説明

フィルタ洗浄装置

【課題】除去性能を高めた空調用フィルタの洗浄を効率的に行う。
【解決手段】ローラコンベア9とローラコンベア9で搬送されるフィルタ2に洗浄液を散布する洗浄液散布ノズル50a〜50fと、フィルタ2に高圧ガスを噴射する高圧ガス噴射ノズル60a〜60cと、散布された洗浄液17a〜17cを回収する回収タンク72a〜72cと、洗浄液を洗浄液散布ノズル50a〜50fに循環させる循環系統と、を含む各洗浄ステージ4a〜4cを含み、精密洗浄ステージ4cは、未使用洗浄液噴霧ノズル50gが配置され、精密洗浄ステージ4c、粗洗浄ステージ4bは各回収タンク72c,72bからフィルタ搬送方向上流側の各回収タンク72b,72aに洗浄液を順次移送する移送系統を備え、予備洗浄ステージ4aは回収タンク72aの洗浄液90aを外部に排水する排水ポンプ77aを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機器に用いられるフィルタを洗浄して再利用するフィルタ洗浄装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の空気調和機などの空気取入口には、フィルタを装着して空気調和機などにより吸入された空気中の塵埃などの異物を捕集して空気を濾過するのが一般的である。このフィルタは、使用により塵埃などの異物がフィルタ面に付着してフィルタの空気を濾過する能力が低下するため、一定期間ごとにフィルタを空気取入口から取り外して交換または洗浄し、異物を除去することが行なわれている。
【0003】
フィルタの洗浄は、例えば、高圧ジェッタなどによる水洗浄、バキュームによる吸引、バイブレータなどを使用したふるい(叩き)落し、ブラシによる掻き落とし等、或いはこれらの組合せにより実施され、その洗浄作業は手作業により行われることが多く、作業効率が低いという問題があった。このため、フィルタを自動的に洗浄する様々な方法が提案されている。
【0004】
特許文献1には、フィルタを立てかけた受け台と、フィルタに向って洗浄水を噴出するノズルと、を備え、受け台またはノズルのいずれか一方をフィルタの面に平行に移動させ、フィルタの表面に順次洗浄水を噴射してフィルタを洗浄する方法が提案されている。
【0005】
特許文献2には、搬送装置によってフィルタを搬送しつつ、エアノズルによるエアをフィルタに噴出させると共に、回転ブラシの作動でフィルタの汚れ面から埃などの汚れを払い取って除去する方法が提案されている。
【0006】
特許文献3には、搬送コンベヤによって移送されるフィルタの移送路上に高圧エアを噴射する複数のエア噴射ノズルを搬送コンベヤの幅方向に所要の間隔をおいて設け、エア噴射ノズルのフィルタの搬送方向下流側に高圧水と、その高圧水の噴流の中心に高圧エアを噴射する複数の気液噴射ノズルを搬送コンベヤの幅方向に所要の間隔をおいて設け、搬送コンベヤによって移送されるフィルタにエア噴射ノズルから噴射される高圧エアを衝突させてフィルタを洗浄した後、フィルタ搬送方向下流側でそのフィルタに気液噴射ノズルから噴射される高圧水および高圧エアを衝突させてフィルタを水洗する方法が提案されている。
【0007】
特許文献4には、フィルタを搬送手段で搬送し、最初に圧縮空気をフィルタに噴射して付着物を除去した後、高圧水をフィルタに向って噴出させて圧縮空気によって除去できなかった付着物を除去し、その後、フィルタを温風乾燥する方法が提案されている。
【0008】
特許文献5には、弾性支持されたローラとローラベルトを、塵埃付着面を下方にしたフィルタ上面に圧着して移送する補助移送手段と、塵埃付着面を下にしたフィルタの下面から吸塵管により吸塵する吸塵手段と、バイブレータによりフィルタを上下に加振する上下加振手段と、ブラシユニットにて摺動して除塵するブラシ除塵手段とによって、フィルタを搬送しながら上下方向に加振すると共にブラシユニットのブラシを往復動させてフィルタの除塵を行った後、洗浄水又は洗浄液をフィルタに噴射するノズルをフィルタの断面形状に応じてスイングするスイング手段によってフィルタに洗浄水を噴射して水洗し、洗浄後の洗浄水を除塵後、水中ポンプにて循環再利用するフィルタ洗浄装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平3−26312号公報
【特許文献2】特公平6−102128号公報
【特許文献3】特開平9−122425号公報
【特許文献4】特開2001−129332号公報
【特許文献5】特開2002−233721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、近年、より微細な粉塵や油成分などの異物を除去することが空調用フィルタに求められてきている。そこで、異物除去の性能を高めた空調用フィルタとして、中・高性能クラスの濾材を用いた空調用フィルタが採用されている。この濾材を用いた空調用フィルタは、プレフィルタにより網状フィルタを装着して塵埃などを捕集した後、空気中の微細な粉塵や油成分などまでも捕集するもので、濾材は化学繊維を主体とした多孔質の不織布などからなり、その網目状構造により空気中の微細な粉塵や油成分などの異物を捕集する。なお、空調用フィルタ(或いはフィルタ)が捕集する空気中の微細な粉塵や油成分などを本明細書では「異物」と総称する。
【0011】
このような濾材を用いた空調用フィルタでは、フィルタを構成する濾材の繊維表面又は繊維間に異物が付着しているため、特許文献1から5に記載された従来技術のように、高圧水や高圧空気をフィルタに衝突させて、その流体力によってフィルタに付着した異物を除去しようとしても、濾材内部の繊維表面や繊維間までその流体力が及ばず、効果的に異物を吹き飛ばすことが難しいという問題があった。また、油分などの異物は濾材の繊維表面や繊維間に固着している場合があり、高圧空気では容易に吹き飛ばせず、異物を除去しようとしてフィルタに多量の洗浄水を吹き付けると、フィルタの表面に洗浄水が溜まってしまい、かえって内部の異物が除去できなくなってしまうという問題があった。また、同様にブラシによる払い出しなどによっても濾材内部の異物を除去することが難しいという問題があった。このため、このような除去性能を高めた空調用フィルタの洗浄が困難であった。
【0012】
本発明は、除去性能を高めた空調用フィルタの洗浄を効率的に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のフィルタ洗浄装置は、フィルタを搬送する搬送路と、前記搬送路に沿って搬送される前記フィルタに洗浄液を散布する少なくとも1つの洗浄液散布ノズルと、前記洗浄液散布ノズルのフィルタ搬送方向下流側に設けられ、前記フィルタに高圧ガスを噴射する少なくとも1つの高圧ガス噴射ノズルと、前記搬送路の下側に配置され、前記各洗浄液散布ノズルから散布された洗浄液を回収する回収タンクと、前記回収タンクに回収した洗浄液を前記各洗浄液散布ノズルに循環させる循環系統と、を含む洗浄ステージがフィルタ搬送方向に沿って複数配置されたフィルタ洗浄装置であって、フィルタ搬送方向の最下流側の前記洗浄ステージは、未使用の洗浄液を前記フィルタに噴霧する未使用洗浄液噴霧ノズルが配置され、該洗浄ステージの前記回収タンクは、未使用洗浄液噴霧ノズルから噴霧された洗浄液を回収し、フィルタ搬送方向下流側の前記洗浄ステージの前記回収タンクからフィルタ搬送方向上流側の前記洗浄ステージの前記回収タンクに洗浄液を順次移送する移送系統と、フィルタ搬送方向の最上流側の前記洗浄ステージの前記回収タンクの洗浄液を外部に排水する排水系統と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明のフィルタ洗浄装置において、前記未使用洗浄液噴霧ノズルは、未使用の洗浄液と高圧ガスとを同時に噴射する二流体ノズルであること、としても好適である。
【0015】
本発明のフィルタ洗浄装置において、前記洗浄液散布ノズルは、前記搬送路の上側に配置される上側洗浄液散布ノズルと、前記搬送路の下側に配置される下側洗浄液散布ノズルとを含み、フィルタ搬送方向下流側の洗浄ステージの前記下側洗浄液散布ノズルからの洗浄液の散布流量は該ステージの上側洗浄液散布ノズルの散布流量よりも少ないこと、としても好適である。
【0016】
本発明のフィルタ洗浄装置において、前記各回収タンクは、回収した洗浄液を攪拌する攪拌機を備えること、としても好適であるし、フィルタ搬送方向最上流の前記洗浄ステージの前記回収タンクの洗浄液は、洗浄能力が所定の閾値よりも低くなった際に排出され、略同量の未使用の洗浄液がフィルタ搬送方向最下流の前記洗浄ステージで供給されること、としても好適である。
【0017】
本発明のフィルタ洗浄装置において、前記搬送路に沿って延び、前記搬送路を囲み、前記フィルタに向って散布または噴霧させた洗浄液の飛沫が外部に飛散することを抑制するカバーと、前記カバーの中に滞留する洗浄液の霧を外部に排気する送風機と、を備えることとしても好適であるし、前記送風機は、前記カバーの内部の前記霧をフィルタ搬送方向に向かって流すように配置されていること、としても好適である。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、除去性能を高めた空調用フィルタの洗浄を効率的に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態におけるフィルタ洗浄装置の構成を示す説明図である。
【図2】本発明の実施形態におけるフィルタ洗浄装置の予備洗浄ステージの断面を示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態におけるフィルタ洗浄装置の予備洗浄ステージ、粗洗浄ステージにおけるフィルタ洗浄の状態を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態におけるフィルタ洗浄装置の高圧ガス噴射ノズルから噴射する高圧ガスによって異物と洗浄液とを吹き飛ばす状態を示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態におけるフィルタ洗浄装置の精密洗浄ステージにおけるフィルタ洗浄の状態を示す説明図である
【図6】本発明の実施形態におけるフィルタ洗浄装置の各洗浄ゾーンの洗浄液の洗浄力の変化と除去する異物の大きさの変化を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態のフィルタ洗浄装置100は、フィルタ2を搬送する搬送路であるローラコンベア9とローラコンベア9の各ローラ9aから9eを駆動するベルトコンベア3と、ローラコンベア9のフィルタ搬送方向に沿って順に配置されたフィルタ搬入ゾーン1と、フィルタ2を洗浄するフィルタ洗浄ゾーン4と、洗浄したフィルタ2を水洗するフィルタ水洗ゾーン5と、フィルタ2にオゾン水を噴射してフィルタ2を除菌するフィルタ除菌ゾーン6と、含水状態のフィルタ2の水分を除去するフィルタ脱水ゾーン7と、フィルタ2を取り出して搬出するフィルタ搬出ゾーン8と、を含んでいる。フィルタ洗浄ゾーン4からフィルタ脱水ゾーン7までの間は、カバーであるケーシング81の中に配置され、フィルタ搬入ゾーン1とフィルタ搬出ゾーン8はケーシング81の外に配置されている。
【0021】
フィルタ洗浄ゾーン4は、フィルタ搬送方向に沿って順に予備洗浄ステージ4a、粗洗浄ステージ4b、精密洗浄ステージ4cの3つの洗浄ステージを備えている。予備洗浄ステージ4aは、フィルタ2に洗浄液17aを散布する洗浄液散布ノズル50a,50bと、フィルタ2に高圧ガス18を噴射する高圧ガス噴射ノズル60aと、各洗浄液散布ノズル50a,50bから散布された洗浄液17aを回収する回収タンク72aと、回収タンク72aに貯留している洗浄液90aを攪拌する攪拌機79aと、回収タンク72aに回収した洗浄液90aを各洗浄液散布ノズル50a,50bに循環させる洗浄液循環ポンプ73a及び洗浄液循環配管74aと、回収タンク72aの洗浄液90aを外部に排水する排水ポンプ77a及び排水配管78aと、を含んでいる。洗浄液循環ポンプ73a及び洗浄液循環配管74aは循環系統を構成し、排水ポンプ77a及び排水配管78aは排水系統を構成する。
【0022】
粗洗浄ステージ4bは、フィルタ2に洗浄液17bを散布する洗浄液散布ノズル50c,50dと、フィルタ2に高圧ガス18を噴射する高圧ガス噴射ノズル60bと、各洗浄液散布ノズル50c,50dから散布された洗浄液17bを回収する回収タンク72bと、回収タンク72bに貯留している洗浄液90bを攪拌する攪拌機79bと、回収タンク72bに回収した洗浄液90bを各洗浄液散布ノズル50c,50dに循環させる洗浄液循環ポンプ73b及び洗浄液循環配管74bと、回収タンク72bの洗浄液90bを予備洗浄ステージ4aの回収タンク72aに移送する移送ポンプ75b及び移送配管76bと、を含んでいる。洗浄液循環ポンプ73b及び洗浄液循環配管74bは循環系統を構成し、移送ポンプ75b及び移送配管76bは移送系統を構成する。
【0023】
精密洗浄ステージ4cは、フィルタ2に洗浄液17cを散布する洗浄液散布ノズル50e,50fと、未使用洗浄液タンク28に貯留された未使用洗浄液90をフィルタ2に向って噴霧する未使用洗浄液噴霧ノズル50gと、フィルタ2に高圧ガス18を噴射する高圧ガス噴射ノズル60cと、各洗浄液散布ノズル50e,50fから散布された洗浄液17c及び未使用洗浄液噴霧ノズル50gから噴霧された洗浄液17gを回収する回収タンク72cと、回収タンク72cに貯留している洗浄液90cを攪拌する攪拌機79cと、回収タンク72cに回収した洗浄液90cを各洗浄液散布ノズル50e,50fに循環させる洗浄液循環ポンプ73c及び洗浄液循環配管74cと、回収タンク72cの洗浄液90cを粗洗浄ステージ4bの回収タンク72bに移送する移送ポンプ75c及び移送配管76cと、を含んでいる。洗浄液循環ポンプ73c及び洗浄液循環配管74cは循環系統を構成し、移送ポンプ75c及び移送配管76cは移送系統を構成する。また、未使用洗浄液噴霧ノズル50gは未使用洗浄液90を霧状にして高圧ガス18と同時に噴射する二流体ノズルである。
【0024】
洗浄液散布ノズル50a,50c,50eは、フィルタ2の上側から洗浄液17a,17b,17cを散布し、洗浄液散布ノズル50b,50d,50fはフィルタ2に対して下側から洗浄液17a,17b,17cを噴射する。下側に配置された洗浄液散布ノズル50b,50d,50fは洗浄液散布ノズル50a,50c,50eよりフィルタ搬送方向下流側にずれた位置に配置されている。また、各高圧ガス噴射ノズル60a,60b,60cは、フィルタ2の上側で各洗浄液散布ノズル50a,50c,50eよりフィルタ搬送方向下流側にずれた位置に配置されている。各高圧ガス噴射ノズル60a,60b,60cはそれぞれ高圧ガス18を貯留する高圧ガスタンク31と高圧ガス配管32で接続されている。また、未使用洗浄液噴霧ノズル50gと未使用洗浄液タンク28とは未使用洗浄液供給配管30によって接続され、未使用洗浄液供給配管30には未使用洗浄液供給ポンプ29が取り付けられている。
【0025】
フィルタ水洗ゾーン5は、フィルタ2に水洗水19を散布する洗浄水散布ノズル12a,12bと、フィルタ2に高圧ガス18を噴射する高圧ガス噴射ノズル60dを含み、フィルタ除菌ゾーン6は、フィルタにオゾン水22を散布するオゾン水散布ノズル21a,21bを含んでいる。水洗水19は水洗水タンク33に貯留され水洗水ポンプ26によって加圧され、水洗水配管34を介して洗浄水散布ノズル12a,12bに供給される。また、高圧ガス噴射ノズル60dは洗浄水散布ノズル12a,12bの下流側に配置されており、高圧ガスタンク31の高圧ガス18をフィルタ2の上側から噴射する。また、オゾン水22はオゾン水生成装置35からオゾン水配管25を介してオゾン水散布ノズル21a,21bに供給される。また、フィルタ脱水ゾーン7は、上部吸水ローラ9d、下部吸水ローラ9eを含んでおり、上部吸水ローラ9dは、昇降装置23によって上下に移動し、洗浄するフィルタ2の厚さによって上部吸水ローラ9dの高さが調整される。昇降装置23はサーボモータによりボールネジを回転させることによって上下方向に移動するものであってもよいし、シリンダブロックなど他の方法によって上下方向に移動するように構成してもよい。
【0026】
フィルタ洗浄ゾーン4と、フィルタ水洗ゾーン5、フィルタ除菌ゾーン6のローラコンベア9の搬送ローラ9bとフィルタ脱水ゾーン7の下部吸水ローラ9eとはベルトコンベア3bによって駆動される。フィルタ搬入ゾーン1のローラコンベア9は搬入ローラ9aを含み、フィルタ搬出ゾーン8のローラコンベア9は搬出ローラ9cを含んでおり、各ローラ9a,9cはそれぞれベルトコンベア3a,3cによって駆動されている。各ベルトコンベア3a,3b,3cは、左右のローラ36a,36b,36cにそれぞれベルト37a,37b,37cが巻き掛けられており、各ローラ36a,36b,36cの各ローラ軸43はそれぞれベルト駆動モータ(図示せず)により回転し、各ローラ36a,36b,36cが回転することによって各ローラ36a,36b,36cに巻き掛けられた各ベルト37a,37b,37cが移動する。そして、各ベルト37a,37b,37cの移動によってローラコンベア9の各ローラ9aから9eが回転し、フィルタ2を搬送する。フィルタ洗浄ゾーン4を通るベルト37bには洗浄液17a〜17c,17g及び高圧ガス18が流れ出すための穴が複数設けられている。
【0027】
ケーシング81にはフィルタ2を搬入する搬入口82とフィルタ2を搬出する搬出口83とが設けられ、搬入口82側の搬送ローラ9bの上側には送風機84が取り付けられ、フィルタ除菌ゾーン6のフィルタ搬送方向下流側あるいはフィルタ脱水ゾーン7のフィルタ搬送方向上流側にはケーシング81の中の空気を外部に排出する排気口86が設けられ、排気口86のケーシング81内側にはガイドベーン85が取り付けられている。
【0028】
図2はフィルタ洗浄ゾーン4の予備洗浄ステージ4aのフィルタ搬送方向の断面を示している。図2に示すように、洗浄液散布ノズル50a,50bはそれぞれフィルタ2の幅方向あるいはフィルタ搬送方向と直角方向に沿って複数並べて配置されている。そして、上部に配置された洗浄液散布ノズル50aはフレーム39に取り付けられ、フレーム39は接続棒40によって昇降装置38に接続され、複数の洗浄液散布ノズル50aは一体に上下方向に移動することができるように構成されている。この昇降装置38はサーボモータによりボールネジを回転させることによって上下方向に移動するものであってもよいし、シリンダブロックなど他の方法によって上下方向に移動するように構成してもよい。粗洗浄ステージ4b,精密洗浄ステージ4cに配置されている各洗浄液散布ノズル50c,50d,50e,50f、精密洗浄ステージ4cに配置されている未使用洗浄液噴霧ノズル50gも同様の構成である。また、各洗浄ステージ4a〜4cに配置されている高圧ガス噴射ノズル60a〜60cも同様にフィルタ搬送方向と直角方向に複数の噴射ノズルを配置し、同様の昇降装置によって洗浄するフィルタ2の厚さに応じて噴射ノズルの高さを調整するように構成してもよい。さらに、フィルタ水洗ゾーン5の洗浄水散布ノズル12a,12bおよび高圧ガス噴射ノズル60dも同様にフィルタ搬送方向と直角方向に複数の噴射ノズルを配置し、同様の昇降装置によって洗浄するフィルタ2の厚さ方向に応じて噴射ノズルの高さを調整できるように構成されている。
【0029】
以上のように構成されたフィルタ洗浄装置100によって除去性能を高めた空調用のフィルタ2の洗浄を行う工程について説明する。本実施形態では、フィルタ2は、化学繊維を主体とした多孔質の不織布45などからなる濾材を用い、その厚みは、約10mm〜約500mmの範囲であり、濾材の網目状構造により空気中の微細な粉塵や油成分などまでも捕集するものである。フィルタ2は、その縦横の大きさにより単一個、或いは複数個が洗浄用の枠材に収められ、フィルタ洗浄装置100に搬入されて洗浄、水洗、除菌、脱水の各処理が行なわれる。最初、フィルタ洗浄装置100の各回収タンク72a,72b,72c及び未使用洗浄液タンク28には未使用洗浄液90が貯留されている。未使用洗浄液90はアルカリ性の界面活性剤であってもよい。
【0030】
図1に示すように、一定期間使用され、不織布45に異物が付着したフィルタ2は、建物の空調などの空気取り入れ口に取り付けられた場合に排出側となるE面が上側で、吸い込み側となるF面が下側となるようにフィルタ搬入ゾーン1のローラコンベア9の搬入ローラ9aの上に搬入される。搬入ローラ9aはローラ36aによって駆動されるベルト37aによって回転し、フィルタ2をフィルタ洗浄ゾーン4へと送り出す。
【0031】
フィルタ2はケーシング81の搬入口82からフィルタ洗浄ゾーン4に入り、ローラ36bによって駆動されるベルト37bによって回転するローラコンベア9の搬送ローラ9bによって搬出口83に向かって搬送されていく。図示しない赤外線センサによってフィルタ2の先端が予備洗浄ステージ4aに入ってくることが検知されると、予備洗浄ステージ4aの洗浄液循環ポンプ73aが始動し、洗浄液90aがフィルタ2のE面側である上側に配置された洗浄液散布ノズル50aとフィルタ2のF面側である下側の洗浄液散布ノズル50bとからそれぞれ細かい水滴の洗浄液17aとしてフィルタ2の表面に散布される。また、図示しない予備洗浄ステージ4aの高圧ガスバルブが開き、高圧ガスタンク31に貯留されている高圧ガス18が高圧ガス噴射ノズル60aから噴射される。また、フィルタ2の先端が予備洗浄ステージ4aに入ってくることが検知されると、ケーシング81に取り付けられた送風機84が始動し、送風機84によって外部の空気がケーシング81の中に導入され、図1に二重線の矢印で示すように、フィルタ2の搬送方向に空気を移動させる。空気はフィルタ搬送方向の下流側に配置されたガイドベーン85によってその流れが上方向に曲げられた後、排気口86から外部に排出される。
【0032】
図3に示すように、洗浄液90aは洗浄液散布ノズル50a,50bによって霧状の水滴を含む洗浄液17aとなってフィルタ2のE面とF面とに散布される。細かな水滴の洗浄液17aは不織布45の繊維の間を通って各表面から内部へと浸透していく。そして、フィルタ2のE面、F面及び内部に捕集されていた異物46は洗浄液17aに浸され、その付着力が減少してくる。図3に示すように上側に配置された洗浄液散布ノズル50aと下側に配置された洗浄液散布ノズル50bとはフィルタ2の搬送方向に沿って距離Dだけ離れており、最初に上側の洗浄液散布ノズル50aから洗浄液17aが散布され、それに続いて下側に配置された洗浄液散布ノズル50bから洗浄液17aが散布される。このため、各洗浄液散布ノズル50a,50bから散布される細かな水滴の洗浄液17aが衝突することがなく、上側のE面と下側のF面から不織布45の繊維の間に満遍なくかつ、より深く洗浄液17aを浸透させることができる。これにより不織布45の繊維の表面または間に付着している異物46は満遍なく洗浄液17aに浸され、その付着力が減少してくる。なお、上側、下側の各洗浄液散布ノズル50a,50bからそれぞれ散布される洗浄液17aの流量は洗浄液散布ノズル50aが洗浄液散布ノズル50bに対して略同量または多量である。
【0033】
上側に配置されている洗浄液散布ノズル50aから散布される洗浄液17aは、フィルタ2の排出側となるE面から吸い込み側となるF面に向って通常の空気の吸入方向と逆方向に向かってある程度の流速を持って散布されるので、洗浄液17aの動圧が異物46の付着力よりも大きい場合には、洗浄液17aと共に異物46は下側に落下し、パン71aから回収タンク72aに入る。たいていの場合、大きさが大きく、F面側に付着している埃などの異物46は、上側に配置されている洗浄液散布ノズル50aから散布される洗浄液17aによって下に落下し、回収タンク72aに入る。
【0034】
上側のE面と下側のF面とから洗浄液17aが散布されたフィルタ2は不織布45の中に多くの洗浄液17aを含んでおり、洗浄液17aに浸された異物46はフィルタ2の搬送中に更にその付着力が減少してくる。そして、フィルタ2が高圧ガス噴射ノズル60aの下まで搬送されてくると、図4に示されるように高圧ガス18がフィルタ2の上側のE面から下側のF面に向って噴射される。すると、高圧ガス18の動圧によって不織布45の繊維の間に入っていた洗浄液17aと洗浄液17aに浸ることによって付着力が減少した異物46が下側に向って吹き飛ばされ、パン71aから回収タンク72aに落ちてくる。フィルタ2が搬送されるに従って、フィルタ2の搬送方向先端側から順次高圧ガス18によって洗浄液17aと異物46とが吹き飛ばされ、フィルタ2は順次洗浄されていく。そして、予備洗浄ステージ4aでは洗浄によって軽い埃或いは大きな塵等の異物46が不織布45から剥がれて回収タンク72aに落ちていき、このような異物46と接触した洗浄液17aは回収タンク72aに溜まっていく。また、回収タンク72aに取り付けられている攪拌機79aが始動し、回収タンク72aに落ちてきた塵や埃が回収タンク72aの底部に溜まらないようにする。これによって回収タンク72aに溜まった洗浄液90aを洗浄液循環ポンプ73a,洗浄液循環配管74aから洗浄液散布ノズル50a,50bにスムーズに循環させることができる。
【0035】
また、予備洗浄ステージ4aでは、洗浄液散布ノズル50a,50bから細かな水滴となった洗浄液17aが散布される。フィルタ2が搬送される搬送ローラ9bの上側はケーシング81によって囲まれているので、散布された細かな水滴の洗浄液17aの飛沫はケーシング81の外部に飛散しないが、洗浄液17aの一部は霧となってローラコンベア9の搬送ローラ9bとケーシング81との間の空間に滞留してしまう。このようにケーシング81の中に霧状の洗浄液17aが滞留してしまうと、赤外線ビームが遮断されてしまい図示しない赤外線センサによってフィルタ2の位置を検出することができなくなってしまうので、洗浄液循環ポンプ73aの始動停止や図示しない高圧ガス遮断弁の開閉動作ができなくなってしまう。図1に示すように、本実施形態では、ケーシング81の搬入口82側に配置した送風機84によって外部から空気を導入し、その空気をフィルタ2の搬送方向に向かって流し、フィルタ脱水ゾーン7の入口側に配置したガイドベーン85によって上方向に向かい、排気口86から外部に排出するようにしているので、ケーシング81の内部に滞留している霧状の洗浄液17aは空気の流れと共にフィルタ搬送方向に流されて排気口86から外部に排出される。これによってフィルタ洗浄ゾーン4のケーシング81の内部が見通せるようになり、赤外線ビームがさえぎられることなく図示しない赤外線センサによってフィルタ2の位置の検出を行うことができ、フィルタ洗浄装置100を支障なく運転することができる。また、霧は空気と共にフィルタ脱水ゾーン7のフィルタ搬送方向上流側のガイドベーン85によってケーシング81の上側に向かい、フィルタ脱水ゾーン7に流れこまないよう構成されているので、ケーシング81に滞留した霧が脱水したフィルタ2に入り込んでしまうことがなく、フィルタ脱水ゾーン7でフィルタ2の脱水を十分に行うことができる。
【0036】
フィルタ2はベルトコンベア3b及び搬送ローラ9bによって搬送され、その先端が予備洗浄ステージ4aを通り抜けて粗洗浄ステージ4bに入っていく。図示しない赤外線センサによってフィルタ2の先端が粗洗浄ステージ4bに入ってくることが検知されると、粗洗浄ステージ4bの洗浄液循環ポンプ73bが始動し、予備洗浄ステージ4aと同様、図3に示すように洗浄液90bが洗浄液散布ノズル50c,50dとから細かな水滴の洗浄液17bとなってフィルタ2のE面、F面の表面に散布され、高圧ガス18がフィルタ2の上側のE面から下側のF面に向って噴射される。粗洗浄ステージ4bでは下側の洗浄液散布ノズル50dから散布される洗浄液17bの流量は上側の洗浄液散布ノズル50cから散布される洗浄液17bの流量よりも少なく、例えば、約半分である。このように、下側の洗浄液散布ノズル50dの散布量を上側の洗浄液散布ノズル50cよりも少なくすることで、下側から散布される洗浄液17bによって異物46がフィルタ2の内部に入ってしまうことを防止でき、次の高圧ガス18の噴射によって効率的に異物46を下側のパン71bに落下させることができる。そして、予備洗浄ステージ4aと同様、図4に示すように、フィルタ2が搬送されるに従って、フィルタ2の搬送方向先端側から順次高圧ガス18によって洗浄液17bと異物46とが下側に向かって吹き飛ばされ、フィルタ2は順次洗浄されていく。そして、洗浄によって不織布45から剥がれた異物46と異物46と接触した洗浄液17bは回収タンク72bに溜まっていく。また、回収タンク72bに取り付けられている攪拌機79bが始動し、回収タンク72bに落ちてきた塵や埃が回収タンク72bの底部に溜まらないようにする。これによって回収タンク72bに溜まった洗浄液90bを洗浄液循環ポンプ73b,洗浄液循環配管74bから洗浄液散布ノズル50c,50dにスムーズに循環させることができると共に、移送ポンプ75bから移送配管76bを介して洗浄液90bをスムーズに予備洗浄ステージ4aの回収タンク72aに移送することができる。
【0037】
フィルタ2は予備洗浄ステージ4aで一度洗浄され、大きな塵、埃等が除去された状態となっているので、粗洗浄ステージ4bでは、予備洗浄ステージ4aで剥離できなかったような小さな異物46、あるいは不織布45の繊維の間に入り込んでいる異物46等が除去される。従って、回収タンク72bには予備洗浄ステージ4aの回収タンク72aよりも細かな異物46が回収される。
【0038】
フィルタ2が搬送され、図示しない赤外線センサによってフィルタ2の後端が粗洗浄ステージ4bを通り抜けたことが検知されると、粗洗浄ステージ4bの洗浄液循環ポンプ73bが停止し洗浄液散布ノズル50c,50dからの洗浄液17bの散布が停止し、図示しない粗洗浄ステージの高圧ガスバルブが閉じ、粗洗浄ステージ4bの高圧ガス噴射ノズル60bからの高圧ガス18の噴射が停止される。
【0039】
フィルタ2がベルトコンベア3b及び搬送ローラ9bによって搬送され、その先端が粗洗浄ステージ4bを通り抜けて精密洗浄ステージ4cに入り、図示しない赤外線センサによってフィルタ2の先端が精密洗浄ステージ4cに入ってくることが検知されると、未使用洗浄液供給ポンプ29が始動し、未使用洗浄液噴霧ノズル50gから未使用洗浄液90と高圧ガスタンク31の空気とが混合された未使用の霧状の洗浄液17gがフィルタ2のE面に向かって噴霧される。なお未使用洗浄液90と高圧ガス18を共に噴霧することでフィルタ2に未使用洗浄液90を浸透させやすくなり、単に未使用洗浄液90のみを噴霧するよりも少ない未使用洗浄液90で十分となる。さらに、精密洗浄ステージ4cの洗浄液循環ポンプ73cが始動し、図5に示すように、洗浄液90cが洗浄液散布ノズル50e,50fから細かな水滴の洗浄液17cとなってフィルタ2のE面、F面の表面に散布される。この場合、粗洗浄ステージ4bと同様、下側の洗浄液散布ノズル50fから散布される洗浄液17cの流量は上側の洗浄液散布ノズル50eから散布される洗浄液17cの流量よりも少なく、例えば、約半分として異物46がフィルタ2の内部に入り込んでしまうことを抑制し、後の高圧ガス18によって異物46を容易に落下させるようにする。また、先の各洗浄ステージ4a,4bと同様に、高圧ガス噴射ノズル60cから高圧ガス18がフィルタ2の上側のE面から下側のF面に向って噴射される。そして、先の各洗浄ステージ4a,4bと同様、フィルタ2が搬送されるに従って、図4に示すように、フィルタ2の搬送方向先端側から順次高圧ガス18によって洗浄液17c,17gと異物46とが下側に吹き飛ばされてパン71cに落ち、フィルタ2は順次洗浄されていく。そして、洗浄によって不織布45から剥がれた異物46と異物46と接触した洗浄液17c,17gは回収タンク72cに溜まっていく。また、回収タンク72cに取り付けられている攪拌機79cが始動され、回収タンク72cに落ちてきた塵や埃が回収タンク72cの底部に溜まらないようにする。これによって回収タンク72cに溜まった洗浄液90cを洗浄液循環ポンプ73c,洗浄液循環配管74cから洗浄液散布ノズル50e,50fにスムーズに循環させることができると共に、移送ポンプ75cから移送配管76cを介して洗浄液90cをスムーズに粗洗浄ステージ4bの回収タンク72bに移送することができる。
【0040】
フィルタ2は先の各洗浄ステージ4a,4bでそれぞれ洗浄され、大きな塵、埃、不織布45の繊維の中に付着されている異物46等が除去されているので、不織布45の繊維間には隙間ができており、不織布45の内部の繊維表面には先の2つの洗浄ステージ4a,4bでは除去できなかった油分の異物46等がこびりついている。精密洗浄ステージ4cでは未使用で洗浄力が高い未使用洗浄液90を霧状にして洗浄液17gとして噴霧しているので、少量の未使用の洗浄液17gは不織布45の繊維の隙間から均一に内部に浸透し、不織布45の繊維の表面にこびりついている油分等の異物46を効果的に繊維の表面から剥離させることができる。そして、この状態となったフィルタ2のE面からF面に向かって高圧ガス噴射ノズル60cから高圧ガス18を噴射するので、精密洗浄ステージ4cでは先の各洗浄ステージ4a,4bでは除去できなかったような不織布45の繊維の表面にこびりついている油分等の異物46が除去される。従って、回収タンク72cには予備洗浄ステージ4aの回収タンク72aや粗洗浄ステージ4bの回収タンク72bよりも細かな異物46が回収される。
【0041】
フィルタ2が搬送され、図示しない赤外線センサによってフィルタ2の後端が精密洗浄ステージ4cを通り抜けたことが検知されると、精密洗浄ステージ4cの洗浄液循環ポンプ73c、未使用洗浄液供給ポンプ29が停止し、洗浄液散布ノズル50e,50fからの洗浄液17cの散布及び未使用洗浄液噴霧ノズル50gからの霧状の洗浄液17gの噴霧が停止し、図示しない精密洗浄ステージの高圧ガスバルブが閉じ、精密洗浄ステージ4cの高圧ガス噴射ノズル60cからの高圧ガス18の噴射が停止される。
【0042】
精密洗浄ステージ4cを通り抜けたフィルタ2は、フィルタ水洗ゾーン5に搬送され、図示しない赤外線センサによってフィルタ2の先端がフィルタ水洗ゾーン5に入ってくることが検知されると、水洗水ポンプ26が始動し、水洗水19が洗浄水散布ノズル12a,12bとからフィルタ2のE面、F面の表面に散布される。その下流ではフィルタ2のE面からF面に向けて同様に高圧ガス噴射ノズル60dから高圧ガス18を噴射して水洗水19を除去する。そして、フィルタ2は、フィルタ水洗ゾーン5からフィルタ除菌ゾーン6に搬送され、図示しない赤外線センサによってフィルタ2の先端がフィルタ除菌ゾーン6に入ってくることが検知されると、オゾン水生成装置35からオゾン水22がオゾン水散布ノズル21a,21bに供給され、オゾン水22がオゾン水散布ノズル21a,21bとからフィルタ2のE面、F面の表面に散布される。フィルタ除菌ゾーン6を通過して除菌処理されたフィルタ2はフィルタ脱水ゾーン7に搬送され、吸水ローラ9e,9dによって挟み込まれ、その中に含んでいた水分が脱水される。また、先に説明したように、ケーシング81の内部に滞留する霧は空気と共にフィルタ脱水ゾーン7のフィルタ搬送方向上流側のガイドベーン85によってケーシング81の上側に向かい、フィルタ脱水ゾーン7に流れこまず、ケーシング81に滞留した霧が脱水したフィルタ2に入り込んでしまうことがなく、フィルタ脱水ゾーン7でフィルタ2の脱水を十分に行うことができる。脱水されたフィルタ2は、ケーシング81の搬出口83から外部に搬出されてフィルタ搬出ゾーン8に搬送される。フィルタ搬出ゾーン8では洗浄済みのフィルタ2がローラコンベア9の搬出ローラ9cの上から取り出される。
【0043】
以上説明したように、フィルタ2はフィルタ搬送方向に沿って予備洗浄ステージ4a、粗洗浄ステージ4b、精密洗浄ステージ4cを順次通過して異物46が除去され、除去された異物46はそれぞれ回収タンク72a,72b,72cに溜まる。予備洗浄ステージ4aでは、汚れがひどい大きな塵、埃等が除去されることからフィルタ2と接触した後、回収タンク72aに回収される洗浄液17aの洗浄能力或いはアルカリ度は大きく低下する。逆に、すでに2回洗浄されたフィルタ2と接触した後、回収タンク72cに回収される精密洗浄ゾーンの洗浄液17c或いは未使用の洗浄液17gの洗浄力或いはアルカリ度はあまり低下しない。また、各洗浄ステージ4a,4b,4cでは各回収タンク72a,72b,72cに回収した各洗浄液17a,17b,17c,17gをそれぞれ各タンク72a,72b,72cに貯留し、その貯留した洗浄液90a,90b,90cを各洗浄液循環ポンプ73a,73b,73cで洗浄液散布ノズル50a〜50fに循環させて洗浄を行っているので、予備洗浄ステージ4aの回収タンク72aに貯留される洗浄液90aの洗浄力或いはアルカリ度は急速に低下していくが、精密洗浄ステージ4cの回収タンク72cに貯留される洗浄液90cの洗浄力或いはアルカリ度は予備洗浄ステージ4aの回収タンク72aに貯留されている洗浄液90aよりも洗浄力或いはアルカリ度の低下が少ない。そして、粗洗浄ステージ4bの回収タンク72bに貯留される洗浄液90bの洗浄力或いはアルカリ度の低下はその中間程度となっている。
【0044】
図6に示すように、精密洗浄ステージ4cは不織布45の繊維にこびりついた小さな油分等を除去するために洗浄力の高い或いはアルカリ度の高い洗浄液が必要であるが、予備洗浄ステージでは、散布した洗浄液17aの衝突或いは高圧ガス18による吹き飛ばしで除去可能な大きい塵、埃が除去できればよく、精密洗浄ステージ4cのような高い洗浄力或いはアルカリ度を持つ洗浄液を散布する必要はない。粗洗浄ステージ4bでの洗浄はこの中間の洗浄である。
【0045】
そこで、予備洗浄ステージ4aの回収タンク72aに貯留される洗浄液90aの洗浄力或いはアルカリ度が低下してきたら、排水ポンプ77aを始動して予備洗浄ステージ4aの回収タンク72aに貯留されている洗浄液90aの一部を外部に排出し、粗洗浄ステージ4bの移送ポンプ75bを始動して予備洗浄ステージ4aの回収タンク72aに貯留されている洗浄液90aよりも洗浄力或いはアルカリ度が高い粗洗浄ステージ4bの回収タンク72bに貯留されている洗浄液90bを移送配管76bから予備洗浄ステージ4aの回収タンク72aに移送し、予備洗浄ステージ4aの回収タンク72aに貯留される洗浄液90aの洗浄力或いはアルカリ度の低下を抑制する。
【0046】
同様に、精密洗浄ステージ4cの移送ポンプ75cを始動して粗洗浄ステージ4bの回収タンク72bに貯留されている洗浄液90bよりも洗浄力或いはアルカリ度が高い精密洗浄ステージ4cの回収タンク72cに貯留されている洗浄液90cを移送配管76cから粗洗浄ステージ4bの回収タンク72bに移送し、粗洗浄ステージ4bの回収タンク72bに貯留される洗浄液90bの洗浄力或いはアルカリ度の低下を抑制する。精密洗浄ステージ4cでは、未使用洗浄液噴霧ノズル50gから噴霧した未使用の洗浄液17gを回収タンク72cに回収することによって、回収タンク72cに貯留される洗浄液90cの洗浄力或いはアルカリ度を高く保つことができる。
【0047】
このように、洗浄力或いはアルカリ度の高い精密洗浄ステージ4cの回収タンク72cから粗洗浄ステージ4bの回収タンク72b、予備洗浄ステージ4aの回収タンク72aの順に順次洗浄液90c,90bを移送し、図6に示すように、各回収タンク72c,72b,72aに貯留されている洗浄液90c,90b,90aの洗浄力或いはアルカリ度がその必要性に応じて精密洗浄ステージ4cから粗洗浄ステージ4b,予備洗浄ステージ4aに向かって段階的に減少していくようにする。予備洗浄ステージ4aの回収タンク72aからの洗浄液90aの排水量は、基本的には精密洗浄ステージ4cの未使用洗浄液噴霧ノズル50gから噴霧される流量と同量となる。
【0048】
また、洗浄液の移送については、移送ポンプ75b,75cを使用し、未使用洗浄液90の噴霧によって回収タンク72cの洗浄液90cがある一定液レベルを超えたときに移送ポンプ75cを始動させて洗浄液90cを回収タンク72cから回収タンク72bに移送する。洗浄液90cの移送によって回収タンク72bの洗浄液90bは増加し、洗浄液90bの液量が一定レベルを超えた時に移送ポンプ75bを始動させて洗浄液90bを回収タンク72bから回収タンク72aに移送する。洗浄液90bの移送によって回収タンク72aの洗浄液90aは増加し、洗浄液90aの液量が一定レベルを超えたときに排水ポンプ77aを始動させて洗浄液90aを排出する。洗浄液90a,90b,90cのレベルは、例えばレベルセンサを使って検知して各移送ポンプ75b,75cや排水ポンプ77aを始動させることができ、洗浄液90a,90b,90cのレベルが一定以下に下がった時点でそれぞれのポンプ75b,75c,77aが停止する。
【0049】
また、未使用洗浄液90の噴霧量を調整する方法として予備洗浄ステージ4aの回収タンク72aに貯留されている洗浄液90aの洗浄力がある程度の低さになる様に精密洗浄ステージ4cの未使用洗浄液90の流量、即ち予備洗浄ステージ4aの回収タンク72aからの排水量を決定することとすれば、各洗浄液90c,90b,90aの洗浄能力を最大限に発揮させることができる。例えば、予備洗浄ステージ4aの回収タンク72aにアルカリ度を検出するPHセンサ等を取り付けておき、回収タンク72aに貯留されている洗浄液90aのアルカリ度が低下し、PHセンサが検出したPHが閾値以下となった場合に排水ポンプ77aを始動させて洗浄液90aを排出し、それと同量の未使用洗浄液90を未使用洗浄液噴霧ノズル50gから噴霧させ、精密洗浄ステージ4cの回収タンク72cから同量の洗浄液90cを粗洗浄ステージ4bの回収タンク72bに移送し、粗洗浄ステージ4bの回収タンク72bから同量の洗浄液90bを予備洗浄ステージ4aの回収タンク72aに移送するようにしてもよい。なお、その際に未使用洗浄液90が未使用洗浄液噴射ノズル50gを介さずに未使用洗浄液タンク28から回収タンク72cに供給されるように配管やポンプを形成してもよい。
【0050】
以上説明した様に、本実施形態のフィルタ洗浄装置100は、未使用洗浄液90を精密洗浄、粗洗浄、予備洗浄の3つの洗浄ステージでその洗浄目的に合った洗浄力、或いはアルカリ度の状態で洗浄力が低くなるまで使用するので、未使用洗浄液90の消費量が少なく、除去性能を高めた空調用フィルタの洗浄を効率的に行うことができる。また、本実施形態では、ケーシング81の中に空気をフィルタ2の搬送方向と同じ方向に向かって流すことにより、ケーシング81の内部に滞留する洗浄液、水洗水、除菌水の霧によって赤外線ビームが遮断されることを抑制し、赤外線センサによってスムーズにフィルタ2の搬送位置を検知して自動運転を行うことができる。
【0051】
本実施形態では、予備洗浄ステージ4a、粗洗浄ステージ4b、精密洗浄ステージ4cの3ステージ構成として、フィルタ2を3回洗浄することとして説明したが、ステージの数は3つに限られず、2つでもよいし、4つ以上であってもよい。また、本実施形態では未使用洗浄液噴霧ノズル50gは高圧ガスによって未使用洗浄液90を霧状の未使用の洗浄液17gとして噴霧することとし説明したが、未使用洗浄液90を霧状にしてフィルタ2に噴霧することができるものであれば二流体ノズルではなく、未使用洗浄液90のみを霧状にして噴霧する一流体ノズルであってもよい。また、本実施形態では、ケーシング81の中の空気を流動させる送風機84はケーシング81の搬入口82の側に取り付けて外部の空気をケーシング81の中に押し込むようすることとしたが、送風機84の配置はこれに限られず、ケーシング81の中に滞留する霧をフィルタ搬送方向に向かって流すように構成されていれば、例えば、送風機84をケーシング81の排気口86に取り付けて、ケーシング81の内部の空気を吸い出すように構成してもよいし、ケーシング81に取り付けず、ケーシング81のフィルタ2の搬入口82から空気を排気口86に向って流すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 フィルタ搬入ゾーン、2 フィルタ、3,3a〜3c ベルトコンベア、4 フィルタ洗浄ゾーン、4a 予備洗浄ステージ、4b 粗洗浄ステージ、4c 精密洗浄ステージ、5 フィルタ水洗ゾーン、6 フィルタ除菌ゾーン、7 フィルタ脱水ゾーン、8 フィルタ搬出ゾーン、9 ローラコンベア、9a 搬入ローラ、9b 搬送ローラ、9c 搬出ローラ、9d 上部吸水ローラ、9e 下部吸水ローラ、12a,12b 洗浄水散布ノズル、17a〜17c,17g 洗浄液、18 高圧ガス、19 水洗水、21a,21b オゾン水散布ノズル、22 オゾン水、23,38 昇降装置、25 オゾン水配管、26 水洗水ポンプ、28 未使用洗浄液タンク、29 未使用洗浄液供給ポンプ、30 未使用洗浄液供給配管、31 高圧ガスタンク、32 高圧ガス配管、33 水洗水タンク、34 水洗水配管、35 オゾン水生成装置、36a〜36c ローラ、37a〜37c ベルト、39 フレーム、40 接続棒、43 ローラ軸、45 不織布、46 異物、50a〜50f 洗浄液散布ノズル、50g 未使用洗浄液噴霧ノズル、60a〜60d 高圧ガス噴射ノズル、71a〜71c パン、72a〜72c 回収タンク、73a〜73c 洗浄液循環ポンプ、74a〜74c 洗浄液循環配管、75b,75c 移送ポンプ、76b,76c 移送配管、77a 排水ポンプ、78a 排水配管、79a〜79c 攪拌機、81 ケーシング、82 搬入口、83 搬出口、84 送風機、85 ガイドベーン、86 排気口、90 未使用洗浄液、90a〜90c 洗浄液、100 フィルタ洗浄装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタを搬送する搬送路と、
前記搬送路に沿って搬送される前記フィルタに洗浄液を散布する少なくとも1つの洗浄液散布ノズルと、前記洗浄液散布ノズルのフィルタ搬送方向下流側に設けられ、前記フィルタに高圧ガスを噴射する少なくとも1つの高圧ガス噴射ノズルと、前記搬送路の下側に配置され、前記各洗浄液散布ノズルから散布された洗浄液を回収する回収タンクと、前記回収タンクに回収した洗浄液を前記各洗浄液散布ノズルに循環させる循環系統と、を含む洗浄ステージがフィルタ搬送方向に沿って複数配置されたフィルタ洗浄装置であって、
フィルタ搬送方向の最下流側の前記洗浄ステージは、未使用の洗浄液を前記フィルタに噴霧する未使用洗浄液噴霧ノズルが配置され、該洗浄ステージの前記回収タンクは、未使用洗浄液噴霧ノズルから噴霧された洗浄液を回収し、
フィルタ搬送方向下流側の前記洗浄ステージの前記回収タンクからフィルタ搬送方向上流側の前記洗浄ステージの前記回収タンクに洗浄液を順次移送する移送系統と、
フィルタ搬送方向の最上流側の前記洗浄ステージの前記回収タンクの洗浄液を外部に排水する排水系統と、
を備えることを特徴とするフィルタ洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタ洗浄装置であって、
前記未使用洗浄液噴霧ノズルは、未使用の洗浄液と高圧ガスとを同時に噴射する二流体ノズルであること、
を特徴とするフィルタ洗浄装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフィルタ洗浄装置であって、
前記洗浄液散布ノズルは、前記搬送路の上側に配置される上側洗浄液散布ノズルと、前記搬送路の下側に配置される下側洗浄液散布ノズルとを含み、フィルタ搬送方向下流側の洗浄ステージの前記下側洗浄液散布ノズルからの洗浄液の散布流量は該ステージの上側洗浄液散布ノズルの散布流量よりも少ないこと、
を特徴とするフィルタ洗浄装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のフィルタ洗浄装置であって、
前記各回収タンクは、回収した洗浄液を攪拌する攪拌機を備えること、
を特徴とするフィルタ洗浄装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のフィルタ洗浄装置であって、
フィルタ搬送方向最上流の前記洗浄ステージの前記回収タンクの洗浄液は、洗浄能力が所定の閾値よりも低くなった際に排出され、略同量の未使用の洗浄液がフィルタ搬送方向最下流の前記洗浄ステージで供給されること、
を特徴とするフィルタ洗浄装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のフィルタ洗浄装置であって、
前記搬送路に沿って延び、前記搬送路を囲み、前記フィルタに向って散布または噴霧させた洗浄液の飛沫が外部に飛散することを抑制するカバーと、
前記カバーの中に滞留する洗浄液の霧を外部に排気する送風機と、
を備えることを特徴とするフィルタ洗浄装置。
【請求項7】
請求項6に記載のフィルタ洗浄装置であって、
前記送風機は、前記カバーの内部の前記霧をフィルタ搬送方向に向かって流すように配置されていること、を特徴とするフィルタ洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−192369(P2012−192369A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59478(P2011−59478)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】