び第4工程を熱プレス加工により行うことが望ましい。
【0027】
前記構成により、熱プレス加工で、前記粉状粒状物が表面に付着した繊維を効率的に加熱、加圧して、前記粉状粒状物を前記繊維の表面に食い込ませることができる。
【0028】
前記フィルターの製造方法においては、シート状、板状またはブロック状に成型された繊維を目的の形状に合わせた型で冷却しながらプレスする冷却プレス工程をさらに追加することが望ましい。
【0029】
前記構成により、加熱して圧縮成型された繊維を冷却しながら目的の形状に成形することができ、効率的に目的のフィルターを製造することができる。
【0030】
前記フィルターの製造方法においては、シート状、板状またはブロック状に成型された繊維を目的の形状に合わせて打ち抜く打ち抜き加工をさらに追加することが望ましい。
【0031】
前記構成により、シート状、板状またはブロック状に成型された繊維を目的の形状に合わせて打ち抜くことで、効率的に目的のフィルターを製造することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る合成樹脂シートでは、次のような効果を奏することができる。
【0033】
(1) 前記繊維の表面に食い込ませた粉状粒状物が、フィルターに通された気体や液体から異物の吸着をしたり、化学反応を促進させたりするため、湿気や有害物質の吸着、有害物質の化学反応による分解等の目的に応じた機能を適宜持たせるこができる。
【0034】
(2) シート状、板状又はブロック状に圧縮して成形されたフィルターが、気体通路に設けられたり、部屋の壁紙や壁板、タイル等として用いられたりすることで、既存の材料と同じ機能を果たしながらさらに有害物質の除去等の機能を持たせることができる。
【0035】
(3) 気体や液体中に置かれた前記粉状粒状物が、気体や液体中から異物を吸着し、又は化学反応を促進させて有害物質を除去するため、前記粉状粒状物の有する機能を備えたフィルターを容易に製造することができる。
【0036】
(4) 前記繊維が押し縮められてその表面の粉状粒状物が繊維の表面に食い込むことで、粉状粒状物が繊維の表面に固定されて、異物の吸着等の機能を持つため、前記粉状粒状物の有する機能を備えたフィルターを容易に製造することができる。
【0037】
(5) 第1工程で前記繊維を互いに絡ませて肉厚の板状又はブロック状に成型し、第2工程で前記繊維の表面に粉状粒状物を付着し、第3工程で前記繊維の表面を僅かに溶ける程度に加熱し、第4工程で前記繊維を圧縮してその表面の前記粉状粒状物を表面に食い込ませた状態でシート状、板状またはブロック状に成型するため、種々の機能を持ったフィルターを容易に製造することができる。
【0038】
(6) 前記繊維に静電気を発生させることで各繊維の表面に前記粉状粒状物がほぼ均等に付着するため、前記粉状粒状物の持つ機能を十分に発揮させることができる。
【0039】
(7) 前記繊維に静電気を発生させることで、前記粉状粒状物が各繊維の表面に付着しやすくなると共に、前記粉状粒状物を全体に行き渡らせることで、各繊維の表面に前記粉状粒状物がほぼ均等に付着させることができるため、前記粉状粒状物の持つ機能を十分に発揮させることができる。
【0040】
(8) 前記繊維及び前記粉状粒状物をそれぞれ逆の電極に帯電させて互いに引き合わせて、前記粉状粒状物を前記繊維の表面にほぼ均等に付着させることができるため、前記粉状粒状物の持つ機能を十分に発揮させることができる。
【0041】
(9) 前記繊維をその上下から離型性シートで挟んで加圧することで、粉状粒状物が表面に付着した繊維を効率的に加圧することができるため、前記粉状粒状物を前記繊維の表面に十分に食い込ませることができ、前記粉状粒状物の持つ機能を十分に発揮させることができる。
【0042】
(10) 熱プレス加工で、前記粉状粒状物が表面に付着した繊維を効率的に加熱、加圧して、前記粉状粒状物を前記繊維の表面に食い込ませることができるため、前記粉状粒状物の持つ機能を十分に発揮させることができる。
【0043】
(11) 加熱して圧縮成型された繊維を冷却しながら目的の形状に成形して、効率的に目的のフィルターを製造することができるため、用途に応じて選択した前記粉状粒状物の持つ機能を十分に発揮させることができる。
【0044】
(12) シート状、板状またはブロック状に成型された繊維を目的の形状に合わせて打ち抜くことで、効率的に目的のフィルターを製造することができるため、用途に応じて選択した前記粉状粒状物の持つ機能を十分に発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下に本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0046】
[フィルター]
本実施形態に係るフィルターは、要求される機能を備えて、要求される形状のフィルターとして製造することができるものである。
【0047】
要求される機能としては、湿気や有害物質を吸着することによる除去機能や、有害物質の化学変化、分解等による除去機能等である。これらの機能を持たせるために、湿気や有害物質を吸着する多孔質の材料(鉱物、木炭など)を粉状又は粒状に砕いた粉状粒状物を用いる。また、触媒機能を持った鉱物を粉状又は粒状に砕いた粉状粒状物を用いてもよい。鉱物以外にも木炭等の、種々の機能を備えた他の物質を粉状又は粒状にして用いてもよい。
【0048】
このような粉状粒状物を合成樹脂製の繊維の表面に設けてフィルターを構成する。具体的には、次のようにして構成する。
【0049】
本実施形態に係るフィルター1は、図1及び図2に示すように、合成樹脂製の繊維2を互いに絡ませて圧縮して成型するフィルターである。前記繊維2は、不織布状又は網状に成形する。不織布状又は網状の前記繊維2を圧縮することで、互いに絡んだ前記繊維2が押し縮められて、各繊維2の表面の粉状粒状物3が繊維2の表面から押し込まれて繊維2の表面に食い込む。これにより、粉状粒状物3が繊維2の表面に固定されて、異物の吸着等の機能を持つ。
【0050】
この繊維2の表面に、図1に示すように、異物の吸着等の前記機能を持つ粉状粒状物3を食い込ませて固定した。この繊維2の表面に食い込ませた粉状粒状物3は、繊維2の表面からむき出しになるため、フィルター1に気体や液体が通されるとき、粉状粒状物3が気体や液体によく触れて、気体や液体から異物を吸着したり、異物の化学反応を促進させたりする。
【0051】
このような繊維2を互いに絡ませて厚く積層させ、その積層した繊維2を圧縮してシート状、板状又はブロック状に成形されて、フィルター1が構成される。図2のフィルター1は、空気清浄機等の特定の装置に取り付けられる専用フィルターとして構成した例であるが、本実施形態のフィルター1は、本来のフィルターとして装置内に取り付ける以外に、種々の用い方がある。この例を以下に示す。
【0052】
シート状のフィルターは、部屋の壁紙等に用いることができる。のれん等のように天井側からぶら下げて設けてもよい。フィルターの表面に絵柄か文字等を印刷しても良い。これらを、目的の機能に合わせた位置に設ける。例えば、シックハウス症候群の原因になるホルムアルデヒドを除去したい場合は、ホルムアルデヒドを吸着する鉱物等の粉状粒状物を、前記繊維の表面に食い込ませてシート状のフィルターを構成する。そして、このシート状のフィルターを壁紙として部屋に張ったり、ポスター等として壁に貼ったり、天井から何枚もぶら下げたりする。
【0053】
板状のフィルターは、部屋の壁板等に用いることができる。部屋の壁一面を覆う大きさの板状のフィルターを製造して部屋の壁に用いたり、長方形状の板材として壁に打ち付けたりして用いる。板状のフィルターで家具を製造しても良い。板状のフィルターを正方形状に切り分けてタイルを製造しても良い。このタイルを部屋の壁等に貼り付けられる。これらの場合は、ホルムアルデヒドを吸着する粉状粒状物を繊維に食い込ませる。
【0054】
建物の外壁として用いることもできる。この場合は、例えば板材の外側に酸化チタン等の光触媒の粉状粒状物を、内側に湿気を吸着する粉状粒状物を繊維に食い込ませる。他の機能を備えた粉状粒状物を繊維に食い込ませてもよい。用途に応じた機能の粉状粒状物を表側と裏面とにそれぞれ設ける。
【0055】
気体や液体の清浄装置のフィルターとして用いることもできる。この場合は、除去したい物質を吸着する機能を持った鉱物等や、除去したい鉱物の化学変化を促進する触媒機能を持った鉱物等を前記繊維に食い込ませてフィルターを製造する。このフィルターに空気を通過させることで、前記繊維の表面に食い込ませた粉状粒状物が、室内のホルムアルデヒド等の異物を吸着する。また、触媒物質を前記繊維の表面に食い込ませている場合は、有害物質を含む空気を通して、その有害物質が無害な物質に化学変化するのを促進する。
【0056】
ブロック状のフィルターは、建物の外壁等に用いることができる。この場合は、前記板材の場合と同様に、外側に酸化チタン等の光触媒の粉状粒状物を、内側に湿気を吸着する粉状粒状物を繊維に食い込ませる。また、内装や家具等にも用いることができる。内装や家具等として用いる場合は、ホルムアルデヒド等の室内の異物を吸着する粉状粒状物を繊維に食い込ませる。
【0057】
[フィルターの製造方法]
本実施形態にかかるフィルターの製造方法は次の工程から構成されている。
【0058】
まず、第1工程で、目的に応じた暑さの合成樹脂製の繊維を互いに絡ませて肉厚の板状又はブロック状に成型する。圧縮する前の繊維を、圧縮後の暑さと圧縮比に応じた暑さに成型する。圧縮比は5:1やそれ以上ということもあるため、薄いシート状、板状又はブロック状のフィルターに合わせて、その5倍又はそれ以上の暑さに成型する。合成樹脂の種類は、用途に応じた機能を備えたもの、例えば、ウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリ塩化樹脂等を適宜選択する。1本1本の繊維の太さも、用途に応じて設定する。空気通路に設置して、ホルムアルデヒド等の空気中の異物の吸着に重点を置く場合は、空気抵抗が大きくなっても、極細の繊維でフィルターに多数の微細な通気孔を形成する。触媒機能等のように、空気通路内に空気をスムーズに流して化学変化を促進させる場合は、太めの繊維でフィルターに大きめの通気孔を形成する。
【0059】
次いで、第2工程で、図3(A)に示すように、前記互いに絡ませた繊維2の成型体5の表面に、振り掛け機6で粉状粒状物を振り掛けて付着させる。この場合、振動や静電気を利用する。互いに絡ませて厚い板状等に成形した繊維に静電気を発生させて、その上側面に粉状粒状物をかける。これにより、1本1本の繊維の表面に前記粉状粒状物を付着させる。この場合、前記互いに絡ませた繊維を予め振動させて当該繊維に静電気を発生させておき、前記粉状粒状物を全体に行き渡らせて当該粉状粒状物を1本1本の繊維の表面に付着させるようにしてもよい。このように、繊維に静電気を発生させることで、前記粉状粒状物が1本1本の繊維の表面に付着しやすくなると共に、前記粉状粒状物を全体に行き渡らせることで、各繊維の表面に前記粉状粒状物がほぼ均等に付着させることができる。また、前記互いに絡ませた繊維及び前記粉状粒状物をそれぞれ逆の電極に帯電させて互いに引き合わせて前記粉状粒状物を前記繊維の表面に付着させるようにしてもよい。これにより、前記繊維と前記粉状粒状物とを互いに引き合わせるため、前記粉状粒状物を前記繊維の表面にほぼ均等に付着させることができる。
【0060】
次に第3工程を行う。
【0061】
第3工程では、図3(B)に示すように、前記互いに絡ませた繊維を、その1本1本の繊維の表面が僅かに溶ける程度に加熱装置7で加熱する。この場合、前記互いに絡ませた繊維をその上下から離型性シート(図示せず)で挟む。この離型性シートとしては、例えばテトラフルオロエチレン製のシートを用いる。このように、前記互いに絡ませた繊維の成型体5をその上下から離型性シートで挟んで加圧することで、粉状粒状物が表面に付着した繊維を、粉状粒状物の飛散を抑えて効率的に加圧することができる。また、金型でプレスする場合にその金型の表面に繊維が付着するのを防止する。ローラで圧延する場合は、そのローラの表面に繊維が付着するのを防止する。
【0062】
この加熱手段としては、図3(B)に示すように製造ラインに加熱装置7を設けてもよく、後述する第4工程のプレス金型を加熱しておき、この金型の熱で繊維を加熱してもよい。
【0063】
次に第4工程を行う。
【0064】
第4工程では、図3(C)に示すように、前記互いに絡ませた繊維の成型体5をプレス金型8で圧縮して成型体5の繊維の表面に付着した前記粉状粒状物がその繊維の表面に食い込んだ状態でシート状、板状またはブロック状に成型する。この場合、プレス加工でシート状等に成型するが、前記第3工程及び第4工程を合わせて、熱プレス加工により行ってもよい。これにより、熱プレス加工で、前記粉状粒状物が表面に付着した繊維を効率的に加熱、加圧して、前記粉状粒状物を前記繊維の表面に食い込ませることができる。
【0065】
次に第5工程を行う。
【0066】
第5工程では、図3(D)に示すように、シート状、板状またはブロック状に成型された繊維を目的の形状に合わせた金型9で冷却しながらプレスする。前記第4工程での熱プレス加工によってシート状等に成型された成型体5はまだ高温のままであるため、加熱して圧縮成型された繊維を冷却しながら目的の形状に成形することができ、効率的に目的のフィルターを製造することができる。
【0067】
次に第6工程を行う。
【0068】
第6工程では、図3(E)に示すように、第5工程で目的の形状に成形された成型体を、その周囲のバリとりを兼ねて、目的の形状に合わせて打ち抜き型10で打ち抜く打ち抜き加工を施す。
【0069】
この場合、第5工程で冷却してシート状、板状またはブロック状に成型された成型体の場合は、図4に示すように、そのシート状等の成型体5を打ち抜き型10で目的の形状に合わせて打ち抜いて多数のフィルター1(図4においては四角形のフィルター)を成型する。これにより、効率的に目的のフィルター1を製造することができる。
【0070】
[効果]
以上のようにして製造されたフィルターは、要求される目的に応じた機能を適宜、最適な状態で持たせるこができる。これにより、前記1本1本の繊維の表面に食い込ませた粉状粒状物が、その粉状粒状物の持つ機能に応じて、フィルターに通された気体や液体から異物の吸着をしたり、化学反応を促進させたりするため、湿気や有害物質の吸着、有害物質の化学反応による分解等の、目的に応じた機能を発揮することができる。
【0071】
シート状、板状又はブロック状に圧縮して成形されたフィルターが、気体通路に設けられたり、部屋の壁紙や壁板、タイル等として用いられたりして、既存の材料と入れ替えることで、既存の材料としての機能を維持したまま有害物質の除去等の機能を持たせることができる。これにより、有害物質の除去等の機能を持たせた物を特別に設置する必要もなくなり、無駄なスペースをさく必要が無くなる。
【0072】
気体や液体中に置かれた前記粉状粒状物が、気体や液体中から異物を吸着し、又は化学反応を促進させて有害物質を除去するため、前記粉状粒状物の有する機能を備えたフィルターを容易に製造することができる。このため、前記フィルターに、要求される目的に応じた機能を容易に持たせることができる。
【0073】
前記繊維が押し縮められてその表面の粉状粒状物が繊維の表面に食い込むことで、粉状粒状物が繊維の表面に固定されて、異物の吸着等の機能を持つため、前記粉状粒状物の有する機能を備えたフィルターを容易に製造することができる。
【0074】
前記第1工程から第6工程までの処理でフィルターを成型するため、粉状粒状物を適宜選択することで、種々の機能を持ったフィルターを容易に製造することができる。
【0075】
前記繊維に静電気を発生させることでこの静電気によって各繊維の表面に前記粉状粒状物がほぼ均等に付着するため、当該粉状粒状物を繊維の表面にむら無く埋め込むことができて、前記粉状粒状物の持つ機能を十分に発揮させることができる。また、前記繊維に静電気を発生させることで、前記粉状粒状物が各繊維の表面に付着しやすくなると共に、前記粉状粒状物を全体に行き渡らせることで、各繊維の表面に前記粉状粒状物がほぼ均等に確実に付着させることができるため、当該粉状粒状物を繊維の表面にむら無く埋め込むことができて、前記粉状粒状物の持つ機能を十分に発揮させることができる。さらに、前記繊維及び前記粉状粒状物をそれぞれ逆の電極に帯電させて互いに引き合わせることで、前記粉状粒状物を前記繊維の表面にほぼ均等に付着させることができるため、当該粉状粒状物を繊維の表面にむら無く埋め込むことができて、前記粉状粒状物の持つ機能を十分に発揮させることができる。
【0076】
前記互いに絡ませた繊維を、その表面に前記粉状粒状物を付着させた状態で、その上下から離型性シートで挟んで加圧することで、前記粉状粒状物が表面に付着した繊維を効率的に加圧することができるため、前記粉状粒状物を前記繊維の表面に十分に食い込ませることができ、前記粉状粒状物の持つ機能を十分に発揮させることができる。
【0077】
熱プレス加工で、前記粉状粒状物が表面に付着した繊維を効率的に加熱、加圧して、前記粉状粒状物を前記繊維の表面に食い込ませることができるため、前記粉状粒状物の持つ機能を十分に発揮させることができる。これにより、前記粉状粒状物の持つ機能を十分に発揮する優れたフィルターを提供することができる。
【0078】
加熱して圧縮成型された繊維を冷却しながら目的の形状に成形して、効率的に目的のフィルターを製造することができるため、用途に応じて選択した前記粉状粒状物の持つ機能を十分に発揮させることができる。
【0079】
シート状、板状またはブロック状に成型された繊維を目的の形状に合わせて打ち抜くことで、効率的に目的のフィルターを製造することができるため、用途に応じて選択した前記粉状粒状物の持つ機能を十分に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施形態に係るフィルターの繊維を示す要部拡大図である。
【図2】本発明の実施形態に係るフィルターを示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る成型体の製造工程を示す模式図である。
【図4】本発明の実施形態に係る他のフィルターを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0081】
1:フィルター、2:繊維、3:粉状粒状物、5:成型体、6:振り掛け機、7:加熱装置、8:プレス金型、9:金型、10:打ち抜き型。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに絡ませた合成樹脂製の繊維に、異物の吸着等の機能を持つ鉱物の粉状粒状物を付着させて、当該互いに絡ませた繊維を加熱、圧縮して、前記繊維の表面に前記粉状粒状物を食い込ませて固定したことを特徴とするフィルター。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルターにおいて、
互いに絡ませて厚く積層した前記繊維を圧縮してシート状、板状又はブロック状に成形したことを特徴とするフィルター。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフィルターにおいて、
前記粉状粒状物が、気体や液体中から異物を吸着し、又は化学反応を促進する触媒機能を備えたことを特徴とするフィルター。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のフィルターにおいて、
前記繊維が、不織布状又は網状に成形されたことを特徴とするフィルター。
【請求項5】
目的に応じた暑さの合成樹脂製の繊維を互いに絡ませて肉厚の板状又はブロック状に成型する第1工程と、
前記互いに絡ませた繊維の表面に粉状粒状物を付着させる第2工程と、
前記互いに絡ませた繊維をその表面が僅かに溶ける程度に加熱する第3工程と、
前記互いに絡ませた繊維を圧縮して当該繊維の表面の前記粉状粒状物がその表面に食い込んだ状態でシート状、板状またはブロック状に成型する第4工程と
を備えて構成されたことを特徴とするフィルターの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のフィルターの製造方法において、
前記第2工程が、前記互いに絡ませた繊維に静電気を発生させてその表面に前記粉状粒状物を付着させることを特徴とするフィルターの製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載のフィルターの製造方法において、
前記第2工程が、前記互いに絡ませた繊維を振動させて当該繊維に静電気を発生させると共に前記粉状粒状物を全体に行き渡らせて当該粉状粒状物を当該繊維の表面に付着させることを特徴とするフィルターの製造方法。
【請求項8】
請求項5に記載のフィルターの製造方法において、
前記第2工程が、前記互いに絡ませた繊維及び前記粉状粒状物をそれぞれ逆の電極に帯電させて互いに引き合わせて前記粉状粒状物を前記繊維の表面に付着させることを特徴とするフィルターの製造方法。
【請求項9】
請求項5ないし8のいずれか1項に記載のフィルターの製造方法において、
前記第3工程で、前記繊維をその上下から離型性シートで挟んだことを特徴とするフィルターの製造方法。
【請求項10】
請求項5ないし9のいずれか1項に記載のフィルターの製造方法において、
前記第3工程及び第4工程を熱プレス加工により行うことを特徴とするフィルターの製造方法。
【請求項11】
請求項5ないし10のいずれか1項に記載のフィルターの製造方法において、
シート状、板状またはブロック状に成型された繊維を目的の形状に合わせた型で冷却しながらプレスする冷却プレス工程をさらに追加したことを特徴とするフィルターの製造方法。
【請求項12】
請求項5ないし11のいずれか1項に記載のフィルターの製造方法において、
シート状、板状またはブロック状に成型された繊維を目的の形状に合わせて打ち抜く打ち抜き加工をさらに追加したことを特徴とするフィルターの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−23441(P2008−23441A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198014(P2006−198014)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(395002102)株式会社シンデン (4)
【Fターム(参考)】