説明

フィルタ装置ならびにこれを備える撮影レンズおよび撮影装置

【課題】装置の大型化や操作性の低下を招くことなく、フィルタの分光透過特性を被写体の特性に適したものに自動的に切り替え可能とする。
【解決手段】被写体の種類と、対応するフィルタとの関係を規定するフィルタ情報がフィルタ情報記憶部112に記憶される。ユーザによる被写体の種類の設定が被写体情報入力部104で受け付けられる。フィルタ部102は、複数種類のフィルタ分光透過特性の中からいずれかに切り替え可能に構成される。複数種類のフィルタ分光透過特性のうち、少なくとも2種類が電気的に切り替え可能に構成される。フィルタ選択処理部110は、ユーザが設定した被写体の種類に対応するフィルタ分光透過特性を、フィルタ情報に基づいて選択する。フィルタ特性切替部108は、フィルタ部102のフィルタ分光透過特性を、フィルタ選択処理部110で選択されたものとなるように切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類のフィルタの中から被写体の分光特性に適した分光透過特性のものに切り替えることの可能なフィルタ装置、ならびにこのフィルタ装置を備える撮影レンズおよび撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被写体を撮影する際、その被写体を照明する照明光のスペクトル特性が撮影結果に影響を及ぼすことがある。例えば、輝線スペクトル成分を比較的多く含む蛍光灯や水銀灯の照明下で撮影すると、いわゆる緑カブリを生じる。デジタルカメラでは色バランスを補正して緑カブリの影響を減じることも可能であるが、それでも輝線スペクトルの影響を完全に除去することは容易ではない。
【0003】
また、青、緑、赤のオンチップカラーフィルタを有する撮像素子を用いた撮影装置では、赤外カットフィルタが併用されることが多い。理由は、撮像素子が赤外域にも分光感度を有するとともに、オンチップカラーフィルタの中には赤外域で光を通す特性を有することがあるからである。つまり、照明光に赤外光が比較的多く含まれる状況で撮影をしたとき、赤外カットフィルタが装着されていなと、赤外光の影響を受けやすい色の画素から出力される信号の値が相対的に増し、結果として色バランスが崩れることがあるからである。
【0004】
上述した理由から、一般撮影においては赤外カットフィルタが有効に作用する。しかし、天体撮影を行う場合、例えばM42星雲や北アメリカ星雲などの天体を撮影する場合には、赤外カットフィルタによって、これらの星雲から発せられる光が弱められて好ましい撮影結果が得られない場合があることが知られている。理由は、赤外カットフィルタが、上記星雲から放たれる光を透過しにくいカットオフ特性を有しているからである。
【0005】
このような課題を解決するものとして、特許文献1に開示されるものがある。特許文献1には、天体望遠鏡に対して着脱可能な撮影装置で、赤外線カットフィルタを撮影レンズ系の光軸上に進退させるフィルタ駆動手段を有するものが開示される。この撮影装置では、天体に対応付けて赤外線カットフィルタの使用可否を示すフィルタ情報が記憶管理されている。そして、撮影対象として選択された天体に対応するフィルタ情報に応じて赤外線カットフィルタは撮影レンズ系の光軸上に対して進退される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−132964
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に開示される技術においては、赤外線カットフィルタを撮影レンズ系の光軸上に対して機械的に進退させる構成を有する。したがって、赤外線カットフィルタを撮影レンズ系の光軸外に待避させるためのスペースと、赤外線カットフィルタを駆動するための機構を内蔵するためのスペースとが必要となる。これは撮影装置の大型化を免れない。また、赤外線カットフィルタを撮影レンズの光軸上に対して進退させる際に時間を要し、ユーザはフィルタの移動が完了するまで待つ必要を生じる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、フィルタ装置に適用される。そしてこのフィルタ装置が、利用可能な複数種類のフィルタ分光透過特性の中からいずれかのフィルタ分光透過特性に切り替え可能に構成されるフィルタ部であって、前記複数種類のフィルタ分光透過特性のうち、少なくとも2種類のフィルタ分光透過特性が電気的に切り替え可能に構成されるフィルタ部と、
ユーザによる被写体の種類の設定を受付可能に構成される被写体情報入力部と、
被写体の種類と、前記複数種類のフィルタ分光透過特性との関係を規定するフィルタ情報を記憶するフィルタ情報記憶部と、
前記ユーザにより設定された被写体の種類に対応するフィルタ分光透過特性を、前記フィルタ情報に基づいて選択するフィルタ選択処理部と、
前記フィルタ部のフィルタ分光透過特性を、前記フィルタ選択処理部で選択されたフィルタ分光透過特性となるように切り替えるフィルタ特性切替部と
を有することにより上述した課題を解決する。
【0009】
本発明の第2の態様は、撮影装置に適用される。この撮影装置は、複数種類のフィルタ分光透過特性の中からいずれかのフィルタ分光透過特性に切り替え可能に構成されるフィルタ部であって、前記複数種類のフィルタ分光透過特性のうち、少なくとも2種類のフィルタ分光透過特性が電気的に切り替え可能に構成されるフィルタ部と、
被写体の分光特性を導出する被写体分光特性導出部と、
前記被写体分光特性導出部で導出された被写体の分光特性に適したフィルタ特性を決定するフィルタ特性決定部と、
前記フィルタ部で切り替え可能なフィルタ分光透過特性のうち、前記フィルタ特性決定部で決定されたフィルタ特性に最も近いフィルタ分光透過特性を選択するフィルタ選択処理部と、
前記フィルタ部のフィルタ分光透過特性を、前記フィルタ選択処理部で選択されたフィルタ分光透過特性となるように切り替えるフィルタ特性切替部と、
前記フィルタ部の分光透過特性が切り替えられた後、前記フィルタ部を透過した被写体光で形成される被写体像を撮像する撮像部と
を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数種類のフィルタ分光透過特性のうち、少なくとも2種類のフィルタ分光透過特性を電気的に切り替え可能にフィルタ部が構成されることにより、フィルタ装置の大型化を抑制可能となる。また、分光透過特性を電気的に切り替えることにより、機械的に切り替える場合に比して迅速かつ静かに分光透過特性を切り替えることが可能となり、加えて切り替え動作の耐久性を高めることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るフィルタ切替装置の概略的構成を説明する図であり、(a)はその外観を示す斜視図であり、(b)は内部構成例を示すブロック図である。
【図2】波長選択性偏光ローテータを用いて分光透過特性を電気的に切り替え可能な分光透過特性切替部の概略的構成を説明する分解斜視図である。
【図3】図2に示される分光透過特性切替部で切り替えて得られる二つの分光透過特性の例を示す図である。
【図4】分光透過特性を機械的に切り替え可能な分光透過特性切替部の内部構成例を概略的に示す図であり、(a)は直動式に切り替えられる例を、(b)は回動式に切り替えられる例を示す斜視図である。
【図5】被写体の設定操作をユーザが行う際に、表示部に表示されるメニューの階層構造例を説明する図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るフィルタ切替装置が有するスイッチおよび表示部を例示する図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るフィルタ切替装置内のコントローラによって実行されるフィルタ切替制御手順を例示する概略フローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る撮影装置の概略的構成を説明する図であり、(a)はその外観を示す斜視図であり、(b)は内部構成例を示すブロック図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る撮影装置内のコントローラによって実行されるフィルタ切替制御手順を例示する概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
− 第1の実施の形態 −
図1は、本発明がフィルタ切替装置に適用される例を説明する図である。図1(a)には、フィルタ切替装置100が撮影レンズ140の前側(被写体側)に装着される例を斜視図で示す。図1(b)には、フィルタ切替装置100の概略的内部構成をブロック図で示す。
【0013】
図1(a)に示されるフィルタ切替装置100は、撮影レンズ140の先端近傍の内周面に形成されるフィルタねじ部144と螺合して撮影レンズ140に固定可能に構成されたものとすることができる。あるいは、撮影レンズ140の先端部近傍の外周部分に突起等が設けられ、その突起等に対してバヨネット式に係合可能に構成されていてもよい。
【0014】
本実施の形態において、撮影レンズ140はレンズ交換式のデジタル一眼レフレックス形式の撮影装置150に装着されるものとして説明するが、撮影装置150は一眼レフレックス式のものでなくても良く、また、レンズ固定式のものであってもよい。また、撮影レンズ140が撮影装置150に対して着脱自在に構成される場合、フィルタ切替装置100は撮影レンズ140と撮影装置150との間に介装することも可能である。この場合には、撮影レンズ140のバックフォーカスを延長する光学系をフィルタ切替装置100が内蔵していて、フィルタ切替装置100を介装した場合でも無限遠の被写体に焦点を合わせることが可能に構成されることが望ましい。撮影装置150はまた、銀塩フイルムを用いるものであってもよい。さらに、フィルタ切替装置100が撮影装置150内に内蔵されていてもよい。
【0015】
フィルタ切替装置100は、筐体120の内部に設けられたフィルタ部102と、筐体120の外面に設けられた表示部106およびスイッチ104aとを有する。フィルタ切替装置100は、このフィルタ切替装置100の動作用電源としての電池を収容する電池収納部を有していてもよいし、撮影レンズ140を介して撮影装置150から電力の供給を受けることが可能に構成されていてもよい。
【0016】
図1(b)を参照し、フィルタ切替装置100の内部構成について説明する。上述したフィルタ部102、表示部106、スイッチ104a、および筐体120に加えて、フィルタ切替装置100は被写体情報入力部104と、フィルタ特性切替部108と、フィルタ選択処理部110と、フィルタ情報記憶部112と、通信部114とを有する。
【0017】
フィルタ切替装置100は、ユーザがフィルタ部102の分光透過特性を複数種類の中から1つを選択して切り替える操作を受け付け可能に構成される。例えば、フィルタ切替装置100は、赤外線カットフィルタ、蛍光灯光源の照明下での撮影用の色調補正フィルタ(以下、「蛍光灯用フィルタ」と称する)、Hα線すなわち波長656nmの光およびその近辺の波長帯域の光のみを透過する帯域透過フィルタ(以下、「Hαフィルタ」と称する)、OIII(オースリー)線すなわち波長500.7nmの光およびその近辺の波長帯域の光のみを透過する帯域フィルタ(以下「OIIIフィルタ」と称する)等の中からいずれかに切り替え可能に構成されたものとすることができる。
【0018】
フィルタ切替装置100は、被写体の種類をユーザが設定するのを受付可能に構成される。例えば、花火、ネオンサイン、天体、特定の照明光で照射された反射物等、被写体がどのようなものであるかをユーザが設定するのを受付可能に構成される。被写体が反射物である場合、その被写体が水銀灯で照明されたものであるか、蛍光灯で照明されたものであるか、LED灯で照明されたものであるか、タングステン灯で照明されたものであるか、あるいは太陽光等で照明されたものであるか等をユーザが設定するのを受付可能にフィルタ切替装置100は構成される。
【0019】
表示部106は、LED、あるいは液晶表示素子等で構成され、フィルタ切替装置100の動作状態、例えば電源のオン・オフ状態を表示することができる。表示部106はまた、現状で設定されている被写体の種類や、現状で選択されているフィルタの分光透過特性を表示することが可能に構成される。以下では、被写体の種類をユーザが設定するのをフィルタ切替装置100が受け付けてフィルタ部102の分光透過特性を切り替える場合を例に説明する。
【0020】
被写体情報入力部104は、ユーザが表示部106を見ながらスイッチ104aを操作して被写体の種類を設定するのを受け付け、その結果をフィルタ選択処理部110に出力する。フィルタ情報記憶部112には、ユーザによって設定可能な被写体の種類と、フィルタ切替装置100に予め備えられる複数の互いに異なる分光透過特性を有するフィルタとの対応関係を規定する情報であるフィルタ情報が記憶される。
【0021】
図2は、フィルタ部102内に設けられる分光透過特性切替部200の概略的構成を説明する斜視図である。図3は、分光透過特性切替部200で得られる分光透過特性の例(分光透過特性1、分光透過特性2)を示すグラフであり、横軸には波長(nm)を、縦軸には透過率(%)を、それぞれ表す。分光透過特性切替部200は、以下で説明するように分光透過特性を電気的に切り替え可能に構成されている。
【0022】
図2を参照して説明する。分光透過特性切替部200は、被写体光が透過する順番に、偏光板202と、波長選択性を有する偏光ローテータ204と、偏光変調素子206と、偏光板214とを有する。図2においてこれらの要素は撮影レンズ140の光軸Pに沿って離間するように描かれている。しかし、実際にはこれらの要素は互いに近接するように配置されている。本明細書中では、波長選択性を有する偏光ローテータを「波長選択性偏光ローテータ」と称する。
【0023】
偏光板202は、入射する非偏光の光(自然光)を直線偏光光にして出射する、偏光子としての作用を有する。図2において、偏光板202を透過した偏光光は図の上下方向に沿う振動方向を有する。本明細書中ではこれを「縦の振動方向」と称する。また、撮影レンズの光軸Pに直交する面内で上記縦の振動方向に対して直交する向きの振動方向を「横の振動方向」と称する。
【0024】
図2中、両端に矢印を付した線分は光の振動方向を示しており、これらの線分に付された符号VR、IRはそれぞれ可視光(Visible Ray)、赤外光(Infrared ray)を意味する。つまり、図2において偏光板202を透過した可視光VR、赤外光IRは共に縦の振動方向を有する直線偏光光となっている様子が描かれている。
【0025】
波長選択性偏光ローテータ204は、入射する偏光光の振動方向を、特定の波長帯域の光のみ90°回転させる(P/S変換またはS/P変換する)機能を有するものである。図2においては、入射する光のうち、可視域の光VRに対してのみ偏光方向を90°回転させる作用が働き、入射する偏光光VRの振動方向に対して直交する方向に振動方向が変換されて出射される。つまり、偏光子としての偏光板202を透過した、縦の振動方向を有するVR、IRの直線偏光光のうち、可視の直線偏光光VRのみが波長選択性偏光ローテータ204で旋光されて横の振動方向を有する直線偏光光に変換される。
【0026】
偏光変調素子206は、互いに対向しあう面上に透明電極が形成された2枚の透明基板208、210の間に液晶が封入されて構成される素子である。この偏光変調素子206にフレキシブルプリント基板212を介してフィルタ特性切替部108によりドライブ電圧が印加されるのに伴い、この偏光変調素子206を透過する光に対する旋光作用を切り替えることが可能に構成される。図2に示す例ではVR、IRの直線偏光光の振動方向が90°変えられている。その結果、偏光変調素子206を透過した光は、赤外の直線偏光光IRが横の振動方向を有し、可視の直線偏光光VRが縦の振動方向を有するように旋光される。
【0027】
なお、偏光変調素子206に印加するドライブ電圧を切り替えることにより、この偏光変調素子206を透過する光に対する旋光作用は無くすことも可能である。この場合、偏光変調素子206を透過した直線偏光光は、破線で示される振動方向を有する。つまり、赤外の直線偏光光IRが縦の振動方向を有し、可視の直線偏光光VRが横の振動方向を有する。
【0028】
偏光板214は、図2においては横の振動方向を有する光のみ透過可能とする、検光子としての作用を有する。図2においては、横方向の振動方向を有する赤外の直線偏光光IRのみが偏光板214を透過するものとして示されている。以上に説明した構成により、分光透過特性切替部200を透過した白色光のうち、赤外光IRのみが透過する、図3中で分光透過特性2として示されるような特性に切り替えられる。
【0029】
一方、上記のように偏光変調素子206に印加するドライブ電圧が切り替えられると、破線で示される横方向の振動方向を有する可視の直線偏光光VRのみが偏光板214を透過する。その結果、分光透過特性切替部200に入射した白色光のうち、可視光VRのみが透過する、図3中で分光透過特性1として示されるような特性に切り替えられる。
【0030】
なお、上述したいずれの場合においても、分光透過特性切替部200を出射する光は直線偏光光となっている。撮影装置150が一眼レフタイプのAFカメラの場合、ファインダ光学系に導かれる被写体光の一部を焦点検出光学系に導くためのハーフミラー等を有する。その場合、分光透過特性切替部200を透過する光が直線偏光光であると、十分な光量の光が焦点検出光学系に導かれない可能性がある。そのようなことが懸念される場合には、分光透過特性切替部200の出射側に、四分の一波長板等の位相板を配設することが望ましい。
【0031】
図3に例示されるような分光透過特性1は、可視光を透過する一方、赤外波長領域の光をカットする特性となっているので、一般的な被写体を撮影する際の用途に向く。一方、分光透過特性2は、可視光の殆どをカットする一方、赤外光を透過するので、天体、例えば波長656.3nmのHα線を多く放射するペリカン星雲、カリフォルニア星雲、馬頭星雲等の撮影を行うのに適している。このとき、分光透過特性2は可視光の殆どをカットする特性を有していることにより、天体撮影に際して妨げとなる光害の影響を減じることが可能となる。
【0032】
分光透過特性切替部200で得られる分光透過特性は、図3に例示されるものに限られない。例えば図3に示されるものよりも短い波長領域で透過率を変化させる(切り替える)ことも可能であるし、バンドパスフィルタのような特性を与えて、ある特定の波長帯域内の光および帯域外の光に対する透過率を変化させることも可能である。また、図2を参照して説明した波長選択性偏光ローテータ204とは異なる特性を有する波長選択性偏光ローテータを偏光変調素子206と偏光板214との間に追加配置する等の変更を加えることにより、分光透過特性切替部200で得られる分光透過特性をさらに別のものに変えることも可能である。
【0033】
フィルタ部102としては、上述したような、分光透過特性を電気的に切り替え可能な分光透過特性切替部200に加えて分光透過特性を機械的に切り替え可能な構成も有することが可能である。分光透過特性を電気的に切り替え可能な構成と機械的に切り替え可能な構成とを共に有することにより、フィルタ切替装置100の大きさが増すことを最小限に抑制しつつ、切り替え可能な分光透過特性の種類を増すことが可能となる。
【0034】
図4は、フィルタの分光透過特性を機械的に切り替えることを可能とする例を示す図である。図4(a)において、分光透過特性切替部402は三つのフィルタ402A、402B、402Cと、これらのフィルタ402A、402B、402Cを保持する保持枠402Dとを有する。保持枠402Dは、撮影レンズ140の光軸Pに対してほぼ直角に交わる平面上を移動可能に構成され、いずれかのフィルタが撮影レンズ140の光軸P上に位置するようにして分光透過特性が切り替えられる。保持枠402Dの移動には、モータによって回転駆動されるピニオンギヤとラックギヤとの組み合わせや、電磁駆動式のアクチュエータ、あるいは超音波モータ等を利用可能である。
【0035】
図4(b)において、分光透過特性切替部404は、二つのフィルタ404Aおよび404Bと、これらのフィルタ404A、404Bを保持するアーム406A、406Bとを有する。アーム406A、406Bは、撮影レンズ140の光軸Pに対してほぼ平行な方向に延在する回動軸A1、A2を中心として回動可能に構成される。アーム406A、406Bの回動に伴い、フィルタ404A、404Bは、光軸Pにほぼ直交する平面上を移動する。これらのアーム406A、406Bを回動駆動することにより、撮影レンズ140の光軸P上にフィルタ404Aまたは404Bが位置するようにして分光透過特性が切り替えられる。アーム406A、406Bの駆動には、モータ、電磁駆動式のアクチュエータ、超音波モータ等を利用可能である。なお、分光透過特性切替部404では、被写体の種類に対応して、フィルタ404A、404Bの双方が同時に撮影レンズ140の光軸P上に位置するようにすることも、光軸Pから待避することも可能となる点で有利である。
【0036】
以上に説明した構成によって切り替え可能なフィルタで設定することのできる分光透過特性の例について説明する。先ず、蛍光灯用フィルタについて説明する。蛍光灯から放射される光は水銀由来の輝線スペクトル成分および蛍光によるスペクトル成分を比較的多く含む。このような照明光のもとで撮影をすると、いわゆる緑かぶりを生じる。つまり、被写体が反射物であって、照明光が蛍光灯である場合には、この緑かぶりが減じられるように分光透過特性を定めることが望ましい。具体的には、およそ450nmから600nmにかけての波長帯域で分光透過率が相対的に減じられるような特性のものとすると、緑かぶりが減じられる。照明光が水銀灯である場合も、蛍光灯用フィルタを用いることにより色バランスを或る程度改善することが可能となる。しかし、照明光が蛍光灯である場合、水銀灯である場合、それぞれに対応して分光透過特性を切り替えることがより良い色再現性を得る上で望ましい。また、蛍光灯の中には昼白色、電球色、高演色タイプ等、様々な種類のものがあるので、厳密にはこれらの種類に対応して分光透過特性を切り替えることが望ましい。
【0037】
被写体が反射物であって、照明光がLED灯から放射されるものである場合の撮影に適したフィルタ(LED照明用フィルタ)について説明する。比較的狭い波長帯域の光を発するLEDで白色の光を得るために、青色の光を発するLEDの外側を蛍光体で覆ったものが知られている。つまり、LEDから発せられる青色の光と、青色の光を受けて蛍光体から発せられる赤から緑にかけての波長帯域の光とが合成されて視覚上白く見える。このような白色LED照明光の分光スペクトルを見ると、450nmから500nmにかけての波長帯域に比較的尖った山型形状の青色のスペクトル波形を有する。このスペクトル成分の影響により、被写体が反射物であって照明光がLED照明である場合には、得られる画像に青みを帯びることがある。従って、およそ450nmから500nmにかけての波長帯域で分光透過率が減じられるようなフィルタの特性とすることにより、青みを抑制することが可能となる。
【0038】
Hαフィルタについて説明する。天体撮影においては、地上に存在する人工光の影響で色カブリを生じたり、画像中の暗部が黒く締まらずにコントラストが低下して見えたりする場合がある。ペリカン星雲、カリフォルニア星雲、馬頭星雲等、Hα線の光を放つ天体を撮影する場合、Hα線の波長である656.3nmを含む狭帯域の光のみを透過する特性のフィルタを用いることにより、人工光の影響を減じて好ましい画像を得ることが可能となる。Hαフィルタは、このような狭帯域の分光透過特性を有するフィルタである。つまり、Hαフィルタを用いることにより、光害の影響が減じられて、コントラストのより高められた画像を得ることが可能となる。
【0039】
OIIIフィルタについて説明する。OIII線、すなわち500.7nmの波長を有する光を放つ天体としては、オメガ星雲、干潟星雲、三裂星雲、網状星雲などがある。このような天体を撮影する場合には、OIII線の波長である500.7nmを含む狭帯域の光のみを透過する特性のフィルタ、すなわちOIIIフィルタを用いるとより好ましい撮影結果を得ることが可能となる。
【0040】
光害カットフィルタについて説明する。天体撮影に際して、上記のHαフィルタやOIIIフィルタを用いた場合、狭帯域の波長の光しか透過しないので、フルカラーの色彩は得られない。そこで、全体としては可視光のほぼ全域にわたる帯域の光を透過しつつ、櫛歯状の特性を与え、地上に存在する人工光の中で光害の源となる主要成分の光の波長帯域のみ透過率を減じるフィルタが光害カットフィルタとして知られている。
【0041】
例えば、日本のアイキャスエンタープライズ社からIDAS LPS−P2の商品名で提供される光害カットフィルタがある。この光害カットフィルタを用いることにより、全体としては可視光のほぼ全域にわたる帯域の光を透過しつつ、光害の主たる原因である水銀灯やナトリウム灯から放射される輝線スペクトルが減じられる。その結果、光害の比較的顕著な場所で撮影をしても、コントラストのより高められたカラー画像を得ることが可能となる。例えば焦点距離の比較的短い撮影レンズ140を用いて様々な色の恒星(星座)、星雲等を含む星野写真の撮影をする場合に光害カットフィルタを用いると好ましい結果を得ることが可能となる。
【0042】
再び図1(b)を参照して説明する。フィルタ部102は、以上に説明した様々な分光透過特性を有するフィルタのうちの一部または全部を有して構成される。これらのフィルタ特性のうち、赤外カットフィルタやHαフィルタ、OIIIフィルタ等については分光透過特性切替部200、402、404のいずれかによってこれらのフィルタの分光透過特性を電気的または機械的に切り替え可能に構成することが可能である。LED照明用フィルタ、蛍光灯用フィルタ、光害カットフィルタ等については、分光透過特性切替部402、404によってフィルタの分光透過特性を機械的に切り替え可能に構成することが可能である。
【0043】
ユーザは、撮影操作に先立って表示部106の表示内容を確認しながらスイッチ104aを操作して被写体の設定を行う。フィルタ選択処理部110は、被写体情報入力部104を介してユーザにより設定された被写体の種類をもとに、以下で説明する処理を行う。すなわち、フィルタ選択処理部110は、現状で設定されている被写体の種類を表示部106に表示し、フィルタ情報記憶部112にアクセスして、現状で設定されている被写体の種類に適したフィルタの分光透過特性あるいはフィルタの種類を決定する。フィルタ選択処理部110は、決定されたフィルタの分光透過特性あるいは種類に基づき、フィルタ特性切替部108に制御信号を発する。フィルタ特性切替部108は、フィルタ選択処理部110から出力された制御信号をもとにフィルタ部102の分光透過特性を切り替える。
【0044】
図5は、被写体の設定操作をユーザが行う際に表示部106に表示されるメニューの階層構造例を説明する図である。図5に示される例では、ユーザは先ず被写体が「反射物」、「自発光物」、「天体」等のうち、いずれのグループに属するものであるかを選択する。その様子が図6に示されている。図6は、フィルタ切替装置100中のスイッチ104aおよび表示部106の部分を示す。ユーザは選択スイッチ104a−1または104a−2を操作して「反射物」、「自発光物」、「天体」、「戻る」のうち、所望のものの上にカーソルCの表示位置を移動させる。図6では「反射物」の上にカーソルCが表示されている様子が描かれている。その後ユーザが決定スイッチ104a−3を操作することにより、表示部106にはより下位の選択肢が表示される。現状で表示されている選択肢の階層よりも上位の階層に戻るには、「戻る」を選択すればよい。
【0045】
「反射物」が選択された場合、ユーザは「水銀灯照明下の反射物」、「蛍光灯照明下の反射物」、「LED灯照明下の反射物」、「タングステン灯照明下の反射物」、「太陽光照明下の反射物」等のうち、いずれかを被写体として設定することができる。フィルタ情報記憶部112には、「水銀灯照明下の反射物」、「蛍光灯照明下の反射物」に対応するフィルタとして蛍光灯用フィルタが記憶される。同様に「LED灯照明下の反射物」に対してはLED照明用フィルタが、「タングステン灯照明下の反射物」および「太陽光照明下の反射物」に対しては赤外カットフィルタが記憶される。
【0046】
「自発光物」が選択された場合、ユーザは「花火」、「ネオンサイン」等のうち、いずれかを被写体として設定することができる。フィルタ情報記憶部112には、これらの選択肢に対応するフィルタとして赤外カットフィルタが記憶される。
【0047】
「天体」が選択された場合、ユーザは「ペリカン星雲」、「カリフォルニア星雲」、「馬頭星雲」、「オメガ星雲」、「網状星雲」「干潟星雲」、「三裂星雲」、「オリオン大星雲(M42)」、「北アメリカ星雲」、「星野」等のうち、いずれかを被写体として設定することが可能である。
【0048】
フィルタ情報記憶部112には、「ペリカン星雲」、「カリフォルニア星雲」、「馬頭星雲」に対応するフィルタとしてHαフィルタが記憶される。また、「オメガ星雲」、「網状星雲」「干潟星雲」、「三裂星雲」に対応するフィルタとしてOIIIフィルタが記憶される。また、「オリオン大星雲(M42)」、「北アメリカ星雲」に対応するフィルタとして赤外カットフィルタ・オフ(赤外カットフィルタ不使用)が記憶される。そして「星野」に対応するフィルタとして光害カットフィルタが記憶される。
【0049】
ところで、フィルタ切替装置100は、必要に応じて通信部114を備えることができる。この通信部114は、撮影レンズ140に設けられた接点部142を介して撮影装置150との通信が可能に構成される。例えば、撮影装置150がデジタルカメラの場合、フィルタ切替装置100で設定された被写体の種類や、この被写体の種類に対応して選択されたフィルタの分光透過特性に関する情報を撮影装置150に送信することにより、撮影装置150は当該の情報を画像データ中に埋め込まれるタグ情報中に付加することが可能となる。ホワイトバランスの設定に関してもフィルタ切替装置100で設定された被写体の種類やフィルタの分光透過特性に基づいて変えることも可能である。
【0050】
あるいは、上述した情報に基づき、撮影装置150の測光モードや撮影モードを自動的に切り替えるように構成することも可能である。例えば、被写体が天体である場合には、測光処理に際して背景の暗黒部分は参酌せず、画面内で光の存在する部分で露光量を決定してもよい。また、被写体としてペリカン星雲あるいはオメガ星雲などの天体が設定された場合、HαフィルタやOIIIフィルタが選択される。そのような場合であって、なおかつ撮影装置150がデジタルカメラである場合、撮影装置150のカラーモードが自動的に切り替えられて、モノクロ撮影モードとなるように構成することが可能である。また被写体として何らかの天体が設定された場合、長時間撮影時のノイズリダクション処理を自動的に有効にする等、天体撮影に適した動作モードに切り替えられるように構成することができる。
【0051】
さらに、撮影レンズ140が可変焦点距離レンズでパワーズーム機構を有するものである場合には、撮影装置150はフィルタ切替装置100から出力される信号に基づいて撮影レンズ140を駆動し、天体撮影に適した焦点距離に設定することもできる。なお、撮影レンズ140の焦点距離が手動により変更可能なものである場合、撮影装置150は、設定すべき焦点距離等を撮影装置150の上面や背面に備えられる表示部に表示してユーザによる変倍操作を促すことも可能である。
【0052】
さらには、フィルタ切替装置100を操作して被写体の設定をするのに代えて、撮影装置150の側で被写体の設定をすることもできる。その場合、フィルタ選択処理部110は通信部114を介して被写体の設定情報を撮影装置150から受信し、この情報をもとにフィルタの分光透過特性を切り替えることが可能である。
【0053】
図7は、フィルタ切替装置100内のコントローラによって実行されるフィルタ切替制御手順の一例を示す概略フローチャートである。コントローラは、CPU、ROM、RAM等によって構成されて、ROM内に格納されたプログラムを逐次読み出してCPUが図7の処理を実行するものとすることが可能である。あるいは、コントローラが専用のハードウェアロジックにより構成されるものであってもよい。
【0054】
図7に示される処理は、フィルタ切替装置100の電源が投入されたときに実行が開始される。S700においてコントローラは、先に図6(b)を参照して説明したように表示部106にメニューを表示しつつ、ユーザがスイッチ104aを操作して被写体の種類の設定をするのを受け付け、入力する処理を行う。上記S700の処理が図1(b)における被写体情報入力部104で行われる処理に対応する。
【0055】
S702においてコントローラは、フィルタ情報記憶部112にアクセスし、S700で入力された被写体の種類に適したフィルタを選択する処理を行う。上記S702の処理は、フィルタ選択処理部110がフィルタ情報記憶部112にアクセスしてユーザが設定した被写体の種類に対応したフィルタを選択する処理に対応する。
【0056】
S704においてコントローラは、S702で選択されたフィルタに切り替えるように、フィルタ特性切替部108に制御信号を発する。フィルタ特性切替部108は、コントローラから発せられる制御信号に基づき、フィルタ部102を制御してフィルタの分光透過特性を電気的または機械的に切り替えて一連の処理を完了する。上記S704の処理は、フィルタ選択処理部110が、S702で選択されたフィルタに切り替えるようにフィルタ特性切替部108に制御信号を発する処理に対応する。
【0057】
S706は、必要に応じて追加される処理手順である。S706の処理手順が追加される場合、コントローラはS704でのフィルタ切替の処理に続いて、通信部114を介して被写体情報またはフィルタ情報を撮影装置150に出力し、一連の処理を完了する。先にも説明したように、撮影装置150はフィルタ切替装置100から受信した被写体情報またはフィルタ情報に基づき、撮影装置150の測光モードや露光モード、様々な動作モードを変更することが可能となる。また、撮影装置150がデジタルカメラである場合には、これらの情報を画像データに付加されるタグ情報中に埋め込むことが可能となるのに加え、カラーモードを自動的に変更することも可能となる。
【0058】
以上に説明したように、本発明の第1の実施の形態によれば、ユーザが被写体の種類を設定するだけで、フィルタの分光透過特性は設定された被写体の種類に適したものに切り替えられる。このとき、フィルタの分光透過特性を電気的に切り替えることが可能な構成を有するので、フィルタ切替装置100の大型化を抑制することが可能となり、可搬性、操作性を向上することが可能となる。また、フィルタの分光透過特性を電気的に切り替えることが可能な構成を有することのさらなる利点として、分光透過特性を切り替える際の切り替え速度を高速化することが可能となる。
【0059】
さらに、フィルタの分光透過特性を電気的に切り替える際に、偏光変調素子206に印加する電圧のドライブ波形を徐々に変化させることも可能である。そのようにすることにより、フィルタの分光透過特性を徐々に変化させることが可能となる。撮影装置150で動画を撮影するような場合、撮影途中で被写体の種類の設定が変えられたときにフィルタの分光透過特性を上記のように徐々に切り替えることにより、動画を再生表示して観視する場合に違和感を減じることが可能となる。この点、フィルタの分光透過特性を機械式に切り替える方式ではフィルタの分光透過特性を切り替える過程で画像の乱れを生じることになる。
【0060】
また、本発明の実施の形態においてフィルタ切替装置100が通信部を有していて、被写体情報やフィルタ情報をフィルタ切替装置100から撮影装置150に出力可能に構成される場合、以下のような利点を得ることができる。すなわち、撮影装置150は、フィルタ切替装置100から受信した被写体情報やフィルタ情報を用いて様々な動作を行うことが可能となる。例えば測光モードや露光モード、あるいはカラーモードを自動的に変えることが可能となり、ユーザが特別な知識を有することなく、被写体に適した設定で撮影を行うことが可能となる。また、画像データ内に埋め込まれるタグ情報中にフィルタ情報を付加することにより、後で画像を見たユーザは、どのような設定で撮影が行われたのかを知ることができる。
【0061】
以上では、本発明を撮影レンズに装着可能なフィルタ切替装置に適用する例について説明したが、撮影レンズ内に組み込まれるものであっても、撮影装置内に組み込まれるものであってもよい。
【0062】
− 第2の実施の形態 −
図8は、本発明がデジタル式の撮影装置に適用される例を説明する図である。図8(a)には、被写体Sに向けられる撮影装置800の概略が斜視図で示される。図8(b)には、撮影装置800の概略的内部構成がブロック図で示される。
【0063】
図8(a)に示される撮影装置800は、撮影レンズ804が交換可能なものであってもよいし、固定式のものであってもよい。撮影装置800はスチルカメラであってもムービーカメラであってもよい。フィルタ切替装置802は、撮影レンズ804と一体的に構成されるものであってもよいし、撮影レンズ804に対して着脱自在に構成されるものであってもよい。フィルタ切替装置802はまた、撮影レンズ804と撮影装置800との間に介装されるものであってもよい。あるいは、撮影装置800内にフィルタ切替装置802が内蔵されるものであってもよい。
【0064】
第2の実施の形態においては、撮影装置800は撮影レンズ804が固定されたデジタルスチルカメラで、フィルタ切替装置802は撮影レンズ804の先端部に取り付けられるものとして説明する。つまり、撮影装置800は、フィルタ切替装置802と、撮影レンズ804とを有する。撮影装置800の背面、すなわち撮影装置800を被写体に向けて構えるユーザと正対する側の面に、表示部808とスイッチ816aとが備えられる。
【0065】
図8(b)を参照し、撮影装置800の内部構成について説明する。上述したフィルタ切替装置802、撮影レンズ804、スイッチ816a、表示部808に加えて、撮影装置800は撮像部806と、画像処理部812と、被写体分光特性導出部814と、被写体選択部816と、フィルタ特性決定部818と、フィルタ選択処理部820と、フィルタ特性切替部822と、フィルタ部824と、被写体分光特性表示処理部826と、フィルタ情報記憶部828とを有する。なお、図8(b)において破線で囲われたスペクトル推定情報生成部850については後で説明する。
【0066】
フィルタ切替装置802は第1の実施の形態で図1を参照して説明したフィルタ切替装置100と同様の構成を有しているのでその詳細な説明は省略する。第1の実施の形態においては、フィルタ切替装置100が表示部106やスイッチ104aを有していたが、第2の実施の形態においてフィルタ切替装置802はそれらを有しておらず、代わりに撮影装置800に備えられるスイッチ816aや表示部808が用いられる。フィルタ切替装置802はまた、撮影レンズ804を介して撮影装置800から電力の供給を受けることが可能に構成される。
【0067】
フィルタ特性切替部822、フィルタ部824はそれぞれ、第1の実施の形態で図1を参照して説明したフィルタ特性切替部108、フィルタ部102と同様の構成を有しているのでその詳細な説明は省略する。フィルタ部824内において分光透過特性を切り替え可能とする構成は、第1の実施の形態で図2から図4を参照して説明したものと同様である。つまり、フィルタ切替装置802は、フィルタの分光透過特性を電気的に切り替え可能に構成され、必要に応じて機械的に切り替え可能な構成も有していてもよい。
【0068】
撮影レンズ804は、その焦点距離を撮影目的に応じて変化させることの可能な可変焦点距離レンズであるものとする。撮影装置800は、撮影レンズ804の焦点距離を変化させるための変倍駆動機構を内蔵し、モータ等のアクチュエータで変倍動作可能に構成されるものとする。
【0069】
表示部808は、液晶表示素子や有機EL表示素子が用いられて撮影装置800で撮影して得られた画像や各種の情報等を表示可能に構成される。この表示部808は、スイッチ816aとともにユーザインターフェースとしても用いられる。
【0070】
撮像部806は、CCDやCMOSの撮像素子と、撮像素子から出力される画像信号に相関二重サンプリング、増幅、A/D変換処理等をするアナログ・フロントエンドとを含む。画像処理部812は、撮像部806から出力されるデジタル画像信号にデモザイク、トーン補正、シェーディング補正等の処理をしてデジタル画像データを生成する。
【0071】
被写体分光特性導出部814は、画像処理部812で生成された画像データを解析して被写体の分光特性を導出する。本明細書中において被写体の分光特性とは以下に説明するように被写体の分光放射輝度特性を意味している。すなわち、被写体が自ら発光することなく、照明光によって照明される反射物である場合、被写体を照らす照明光の分光照度と、被写体の分光反射率とによって定まる特性を意味している。被写体が花火やネオンサインのように自発光物である場合、あるいは天体である場合、被写体から放射される光の分光放射輝度特性を意味している。なお、天体によっては自ら光を発するもの、あるいは周辺に存在する恒星からの光を反射するもの等、様々であるが、自発光物と同様に被写体が光を発しているものとみなしても本発明に影響を及ぼさない。
【0072】
被写体が反射物である場合について説明する。例えば、被写体が白色、つまり波長によらず均一な分光反射率を有するものである場合、被写体の分光特性は照明光の分光照度に略準じたものとなる。逆に、被写体の分光反射特性が例えば赤い波長帯域で相対的に高い反射率を有し、照明光が白色である場合には、被写体の分光特性は赤みを帯びたものとなる。また、照明光が蛍光灯、水銀灯から放射されるような、輝線スペクトルを有するものである場合、あるいは白色のLED灯から放射されるような、青の波長帯域で特徴的な分光スペクトルプロファイルを有する場合、多かれ少なかれ被写体の分光反射率の影響を受けることはあっても、被写体分光特性はそれらの照明光の影響を反映したものとなる。
【0073】
被写体選択部816は、被写体分光特性導出部814が被写体中のどの部分で被写体分光特性を導出するかをユーザが選択するのを受け付ける処理を行う。すなわち、撮影装置800は、プレビュー画像Im(予備撮影で得られた画像)を表示部808に表示して、被写体分光特性導出部814が被写体中のどの部分で被写体分光特性を導出するかをユーザがスイッチ816aを操作して指定可能に構成される。図8(b)においては、プレビュー画像Imが表示部808に表示されていて、ユーザがスイッチ816aを操作するのに応じてプレビュー画像Im上で黒い丸が移動する様子が描かれている。この黒い丸の位置する部分が被写体分光特性を導出する部分に対応する。なお、主要被写体が画面中のどこにあるかを撮影装置800が自動的に判定し、その判定結果に基づいて被写体選択部816で被写体が自動的に選択されるように構成されていてもよい。
【0074】
被写体分光特性表示処理部826は、予備撮影動作によって得られた画像中でユーザにより選択された部分に対応する被写体の分光特性を被写体分光特性導出部814が導出した結果を表示部808に表示する処理を行う。図8(b)には、ユーザが街灯を指定した場合や、ビル内の蛍光灯照明を指定した場合には輝線スペクトル含む分光プロファイルが表示される様子が描かれている。また、波長変化に対する分光プロファイルの変化が比較的緩やかな(スペクトルが連続で、かつ輝線や吸収線を含まないような分光プロファイルの)照明光で照明されている人物や自動車の車体を指定した場合に、比較的なだらかな分光プロファイルが表示される例が描かれている。
【0075】
なお、撮像部806から得られる画像信号を画像処理部812が処理して得られる画像信号をもとに被写体分光特性導出部814が図8(b)に示されるような被写体の分光特性を求めるには、以下に説明するいくつかの方法を利用可能である。
【0076】
撮像部806の有する撮像素子が、B(青)、G(緑)、R(赤)のオンチップカラーフィルタを有するものである場合、上記三色のオンチップカラーフィルタを有する各画素から出力されるB、G、R三つの信号しか得られないので、そのままでは被写体の詳細な分光特性を得ることはできない。しかし、B、G、R各色の画素値の組み合わせから、照明光は蛍光灯や水銀灯である可能性が高いか、自然光である可能性が高いか、タングステン灯である可能性が高いか等の予測をすることができる。その予測結果をもとに、対応する分光スペクトルのプロファイルを表示することができる。
【0077】
あるいは、撮影装置800はスペクトル推定情報生成部850をさらに有していてもよい。ここで、撮影装置800がB、G、R三色のオンチップカラーフィルタの設けられた撮像素子を有していて、スペクトル推定情報生成部850を有する例について説明する。スペクトル推定情報生成部850は、カメラ特性情報記憶部852と、スペクトル推定マトリクス選択部(図8(b)においてはスペクトル推定MTX選択部と表記される)854と、被写体情報入力部856とを有する。
【0078】
カメラ特性情報記憶部852には、撮影レンズ804の分光透過率等に関する情報、撮像素子の分光感度やトーン特性(γ特性)、シェーディング特性等に関する情報等、撮影装置800の色再現性に関連する情報が記憶される。
【0079】
被写体情報入力部856は、被写体の種類をユーザが入力するのを受け付ける処理をする。被写体の種類をユーザが入力するのを受け付ける処理としては、図5、図6を参照して説明したのと同様のものとすることが可能である。すなわち、表示部808に図5に示されるような階層構造の選択肢を逐次表示しながらスイッチ816aをユーザが操作するのを受け付ける処理をすることが可能である。
【0080】
撮影装置800内には、ユーザにより設定可能な被写体の種類に対応するスペクトル推定マトリクスが予め記憶される。スペクトル推定マトリクス選択部854は、被写体情報入力部856で入力された被写体の種類に対応するスペクトル推定マトリクスを選択する。このスペクトル推定マトリクスは、一例として、画像処理部812から出力される画像データ中のB、G、Rの画素値の組み合わせ、すなわち3次元の情報から401次元の情報、つまり可視光帯域の380nmから780nmまでに対応して、1nm刻みでスペクトル値を導出するものとすることができる。無論、401次元の情報を必ずしも導出する必要はなく、撮影装置800の仕様等に応じて次元数を増減することができる。
【0081】
被写体分光特性導出部814は、スペクトル推定情報生成部850から出力されるカメラ特性情報とスペクトル推定マトリクスとを用い、画像処理部812から得られたB、G、Rの画像データから被写体の分光特性を導出することができる。
【0082】
撮影装置800がスペクトル推定情報生成部850を有する場合において、撮像部806の有する撮像素子は3バンドよりも多いnバンドで色分解可能に構成されていてもよい。その場合、スペクトル推定マトリクス選択部854で選択されるマトリクスはn次元の情報から401次元、あるいはその他の次元数の情報を導出可能なものとすることが可能である。
【0083】
また、撮影装置800がスペクトル推定情報生成部850を有していない場合でも、撮像部806が有する撮像素子が3バンドよりも多いmバンドで色分解可能に構成される場合、特に16バンド等の、比較的多いバンド数で色分解可能に構成される場合、被写体分光特性をより高い精度で導出することが可能となる。
【0084】
フィルタ情報記憶部828には、フィルタ切替装置802で切り替え可能な複数種類の分光透過特性に関する情報が記憶される。フィルタ特性決定部818は、被写体分光特性導出部814で導出された被写体の分光特性に基づき、この分光特性に対応して適用すべきフィルタ特性を決定する。フィルタ選択処理部820は、フィルタ情報記憶部828にアクセスする。そして、フィルタ切替装置802で切り替え可能な複数種類の分光透過特性のうち、フィルタ特性決定部818で決定されたフィルタ特性に最も近いものを選択する処理を行う。
【0085】
フィルタ特性切替部822は、フィルタ部824の分光透過特性を、フィルタ選択処理部820で選択されたものに切り替える。
【0086】
図9は、撮影装置800内のコントローラによって実行されるフィルタ切替制御手順の一例を示す概略フローチャートである。コントローラは、CPU、ROM、RAM等によって構成されて、ROM内に格納されたプログラムを逐次読み出してCPUが図9の処理を実行するものとすることが可能である。あるいは、コントローラが専用のハードウェアロジックにより構成されるものであってもよい。
【0087】
図9のフローチャートにおいて、S900、S902の処理に続いてS910、S912、S914、…と続く処理が図8(b)に示されるスペクトル推定情報生成部850を撮影装置800が有していない場合の処理である。また、S900、S902、S904、S906、S908、S910、S912、…と続く処理がスペクトル推定情報生成部850を撮影装置800が有している場合の処理である。以下では、最初に撮影装置800がスペクトル推定情報生成部850を有していない場合の処理手順について説明する。次に、撮影装置800がスペクトル推定情報生成部850を有している場合の処理手順について説明する。
【0088】
図9に示される処理は、撮影装置800がフィルタ自動切り替え撮影モードに切り替えられたときに実行が開始される。S900においてコントローラは、予備撮影を行い、この予備撮影によって得られた画像の表示を行う処理をする。この処理において、コントローラは撮像部806からライブビュー用に読み出された画像信号を用いてもよいし、ユーザがレリーズ操作をしたときに本撮影に先立って行うようにしてもよい。
【0089】
S902においてコントローラは、ユーザが表示部808に表示される画像を見ながらスイッチ816aを操作し、被写体を選択する操作を受け付ける処理を行う。S902の処理が図8(b)における被写体選択部816で行われる処理に対応する。
【0090】
S902の処理に続くS910においてコントローラは、ユーザが選択した被写体の部分の画像データをもとに被写体分光特性を導出する。S910の処理が図8(b)における被写体分光特性導出部814で行われる処理に対応する。
【0091】
S910で導出された被写体分光特性に基づき、コントローラはS912で表示部808に被写体の分光特性を表示する処理を行う。S912の処理が図8(b)における被写体分光特性表示処理部826で行われる処理に対応する。
【0092】
S914においてコントローラは、S910で導出された被写体分光特性に対応したフィルタ分光透過特性を導出する処理を行う。例えば、被写体分光特性の導出結果が、輝線スペクトルの影響を受けていると推定される場合、コントローラはその輝線スペクトルの影響が減じられるようにフィルタ分光透過特性を導出する。また、被写体分光特性の導出結果が、OIII線を多く含むと推定される場合、コントローラはOIII線以外の波長成分の光が減じられるようにフィルタ分光透過特性を導出する。S914の処理が図8(b)におけるフィルタ特性決定部818で行われる処理に対応する。
【0093】
S916においてコントローラは、フィルタ切替装置802で切り替え可能な複数種類の分光透過特性に関する情報が記憶されるフィルタ情報記憶部828にアクセスし、それらの分光透過特性中、S914で導出されたフィルタ分光透過特性に最も近いものを選択する処理を行う。S916の処理が図8(b)におけるフィルタ選択処理部820で行われる処理に対応する。
【0094】
S918においてコントローラは、S916で選択されたフィルタに切り替えるように、フィルタ特性切替部822に制御信号を発する。フィルタ特性切替部822は、コントローラから発せられる制御信号に基づき、フィルタ部824を制御してフィルタの分光透過特性を電気的または機械的に切り替える。S920においてコントローラは、本撮影の処理を行い、上述した一連の動作を完了する。
【0095】
引き続き図9を参照し、撮影装置800がスペクトル推定情報生成部850を有する場合にコントローラによって行われる処理について説明する。この場合、図9のフローチャートにおいて、S902の処理とS910の処理との間にS904、S906、S908の処理が挿入される。それ以外は撮影装置800がスペクトル推定情報生成部850を有していない場合の処理と同じであるので、これらS904、S906、S908での処理を中心に説明をする。
【0096】
ユーザによる被写体選択の操作を受け付けるS902の処理に続くS904においてコントローラは、ユーザによる被写体情報入力操作を受け付ける処理を行う。つまり、図5、図6を参照して説明したのと同様にして、表示部808に図5に示されるような階層構造の選択肢を逐次表示しながらスイッチ816aをユーザが操作するのを受け付ける処理をする。S904の処理が、図8(b)における被写体情報入力部856で行われる処理に対応する。
【0097】
S906においてコントローラは、撮影装置800内に予め記憶される複数のスペクトル推定マトリクスの中から、S904で入力された被写体情報に対応するスペクトル推定マトリクスを選択する処理を行う。S906の処理が、図8(b)におけるスペクトル推定マトリクス選択部854の処理に対応する。
【0098】
S908においてコントローラは、カメラ特性情報記憶部852からカメラ特性情報を読み出す。このカメラ特性情報と、S906で選択されたスペクトル推定マトリクスとに基づき、S910で被写体分光特性を導出する処理を行う。
【0099】
第2の実施の形態においても、撮影装置800は、本撮影に先立って選択されたフィルタの分光透過特性に対応して測光モード、露出モード、カラーモード等を変化させるように構成可能である。
【0100】
また、フィルタの分光透過特性が切り替えられた後の本撮影に先立ち、プレビュー表示をするようにしてもよい。このようにすることにより、ユーザは、被写体の分光特性に対応してフィルタの分光透過特性を切り替えたときの効果を確認した上で本撮影を実行させることが可能となる。
【0101】
以上では予備撮影によって得られる画像データを用いて被写体の分光特性を導出する例について説明したが、被写体の分光特性を導出するための専用の光学系や撮像部を撮影装置800が有していてもよい。また、撮影装置800がムービーカメラである場合には、先行するタイミングで撮影して得られた画像データをもとに逐次被写体分光特性を導出し、その結果に基づいてフィルタの分光透過特性を切り替えることも可能である。このようにすることにより、後続するタイミングで行われる撮影結果をより好ましいものとすることが可能となる。
【0102】
以上に説明したように、本発明の第2の実施の形態に係る撮影装置800によれば、撮影に際して被写体の分光特性が導出され、フィルタの分光透過特性が被写体の分光特性に対応して切り替えられるので、ユーザがフィルタに関する知識を有していなくてもより好ましい撮影結果を得ることが可能となる。また、第2の実施の形態においても、フィルタの分光透過特性を電気的に切り替え可能な構成を有することにより、撮影装置800の大型化を抑制することが可能となるとともに分光透過特性を切り替える際の速度を高速化して撮影装置800の操作性を向上させることが可能となる。さらに、第1の実施の形態で説明したように、フィルタ部の分光透過特性を電気的に切り替える際に偏光変調素子206に印加する電圧のドライブ波形を徐々に変化させてフィルタの分光透過特性を徐々に変化させることも可能である。
【0103】
また、撮影装置800がさらにスペクトル推定情報生成部を有する場合には、撮像素子の色分解能力が限られたものであっても被写体の分光特性を導出する際の精度を向上させることが可能となる。
【0104】
以上に説明した第1、第2の実施の形態においては、撮影レンズ140または804によって被写体を直接撮影する例について説明したが、例えば天体望遠鏡や顕微鏡の接眼光学系の接眼部に撮影レンズ140または804を配置して撮影する場合にも本発明を適用可能である。あるいは、撮影レンズ140または804を取り外して、天体望遠鏡や顕微鏡の対物レンズで形成される像を直接撮影する場合にも本発明を適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、撮影レンズや撮影装置に装着または内蔵可能なフィルタ切替装置、撮影レンズ、撮影装置に適用可能である。また、撮影装置としては、スチルカメラ、ムービーカメラのいずれにも適用可能である。
【符号の説明】
【0106】
100、802 … フィルタ切替装置
102 … フィルタ部
104 … 被写体情報入力部
104a、816a … スイッチ
106、808 … 表示部
108 … フィルタ特性切替部
110 … 被写体情報入力部
112 … フィルタ情報記憶部
114 … 通信部
140、804 … 撮影レンズ
142 … 接点部
150、800 … 撮影装置
200、402、404 … 分光透過特性切替部
202、214 … 偏光板
204 … 波長選択性偏光ローテータ
206 … 偏光変調素子
208、210 … 透明基板
212 … フレキシブルプリント基板
402A、402B、402C、404A、404B … フィルタ
402D … 保持枠
406A、406B … アーム
806 … 撮像部
812 … 画像処理部
814 … 被写体分光特性導出部
816 … 被写体選択部
818 … フィルタ特性決定部
820 … フィルタ選択処理部
822 … フィルタ特性切替部
824 … フィルタ部
826 … 被写体分光特性表示処理部
850 … スペクトル推定情報生成部
852 … カメラ特性情報記憶部
854 … スペクトル推定マトリクス選択部
856 … 被写体情報入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用可能な複数種類のフィルタ分光透過特性の中からいずれかのフィルタ分光透過特性に切り替え可能に構成されるフィルタ部であって、前記複数種類のフィルタ分光透過特性のうち、少なくとも2種類のフィルタ分光透過特性が電気的に切り替え可能に構成されるフィルタ部と、
ユーザによる被写体の種類の設定を受付可能に構成される被写体情報入力部と、
被写体の種類と、前記複数種類のフィルタ分光透過特性との関係を規定するフィルタ情報を記憶するフィルタ情報記憶部と、
前記ユーザにより設定された被写体の種類に対応するフィルタ分光透過特性を、前記フィルタ情報に基づいて選択するフィルタ選択処理部と、
前記フィルタ部のフィルタ分光透過特性を、前記フィルタ選択処理部で選択されたフィルタ分光透過特性となるように切り替えるフィルタ特性切替部と
を有することを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
前記フィルタ部は、赤外の波長帯域の分光透過特性が電気的に切り替え可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記フィルタ部は、
非直線偏光光を入射して直線偏光光を出射する偏光子と、前記偏光子から出射した直線偏光光に対して、波長に応じて異なる旋光作用を及ぼす波長選択性偏光ローテータと、前記波長選択性偏光ローテータを透過した光に対する旋光作用を電気的に変更可能な偏光変調素子と、前記偏光変調素子を透過した光の中から所定の偏光方向を有する光のみ透過可能とする検光子とを有して構成される
ことを特徴とする請求項1または2に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のフィルタ装置を有することを特徴とする撮影レンズ。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1つに記載のフィルタ装置を有することを特徴とする撮影装置。
【請求項6】
複数種類のフィルタ分光透過特性の中からいずれかのフィルタ分光透過特性に切り替え可能に構成されるフィルタ部であって、前記複数種類のフィルタ分光透過特性のうち、少なくとも2種類のフィルタ分光透過特性が電気的に切り替え可能に構成されるフィルタ部と、
被写体の分光特性を導出する被写体分光特性導出部と、
前記被写体分光特性導出部で導出された被写体の分光特性に適したフィルタ特性を決定するフィルタ特性決定部と、
前記フィルタ部で切り替え可能なフィルタ分光透過特性のうち、前記フィルタ特性決定部で決定されたフィルタ特性に最も近いフィルタ分光透過特性を選択するフィルタ選択処理部と、
前記フィルタ部のフィルタ分光透過特性を、前記フィルタ選択処理部で選択されたフィルタ分光透過特性となるように切り替えるフィルタ特性切替部と、
前記フィルタ部の分光透過特性が切り替えられた後、前記フィルタ部を透過した被写体光で形成される被写体像を撮像する撮像部と
を有することを特徴とする撮影装置。
【請求項7】
前記フィルタ部は、赤外の波長帯域の分光透過特性を電気的に切り替え可能に構成されることを特徴とする請求項6に記載の撮影装置。
【請求項8】
前記フィルタ部は、
非直線偏光光を入射して直線偏光光を出射する偏光子と、前記偏光子から出射した直線偏光光に対して、波長に応じて異なる旋光作用を及ぼす波長選択性偏光ローテータと、前記波長選択性偏光ローテータを透過した光に対する旋光作用を電気的に変更可能な偏光変調素子と、前記偏光変調素子を透過した光の中から所定の偏光方向を有する光のみ透過可能とする検光子とを有して構成される
ことを特徴とする請求項6または7に記載の撮影装置。
【請求項9】
前記被写体分光特性導出部は、前記撮像部で予備撮影を行うことによって得られた予備撮影画像データを用いて前記被写体の分光特性を導出することが可能に構成されることを特徴とする請求項6から8のいずれか1つに記載の撮影装置。
【請求項10】
ユーザにより設定された被写体の種類に対応して読み出されたスペクトル推定マトリクスと、前記撮像部の色再現情報とに基づいてスペクトル推定情報を生成するスペクトル推定情報生成部をさらに有し、
前記被写体分光特性導出部は、前記予備撮影画像データと前記スペクトル推定情報とを用いて生成されるスペクトル画像データに基づいて前記被写体の分光特性を導出するように構成されることを特徴とする請求項9に記載の撮影装置。
【請求項11】
前記フィルタ部はさらに、前記複数種類のフィルタ分光透過特性の中のいずれかの分光透過特性を有するフィルタを機械的に移動させることにより、前記撮像部に被写体像を形成する撮影レンズの光軸に対して挿抜可能に構成されることを特徴とする請求項6から10のいずれか1つに記載の撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−17827(P2011−17827A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161555(P2009−161555)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】