説明

フィルター用リテーナ

【課題】従来のフィルターエレメントの内部構造による精度や圧損等の種々の問題点を一挙に解決可能と全く新規な構造のフィルター用リテーナを提供する。
【解決手段】両面上に濾材を支持するフィルター用リテーナ(1)であって、化学的エッチングにより形成された貫通穴(4)が周方向に多数配列された一対のエッチング処理円板(3a、3b)が、対応する各貫通穴(4)の位置を一致させた状態で、互いに接合されており、接合された形態にて、一対のエッチング処理円板(3a、3b)間に径方向に延びる内部通路(8)が形成されていることを特徴とするフィルター用リテーナ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルターエレメント内に濾材支持用に設けられるフィルター用リテーナに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばポリマー濾過用や粘性流体濾過用のフィルターとして、円板状のフィルターエレメントが知られている。このようなフィルターエレメントにおいては、フィルターエレメントの厚み方向中央部に濾材を支持するための金網等からなるリテーナが配置されることが多く、リテーナの両面に多孔板(例えば、パンチングメタル)を配置し、その上に濾材を敷設してフィルターエレメントを構成することが多い。このようなフィルターエレメントが、例えば、間にスペーサを介在させた状態で複数枚積層され、フィルターエレメント間に流入されてきた被濾過流体が、濾材を通過されて濾過された後、多孔板を通してリテーナ部に至り、リテーナ部内を径方向に(例えば径方向中心部に向かう方向に)流れて積層フィルターエレメントの中央部等に集められ、そこから濾過流体が所定の行き先に送られる(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特許第3831482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような構成のフィルターエレメントにおいては、リテーナや多孔板は、プレスで製作されることが多いが、プレス成形の場合には、寸法精度に限界があるので、精密な寸法公差を要求される場合には、製作が困難になることがある。また、プレス成形の場合には、パンチや型等の費用が高いため容易には寸法や形状の設計変更ができないため、多孔板の開口率やリテーナの形態は容易には変更できない。
【0004】
また、濾材を通過した後の濾過流体に対する抵抗は、極力小さいことが望ましいが、多孔板、さらにはリテーナと通過していくため、圧損の大幅な低減は通常困難である。リテーナは、例えば金網で形成される場合、その表面は凹凸形状になるので、シート状の濾材を所定の形態を保って(例えば平面形態を保って)保持するために、リテーナと濾材の間に多孔板が介装されるが、濾材に対する所望の保持強度を維持するために、多孔板を薄くしたり多孔板の開口率を上げたりすることには限界がある。また、リテーナ部に流入されてきた濾過流体は、リテーナの両面部や内部を通して径方向に流れることになるが、金網等からなるリテーナの場合には、流路形状が複雑になり、ストレート状に形成することは不可能であるので、リテーナ内の圧損の低減にも限界があるとともに、リテーナ内での滞留が生じやすい構造となる。
【0005】
また、金網等からなるリテーナの場合には、リテーナ自体には濾材の保持強度はそれほど期待できないため、主として多孔板に濾材の保持強度の大半を担わせる構造となるので、この面からも、多孔板を薄くしたり多孔板の開口率を上げたりすることには限界があり、ひいてはフィルターエレメント全体の厚みを小さくすることにも限界がある。フィルターエレメント全体の厚みが大きいと、それだけ内部での滞留時間が長くなるとともに、フィルターエレメントを複数枚積層する場合においてはフィルター装置全体が大型化せざるを得なくなる。
【0006】
さらに、濾材を通過しフィルターエレメント内に流入した濾過流体を径方向に流すためには、フィルターエレメントの外周側または内周側のいずれか一方を封止しなければならないが、例えば外周側で封止して濾過流体を径方向内側に向けて流す場合、通常、両面側に配置されている濾材をリテーナや多孔板の外側まで延設し、そこで両濾材を溶接等により接合して外周側で封止するようにしている。しかし、この部分では、濾材の延設部に対してリテーナや多孔板の外周端が段差を形成することになるので、外周封止加工が比較的困難な加工工程となっており、その分、製造上の歩留りの向上にも限界が生じている。また、上記のような外周側における段差部の存在は、フィルターエレメント内での不要な滞留部の発生のおそれを生じさせることともなっている。
【0007】
本発明の課題は、上記のような従来一般のフィルターエレメントの内部構造による種々の問題点に着目し、全く新規な構造のフィルター用リテーナを提供することにより、それらの問題点を一挙に解決可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るフィルター用リテーナは、両面上に濾材を支持するフィルター用リテーナであって、化学的エッチングにより形成された貫通穴が周方向に多数配列された一対のエッチング処理円板が、対応する各貫通穴の位置を一致させた状態で、互いに接合されており、接合された形態にて、前記一対のエッチング処理円板間に径方向に延びる内部通路が形成されていることを特徴とするものからなる。
【0009】
このような本発明に係るフィルター用リテーナにおいては、両面上に設けられる濾材により濾過された濾過流体が、リテーナの貫通穴を通してリテーナ内に流入し、そこから径方向に延びる内部通路を通して径方向中央部(場合によって径方向外周部も可能)に集められる。この濾過流体の流路の一部を形成するための貫通穴が化学的エッチングにより形成されるので、従来のプレス等による成形に比べ、エッチング用のマスクを高精度に作成しさえすれば、精密な寸法公差にも対応できるようになり、開口率(つまり、リテーナの全平面の面積に対する貫通穴の占める面積割合)や全体形状等の設計変更にも容易に対応できるようになる。
【0010】
また、一対のエッチング処理円板間に径方向に延びる内部通路は、基本的に一対のエッチング処理円板を対面させて互いに接合するだけで容易に形成できるとともに、比較的単純な形状の通路に形成可能であり、したがって、金網リテーナ等に比べ、著しく内部圧損を低減でき、かつ、滞留のおそれを容易に除去できる。
【0011】
また、エッチング処理円板は、基本的に素材に化学的エッチングを施したものであるから、貫通穴等以外の部分は素材の形態を残すことが可能であり、全体として、平板状の円板に形成することができる。したがって、リテーナ自体で所望の強度を確保することが可能になり、従来の金網リテーナ等の場合に設けていた多孔板の不要化が可能になって、さらなる圧損の低減や、フィルターエレメント全体の薄型化が可能になる。薄型化により、フィルターエレメントを複数枚積層する場合のフィルター装置全体の小型化をはかることが可能になる。また、多孔板の不要化により、滞留可能箇所の低減やフィルターエレメント内滞留時間の短縮も可能になる。
【0012】
さらに、一対のエッチング処理円板の接合体は、全体として平板状の円板形態に形成可能であり、かつ、従来リテーナ両面上に設けていた多孔板が不要化可能であることから、本発明のリテーナの両面には、直接濾材を設けることが可能になる。しかも、例えば、リテーナの両面外周部に、濾材との接合用環状平面部を形成しておき、その部分に直接濾材を接合して封止できるようにすれば、従来構造におけるような、濾材の延設部をリテーナや多孔板の外周端の段差の外側で互いに接合させる構造を採用する必要が無くなり、構造の簡素化、製造の容易化をともに達成できるようになる。また、上記のような外周側における段差部の存在による、フィルターエレメント内での不要な滞留部の発生のおそれも無くなる。
【0013】
このような本発明に係るフィルター用リテーナにおいては、より具体的で望ましい形態として、例えば、化学的フルエッチングにより形成された貫通穴が周方向に多数配列されているとともに該貫通穴の列が同心円状に複数の環状列として配置されており、該環状列間に、同心円状に延びハーフエッチングにより素材厚みを残した状態で環状領域が形成された一対のエッチング処理円板が、ハーフエッチング面同士を対向させ、かつ、対応する各貫通穴および環状領域の位置を一致させた状態で、互いに接合されている形態を採用することができる。このような形態においては、ハーフエッチング面同士が対向されて形成された内部空間は、前述の内部通路として形成することが可能になり、内部通路が一対のエッチング処理円板同士を所定の形態で接合するだけの簡単な操作で形成でき、容易に所望のリテーナを構成することが可能になる。
【0014】
また、上記一対のエッチング処理円板の互いに対向する面とは反対側の面の、上記貫通穴以外の部分が、エッチング処理前の素材の平坦面のまま残されている形態とすることができる。この平坦面上には、濾材を濾材自身の形態を損なうことなく設置することが可能であるから、目標とするフィルターエレメントが一層容易に製造されることになる。
【0015】
また、上記対向されたハーフエッチング面の面間部分は、環状かつ同心円状に延びるとともに、上記各環状列における貫通穴をリテーナ径方向に連通させる内部空間を形成している形態とすることができる。この内部空間は、前述の内部通路として機能することが可能である。
【0016】
とくに、上記対向されたハーフエッチング面の面間部分が、環状かつ同心円状に延びるとともに、上記各環状列における貫通穴をリテーナ径方向に実質的にストレート状に連通させる内部空間を形成している形態とすれば、径方向にストレート状に延びる内部通路を形成することが可能になり、一層内部圧損の低減をはかることができる。
【0017】
上記一対のエッチング処理円板は、外周側または内周側で全周にわたって接合されていることが好ましい。これによって、リテーナ自体に対する径方向の必要な封止構造が構成される。接合は、溶接によってもよいし、接着や融着によることも可能である。
【0018】
濾材の支持形態としては特に限定しないが、本発明では、リテーナの両面上に濾材が直接支持可能となることが、大きな特徴の一つである。ただし、フィルターエレメント全体として従来構造と同等の厚みが要求される場合等の特別な場合には、リテーナの両面上に濾材が多孔板を介して支持される形態を採用してもよい。
【0019】
なお、一対のエッチング処理円板を例えば外周側で接合するとともにリテーナの両面上に濾材を設ける場合、基本的には、例えば一対のエッチング処理円板をスポット溶接等で貼り合わせた後、濾材を重ねて外周を全周にわたって溶接する手順となるが、例えば一対のエッチング処理円板を貼り合わせないまま濾材を重ねて外周溶接することも可能である。
【0020】
上記エッチング処理円板の素材としては特に限定されないが、防食性や機械強度、耐熱性等の面から、代表的にはステンレスを使用できる。
【0021】
なお、本発明における化学的エッチングの条件については特に限定されないが、一例として次のような条件を挙げることができる。
・エッチング液の種類:塩化第二鉄
・時間:板厚、作業方法により異なるが、平均すると3.5〜4時間が適当
・温度:40〜60℃程度
・レジスト種類:DFR
・現像液種類:アルカリ系現像液
・剥離液種類:アルカリ系剥離液
【発明の効果】
【0022】
このように、本発明に係るフィルター用リテーナによれば、従来一般のフィルターエレメントの内部構造による種々の問題点を、新規な構造のフィルター用リテーナを提供することにより一挙に解決可能となる。より具体的には、寸法精度の向上、設計、製造の容易化、内部構造の簡素化、圧損の低減、薄型化、滞留可能箇所や滞留時間の低減、封止加工の容易化等が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の望ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1〜図5は、本発明の一実施態様に係るフィルター用リテーナ1を示しており、本実施態様では、図3に示すように、該リテーナ1には、その両面上に濾材2が直接支持されるようになっている。リテーナ1は、一対のエッチング処理円板3a、3bの接合体からなり、各エッチング処理円板3a、3bには、化学的フルエッチングにより貫通穴4が多数形成されている。貫通穴4は周方向に多数配列されて該貫通穴4の列が同心円状に複数の環状列として配置されている。該環状列間には、同心円状に延びハーフエッチングにより素材厚みを残した状態で環状領域5が形成されている。一対のエッチング処理円板3a、3bは、上記ハーフエッチング面6a、6b同士(環状領域5同士)を対向させ、かつ、対応する各貫通穴4および環状領域5の位置を一致させた状態で、互いに接合されている。接合は、本実施態様では、外周部7で全周溶接により接合され、この部分で径方向外方への内部流体の漏れが封止されている。
【0024】
一対のエッチング処理円板3a、3bの互いに対向する面とは反対側の面の、貫通穴4以外の部分は、エッチング処理前の素材の平坦面のまま(例えば、ステンレス板素材の平坦面のまま)残されている。この平坦面上に図3に示したように濾材2が設けられる。
【0025】
対向されたハーフエッチング面6a、6bの面間部分は、環状かつ同心円状に延びるとともに、貫通穴4の各環状列における貫通穴4間をリテーナ径方向に連通させる内部空間に形成されており、この内部空間が、貫通穴4を通してリテーナ内に流入してきた濾過流体を径方向に流す内部通路8を形成している。この内部通路8は、リテーナの大部分において、径方向にストレート状に延びていることが好ましい。つまり、リテーナの大部分において、径方向に隣接する貫通穴4同士が、ストレート状に延びた内部通路8によって連通されている。貫通穴4間をリテーナ径方向に連通させない部位では、断面で見て閉塞部9に形成されており、環状領域5による内部空間は単に周方向に延びている。
【0026】
上記のようなフィルター用リテーナ1においては、濾材2により濾過された濾過流体が、リテーナ1の貫通穴4を通してリテーナ1内に流入し、そこから径方向に延びる内部通路8を通して径方向中央部に集められる。貫通穴4および内部通路8を形成するハーフエッチング面6a、6b(環状領域5部分)はともに化学的エッチングにより形成されるので、極めて高精度に形成可能であり、エッチング用のマスクを変更することにより、貫通穴4による開口率や貫通穴4の配列形態、貫通穴4形状等の設計変更にも容易に対応できる。つまり、実質的に自由に設計可能である。
【0027】
また、一対のエッチング処理円板3a、3b間に形成される内部通路8は、単にエッチング処理円板3a、3b同士を所定形態で対面させて接合するだけで容易に形成できる。また、内部通路8は、単純な形状の通路に形成され、とくにストレート状の通路に形成される得るので、内部圧損を低減でき、かつ、滞留のおそれも容易に除去できる。
【0028】
また、貫通穴4による開口率の適切な設定や、貫通穴4以外の部分を素材の平坦面として残すことにより、リテーナ1自体で容易に所望の強度を確保することが可能になるとともに、従来の多孔板の不要化が可能になり、さらなる圧損の低減や、フィルターエレメント全体の薄型化が可能になる。薄型化すれば、フィルターエレメントを複数枚積層する場合のフィルター装置全体の小型化をはかることが可能になる。また、多孔板の不要化により、滞留可能箇所の低減やフィルターエレメント内滞留時間の短縮も可能になる。
【0029】
さらに、従来の多孔板の不要化により、外周部における段差が無くなり、かつ、濾材2の外周部を直接リテーナ1の両面外周部に接合可能であるから、この部位における封止構造が大幅に簡素化されるとともに、製造が容易化される。また、従来構造におけるような外周側の段差部の存在による、フィルターエレメント内での不要な滞留部の発生のおそれも無くなる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係るフィルター用リテーナは、あらゆるフィルターエレメントに適用可能であり、とくに、いわゆるリーフディスク型のフィルターエレメントに好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施態様に係るフィルター用リテーナの平面図である。
【図2】図1のリテーナの断面図である。
【図3】図1のリテーナに濾材を設けた場合の断面図である。
【図4】図1のリテーナの部分斜視図である。
【図5】図1のリテーナを図4の切断部位とは異なる部位で切断した場合の部分斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 フィルター用リテーナ
2 濾材
3a、3b エッチング処理円板
4 貫通穴
5 ハーフエッチングによる環状領域
6a、6b ハーフエッチング面
7 外周部
8 内部通路
9 断面で見た閉塞部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面上に濾材を支持するフィルター用リテーナであって、化学的エッチングにより形成された貫通穴が周方向に多数配列された一対のエッチング処理円板が、対応する各貫通穴の位置を一致させた状態で、互いに接合されており、接合された形態にて、前記一対のエッチング処理円板間に径方向に延びる内部通路が形成されていることを特徴とするフィルター用リテーナ。
【請求項2】
化学的フルエッチングにより形成された貫通穴が周方向に多数配列されているとともに該貫通穴の列が同心円状に複数の環状列として配置されており、該環状列間に、同心円状に延びハーフエッチングにより素材厚みを残した状態で環状領域が形成された一対のエッチング処理円板が、ハーフエッチング面同士を対向させ、かつ、対応する各貫通穴および環状領域の位置を一致させた状態で、互いに接合されている、請求項1に記載のフィルター用リテーナ。
【請求項3】
前記一対のエッチング処理円板の互いに対向する面とは反対側の面の、前記貫通穴以外の部分が、エッチング処理前の素材の平坦面のまま残されている、請求項1または2に記載のフィルター用リテーナ。
【請求項4】
前記対向されたハーフエッチング面の面間部分は、環状かつ同心円状に延びるとともに、前記各環状列における貫通穴をリテーナ径方向に連通させる内部空間を形成している、請求項2または3に記載のフィルター用リテーナ。
【請求項5】
前記対向されたハーフエッチング面の面間部分は、環状かつ同心円状に延びるとともに、前記各環状列における貫通穴をリテーナ径方向に実質的にストレート状に連通させる内部空間を形成している、請求項4に記載のフィルター用リテーナ。
【請求項6】
前記一対のエッチング処理円板が、外周側または内周側で全周にわたって接合されている、請求項1〜5のいずれかに記載のフィルター用リテーナ。
【請求項7】
前記両面上に濾材が直接支持される、請求項1〜6のいずれかに記載のフィルター用リテーナ。
【請求項8】
前記両面上に濾材が多孔板を介して支持される、請求項1〜6のいずれかに記載のフィルター用リテーナ。
【請求項9】
前記エッチング処理円板の素材がステンレスからなる、請求項1〜8のいずれかに記載のフィルター用リテーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−279517(P2009−279517A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134268(P2008−134268)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000214272)長瀬産業株式会社 (137)
【出願人】(591012200)株式会社東海スプリング製作所 (12)