説明

フィルタ

【課題】排気ガス中の超微粒子を除去でき、かつ、目詰まりを緩和できるフィルタを提供する。
【解決手段】支持パイプ11と、支持パイプ11の外周に設けられ粗粒子および微粒子を濾過捕集するグラスウール保温筒12と、グラスウール保温筒12の外周に設けられたリテーナ21と、リテーナ21の外周に設けられ超微粒子を濾過捕集するフェルト濾布22とを備える。グラスウール保温筒12で粗粒子および微粒子を濾過捕集するので、フェルト濾布22の目詰まりを緩和できる。圧力損失を低減でき、排気ガス処理を長期間安定して行うことができる。汎用品から構成されているので、製造が容易であり、製造コストが安価となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタに関する。さらに詳しくは、排気ガス中の超微粒子、特に粒径がサブミクロンオーダーのミストやヒュームを除去するフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガス中に三酸化硫黄、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、過塩素酸などのミストが含まれていると、大気中で白煙または紫煙となり、視認できる状態でしばらく滞留する場合がある。このようなミストは微細であるため回収しにくいという性質を有する。
【0003】
この白煙を処理するフィルタとして、非特許文献1に記載の白煙処理フィルタが知られている。
図6に示すように、この従来の白煙処理フィルタ101は、半径方向に沿って複数の層を有する円筒形のフィルタであって、内側から、リテーナ111、PPクロス112、3層のグラスフィルタ113、114、115、およびPPクロス116の層を備えている。ここで、リテーナ111はポリ塩化ビニルまたはステンレス製の円筒形のもので、内周面から外周面に抜ける孔が多数形成されたものである。このリテーナ111によって白煙処理フィルタ101の形状が保たれるようになっている。また、PPクロス112、116はポリプロピレン製の帯状の生地であり、グラスフィルタ113、114、115は、ガラス繊維で形成されたフィルタである。白煙処理フィルタ101は、リテーナ111の外周面にPPクロス112が巻き付けられ、その外側に3層のグラスフィルタ113、114、115が巻かれ、それらグラスフィルタ113、114、115を圧縮するようにPPクロス116が巻き付けられて形成されている。
この従来の白煙処理フィルタ101のリテーナ111の内側に、前記ミストを含有した排気ガスが導入されると、排気ガスに含まれているミストとダストがグラスフィルタ113、114、115で濾過捕集され、ミストが集合されてグラスフィルタ113、114、115の内部を流下し、差圧によってPPクロス116の外側に排出される。そして、白煙処理フィルタ101を通過した排気ガスは無色となって大気中に排出される。すなわち、白煙処理フィルタ101によって、白煙を除去することができるとされている。
【0004】
しかるに、上記の白煙処理フィルタ101を、連続的に運転され排気ガス量が多い工場などに使用すると、排気ガス中のダストの濃度が薄い場合であってもしだいに目詰まりし、圧力損失が増大するため、頻繁に白煙処理フィルタ101を交換する必要があるという問題がある。
また、排気ガス中のミストの濃度が濃い場合には、グラスフィルタ113、114、115の内部で液層が形成されやすく、急激に圧力損失が増大するため、排気ガスの処理を継続できなくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】白煙処理装置/ガス洗浄装置、サンテクノ株式会社、2011年5月18日検索、<URL: http://www.suntechno-inc.co.jp/device.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、排気ガス中の超微粒子を除去でき、かつ、目詰まりを緩和できるフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明のフィルタは、排気ガスの導入側に設けられ、該排気ガス中の粗粒子および微粒子を濾過捕集する第1フィルタと、前記排気ガスの排出側に設けられ、該排気ガス中の超微粒子を濾過捕集する第2フィルタと、を備えることを特徴とする。
第2発明のフィルタは、第1発明において、前記第1フィルタはグラスウールであり、前記第2フィルタはフェルト濾布であることを特徴とする。
第3発明のフィルタは、第2発明において、通気性を有する支持パイプと、該支持パイプの外周に設けられたグラスウール保温筒と、該グラスウール保温筒の外周に設けられたリテーナと、該リテーナの外周に設けられたフェルト濾布と、を備えることを特徴とする。
第4発明のフィルタは、第2または第3発明において、前記フェルト濾布の通気度が1〜4cm3/cm2/secであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、第1フィルタで排気ガス中の粗粒子(粒径が概ね100μm以上)および微粒子(粒径が概ね1〜100μm)を濾過捕集するので、第2フィルタに粒径の大きい粗粒子や微粒子が通されず、粗粒子や微粒子による第2フィルタの目詰まりを緩和できる。
第2発明によれば、第1フィルタとしてグラスウールが用いられるので、排気ガス中の粗粒子および微粒子を濾過捕集することができ、また、大容量化に適している。また、第2フィルタとしてフェルト濾布が用いられるので、粒径の細かい超微粒子(粒径が概ね1μm未満)を濾過捕集することができる。
第3発明によれば、支持パイプ、グラスウール保温筒、リテーナ、フェルト濾布といった汎用品から構成されているので、製造が容易であり、製造コストが安価となる。
第4発明によれば、フェルト濾布の通気度が1〜4cm3/cm2/secであれば、超微粒子を濾過捕集することができ、かつ、圧力損失を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係るフィルタの正面視断面図である。
【図2】同フィルタの正面視部分拡大断面図である。
【図3】試験機の説明図である。
【図4】フェルト濾布の通気度と圧力損失および白煙状況との関係を示したグラフである。
【図5】内筒の有無と圧力損失との関係を示したグラフである。
【図6】従来のフィルタ正面視部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るフィルタ1は、円筒形のフィルタであって、大きく分けて内側の内筒10と外側の外筒20とから構成されている。
内筒10は支持パイプ11、グラスウール保温筒12および押え部材13、14から構成されている。ここで、支持パイプ11は、ポリエチレン製のパイプであって、内周面から外周面に抜ける多数の開孔が形成され通気性が付与されたものである。支持パイプ11としては、例えば暗渠パイプを用いることができる。グラスウール保温筒12は、グラスウールで筒状に形成されたものであって、その厚みは40mm程度であり、密度は45〜90kg/m3である。グラスウール保温筒12は肉厚であり空隙容量が大きいという利点を有する。
また、外筒20はリテーナ21およびフェルト濾布22から構成されている。ここで、リテーナ21は、ポリ塩化ビニルまたはステンレス製のパイプであって、一端が閉じられており、内周面から外周面に抜ける多数の開孔が形成されたものである。フェルト濾布22は、ポリプロピレン製のフェルト濾布であって、リテーナ21を覆う細長い袋状となっている。
グラスウール保温筒12は、水分を吸収すると形が崩れる性質を有するが、支持パイプ11とリテーナ21とで挟むことにより、その形状を保つことができるようになっている。
なお、グラスウール保温筒12が特許請求の範囲に記載の第1フィルタに相当し、フェルト濾布22が特許請求の範囲に記載の第2フィルタに相当する。
【0011】
このフィルタ1は、以下の手順で製造される。
まず、内筒10を形成する。
はじめに、支持パイプ11の外周にグラスウール保温筒12を取り付ける。
つぎに、グラスウール保温筒12の上端に上押え部材13を、下端に下押え部材14を嵌め込む。上押え部材13は支持パイプ11の内部に挿入される中実軸部13aとグラスウール保温筒12の上端を押えるフランジ13bとからなる部材である。上押え部材13は中実軸部13aが支持パイプ11に嵌合されることにより固定され、フランジ13bでグラスウール保温筒12が支持パイプ11の上端から抜け出ないように押えている。一方、下押え部材14は支持パイプ11の内部に挿入される中空軸部14aとグラスウール保温筒12の下端を押えるフランジ14bとからなる部材である。下押え部材14は中空軸部14aが支持パイプ11に嵌合されることにより固定され、フランジ14bでグラスウール保温筒12が支持パイプ11の下端から抜け出ないように押えている。また、下押え部材14のフランジ14bの外周には環状のゴムパッキン31が嵌められている。
【0012】
つぎに、外筒20を形成するため、袋状のフェルト濾布22の中にリテーナ21を挿入する。このとき、フェルト濾布22の開口縁を、リテーナ21の開口部から内部に折り込む。
【0013】
つぎに、リテーナ21の開口部から内筒10を挿入する。ここで、図2に示すように、リテーナ21は内筒10よりも長く形成されているため、下押え部14のフランジ14bが、ゴムパッキン31を介してリテーナ21の内部に折り込まれたフェルト濾布22に接するようになる。
最後に、フランジ14bの下方位置におけるリテーナ21に落下止めピン32を差し込むことで下押え部14をリテーナ21に固定する。
【0014】
上記のごとく、フィルタ1は、支持パイプ11、グラスウール保温筒12、リテーナ21、フェルト濾布22といった汎用品から構成されているので、製造が容易であり、製造コストが安価となる。
【0015】
図1に示すように、処理前の排気ガスは、フィルタ1の下押え部材14の貫通孔14cから支持パイプ11の内側に導入される。導入された排気ガスがグラスウール保温筒12を通過すると、排気ガスに含まれている粗粒子および微粒子が濾過捕集される。そして、フェルト濾布22を通過するときに、排気ガスに含まれている超微粒子が濾過捕集される。フェルト濾布22を通過した排気ガスは無色となり大気中に排出される。このように、フィルタ1は排気ガス中の粗粒子および微粒子を濾過捕集する第1フィルタと、超微粒子を濾過捕集する第2フィルタの2段構成となっている。
ここで、押さえ部材13、14は、支持パイプ11およびグラスウール保温筒12の端部に密着しているため、導入された排気ガスがグラスウール保温筒12を通過せずにフェルト濾布22に流れることを防止する役割も担っている。
【0016】
なお、本明細書において超微粒子とは粒径が概ね1μm未満の粒子をいい、微粒子とは粒径が概ね1μm以上100μm未満の粒子をいい、粗粒子とは粒径が概ね100μm以上の粒子をいう。
超微粒子は、例えば三酸化硫黄、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、オイルミスト等を含むミストやヒュームである。超微粒子が排気ガス中に含まれていると白煙となる。本実施形態に係るフィルタ1は、特にサブミクロンオーダー(0.01〜1.0μm)の超微粒子を除去するのに適するように、グラスウール保温筒12およびフェルト濾布22が選択されている。そのため、白煙を処理することができる。
粗粒子や微粒子は、例えば未撚炭素、ケイ素、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、硫黄等を含むダストやミストである。なお、排気ガスがグラスウール保温筒12を通過する際に、一部のミストは互いに合体して液滴となるが、この液滴も微粒子あるいは粗粒子に含まれる。
【0017】
上記のごとく、フィルタ1はグラスウール保温筒12とフェルト濾布22の2段構成となっているため、前段のグラスウール保温筒12で粗粒子および微粒子を濾過捕集することにより、フェルト濾布22に粒径の大きい粗粒子や微粒子が通されず、フェルト濾布22の粗粒子や微粒子による目詰まりを緩和できる。また、グラスウール保温筒12は、厚みが通常の布フィルタより肉厚であり空隙容量が大きいので、グラスウール保温筒12が粗粒子や微粒子により目詰まりするまでの排気ガス処理量が多い。そのため、圧力損失を低減でき、排気ガス処理を長期間安定して行うことができる。
また、排気ガスがグラスウール保温筒12を通過する際に、一部のミストは互いに合体して液滴となり、グラスウール保温筒12で捕集される。そのため、フェルト濾布22を通過する超微粒子の濃度を減少させることができ、より圧力損失を低減できる。
【0018】
(その他の実施形態)
フィルタ1は円筒形でなくてもよく、排気ガスの導入側に排気ガス中の粗粒子および微粒子を濾過捕集する第1フィルタが設置され、排気ガスの排出側に排気ガス中の超微粒子を濾過捕集する第2フィルタが設置される構成であれば特に限定されない。ただし、円筒形とすれば、製造が容易となるので好ましい。
【実施例】
【0019】
つぎに、実施例により、その効果を説明する。
(試験機)
図3に示すように、試験機は上記フィルタ1と、そのフィルタ1を収容する容器2と、スクラバー3と、デミスター4とから構成されている。容器2はその内部が水平板2aで上下に仕切られており、水平板2aに形成された開口にフィルタ1が取り付けられている。また、スクラバー3の出側とデミスター4の入側とがパイプで接続されており、デミスター4の出側と容器2の下部とがパイプで接続されている。そのため、スクラバー3に導入された排気ガスは、スクラバー3およびデミスター4を通った後に、容器2の下部に導かれ、フィルタ1で処理されて容器2の上部に排出されるようになっている。なお、容器2の上部には煙突2bが形成されており、フィルタ1で処理された排気ガスはこの煙突2bから排出されるようになっている。また、容器2の上部と下部との間にはマノメータ5が介在されており、フィルタ1の圧力損失を測定できるようになっている。
【0020】
(実施例1)
上記試験機において、通気度の異なるフェルト濾布を用いて形成したフィルタ1を多数用意し、それぞれに塩化アンモニウムを含有する排気ガスを導入した。この際の圧力損失を計測し、排出された排気ガスの白煙発生状況を目視確認した。
その結果、図4に示すグラフが得られた。なお、フェルト濾布の通気度はメーカーのカタログ値(JIS L1096に規定の方法により測定)を用いた。
【0021】
図4に示すように、通気度が4cm3/cm2/sec以下のフェルト濾布を用いれば、フィルタ1から排出される排気ガスの白煙発生が少量となり、白煙を処理できることが分かった。換言すれば、白煙の原因が排気ガス中に含まれる超微粒子であることから、通気度が4cm3/cm2/sec以下のフェルト濾布は、粒径が概ね1μm未満の超微粒子を濾過捕集できることが分かった。
また、通気度が1cm3/cm2/sec以上のフェルト濾布を用いれば圧力損失が過大とならないことが分かった。そのため、通気度が1〜4cm3/cm2/secのフェルト濾布を用いることが好ましいことが分かった。
【0022】
(実施例2)
上記試験機において、通気度の異なるフェルト濾布を用いて形成したフィルタ1を多数用意し、内筒10を有する場合と、有しない場合とで、それぞれに塩化アンモニウムを含有する排気ガスを導入した。この際の圧力損失を計測した。
その結果、図5に示すグラフが得られた。なお、フェルト濾布の通気度はメーカーのカタログ値(JIS L1096に規定の方法により測定)を用いた。また、圧力損失はフィルタ1に導入される排気ガスのドレン負荷が一定となるように換算した。
【0023】
図5に示すように、フェルト濾布の通気度が1〜4cm3/cm2/secの範囲において、内筒10を有する場合の方が圧力損失を低減できることが分かった。これにより、グラスウール保温筒12とフェルト濾布22とで、フィルタを2段構成にすることにより、圧力損失を低減できることが分かった。
【符号の説明】
【0024】
1 フィルタ
10 内筒
11 支持パイプ
12 グラスウール保温筒
13 上押え部材
14 下押え部材
20 外筒
21 リテーナ
22 フェルト濾布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスの導入側に設けられ、該排気ガス中の粗粒子および微粒子を濾過捕集する第1フィルタと、
前記排気ガスの排出側に設けられ、該排気ガス中の超微粒子を濾過捕集する第2フィルタと、を備える
ことを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
前記第1フィルタはグラスウールであり、
前記第2フィルタはフェルト濾布である
ことを特徴とする請求項1記載のフィルタ。
【請求項3】
通気性を有する支持パイプと、
該支持パイプの外周に設けられたグラスウール保温筒と、
該グラスウール保温筒の外周に設けられたリテーナと、
該リテーナの外周に設けられたフェルト濾布と、を備える
ことを特徴とする請求項2記載のフィルタ。
【請求項4】
前記フェルト濾布の通気度が1〜4cm3/cm2/secである
ことを特徴とする請求項2または3記載のフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−22525(P2013−22525A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160344(P2011−160344)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】