フィルタ
【課題】
フィルタ使用時の空気抵抗により生じる構造的な圧力損失を軽減させたフィルタを提供する。
【解決手段】
山谷状に形成された濾材を含むフィルタであって、フィルタ上流側に位置する濾材の山頂部が、2つの斜面部と尾根部とを有し、かつ、尾根部長手方向に直交する断面における山頂部の内側において、2つの斜面部と尾根部に内接する円を描いた際に、その円の直径(R1)が、山高さ(H)の0.5%以上20%以下であるとともに、隣接する谷の間隔(W)の50%以下であることを特徴とするフィルタ。
フィルタ使用時の空気抵抗により生じる構造的な圧力損失を軽減させたフィルタを提供する。
【解決手段】
山谷状に形成された濾材を含むフィルタであって、フィルタ上流側に位置する濾材の山頂部が、2つの斜面部と尾根部とを有し、かつ、尾根部長手方向に直交する断面における山頂部の内側において、2つの斜面部と尾根部に内接する円を描いた際に、その円の直径(R1)が、山高さ(H)の0.5%以上20%以下であるとともに、隣接する谷の間隔(W)の50%以下であることを特徴とするフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄や液体浄化のために用いられるフィルタに関し、さらに詳細には不織布や濾紙などのシート状物を山谷折加工した濾材を使用したフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
山谷状に形成された濾材を用いたフィルタは、ビルの空調用や空気清浄機や掃除機やエアコンなどの家庭用機器に幅広く使用されている。
【0003】
濾材を山谷状に形成する目的は、所定のフィルタ寸法内に濾材の濾過有効面積を増加させることにあるが、隣り合う山谷間で濾材同士が接触し、空気などの流体が停滞してしまうため、これを防止するには、たとえばリテーナ付きフィルタとして、特許文献1や特許文献2に示されるように、濾材表面に連続的または断続的に接着剤を塗布しこれを硬化させることによってリテーナを形成し、山谷間の空間を確保する方法がある。
【0004】
また、山谷の位置規制部材付きフィルタとして、特許文献3、特許文献4や特許文献5に示されるように、金属や不織布などで形成された部材によって山谷の位置を規制し、山谷間に所定の空間を確保する方法もあるが、これらいずれの方法も山谷間の間隔を確保することに着目しているのみで、そこに開示される濾材では、図12に示すように、フィルタとして使用した際に、空気の抵抗によって濾材が変形し上流側山頂部に空気が流通しない部分17が生じ、これにより構造的な圧力損失が発生していたのが実状である。
【0005】
加えて、上記に示したいずれの技術も、濾材の表面に適当な強度を持つ何らかの物質をリテーナや位置規制部材として配する必要があるため、これにより濾材の濾過有効面積が減少したり、フィルタの重量が増加したりするなどの不都合もあった。
【0006】
本発明者らは、濾材における構造的な圧力損失の原因として、前記したような、空気の抵抗によって濾材が変形し上流側山頂部に空気が流れない部分が生じていることを突き止め、かかる現象を改善すべく鋭意検討の結果、本発明に至ったのである。
【特許文献1】特開平2−284626号公報
【特許文献2】特許第3003685号
【特許文献3】特開昭62−225222号公報
【特許文献4】特開平5−184841号公報
【特許文献5】実開昭63−46913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前記した従来のフィルタにおける問題を解決し、フィルタ使用時の空気抵抗により生じる構造的な圧力損失を軽減させたフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明のフィルタは次の構成を有する。すなわち、山谷状に形成された濾材を含むフィルタであって、フィルタ上流側に位置する濾材の山頂部が、2つの斜面部と尾根部とを有し、かつ、尾根部長手方向に直交する断面における山頂部の内側において、2つの斜面部と尾根部に内接する円を描いた際に、その円の直径(R1)が、山高さ(H)の0.5%以上20%以下であるとともに、隣接する谷の間隔(W)の50%以下であることを特徴とするフィルタである。
【0009】
ここで、2つの斜面部のそれぞれと尾根部との間には溝が形成されてなることが好ましく、フィルタ下流側に位置する濾材の谷頂部が、2つの斜面部と谷底部とを有し、かつ、尾根部長手方向に直交する断面における谷頂部の内側において、2つの斜面部と谷底部に内接する円を描いた際に、その円の直径(R2)が、山高さ(H)の0.5%以下であることも好ましく、さらに、隣接する谷の間隔(W)が、前記山高さ(H)の5〜30%の範囲にあることも好ましい。
【0010】
また、本発明に用いる濾材を構成するシート状物が、JIS−L−1079:ガーレ法に基づく測定において、250mg以上の剛軟度を有し、かつ、0.07g/cm3以上0.2g/cm3未満の見掛け密度を有することも好ましい。さらに、山谷状に形成された濾材が、その山谷間の間隔を保持するための支持体を有しないことも好ましい。
【0011】
上述したフィルタは、その周囲に枠体を配し、その枠体とフィルタとを一体化せしめることによりフィルタユニットを構成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フィルタ使用時の空気抵抗により生じる圧力損失を軽減することができるフィルタおよびフィルタユニットとすることができる。また、本発明によれば、フィルタ重量を増加させなくとも前記効果を有効に発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
本発明のフィルタは、山谷状に形成された濾材を含み、その山頂部は2つの斜面と尾根部とを有している。図1は、本発明における一態様である濾材を尾根部長手方向に直交する断面での概略断面図である。また、図2は、図1におけるフィルタ上流側に位置する山頂部を拡大して示した概略断面図である。空気などの流体は、図中の矢印Aの向きに供給され濾過が行われる。図4は、図1に示す濾材に、矢印Aの向きに流体が供給された状態での概略断面図である。図3は、枠体18をフィルタの周囲に配し、その枠体とフィルタを一体化したフィルタユニットの一例を示す概略斜視図である。この例では、フィルタは、山谷状に形成された濾材1と、不織布などからなる別の濾材19により構成されている。
【0015】
さて、図1と図2において、山谷状に形成された濾材1の山頂部は、その内側において、片側斜面と尾根部と他の片側斜面に内接する円5を描いた際に、その円の直径(R1)が山高さ(H)の0.5%以上20%以下であり、かつ隣接する谷の間隔(W)の50%以下となるような空間を有している。
【0016】
本発明における濾材は、上流側山頂部の内側にかかる空間を有しているため、矢印Aの向きに流入した空気は、フィルタ使用時に空気の抵抗によって濾材に変形が生じた場合でも、図4に示すとおり濾材1において空気が流れる空間が確保され、空気が圧力損失少なく濾過される。
【0017】
ここで、前記した円の直径(R1)が隣接する谷の間隔(W)の50%以下であっても山高さ(H)に対して0.5%を下回る場合は、上流側山頂部の内側に十分な空間を確保することができず、空気の抵抗によって濾材が変形した時に片側斜面と他の片側斜面同士が接触してしまい、図12における濾材と同様に、上流側山頂部に空気が流通しない部分17が生じ、構造的な圧力損失が生じやすくなる。
【0018】
また、前記した円の直径(R1)が隣接する谷の間隔(W)の50%以下であっても山高さ(H)に対して20%を上回る場合は、尾根部部分が大きくなることにより、この部分で受ける単位面積当たりの空気抵抗が増大してしまい、圧力損失が大きくなりやすくなる。
【0019】
また、前記した円の直径(R1)が山高さ(H)に対して0.5%以上20%以下であっても、谷の間隔(W)の50%を上回る場合は、所定のフィルタ寸法内に濾材の濾過有効面積を増加させるために適した隣接する谷の間隔(W)との関係で、フィルタ全体の空気に対する抵抗が上昇し、濾過効率が低下する傾向がみられる。
【0020】
ここで、隣接する谷の間隔(W)とは、隣接する谷間の距離をいう。山高さ(H)と隣接する谷間の距離との関係については詳しくは後述するが、例えば山高さ(H)が30mmの山谷形状の場合、これに最も適した隣接する谷の間隔(W)は約3.5mmとなるのだが、円の直径(R1)が谷の間隔の50%を上回る場合は、それが1.75mmを上回ることになり、隣接する山間の距離が短くなり空気が通りにくく谷部での空気の流れが悪くなって、圧力損失が大きくなりやすくなる。
【0021】
また、上記したような空間は、上流側山頂部と下流側谷頂部の内側の両方に有しても良いが、山高さと隣接する谷間の距離との関係を好適に設定しておけば、フィルタ使用時に空気の抵抗によって濾材に変形が生じた場合でも、下流側谷頂部の空気流通路が遮断されることは無いため、下流側谷頂部の内側には有さなくても良く、所定のフィルタ寸法内に濾材の濾過有効面積を増加させることを考慮しながら選択することができる。かかる観点からは、フィルタ下流側に位置する濾材の谷頂部が、谷底部を実質的に有しないか、有したとしても、尾根部長手方向に直交する断面における谷頂部の内側において、2つの斜面部と谷底部に内接する円を描いた際に、その円の直径(R2)は、山高さ(H)の0.5%以下であることが好ましい。
【0022】
ここで、濾材の上流側山頂部や下流側谷頂部に空間を形成する方法は、特に限定されるものではないが、濾材を構成するシート状物1aに溝を付けて折り曲げることにより形成することが好ましい。この溝付けによる空間の形成方法においては、上流側山頂部や下流側谷頂部の内側の空間の大きさを精度良く加工し、かつ、山や谷の間隔を精度良く加工するには、図5に示すような装置を用いることが効率的である。ここで図5に示す装置を用いて、山や谷の頂部に空間を有する山谷状の濾材を作製する方法について詳しく説明する。
【0023】
濾材の原反であるシート状物1aは、送り出しロール10にセットされ、シート状物1aの反始は搬送ローラー6aと6bに接触した状態で両ロールの間を通り、溝付け加工部の溝付け板9aおよび9bと受け溝8aおよび8bの間を通り、搬送ローラー7aと7bに接触した状態で両ロールの間に通されている。
【0024】
搬送ローラー6aと6bおよび搬送ローラー7aと7bの間を通されているシート状物1aは、各搬送ローラー6aおよび6bと7aおよび7bが回転することにより矢印Bの方向に順次搬送される。このとき各搬送ローラー6a、6b、7aおよび7bを任意に回転させたり停止させたりすることによりシート状物1aの搬送量を制御することができ、これによりシート状物1aに溝付け加工を行う位置を定める。
【0025】
図6は、溝付け加工部11における、一対の溝付け板9と受け溝8の一例を示す概略断面図である。また、図7、図8および図9は、それぞれ同様の他の一例を示す概略断面図である。
【0026】
図5における溝付け加工部11では溝付け板9aまたは9bが下降することにより、図6〜9に示すようにシート状物1aが溝付け板9と受け溝8の間に挟まれ、接触部12においてシート状物1aの表面に溝付け加工が施される。
【0027】
ここで、所望の円の直径(R)を得ることができるように、図6や図8に示すように溝付け板の厚み13と受け溝の角度14を適切に定めて設置したり、溝付け板を図7や図9に示すような形状のものにしたりすることができる。
【0028】
このような装置にて、シート状物1aの溝付け加工を行う位置を適宜制御することにより、隣接する山と谷の間隔を制御することができる。
【0029】
上述の溝付け加工したシート状物を山谷状に形成するための折り加工方法には、例えばレシプロ式、ロータリー式などの折り加工機による方法を用いることができる。
【0030】
濾材の上流側山頂部や下流側谷頂部に空間を形成する方法としては、上記に示したシート状物に溝を付けることにより折り曲げて空間を形成する方法のほかに、図10に示すように金属、ガラス、プラスチックなどから構成される棒状の支持体15を用い、この支持体15を枠材に付設し、空間を形成することもできる。この場合、山谷状に形成された濾材の山頂部分を支持することにより、空気抵抗による濾材変形量をより軽減することもできる。さらに、この他に図11に示すような山谷形状に成形された押型16aおよび16bでプレスする方法などの成型方法を用いることができる。
【0031】
また、本発明において、隣接する谷部の間隔(W)および山の高さ(H)は任意であり、特に限定されるものではないが、隣接する谷部の間隔(W)がその山の高さ(H)の5〜30%、好ましくは10〜20%であるのがよい。ここで、隣接する谷部の間隔とは、隣接する谷間の距離をいう。上記した谷部の間隔がその山の高さに比べて小さすぎると、空気に対する抵抗が上昇し、濾過効率が低下する傾向がみられ、逆に大きすぎると、所定のフィルタ寸法内に濾材の濾過有効面積を設けにくくなる。
【0032】
また、山谷状に形成した濾材をW状に配置したフィルタとすることにより、フィルタ寸法内の濾材の濾過有効面積を増やすこともできる。
【0033】
本発明において、濾材を構成するシート状物の種類は特に限定されるものではなく、例えば、短繊維不織布や長繊維不織布が挙げられる。かかる不織布を構成する繊維としては、ガラス繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維などの有機繊維、パルプや麻などの天然繊維、セルロース系、アクリル系またはリグニン系繊維を炭化賦活した活性炭素繊維、金属繊維、ガラス繊維などの無機繊維を用いることができる。また、シート状物としては、エレクトレット処理したポリプロピレン繊維の不織布、ポリエチレンやポリエステルなどの有機繊維不織布からなる通気性支持体を少なくとも一方の面に積層したポリトテトラフルオロエチレン多孔膜、放射線グラフト重合反応を利用して製造されるイオン交換不織布なども用いることができる。
【0034】
とりわけ、ビルの空調用や空気清浄機や掃除機やエアコンなどの家庭用機器用のフィルタ用の濾材に好んで用いられるガラス繊維の不織布、エレクトレット処理したポリプロピレン繊維の不織布が本発明では好ましく用いられる。
また、かかるシート状物は、その剛軟度が、JIS−L−1079:ガーレ法に基づく測定において、250mg以上であれば、上述したプリーツ形状を維持し、構造的な圧力損失の発生を極力抑制することができ好適である。さらには、かかるシート状物は、その見掛け密度が0.07g/cm3以上0.2g/cm3未満であれば、上述した山谷の形状を維持し、構造的な圧力損失の発生を極力抑制することがさらにも増して達成できるとともに、シート内部に適当な空間を有するため、かかるシート状物は山谷形状を形成しやすい。
【0035】
なお、シート状物の見掛け密度は、次の式に示すとおり、シート状物の重量(W)をシート状物の容積(V)で割って求めることができ、シート状物の厚みは3cm角の試料に0.25g/cm2の荷重をシート状物に掛けダイヤルゲージで測定して求めることができる。
【0036】
ρ=W/V
ρ:見掛け密度(g/cm3)
W:シート状物の重量(g/m2)
V:シート状物の容積(cm3)
なお、V=T×10000
T:シート状物の厚み(mm)
本発明においては、リテーナや山谷位置規制部材を敷設することを要しないが、本発明の目的を逸脱しない限り、シート状物の剛軟度や見掛け密度と、フィルタ使用時に空気の抵抗によって生じる濾材の変形度合いなどに応じて、適当なリテーナや山谷位置規制部材を用いることを妨げるものではない。
【0037】
本発明のフィルタは、上記した濾材のみで構成されていても良いが、図3に示すように、不織布などからなる別の濾材19と組み合わせてフィルタを構成しても良い。山谷状に形成された濾材1と別の濾材19は、それぞれを単層として構成しても良いし、複数の濾材を積層し多層構造としたフィルタとしてもよい。また、それらの濾材は、同種のものを重ねても、異種のものを積層してもよい。たとえば、異種の濾材を積層する場合は、空気などの流体の流入側に目の粗い濾材を配し、流出側に目の細かい濾材を配したりすることができる。また、濾材をたとえば抗菌性を有する濾材と消臭性を有する濾材とを積層したフィルタとすれば、複数の機能を付与することもできる。
【0038】
また、山谷状に形成された濾材1や別の濾材19に、抗菌性、抗ウイルス性、防かび性、芳香性、消臭性、抗アレルゲン性等の性質をそれぞれ単独で、もしくは複合して付与してもよい。抗菌性を、たとえば山谷状に形成された濾材に付与した場合は、濾材に各種の菌が繁殖するのを防ぎ、濾材の寿命を延長することができる。別の濾材に付与した場合には、上流側にその別の濾材を配して下流側の濾材に菌類を含んだ空気が供給されるのを防いだり、下流側にその別の濾材を配して濾過した空気に菌類が混入することを防いだりすることができる。また、消臭性や芳香性を付与した場合も、清浄なエアを供給することができ、使用可能な時間を延ばすことができる。上記した機能の付与する手段としては、そのような機能を有する薬剤を濾材に塗布する方法や、濾材にそのような薬剤をあらかじめ練り込んでおく方法や、濾材を上記した機能を有する素材で製造する方法などをあげることができる。なお、これらの機能は上述した手段を適宜選択して付与することもできる。
【0039】
上述したようなフィルタは、図3に示すとおり、通常、その周囲に枠体18を配して、枠体18とフィルタとを一体化し、フィルタユニットとして構成される。一体化することでフィルタの強度が増し、取り扱いが容易となる。また、枠体についても、抗菌性などの前記した機能を単独もしくは複合して付与することができる。
【実施例】
【0040】
(実施例1)
目付量100g/m2の不織布(エレクトレットポリプロピレンメルトブロー不織布と短繊維不織布の積層体、JIS−L−1079:ガーレ法に基づく剛軟度320mg、見掛け密度0.16g/cm3)を、図5に示す構造の溝付け加工機を用い、山の高さ(H)58mm、幅591mm、上流側山頂部の内側に空間を形成するための平行する2本の溝の間隔0.5mmで溝付け加工を行い、その後、山谷状に折り込み、HEPAフィルタ(濾材使用面積10m2、サイズ610mm×610mm×65mm、定格風量56m3/分)を得た。得られた濾材の山頂部と谷頂部は、それぞれ、2つの斜面部と尾根部とを有しており、上流側山頂部内側の円の直径(R1)は0.5mm、下流側谷頂部内側の円の直径(R2)は0.1mm、隣接する谷部の間隔(W)は5mmであった。
【0041】
このフィルタを最終圧力損失値294Pa(30mmAq)までの風圧試験(JIS B−9908)にて、圧力損失および捕集効率(0.3ミクロンDOP粒子を用いた計数法)を測定した。結果などを表1にまとめて示す。
(実施例2)
目付量100g/m2の不織布(エレクトレットポリプロピレンメルトブロー不織布と短繊維不織布の積層体、JIS−L−1079:ガーレ法に基づく剛軟度240mg。見掛け密度0.06g/cm3)を、図5に示す構造の溝付け加工機を用い、山の高さ(H)58mm、幅591mm、上流側山頂部の内側に空間を形成するための平行する2本の溝の間隔1.0mmで溝付け加工を行い、その後、山谷状に折り込み、HEPAフィルタ(濾材使用面積10m2、サイズ610mm×610mm×65mm、定格風量56m3/分)を得た。得られた濾材の山頂部と谷頂部は、それぞれ、2つの斜面部と尾根部とを有しており、上流側山頂部内側の円の直径(R1)は1.0mm、下流側谷頂部内側の円の直径(R2)は0.1mm、隣接する谷部の間隔は5mm(W)であった。
【0042】
このフィルタを最終圧力損失値294Pa(30mmAq)までの風圧試験(JIS B−9908)にて、圧力損失および捕集効率(0.3ミクロンDOP粒子を用いた計数法)を測定した。結果などを表1にまとめて示す。
(比較例1)
目付量100g/m2の不織布(エレクトレットポリプロピレンメルトブロー不織布と短繊維不織布の積層体、JIS−L−1079:ガーレ法に基づく剛軟度320mg。見掛け密度0.16g/cm3)を、図5に示す構造の溝付け加工機を用い、山の高さ(H)58mm、幅591mm、上流側山頂部の内側に空間を形成するための平行する2本の溝の間隔0.2mmで溝付け加工を行い、その後、山谷状に折り込み、HEPAフィルタ(濾材使用面積10m2、サイズ610mm×610mm×65mm、定格風量56m3/分)を得た。得られた濾材の山頂部と谷頂部は、それぞれ、2つの斜面部と尾根部とを有しており、上流側山頂部内側の円の直径(R1)は0.2mm、下流側谷頂部内側の円の直径(R2)は0.1mm、隣接する谷部の間隔(W)は5mmであった。
【0043】
このフィルタを最終圧力損失値294Pa(30mmAq)までの風圧試験(JIS B−9908)にて、圧力損失および捕集効率(0.3ミクロンDOP粒子を用いた計数法)を測定した。結果などを表1にまとめて示す。
【0044】
円の直径が0.2mmであり、山谷状に形成された上流側山頂部の内側に空気が流れるのに十分な空間を確保することできておらず、フィルタ使用時に空気の抵抗によって濾材が変形し、上流側山頂部に空気が流れない部分が生じたため、実施例1と実施例2と比べ、圧力損失と捕集効率ともに悪化し、HEPAフィルタとしての十分な性能が得られなかった。
(比較例2)
目付量100g/m2の不織布(エレクトレットポリプロピレンメルトブロー不織布と短繊維不織布の積層体、JIS−L−1079:ガーレ法に基づく剛軟度320mg。見掛け密度0.16g/cm3)を、図5に示す構造の溝付け加工機を用い、山の高さ(H)58mm、幅591mm、上流側山頂部の内側に空間を形成するための平行する2本の溝の間隔2.6mmで溝付け加工を行い、その後、山谷状に折り込み、HEPAフィルタ(濾材使用面積10m2、サイズ610mm×610mm×65mm、定格風量56m3/分)を得た。得られた濾材の山頂部と谷頂部は、それぞれ、2つの斜面部と尾根部とを有しており、上流側山頂部内側の円の直径(R1)は2.5mm、下流側谷頂部内側の円の直径(R2)は0.1mm、隣接する谷部の間隔(W)は5mmであった。
【0045】
このフィルタを最終圧力損失値294Pa(30mmAq)までの風圧試験(JIS B−9908)にて、圧力損失および捕集効率(0.3ミクロンDOP粒子を用いた計数法)を測定した。結果などを表1にまとめて示す。
【0046】
円の直径が2.5mmであり、プリーツ状に形成された山部の上流側山頂部に空気が流れるのに十分な空間はあるものの、隣接する山間の距離が十分ではないため、プリーツ谷部での空気の流れが悪くなり、実施例1と実施例2と比べ、圧力損失と捕集効率ともに悪化し、HEPAフィルタとしての十分な性能が得られなかった。
【0047】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、空気清浄機用のフィルタに限らず、液体濾過用のフィルタなどにも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】フィルタの概略断面図である。
【図2】上流側の山頂部の概略断面拡大図である。
【図3】フィルタユニットの一部透視概略斜視図である。
【図4】空気を流したときのフィルタの概略断面図である。
【図5】溝付け加工装置の概略図である。
【図6】溝付け加工部の拡大図である。
【図7】溝付け加工部の拡大図である。
【図8】溝付け加工部の拡大図である。
【図9】溝付け加工部の拡大図である。
【図10】支持体を用いたフィルタの概略図である。
【図11】プレス加工装置の概略図である。
【図12】空気を流したときのフィルタの概略断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 濾材
1a シート状物
2、4 片側斜面内接点
3 尾根部内接点
5 2つの斜面部と尾根部に内接する円
6a,6b,7a,7b 搬送ローラー
8,8a,8b 受け溝
9,9a,9b 溝付け板
10 送り出しロール
11 溝付け加工部
12 接触部
13 板の厚み
14 受け溝の角度
15 支持体
16a,16b 山谷形状に成形された押型
17 空気が流通しない部分
18 枠体
19 別の濾材
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄や液体浄化のために用いられるフィルタに関し、さらに詳細には不織布や濾紙などのシート状物を山谷折加工した濾材を使用したフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
山谷状に形成された濾材を用いたフィルタは、ビルの空調用や空気清浄機や掃除機やエアコンなどの家庭用機器に幅広く使用されている。
【0003】
濾材を山谷状に形成する目的は、所定のフィルタ寸法内に濾材の濾過有効面積を増加させることにあるが、隣り合う山谷間で濾材同士が接触し、空気などの流体が停滞してしまうため、これを防止するには、たとえばリテーナ付きフィルタとして、特許文献1や特許文献2に示されるように、濾材表面に連続的または断続的に接着剤を塗布しこれを硬化させることによってリテーナを形成し、山谷間の空間を確保する方法がある。
【0004】
また、山谷の位置規制部材付きフィルタとして、特許文献3、特許文献4や特許文献5に示されるように、金属や不織布などで形成された部材によって山谷の位置を規制し、山谷間に所定の空間を確保する方法もあるが、これらいずれの方法も山谷間の間隔を確保することに着目しているのみで、そこに開示される濾材では、図12に示すように、フィルタとして使用した際に、空気の抵抗によって濾材が変形し上流側山頂部に空気が流通しない部分17が生じ、これにより構造的な圧力損失が発生していたのが実状である。
【0005】
加えて、上記に示したいずれの技術も、濾材の表面に適当な強度を持つ何らかの物質をリテーナや位置規制部材として配する必要があるため、これにより濾材の濾過有効面積が減少したり、フィルタの重量が増加したりするなどの不都合もあった。
【0006】
本発明者らは、濾材における構造的な圧力損失の原因として、前記したような、空気の抵抗によって濾材が変形し上流側山頂部に空気が流れない部分が生じていることを突き止め、かかる現象を改善すべく鋭意検討の結果、本発明に至ったのである。
【特許文献1】特開平2−284626号公報
【特許文献2】特許第3003685号
【特許文献3】特開昭62−225222号公報
【特許文献4】特開平5−184841号公報
【特許文献5】実開昭63−46913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前記した従来のフィルタにおける問題を解決し、フィルタ使用時の空気抵抗により生じる構造的な圧力損失を軽減させたフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明のフィルタは次の構成を有する。すなわち、山谷状に形成された濾材を含むフィルタであって、フィルタ上流側に位置する濾材の山頂部が、2つの斜面部と尾根部とを有し、かつ、尾根部長手方向に直交する断面における山頂部の内側において、2つの斜面部と尾根部に内接する円を描いた際に、その円の直径(R1)が、山高さ(H)の0.5%以上20%以下であるとともに、隣接する谷の間隔(W)の50%以下であることを特徴とするフィルタである。
【0009】
ここで、2つの斜面部のそれぞれと尾根部との間には溝が形成されてなることが好ましく、フィルタ下流側に位置する濾材の谷頂部が、2つの斜面部と谷底部とを有し、かつ、尾根部長手方向に直交する断面における谷頂部の内側において、2つの斜面部と谷底部に内接する円を描いた際に、その円の直径(R2)が、山高さ(H)の0.5%以下であることも好ましく、さらに、隣接する谷の間隔(W)が、前記山高さ(H)の5〜30%の範囲にあることも好ましい。
【0010】
また、本発明に用いる濾材を構成するシート状物が、JIS−L−1079:ガーレ法に基づく測定において、250mg以上の剛軟度を有し、かつ、0.07g/cm3以上0.2g/cm3未満の見掛け密度を有することも好ましい。さらに、山谷状に形成された濾材が、その山谷間の間隔を保持するための支持体を有しないことも好ましい。
【0011】
上述したフィルタは、その周囲に枠体を配し、その枠体とフィルタとを一体化せしめることによりフィルタユニットを構成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フィルタ使用時の空気抵抗により生じる圧力損失を軽減することができるフィルタおよびフィルタユニットとすることができる。また、本発明によれば、フィルタ重量を増加させなくとも前記効果を有効に発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
本発明のフィルタは、山谷状に形成された濾材を含み、その山頂部は2つの斜面と尾根部とを有している。図1は、本発明における一態様である濾材を尾根部長手方向に直交する断面での概略断面図である。また、図2は、図1におけるフィルタ上流側に位置する山頂部を拡大して示した概略断面図である。空気などの流体は、図中の矢印Aの向きに供給され濾過が行われる。図4は、図1に示す濾材に、矢印Aの向きに流体が供給された状態での概略断面図である。図3は、枠体18をフィルタの周囲に配し、その枠体とフィルタを一体化したフィルタユニットの一例を示す概略斜視図である。この例では、フィルタは、山谷状に形成された濾材1と、不織布などからなる別の濾材19により構成されている。
【0015】
さて、図1と図2において、山谷状に形成された濾材1の山頂部は、その内側において、片側斜面と尾根部と他の片側斜面に内接する円5を描いた際に、その円の直径(R1)が山高さ(H)の0.5%以上20%以下であり、かつ隣接する谷の間隔(W)の50%以下となるような空間を有している。
【0016】
本発明における濾材は、上流側山頂部の内側にかかる空間を有しているため、矢印Aの向きに流入した空気は、フィルタ使用時に空気の抵抗によって濾材に変形が生じた場合でも、図4に示すとおり濾材1において空気が流れる空間が確保され、空気が圧力損失少なく濾過される。
【0017】
ここで、前記した円の直径(R1)が隣接する谷の間隔(W)の50%以下であっても山高さ(H)に対して0.5%を下回る場合は、上流側山頂部の内側に十分な空間を確保することができず、空気の抵抗によって濾材が変形した時に片側斜面と他の片側斜面同士が接触してしまい、図12における濾材と同様に、上流側山頂部に空気が流通しない部分17が生じ、構造的な圧力損失が生じやすくなる。
【0018】
また、前記した円の直径(R1)が隣接する谷の間隔(W)の50%以下であっても山高さ(H)に対して20%を上回る場合は、尾根部部分が大きくなることにより、この部分で受ける単位面積当たりの空気抵抗が増大してしまい、圧力損失が大きくなりやすくなる。
【0019】
また、前記した円の直径(R1)が山高さ(H)に対して0.5%以上20%以下であっても、谷の間隔(W)の50%を上回る場合は、所定のフィルタ寸法内に濾材の濾過有効面積を増加させるために適した隣接する谷の間隔(W)との関係で、フィルタ全体の空気に対する抵抗が上昇し、濾過効率が低下する傾向がみられる。
【0020】
ここで、隣接する谷の間隔(W)とは、隣接する谷間の距離をいう。山高さ(H)と隣接する谷間の距離との関係については詳しくは後述するが、例えば山高さ(H)が30mmの山谷形状の場合、これに最も適した隣接する谷の間隔(W)は約3.5mmとなるのだが、円の直径(R1)が谷の間隔の50%を上回る場合は、それが1.75mmを上回ることになり、隣接する山間の距離が短くなり空気が通りにくく谷部での空気の流れが悪くなって、圧力損失が大きくなりやすくなる。
【0021】
また、上記したような空間は、上流側山頂部と下流側谷頂部の内側の両方に有しても良いが、山高さと隣接する谷間の距離との関係を好適に設定しておけば、フィルタ使用時に空気の抵抗によって濾材に変形が生じた場合でも、下流側谷頂部の空気流通路が遮断されることは無いため、下流側谷頂部の内側には有さなくても良く、所定のフィルタ寸法内に濾材の濾過有効面積を増加させることを考慮しながら選択することができる。かかる観点からは、フィルタ下流側に位置する濾材の谷頂部が、谷底部を実質的に有しないか、有したとしても、尾根部長手方向に直交する断面における谷頂部の内側において、2つの斜面部と谷底部に内接する円を描いた際に、その円の直径(R2)は、山高さ(H)の0.5%以下であることが好ましい。
【0022】
ここで、濾材の上流側山頂部や下流側谷頂部に空間を形成する方法は、特に限定されるものではないが、濾材を構成するシート状物1aに溝を付けて折り曲げることにより形成することが好ましい。この溝付けによる空間の形成方法においては、上流側山頂部や下流側谷頂部の内側の空間の大きさを精度良く加工し、かつ、山や谷の間隔を精度良く加工するには、図5に示すような装置を用いることが効率的である。ここで図5に示す装置を用いて、山や谷の頂部に空間を有する山谷状の濾材を作製する方法について詳しく説明する。
【0023】
濾材の原反であるシート状物1aは、送り出しロール10にセットされ、シート状物1aの反始は搬送ローラー6aと6bに接触した状態で両ロールの間を通り、溝付け加工部の溝付け板9aおよび9bと受け溝8aおよび8bの間を通り、搬送ローラー7aと7bに接触した状態で両ロールの間に通されている。
【0024】
搬送ローラー6aと6bおよび搬送ローラー7aと7bの間を通されているシート状物1aは、各搬送ローラー6aおよび6bと7aおよび7bが回転することにより矢印Bの方向に順次搬送される。このとき各搬送ローラー6a、6b、7aおよび7bを任意に回転させたり停止させたりすることによりシート状物1aの搬送量を制御することができ、これによりシート状物1aに溝付け加工を行う位置を定める。
【0025】
図6は、溝付け加工部11における、一対の溝付け板9と受け溝8の一例を示す概略断面図である。また、図7、図8および図9は、それぞれ同様の他の一例を示す概略断面図である。
【0026】
図5における溝付け加工部11では溝付け板9aまたは9bが下降することにより、図6〜9に示すようにシート状物1aが溝付け板9と受け溝8の間に挟まれ、接触部12においてシート状物1aの表面に溝付け加工が施される。
【0027】
ここで、所望の円の直径(R)を得ることができるように、図6や図8に示すように溝付け板の厚み13と受け溝の角度14を適切に定めて設置したり、溝付け板を図7や図9に示すような形状のものにしたりすることができる。
【0028】
このような装置にて、シート状物1aの溝付け加工を行う位置を適宜制御することにより、隣接する山と谷の間隔を制御することができる。
【0029】
上述の溝付け加工したシート状物を山谷状に形成するための折り加工方法には、例えばレシプロ式、ロータリー式などの折り加工機による方法を用いることができる。
【0030】
濾材の上流側山頂部や下流側谷頂部に空間を形成する方法としては、上記に示したシート状物に溝を付けることにより折り曲げて空間を形成する方法のほかに、図10に示すように金属、ガラス、プラスチックなどから構成される棒状の支持体15を用い、この支持体15を枠材に付設し、空間を形成することもできる。この場合、山谷状に形成された濾材の山頂部分を支持することにより、空気抵抗による濾材変形量をより軽減することもできる。さらに、この他に図11に示すような山谷形状に成形された押型16aおよび16bでプレスする方法などの成型方法を用いることができる。
【0031】
また、本発明において、隣接する谷部の間隔(W)および山の高さ(H)は任意であり、特に限定されるものではないが、隣接する谷部の間隔(W)がその山の高さ(H)の5〜30%、好ましくは10〜20%であるのがよい。ここで、隣接する谷部の間隔とは、隣接する谷間の距離をいう。上記した谷部の間隔がその山の高さに比べて小さすぎると、空気に対する抵抗が上昇し、濾過効率が低下する傾向がみられ、逆に大きすぎると、所定のフィルタ寸法内に濾材の濾過有効面積を設けにくくなる。
【0032】
また、山谷状に形成した濾材をW状に配置したフィルタとすることにより、フィルタ寸法内の濾材の濾過有効面積を増やすこともできる。
【0033】
本発明において、濾材を構成するシート状物の種類は特に限定されるものではなく、例えば、短繊維不織布や長繊維不織布が挙げられる。かかる不織布を構成する繊維としては、ガラス繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維などの有機繊維、パルプや麻などの天然繊維、セルロース系、アクリル系またはリグニン系繊維を炭化賦活した活性炭素繊維、金属繊維、ガラス繊維などの無機繊維を用いることができる。また、シート状物としては、エレクトレット処理したポリプロピレン繊維の不織布、ポリエチレンやポリエステルなどの有機繊維不織布からなる通気性支持体を少なくとも一方の面に積層したポリトテトラフルオロエチレン多孔膜、放射線グラフト重合反応を利用して製造されるイオン交換不織布なども用いることができる。
【0034】
とりわけ、ビルの空調用や空気清浄機や掃除機やエアコンなどの家庭用機器用のフィルタ用の濾材に好んで用いられるガラス繊維の不織布、エレクトレット処理したポリプロピレン繊維の不織布が本発明では好ましく用いられる。
また、かかるシート状物は、その剛軟度が、JIS−L−1079:ガーレ法に基づく測定において、250mg以上であれば、上述したプリーツ形状を維持し、構造的な圧力損失の発生を極力抑制することができ好適である。さらには、かかるシート状物は、その見掛け密度が0.07g/cm3以上0.2g/cm3未満であれば、上述した山谷の形状を維持し、構造的な圧力損失の発生を極力抑制することがさらにも増して達成できるとともに、シート内部に適当な空間を有するため、かかるシート状物は山谷形状を形成しやすい。
【0035】
なお、シート状物の見掛け密度は、次の式に示すとおり、シート状物の重量(W)をシート状物の容積(V)で割って求めることができ、シート状物の厚みは3cm角の試料に0.25g/cm2の荷重をシート状物に掛けダイヤルゲージで測定して求めることができる。
【0036】
ρ=W/V
ρ:見掛け密度(g/cm3)
W:シート状物の重量(g/m2)
V:シート状物の容積(cm3)
なお、V=T×10000
T:シート状物の厚み(mm)
本発明においては、リテーナや山谷位置規制部材を敷設することを要しないが、本発明の目的を逸脱しない限り、シート状物の剛軟度や見掛け密度と、フィルタ使用時に空気の抵抗によって生じる濾材の変形度合いなどに応じて、適当なリテーナや山谷位置規制部材を用いることを妨げるものではない。
【0037】
本発明のフィルタは、上記した濾材のみで構成されていても良いが、図3に示すように、不織布などからなる別の濾材19と組み合わせてフィルタを構成しても良い。山谷状に形成された濾材1と別の濾材19は、それぞれを単層として構成しても良いし、複数の濾材を積層し多層構造としたフィルタとしてもよい。また、それらの濾材は、同種のものを重ねても、異種のものを積層してもよい。たとえば、異種の濾材を積層する場合は、空気などの流体の流入側に目の粗い濾材を配し、流出側に目の細かい濾材を配したりすることができる。また、濾材をたとえば抗菌性を有する濾材と消臭性を有する濾材とを積層したフィルタとすれば、複数の機能を付与することもできる。
【0038】
また、山谷状に形成された濾材1や別の濾材19に、抗菌性、抗ウイルス性、防かび性、芳香性、消臭性、抗アレルゲン性等の性質をそれぞれ単独で、もしくは複合して付与してもよい。抗菌性を、たとえば山谷状に形成された濾材に付与した場合は、濾材に各種の菌が繁殖するのを防ぎ、濾材の寿命を延長することができる。別の濾材に付与した場合には、上流側にその別の濾材を配して下流側の濾材に菌類を含んだ空気が供給されるのを防いだり、下流側にその別の濾材を配して濾過した空気に菌類が混入することを防いだりすることができる。また、消臭性や芳香性を付与した場合も、清浄なエアを供給することができ、使用可能な時間を延ばすことができる。上記した機能の付与する手段としては、そのような機能を有する薬剤を濾材に塗布する方法や、濾材にそのような薬剤をあらかじめ練り込んでおく方法や、濾材を上記した機能を有する素材で製造する方法などをあげることができる。なお、これらの機能は上述した手段を適宜選択して付与することもできる。
【0039】
上述したようなフィルタは、図3に示すとおり、通常、その周囲に枠体18を配して、枠体18とフィルタとを一体化し、フィルタユニットとして構成される。一体化することでフィルタの強度が増し、取り扱いが容易となる。また、枠体についても、抗菌性などの前記した機能を単独もしくは複合して付与することができる。
【実施例】
【0040】
(実施例1)
目付量100g/m2の不織布(エレクトレットポリプロピレンメルトブロー不織布と短繊維不織布の積層体、JIS−L−1079:ガーレ法に基づく剛軟度320mg、見掛け密度0.16g/cm3)を、図5に示す構造の溝付け加工機を用い、山の高さ(H)58mm、幅591mm、上流側山頂部の内側に空間を形成するための平行する2本の溝の間隔0.5mmで溝付け加工を行い、その後、山谷状に折り込み、HEPAフィルタ(濾材使用面積10m2、サイズ610mm×610mm×65mm、定格風量56m3/分)を得た。得られた濾材の山頂部と谷頂部は、それぞれ、2つの斜面部と尾根部とを有しており、上流側山頂部内側の円の直径(R1)は0.5mm、下流側谷頂部内側の円の直径(R2)は0.1mm、隣接する谷部の間隔(W)は5mmであった。
【0041】
このフィルタを最終圧力損失値294Pa(30mmAq)までの風圧試験(JIS B−9908)にて、圧力損失および捕集効率(0.3ミクロンDOP粒子を用いた計数法)を測定した。結果などを表1にまとめて示す。
(実施例2)
目付量100g/m2の不織布(エレクトレットポリプロピレンメルトブロー不織布と短繊維不織布の積層体、JIS−L−1079:ガーレ法に基づく剛軟度240mg。見掛け密度0.06g/cm3)を、図5に示す構造の溝付け加工機を用い、山の高さ(H)58mm、幅591mm、上流側山頂部の内側に空間を形成するための平行する2本の溝の間隔1.0mmで溝付け加工を行い、その後、山谷状に折り込み、HEPAフィルタ(濾材使用面積10m2、サイズ610mm×610mm×65mm、定格風量56m3/分)を得た。得られた濾材の山頂部と谷頂部は、それぞれ、2つの斜面部と尾根部とを有しており、上流側山頂部内側の円の直径(R1)は1.0mm、下流側谷頂部内側の円の直径(R2)は0.1mm、隣接する谷部の間隔は5mm(W)であった。
【0042】
このフィルタを最終圧力損失値294Pa(30mmAq)までの風圧試験(JIS B−9908)にて、圧力損失および捕集効率(0.3ミクロンDOP粒子を用いた計数法)を測定した。結果などを表1にまとめて示す。
(比較例1)
目付量100g/m2の不織布(エレクトレットポリプロピレンメルトブロー不織布と短繊維不織布の積層体、JIS−L−1079:ガーレ法に基づく剛軟度320mg。見掛け密度0.16g/cm3)を、図5に示す構造の溝付け加工機を用い、山の高さ(H)58mm、幅591mm、上流側山頂部の内側に空間を形成するための平行する2本の溝の間隔0.2mmで溝付け加工を行い、その後、山谷状に折り込み、HEPAフィルタ(濾材使用面積10m2、サイズ610mm×610mm×65mm、定格風量56m3/分)を得た。得られた濾材の山頂部と谷頂部は、それぞれ、2つの斜面部と尾根部とを有しており、上流側山頂部内側の円の直径(R1)は0.2mm、下流側谷頂部内側の円の直径(R2)は0.1mm、隣接する谷部の間隔(W)は5mmであった。
【0043】
このフィルタを最終圧力損失値294Pa(30mmAq)までの風圧試験(JIS B−9908)にて、圧力損失および捕集効率(0.3ミクロンDOP粒子を用いた計数法)を測定した。結果などを表1にまとめて示す。
【0044】
円の直径が0.2mmであり、山谷状に形成された上流側山頂部の内側に空気が流れるのに十分な空間を確保することできておらず、フィルタ使用時に空気の抵抗によって濾材が変形し、上流側山頂部に空気が流れない部分が生じたため、実施例1と実施例2と比べ、圧力損失と捕集効率ともに悪化し、HEPAフィルタとしての十分な性能が得られなかった。
(比較例2)
目付量100g/m2の不織布(エレクトレットポリプロピレンメルトブロー不織布と短繊維不織布の積層体、JIS−L−1079:ガーレ法に基づく剛軟度320mg。見掛け密度0.16g/cm3)を、図5に示す構造の溝付け加工機を用い、山の高さ(H)58mm、幅591mm、上流側山頂部の内側に空間を形成するための平行する2本の溝の間隔2.6mmで溝付け加工を行い、その後、山谷状に折り込み、HEPAフィルタ(濾材使用面積10m2、サイズ610mm×610mm×65mm、定格風量56m3/分)を得た。得られた濾材の山頂部と谷頂部は、それぞれ、2つの斜面部と尾根部とを有しており、上流側山頂部内側の円の直径(R1)は2.5mm、下流側谷頂部内側の円の直径(R2)は0.1mm、隣接する谷部の間隔(W)は5mmであった。
【0045】
このフィルタを最終圧力損失値294Pa(30mmAq)までの風圧試験(JIS B−9908)にて、圧力損失および捕集効率(0.3ミクロンDOP粒子を用いた計数法)を測定した。結果などを表1にまとめて示す。
【0046】
円の直径が2.5mmであり、プリーツ状に形成された山部の上流側山頂部に空気が流れるのに十分な空間はあるものの、隣接する山間の距離が十分ではないため、プリーツ谷部での空気の流れが悪くなり、実施例1と実施例2と比べ、圧力損失と捕集効率ともに悪化し、HEPAフィルタとしての十分な性能が得られなかった。
【0047】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、空気清浄機用のフィルタに限らず、液体濾過用のフィルタなどにも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】フィルタの概略断面図である。
【図2】上流側の山頂部の概略断面拡大図である。
【図3】フィルタユニットの一部透視概略斜視図である。
【図4】空気を流したときのフィルタの概略断面図である。
【図5】溝付け加工装置の概略図である。
【図6】溝付け加工部の拡大図である。
【図7】溝付け加工部の拡大図である。
【図8】溝付け加工部の拡大図である。
【図9】溝付け加工部の拡大図である。
【図10】支持体を用いたフィルタの概略図である。
【図11】プレス加工装置の概略図である。
【図12】空気を流したときのフィルタの概略断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 濾材
1a シート状物
2、4 片側斜面内接点
3 尾根部内接点
5 2つの斜面部と尾根部に内接する円
6a,6b,7a,7b 搬送ローラー
8,8a,8b 受け溝
9,9a,9b 溝付け板
10 送り出しロール
11 溝付け加工部
12 接触部
13 板の厚み
14 受け溝の角度
15 支持体
16a,16b 山谷形状に成形された押型
17 空気が流通しない部分
18 枠体
19 別の濾材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
山谷状に形成された濾材を含むフィルタであって、フィルタ上流側に位置する濾材の山頂部が、2つの斜面部と尾根部とを有し、かつ、尾根部長手方向に直交する断面における山頂部の内側において、2つの斜面部と尾根部に内接する円を描いた際に、その円の直径(R1)が、山高さ(H)の0.5%以上20%以下であるとともに、隣接する谷の間隔(W)の50%以下であることを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
2つの斜面部のそれぞれと尾根部との間には溝が形成されてなる、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
フィルタ下流側に位置する濾材の谷頂部が、2つの斜面部と谷底部とを有し、かつ、尾根部長手方向に直交する断面における谷頂部の内側において、2つの斜面部と谷底部に内接する円を描いた際に、その円の直径(R2)が、山高さ(H)の0.5%以下である、請求項1または2に記載のフィルタ。
【請求項4】
隣接する谷の間隔(W)が、前記山高さ(H)の5〜30%の範囲にある、請求項1〜3のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項5】
濾材を構成するシート状物は、JIS−L−1079:ガーレ法に基づく測定において、250mg以上の剛軟度を有するとともに、0.07g/cm3以上0.2g/cm3未満の見掛け密度を有する、請求項1〜4のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項6】
山谷状に形成された濾材が、その山谷間の間隔を保持するための支持体を有しない、請求項1〜5のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のフィルタの周囲に枠体を配し、その枠体とフィルタとを一体化せしめてなるフィルタユニット。
【請求項1】
山谷状に形成された濾材を含むフィルタであって、フィルタ上流側に位置する濾材の山頂部が、2つの斜面部と尾根部とを有し、かつ、尾根部長手方向に直交する断面における山頂部の内側において、2つの斜面部と尾根部に内接する円を描いた際に、その円の直径(R1)が、山高さ(H)の0.5%以上20%以下であるとともに、隣接する谷の間隔(W)の50%以下であることを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
2つの斜面部のそれぞれと尾根部との間には溝が形成されてなる、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
フィルタ下流側に位置する濾材の谷頂部が、2つの斜面部と谷底部とを有し、かつ、尾根部長手方向に直交する断面における谷頂部の内側において、2つの斜面部と谷底部に内接する円を描いた際に、その円の直径(R2)が、山高さ(H)の0.5%以下である、請求項1または2に記載のフィルタ。
【請求項4】
隣接する谷の間隔(W)が、前記山高さ(H)の5〜30%の範囲にある、請求項1〜3のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項5】
濾材を構成するシート状物は、JIS−L−1079:ガーレ法に基づく測定において、250mg以上の剛軟度を有するとともに、0.07g/cm3以上0.2g/cm3未満の見掛け密度を有する、請求項1〜4のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項6】
山谷状に形成された濾材が、その山谷間の間隔を保持するための支持体を有しない、請求項1〜5のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のフィルタの周囲に枠体を配し、その枠体とフィルタとを一体化せしめてなるフィルタユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−50342(P2007−50342A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−237204(P2005−237204)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
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