説明

フィルター及び空気清浄機

【課題】ガン発生の原因になる物質を除去できるフィルター及び空気清浄機を提供する。
【解決手段】繊維体41及びその表面に担持された鉄層42からなる鉄含有繊維体4の表面に、鉄、ラジウム、その他の重金属類を吸着する蛋白質であるフェリチンまたはヘモジデリン等を結合させて蛋白質層5を形成させることにより蛋白質結合繊維体6を作製し、この蛋白質結合繊維体を材料として構成されるフィルター、ならびに、このようなフィルターを備える空気清浄機を提供し、ダストやガス中に存在し、ガン発生の原因となる鉄、ラジウム、その多の重金属類の除去を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガンの発生を抑制できる、フィルター及び空気清浄機、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガンの発生メカニズムに関しては、諸説が提唱されており、また、これらの発生メカニズムに基づくガン化を抑制するための様々な処方も、提案されている。
【0003】
例えば、ガンの発生メカニズムに関しては、正常細胞のガン化が、発ガン性物質を摂取することによって正常細胞に突然変異が生じる第1段階(イニシエーション段階)と、突然変異した細胞が不死化細胞となる第2段階(プロモーション段階)と、不死化細胞がガン細胞に変化する第3段階(コンバージョン段階)と、免疫機能によってガン細胞を排除できずにガン細胞の増殖が生じる第4段階(プログレッション段階)と、からなる4つの段階を経て生じる、という説があり、この説に基づいてガン化を抑制する処方としては、特に第1段階又は第2段階において、発がん性物質の摂取を抑制するとともに、バラ科(Rosaceae)植物、モモ属(Amygdalus)植物、スモモ(Prunus)属植物、又はアンズ属(Armeniaca)植物の、エキス、及び、それらから抽出・精製された、アミダグリン、プルナシン、アミダグリン酸、グルコピラノシロキシーフェニル酢酸、フェニル−b−D−ゲンチオビオシド、フェニル−b−D−グルコピラノシドなどの、発ガンプロモーター抑制活性を有する物質、を摂取すること、が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
又は、フリーラジカル生成剤を投与することによって、ガンの発生を予防又は遅延させる、という処方も、提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−113088号公報
【特許文献2】特表2005−529938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、公知の発生メカニズムは確かに正しいとは思われるが、それが全てではなく、未知の発生メカニズムが存在していると思われる。何故なら、未だに多くの人々がガンを患っているからである。
【0007】
本発明は、新たな発生メカニズムに基づいたガンの発生を、抑制できる、フィルター及び空気清浄機、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、アスベストに起因すると思われる胸膜中皮腫の研究を行う中で、ガンの新たな発生メカニズムに関する、次のような知見を、得た。
【0009】
すなわち、含鉄角閃石系のアスベスト、例えば、アモサイトやクロシドライトが、体内に取り込まれると、体内の至る所に存在しており且つ鉄結合蛋白質として知られている、フェリチンやヘモジデリンが、アスベストに沈着して、アスベスト小体が生成され、このアスベスト小体に、ラジウムなどの放射性物質が沈着する。特に、アスベスト小体では、ラジウムが比較的高濃度で沈着するので、ラジウムから放射される放射線の放射頻度が高まる。したがって、ラジウムが沈着しているアスベスト小体は、正常な細胞のガン化を促進する。
【0010】
また、アスベスト以外の鉄含有物、例えば、鉄を含有している、ダストやガスが、体内に取り込まれた場合も、フェリチンやヘモジデリンが、ダストやガスに含まれている鉄に沈着して、小体が生成され、この小体に、ラジウムなどの放射性物質が沈着する。それ故、この小体も、アスベスト小体と同様に、正常な細胞をガン化する。なお、鉄を含有している、ダストやガスは、タバコの煙や、鉱山内又は製鉄所内などにおける空気などであり、日常生活においても吸引する可能性が比較的高くなっている。
【0011】
そこで、上記知見に基づいて、本発明者は、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)が体内に取り込まれるのを防止できれば、ガンの発生のリスクを低減できる、と考えて、本発明を成した。
【0012】
すなわち、本願の第1発明は、気体又は液体を濾過するフィルターにおいて、フィルターの構成素材が、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)、を吸着する蛋白質を、含有している、ことを特徴としている。
【0013】
更に、本願の第2発明は、上記第1発明のフィルターを、備えている、ことを特徴とする空気清浄機である。
【発明の効果】
【0014】
本願の第1発明においては、フィルターを通過する気体又は液体に含まれている、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)が、蛋白質に吸着される。したがって、上記第1発明によれば、気体又は液体から、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)を除去でき、それ故、気体中又は液体中の、ガン発生因子を無くして、ガンの発生を抑制できる。
【0015】
本願の第2発明によれば、一般的な空気清浄機において、フィルターによって、空気中の、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)を除去できるので、空気中のガン発生因子を無くすことができる。
【0016】
また、本願の第2発明によれば、水フィルター式の空気清浄機において、空気中の、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)を、水に溶け込ませることによって、除去できるとともに、水に溶け込んだ、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)を、フィルターによって、除去できるので、水の濾過機能を長期間安定化させることができ、したがって、長期間安定して、空気中のガン発生因子を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施例のフィルターを備えたマスクを示す斜視図である。
【図2】第1実施例のフィルターの構成素材である鉄含有繊維体及び蛋白質層を示す斜視部分図である。
【図3】第1実施例のフィルターの構成素材である撚糸を示す斜視断面部分図である。
【図4】第3実施例のフィルターを備えたタバコの一部破断部分図である。
【図5】第3実施例のフィルターを縦に分割して示す斜視図である。
【図6】第4実施例のフィルターを備えたフィルター板の一部破断斜視図である。
【図7】第5実施例のフィルター板を備えた、水フィルター式の空気清浄機、を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のフィルターは、気体又は液体を濾過するものであり、フィルターの構成素材が、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)、を吸着する蛋白質を、含有している。
【0019】
上記構成素材としては、鉄を含有している繊維体、すなわち鉄含有繊維体を、使用できる。鉄含有繊維体は、鉄からなる繊維体又は鉄を担持している繊維体である。鉄からなる繊維体は、鉄線を任意の長さに切断することによって形成できる。鉄を担持している繊維体は、人工繊維又は天然繊維の、表面に、全面的に又部分的に、鉄層を形成することによって、形成できる。この鉄層は、スパッタリング、真空蒸着、電気メッキ、無電解メッキなどの、公知の方法によって、形成できる。
【0020】
蛋白質としては、フェリチン、及び/又は、フェリチンの部分分解物であるヘモジデリンを、使用できる。この蛋白質は、鉄含有繊維体の鉄に結合している。すなわち、上記構成素材である鉄含有繊維体は、蛋白質を含有している。蛋白質を鉄含有繊維体の鉄に結合させるためには、蛋白質の水溶液に鉄含有繊維体を浸漬させればよい。
【0021】
本発明のフィルターの形態としては、例えば、織布、不織布、成形体、及び網体を、挙げることができる。
【0022】
(1)織布は、鉄含有繊維体を織って形成してもよく、又は、鉄含有繊維体を撚り合わせて撚糸を作製し、その撚糸を織って形成してもよい。なお、撚糸は、鉄含有繊維体と「他の繊維体」とを撚り合わせて作製してもよい。その場合において、「他の繊維体」の材料は、柔軟性、肌触り、吸湿性などを考慮して選択する。また、織布の形態を有するフィルターを作製する場合、鉄含有繊維体には、織る前に蛋白質が結合されてもよく、又は、織った後に蛋白質が結合されてもよい。織った後に蛋白質を結合させるためには、蛋白質の水溶液に織布を浸漬させればよい。このような織布の形態を有するフィルターは、例えばマスクに使用できる。
【0023】
(2)不織布は、数mmから数cmの長さに切断された鉄含有繊維体を、公知の方法によって絡み合わせることにより、形成できる。なお、不織布は、鉄含有繊維体と「他の繊維体」とを絡み合わせて形成してもよい。その場合において、「他の繊維体」の材料は、柔軟性、肌触り、吸湿性などを考慮して選択する。また、不織布の形態を有するフィルターを作製する場合、鉄含有繊維体には、絡み合わせる前に蛋白質が結合されてもよく、又は、絡み合わせた後に蛋白質が結合されてもよい。絡み合わせた後に蛋白質を結合させるためには、蛋白質の水溶液に不織布を浸漬させればよい。このような不織布の形態を有するフィルターは、例えばマスクに使用できる。
【0024】
(3)成形体は、数mmから数cmの長さに切断された鉄含有繊維体を、公知の成形方法によって任意の形態に成形することにより、例えば圧縮成形方法によって円柱状に成形することにより、形成できる。なお、成形体は、鉄含有繊維体と「他の繊維体」とを混合して形成してもよい。その場合において、「他の繊維体」の材料は、柔軟性、肌触り、吸湿性などを考慮して選択する。また、成形体の形態を有するフィルターを作製する場合、鉄含有繊維体には、成形前に蛋白質が結合されてもよく、又は、成形後に蛋白質が結合されてもよい。成形後に蛋白質を結合させるためには、蛋白質の水溶液に成形体を浸漬させればよい。このような成形体の形態を有するフィルターは、例えばタバコに使用できる。
【0025】
(4)網体は、鉄含有繊維体を網状に編むことにより、形成できる。なお、網体は、鉄含有繊維体と「他の繊維体」とを網状に編んで形成してもよい。その場合において、「他の繊維体」の材料は、柔軟性、肌触り、吸湿性などを考慮して選択する。また、網体の形態を有するフィルターを作製する場合、鉄含有繊維体には、編む前に蛋白質が結合されてもよく、又は、編んだ後に蛋白質が結合されてもよい。編んだ後に蛋白質を結合させるためには、蛋白質の水溶液に網体を浸漬させればよい。このような網体の形態を有するフィルターは、例えば、一般的な空気清浄機、換気扇、水フィルター式の空気清浄機などに、使用できる。
【0026】
上記構成のフィルターによれば、構成素材が、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)、を吸着する蛋白質を、含有しているので、フィルターを通過する気体又は液体から、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)を除去できる。
【0027】
これにより、含鉄角閃石系のアスベスト、例えば、アモサイトやクロシドライトが、体内に取り込まれるのを、防止できる。ところで、このようなアスベストが体内に取り込まれると、上述したように、アスベスト小体が生成され、そのアスベスト小体にラジウムなどの放射性物質が沈着し、その放射性物質から放射される放射線によって、正常細胞のガン化が促進される。しかしながら、上記構成のフィルターによれば、アスベストが体内に取り込まれるのを防止できるので、アスベスト小体の生成を防止でき、それ故、正常細胞のガン化を抑制できる。
【0028】
また、上記構成のフィルターによれば、タバコの煙や、鉱山内又は製鉄所内などにおける空気又は飲料水などから、それらに含まれている鉄を、除去できるので、鉄が体内に取り込まれるのを防止でき、それ故、体内において放射性物質が沈着するような小体が生成されるのを、防止でき、したがって、正常細胞のガン化を抑制できる。
【0029】
更に、上記構成のフィルターによれば、フィルターを通過する気体又は液体から、ラジウムを除去できるので、ラジウムが体内に取り込まれるのを防止でき、それ故、仮に体内においてアスベスト小体などが生成しても、その小体に放射性物質が沈着するのを、防止でき、したがって、正常細胞のガン化を抑制できる。
【0030】
すなわち、上記構成のフィルターによれば、フィルターを通過する気体又は液体から、体内においてガン発生因子となる、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)を除去できるので、ガンの発生を抑制できる。
【0031】
また、本発明の空気清浄機は、上記構成のフィルターを、備えている。一般的な空気清浄機は、吸引ファンを駆動装置によって作動させることにより、空気を、吸気口から吸気路に吸い込み、フィルターを通し、排気路を経て排気口から放出するようになっている。
【0032】
この空気清浄機によれば、フィルターによって、空気中の、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)を除去できるので、ガン発生因子を含まない清浄な空気を、得ることができる。したがって、この空気清浄機が設置された部屋の居住者にガンが発生するのを、抑制できる。
【0033】
また、水フィルター式の空気清浄機は、吸引ファンを駆動装置によって作動させることにより、空気を、吸気口から吸気路に吸い込み、水中を通し、排気路を経て排気口から放出するようになっている。そして、水中には、上記構成のフィルターが設置されている。
【0034】
この空気清浄機によれば、空気中の、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)を、水に溶け込ませることにより、除去できるので、ガン発生因子を含まない清浄な空気を、得ることができる。そして、水に溶け込んだ、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)を、フィルターによって、除去できるので、水の濾過機能を長期間安定化させることができる。したがって、この空気清浄機によれば、長期間安定して、ガン発生因子を含まない清浄な空気を、得ることができる。
【実施例】
【0035】
[第1実施例]
図1は、本実施例のフィルター1Aを備えたマスク2を示している。マスク2は、口及び鼻を覆うための覆い部21と、右耳用ゴム紐22と、左耳用ゴム紐23と、からなっている。覆い部21は、フィルター1Aを収容するポケット部211を有している。ポケット部211は、矩形状の、表側布体212と裏側布体213とを、重ねて、下縁214及び両側縁215、216にて縫い合わせることによって、形成されている。なお、右耳用ゴム紐22は、右側縁215を縫い合わせる際に縫い付けられており、左耳用ゴム紐23は、左側縁216を縫い合わせる際に縫い付けられている。
【0036】
フィルター1Aは、矩形状且つシート状の、織布の形態を有している。織布は、1枚で使用されてもよく、又は、複数枚重ねて使用されてもよい。
【0037】
この織布の構成素材は、図2に示される鉄含有繊維体4である。鉄含有繊維体4は、繊維体41と、繊維体41の表面に形成された鉄層42と、からなっている。すなわち、鉄含有繊維体4においては、繊維体41が鉄層42すなわち鉄を担持している。繊維体41は、断面円形の線体であり、0.1mmの直径を有している。繊維体41は、熱可塑性合成樹脂でできており、具体的にはポリエステルでできている。鉄層42は、繊維体41の表面全面に、スパッタリングによって、形成されている。
【0038】
更に、図2に示されるように、鉄含有繊維体4の鉄層42の表面の全面には、蛋白質層5が形成されている。蛋白質層5の蛋白質は、フェリチン、及び/又は、ヘモジデリンである。蛋白質層5は、蛋白質を含む水溶液に、鉄含有繊維体4を浸漬させることにより、鉄層42の表面に、容易に形成される。なお、蛋白質層5が形成された鉄含有繊維体4を、以下では「蛋白質結合繊維体6」と称する。
【0039】
そして、織布は、図3に示される撚糸3を平織りすることによって、形成されている。撚糸3は、蛋白質結合繊維体6を複数本引き揃えて構成された引き揃え糸31を、複数本撚り合わせることによって、形成されている。
【0040】
上記構成のフィルター1Aを備えたマスク2を使用すると、使用者が吸引する空気から、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)が、フィルター1Aの蛋白質層5に吸着されることによって除去される。したがって、空気中の、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)を使用者が体内に取り込んでしまうのを、防止でき、ガンの発生を抑制できる。
【0041】
特に、マスク2においては、呼気中の水分によってフィルター1Aが適度に湿るので、蛋白質層5における鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)の吸着が、促進される。なお、フィルター1Aを初めから湿らせておいても、同様である。
【0042】
なお、本実施例のフィルター1A及びマスク2においては、次のような変形構成を採用できる。
(a)蛋白質層5を保護するために、蛋白質層5の表面に、トレハロースなどの糖類からなる保護層を形成してもよい。この保護層は、トレハロースなどの糖類の水溶液に、蛋白質結合繊維体6を浸漬することによって、形成できる。又は、この保護層は、蛋白質とトレハロースなどの糖類とを混合した水溶液に、鉄含有繊維体4を浸漬することによって、形成できる。
(b)撚糸3は、全てが蛋白質結合繊維体6である必要はなく、他の繊維体を含んでもよい。この場合において、「他の繊維体」の材料は、柔軟性、肌触り、吸湿性などを考慮して選択する。
(c)鉄含有繊維体4としては、鉄からなる繊維体を用い、鉄層42の形成を省略してもよい。鉄からなる繊維体は、鉄線を任意の長さに切断することによって形成できる。
(d)鉄含有繊維体4を用いて織布を形成し、その後、鉄含有繊維体4に蛋白質層5を形成してもよい。この場合は、織布を蛋白質の水溶液に浸漬すればよい。
(e)織布は、撚糸3を経ることなく、鉄含有繊維体4をそのまま織って形成してもよい。
(f)織布は、平織りに限らず、他の織り方法で形成してもよい。
(g)繊維体41は、他の断面形状を有してもよく、又は、扁平な帯状でもよい。
(h)繊維体41は、ポリアミド又はアクリルで作られてもよい。
(i)繊維体41は、表面に鉄層42を形成できる材料であれば、熱可塑性合成樹脂繊維に限らない。
(j)鉄層42は、真空蒸着、電気メッキ、無電解メッキなどの、公知の方法によって、形成してもよい。
(k)鉄層42は、繊維体41の表面に、部分的に形成するだけでもよい。
(l)蛋白質層5は、鉄含有繊維体4の表面に、部分的に形成するだけでもよい。
(m)マスク2の形状は、図1に示されるような平面的形状に限らず、鼻や口の凹凸に合った高い密閉性を有する立体的形状でもよい。
【0043】
[第2実施例]
第1実施例のフィルター1Aが織布の形態を有しているのに対し、本実施例のフィルターは、不織布の形態を有している。このフィルターは、数mmから数cmの長さに切断された、第1実施例の鉄含有繊維体4又は蛋白質結合繊維体6を、単独で又は他の繊維体と共に、公知の方法によって絡み合わせることにより、形成できる。なお、鉄含有繊維体4には、絡み合わせる前に蛋白質層5を形成し、又は、絡み合わせた後に蛋白質層5を形成する。その他の構成及び変形構成は、第1実施例と同じである。
【0044】
本実施例のフィルターによっても、空気中の、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)を除去できる。したがって、本実施例によれば、第1実施例と同様の効果を発揮できる。
【0045】
[第3実施例]
図4は、本実施例のフィルター1Bを備えたタバコ7の一部破断部分図である。図5は、フィルター1Bを縦に分割して示す斜視図である。第1実施例のフィルター1Aが織布の形態を有しているのに対し、本実施例のフィルター1Bは、成形体の形態を有している。フィルター1Bは、数mmから数cmの長さに切断された、第1実施例の蛋白質結合繊維体6を、他の繊維体と共に、圧縮成形によって、円柱状に成形することにより、形成されている。なお、フィルター1Bは、第1実施例の鉄含有繊維体4を、単独で又は他の繊維体と共に、公知の方法によって成形した後に、鉄含有繊維体4に蛋白質層5を形成することによって、形成してもよい。その他の構成及び変形構成は、第1実施例と同じである。
【0046】
本実施例のフィルター1Bによっても、空気中の、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)を除去できる。したがって、本実施例によれば、第1実施例と同様の効果を発揮でき、特に、喫煙者におけるガンの発生を抑制できる。
【0047】
[第4実施例]
図6は、本実施例のフィルター1Cを備えたフィルター板8の一部破断斜視図である。このフィルター板8は、例えば、空気清浄機の吸気口又は排気口、換気扇の出口など、に取り付けて使用される。第1実施例のフィルター1Aが織布の形態を有しているのに対し、本実施例のフィルター1Cは、網体の形態を有している。フィルター板8は、フィルター1Cを2枚の不織布81、82によって両面から挟んで構成されている。フィルター1Cは、第1実施例の鉄含有繊維体4を、単独で又は他の繊維体と共に、網状に編んだ後、鉄含有繊維体4に蛋白質層5を形成することによって、形成されている。なお、フィルター1Cは、第1実施例の蛋白質結合繊維体6を、単独で又は他の繊維体と共に、網状に編むことにより、形成してもよい。その他の構成及び変形構成は、第1実施例と同じである。
【0048】
本実施例のフィルター1Cによれば、第1実施例の場合と同様に、空気中の、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)を除去できる。それ故、フィルター板8を備えた空気清浄機によれば、吸気から、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)を除去して、排気できる。また、フィルター板8を備えた換気扇によれば、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)が除去された排気を、屋外に放出できる。したがって、空気中のガン発生因子の低減を図ることができる。
【0049】
なお、フィルター板8のフィルター1Cは、適度に水で湿らせた状態で使用するのが、好ましい。これによれば、フィルター1Cの蛋白質層5における、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)の吸着が、促進される。このために、空気清浄機又は換気扇には、フィルター1Cを湿らせるための加湿手段を設けるのが、好ましい。
【0050】
[第5実施例]
図7は、第4実施例のフィルター板8を備えた、水フィルター式の空気清浄機9、を示す縦断面図である。空気清浄機9は、ケーシング91内に、水タンク92と、多段型の吸引ファン93と、駆動モータ94と、を備えており、また、ケーシング91を貫通して、外気吸引管95と、排気管96と、を備えている。水タンク92は、ケーシング91内の底部にて水を貯留するようになっている。外気吸引管95の内側端部951は、水タンク92に貯留された水の水面よりも下方に位置している。吸引ファン93は、駆動モータ94の垂直な出力軸941に装着されている。そして、水タンク92の水中には、フィルター板8が設置されている。
【0051】
上記構成の空気清浄機9においては、駆動モータ94が作動して、吸引ファン93が回転すると、ケーシング91内が陰圧となり、外気吸引管95から外の空気が吸引される。そして、吸引された空気は、水タンク92の水中を通過する。これにより、空気中の、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)が、水に溶け込んでいく。したがって、清浄な空気が、排気管96から外へ放出される。すなわち、空気が、水タンク92の水によって、濾過される。このようにして、空気清浄機9は、空気を清浄化する。
【0052】
一方、水に溶け込んだ、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)は、フィルター板8のフィルター1Cの蛋白質層5によって、吸着される。これにより、水タンク92の水から、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)が、除去される。したがって、水タンク92の水が清浄化される。したがって、フィルター1Cは、水タンク92の水の濾過機能を、長期間、安定化できる。
【0053】
したがって、上記構成の空気清浄機9によれば、水タンク92の水中にフィルター板8を備えているので、長期間安定して、空気を清浄化できる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のフィルターは、新たな発生メカニズムに基づいたガンの発生を、抑制できるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0055】
1A、1B、1C フィルター 4 鉄含有繊維体 41 繊維体 42 鉄層 5 蛋白質層 9 空気清浄機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体又は液体を濾過するフィルターにおいて、
フィルターの構成素材が、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)、を吸着する蛋白質を、含有している、ことを特徴とするフィルター。
【請求項2】
上記構成素材は、鉄含有繊維体であり、
上記蛋白質は、鉄含有繊維体の鉄に結合している、請求項1記載のフィルター。
【請求項3】
鉄含有繊維体は、鉄からなる繊維体又は鉄を担持している繊維体である、請求項2記載のフィルター。
【請求項4】
上記蛋白質は、フェリチン又はヘモジデリンである、請求項2記載のフィルター。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルターを、備えている、ことを特徴とする空気清浄機。
【請求項6】
フィルターが水で湿らされている、請求項5記載の空気清浄機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−25115(P2011−25115A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171180(P2009−171180)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】