説明

フィルム、積層体およびそれを用いたタイヤ

【課題】空気入りタイヤのインナーライナーに用いることのできる熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物のフィルムであって、疲労によるガスバリア性低下の小さいフィルムを提供する。
【解決手段】本発明のフィルムは、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂成分中にエラストマー成分が分散した熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムであって、前記熱可塑性樹脂または前記熱可塑性樹脂成分および前記エラストマー成分とは反応性を有しない、平均粒径が5μm以上、フィルムの厚さの60%以下である粒子を、フィルムに占める体積比率0.01〜15%の範囲で含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム、およびそのフィルムを含む積層体に関する。特に、本発明は、空気入りタイヤのインナーライナーとして用いることができるフィルムおよび積層体に関する。さらに、本発明は、その積層体を用いて製造された空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤのインナーライナーとして、熱可塑性樹脂フィルムを用いる方法が知られている。たとえば、特許文献1は、空気バリア性および耐久性に優れる、軽量化されたタイヤ内面用インナーライナーとして、エチレン含有量20〜70モル%、ケン化度85%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体60〜99重量%および疎水性可塑剤1〜40重量%からなる樹脂組成物でなるタイヤ内面用インナーライナーを開示している。
【0003】
しかし、熱可塑性樹脂フィルムは、繰返し変形後に、すなわち疲労により、ガスバリア性が大きく低下する場合がある。疲労によるガスバリア性低下を抑制するために、熱可塑性樹脂を変性する方法が知られている。たとえば、特許文献2は、ガスバリア性および耐屈曲性に優れた空気入りタイヤ用インナーライナーとして、エチレン含有量25〜50モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体100重量部に対して、エポキシ化合物1〜50重量部を反応させて得られる変性エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる空気入りタイヤ用インナーライナーを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−52904号公報
【特許文献2】特開2004−176048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、疲労によるガスバリア性低下の小さいインナーライナー用熱可塑性樹脂フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、熱可塑性樹脂フィルムの両面にゴム層を積層し、インナーライナーとして用いたときに、クラック発生によるガスバリア性低下率は、クラックにより失われる熱可塑性樹脂フィルムの面積(クラックの面積)に比例すること、すなわちクラックが少量の場合はガスバリア性の低下が小さいことを知見した。そこで、熱可塑性樹脂フィルムの中に、熱可塑性樹脂との親和力が小さい異物を、破壊の起点として、敢えて存在せしめることにより、繰返し変形を受けたときに、意図的に小さなクラックを発生させ、応力緩和することで、ガスバリア性が大きく低下するほどには熱可塑性樹脂フィルムが疲労しないこと、すなわちガスバリア性の低下が小さいことを見出し、本発明を完成した。
【0007】
本件第1発明は、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂成分中にエラストマー成分が分散した熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムであって、前記熱可塑性樹脂または前記熱可塑性樹脂成分および前記エラストマー成分とは反応性を有しない、平均粒径が5μm以上、フィルムの厚さの60%以下である粒子を、フィルムに占める体積比率0.01〜15%の範囲で含有することを特徴とするフィルムである。
【0008】
前記粒子は、好ましくは、ゴム、クレイ、タルク、炭酸塩、アルミナ水和物および硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
前記フィルムの厚さは、好ましくは、10〜200μmである。
前記エラストマー成分は、好ましくは、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、および無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
前記熱可塑性樹脂は、好ましくは、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66共重合体、ナイロンMXD6、およびナイロン6Tからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
前記熱可塑性樹脂は、好ましくは、エチレン−ビニルアルコール共重合体と、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66共重合体、ナイロンMXD6、およびナイロン6Tからなる群から選ばれる少なくとも1種のナイロン成分とを含む。
熱可塑性エラストマー組成物中のエラストマー成分の平均粒径は、好ましくは、5μm以下である。
【0009】
本件第2発明は、前記のフィルムの少なくとも片面にゴム層が積層されてなる積層体である。
好ましくは、前記フィルムの両面にゴム層が積層されてなる積層体である。
好ましくは、前記ゴム層の一方がカバーゴム層であり、他方がタイゴム層である。
【0010】
本件第3発明は、前記の積層体からなる空気入りタイヤ用インナーライナーである。
【0011】
本件第4発明は、前記の積層体を用いて製造された空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフィルムは、熱可塑性樹脂およびエラストマー成分のいずれとも反応性を有しない粒子を含有することにより、繰返し変形を受けたときに、その粒子が破壊の起点となり、小さなクラックが発生し、応力緩和するので、ガスバリア性の低下が小さい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のフィルムは、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物からなる。
【0014】
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)など)、ポリエステル系樹脂(たとえばポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)など)、ポリニトリル系樹脂(たとえばポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタアクリロニトリルなど)、ポリメタアクリレート系樹脂(たとえばポリメタアクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタアクリル酸エチルなど)、ポリビニル系樹脂(たとえば酢酸ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PDVC)、ポリ塩化ビニル(PVC)など)、セルロース系樹脂(たとえば酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース)、フッ素系樹脂(たとえばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)など)、イミド系樹脂(たとえば芳香族ポリイミド(PI))などを挙げることができる。
なかでも、好ましい熱可塑性樹脂は、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66共重合体、ナイロンMXD6、およびナイロン6Tからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
より好ましくは、熱可塑性樹脂は、エチレン−ビニルアルコール共重合体と、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66共重合体、ナイロンMXD6、およびナイロン6Tからなる群から選ばれる少なくとも1種のナイロン成分とを含む。
【0015】
本発明において、熱可塑性エラストマー組成物とは、熱可塑性樹脂成分中にエラストマー成分が分散したものをいう。熱可塑性エラストマー組成物中において、熱可塑性樹脂成分がマトリックス相を構成し、エラストマー成分が分散相を構成している。
【0016】
熱可塑性エラストマー組成物を構成する熱可塑性樹脂成分としては、前記の熱可塑性樹脂と同一のものを挙げることができる。
【0017】
熱可塑性エラストマー組成物を構成するエラストマー成分としては、ジエン系ゴムおよびその水添物(たとえば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)など)、アクリルゴム(ACM)、含ハロゲンゴム(たとえば、Br−IIR、Cl−IIR、イソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化物(Br−IPMS)など)、シリコーンゴム(たとえば、メチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴムなど)、含イオウゴム(たとえば、ポリスルフィドゴム)、フッ素ゴム(たとえば、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム)、熱可塑性エラストマー(たとえば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、酸変性オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー)などを挙げることができる。
なかでも、好ましいエラストマー成分は、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、および無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0018】
熱可塑性エラストマー組成物中のエラストマー成分の平均粒径は、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは3μm以下である。エラストマー成分の平均粒径が大きすぎると熱可塑性エラストマー組成物の耐久性向上の効果が得られにくい。
【0019】
熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂成分とエラストマー成分とを、たとえば2軸混練押出機等で、溶融混練し、連続相(マトリックス相)を形成する熱可塑性樹脂成分中にエラストマー成分を分散相として分散させることにより、製造することができる。熱可塑性樹脂成分とエラストマー成分の体積比率は、限定するものではないが、好ましくは10/90〜90/10であり、より好ましくは15/85〜85/15である。
【0020】
熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、各種添加剤を含むことができる。
【0021】
本発明のフィルムは、さらに、粒子を含有する。本発明のフィルムが熱可塑性樹脂からなる場合は、その粒子は熱可塑性樹脂と反応性を有しないものでなければならない。また、本発明のフィルムが熱可塑性エラストマー組成物からなる場合は、その粒子は熱可塑性樹脂成分およびエラストマー成分のいずれとも反応性を有しないものでなければならない。ここで、「反応性を有しない」とは、繰返し構造を有する熱可塑性樹脂の極性基と粒子とが、溶融混合時に化学反応を起こさないことをいう。
【0022】
粒子の平均粒径は、5μm以上、フィルムの厚さの60%以下であり、好ましくは、5μm以上、フィルムの厚さの50%以下である。粒子の平均粒径が小さすぎるとクラックの起点となる異物として機能せず、逆に大きすぎると溶融混合時やフィルム成形時の加工性が悪化する。なお、粒子の平均粒径は、SPMやTEMによるモルフォロジー観察により測定することができる。
【0023】
粒子がフィルムに占める体積比率は0.01〜15%であり、好ましくは0.1〜10%である。体積比率が小さすぎるとクラックの起点となる異物の量が少ないため、応力緩和の効果がなく、逆に大きすぎると溶融混合時やフィルム成形時の加工性が悪化する。
【0024】
粒子がフィルムに占める体積比率は、SPMやTEMによるモルフォロジー観察により測定することができる。
【0025】
粒子を構成する物質は、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂成分およびエラストマー成分とは反応性を有しないものであれば、特に限定されないが、好ましくは、ゴム、クレイ、タルク、炭酸塩、アルミナ水和物および硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0026】
粒子を構成するゴムとしては、オレフィン系ゴム(たとえば、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、ブチルゴム(IIR)など)が挙げられるが、なかでもエチレンプロピレンゴムが好ましい。
【0027】
本発明のフィルムの製造方法は、限定するものではないが、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物を、インフレーション成形装置、Tダイ押出機等の成形装置でフィルム状に成形することにより、製造することができる。
【0028】
本発明の積層体は、前記フィルムの少なくとも片面にゴム層が積層されてなる積層体であり、好ましくは前記フィルムの両面にゴム層が積層されてなる積層体である。
【0029】
ゴム層を構成するゴム組成物としては、空気入りタイヤに一般に使用されるゴム組成物が使用できる。たとえば、天然ゴムやスチレンブタジエンゴムなどのゴム成分に、カーボンブラックなどのフィラー、硫黄や酸化亜鉛などの加硫剤、ステアリン酸などの加硫促進助剤、加硫促進剤、粘着剤などを配合したゴム組成物が使用できる。
【0030】
積層体が前記フィルムの両面にゴム層が積層されてなるものである場合は、好ましくは、一方のゴム層がカバーゴム層であり、他方のゴム層がタイゴム層である。カバーゴム層とは、前記フィルムを保護する層であり、その積層体を用いてタイヤを作製したときに最内面にくる層である。タイゴム層とは、前記フィルムとタイヤ本体との接着を良くするために用いる粘着性の中間ゴム層である。カバーゴム層を構成するゴム組成物としては、空気入りタイヤの製造において、カバーゴム層に通常使用されるゴム組成物が使用できる。タイゴム層を構成するゴム組成物としては、空気入りタイヤの製造において、タイゴム層に通常使用されるゴム組成物が使用できる。
【0031】
カバーゴム層の厚さは、限定するものではないが、好ましくは0.1〜3.0μmであり、より好ましくは0.2〜2.0μmである。
タイゴム層の厚さは、限定するものではないが、好ましくは0.1〜5.0μmであり、より好ましくは0.3〜4.0μmである。
【0032】
本発明の積層体は、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物のフィルムにゴム組成物を積層することによって製造することができる。限定するものではないが、より具体的には、ゴム組成物を所定の厚さに圧延してシートを作製し、Tダイ押出機等で作製した前記フィルムの上に積層して圧着することで2層積層体を製造することができる。フィルムの両面にゴム層を積層してなる3層積層体を製造するときは、2層積層体のフィルム面の上に、同様に作製したゴムシートを積層して3層積層体を製造することができる。
【0033】
前記積層体は、空気入りタイヤ用インナーライナーとして用いることができる。
【0034】
本発明の空気入りタイヤは、前記の積層体を用いて製造された空気入りタイヤである。
【0035】
本発明の空気入りタイヤは、常法により製造することができる。たとえば、カバーゴム層、フィルムおよびタイゴム層からなる積層体を用いて空気入りタイヤを製造するときは、タイヤ成形用ドラム上に、積層体を、カバーゴム層側がタイヤ成形用ドラムの方を向くように置き、その上に未加硫ゴムからなるカーカス層、ベルト層、トレッド層等の通常のタイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、成形後、ドラムを抜き去ってグリーンタイヤとし、次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱加硫することにより、空気入りタイヤを製造することができる。
【実施例】
【0036】
実施例1〜4および比較例1〜3
ポリアミド樹脂(宇部興産株式会社製ナイロン6「UBEナイロン」1022B、以下「PA」と略す。)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(日本合成化学工業株式会社製ソアノール(登録商標)A4415、以下「EVOH」と略す。)、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体(三井化学株式会社製タフマー(登録商標)MP0620、以下「変性EP」と略す。)、およびエチレンプロピレンゴム粒子(三井化学株式会社製「三井EPT」3072EM、以下「EPDM」と略す。)を、表1に示す体積比率で配合し、2軸混練機(日本製鋼所製)に投入し、混練機温度220℃で溶融ブレンドした後、押出機から連続してストランド状に排出し、水冷後カッターで切断することによりペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を得た。得られたペレットをミクロトームにより超薄切片を作製し、SPM観察によりモルフォロジー像を得たところ、EPDMの平均粒径は15μmであった。得られた熱可塑性エラストマー組成物を、インフレーション成形装置にてチューブ状に押し出し、直径390mmにブロー成形し、厚さ50μmの熱可塑性エラストマー組成物のフィルムを作製するとともに、成形性を評価した。
【0037】
成形性は、問題なく成形できたときを○、成形できたが難があったときを△、成形できなかったときを×とした。成形性の評価結果を表1に示す。
【0038】
次に、天然ゴム(SIR−20)50質量部、スチレンブタジエンゴム(日本ゼオン株式会社製「Nipol 1502」)50質量部、カーボンブラック(三菱化学株式会社製ダイアブラックG)60質量部、酸化亜鉛(正同化学工業株式会社製「亜鉛華3号」)3質量部、ステアリン酸(日油株式会社製ビーズステアリン酸)0.5質量部、粘着剤(トーネックス社製エスコレッツ1315)15質量部、硫黄(細井化学工業株式会社製5%油展処理硫黄)1質量部、および加硫促進剤(大内新興化学工業株式会社製ノクセラーCZ−G)1質量部を配合したゴム組成物を、一般的な圧延装置にて、0.5mmの厚さに圧延した。得られたゴムシートを、先に作製した熱可塑性樹脂フィルムの上に積層して圧着し、さらに反対面にも同様にゴム組成物を0.5mmの厚さで積層して圧着することで、3層の積層体を作製した。
【0039】
得られた積層体を、175℃で10分間、加熱して加硫した後、ガスバリア性保持率を評価した。ガスバリア性保持率は、初期の通気度および繰返し変形後すなわち疲労後の通気度を測定し、初期通気度Gと繰返し変形後G′の比G′/Gの値が、1.0≦G′/G≦5.0のときを○、5.0<G′/G≦10.0のときを△、10<G′/Gのときを×とした。なお、通気度はJIS K7126−1(差圧法)に準拠して、温度30℃で空気透過係数(cc・cm/cm・sec・cmHg)を測定した。また、繰返し変形後すなわち疲労後の通気度は、上記積層体に室温で20%の伸張疲労を100万回繰り返し与えた後測定した。ガスバリア性保持率の評価結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
実施例5〜7および比較例4〜5
実施例1〜4および比較例1〜3で使用したエチレンプロピレンゴムに代えて、種々の平均粒径のクレイを配合し、それ以外は実施例1〜4および比較例1〜3と同様に、厚さ50μmの熱可塑性エラストマー組成物のフィルムを作製するとともに、成形性を評価し、さらに3層の積層体を作製し、ガスバリア性保持率を評価した。なお、各平均粒径のクレイは、林化成株式会社製タルカンパウダーPK−Sを、株式会社アイシンナノテクノロジーズ製超微粉精密分級機で分級することにより調製した。各成分の配合比率および評価結果を表2に示す。
【0042】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のフィルムおよび積層体は、空気入りタイヤを製造するのに好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂成分中にエラストマー成分が分散した熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムであって、前記熱可塑性樹脂または前記熱可塑性樹脂成分および前記エラストマー成分とは反応性を有しない、平均粒径が5μm以上、フィルムの厚さの60%以下である粒子を、フィルムに占める体積比率0.01〜15%の範囲で含有することを特徴とするフィルム。
【請求項2】
前記粒子が、ゴム、クレイ、タルク、炭酸塩、アルミナ水和物および硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記フィルムの厚さが、10〜200μmであることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記エラストマー成分が、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、および無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66共重合体、ナイロンMXD6、およびナイロン6Tからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂が、エチレン−ビニルアルコール共重合体と、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66共重合体、ナイロンMXD6、およびナイロン6Tからなる群から選ばれる少なくとも1種のナイロン成分とを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項7】
熱可塑性エラストマー組成物中のエラストマー成分の平均粒径が5μm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のフィルムの少なくとも片面にゴム層が積層されてなる積層体。
【請求項9】
前記フィルムの両面にゴム層が積層されてなる請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
前記ゴム層の一方がカバーゴム層であり、他方がタイゴム層であることを特徴とする請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の積層体からなる空気入りタイヤ用インナーライナー。
【請求項12】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の積層体を用いて製造された空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2012−36244(P2012−36244A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175310(P2010−175310)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】