説明

フィルター

【課題】高い分離性能を持つフィルターであって、水系液体の濾過操作におけるエアロックやマイクロバブルの発生を解消し、通水不良と気泡発生の問題を改善したポリオレフィン極細繊維不織布を濾過材とする主としてシート状またはカートリッジ状のフィルターを提供する。
【解決手段】親水剤が溶融ブレンドされた260℃以下の温度で溶融紡糸可能な少なくとも1種のポリオレフィン組成物から得られ、かつ平均繊維径が0.1〜10.0μmの極細繊維からなる不織布を濾過材の少なくとも一部に用いたフィルター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系液体の濾過に使用されるフィルターに関する。詳しくは、水系液体の濾過操作におけるエアロックやマイクロバブルの発生を解消し、通水不良と気泡発生の問題を改善したポリオレフィン極細繊維不織布を濾過材とする主としてシート状またはカートリッジ状のフィルターに関する。尚、本発明において水系液体とは、水を50重量%以上含有する懸濁物含有液体である。
【背景技術】
【0002】
従来の、粒径が0.1〜数μmの微粒子等を100%近く濾過するポリオレフィン不織布から成る濾過材としては、メルトブロー紡糸法により製造されたポリオレフィン極細繊維不織布を加熱カレンダーロールで加圧することで圧密処理したものが知られている。これらの濾過材は微小な流孔径をもち、かつ素材のポリオレフィン自体が疎水性であるため、水系液体との親和性が悪く、水系液体を濾過した際にエアロックやマイクロバブルの発生といった通水不良の問題を発生することが知られている。
【0003】
エアロック
ポリオレフィンからなるフィルターはそれ自体が撥水性であるため通水性に劣り、特に流孔径が0.1〜数μmレベルの高い分離性能を持つフィルターで顕著である。これは、フィルターの微細な孔に水が流れ込まないために起きる現象で、エアロックと呼ばれる。エアロックが生じると、フィルターの微細な孔は十分に使用されず、一部の孔からのみ水が流れるため、本来フィルターが持つ濾過面積よりも小さい範囲で濾過が行われる。この際、濾過圧は通常よりも大きくなるし、より微細な孔ほど水が流れにくい、すなわち、より大きな孔から水が流れているので、分離性能も劣る。
【0004】
マイクロバブルの発生
エアロックが発生したフィルターを使用すると、濾過圧変動等の何らかのきっかけでフィルターの孔に滞留したエアが抜けることがあり、このエアをマイクロバブルと言う。マイクロバブルの発生は液を泡立たせ、製品の不良率を上げることになり、特に塗料やめっき液等の濾過では問題を生じる。エアロックとマイクロバブルの発生の本質的な原因は不織布に滞留するエアが原因である。ただし、エアロックは完全に解消されなくとも、通水性や濾過精度が満足することがあるが、マイクロバブルは微量な滞留エアが問題になることもあるので、より完全な解消が必要である。
マイクロバブルもエアロック同様、流孔径が0.1〜数μmレベルの高い分離性能を持つフィルターにおいて発生が顕著であるため、マイクロバブルが問題となる工程では、高い分離性能を持つフィルターを使用できない。従って、マイクロバブルの発生防止と高い分離性能の両方を備えたフィルターが望まれている。
【0005】
エアロックやマイクロバブルの発生といった通水不良の問題を解消するため、フィルターをエタノールやイソプロピルアルコール等に漬け込み、フィルター全体をアルコールで濡らし、その後に水系液体に置換する方法がある。このアルコール処理により、通水時のエアロックは見られなくなるが、置換が不十分だとアルコールが濾過ラインに混入し、工業用途においては生産に支障をきたしたり、製品に悪影響を及ぼしたりするという問題がある。特に無電解めっきではたとえ微量であってもアルコールの混入がめっき品質に与える影響が大きく、上記したアルコール置換の方法は使用できない場合が多い。
【0006】
通水不良を解消する他の手段としては、水との親和性が強い樹脂で不織布を作製し、フィルターに用いる方法が考えられる。水との親和性が強い樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレートやナイロン等が挙げられる。これらの樹脂は、樹脂としては水との親和性が強い方ではあるが、必ずしも十分なものではない。また、水との親和性が強い樹脂の多くは、高温の水や酸・塩基水溶液で分解したりする等、耐溶液性に劣るものが多く、これらの液体の濾過には使用できない。
【0007】
また、ポリオレフィン不織布を使用したフィルターの通水不良を解消する他の手段として、ポリオレフィン不織布を親水化することも考えられ、その方法としては、親水化油剤中に不織布を含浸するディッピング方式、親水化油剤を不織布に噴霧するスプレー方式、親水化油剤をグラビアロールにて塗布するグラビア方式が広く用いられている。しかし、いずれの方式においても不織布化後に親水化処理が施されるため、不織布を構成する繊維1本1本に均一に親水化油剤を塗工することは困難であり、また不織布内部まで親水化油剤が浸透せず、不織布の厚み方向に親水化油剤濃度の不均衡を生じ易い。また、界面活性剤等を水で希釈し、所定濃度に調整して親水化処理を行うが、ポリオレフィン不織布等は元々疎水性不織布であるため、水で希釈された親水化油剤と不織布との親和性が弱く、特に高速での親水化処理では不織布表面に塗布ムラが生じ易く、前記親水化油剤が付着せず部分的に撥水となる箇所が発生し易い。こうして得られた塗布ムラの多いポリオレフィン不織布をフィルターに用いても、親水化が不十分であるのは明白であり、エアロックやマイクロバブルを完全に無くすことはできない。また、アルコールと同様に、界面活性剤が液に混入する可能性も高い。
【0008】
ポリオレフィンの不織布を親水化するため、親水剤を溶融混合する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、極細繊維不織布を得ることができるメルトブロー方式等の直接紡糸法においては、樹脂種によっては使用できないことがあることがわかっている。
【0009】
【特許文献1】特開平10−71327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、高い分離性能を持つフィルターであって、水系液体の濾過操作におけるエアロックやマイクロバブルの発生を解消し、通水不良と気泡発生の問題を改善したポリオレフィン極細繊維不織布を濾過材とする主としてシート状またはカートリッジ状のフィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意研究した。その結果、親水剤が溶融ブレンドされた260℃以下の温度で溶融紡糸可能な少なくとも1種のポリオレフィン組成物から得られ、かつ平均繊維径が0.1〜10.0μmの極細繊維からなる不織布を濾過材の少なくとも一部に用いたフィルターによって前記課題が解決されることを知り、この知見に基づいて本発明を完成させた。
【0012】
本発明は以下の構成を有する。
(1)親水剤が溶融ブレンドされた260℃以下の温度で溶融紡糸可能な少なくとも1種のポリオレフィン組成物から得られ、かつ平均繊維径が0.1〜10.0μmの極細繊維からなる不織布を濾過材の少なくとも一部に用いたフィルター。
(2)極細繊維の製法がメルトブロー方式である(1)に記載のフィルター。
(3)平均流孔径(ASTM F316−86)が0.1〜10.0μmである、(1)または(2)に記載のフィルター。
(4)親水剤が、分子内に親水部分と疎水部分を同時に持つ両性物質で、疎水部分に直鎖または分岐状のアルキル基を持つ物質である(1)〜(3)のいずれか1項に記載のフィルター。
(5)親水剤がR−(OCHCH−OHの化学式
{但し、Rは、炭素原子数が22から40の直鎖状または分岐状のアルキル基である。nは2〜10の数である。}
で表されるアルキルポリオキシエチレンアルコールである(1)〜(4)のいずれか1項に記載のフィルター。
(6)ポリオレフィン組成物に、分子量降下剤が配合されてなる、(1)〜(5)のいずれか1項に記載のフィルター。
(7)ポリオレフィン組成物のポリオレフィンがポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、及びエチレン−プロピレン−ブテン共重合体から選ばれる1種以上である(1)〜(6)のいずれか1項に記載のフィルター。
(8)極細繊維からなる不織布のメルトマスフローレイト(MFR:JIS K 7210(ISO 1133に対応)、試験温度230℃、公称荷重2.16kg)が1000〜3000(g/10min)である(1)〜(7)のいずれか1項に記載のフィルター。
(9)ポリオレフィン組成物が、メルトマスフローレイト(MFR:JIS K 7210(ISO 1133に対応)、試験温度230℃、公称荷重2.16kg)50〜100のポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、及びエチレン−プロピレン−ブテン共重合体から選ばれる1種以上に、ポリオレフィン組成物の重量基準で、化学式CH(CH29−(OCHCH2.5−OH{但し、エチレンオキサイドの付加数2.5は平均的な値}の親水剤を0.5〜10.0重量%、及びヒンダードヒドロキシルアミンエステル系化合物である分子量降下剤を0.01〜0.10重量%含有する(1)、(2)及び(8)の何れか1項に記載のフィルター。
(10)極細繊維が2種以上のポリオレフィンを含む複合繊維である(1)〜(9)のいずれか1項に記載のフィルター。
(11)極細繊維が、2種以上のポリオレフィン繊維の混合繊維である、(1)〜(10)のいずれか1項に記載のフィルター。
(12)シートフィルターである前記(1)〜(11)のいずれか1項に記載のフィルター。
(13)カートリッジフィルターである前記(1)〜(12)のいずれか1項に記載のフィルター。
(14)1層以上の前記親水性不織布と、前濾過層と液上流側スペーサーと液下流側スペーサーのいずれか、または全てを、同時にプリーツ状に折り曲げ、筒状のカートリッジフィルターである(13)に記載のフィルター。
(15)前記スペーサーが長繊維不織布であるカートリッジフィルターである(14)に記載のフィルター。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、高い分離性能を持ち、水系液体の濾過操作におけるエアロックやマイクロバブルの発生を解消し、通水不良と気泡発生の問題を改善したポリオレフィン極細繊維不織布を濾過材とする主としてシート状またはカートリッジ状のフィルターを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のフィルターは、ポリオレフィンに親水剤が溶融ブレンドされた260℃以下の温度で溶融紡糸可能な少なくとも1種のポリオレフィン組成物を溶融紡糸して得られ、かつ平均繊維径が0.1〜10.0μmの極細繊維からなる不織布(以下、極細繊維不織布という)を濾過材の少なくとも一部に用いて得られる。該不織布を濾過材の少なくとも一部に用いたフィルターはポリオレフィンの優れた耐溶剤性を持ちながら、水系液体への強い親和性を持つため、二次的な問題を生じることなく、エアロックやマイクロバブルの問題の解決が可能である。
【0015】
ポリオレフィン
本発明のフィルターの濾過材に用いられる極細繊維を構成するポリオレフィン組成物に用いられるポリオレフィンとしては、ポリプロピレン(単独重合体)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリ−4−メチルペンテン−1等が例示できる。これらのなかでも、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、及びエチレン−プロピレン−ブテン共重合体(以下、ポリプロピレン類と総称する)が適度な溶融粘性を持つので親水剤の溶融ブレンドが容易であるので望ましい。また、ポリオレフィンを用いて繊維を構成した場合には、ポリオレフィンの特徴である、耐薬品性や燃焼時の有害ガスの発生がないといった特性も、もちろん得られる。
【0016】
本発明で好ましく用いることのできるポリプロピレン類のメルトマスフローレイト(JIS K 7210、試験温度230℃、公称荷重2.16kg、以下MFRという)は1から2000(g/10min)である。MFRが上記の範囲内であれば、極細繊維の製法において本発明で好ましく使用されるメルトブロー法において、比較的低温で紡糸できるうえ、親水剤と均一にブレンドすることが可能である。
中でも、MFRが好ましくは5〜500(g/10min)、より好ましくは50〜100のポリプロピレン類は、入手が容易で、形状が均一なペレットのため取扱いも容易で親水剤と均一に混合できる。
【0017】
親水剤
本発明における親水剤は、溶融ブレンド時に容易に熱分解せず揮発しない界面活性剤等の親水剤を好ましく用いることができる。例えば、高級アルコール硫酸エステル塩類に代表されるアニオン系化合物、脂肪族アミン塩類に代表されるカチオン系化合物、エトキシル脂肪族アルコールに代表される非イオン系化合物等が挙げられる。中でも、分子内に親水部分と疎水部分を同時に持つ両性物質で、疎水部分に直鎖状または分岐状のアルキル基を持つ親水剤が好ましい。例えば、エトキシル脂肪族アルコール、グリセライド、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール骨格にポリアルキレンオキサイド鎖を有する基が結合した化合物等が挙げられる。
【0018】
これらの親水剤の成分は分子内に親水部分と疎水部分を同時に持つが、疎水性であるポリオレフィン樹脂に溶融ブレンドされると、親水剤成分の親水部分は樹脂内部から外部へ徐々に移動する。親水剤成分の親水部分が樹脂の表面、すなわち極細繊維の表面に出ると、親水剤成分の疎水部分はポリオレフィンとの親和性が強いためポリオレフィンの内部に留まり、極細繊維の表面は親水剤成分の親水部分で覆われる。従って、極細繊維1本1本が親水性を示し、親水剤はポリオレフィンから脱離しにくい構造になる。親水剤の疎水部分が、アルキル基であると、ポリオレフィンとの親和性がより強くなるため、親水剤がポリオレフィンから更に脱離しにくい構造になる。
【0019】
上記した親水剤の中でも、国際公開第02/042530号パンフレットに記載された、以下の構造のものが好ましい。
−(親水性オリゴマー)
は、炭素原子数が22から40の直鎖または分岐状のアルキル基である。また親水性オリゴマーは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エチレングリコール、プロピレングリコール、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルアルコール、酢酸ビニル由来の単一またはオリゴマー単位からなり、その単位が2〜10で構成されたものである。
【0020】
上記化合物の例としては、
−(OCHCH−OH
で示される構造のものが挙げられる。ここでnは2〜10の数である。更に具体的には、例えば、
CH(CH29−(OCHCH2.5−OH
(エチレンオキサイドの付加数2.5は平均的な値)
で表されるエトキシル脂肪族アルコールが例として挙げられる。上記した親水剤は、単独でも、複数種類混合しても用いることができる。
【0021】
親水剤の添加量は、使用する親水剤の種類によって異なるが、紡糸の安定性が低下しない範囲であれば上限はない。親水剤の添加量は、ポリオレフィン組成物に対して0.05〜20.0重量%であり、好ましくは0.5〜10.0重量%である。添加量がこの範囲内であれば、十分な親水性が発現され、また、極細繊維を安定して紡糸することができる。
【0022】
分子量降下剤
本発明において、極細繊維用ポリオレフィン組成物は、親水剤の熱分解や揮発を抑制するため、260℃以下の温度で溶融紡糸可能である必要がある。
一般に、樹脂を溶融して紡糸する方法で極細繊維を得る場合、樹脂を高温で加熱して樹脂の溶融粘度を下げる必要がある。本発明で好ましく用いることのできるポリプロピレン類を例に取ると、広く一般的で、簡易に購入可能でペレット形状が良好な樹脂の多くはMFRが100以下と低いため、更に高温で加熱する必要がある。その加熱温度は親水剤の揮発または分解温度に達する場合があるので、その際は樹脂に対し分子量降下剤を添加するのが好ましい。分子量降下剤を使用したほうが、親水剤に負荷のかからない紡糸が可能である。また、当然ながら熱量が下がることで、ユーティリティーコストの改善や作業環境の改善になる。
【0023】
分子量降下剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチル−エチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドに代表されるような有機過酸化物系の化合物や、ヒンダードヒドロキシルアミンエステル系の化合物が例に挙げられる。中でも、比較的簡易に樹脂の分子量をコントロールできるヒンダードヒドロキシルアミンエステル系の化合物が好ましい。
【0024】
ヒンダードヒドロキシルアミンエステル系の化合物の多くは、常温での反応性は乏しく、高温になって初めて分子量降下の作用を示すため、フィルター作成後に未反応物が反応して樹脂を劣化させたりすることが無いので都合が良い。また、その構造から特徴的な光安定剤としての機能は紡糸後にも発現する。
ヒンダードヒドロキシルアミンエステル系の化合物としては、国際公開第2006/027327号パンフレットの12〜14頁に記載されたNo.1〜No.34の化学構造式を有する化合物が例示される。
尚、極細繊維用ポリオレフィン組成物におけるヒンダードヒドロキシルアミンエステル系分子量降下剤(有効成分)の添加量は、使用するポリオレフィンのMFR等によって適宜変更されるが、MFRが50〜100(g/10min)の場合、0.01〜0.10重量%が例示できる。
【0025】
本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、ポリオレフィン組成物に対して、親水剤や分子量降下剤のほかにも各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、その他の各種改良剤等も必要に応じて配合しても良い。
【0026】
ポリオレフィン組成物
本発明において、極細繊維紡糸用のポリオレフィン組成物は、ポリオレフィンに親水剤、必要に応じて分子量降下剤等の添加剤を加えてタンブラーミキサー、高速ミキサー等を用いて混合した混合物が例示できる。ポリオレフィン組成物は、親水剤の熱分解や揮発を抑制するため、260℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは210〜250℃の温度で極細繊維を溶融紡糸することが可能である必要がある。そのためには、該ポリオレフィン組成物を溶融紡糸して得られる極細繊維または極細繊維不織布のMFRは、好ましくは1000〜3000(g/10min)であることが目安となる。
【0027】
極細繊維及び極細繊維不織布
本発明における極細繊維不織布は極細繊維からなる不織布のことを言う。
本発明における極細繊維は、ポリオレフィン組成物の溶融紡糸によって得られる繊維で構成されていれば、いずれの製法でも構わない。特に、紡糸工程と不織布化工程を1工程で行う、メルトブロー法が望ましいが、これに限るものではない。メルトブロー法とは、樹脂を高温高圧空気と共に噴射し開繊配列して不織布を製造する方法であり、比較的容易に繊維径が数μm以下の極細繊維が得られ、得られた不織布も緻密なため本発明に適している。また、生産性、製造コスト等の点からも望ましい。
【0028】
本発明における極細繊維の構造は、本発明の効果を損なわなければ、単一ポリオレフィン樹脂繊維であっても、2成分以上のポリオレフィン樹脂との複合繊維であってもよい。また、原料のポリオレフィン樹脂が異なる単一繊維同士の混合繊維や、単一繊維と複合繊維との混合繊維から構成されていてもよい。複合繊維の複合構造は、鞘芯型、並列型、海島型等のいずれも使用できる。この他、異形断面構造、分割型構造、中空型構造を有する複合繊維も使用できる。また、鞘新型複合繊維の場合は鞘側の樹脂にのみ親水剤を混合してもよい。
【0029】
本発明における極細繊維の繊維径は、その平均値が0.1〜10.0μmが好ましく、0.5〜3.5μmがより好ましい。繊維径がこの範囲内であれば、紡糸の際に高温をかける必要がないため、繊維の強度が十分で切れにくく、後にフィルターとした時に繊維が脱落する等の問題も起きにくく、フィルターにしたときの濾過精度も良好である。
極細繊維の繊維径が小さいほど、繊維が形成する空隙が小さくなるのでフィルターとした時に平均流孔径と濾過精度は微小になる。一方で、繊維径が小さいほど、通液に必要とする圧力は増大し、本発明の技術を用いない場合にはエアロックやマイクロバブル発生の原因となる滞留エアが発生する確率は高くなる。したがって、構成する極細繊維の繊維径が小さくて平均流孔径と濾過精度が微小なフィルターほど本発明の効果が顕著に見られる。
【0030】
本発明における極細繊維不織布の目付の範囲は特に限定されないが、後の工程として、カレンダー加工やプリーツ加工を施すことを考えると3から500g/m2が好ましい。なかでも、5から200g/m2が操作性の面から好ましい。
【0031】
本発明における極細繊維不織布の通気性の範囲は特に限定されないが、例えば、不織布目付13g/m2の場合は5〜40cm3/cm2/s、40g/m2の場合は3〜20cm3/cm2/sが好ましい。これらの範囲内であれば、不織布の後加工が容易で、ピンホール等の欠陥が生じにくく、得られるフィルターの濾過精度も良好である。
【0032】
濾過材
本発明において、極細繊維不織布は紡糸後に余熱で繊維交点が接着されるため、そのままでもフィルターの濾過材として用いることができる他に、単層または複層でカレンダー加工、すなわち一対の加熱ロールで圧密して濾過材として使用しても良い。またカレンダー加工の他にも、加熱空気によって減容化または多層化するエアースルー方式のような他の方法で不織布を2次加工することもできる。
【0033】
シートフィルター
本発明においては、前記濾過材を適当な大きさにカットしてシートフィルターとして使用することができる。
シートフィルターとして使用される濾過材の平均流孔径(ASTM F316−86)は0.1から10.0μmであることが好ましい。平均流孔径が上記の範囲内であれば生産が容易で、濾過精度も十分である。極細繊維不織布が、紡糸後に10.0μm以上の平均流孔径を示す場合でも、多層にしたり、前記した2次加工することで、上記範囲を満たすことができる。尚、平均流孔径が5.0μmを超えるような粗いフィルターは、そもそも親水剤が無くとも十分に通水可能であるのでエアロックは起きないが、局所に微量な滞留エアを保持しマイクロバブル発生の原因となることがあるので、本発明をマイクロバブルの発生防止に使用することができる。
【0034】
カートリッジフィルター
本発明における極細繊維不織布はカートリッジフィルターの濾過材として使用されても良い。その際、極細繊維不織布は紡糸後適当なサイズにカットされた後そのまま使用してもよいし、カレンダー加工のように二次加工されてもよく、前記したシートフィルターを用いても良い。カートリッジフィルターとしては、不織布をコアに巻き取って多層構造としたデプスタイプやひだ状に折られた(すなわちプリーツ加工した)不織布を円筒状に加工したプリーツタイプが本発明に適している。本発明のフィルターは比較的高圧損なフィルターとなるので、より濾過面積が広くなるプリーツタイプが好ましい。一般に、濾過面積が広いフィルターほど通水性に優れる。
【0035】
本発明における極細繊維不織布をプリーツタイプのカートリッジフィルターとして使用される場合、極細繊維不織布は単層で使用されても良いし、複数層同時にプリーツ加工して使用されてもよい。また、濾過操作中の極細繊維不織布に対する負荷を軽減させるため、その上流に前濾過層を設けてもよい。前濾過層は極細繊維不織布に比べて濾過効率が低いものを用いて、段階的な濾過が行われるようにしたほうが、フィルター全体の寿命を延ばすことになり、好ましい。更に、濾材の上下、すなわち濾過時の上流側と下流側にスパンボンド不織布等の長繊維不織布やネットを積層すれば、ひだ間の上流側スペーサー及び/または下流側スペーサーとして機能し、ひだ同士の接触による通液性の低下が防げるため望ましい。スペーサーとしてスパンボンド不織布を用いる場合、不織布目付は10〜100g/mであることが好ましい。該目付が上記の範囲内であれば、不織布の厚さが十分でスペーサーとしての役割を果たすことができる。また、スペーサーの素材としては極細繊維と同じものが好ましい。
【0036】
プリーツ加工の際、折る直前に極細繊維不織布を加熱したり、折り畳んだ後に加熱したりしてもよい。
本発明における親水成分を練り込んだ極細繊維不職布は、表面が滑りやすい。また、カレンダー加工された極細繊維不織布は硬質化している場合が多い。そのため親水性分の含有量によっては、極細繊維不織布表面の平滑性と、極細繊維不織布自体の剛性のため、極細繊維不織布はプリーツ加工されにくい場合がある。このときは折る直前に極細繊維不織布を加熱することで改善できる。また、折り畳んだ後に加熱するとプリーツ形状の保持性がよくなる。加熱温度はいずれもガラス転移点から融点の間であることが好ましい。
【0037】
次に、プリーツ加工された極細繊維不織布を単層で、またはそれを含んだ積層体で、その両端を接着して円筒状に成形する。接着方法は、ヒートシール法、超音波接着法等の熱融着法の使用が好ましい。
【0038】
次に、円筒状にした極細繊維不織布単層またはそれを含んだ積層体の中央部に多孔性円筒状のコアを配置するか、または外側に多孔性円筒状の外筒を配置し、その両端部にキャップを接着することによってカートリッジフィルターを得ることができる。コアを使用するか外筒を使用するかは、圧力のかかる方向によって決まり、外側から内側へ向かって濾過を行う通常のタイプのフィルターカートリッジとする場合はコアを用い、反対方向の濾過を行うタイプの場合は外筒を用いればよい。また、逆洗浄を可能にするためにコアと外筒の両者を併用してもよい。このときに使用するコア、外筒、キャップの素材としては、任意の樹脂や金属を用いることができる。キャップの素材としては、特に、極細繊維不織布との接着性をよくするために、極細繊維不織布と相溶性のよい樹脂を使用することが好ましい。キャップを接着する方法としては、キャップの接着面を加熱溶融させることにより接着させる方法や、キャップに溶融した樹脂を流し込んで接着させる方法が好ましい。
【実施例】
【0039】
以下に本発明について実施例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。尚、実施例における試験方法は次の通りである。
(1)平均繊維径:試験片の任意な位置を電子顕微鏡で写真撮影を行い、1枚の写真につき約20本の繊維の直径を測定し、これらを5枚以上の位置について行い、合計100本以上の繊維径を平均して求めた。
(2)目付:不織布の任意5箇所から25cm×25cmのサイズの試験片を切り出した後、各試験片の重量を電子天秤にて測定して、その平均値を1m2当りの重量に換算して目付とした。単位g/m2
(3)通気性:JIS−L−1096(ISO 9237に対応)に定める通気性試験方法に基づいて試験した。尚試験機はフラジ−ル型試験機を使用した。単位cm3/cm2/s。
(4)平均流孔径(μm): ASTM F316−86に基づいて、Perm−Porometer(POROUS MATERIALS INC.製)にて測定した。
(5)濾過精度:循環式濾過性能試験機のハウジングにカートリッジフィルターを取り付け、ポンプで流量を調節して通水循環する。次に循環している水にACファインテストダストを毎分3gで連続添加し、添加開始から5分後に原液と濾液を採取し、それぞれの液に含まれる粒子の数を光散乱式粒子検出器を用いて計測して捕集効率を算出した。捕集効率が99.9%以上を示す最小粒径を濾過精度とした。尚、通水循環時の流量は、シートフィルターで毎分5000cm3、カートリッジフィルターで毎分60000cm3に調節した。
(6)エアロックとマイクロバブル発生の確認:循環式濾過性能試験機のハウジングにフィルターを取り付け、ポンプで流量を調節して通水循環する。このときのフィルター前後の圧力差を圧力損失Aとする。次に、この状態で10分間通水循環したとき、循環式濾過性能試験機のタンクにハウジング2次側の配管から気泡が目視確認できれば、マイクロバブルの発生があるものとして×、確認できなければマイクロバブルの発生が無いものとして○とした。次に一度フィルターを取り外し、フィルターをイソプロピルアルコールに浸漬する。アルコール浸漬されたフィルターを再度ハウジングに取り付け、ポンプで流量を調節して通水循環する。このときのフィルター前後の圧力差を圧力損失Bとする。圧力比=A/Bが1.05未満であればエアロックが無いものとして◎、1.05以上1.1未満であれば○、1.1以上であれば×とした。尚、通水循環時の流量は、シートフィルターで毎分5000cm3、カートリッジフィルターで毎分60000cm3に調節した。
【0040】
(実施例1)
ポリプロピレン(単独重合体、MFR:75、商品名SA08、日本ポリプロ社製)に対し、化学式CH(CH29(OCHCH2.5OHで表される有効成分を含む親水剤(チバ社製Irugasurf−HL560、有効成分60重量%)が3.0重量%、有効成分としてヒンダードヒドロキシルアミンエステル系化合物を含む分子量降下剤(チバ社製Irugatec−CR76、有効成分3.3重量%)が1.0重量%となるように添加し、メルトブロー用紡糸ノズル(ホール径0.3mm、1.0mmピッチ、501ホール)より、紡糸温度250℃で押し出し、360℃の加熱空気を用いてメルトブロー紡糸した。加熱空気の圧力、吐出量、不織布搬出速度を調節することで、目付13g/m2の不織布(A)、及び目付40g/m2の不織布(B)の2種類の不織布を作製した。次に、不織布(A)2枚と不織布(B)1枚を積層し、ロール温度120℃のカレンダーロールにて圧密処理し、親水性ポリプロピレン極細不織布からなるシートフィルターを得た。これを、直径142mmの円状に切り取り、試験を実施した。測定結果は表1に示す。
【0041】
(実施例2)
親水剤(チバ社製Irugasurf−HL560)が5.0重量%、分子量降下剤(チバ社製Irugatec−CR76)が0.5重量%、紡糸温度230℃で押し出した以外は実施例1と同じ方法で紡糸して、目付50g/m2の不織布(A)を作製した。次に、不織布(A)をロール温度120℃のカレンダーロールにて圧密処理し、親水性ポリプロピレン極細不織布からなるシートフィルターを得た。これを、直径142mmの円状に切り取り、試験を実施した。測定結果は表1に示す。
【0042】
(実施例3)
紡糸温度を200℃でとした以外は実施例2と同じ方法でシートフィルターを作製し、試験を実施した。測定結果は表1に示す。
【0043】
(実施例4)
親水剤(チバ社製Irugasurf−HL560)の添加量を5.0重量%、分子量降下剤(チバ社製Irugatec−CR76)の添加量を0.5重量%とした以外は実施例1と同じ方法でシートフィルターを作製し、試験を実施した。測定結果は表1に示す。
【0044】
(実施例5)
2種類の樹脂を鞘芯型複合繊維とできるメルトブロー用複合紡糸ノズルを用いて、芯側にポリプロピレン(単独重合体、MFR:75、商品名SA08、日本ポリプロ社製)、鞘側にエチレン−プロピレン共重合体(MFR:61、商品名PS4916、日本ポリプロ社製)を用いて、ポリプロピレンとエチレン−プロピレン共重合体の両方に、親水剤(チバ社製Irugasurf−HL560)が3.0重量%、分子量降下剤(チバ社製Irugatec−CR76)が1.0重量%となるように添加した以外は、実施例1と同じ方法でシートフィルターを作製し、試験を実施した。測定結果は表1に示す。
【0045】
(実施例6)
芯側のポリプロピレンに親水剤(チバ社製Irugasurf−HL560)を添加しなかった以外は、実施例5と同じ方法でシートフィルターを作製し、試験を実施した。測定結果は表1に示す。
【0046】
(実施例7)
ノズル孔が2種類の樹脂を孔の交互の位置から押し出すように配置されたメルトブロー用混合繊維紡糸ノズルを用いて、2種類の樹脂としてポリプロピレン(単独重合体、MFR:75、商品名SA08、日本ポリプロ社製)とエチレン−プロピレン共重合体(MFR:61、商品名PS4916、日本ポリプロ社製)を用いて、ポリプロピレンとエチレン−プロピレン共重合体の両方に、親水剤(チバ社製Irugasurf−HL560)が3.0重量%、分子量降下剤(チバ社製Irugatec−CR76)が1.0重量%となるように添加した以外は、実施例1と同じ方法でシートフィルターを作製し、試験を実施した。測定結果は表1に示す。
【0047】
(実施例8)
ポリプロピレン(単独重合体、MFR:1800、パウダー状、商品名PP3546G、エクソンモービル社製)を用いて、分子量降下剤を用いなかった以外は、実施例1と同じ方法でシートフィルターを作製し、試験を実施した。測定結果は表1に示す。
【0048】
(実施例9)
分子量降下剤として過酸化物2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日油社製パーヘキサ25B)を0.03重量%使用した以外は、実施例1と同じ方法でシートフィルターを作製し、試験を実施した。測定結果は表1に示す。
【0049】
(実施例10)
親水剤としてアルキルスルホン酸塩(三洋化成工業社製ケミスタット3033N)を2重量%使用した以外は、実施例1と同じ方法でシートフィルターを作製し、試験を実施した。測定結果は表1に示す。
【0050】
(比較例1)
親水剤を添加しない以外は実施例1と同じ方法でシートフィルターを作製し、試験を実施した。測定結果は表1に示す。実施例1〜10と比較すると、エアロックとマイクロバブルが発生していることがわかる。
【0051】
(比較例2)
親水剤を添加しない以外は実施例3と同じ方法でシートフィルターを作製し、試験を実施した。測定結果は表1に示す。実施例3と比較すると、マイクロバブルが発生していることがわかる。
【0052】
(実施例11)
実施例1で得たシートフィルターを240mm幅にカットして3層に積層し、更に上下の層にポリプロピレンスパンボンド不織布(目付40g/m2、RN2040、出光ユニテック社製)を各1層積層し、幅10mmのプリーツ加工を行い、プリーツひだ120山で切断し、シートの端同士を接着シールして円筒形状にした後、内側にコア、外側に外筒を配置し、その両端にキャップを接着させることで内径28mm、外径70mm、長さ250mmのカートリッジフィルターを作製し、試験を実施した。測定結果は表2に示す。
【0053】
(実施例12)
実施例2で得たシートフィルターを使用した以外は、実施例11と同じ方法でカートリッジフィルターを作製し、試験を実施した。測定結果は表2に示す。
【0054】
(実施例13)
実施例3で得たシートフィルターを使用した以外は、実施例11と同じ方法でカートリッジフィルターを作製し、試験を実施した。測定結果は表2に示す。
【0055】
(実施例14)
実施例4で得たシートフィルターを使用した以外は、実施例11と同じ方法でカートリッジフィルターを作製し、試験を実施した。測定結果は表2に示す。
【0056】
(実施例15)
実施例5で得たシートフィルターを使用した以外は、実施例11と同じ方法でカートリッジフィルターを作製し、試験を実施した。測定結果は表2に示す。
【0057】
(実施例16)
実施例6で得たシートフィルターを使用した以外は、実施例11と同じ方法でカートリッジフィルターを作製し、試験を実施した。測定結果は表2に示す。
【0058】
(実施例17)
実施例7で得たシートフィルターを使用した以外は、実施例11と同じ方法でカートリッジフィルターを作製し、試験を実施した。測定結果は表2に示す。
【0059】
(実施例18)
実施例8で得たシートフィルターを使用した以外は、実施例11と同じ方法でカートリッジフィルターを作製し、試験を実施した。測定結果は表2に示す。
【0060】
(実施例19)
実施例9で得たシートフィルターを使用した以外は、実施例11と同じ方法でカートリッジフィルターを作製し、試験を実施した。測定結果は表2に示す。
【0061】
(実施例20)
実施例10で得たシートフィルターを使用した以外は、実施例11と同じ方法でカートリッジフィルターを作製し、試験を実施した。測定結果は表2に示す。
【0062】
(比較例3)
比較例1で得たシートフィルターを使用した以外は、実施例11と同じ方法でカートリッジフィルターを作製し、試験を実施した。測定結果は表2に示す。実施例11〜20と比較すると、エアロックとマイクロバブルが発生していることがわかる。
【0063】
(比較例4)
比較例2で得たシートフィルターを使用した以外は、実施例11と同じ方法でカートリッジフィルターを作製し、試験を実施した。測定結果は表2に示す。実施例13と比較すると、マイクロバブルが発生していることがわかる。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0066】
エアロックとマイクロバブルの発生回避が不可欠なフィルター。特に塗料やめっき液用フィルター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水剤が溶融ブレンドされた260℃以下の温度で溶融紡糸可能な少なくとも1種のポリオレフィン組成物から得られ、かつ平均繊維径が0.1〜10.0μmの極細繊維からなる不織布を濾過材の少なくとも一部に用いたフィルター。
【請求項2】
極細繊維の製法がメルトブロー方式である請求項1に記載のフィルター。
【請求項3】
平均流孔径(ASTM F316−86)が0.1〜10.0μmである請求項1または2に記載のフィルター。
【請求項4】
親水剤が、分子内に親水部分と疎水部分を同時に持つ両性物質で、疎水部分に直鎖状または分岐状のアルキル基を持つ物質である請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項5】
親水剤がR−(OCHCH−OHの化学式
{但し、Rは、炭素原子数が22から40の直鎖または分岐状のアルキル基である。nは2〜10の数である。}
で表されるアルキルポリオキシエチレンアルコールである請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項6】
ポリオレフィン組成物に、分子量降下剤が配合されてなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項7】
ポリオレフィン組成物のポリオレフィンがポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、及びエチレン−プロピレン−ブテン共重合体から選ばれる1種以上である請求項1〜6の何れか1項に記載のフィルター。
【請求項8】
極細繊維からなる不織布のメルトマスフローレイト(MFR:JIS K 7210(ISO 1133に対応)、試験温度230℃、公称荷重2.16kg)が1000〜3000(g/10min)である請求項1〜7のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項9】
ポリオレフィン組成物が、メルトマスフローレイト(MFR:JIS K 7210(ISO 1133に対応)、試験温度230℃、公称荷重2.16kg)50〜100のポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、及びエチレン−プロピレン−ブテン共重合体から選ばれる1種以上に、ポリオレフィン組成物の重量基準で、化学式CH(CH29−(OCHCH2.5−OH{但し、エチレンオキサイドの付加数2.5は平均的な値}の親水剤を0.5〜10.0重量%、及びヒンダードヒドロキシルアミンエステル系化合物である分子量降下剤を0.01〜0.10重量%含有する請求項1、2及び8の何れか1項に記載のフィルター。
【請求項10】
極細繊維が2種以上のポリオレフィン組成物を含む複合繊維である請求項1〜9のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項11】
極細繊維が、2種以上のポリオレフィン組成物繊維の混合繊維である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項12】
シートフィルターである請求項1〜11のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項13】
カートリッジフィルターである請求項1〜12のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項14】
1層以上の前記親水性不織布と、前濾過層と液上流側スペーサーと液下流側スペーサーのいずれか、または全てを、同時にプリーツ状に折り曲げ、筒状のカートリッジフィルターである請求項13記載のフィルター。
【請求項15】
スペーサーが長繊維不織布であるカートリッジフィルターである請求項14記載のフィルター。

【公開番号】特開2009−195898(P2009−195898A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315161(P2008−315161)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】