フィルタ装置およびそれに用いられる濾過体の製造方法
【課題】濾材の接合部における密度変化および濾過面積減少を抑制できるフィルタ装置およびそれに用いられる濾過体の製造方法を提供する。
【解決手段】超音波溶着装置の振動ホーン104を、不織布21、22の不織布外周面21a、22aに押し当てることにより不織布21、22を溶着することで、振動ホーン104の押し付け力を従来のフィルタ装置の製造時の超音波振動ホーン押し付け力よりも遥かに小さくできると同時に、溶着部の大きさも小さくできる。これにより、フィルタエレメント20の濾過面積に対する溶着部23の面積割合および濾材の溶着部近傍の密度変化を従来のフィルタ装置よりも小さくできる。したがって、濾材の接合部における密度変化および濾過面積減少を抑制できるフィルタ装置およびそれに用いられる濾過体の製造方法を実現することができる。
【解決手段】超音波溶着装置の振動ホーン104を、不織布21、22の不織布外周面21a、22aに押し当てることにより不織布21、22を溶着することで、振動ホーン104の押し付け力を従来のフィルタ装置の製造時の超音波振動ホーン押し付け力よりも遥かに小さくできると同時に、溶着部の大きさも小さくできる。これにより、フィルタエレメント20の濾過面積に対する溶着部23の面積割合および濾材の溶着部近傍の密度変化を従来のフィルタ装置よりも小さくできる。したがって、濾材の接合部における密度変化および濾過面積減少を抑制できるフィルタ装置およびそれに用いられる濾過体の製造方法を実現することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その内部に流体を通過させて流体に混在している固体異物を捕集して流体を浄化するフィルタ装置およびそれに用いられる濾過体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のフィルタ装置として、目の粗さである密度の異なる複数種類の濾材、たとえば不織布を流体の流れ方向に沿って直列に配置し、目が粗い、すなわち密度が低い不織布を上流側に、目が細かい、すなわち密度が高い不織布を下流側に配置してフィルタ装置全体として密度勾配を有するように構成したものがある。密度勾配を有するフィルタ装置の使用により、低密度の不織布では比較的大きい異物を捕集し、高密度の不織布では小さく細かい異物を捕集するので、フィルタ装置全体における捕集された異物の分布を均一化してフィルタ寿命延長を目指している。
【0003】
この場合、積層された複数の濾材である不織布は互いに接合されて一体化される。接合方法としては、エンボスロールと平滑ロールの一対の熱ロール間に不織布を挟んで積層方向に押圧して溶着する方法、あるいは、不織布表面にホットメルト系樹脂を塗布し積層方向に押圧加熱する方法、超音波溶着装置の振動ホーンを積層方向に押圧して溶着する方法等が適用されている。
【特許文献1】特開2003−236321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィルタ装置に対して要求される密度勾配を実現するために、積層する濾材の数を増やす、あるいは一枚の濾材の厚さを増大させることがある。積層される濾材の数が増えたり、一枚の濾材の厚さが増大されたりすると、従来のフィルタ装置における複数の濾材の接合方法、すなわち濾材をその積層方法において押圧する方法では、確実な接合が困難になる、あるいは密度勾配を正確に実現し難くなる、という問題が生じる。すなわち、接合工程において濾材をその積層方法に押圧する力を大きくする必要があり、そのために、接合部近傍において密度が上昇して、フィルタ装置としての密度勾配が不揃いになる。また、より大きい押圧力に伴い押圧部材が大型化し、このため接合に係る面積が増大し濾過に寄与する面積が減少してしまう。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたもので、各濾材の密度変化および濾過面積減少を必要最小限度に抑制しつつ濾材を積層接合することができるフィルタ装置およびそれに用いられる濾過体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成する為、以下の技術的手段を採用する。
【0007】
本発明の請求項1に記載のフィルタ装置は、流体の導入口および排出口を備えるケーシングと、ケーシング内において前記導入口と排出口との間に収容される濾過体と、を備え、濾過体は複数の濾材を積層し且つ隣接する濾材同士を溶着させて一体化することにより形成され、濾材は不織布、繊維集合体または連泡構造を有する樹脂等から形成されるフィルタ装置であって、隣接する濾材同士が溶着してなる溶着部は濾材の外周面である濾材外周面上に形成されることを特徴としている。
【0008】
複数の濾材同士を溶着する場合、従来のフィルタ装置では、濾材の積層方向から熱ロール、あるいは超音波振動ホーンを押圧して濾材同士を溶着させている。このため、積層される濾材の数が多くなるほど、また積層される濾材の厚さが厚いほど、より大きい力で押圧する必要がある。このため、濾材同士が互いに溶けて溶着している部分である溶着部の周辺の部分が溶着部に引きずられて圧縮変形し、密度が変化する場合がある。さらに、濾材における流体通過方向と直交する面である濾過面の面積に対する溶着部の面積の割合が増大し、濾過に供される面積である濾過面積が減少する場合がある。
【0009】
これに対して、本発明の請求項1に記載のフィルタ装置では、濾過体を構成する複数の濾材同士はその外周面において接合されている。言い換えると、濾材外周面に超音波振動ホーン、あるいは加熱ヘッドを当接させて濾材を溶融させ複数の濾材同士を溶着接合している。つまり、超音波振動ホーン、あるいは加熱ヘッドの濾材への押圧方向が従来のフィルタ装置の場合とは異なり、濾材の厚さ方向に押すのではなくて、濾過面に沿う方向に押している。濾材は、超音波振動ホーン、あるいは加熱ヘッドに押圧されると容易に溶着されるので、従来のフィルタ装置の場合における超音波振動ホーン、あるいは加熱ヘッドの押し付け力に比べて遥かに小さい力でも確実に溶着できる。したがって、濾材の溶着部近傍における超音波振動ホーン、あるいは加熱ヘッド押し付けに伴う密度変化も、従来のフィルタ装置の場合と比較して小さくできる。
【0010】
以上により、各濾材の密度変化および濾過面積減少を必要最小限度に抑制しつつ濾材を積層接合することができるフィルタ装置を実現することができる。
【0011】
本発明の請求項2に記載のフィルタ装置は、溶着部は連続的に一体化されて濾過体の外周面を形成することを特徴としている。
【0012】
溶着部は、濾材が部分的に溶融して一体化したのち硬化して形成される。したがって、上述の構成によれば、濾過体の外周部分は溶融して一体化した溶着部により覆われることになる。すなわち、溶融して一体化した溶着部は円筒を形成し、その中に、積層された複数の濾材が保持固定されるのと同等の構造となっている。これにより、濾過体の剛性が向上する。したがって、各濾材の密度変化および濾過面積減少を必要最小限度に抑制しつつ濾材を積層接合することができるフィルタ装置を実現できると共に、フィルタ装置の組み付け工程、フィルタ装置の使用過程において濾過体の変形を防止することができる。
【0013】
本発明の請求項3に記載の濾過体製造方法は、請求項1または請求項2に記載のフィルタ装置に用いられる濾過体の製造方法であって、複数の濾材を重ねて押圧保持する保持工程と、隣接する2枚の濾材の濾材外周面同士を溶着する溶着工程と、を備えることを特徴としている。
【0014】
上述の濾過体製造方法によれば、完成した濾過体において濾材同士が溶着されてなる溶着部は濾過体の外周部に形成されるので、各濾材の密度変化および濾過面積減少を必要最小限度に抑制しつつ濾材を積層接合されてなる濾過体を確実に製造可能な製造方法を提供できる。
【0015】
本発明の請求項4に記載の濾過体製造方法は、溶着工程において使用される溶着装置は超音波溶着装置であり、超音波溶着装置は濾材外周面に押圧接触して濾材を振動させるための部材である振動ホーンを備え、溶着工程において振動ホーンは濾材の外周側から濾材外周面に向かって移動し、濾材外周面に接触することを特徴としている。
【0016】
上述の濾過体の製造工程において、複数の濾材を溶着する際に複数の濾材を積層方向において抑える力は、溶着工程において濾材を動かないように保持できる程度の大きさの力でよい。すなわち、従来のフィルタ装置の濾過体製造工程において濾材の積層方向に振動ホーンを押し付けるときのような強い力は必要ない。したがって、各濾材の密度変化および濾過面積減少を必要最小限度に抑制しつつ濾材を積層接合されてなる濾過体を確実に製造可能な製造方法を提供できる。
【0017】
この場合、本発明の請求項5に記載の濾過体製造方法のように、振動ホーンの濾材の積層方向における断面形状の濾材側端部には、濾材の積層方向における両端に形成され濾材外周面へ向かって突出する凸部および両凸部間に形成された濾材外周面に対して凹である凹部を備える構成とすれば、溶着工程において、振動ホーンの凹部を溶着対象である隣接する2枚の濾材の境界に対向させ、且つ両凸部を2枚の濾材それぞれに押し当てることで、2枚の濾材を確実に溶着することができる。
【0018】
本発明の請求項6に記載の濾過体製造方法は、溶着工程において使用される溶着装置は濾材の溶融温度以上に加熱された加熱ヘッドを濾材外周面に接触させて溶着するものであり、溶着工程において加熱ヘッドは濾材の外周側から濾材外周面に向かって移動し、濾材外周面に接触することを特徴としている。
【0019】
上述の濾過体の製造工程において、複数の濾材を溶着する際に複数の濾材を積層方向において抑える力は、溶着工程において濾材を動かないように保持できる程度の大きさの力でよい。すなわち、従来のフィルタ装置の濾過体製造工程において濾材の積層方向に加熱ヘッドを押し付けるときのような強い力は必要ない。したがって、各濾材の密度変化および濾過面積減少を必要最小限度に抑制しつつ濾材を積層接合されてなる濾過体を確実に製造可能な製造方法を提供できる。
【0020】
この場合、本発明の請求項7に記載の濾過体製造方法のように、加熱溶着装置は電気抵抗加熱手法により加熱ヘッドを前記溶融温度以上に加熱する電気抵抗加熱装置である構成とする、あるいは、本発明の請求項8に記載の濾過体製造方法のように、加熱溶着装置は高周波誘導加熱手法により加熱ヘッドを前記溶融温度以上に加熱する高周波誘導加熱装置である構成とすれば、加熱ヘッドの温度を容易且つ確実に所望の温度に到達させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明によるフィルタ装置の実施形態を、自動車に搭載され、燃料タンクからエンジンに供給される燃料を濾過するために用いられる燃料フィルタ10に適用した場合を例に図面に基づいて説明する。
【0022】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による燃料フィルタ10は、図1に示すように、流体である燃料の導入口31aおよび排出口32aを設けたケーシング30と、このケーシング30内に収容される濾過体であるフィルタエレメント20とから構成されている。
【0023】
ケーシング30は、略有底円筒状に形成されたアッパーケース31および略蓋状のロアケース32を、図1に示すように接合して形成されている。アッパーケース31およびロアケース32は、たとえば樹脂材料を成型加工して作られている。アッパーケース31の底部、つまり、図1における上端部には、ケーシング30内へ燃料を導入するための導入口31aが設けられている。アッパーケース31は、円筒状の収容部31cを備え、この収容部31c内に後述する濾過体であるフィルタエレメント20が収容されている。アッパーケース31は、その底部近傍から底部にかけての部分において直径寸法が収容部31cよりも小さく絞られており、それにより、収容部31cと小径部との境界に両者の直径差によって突き当て部31bが形成されている。突き当て部31bは、フィルタエレメント20が導入口31aへ向かう方向に移動することを規制している。ロアケース32の底部、つまり、図1における下端部には、ケーシング30内から燃料を排出するための排出口32aが設けられている。燃料タンク(図示せず)からエンジン(図示せず)へ燃料を供給する燃料配管(図示せず)の途中に燃料フィルタ10が取付けられる、つまり導入口31aを燃料配管の上流側(燃料タンク側)に、排出口32aを燃料配管の下流側(エンジン側)にそれぞれ接続すると、燃料は、図1中において矢印で示す方向へ流れる。すなわち、導入口31aから燃料フィルタ10内へ流入し、フィルタエレメント20を通過して、排出口32aから流出する。
【0024】
濾過体であるフィルタエレメント20は、複数の濾材である二枚の不織布21および不織布22を積層し接合して形成されている。すなわち、本発明の第1実施形態による燃料フィルタ10においては、フィルタエレメント20を構成する濾材として不織布が用いられている。フィルタエレメント20は、ケーシング30の収容室31cに収容可能なように略円柱状に形成されている。フィルタエレメント20がアッパーケース31の収容室31c内へアッパーケース31の開口端から組み込まれた後、アッパーケース31にロアケース32が嵌合固定されると、フィルタエレメント20は、アッパーケース31の突き当て部31bおよびロアケース32の突き当て部32bに挟まれて、ケーシング30内に収容保持される。フィルタエレメント20単体状態における不織布21、22の積層方向長さ、言い換えると燃料流れ方向長さは、ケーシング30における突き当て部31bと突き当て部32b間の長さよりも長く設定されている。したがって、フィルタエレメント20がアッパーケース31内に組み込まれアッパーケース31にロアケース32が嵌合固定されると、フィルタエレメント20は軸方向である燃料流れ方向、つまり図1における上下方向に圧縮された状態となる。
【0025】
ここで、フィルタエレメント20を構成する二枚の不織布21、22について説明する。
【0026】
二枚の不織布21、22は、その粗さである密度、つまり、多数の繊維が重なり合って形成された網目の目の大きさ、あるいは繊維間の隙間が異なっており、不織布21の密度は不織布22の密度より低くなっている。つまり、フィルタエレメント20としての密度は全体として均一ではなく、不織布21において低く不織布22において高くなっていわゆる密度勾配を有している。燃料フィルタ10の使用状態において、フィルタエレメント20は、燃料流れの上流側から不織布21、不織布22の順で積層されているので、フィルタエレメント20としての密度は上流側で低く、下流側で高くなっている。燃料フィルタ10に流入した燃料は、先ず不織布21内を通過し次いで不織布22内を通過する。これにより、フィルタエレメント20の上流側である不織布21では比較的大きい異物が捕集され、下流側の不織布22ではより小さく細かい異物が捕集される。したがって、フィルタエレメント20内において、捕集された異物はほぼ均一に分布しているので、異物捕集量の増加に伴う燃料フィルタ10の圧力損失増大度合いを小さくでき、燃料フィルタ10の寿命を延長できる。不織布21および不織布22は、図2に示すように、超音波溶接により一体的に溶着接合されている。すなわち、不織布21の積層方向に平行な面である不織布外周面21aおよび不織布22の積層方向に平行な面である不織布外周面22aとの境界部分に、不織布21および不織布22が溶融し互いに融合し一体化して溶着してできた溶着部23が形成され、それによって不織布21および不織布22が接合されてフィルタエレメント20が形成される。
【0027】
次に、以上説明した本発明の第1実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の製造方法について、図3〜図8に基づいて説明する。フィルタエレメント20の製造工程においては、不織布21および不織布22を溶着して一体化する工程が一番重要な工程となる。以下に、不織布21および不織布22を溶着する工程について説明する。
【0028】
先ず、フィルタエレメント20の製造工程中において不織布21および不織布22の溶着に使用される装置について説明する。回転治具101およびクランプ102は、積層された不織布21および不織布22を保持するものである。回転治具101に設けられた軸101aがベッド103の軸受けに回転可能に嵌合しており、これにより、回転治具101は、ベッド103に対して軸101aを中心として回転できる。不織布21および不織布22を溶着するための溶着装置としては、超音波溶着装置が用いられている。これは、超音波周波数で振動する振動ホーン104を被溶着物体である不織布21および不織布22に押し当てて、超音波振動と加圧力により両者を溶融し接合するものである。振動ホーン104はホルダ105に保持され、また、ホルダ105はベッド103上を図3における左右方向に移動可能である。振動ホーン104は図示しない発振器により振動させられ、ホルダ105は図示しない駆動装置により移動される。振動ホーン104は、超音波溶着装置に不織布21、22がセットされた上体において、その断面形状において、図3に示すように、不織布21、22の濾材外周面である不織布外周面21a、22aに向かって突出する2つの凸部104a、および両凸部104a間に形成された不織布外周面21a、22aに対して凹である凹面104bを備えている。凹部104bは、本発明の第1実施形態による超音波溶着装置においては、図3に示すように、略V字状に形成されている。振動ホーン104において、上述した凸部104aおよび凹部104bが形成された部分は、図4に示すように、不織布21、22の外周形状の円弧と略同一形状の円弧状に形成されている。
【0029】
次に、不織布21および不織布22を溶着してフィルタエレメント20を製作する具体的な工程について説明する。
【0030】
先ず、保持工程として、回転治具101上に不織布21および不織布22を重ねて置き、クランプ102により不織布21を押圧して保持する。このとき、円筒状の不織布21および不織布22は回転治具101の軸101aに対して同軸上に配置されている。
【0031】
次に、振動ホーン104を、各不織布21および不織布22におけるそれらの積層方向に平行な面である不織布外周面21aおよび不織布外周面22aへ向かってベッド103上を前進移動させて、不織布21および不織布22に押し当てる。このとき、振動ホーン104の両凸部104aは、図5に示すように、不織布21あるいは不織布22に食い込んでいる。振動ホーン104が不織布21および不織布22に対して所定位置に停止すると、振動ホーン104を超音波振動させる。振動ホーン104により不織布21および不織布22が加振されると、両不織布21、22の界面で摩擦熱が発生し不織布21および不織布22は瞬時に溶融温度に達して両者が融合して溶着する。
【0032】
ところで、保持工程終了時点において、不織布21および不織布22の境界に、図3に示すような隙間が生じている場合がある。本発明の第1実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の製造方法においては、振動ホーン104形状を上述したような両凸部104aの間に凹部104bを備えるように設定しているので、振動ホーン104が両不織布21、22に食い込むにしたがって上述の隙間は塞がっていく。これにより、保持工程終了時点で不織布21、22間に隙間が生じていても、それを確実につぶして不織布21および不織布22接合することができる。
【0033】
溶着が完了すると、振動ホーン104の超音波振動を停止し、続いて振動ホーン104を、図7に示すように、不織布21、22から離れる方向にベッド103上を移動させる。不織布21、22の境界部分には、図7に示すように、両者が融合した溶着部23が形成されている。溶着部23は、振動ホーン104と接触した部分にのみ形成され、振動ホーン104が当接しなかった部分には形成されない。そこで、回転治具101を回転させて、初めの溶着工程で溶着されなかった部分に対して、再度上述の溶着工程を施して溶着する。
【0034】
本発明の第1実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の溶着工程を説明する図3〜8では、分かり易さのために振動ホーン104を一個のみ示しているが、実際の溶着工程においては、図8(a)に示すように、一対の振動ホーン104が、回転治具101を挟んで180度対向して配置され、これら2個の振動ホーン104は、同時に不織布21、22に対して前進・後退移動して溶着動作を行っている。また、2個の振動ホーン104の形状は同一であり、その円弧の中心角は100度に設定されている。そして、最初の溶着動作が終了すると、回転治具101は90度回転されて、2回目の溶着動作が行われる。2回目の溶着動作が終了すると、不織布21、22の境界部の全周にわたって、図8(b)に示すように、円環状に溶着部23が形成され、不織布21および不織布22の接合が完了してフィルタエレメント20が完成する。本発明の第1実施形態においては、振動ホーン104の円弧の中心角を100度とし、1回目の溶着動作から不織布21、22を90度回転させて2回目の溶着動作を行っている。つまり、振動ホーン104の円弧の中心角が次回の溶着動作前に不織布を回転させる角度より大きいので、不織布には、1回目の溶着動作と2回目の溶着動作の両方において溶着される部分が生じる。すなわち、フィルタエレメント20の溶着部23は、第1回目溶着部X、第2回目溶着部Y、および2回溶着された重複溶着部Zが、図8(b)に示すように配置されて形成されている。これにより、溶着部23が確実に円環状形成されるので、フィルタエレメント20内を通過中の燃料が、フィルタエレメント20の外周へ流出することを防止することができる。
【0035】
以上説明した本発明の第1実施形態による燃料フィルタ10におけるフィルタエレメント20の製造方法によれば、超音波溶着装置の振動ホーン104を、各不織布21および不織布22におけるそれらの積層方向に平行な面である不織布外周面21aおよび不織布外周面22aに押し当てて、それによって不織布外周面21aおよび不織布外周面22a上に両不織布21、22が溶融し融合した溶着部23を形成し、この溶着部23により両不織布21、22を接合している。
【0036】
従来のフィルタ装置の製造工程において積層された複数の不織布を溶着接合する場合は、不織布の積層方向から熱ロール、あるいは超音波振動ホーンを押圧している。このため、積層される不織布の数が多くなるほど、積層される不織布の厚さが厚いほど、より大きい力で押圧する必要がある。このため、不織布同士が互いに溶けて溶着している部分である溶着部の周辺の部分が溶着部に引きずられて圧縮変形し、密度が変化する場合がある。さらに、不織布における流体通過方向と直交する面である濾過面の面積に対する溶着部の面積の割合が増大し、濾過に供される面積である濾過面積が減少する場合がある。
【0037】
これに対して、本発明の第1実施形態による燃料フィルタ10におけるフィルタエレメント20の製造方法によれば、超音波溶着装置の振動ホーン104を、不織布21および不織布22におけるそれらの積層方向に平行な面である不織布外周面21aおよび不織布外周面22aに押し当てて両不織布21、22を溶着接合している。このため、従来のフィルタ装置の製造工程における超音波振動ホーンの押し付け力に比べて遥かに小さい力でも確実に溶着できるので、溶着部の大きさ自体も小さくできる。これにより、燃料濾過に寄与する濾過面積に対する溶着部23の面積割合および不織布の溶着部近傍における密度変化を従来のフィルタ装置の場合と比較して小さくできる。したがって、各不織布21、22の密度変化および濾過面積減少度合いを必要最小限度に抑制しつつ不織布21、22を積層接合することができる燃料フィルタ10およびそれに用いられるフィルタエレメント20の製造方法を実現することができる。
【0038】
なお、以上説明した本発明の第1実施形態による燃料フィルタ10およびそれに用いられるフィルタエレメント20の製造方法においては、積層される不織布を二枚としているが、三枚あるいはそれ以上であってもよい。その場合、接合箇所である不織布境界部分は2個あるいはそれ以上となるが、本実施形態のように一対(片側1個)の振動ホーン104を用いて、複数の不織布境界部分を順次溶着してもよいし、あるいは、振動ホーン104を接合箇所である不織布境界部分の個数と同数対(片側複数個)設けて、全ての不織布境界部分を同時に溶着してもよい。また、不織布21、22にホーン104を押し当てた状態のまま、回転治具101を回転させてワークである不織布21、22をホーン104に対して回転させて、不織布外周面21a、22aを連続的に溶着してもよい。
【0039】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による燃料フィルタ10は、濾過体であるフィルタエレメント20の製造方法が本発明の第1実施形態による燃料フィルタ10の場合と異なっている。すなわち、本発明の第1実施形態におけるフィルタエレメント20の製造方法では、不織布21、22の接合に超音波溶接装置をもちいていたが、本発明の第2実施形態におけるフィルタエレメント20の製造方法では、不織布21、22の接合に不織布21、22の溶融温度以上に加熱された加熱ヘッドを不織布外周面21aおよび不織布外周面22aに当接させて溶着させる構成の、加熱溶着装置を用いている。本発明の第2実施形態におけるフィルタエレメント20の製造方法においては、加熱溶着装置として電気抵抗加熱装置を用いている。これは、導電性材質から形成された加熱ヘッド106に電流を流して加熱ヘッド106自体の電気抵抗によるジュール発熱で加熱ヘッド106の温度を不織布21、22の溶融温度以上まで上昇させるものである。以下に、本発明の第2実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の製造方法について説明する。
【0040】
本発明の第2実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の溶着作業に使用される加熱溶着装置は、図9に示すように、加熱ヘッド106以外の構成は、本発明の第1実施形態の場合と同様である。すなわち、回転治具101に不織布21、22をクランプ102により押圧保持する保持工程、および加熱ヘッド106を前進移動させて不織布21、22を溶着し、加熱ヘッドを後退移動させて回転治具101を90度回転させた後、再度加熱ヘッド106を前進移動させて不織布21、22を溶着する点は同一である。加熱ヘッド106は、不織布外周面21aおよび不織布外周面22aと同一曲率の円筒面状に形成され、その中心角は、本発明の第1実施形態の場合と同様に100度である。但し、加熱ヘッド106のフィルタエレメント20の軸方向(図9の上下方向)長さは、図9に示すように、回転治具101に保持された状態における不織布21、22の積層高さよりも長く設定されている。このため、図9に示すように、加熱ヘッド106を不織布21、22に当接させた状態で加熱ヘッド106に通電すると、加熱ヘッド106の温度が不織布21、22の溶融温度以上に上昇し、不織布外周面21aおよび不織布外周面22aはその軸方向全域が溶融し、両者の境界部においては双方が融合して溶着する。加熱ヘッド106は、不織布外周面21aおよび不織布外周面22aが溶融後直ちに通電が停止され、溶着部23が固化した後に、不織布21、22から離れるように後退移動する。実際は、加熱ヘッド106への通電が停止されると、図示しないノズルから加熱ヘッド106へ空気を吹き付けて加熱ヘッド106を冷却し、溶着部23の固化を促進している。溶着部23は、図10に示すように、フィルタエレメント20の外周部の軸方向全域に形成される。溶着工程が完了すると、溶着部23は、フィルタエレメント20の外周部に薄肉円筒状に形成される。
【0041】
本発明の第2実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の製造方法においても、電気抵抗加熱装置の加熱ヘッド106を、不織布21および不織布22におけるそれらの積層方向に平行な面である不織布外周面21aおよび不織布外周面22aに押し当てて両不織布21、22を溶着接合している。このため、従来のフィルタ装置の製造工程における加熱ヘッドの押し付け力に比べて遥かに小さい力でも確実に溶着できるので、溶着部の大きさ自体も小さくできる。これにより、燃料濾過に寄与する濾過面積に対する溶着部23の面積割合および不織布の溶着部近傍における密度変化を従来のフィルタ装置の場合と比較して小さくできる。したがって、各不織布21、22の密度変化および濾過面積減少度合いを必要最小限度に抑制しつつ不織布21、22を積層接合することができる燃料フィルタ10およびそれに用いられるフィルタエレメント20の製造方法を実現することができる。
【0042】
また、本発明の第2実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の製造方法においては、加熱ヘッド106のフィルタエレメント20の軸方向長さを、回転治具101に保持された状態における不織布21、22の積層高さよりも長く設定している。これにより、溶着部23は、図10に示すように、フィルタエレメント20の外周部の軸方向全域に薄肉円筒状に形成される。つまり、軟らかい不織布の外周部に剛性の高い薄肉円筒を一体的に形成している。これにより、完成したフィルタエレメント20の剛性を高めることができるので、燃料フィルタ10の製造工程中においてフィルタエレメント20が破損することを防止できる。
【0043】
また、溶着部23により、フィルタエレメント20の外周面である側面における燃料流出・流入が阻止されるので、燃料フィルタ10へ流入した燃料は、必ずフィルタエレメント20内を通過して濾過される。したがって、フィルタエレメント20の濾過効率、濾過寿命が安定したものとすることができる。
【0044】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態による燃料フィルタ10は、濾過体であるフィルタエレメント20の製造に用いられる加熱溶着装置が、本発明の第2実施形態による燃料フィルタ10の場合と異なっている。すなわち、本発明の第3実施形態におけるフィルタエレメント20の製造方法では、電気抵抗加熱装置に替えて、高周波誘導加熱装置を用いている。本発明の第3実施形態におけるフィルタエレメント20の製造に用いられる加熱ヘッド107の背後には、図11、図12に示すように、コイル108が一体的に装着されている。コイルに高周波電流を流すと、導電性材質から形成された加熱ヘッド107内に電磁誘導により渦電流が発生し、この渦電流によるジュール発熱で加熱ヘッド107の温度を不織布21、22の溶融温度以上まで上昇させるものである。加熱ヘッド107の昇温原理に係る部分以外の構成は、先に説明した本発明の第2実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の製造方法の場合と同様であり詳細説明は省略する。
【0045】
本発明の第3実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の製造方法においても、高周波誘導加熱装置の加熱ヘッド107を、不織布21および不織布22におけるそれらの積層方向に平行な面である不織布外周面21aおよび不織布外周面22aに押し当てて両不織布21、22を溶着接合している。このため、従来のフィルタ装置の製造工程における加熱ヘッドの押し付け力に比べて遥かに小さい力でも確実に溶着できるので、溶着部の大きさ自体も小さくできる。これにより、燃料濾過に寄与する濾過面積に対する溶着部23の面積割合および不織布の溶着部近傍における密度変化を従来のフィルタ装置の場合と比較して小さくできる。したがって、各不織布21、22の密度変化および濾過面積減少度合いを必要最小限度に抑制しつつ不織布21、22を積層接合することができる燃料フィルタ10およびそれに用いられるフィルタエレメント20の製造方法を実現することができる。
【0046】
また本発明の第3実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の製造方法においては、加熱ヘッド107のフィルタエレメント20の軸方向長さを、回転治具101に保持された状態における不織布21、22の積層高さよりも長く設定している。これにより、溶着部23は、図10に示すように、フィルタエレメント20の外周部の軸方向全域に薄肉円筒状に形成される。つまり、軟らかい不織布の外周部に剛性の高い薄肉円筒を一体的に形成している。これにより、完成したフィルタエレメント20の剛性を高めることができるので、燃料フィルタ10の製造工程中においてフィルタエレメント20が破損することを防止できる。
【0047】
また、溶着部23により、フィルタエレメント20の外周面である側面における燃料流出・流入が阻止されるので、燃料フィルタ10へ流入した燃料は、必ずフィルタエレメント20内を通過して濾過される。したがって、フィルタエレメント20の濾過効率、濾過寿命が安定したものとすることができる。
【0048】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の製造方法では、不織布21、22に加えて、ロアケース33を一体的に積層接合している。すなわち、不織布21、不織布22およびロアケース33をこの順番で積層して一体的に接合して形成されている。ロアケース33は、フィルタ10における燃料出口を形成し、フィルタ10を、燃料経路を形成する部材に接続するためのものである。ロアケース33は樹脂材料を成型加工して作られている。また、本発明の第4実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の溶着作業に使用される加熱溶着装置である電気抵抗加熱装置は、図13に示すような構成であり、本発明の第2実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の製造方法における電気抵抗加熱装置と同様である。以下に、本発明の第4実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の製造方法について、本発明の第2実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の製造方法と同様の部分の説明は省略し異なる点を中心に説明する。なお、加熱溶着装置として電気抵抗加熱装置を用いているが、これに替えて高周波誘導加熱装置を用いてもよい。
【0049】
電気抵抗加熱装置の加熱ヘッド106は、不織布外周面21a、不織布外周面22aおよびロアケース33の外周面と同一曲率の円筒面状に形成され、その中心角は、本発明の第1実施形態の場合と同様に100度である。但し、加熱ヘッド106のフィルタエレメント20の軸方向(図13の上下方向)長さは、図13に示すように、回転治具101に保持された被溶着物である不織布21、22およびロアケース33の積層高さよりも長く設定されている。このため、図13に示すように、加熱ヘッド106を不織布21、22およびロアケース33に当接させた状態で加熱ヘッド106に通電すると、加熱ヘッド106の温度が不織布21、22およびロアケース33の溶融温度以上に上昇し、不織布外周面21a、不織布外周面22aおよびロアケース33の外周面はその軸方向全域が溶融し、三者の境界部においては双方が融合して溶着する。
【0050】
以上説明したように、本発明の第4実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の製造方法によれば、従来のフィルタ装置の製造工程における加熱ヘッドの押し付け力に比べて遥かに小さい力でも確実に溶着できるので、溶着部の大きさ自体も小さくでき、それにより、燃料濾過に寄与する濾過面積に対する溶着部23の面積割合および不織布の溶着部近傍における密度変化を従来のフィルタ装置の場合と比較して小さくできる、という効果が得られるのと同時に、濾材である不織布21、22に加えて、加熱ヘッド106により溶融可能な樹脂部品も一体的に溶着させることができる。
【0051】
なお、以上説明した本発明の第2実施形態〜第4実施形態によるフィルタ10では、フィルタエレメント20を形成する濾材としての不織布の数を二枚としているが、三枚あるいはそれ以上としてもよい。
【0052】
また、以上説明した本発明の第2実施形態〜第4実施形態によるフィルタ10では、加熱ヘッド106および加熱ヘッド107のフィルタエレメント20の軸方向長さを、回転治具101に保持された状態における不織布21、22の積層高さよりも長く設定しているが、必ずしもそうする必要はなく、不織布21、22の境界部分を含む限定された範囲を覆う長さであってもよい。この場合でも、各不織布21、22の密度変化および濾過面積減少度合いを必要最小限度に抑制しつつ不織布21、22を積層接合することができる燃料フィルタ10およびそれに用いられるフィルタエレメント20の製造方法を実現することができる。
【0053】
また、以上説明した、第1実施形態〜第4実施形態によるフィルタ10では、円弧状に形成された振動ホーン104、加熱ヘッド106および加熱ヘッド107の円弧状の中心角を100度とし、第1回目の溶着動作後回転治具101を90度回転させて第2回目の溶着動作を行っているが、振動ホーン104、加熱ヘッド106および加熱ヘッド107の円弧状の中心角、回転治具101の回転角度、溶着動作回数は、溶着部23がフィルタエレメント20の外周部の全周に連続して形成されるならば、適宜変更してよい。
【0054】
また、以上説明した、第1実施形態〜第4実施形態によるフィルタ10では、振動ホーン104、加熱ヘッド106および加熱ヘッド107を被溶着物である不織布21、22等の積層方向に直交する方向に移動させて被溶着物へ押し当てているが、振動ホーン104、加熱ヘッド106および加熱ヘッド107の移動方向を上述した方向に限定する必要はなく、被溶着物の積層方向に対して90度以外の角度をなす方向に移動させても良い。
【0055】
また、以上説明した、第1実施形態〜第4実施形態によるフィルタ10では、フィルタエレメント20の形状を円筒形、つまり燃料通過方向に直交する断面形状を円形としているが、他の形状であってもよい。たとえば、フィルタエレメント20の形状を直方体、つまり燃料通過方向に直交する断面形状を長方形としてもよい。この場合、振動ホーン104、加熱ヘッド106および加熱ヘッド107の形状は平面状、あるいは断面L字状の略アングル状となる。
【0056】
また、以上説明した各実施形態は、いずれも本発明を燃料フィルタに適用した場合を例に説明しているが、濾過対象である液体を燃料に限定する必要はなく、他の種類の流体を濾過するフィルタに適用しても良い。例えば、流体として、飲料用水、工業用水、各種食用飲料、各種薬品等の液体、あるいは気体に適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施形態による燃料フィルタ10の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20単体の外観図である。
【図3】フィルタエレメント20製造工程中の保持工程を説明する模式断面図である。
【図4】図3中のIV矢視図である。
【図5】フィルタエレメント20製造工程中の溶着工程を説明する模式断面図である。
【図6】図5中のVI矢視図である。
【図7】フィルタエレメント20製造工程中の溶着工程を説明する模式断面図である。
【図8】フィルタエレメント20製造工程中の溶着工程を説明する模式図であり、(a)は、超音波溶着の振動ホーンの位置関係を、(b)は、溶着工程が終了したフィルタエレメント20における溶着部23を、示している。
【図9】本発明の第2実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20製造工程中の溶着工程を説明する模式断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20製造工程中の溶着工程を説明する模式断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20製造工程中の溶着工程を説明する模式断面図である。
【図12】図11中のXII矢視図である。
【図13】本発明の第4実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20製造工程中の溶着工程を説明する模式断面図である。
【図14】本発明の第4実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20製造工程中の溶着工程を説明する模式断面図である。
【符号の説明】
【0058】
10 燃料フィルタ(フィルタ装置)
20 フィルタエレメント(濾過体)
21 不織布
21a 不織布外周面
22 不織布
22a 不織布外周面
23 溶着部
30 ケーシング
31 アッパーケース
31a 導入口
31b ガイド部
31c 収容部
32 ロアケース
32a 排出口
32b ガイド部
33 ロアケース
101 回転治具
101a 軸
102 クランプ
103 ベッド
103a 軸受け
104 振動ホーン(超音波溶着装置)
104a 凸部
104b 凹部
105 ホルダ
106 加熱ヘッド(加熱溶着装置、電気抵抗加熱装置)
107 加熱ヘッド(加熱溶着装置、高周波誘導加熱装置)
108 コイル(加熱溶着装置、高周波誘導加熱装置)
X 第1回目溶着部
Y 第2回目溶着部
Z 重複溶着部
C 回転治具回転中心
【技術分野】
【0001】
本発明は、その内部に流体を通過させて流体に混在している固体異物を捕集して流体を浄化するフィルタ装置およびそれに用いられる濾過体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のフィルタ装置として、目の粗さである密度の異なる複数種類の濾材、たとえば不織布を流体の流れ方向に沿って直列に配置し、目が粗い、すなわち密度が低い不織布を上流側に、目が細かい、すなわち密度が高い不織布を下流側に配置してフィルタ装置全体として密度勾配を有するように構成したものがある。密度勾配を有するフィルタ装置の使用により、低密度の不織布では比較的大きい異物を捕集し、高密度の不織布では小さく細かい異物を捕集するので、フィルタ装置全体における捕集された異物の分布を均一化してフィルタ寿命延長を目指している。
【0003】
この場合、積層された複数の濾材である不織布は互いに接合されて一体化される。接合方法としては、エンボスロールと平滑ロールの一対の熱ロール間に不織布を挟んで積層方向に押圧して溶着する方法、あるいは、不織布表面にホットメルト系樹脂を塗布し積層方向に押圧加熱する方法、超音波溶着装置の振動ホーンを積層方向に押圧して溶着する方法等が適用されている。
【特許文献1】特開2003−236321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィルタ装置に対して要求される密度勾配を実現するために、積層する濾材の数を増やす、あるいは一枚の濾材の厚さを増大させることがある。積層される濾材の数が増えたり、一枚の濾材の厚さが増大されたりすると、従来のフィルタ装置における複数の濾材の接合方法、すなわち濾材をその積層方法において押圧する方法では、確実な接合が困難になる、あるいは密度勾配を正確に実現し難くなる、という問題が生じる。すなわち、接合工程において濾材をその積層方法に押圧する力を大きくする必要があり、そのために、接合部近傍において密度が上昇して、フィルタ装置としての密度勾配が不揃いになる。また、より大きい押圧力に伴い押圧部材が大型化し、このため接合に係る面積が増大し濾過に寄与する面積が減少してしまう。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたもので、各濾材の密度変化および濾過面積減少を必要最小限度に抑制しつつ濾材を積層接合することができるフィルタ装置およびそれに用いられる濾過体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成する為、以下の技術的手段を採用する。
【0007】
本発明の請求項1に記載のフィルタ装置は、流体の導入口および排出口を備えるケーシングと、ケーシング内において前記導入口と排出口との間に収容される濾過体と、を備え、濾過体は複数の濾材を積層し且つ隣接する濾材同士を溶着させて一体化することにより形成され、濾材は不織布、繊維集合体または連泡構造を有する樹脂等から形成されるフィルタ装置であって、隣接する濾材同士が溶着してなる溶着部は濾材の外周面である濾材外周面上に形成されることを特徴としている。
【0008】
複数の濾材同士を溶着する場合、従来のフィルタ装置では、濾材の積層方向から熱ロール、あるいは超音波振動ホーンを押圧して濾材同士を溶着させている。このため、積層される濾材の数が多くなるほど、また積層される濾材の厚さが厚いほど、より大きい力で押圧する必要がある。このため、濾材同士が互いに溶けて溶着している部分である溶着部の周辺の部分が溶着部に引きずられて圧縮変形し、密度が変化する場合がある。さらに、濾材における流体通過方向と直交する面である濾過面の面積に対する溶着部の面積の割合が増大し、濾過に供される面積である濾過面積が減少する場合がある。
【0009】
これに対して、本発明の請求項1に記載のフィルタ装置では、濾過体を構成する複数の濾材同士はその外周面において接合されている。言い換えると、濾材外周面に超音波振動ホーン、あるいは加熱ヘッドを当接させて濾材を溶融させ複数の濾材同士を溶着接合している。つまり、超音波振動ホーン、あるいは加熱ヘッドの濾材への押圧方向が従来のフィルタ装置の場合とは異なり、濾材の厚さ方向に押すのではなくて、濾過面に沿う方向に押している。濾材は、超音波振動ホーン、あるいは加熱ヘッドに押圧されると容易に溶着されるので、従来のフィルタ装置の場合における超音波振動ホーン、あるいは加熱ヘッドの押し付け力に比べて遥かに小さい力でも確実に溶着できる。したがって、濾材の溶着部近傍における超音波振動ホーン、あるいは加熱ヘッド押し付けに伴う密度変化も、従来のフィルタ装置の場合と比較して小さくできる。
【0010】
以上により、各濾材の密度変化および濾過面積減少を必要最小限度に抑制しつつ濾材を積層接合することができるフィルタ装置を実現することができる。
【0011】
本発明の請求項2に記載のフィルタ装置は、溶着部は連続的に一体化されて濾過体の外周面を形成することを特徴としている。
【0012】
溶着部は、濾材が部分的に溶融して一体化したのち硬化して形成される。したがって、上述の構成によれば、濾過体の外周部分は溶融して一体化した溶着部により覆われることになる。すなわち、溶融して一体化した溶着部は円筒を形成し、その中に、積層された複数の濾材が保持固定されるのと同等の構造となっている。これにより、濾過体の剛性が向上する。したがって、各濾材の密度変化および濾過面積減少を必要最小限度に抑制しつつ濾材を積層接合することができるフィルタ装置を実現できると共に、フィルタ装置の組み付け工程、フィルタ装置の使用過程において濾過体の変形を防止することができる。
【0013】
本発明の請求項3に記載の濾過体製造方法は、請求項1または請求項2に記載のフィルタ装置に用いられる濾過体の製造方法であって、複数の濾材を重ねて押圧保持する保持工程と、隣接する2枚の濾材の濾材外周面同士を溶着する溶着工程と、を備えることを特徴としている。
【0014】
上述の濾過体製造方法によれば、完成した濾過体において濾材同士が溶着されてなる溶着部は濾過体の外周部に形成されるので、各濾材の密度変化および濾過面積減少を必要最小限度に抑制しつつ濾材を積層接合されてなる濾過体を確実に製造可能な製造方法を提供できる。
【0015】
本発明の請求項4に記載の濾過体製造方法は、溶着工程において使用される溶着装置は超音波溶着装置であり、超音波溶着装置は濾材外周面に押圧接触して濾材を振動させるための部材である振動ホーンを備え、溶着工程において振動ホーンは濾材の外周側から濾材外周面に向かって移動し、濾材外周面に接触することを特徴としている。
【0016】
上述の濾過体の製造工程において、複数の濾材を溶着する際に複数の濾材を積層方向において抑える力は、溶着工程において濾材を動かないように保持できる程度の大きさの力でよい。すなわち、従来のフィルタ装置の濾過体製造工程において濾材の積層方向に振動ホーンを押し付けるときのような強い力は必要ない。したがって、各濾材の密度変化および濾過面積減少を必要最小限度に抑制しつつ濾材を積層接合されてなる濾過体を確実に製造可能な製造方法を提供できる。
【0017】
この場合、本発明の請求項5に記載の濾過体製造方法のように、振動ホーンの濾材の積層方向における断面形状の濾材側端部には、濾材の積層方向における両端に形成され濾材外周面へ向かって突出する凸部および両凸部間に形成された濾材外周面に対して凹である凹部を備える構成とすれば、溶着工程において、振動ホーンの凹部を溶着対象である隣接する2枚の濾材の境界に対向させ、且つ両凸部を2枚の濾材それぞれに押し当てることで、2枚の濾材を確実に溶着することができる。
【0018】
本発明の請求項6に記載の濾過体製造方法は、溶着工程において使用される溶着装置は濾材の溶融温度以上に加熱された加熱ヘッドを濾材外周面に接触させて溶着するものであり、溶着工程において加熱ヘッドは濾材の外周側から濾材外周面に向かって移動し、濾材外周面に接触することを特徴としている。
【0019】
上述の濾過体の製造工程において、複数の濾材を溶着する際に複数の濾材を積層方向において抑える力は、溶着工程において濾材を動かないように保持できる程度の大きさの力でよい。すなわち、従来のフィルタ装置の濾過体製造工程において濾材の積層方向に加熱ヘッドを押し付けるときのような強い力は必要ない。したがって、各濾材の密度変化および濾過面積減少を必要最小限度に抑制しつつ濾材を積層接合されてなる濾過体を確実に製造可能な製造方法を提供できる。
【0020】
この場合、本発明の請求項7に記載の濾過体製造方法のように、加熱溶着装置は電気抵抗加熱手法により加熱ヘッドを前記溶融温度以上に加熱する電気抵抗加熱装置である構成とする、あるいは、本発明の請求項8に記載の濾過体製造方法のように、加熱溶着装置は高周波誘導加熱手法により加熱ヘッドを前記溶融温度以上に加熱する高周波誘導加熱装置である構成とすれば、加熱ヘッドの温度を容易且つ確実に所望の温度に到達させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明によるフィルタ装置の実施形態を、自動車に搭載され、燃料タンクからエンジンに供給される燃料を濾過するために用いられる燃料フィルタ10に適用した場合を例に図面に基づいて説明する。
【0022】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による燃料フィルタ10は、図1に示すように、流体である燃料の導入口31aおよび排出口32aを設けたケーシング30と、このケーシング30内に収容される濾過体であるフィルタエレメント20とから構成されている。
【0023】
ケーシング30は、略有底円筒状に形成されたアッパーケース31および略蓋状のロアケース32を、図1に示すように接合して形成されている。アッパーケース31およびロアケース32は、たとえば樹脂材料を成型加工して作られている。アッパーケース31の底部、つまり、図1における上端部には、ケーシング30内へ燃料を導入するための導入口31aが設けられている。アッパーケース31は、円筒状の収容部31cを備え、この収容部31c内に後述する濾過体であるフィルタエレメント20が収容されている。アッパーケース31は、その底部近傍から底部にかけての部分において直径寸法が収容部31cよりも小さく絞られており、それにより、収容部31cと小径部との境界に両者の直径差によって突き当て部31bが形成されている。突き当て部31bは、フィルタエレメント20が導入口31aへ向かう方向に移動することを規制している。ロアケース32の底部、つまり、図1における下端部には、ケーシング30内から燃料を排出するための排出口32aが設けられている。燃料タンク(図示せず)からエンジン(図示せず)へ燃料を供給する燃料配管(図示せず)の途中に燃料フィルタ10が取付けられる、つまり導入口31aを燃料配管の上流側(燃料タンク側)に、排出口32aを燃料配管の下流側(エンジン側)にそれぞれ接続すると、燃料は、図1中において矢印で示す方向へ流れる。すなわち、導入口31aから燃料フィルタ10内へ流入し、フィルタエレメント20を通過して、排出口32aから流出する。
【0024】
濾過体であるフィルタエレメント20は、複数の濾材である二枚の不織布21および不織布22を積層し接合して形成されている。すなわち、本発明の第1実施形態による燃料フィルタ10においては、フィルタエレメント20を構成する濾材として不織布が用いられている。フィルタエレメント20は、ケーシング30の収容室31cに収容可能なように略円柱状に形成されている。フィルタエレメント20がアッパーケース31の収容室31c内へアッパーケース31の開口端から組み込まれた後、アッパーケース31にロアケース32が嵌合固定されると、フィルタエレメント20は、アッパーケース31の突き当て部31bおよびロアケース32の突き当て部32bに挟まれて、ケーシング30内に収容保持される。フィルタエレメント20単体状態における不織布21、22の積層方向長さ、言い換えると燃料流れ方向長さは、ケーシング30における突き当て部31bと突き当て部32b間の長さよりも長く設定されている。したがって、フィルタエレメント20がアッパーケース31内に組み込まれアッパーケース31にロアケース32が嵌合固定されると、フィルタエレメント20は軸方向である燃料流れ方向、つまり図1における上下方向に圧縮された状態となる。
【0025】
ここで、フィルタエレメント20を構成する二枚の不織布21、22について説明する。
【0026】
二枚の不織布21、22は、その粗さである密度、つまり、多数の繊維が重なり合って形成された網目の目の大きさ、あるいは繊維間の隙間が異なっており、不織布21の密度は不織布22の密度より低くなっている。つまり、フィルタエレメント20としての密度は全体として均一ではなく、不織布21において低く不織布22において高くなっていわゆる密度勾配を有している。燃料フィルタ10の使用状態において、フィルタエレメント20は、燃料流れの上流側から不織布21、不織布22の順で積層されているので、フィルタエレメント20としての密度は上流側で低く、下流側で高くなっている。燃料フィルタ10に流入した燃料は、先ず不織布21内を通過し次いで不織布22内を通過する。これにより、フィルタエレメント20の上流側である不織布21では比較的大きい異物が捕集され、下流側の不織布22ではより小さく細かい異物が捕集される。したがって、フィルタエレメント20内において、捕集された異物はほぼ均一に分布しているので、異物捕集量の増加に伴う燃料フィルタ10の圧力損失増大度合いを小さくでき、燃料フィルタ10の寿命を延長できる。不織布21および不織布22は、図2に示すように、超音波溶接により一体的に溶着接合されている。すなわち、不織布21の積層方向に平行な面である不織布外周面21aおよび不織布22の積層方向に平行な面である不織布外周面22aとの境界部分に、不織布21および不織布22が溶融し互いに融合し一体化して溶着してできた溶着部23が形成され、それによって不織布21および不織布22が接合されてフィルタエレメント20が形成される。
【0027】
次に、以上説明した本発明の第1実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の製造方法について、図3〜図8に基づいて説明する。フィルタエレメント20の製造工程においては、不織布21および不織布22を溶着して一体化する工程が一番重要な工程となる。以下に、不織布21および不織布22を溶着する工程について説明する。
【0028】
先ず、フィルタエレメント20の製造工程中において不織布21および不織布22の溶着に使用される装置について説明する。回転治具101およびクランプ102は、積層された不織布21および不織布22を保持するものである。回転治具101に設けられた軸101aがベッド103の軸受けに回転可能に嵌合しており、これにより、回転治具101は、ベッド103に対して軸101aを中心として回転できる。不織布21および不織布22を溶着するための溶着装置としては、超音波溶着装置が用いられている。これは、超音波周波数で振動する振動ホーン104を被溶着物体である不織布21および不織布22に押し当てて、超音波振動と加圧力により両者を溶融し接合するものである。振動ホーン104はホルダ105に保持され、また、ホルダ105はベッド103上を図3における左右方向に移動可能である。振動ホーン104は図示しない発振器により振動させられ、ホルダ105は図示しない駆動装置により移動される。振動ホーン104は、超音波溶着装置に不織布21、22がセットされた上体において、その断面形状において、図3に示すように、不織布21、22の濾材外周面である不織布外周面21a、22aに向かって突出する2つの凸部104a、および両凸部104a間に形成された不織布外周面21a、22aに対して凹である凹面104bを備えている。凹部104bは、本発明の第1実施形態による超音波溶着装置においては、図3に示すように、略V字状に形成されている。振動ホーン104において、上述した凸部104aおよび凹部104bが形成された部分は、図4に示すように、不織布21、22の外周形状の円弧と略同一形状の円弧状に形成されている。
【0029】
次に、不織布21および不織布22を溶着してフィルタエレメント20を製作する具体的な工程について説明する。
【0030】
先ず、保持工程として、回転治具101上に不織布21および不織布22を重ねて置き、クランプ102により不織布21を押圧して保持する。このとき、円筒状の不織布21および不織布22は回転治具101の軸101aに対して同軸上に配置されている。
【0031】
次に、振動ホーン104を、各不織布21および不織布22におけるそれらの積層方向に平行な面である不織布外周面21aおよび不織布外周面22aへ向かってベッド103上を前進移動させて、不織布21および不織布22に押し当てる。このとき、振動ホーン104の両凸部104aは、図5に示すように、不織布21あるいは不織布22に食い込んでいる。振動ホーン104が不織布21および不織布22に対して所定位置に停止すると、振動ホーン104を超音波振動させる。振動ホーン104により不織布21および不織布22が加振されると、両不織布21、22の界面で摩擦熱が発生し不織布21および不織布22は瞬時に溶融温度に達して両者が融合して溶着する。
【0032】
ところで、保持工程終了時点において、不織布21および不織布22の境界に、図3に示すような隙間が生じている場合がある。本発明の第1実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の製造方法においては、振動ホーン104形状を上述したような両凸部104aの間に凹部104bを備えるように設定しているので、振動ホーン104が両不織布21、22に食い込むにしたがって上述の隙間は塞がっていく。これにより、保持工程終了時点で不織布21、22間に隙間が生じていても、それを確実につぶして不織布21および不織布22接合することができる。
【0033】
溶着が完了すると、振動ホーン104の超音波振動を停止し、続いて振動ホーン104を、図7に示すように、不織布21、22から離れる方向にベッド103上を移動させる。不織布21、22の境界部分には、図7に示すように、両者が融合した溶着部23が形成されている。溶着部23は、振動ホーン104と接触した部分にのみ形成され、振動ホーン104が当接しなかった部分には形成されない。そこで、回転治具101を回転させて、初めの溶着工程で溶着されなかった部分に対して、再度上述の溶着工程を施して溶着する。
【0034】
本発明の第1実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の溶着工程を説明する図3〜8では、分かり易さのために振動ホーン104を一個のみ示しているが、実際の溶着工程においては、図8(a)に示すように、一対の振動ホーン104が、回転治具101を挟んで180度対向して配置され、これら2個の振動ホーン104は、同時に不織布21、22に対して前進・後退移動して溶着動作を行っている。また、2個の振動ホーン104の形状は同一であり、その円弧の中心角は100度に設定されている。そして、最初の溶着動作が終了すると、回転治具101は90度回転されて、2回目の溶着動作が行われる。2回目の溶着動作が終了すると、不織布21、22の境界部の全周にわたって、図8(b)に示すように、円環状に溶着部23が形成され、不織布21および不織布22の接合が完了してフィルタエレメント20が完成する。本発明の第1実施形態においては、振動ホーン104の円弧の中心角を100度とし、1回目の溶着動作から不織布21、22を90度回転させて2回目の溶着動作を行っている。つまり、振動ホーン104の円弧の中心角が次回の溶着動作前に不織布を回転させる角度より大きいので、不織布には、1回目の溶着動作と2回目の溶着動作の両方において溶着される部分が生じる。すなわち、フィルタエレメント20の溶着部23は、第1回目溶着部X、第2回目溶着部Y、および2回溶着された重複溶着部Zが、図8(b)に示すように配置されて形成されている。これにより、溶着部23が確実に円環状形成されるので、フィルタエレメント20内を通過中の燃料が、フィルタエレメント20の外周へ流出することを防止することができる。
【0035】
以上説明した本発明の第1実施形態による燃料フィルタ10におけるフィルタエレメント20の製造方法によれば、超音波溶着装置の振動ホーン104を、各不織布21および不織布22におけるそれらの積層方向に平行な面である不織布外周面21aおよび不織布外周面22aに押し当てて、それによって不織布外周面21aおよび不織布外周面22a上に両不織布21、22が溶融し融合した溶着部23を形成し、この溶着部23により両不織布21、22を接合している。
【0036】
従来のフィルタ装置の製造工程において積層された複数の不織布を溶着接合する場合は、不織布の積層方向から熱ロール、あるいは超音波振動ホーンを押圧している。このため、積層される不織布の数が多くなるほど、積層される不織布の厚さが厚いほど、より大きい力で押圧する必要がある。このため、不織布同士が互いに溶けて溶着している部分である溶着部の周辺の部分が溶着部に引きずられて圧縮変形し、密度が変化する場合がある。さらに、不織布における流体通過方向と直交する面である濾過面の面積に対する溶着部の面積の割合が増大し、濾過に供される面積である濾過面積が減少する場合がある。
【0037】
これに対して、本発明の第1実施形態による燃料フィルタ10におけるフィルタエレメント20の製造方法によれば、超音波溶着装置の振動ホーン104を、不織布21および不織布22におけるそれらの積層方向に平行な面である不織布外周面21aおよび不織布外周面22aに押し当てて両不織布21、22を溶着接合している。このため、従来のフィルタ装置の製造工程における超音波振動ホーンの押し付け力に比べて遥かに小さい力でも確実に溶着できるので、溶着部の大きさ自体も小さくできる。これにより、燃料濾過に寄与する濾過面積に対する溶着部23の面積割合および不織布の溶着部近傍における密度変化を従来のフィルタ装置の場合と比較して小さくできる。したがって、各不織布21、22の密度変化および濾過面積減少度合いを必要最小限度に抑制しつつ不織布21、22を積層接合することができる燃料フィルタ10およびそれに用いられるフィルタエレメント20の製造方法を実現することができる。
【0038】
なお、以上説明した本発明の第1実施形態による燃料フィルタ10およびそれに用いられるフィルタエレメント20の製造方法においては、積層される不織布を二枚としているが、三枚あるいはそれ以上であってもよい。その場合、接合箇所である不織布境界部分は2個あるいはそれ以上となるが、本実施形態のように一対(片側1個)の振動ホーン104を用いて、複数の不織布境界部分を順次溶着してもよいし、あるいは、振動ホーン104を接合箇所である不織布境界部分の個数と同数対(片側複数個)設けて、全ての不織布境界部分を同時に溶着してもよい。また、不織布21、22にホーン104を押し当てた状態のまま、回転治具101を回転させてワークである不織布21、22をホーン104に対して回転させて、不織布外周面21a、22aを連続的に溶着してもよい。
【0039】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による燃料フィルタ10は、濾過体であるフィルタエレメント20の製造方法が本発明の第1実施形態による燃料フィルタ10の場合と異なっている。すなわち、本発明の第1実施形態におけるフィルタエレメント20の製造方法では、不織布21、22の接合に超音波溶接装置をもちいていたが、本発明の第2実施形態におけるフィルタエレメント20の製造方法では、不織布21、22の接合に不織布21、22の溶融温度以上に加熱された加熱ヘッドを不織布外周面21aおよび不織布外周面22aに当接させて溶着させる構成の、加熱溶着装置を用いている。本発明の第2実施形態におけるフィルタエレメント20の製造方法においては、加熱溶着装置として電気抵抗加熱装置を用いている。これは、導電性材質から形成された加熱ヘッド106に電流を流して加熱ヘッド106自体の電気抵抗によるジュール発熱で加熱ヘッド106の温度を不織布21、22の溶融温度以上まで上昇させるものである。以下に、本発明の第2実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の製造方法について説明する。
【0040】
本発明の第2実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の溶着作業に使用される加熱溶着装置は、図9に示すように、加熱ヘッド106以外の構成は、本発明の第1実施形態の場合と同様である。すなわち、回転治具101に不織布21、22をクランプ102により押圧保持する保持工程、および加熱ヘッド106を前進移動させて不織布21、22を溶着し、加熱ヘッドを後退移動させて回転治具101を90度回転させた後、再度加熱ヘッド106を前進移動させて不織布21、22を溶着する点は同一である。加熱ヘッド106は、不織布外周面21aおよび不織布外周面22aと同一曲率の円筒面状に形成され、その中心角は、本発明の第1実施形態の場合と同様に100度である。但し、加熱ヘッド106のフィルタエレメント20の軸方向(図9の上下方向)長さは、図9に示すように、回転治具101に保持された状態における不織布21、22の積層高さよりも長く設定されている。このため、図9に示すように、加熱ヘッド106を不織布21、22に当接させた状態で加熱ヘッド106に通電すると、加熱ヘッド106の温度が不織布21、22の溶融温度以上に上昇し、不織布外周面21aおよび不織布外周面22aはその軸方向全域が溶融し、両者の境界部においては双方が融合して溶着する。加熱ヘッド106は、不織布外周面21aおよび不織布外周面22aが溶融後直ちに通電が停止され、溶着部23が固化した後に、不織布21、22から離れるように後退移動する。実際は、加熱ヘッド106への通電が停止されると、図示しないノズルから加熱ヘッド106へ空気を吹き付けて加熱ヘッド106を冷却し、溶着部23の固化を促進している。溶着部23は、図10に示すように、フィルタエレメント20の外周部の軸方向全域に形成される。溶着工程が完了すると、溶着部23は、フィルタエレメント20の外周部に薄肉円筒状に形成される。
【0041】
本発明の第2実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の製造方法においても、電気抵抗加熱装置の加熱ヘッド106を、不織布21および不織布22におけるそれらの積層方向に平行な面である不織布外周面21aおよび不織布外周面22aに押し当てて両不織布21、22を溶着接合している。このため、従来のフィルタ装置の製造工程における加熱ヘッドの押し付け力に比べて遥かに小さい力でも確実に溶着できるので、溶着部の大きさ自体も小さくできる。これにより、燃料濾過に寄与する濾過面積に対する溶着部23の面積割合および不織布の溶着部近傍における密度変化を従来のフィルタ装置の場合と比較して小さくできる。したがって、各不織布21、22の密度変化および濾過面積減少度合いを必要最小限度に抑制しつつ不織布21、22を積層接合することができる燃料フィルタ10およびそれに用いられるフィルタエレメント20の製造方法を実現することができる。
【0042】
また、本発明の第2実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の製造方法においては、加熱ヘッド106のフィルタエレメント20の軸方向長さを、回転治具101に保持された状態における不織布21、22の積層高さよりも長く設定している。これにより、溶着部23は、図10に示すように、フィルタエレメント20の外周部の軸方向全域に薄肉円筒状に形成される。つまり、軟らかい不織布の外周部に剛性の高い薄肉円筒を一体的に形成している。これにより、完成したフィルタエレメント20の剛性を高めることができるので、燃料フィルタ10の製造工程中においてフィルタエレメント20が破損することを防止できる。
【0043】
また、溶着部23により、フィルタエレメント20の外周面である側面における燃料流出・流入が阻止されるので、燃料フィルタ10へ流入した燃料は、必ずフィルタエレメント20内を通過して濾過される。したがって、フィルタエレメント20の濾過効率、濾過寿命が安定したものとすることができる。
【0044】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態による燃料フィルタ10は、濾過体であるフィルタエレメント20の製造に用いられる加熱溶着装置が、本発明の第2実施形態による燃料フィルタ10の場合と異なっている。すなわち、本発明の第3実施形態におけるフィルタエレメント20の製造方法では、電気抵抗加熱装置に替えて、高周波誘導加熱装置を用いている。本発明の第3実施形態におけるフィルタエレメント20の製造に用いられる加熱ヘッド107の背後には、図11、図12に示すように、コイル108が一体的に装着されている。コイルに高周波電流を流すと、導電性材質から形成された加熱ヘッド107内に電磁誘導により渦電流が発生し、この渦電流によるジュール発熱で加熱ヘッド107の温度を不織布21、22の溶融温度以上まで上昇させるものである。加熱ヘッド107の昇温原理に係る部分以外の構成は、先に説明した本発明の第2実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の製造方法の場合と同様であり詳細説明は省略する。
【0045】
本発明の第3実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の製造方法においても、高周波誘導加熱装置の加熱ヘッド107を、不織布21および不織布22におけるそれらの積層方向に平行な面である不織布外周面21aおよび不織布外周面22aに押し当てて両不織布21、22を溶着接合している。このため、従来のフィルタ装置の製造工程における加熱ヘッドの押し付け力に比べて遥かに小さい力でも確実に溶着できるので、溶着部の大きさ自体も小さくできる。これにより、燃料濾過に寄与する濾過面積に対する溶着部23の面積割合および不織布の溶着部近傍における密度変化を従来のフィルタ装置の場合と比較して小さくできる。したがって、各不織布21、22の密度変化および濾過面積減少度合いを必要最小限度に抑制しつつ不織布21、22を積層接合することができる燃料フィルタ10およびそれに用いられるフィルタエレメント20の製造方法を実現することができる。
【0046】
また本発明の第3実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の製造方法においては、加熱ヘッド107のフィルタエレメント20の軸方向長さを、回転治具101に保持された状態における不織布21、22の積層高さよりも長く設定している。これにより、溶着部23は、図10に示すように、フィルタエレメント20の外周部の軸方向全域に薄肉円筒状に形成される。つまり、軟らかい不織布の外周部に剛性の高い薄肉円筒を一体的に形成している。これにより、完成したフィルタエレメント20の剛性を高めることができるので、燃料フィルタ10の製造工程中においてフィルタエレメント20が破損することを防止できる。
【0047】
また、溶着部23により、フィルタエレメント20の外周面である側面における燃料流出・流入が阻止されるので、燃料フィルタ10へ流入した燃料は、必ずフィルタエレメント20内を通過して濾過される。したがって、フィルタエレメント20の濾過効率、濾過寿命が安定したものとすることができる。
【0048】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の製造方法では、不織布21、22に加えて、ロアケース33を一体的に積層接合している。すなわち、不織布21、不織布22およびロアケース33をこの順番で積層して一体的に接合して形成されている。ロアケース33は、フィルタ10における燃料出口を形成し、フィルタ10を、燃料経路を形成する部材に接続するためのものである。ロアケース33は樹脂材料を成型加工して作られている。また、本発明の第4実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の溶着作業に使用される加熱溶着装置である電気抵抗加熱装置は、図13に示すような構成であり、本発明の第2実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の製造方法における電気抵抗加熱装置と同様である。以下に、本発明の第4実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の製造方法について、本発明の第2実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の製造方法と同様の部分の説明は省略し異なる点を中心に説明する。なお、加熱溶着装置として電気抵抗加熱装置を用いているが、これに替えて高周波誘導加熱装置を用いてもよい。
【0049】
電気抵抗加熱装置の加熱ヘッド106は、不織布外周面21a、不織布外周面22aおよびロアケース33の外周面と同一曲率の円筒面状に形成され、その中心角は、本発明の第1実施形態の場合と同様に100度である。但し、加熱ヘッド106のフィルタエレメント20の軸方向(図13の上下方向)長さは、図13に示すように、回転治具101に保持された被溶着物である不織布21、22およびロアケース33の積層高さよりも長く設定されている。このため、図13に示すように、加熱ヘッド106を不織布21、22およびロアケース33に当接させた状態で加熱ヘッド106に通電すると、加熱ヘッド106の温度が不織布21、22およびロアケース33の溶融温度以上に上昇し、不織布外周面21a、不織布外周面22aおよびロアケース33の外周面はその軸方向全域が溶融し、三者の境界部においては双方が融合して溶着する。
【0050】
以上説明したように、本発明の第4実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20の製造方法によれば、従来のフィルタ装置の製造工程における加熱ヘッドの押し付け力に比べて遥かに小さい力でも確実に溶着できるので、溶着部の大きさ自体も小さくでき、それにより、燃料濾過に寄与する濾過面積に対する溶着部23の面積割合および不織布の溶着部近傍における密度変化を従来のフィルタ装置の場合と比較して小さくできる、という効果が得られるのと同時に、濾材である不織布21、22に加えて、加熱ヘッド106により溶融可能な樹脂部品も一体的に溶着させることができる。
【0051】
なお、以上説明した本発明の第2実施形態〜第4実施形態によるフィルタ10では、フィルタエレメント20を形成する濾材としての不織布の数を二枚としているが、三枚あるいはそれ以上としてもよい。
【0052】
また、以上説明した本発明の第2実施形態〜第4実施形態によるフィルタ10では、加熱ヘッド106および加熱ヘッド107のフィルタエレメント20の軸方向長さを、回転治具101に保持された状態における不織布21、22の積層高さよりも長く設定しているが、必ずしもそうする必要はなく、不織布21、22の境界部分を含む限定された範囲を覆う長さであってもよい。この場合でも、各不織布21、22の密度変化および濾過面積減少度合いを必要最小限度に抑制しつつ不織布21、22を積層接合することができる燃料フィルタ10およびそれに用いられるフィルタエレメント20の製造方法を実現することができる。
【0053】
また、以上説明した、第1実施形態〜第4実施形態によるフィルタ10では、円弧状に形成された振動ホーン104、加熱ヘッド106および加熱ヘッド107の円弧状の中心角を100度とし、第1回目の溶着動作後回転治具101を90度回転させて第2回目の溶着動作を行っているが、振動ホーン104、加熱ヘッド106および加熱ヘッド107の円弧状の中心角、回転治具101の回転角度、溶着動作回数は、溶着部23がフィルタエレメント20の外周部の全周に連続して形成されるならば、適宜変更してよい。
【0054】
また、以上説明した、第1実施形態〜第4実施形態によるフィルタ10では、振動ホーン104、加熱ヘッド106および加熱ヘッド107を被溶着物である不織布21、22等の積層方向に直交する方向に移動させて被溶着物へ押し当てているが、振動ホーン104、加熱ヘッド106および加熱ヘッド107の移動方向を上述した方向に限定する必要はなく、被溶着物の積層方向に対して90度以外の角度をなす方向に移動させても良い。
【0055】
また、以上説明した、第1実施形態〜第4実施形態によるフィルタ10では、フィルタエレメント20の形状を円筒形、つまり燃料通過方向に直交する断面形状を円形としているが、他の形状であってもよい。たとえば、フィルタエレメント20の形状を直方体、つまり燃料通過方向に直交する断面形状を長方形としてもよい。この場合、振動ホーン104、加熱ヘッド106および加熱ヘッド107の形状は平面状、あるいは断面L字状の略アングル状となる。
【0056】
また、以上説明した各実施形態は、いずれも本発明を燃料フィルタに適用した場合を例に説明しているが、濾過対象である液体を燃料に限定する必要はなく、他の種類の流体を濾過するフィルタに適用しても良い。例えば、流体として、飲料用水、工業用水、各種食用飲料、各種薬品等の液体、あるいは気体に適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施形態による燃料フィルタ10の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20単体の外観図である。
【図3】フィルタエレメント20製造工程中の保持工程を説明する模式断面図である。
【図4】図3中のIV矢視図である。
【図5】フィルタエレメント20製造工程中の溶着工程を説明する模式断面図である。
【図6】図5中のVI矢視図である。
【図7】フィルタエレメント20製造工程中の溶着工程を説明する模式断面図である。
【図8】フィルタエレメント20製造工程中の溶着工程を説明する模式図であり、(a)は、超音波溶着の振動ホーンの位置関係を、(b)は、溶着工程が終了したフィルタエレメント20における溶着部23を、示している。
【図9】本発明の第2実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20製造工程中の溶着工程を説明する模式断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20製造工程中の溶着工程を説明する模式断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20製造工程中の溶着工程を説明する模式断面図である。
【図12】図11中のXII矢視図である。
【図13】本発明の第4実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20製造工程中の溶着工程を説明する模式断面図である。
【図14】本発明の第4実施形態による燃料フィルタ10のフィルタエレメント20製造工程中の溶着工程を説明する模式断面図である。
【符号の説明】
【0058】
10 燃料フィルタ(フィルタ装置)
20 フィルタエレメント(濾過体)
21 不織布
21a 不織布外周面
22 不織布
22a 不織布外周面
23 溶着部
30 ケーシング
31 アッパーケース
31a 導入口
31b ガイド部
31c 収容部
32 ロアケース
32a 排出口
32b ガイド部
33 ロアケース
101 回転治具
101a 軸
102 クランプ
103 ベッド
103a 軸受け
104 振動ホーン(超音波溶着装置)
104a 凸部
104b 凹部
105 ホルダ
106 加熱ヘッド(加熱溶着装置、電気抵抗加熱装置)
107 加熱ヘッド(加熱溶着装置、高周波誘導加熱装置)
108 コイル(加熱溶着装置、高周波誘導加熱装置)
X 第1回目溶着部
Y 第2回目溶着部
Z 重複溶着部
C 回転治具回転中心
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の導入口および排出口を備えるケーシングと、
前記ケーシング内において前記導入口と排出口との間に収容される濾過体と、を備え、
前記濾過体は複数の濾材を積層し且つ隣接する濾材同士を溶着させて一体化することにより形成され、
前記濾材は不織布、繊維集合体または連泡構造を有する樹脂等から形成される、フィルタ装置であって、
隣接する前記濾材同士が溶着してなる溶着部は前記濾材の外周面である濾材外周面上に形成されることを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
前記溶着部は連続的に一体化されて濾過体の外周面を形成することを特徴とする請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のフィルタ装置に用いられる濾過体の製造方法であって、
複数の前記濾材を重ねて押圧保持する保持工程と、
隣接する2枚の前記濾材の前記濾材外周面同士を溶着する溶着工程と、を備えることを特徴とする濾過体製造方法。
【請求項4】
前記溶着工程において使用される溶着装置は超音波溶着装置であり、
前記超音波溶着装置は前記濾材外周面に押圧接触して前記濾材を振動させるための部材である振動ホーンを備え、
前記溶着工程において前記振動ホーンは前記濾材の外周側から前記濾材外周面に向かって移動し、前記濾材外周面に接触することを特徴とする請求項3に記載の濾過体製造方法。
【請求項5】
前記振動ホーンの前記濾材の積層方向における断面形状の前記濾材側端部には、前記濾材の積層方向における両端に形成され前記濾材外周面へ向かって突出する凸部および両前記凸部間に形成された前記濾材外周面に対して凹である凹部を備えることを特徴とする請求項4に記載の濾過体製造方法。
【請求項6】
前記溶着工程において使用される溶着装置は前記濾材の溶融温度以上に加熱された加熱ヘッドを前記濾材外周面に接触させて溶着するものであり、
前記溶着工程において前記加熱ヘッドは前記濾材の外周側から前記濾材外周面に向かって移動し、前記濾材外周面に接触することを特徴とする請求項3に記載の濾過体製造方法。
【請求項7】
前記加熱溶着装置は電気抵抗加熱手法により加熱ヘッドを前記溶融温度以上に加熱する電気抵抗加熱装置であることを特徴とする請求項6に記載の濾過体製造方法。
【請求項8】
前記加熱溶着装置は高周波誘導加熱手法により加熱ヘッドを前記溶融温度以上に加熱する高周波誘導加熱装置であることを特徴とする請求項6に記載の濾過体製造方法。
【請求項1】
流体の導入口および排出口を備えるケーシングと、
前記ケーシング内において前記導入口と排出口との間に収容される濾過体と、を備え、
前記濾過体は複数の濾材を積層し且つ隣接する濾材同士を溶着させて一体化することにより形成され、
前記濾材は不織布、繊維集合体または連泡構造を有する樹脂等から形成される、フィルタ装置であって、
隣接する前記濾材同士が溶着してなる溶着部は前記濾材の外周面である濾材外周面上に形成されることを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
前記溶着部は連続的に一体化されて濾過体の外周面を形成することを特徴とする請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のフィルタ装置に用いられる濾過体の製造方法であって、
複数の前記濾材を重ねて押圧保持する保持工程と、
隣接する2枚の前記濾材の前記濾材外周面同士を溶着する溶着工程と、を備えることを特徴とする濾過体製造方法。
【請求項4】
前記溶着工程において使用される溶着装置は超音波溶着装置であり、
前記超音波溶着装置は前記濾材外周面に押圧接触して前記濾材を振動させるための部材である振動ホーンを備え、
前記溶着工程において前記振動ホーンは前記濾材の外周側から前記濾材外周面に向かって移動し、前記濾材外周面に接触することを特徴とする請求項3に記載の濾過体製造方法。
【請求項5】
前記振動ホーンの前記濾材の積層方向における断面形状の前記濾材側端部には、前記濾材の積層方向における両端に形成され前記濾材外周面へ向かって突出する凸部および両前記凸部間に形成された前記濾材外周面に対して凹である凹部を備えることを特徴とする請求項4に記載の濾過体製造方法。
【請求項6】
前記溶着工程において使用される溶着装置は前記濾材の溶融温度以上に加熱された加熱ヘッドを前記濾材外周面に接触させて溶着するものであり、
前記溶着工程において前記加熱ヘッドは前記濾材の外周側から前記濾材外周面に向かって移動し、前記濾材外周面に接触することを特徴とする請求項3に記載の濾過体製造方法。
【請求項7】
前記加熱溶着装置は電気抵抗加熱手法により加熱ヘッドを前記溶融温度以上に加熱する電気抵抗加熱装置であることを特徴とする請求項6に記載の濾過体製造方法。
【請求項8】
前記加熱溶着装置は高周波誘導加熱手法により加熱ヘッドを前記溶融温度以上に加熱する高周波誘導加熱装置であることを特徴とする請求項6に記載の濾過体製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−75881(P2010−75881A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248856(P2008−248856)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000161840)京三電機株式会社 (99)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000161840)京三電機株式会社 (99)
【Fターム(参考)】
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