説明

フィルムおよびその製造方法

【課題】耐加水分解性に優れ、且つ、良好な面状を有するフィルムを提供する。
【解決手段】主鎖中に−N=C=N−構造と−N=C(R)−NH−構造とを含むポリマー構造単位(但し、前記主鎖中にはエステル結合は含まれず、前記Rは、一方の末端でC原子と結合しているポリエステル構造を表す。)を含み、且つ、前記ポリマー構造単位として、前記Rを除く部分の数平均分子量が1000〜4000のポリマー構成単位Aと、前記Rを除く部分の数平均分子量が18000以上のポリマー構造単位Bと、を含むポリマーを含むフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールのバックシート等として有用なフィルムとそのフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、一般に、太陽光が入射する受光面側にガラス又はフロントシートの上に/透明な充填材料(以下、封止材ともいう。)/太陽電池素子/封止材/バックシート(以下、BSとも言う)がこの順に積層された構造を有している。具体的には、太陽電池素子は一般にEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)等の樹脂(封止材)で包埋し、更にこの上に太陽電池用保護シートを貼り付けた構造に構成される。また、この太陽電池用保護シートとしては、従来、ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレート(以下、PET)フィルムが使用されている。
【0003】
しかし、太陽電池用保護シート、その中でも特に最外層となる太陽電池用のバックシート(BS)は、屋外の風雨などに曝されるような環境下に長期間置かれる状況が想定されるものであるため、優れた耐候性が求められる。
【0004】
ここで、太陽電池用のバックシートとしても用いられるPET等のポリエステルフィルムは、優れた耐熱性、機械特性及び耐薬品性などを有しているため、工業的に多く用いられているが、耐加水分解性の観点からは未だ改善の余地がある。このようにポリエステルフィルムの耐加水分解性を改善する技術としては、例えば、ポリエステルにポリカルボジイミド等の末端封止材を配合する技術が提案されている(例えば、下記特許文献1〜3参照)。
【0005】
しかし、これらポリカルボジイミドをポリエステルの末端封止剤として用いた技術であっても、未だ耐加水分解性の改善が十分ではなかった。また、さらに耐加水分解性を高めるための方策について、これらの文献には示唆がなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−73719号公報
【特許文献2】特開2009−155479号公報
【特許文献3】特開2010−235824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、屋外で風雨などに曝されるような環境の下、ポリエステルフィルムが湿熱雰囲気下に曝された場合、ポリエステルフィルムの脆化が進行し、破断耐久性が低下するという問題がある。本発明者らが鋭意検討したところ、ポリエステルフィルムが高湿高温下に置かれると、水分がポリエステルフィルムの密度の低い非晶部の分子間を通って内部に進入し、非晶部を可塑化させ分子の運動性を高めることがわかった。更に、分子運動性の高まった非晶部は、ポリエステルのカルボキシル基末端のプロトンを反応触媒として加水分解してしまう。このように、加水分解され低分子量化したポリエステルは分子運動性が更に高まり、結晶化が進行し、これが繰り返される結果、フィルムの脆化が進行し、破断耐久性が低下することが分かった。このように、耐加水分解性を高めることは、特に、太陽電池モジュールに用いられるポリエステルフィルムとしては重要な課題の一つである。また、ポリエステルフィルムを太陽電池モジュールのバックシート等に用いる場合には、耐加水分解性等耐候性の観点とは他に、封止材など他の層との密着性が高いことも求められる。かかる観点では、優れた面状を有することもポリエステルフィルムには好ましい要素となる。
【0008】
本発明は、前記実情を検討してなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、耐加水分解性に優れ、且つ、良好な面状を有するフィルムとその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の構造を有するポリマーを用いてフィルムを製造することにより、耐加水分解性に優れ、且つ、良好な面状を有するフィルムが得られることを見出して、以下の構成を有する本発明を提供するに至った。
[1] ポリマーを含むフィルムであって、
前記ポリマーは、主鎖中に−N=C=N−構造と−N=C(R)−NH−構造とを含むポリマー構造単位(但し、前記主鎖中にはエステル結合は含まれず、前記Rは、一方の末端でC原子と結合しているポリエステル構造を表す。)を含み、且つ、
前記ポリマー構造単位として、前記Rを除く部分の数平均分子量が1000〜4000のポリマー構成単位Aと、前記Rを除く部分の数平均分子量が18000以上のポリマー構造単位Bとを含む
ことを特徴とするフィルム。
[2] 前記ポリマー構造単位が、Rで表されるポリエステル構造を介して他の前記ポリマー構造単位と結合されている部位を含む[1]に記載のフィルム。
[3] 前記ポリマー構造単位が、前記Rで表されるポリエステル構造の他方の末端にOH又はCOOHを有する[1]又は[2]に記載のフィルム。
[4] 前記ポリマー構造単位Aの前記Rを除く部分の数平均分子量が3000〜4000である[1]〜[3]のいずれか一項に記載のフィルム。
[5] 前記ポリマー構造単位Aおよび前記ポリマー構造単位Bの少なくとも一方が、下記一般式(1)で表される構造単位を有する[1]〜[4]のいずれか一項に記載のフィルム。
【化1】

[R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に、炭素数1〜7のアルキル基あるいは水素原子を表す。nは繰返し単位数を示す。]
[6] 前記ポリマー構造単位Aおよび前記ポリマー構造単位Bの少なくとも一方が、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルフェニレン−2,4−カルボジイミド)、ポリ(1,5-ジイソプロピルフェニレン-2、4-カルボジイミド)、1,3,5−トリイソプロピルフェニレン−2,4−カルボジイミドと1,5-ジイソプロピルフェニレン-2、4-カルボジイミドのランダム共重合物に由来する[1]〜[5]のいずれか一項に記載のフィルム。
[7] 前記ポリエステルがポリエチレンテレフタレートである[1]〜[6]のいずれか一項に記載のフィルム。
[8] ポリエステルと、数平均分子量1000〜4000の第一のポリカルボジイミドおよび数平均分子量18000以上の第二のポリカルボジイミドと、を反応させてポリマーを合成する合成工程と、
前記合成工程によって合成された前記ポリマーを成膜してフィルムを形成するフィルム形成工程と、
を含むの製造方法。
[9] 前記合成工程によって、前記ポリエステルの分子末端に前記第1のポリカルボジイミドが結合した部位と、前記ポリエステルの分子末端に前記第2のポリカルボジイミドが結合した部位が形成される[8]に記載のフィルム。
[10] 前記フィルム形成工程によって形成された前記フィルムを延伸する延伸工程をさらに含む[8]または[9]に記載のフィルム。
[11] 前記延伸がニ軸延伸である[9]に記載のフィルム。
[12] MD配向度[Δn(x−z)]とTD配向度[Δn(y−z)]がいずれも0
.14以上である[11] に記載のフィルム。
[13] 前記延伸工程において、前記フィルムに熱処理を施す[10]〜[12]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[14] 前記延伸工程において、前記熱処理を施した前記フィルムを、長手方向(MD)及び幅方向(TD)の両方向について熱緩和処理を施す[13]に記載のフィルムの製造方法。
[15] 前記第一のポリカルボジイミドの数平均分子量が3000〜4000である[8]〜[14]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[16] 前記第一のポリカルボジイミドおよび前記第二のポリカルボジイミドの少なくとも一方が、下記一般式(1)で表される構造単位を有する[8]〜[15]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【化2】

[R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に、炭素数1〜7のアルキル基あるいは水素原子を表す。nは繰返し単位数を示す。]
[17] 前記第一のポリカルボジイミドおよび前記第二のポリカルボジイミドの少なくとも一方が、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルフェニレン−2,4−カルボジイミド)、ポリ(1,5-ジイソプロピルフェニレン-2、4-カルボジイミド)、1,3,5−トリイソプロピルフェニレン−2,4−カルボジイミドと1,5-ジイソプロピルフェニレン-2、4-カルボジイミドのランダム共重合物から選ばれる[8]〜[16]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[18] 前記ポリエステルがポリエチレンテレフタレートである[8]〜[17]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[19] 前記ポリエステルのカルボン酸価が20eq/ton以下である[8]〜[18]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[20] 前記ポリエステルのカルボン酸価が15eq/ton以下である[8]〜[18]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[21] [8]〜[20]のいずれか一項に記載の製造方法により製造されるフィルム。
[22] [1]〜[8]および[21]のいずれか一項に記載のフィルムに、COOH、OH、SO3H、NH2及びその塩から選ばれる少なくとも一つの官能基を含む層を積層したフィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐加水分解性に優れ、且つ、良好な面状を有するフィルムとその製造方法を提供することができる。本発明のフィルムは、太陽電池用のバックシートとして特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のフィルムとその製造方法について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
<フィルムの製造方法>
本発明のフィルムの製造方法は、少なくとも、ポリエステルと、数平均分子量1000〜4000の第一のポリカルボジイミドと、数平均分子量18000以上の第二のポリカルボジイミドと、を反応させて前記ポリエステルの末端に前記第1のポリカルボジイミド及び第2のポリカルボイミドから選ばれる少なくとも一種が結合した部位を含むポリマーを合成する合成工程と、前記合成工程によって合成された前記ポリマーを成膜してフィルムを形成するフィルム形成工程と、を含む。
【0013】
(合成工程)
前記フィルムの製造方法において、合成工程は、少なくとも、(1)ポリエステルと、(2)数平均分子量1000〜4000の第一のポリカルボジイミドと、(3)数平均分子量18000以上の第二のポリカルボジイミドと、を反応させて、前記ポリエステルの末端に前記第1のポリカルボジイミド及び第2のポリカルボイミドから選ばれる少なくとも一種が結合した部位を含むポリマーを合成する工程である。
【0014】
第一のポリカルボジイミドのようなオリゴマー系末端封止剤をポリエステルに配合すると、ポリエステルの末端基と多く作用して、ポリエステルの初期の末端COOH基数に由来する酸価(Acid Value;以下、略して“AV”と称することがある。)を低下させることができる。しかし、このようなオリゴマー系のポリカルボジイミドのみを用いても、ポリエステルの加水分解の反応速度定数を十分に低下させることはできない。一方、第二のポリカルボジイミドのように高分子系末端封止剤を用いるとポリエステルのAVの低下能は十分ではないが、ポリエステルの加水分解の反応速度定数を低下させることができる。しかし、これら第一のポリカルボジイミドと第二のポリカルボジイミドとを組み合わせてポリエステルに配合すると、オリゴマー系のポリカルボジイミドを単独で用いた場合に比してもポリエステルのAVを大幅に低下させることができ、更に、ポリエステルの加水分解の反応速度定数をも十分に低下させることができる。このように低AV化及び低反応速度定数化の両立が実現した作用は明らかではないが、オリゴマー系の第一のポリカルボジイミドを添加することで、高分子系の第二のポリカルボジイミドが十分に拡散しその反応率が向上したためであると推測される。
【0015】
また、このように第一のポリカルボジイミドと第二のポリカルボジイミドとを組み合わせてポリエステルに配合すると、フィルムとした際に活性プロトンを有するフィルムとの密着性が向上するという利点もある。この作用は明らかではないが、分子内でより多くのポリエステルと架橋構造を形成している高分子系の第二のポリカルボジイミドが、フィルム表面近傍に局在しているためであると推測される。
【0016】
−ポリエステル−
前記ポリエステルは、高分子の途中に、−COO−結合、又は、−OCO−結合を有する。また、ポリエステルの末端基は、OH基、COOH基又はこれらが保護された基(ORX基、COORX基(RXは、アルキル基等任意の置換基)であって、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体と、ジオール又はそのエステル形成性誘導体と、から合成される線状飽和ポリエステルであることが好ましい。前記ポリエステルとしては、例えば、2009−155479号公報や特開2010−235824号公報に記載のものを適宜用いることができる。
【0017】
前記線状飽和ポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、このうち、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン−2,6−ナフタレートが、力学的物性及びコストのバランスの点で特に好ましい。
【0018】
前記ポリエステルは、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。更に、前記ポリエステルに他の種類の樹脂、例えばポリイミド等を少量ブレンドしたものであってもよい。また、前記ポリエステルとして、溶融時に異方性を形成することができる結晶性のポリエステルを用いてもよい。
【0019】
前記ポリエステル中の末端カルボキシル基含量(樹脂のカルボン酸価)は、前記ポリエステルに対して20eq/ton以下が好ましく、より好ましくは15eq/ton以下である。カルボキシル基含量が20eq/ton以下であると、耐加水分解性を保持し、湿熱経時したときの強度低下を小さく抑制することができる。前記末端カルボキシル基含量の下限は、後述するポリマーを成膜した本発明のフィルムに形成される層(例えば白色層)との間の接着性を保持する点で、10eq/ton以上が望ましい。前記ポリエステル中の末端カルボキシル基含量は、重合触媒種、重合時間、製膜条件(製膜温度や時間)によって調整することが可能である。前記カルボキシル基含量は、H.A.Pohl,Anal.Chem.26(1954)2145に記載の方法に従って、滴定法にて測定することができる。具体的には、ポリエステルを、ベンジルアルコールに205℃で溶解し、フェノールレッド指示薬を加え、水酸化ナトリウムの水/メタノール/ベンジルアルコール溶液で滴定することで、その適定量からカルボン酸価(eq/ton)を算出することができる。
【0020】
前記ポリエステル中の末端ヒドロキシル基含量は、前記ポリエステルに対して120eq/ton以下が好ましく、より好ましくは90eq/ton以下である。ヒドロキシル基含量が120eq/ton以下であると、ポリカルボジイミドとヒドロキシル基の反応が抑制され、カルボキシル基と優先的に反応し、カルボン酸価をより低下させることができる。ヒドロキシル基含量の下限は、上層との密着性の観点で、20eq/tonが望ましい。前記ポリエステル中のヒドロキシル基含量は、重合触媒種、重合時間、製膜条件(製膜温度や時間)によって調整することが可能である。前記末端ヒドロキシル基含量は、重水素化ヘキサフルオロイソプロパノール溶媒を用いて、1H−NMRにより測定した値を用いることできる。
【0021】
前記ポリエステルの固有粘度(IV)は、フィルムとして成膜した後の固有粘度を後述する好ましい範囲に設定する観点、及び、後述するポリカルボジイミドとの合成時における攪拌性の観点から、0.5〜0.9dl/gが好ましく、0.55〜0.85dl/gが更に好ましく、0.6〜0.85dl/gが特に好ましい。
【0022】
前記ポリエステルの分子量は、耐熱性や粘度の観点から、重量平均分子量(Mw)5000〜30000であることが好ましく、8000〜26000であることが更に好ましく、12000〜24000であることが特に好ましい。前記ポリエステルの重量平均分子量は、ヘキサフルオロイソプロパノールを溶媒として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の値を用いることができる。
【0023】
前記ポリエステルは公知の方法によって合成することができる。例えば、公知の重縮合法や開環重合法などによってポリエステルを合成することができ、エステル交換反応及び直接重合による反応のいずれでも適用することができる。
【0024】
本発明で用いるポリエステル樹脂が、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体と、ジオール又はそのエステル形成性誘導体とを主成分とする縮合反応により得られる重合体ないしは共重合体である場合には、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体とを、エステル化反応又はエステル交換反応させ、次いで重縮合反応させることによって製造することができる。また、原料物質や反応条件を選択することにより、ポリエステルのカルボン酸価や固有粘度を制御することができる。なお、エステル化反応又はエステル交換反応及び重縮合反応を効果的に進めるために、これらの反応時に重合触媒を添加することが好ましい。
【0025】
前記ポリエステルを重合する際の重合触媒としては、カルボキシル基含量を所定の範囲以下に抑える観点から、Sb系、Ge系、及びTi系の化合物を用いることが好ましいが、特にTi系化合物が好ましい。Ti系化合物を用いる場合、Ti系化合物を1ppm以上30ppm以下、より好ましくは3ppm以上15ppm以下の範囲で触媒として用いることにより重合する態様が好ましい。Ti系化合物の割合が前記範囲内であると、末端カルボキシル基を下記範囲に調整することが可能であり、ポリマー基材の耐加水分解性を低く保つことができる。
【0026】
Ti系化合物を用いたポリエステルの合成には、例えば、特公平8−301198号公報、特許第2543624、特許第3335683、特許第3717380、特許第3897756、特許第3962226、特許第3979866、特許第3996871、特許第4000867、特許第4053837、特許第4127119、特許第4134710、特許第4159154、特許第4269704、特許第4313538等に記載の方法を適用できる。
【0027】
前記ポリエステルは、重合後に固相重合されていることが好ましい。これにより、好ましいカルボキシル基含量を達成することができる。前記固相重合は、連続法(タワーの中に樹脂を充満させ、これを加熱しながらゆっくり所定の時間滞流させた後、送り出す方法)でもよいし、バッチ法(容器の中に樹脂を投入し、所定の時間加熱する方法)でもよい。具体的には、固層重合には、特許第2621563、特許第3121876、特許第3136774、特許第3603585、特許第3616522、特許第3617340、特許第3680523、特許第3717392、特許第4167159等に記載の方法を適用することができる。
【0028】
前記固相重合の温度は、170℃以上240℃以下が好ましく、より好ましくは180℃以上230℃以下であり、さらに好ましくは190℃以上220℃以下である。また、固相重合時間は、5時間以上100時間以下が好ましく、より好ましくは10時間以上75時間以下であり、さらに好ましくは15時間以上50時間以下である。固相重合は、真空中あるいは窒素雰囲気下で行なうことが好ましい。
【0029】
−ポリカルボジイミド−
前記ポリカルボジイミドとは、(−N=C=N−)で表される構造(カルボイジイミド基)を有する化合物であり、例えば、適当な触媒の存在下に、有機イソシアネートを加熱し、脱炭酸反応で製造できる。本発明における合成工程においては、数平均分子量が1000〜4000の第一のポリカルボジイミドと、数平均分子量が18000以上の第二のポリカルボジイミドと、が用いられる。ポリカルボジイミドの数平均分子量は、ポリカルボジイミド粉末をクロロホルム、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)及びヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)から選ばれる単一溶媒または2種以上の混合溶媒に溶解し、GPCを用いて分子量分布曲線のカーブを測定することで、ポリスチレンスタンダードから得た数平均分子量を用いることができる。
【0030】
第一のポリカルボジイミドの数平均分子量が、1000未満であると揮散性が大きいため所期のカルボン酸価が高く、反応速度定数も高くなってしまう。また、第一のポリカルボジイミドの数平均分子量が4000を超えるとポリマー鎖の運動性が低いため反応性が乏しく、初期のカルボン酸価が高くなってしまう。前記第一のポリカルボジイミドの数平均分子量としては、揮散性と反応性の観点から、1000〜4000が好ましく、1500〜4000が更に好ましく、3000〜4000が特に好ましい。
【0031】
第二のポリカルボジイミドの数平均分子量が、18000未満であると揮散性が大きくなるため反応速度定数の低下度合いが小さくなってしまう。また、第二のポリカルボジイミドの上限は本発明の効果を損なわない限り特に限定はないが、ポリマー鎖の運動性の観点から、30000以下が好ましい。前記第二のポリカルボジイミドの数平均分子量としては、揮散性とポリマー鎖の運動性の観点から、18000〜30000が好ましく、18000〜28000が更に好ましい。
【0032】
前記ポリカルボジイミドは、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートやこれらの混合物を重合して得られる化合物から選択できる。ポリカルボジイミドの具体例としては、ポリ(1,6−ヘキサメチレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシルカルボジイミド)、ポリ(1,3−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン及び1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)などのポリカルボジイミドなどを挙げることができる。また、市販品としては、ラインケミージャパン(株)製の「スタバクゾール」などを用いることができる。具体的には、第一のポリカルボジイミドとしては、スタバクゾールP(分子量3000〜4000、ラインケミージャパン(株)製)、LA−1(分子量約2000、日清紡ケミカル(株)製)が挙げられる。また、第二のポリカルボジイミドとしては、スタバクゾールP400(分子量約20000、ラインケミージャパン(株)製)やSTABILIZER9000(分子量約20000、Rhein Chemie社製)を挙げることができる。
【0033】
前記ポリカルボジイミドとしては、なかでも芳香族ジイソシアネートを重合して得られる化合物であることが好ましく、以下一般式(1)で表される単位構造を有するポリカルボジイミドであることが好ましい。
【0034】
【化3】

[R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に、炭素数1〜7のアルキル基あるいは水素原子を表す。nは繰返し単位数を示す。]
【0035】
芳香族ジイソシアネートを重合して得られる前記一般式(1)で表される単位構造を有するポリカルボジイミドとしては、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルフェニレン−2,4−カルボジイミド)、ポリ(1,5-ジイソプロピルフェニレン-2、4-カルボジイミド)、及び、それぞれの共重合体を好適に用いることができる。
【0036】
前記第一のポリカルボジイミド及び第二のポリカルボジイミドは、ジイソシアネート(例えば、2,4,6−トリイソプロピルフェニル1,3−ジイソシアネート)と、ホスホレンオキシド(例えば、3−メチルー1−フェニル−2−ホスホレンオキシド)とを、加熱することで合成することができる。ポリカルボジイミドの数平均分子量は、各素材の添加量や反応時間を選択することで制御することができる。
【0037】
−ポリマーの合成−
合成工程においては、前記ポリエステルに、第一のポリカルボジイミド及び第二のカルボジイミドを配合させ、反応させることで、前記ポリエステルの末端に前記第1のポリカルボジイミド及び第2のポリカルボイミドから選ばれる少なくとも一種が結合した部位を含むポリマーが合成される。このとき反応混合物(複数のポリマー分子が混在する混合物中)中には、ポリエステル分子の末端に前記第1のポリカルボジイミドが結合した部位と、前記ポリエステル分子と同一または別のポリエステル分子の末端に前記第2のポリカルボジイミドが結合した部位が混在する。前記ポリエステルと第一及び第二のポリカルボジイミドとの合成は、これらを溶融混合してもよいし、溶液状態で混合しておこなってもよい。また、溶融混合する場合、例えば二軸押出機を用いて混合したり、射出成形などの成型時にポリカルボジイミド化合物を比較的高い濃度で含有するポリエステル(いわゆるマスターバッチ)を芳香族ポリエステル重合体にチップなどの状態で混合し、その後溶融成型する方法も採用することができる。また、前記合成は、固相重合で行うこともできる。前記固相重合とは、例えば、ポリマーを耐真空容器に投入し、容器内を真空にし、攪拌しながら反応させる重合方法等を指す。
例えば、二軸押出機中での反応条件(溶融条件)としては、通常、温度は170℃〜250℃、圧力は0.1MPa〜30MPa、時間は0.1分間〜20分間程度である。また、固相重合の条件としては、通常、温度は170℃〜240℃、時間は0.1分間〜60分間程度である。
【0038】
前記合成工程において、ポリエステル/第1及び第2のポリカルボジイミドの総量の含有比(質量基準)は、泣き出しと耐熱性の観点から、99.99/0.01〜90/10が好ましく、99.95/0.05〜95/5が更に好ましく、99.9/0.1〜99/1が特に好ましい。また、合成工程における第1のポリカルボジイミド/第2のカルボジイミドの含有比(質量基準)は、揮散性、反応性の観点から、1/99〜99/1が好ましく、10/90〜90/10が更に好ましく、30/70〜70/30が特に好ましい。
【0039】
上述のように、ポリエステルの末端基としては、OH基、COOH基又はこれらが保護された基(ORX基、COORX基)挙げられる。例えば、ポリエステルのCOOH(COORX)末端基に、ポリカルボジイミドが結合する場合には、下記のような結合部位(1)が形成される。
【0040】
【化4】

【0041】
また、例えば、ポリエステルのOH基(ORX基)末端に、ポリカルボジイミドが結合する場合には、下記のような結合部位(2)が形成される。
【0042】
【化5】

【0043】
前記合成工程においては、これら結合が連続的に形成され、ネットワーク構造を形成する。即ち、ポリエステルと第一のポリカルボジイミド及び第二のポリカルボジイミドとの反応によって、ポリエステルの末端と、第一のポリカルボジイミド及び第二のポリカルボジイミド中のカルボジイミド基とが結合し、上述のような、前記ポリエステルの末端に前記第1のポリカルボジイミド及び第2のポリカルボイミドから選ばれる少なくとも一種が結合した部位を有するポリマーが合成されることとなる。
【0044】
−−新規なポリマー−−
前記ポリマーの中でも、ポリエステルに、第一のポリカルボジイミドと第二のポリカルボジイミドとの両者が結合したポリマーは新規なポリマーとなる。即ち、前記新規なポリマーは、主鎖中に−N=C=N−構造と−N=C(R)−NH−構造とを含むポリマー構造単位(但し、前記主鎖中にはエステル結合は含まれず、前記Rは、一方の末端でC原子と結合しているポリエステル構造を表す。)を含み、且つ、前記ポリマー構造単位として、前記Rを除く部分の数平均分子量が1000〜4000のポリマー構成単位Aと、前記Rを除く部分の平均分子量が18000以上のポリマー構造単位Bと、を含むポリマーである。当該ポリマーにおいては、前記ポリマー構造単位が、前記Rで表されるポリエステル構造を介して他の前記ポリマー構造単位と結合されている部位を含むことが好ましい。即ち、前記新規なポリマーにおいては、例えば、第一のポリカルボジイミドに対応する前記単位構造Aと、第二のポリカルボジイミドに対応する前記単位構造Bとが、ポリエステルの両末端でそれぞれ結合されている構造を有することができる。この際、同じ単位構造同士がRで表されるポリエステル構造を介して結合されていてもよい。また、前記ポリマーは、前記Rで表されるポリエステル構造の他方の末端にOH又はCOOHが結合された前記−N=C(R)−NH−構造、即ち、一方の末端でポリマー単位構造と結合し、他方の末端基がOH基又はCOOH基であるポリエステル構造を有していてもよい。このような新規なポリマーを模式図で表すと下記のような構造となる。
【0045】
【化6】

【0046】
即ち、前記模式図で示されるポリマーは、主鎖中に−N=C=N−構造と−N=C(R1)−NH−構造とを含み、且つ、前記R1を除く部分の数平均分子量が1000〜4000のポリマー構造単位Aと、主鎖中に−N=C=N−構造と−N=C(R2)−NH−構造とを含み、且つ、前記R2を除く部分の平均分子量が18000以上のポリマー構造単位Bと、を含んでいる。また、前記模式図中、R1及びR2は、それぞれポリエステル構造を示す。前記模式図においては、ポリマー単位構造Aとポリマー単位構造Bとが、単位構造A中のR1を介して、その両末端に結合している。更に、前記模式図においては、ポリマー単位構造Bは、他方の末端基がCOOH基であるポリエステル構造を有する−N=C(R)−NH−構造を有している。
前記合成工程において合成されるポリマー中の末端カルボキシル基含量(樹脂のカルボン酸価)は、前記ポリマーの全量に対して20eq/ton以下が好ましく、より好ましくは15eq/ton以下である。カルボキシル基含量が20eq/ton以下であると、耐加水分解性を保持し、湿熱経時したときの強度低下を小さく抑制することができる。また、微少異物の発生を抑制し、面状に優れたフィルムを作製することができる。前記末端カルボキシル基含量の下限は、後述するポリマーを成膜した本発明のフィルムに形成される層(例えば白色層)との間の接着性を保持する点で、1eq/tonが望ましい。前記カルボキシル基含量は、H.A.Pohl,Anal.Chem.26(1954)2145に記載の方法に従って、滴定法にて測定することができる。具体的には、前記ポリマーを、ベンジルアルコールに205℃で溶解し、フェノールレッド指示薬を加え、水酸化ナトリウムの水/メタノール/ベンジルアルコール溶液で滴定することで、その適定量からカルボン酸価(eq/ton)を算出することができる。
【0047】
前記合成工程において合成されるポリマーの分子量は、フィルム均一性の観点から、重量平均分子量(Mw)6000〜5000000であることが好ましく、10000〜2000000であることが更に好ましく、12000〜1500000であることが特に好ましい。前記ポリマーの重量平均分子量は、ヘキサフルオロイソプロパノールを溶媒として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の値を用いることができる。
【0048】
前記合成工程において合成されるポリマーのガラス転移温度(Tg)は、耐熱性の観点から、20℃〜200℃であることが好ましく、30℃〜160℃であることが更に好ましく、40℃〜120℃であることが特に好ましい。前記ポリマーのガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)等で測定することができる。
【0049】
(フィルム形成工程)
前記合成工程において合成された前記ポリマーは、フィルム形成工程にて成膜されフィルムが形成される。フィルム形成工程においては、前記合成工程において合成されたポリマー(溶融体)をギアポンプや濾過器を通し、その後、ダイを介して冷却ロールに押出し、これを冷却固化させることで(未延伸)フィルムを形成することができる。なお、押出された溶融体は、静電印加法を用いて冷却ロールに密着させることができる。この際、冷却ロールの表面温度は、おおよそ10℃〜40℃とすることができる。
【0050】
(延伸工程)
前記フィルム形成工程によって形成された(未延伸)フィルムは、延伸工程において、延伸処理を施すことができる。前記延伸工程においては、冷却ロールで冷却固化させた(未延伸)フィルムに1つまたは2つの方向に延伸されることが好ましく、2つの方向に延伸されることがより好ましい。前記2つの方向への延伸(ニ軸延伸)は、長手方向(MD:Machine Direction)の延伸(以下「縦延伸」ともいう)及び幅方向(TD:Transverse Direction)の延伸(以下、「横延伸」ともいう)であることが好ましい。当該縦延伸、横延伸は各々1回で行っても良く、複数回に亘って実施しても良く、同時に縦、横に延伸してもよい。
前記延伸処理は、フィルムのガラス温度(Tg)℃〜(Tg+60)℃で行うのが好ましく、より好ましくはTg+3℃〜Tg+40℃、さらに好ましくはTg+5℃〜Tg+30℃である。
【0051】
好ましい延伸倍率は少なくとも一方に280%〜500%、より好ましくは300%〜480%、さらに好ましくは320%〜460%である。ニ軸延伸の場合、縦、横均等に延伸してもよいが、一方の延伸倍率を他方より大きくし不均等に延伸するほうがより好ましい。縦(MD)、横(TD)いずれを大きくしてもよい。ここで云う延伸倍率は、以下の式を用いて求めたものである。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/(延伸前の長さ)
【0052】
前記ニ軸延伸処理は、例えば、フィルムのガラス転移温度である(Tg1)℃〜(Tg1+60)℃で長手方向に1回もしくは2回以上、合計の倍率が3倍〜6倍になるよう延伸し、その後、(Tg1)℃〜(Tg+60)℃で幅方向に倍率が3〜5倍になるよう施すことができる。
【0053】
前記ニ軸延伸処理は出口側の周速を速くした2対以上のニップロールを用いて、長手方向に延伸することができ(縦延伸)、フィルムの両端をチャックで把持しこれを直交方向(長手方向と直角方向)に広げておこなうことができる(横延伸)。
【0054】
前記延伸工程においては、延伸処理の前又はその後、好ましくは延伸処理後に、フィルムに熱処理を施すことができる。前記熱処理を施すことによって、微結晶を生成し、力学特性や耐久性を向上させることができる。180℃〜210℃程度(更に好ましくは、185℃℃〜210℃)で1秒間〜60秒間(更に好ましくは2秒間〜30秒間)の熱処理をフィルムに施してもよい。
【0055】
前記延伸工程においては、前記熱処理後、熱緩和処理を施すことができる。前記熱緩和処理とは、フィルムに対して応力緩和のために熱を加えて、フィルムを収縮させる処理である。熱緩和処理は、フィルムのMD及びTDの両方向に施すことが好ましい。前記熱緩和処理における諸条件は、熱処理温度より低い温度で処理することが好ましく、130℃〜205℃が好ましい。また、前記熱緩和処理は、フィルムの熱収縮率(150℃)がMD及びTDがいずれも1〜12%であることが好ましく、1〜10%が更に好ましい。尚、熱収縮率(150℃)は、測定方向350mm、幅50mmのサンプルを切り出し、サンプルの長手方向の両端近傍300mm間隔に標点を付け、150℃の温度に調整されたオーブンに一端を固定、他端をフリーで30分間放置し、その後、室温で標点間距離を測定し、この長さをL(mm)とし、かかる測定値を用いて、下記式にて熱収縮率を求めることができる。
150℃熱収縮率(%)=100×(300−L)/300
また、熱収縮率が正の場合は縮みを、負は伸びを表わす。
【0056】
<フィルム>
本発明のフィルムは特定の構造を有するポリマーを含有するものである。そのポリマーは、主鎖中に−N=C=N−構造と−N=C(R)−NH−構造とを含むポリマー構造単位(但し、前記主鎖中にはエステル結合は含まれず、前記Rは、一方の末端でC原子と結合しているポリエステル構造を表す。)を含み、且つ、前記ポリマー構造単位として、前記Rを除く部分の数平均分子量が1000〜4000のポリマー構成単位Aと、前記Rを除く部分の数平均分子量が18000以上のポリマー構造単位Bとを含む。
本発明のフィルムは、上記の本発明の製造方法によって作製することができる。即ち、本発明のフィルムは、前記合成工程において合成されたポリマーを含むものである。本発明のフィルムの厚みは、用途によって異なるが、太陽電池用のバックシートとして用いる場合には、25μm〜300μmであることが好ましく、120μm以上300μm以下であることがより好ましい。厚みが25μm以上であることで、十分な力学強度が得られ、300μm以下とすることで、コスト上、有利である。
【0057】
本発明のフィルムは延伸されていることが好ましく、ニ軸延伸されていることがさらに好ましい。本発明のフィルムのMD配向度、及び、TD配向度は、それぞれ0.14以上であることが好ましく、0.155以上が更に好ましく、0.16以上が特に好ましい。各配向度が0.14以上であると、非晶鎖の拘束性が向上し(運動性が低下)、耐湿熱性が向上する。前記MD及びTD配向度は、アッベの屈折率計を用い、光源としては単色光ナトリウムD線を用い、マウント液としてはヨウ化メチレンを用いて25℃雰囲気中で二軸配向フィルムのx、y、z方向の屈折率を測定し、MD配向度:Δn(x−z)、TD
;Δn(y−z)から算出することができる。
【0058】
また、本発明のフィルムの固有粘度(IV)は、フィルムとして成膜した後の固有粘度を後述する好ましい範囲に設定する観点、及び、後述するポリカルボジイミドとの合成時における攪拌性の観点から、0.55〜0.9dl/gが好ましく、0.6〜0.85dl/gが更に好ましく、0.62〜0.82dl/gが特に好ましい。
【0059】
以上説明したように、上述の本発明の製造方法によって、耐加水分解性に優れたフィルムを作製することができる。本発明の製造方法によって得られたフィルムは、後述するように太陽電池モジュールの保護シート(バックシート)として好適に用いることができるのみならず、他の用途にも用いることができる。
また、本発明のフィルムは、その上に、COOH、OH、SO3H、NH2及びその塩から選ばれる少なくとも一つの官能基を含む塗布層を設けた積層体として用いることもできる。本発明のフィルムは、前記合成工程において合成されたポリマーを含むことから、上述のような官能基を有する層との接着性に優れる。
【実施例】
【0060】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0061】
[実施例1]
1.ポリエステル樹脂の作製
−工程(A)−
高純度テレフタル酸4.7トンとエチレングリコール1.8トンとを90分間かけて混合してスラリーを形成し、3800kg/hの流量で連続的に第一エステル化反応槽に供給した。次いで、クエン酸がTi金属に配位したクエン酸キレートチタン錯体(「VERTEC AC−420」、ジョンソン・マッセイ社製)のエチレングリコール溶液を連続的に第一エステル化反応槽に供給し、反応槽内温度250℃として攪拌しながら平均滞留時間約4.3時間で反応を行なってオリゴマーを得た。この際、クエン酸キレートチタン錯体は、Ti添加量が元素換算値で9ppmとなるように連続的に添加した。得られたオリゴマーの酸価は550eq/トンであった。
【0062】
得られたオリゴマーを第二エステル化反応槽に移送し、反応槽内温度250℃・平均滞留時間1.2時間で攪拌して反応させ、酸価が180eq/トンのオリゴマーを得た。第二エステル化反応槽は内部が第1ゾーン〜第3ゾーンまでの3つのゾーンに仕切られており、第2ゾーンから酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液を、Mg添加量が元素換算値で75ppmになるように連続的に供給し、続いて第3ゾーンから、リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を、P添加量が元素換算値で65ppmになるように連続的に供給した。なお、リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液は、25℃のエチレングリコール液に、25℃のリン酸トリメチル液を加え、25℃で2時間攪拌することにより調製した(溶液中のリン化合物含有量:3.8質量%)。
以上により、エステル化反応生成物を得た。
【0063】
−工程(B)−
工程(A)で得られたエステル化反応生成物を連続的に第一重縮合反応槽に供給した。次いで、反応温度270℃・反応槽内圧力20torr(2.67×10-3MPa)でエステル化反応生成物を攪拌しながら、平均滞留時間約1.8時間で重縮合(エステル交換反応)させた。
【0064】
次いで、得られた反応物を、第一重縮合反応槽から第二重縮合反応槽に移送した。その後、反応物を第二重縮合反応槽反応槽において、反応槽内温度276℃・反応槽内圧力5torr(6.67×10-4MPa)で攪拌し、滞留時間約1.2時間の条件で反応(エステル交換反応)させた。
【0065】
次いで、エステル交換反応によって得られた反応物を、第二重縮合反応槽から、更に第三重縮合反応槽に移送し、この反応槽では、反応槽内温度278℃、反応槽内圧力1.5torr(2.0×10-4MPa)で攪拌しながら、滞留時間1.5時間の条件で反応(エステル交換反応)させ、カルボン酸価:24eq/ton、IV(固有粘度):0.65dl/gの反応物(ポリエチレンテレフタレート(PET))を得た。
【0066】
更に、回転型真空重合装置を用いて、50Paの減圧下で、得られたPETに210℃で30時間加熱処理を行った。その後、真空重合装置内に、25℃の窒素ガスを流し、ペレットを25℃まで、冷却し、カルボン酸価14eq/ton、IV0.75dl/gのホリエステル樹脂を得た。
【0067】
<ポリエステル樹脂の評価>
得られたポリエステル樹脂を用いて、カルボン酸価を以下に示す方法により測定した。
【0068】
(樹脂の酸価(末端COOH基量))
得られたポリエステル樹脂について、H.A.Pohl,Anal.Chem.26(1954)2145に記載の方法に従って、滴定法にて末端COOH基量を測定した。具体的には、ポリエステル樹脂を、ベンジルアルコールに205℃で溶解し、フェノールレッド指示薬を加え、水酸化ナトリウムの水/メタノール/ベンジルアルコール溶液で滴定を行った。
【0069】
2.フィルムの作製
−押出成形(合成工程・フィルム形成工程)−
得られた上述のポリエステル樹脂99.7部を、直径50mmの2軸混練押出し機のホッパーに、主フィーダーで投入し、副フィーダーに、ポリカルボジイミド(1)(スタバクゾールP400(分子量約20000、ラインケミージャパン製))0.2部と、ポリカルボジイミド(2)(スタバクゾールP(分子量3000〜4000、ラインケミージャパン製))0.1部とを添加し、280℃で溶融して押出した。押出した溶融体(メルト)をギアポンプ及び濾過器(孔径20μm)を通した後、ダイから20℃の冷却ロールに押出し、非晶性シートを得た。なお、押出されたメルトは、静電印加法を用い冷却ロールに密着させた。また、押出し時に添加剤が揮発や分解する様子(発煙や臭いなど)は見られなかった。
【0070】
−延伸(二軸延伸工程)−
冷却ロール上に押出し、固化した未延伸フィルムに対し、以下の方法で逐次2軸延伸を施し、厚み175μmのポリエステルフィルムを得た。
<延伸方法>
(a)縦延伸
未延伸フィルムを周速の異なる2対のニップロールの間に通し、縦方向(搬送方向)に延伸した。なお、予熱温度を90℃、延伸温度を90℃、延伸倍率を3.5倍、延伸速度を3000%/秒として実施した。
(b)横延伸
縦延伸した前記フィルムに対し、テンターを用いて下記条件にて横延伸した。
<条件>
・予熱温度:100℃
・延伸温度:110℃
・延伸倍率:4.2倍
・延伸速度:70%/秒
【0071】
−熱固定・熱緩和−
続いて、縦延伸及び横延伸を終えた後の延伸フィルムを下記条件で熱固定した。さらに、熱固定した後、テンター幅を縮め下記条件で熱緩和した。
<熱固定条件>
・熱固定温度:200℃
・熱固定時間:2秒
<熱緩和条件>
・熱緩和温度:195℃
・熱緩和率:5%
【0072】
−巻き取り−
熱固定及び熱緩和の後、ポリエステルフィルムの両端を10cmずつトリミングした。その後、両端に幅10mmで押出し加工(ナーリング)を行なった後、張力25kg/mで巻き取った。なお、幅は1.5m、巻長は2000mであった。
以上のようにして、実施例1の二軸配向ポリエステルフィルム(以下、「サンプルフィルム」ともいう。)を作製した。得られたサンプルフィルムはブツや皺などなく面状が良好であった。
【0073】
<ポリエステルフィルム評価>
実施例1にて得られたサンプルフィルムを用いて、下記の測定を行った。
得られた結果を下記表2に示す。
【0074】
(熱収縮率)
−150℃熱収縮率−
測定方向350mm、幅50mmのサンプルを切り出し、サンプルの長手方向の両端近傍300mm間隔に標点を付け、150℃の温度に調整されたオーブンに一端固定、他端フリーで30分間放置した。30分経過後、これをオーブンから取り出し室温で標点間距離を測定し、この長さをL(mm)とした。かかる測定値を用いて、下記式にて熱収縮率を求めた。
150℃熱収縮率(%)=100×(300−L)/300
また、熱収縮率はフィルムのMD方向(長手方向)とTD方向(横方向)の値を測定した。また、各測定値は、幅方向のセンター(C)と両端近傍(F、B)との測定値の平均値である。また、熱収縮率が正の場合は縮みを、負は伸びを表わす。
【0075】
(配向度)
アッベの屈折率計を用い、光源としては単色光ナトリウムD線を用い、マウント液としてはヨウ化メチレンを用いて25℃雰囲気中でx、y、z方向の屈折率を測定した。
MD、TDの配向度はそれぞれ、Δn(x−z)、Δn(y−z)とし、各配向度を算出
した。
【0076】
(フィルムのカルボン酸価(末端COOH量))
サンプルフィルムをベンジルアルコール/クロロホルム(=2/3;体積比)の混合溶液に完全溶解させ、指示薬としてフェノールレッドを用い、これを基準液(0.025NKOH−メタノール混合溶液)で滴定し、その適定量からフィルム酸価に相当するカルボン酸価(eq/ton)を算出した。
【0077】
(破断伸度保持率半減期(hr))
破断伸度保持率半減期の評価は、実施例1にて得られたポリエステルフィルムに対して、120℃、相対湿度100%の条件で保存処理(加熱処理)を行い、保存後のポリエステルフィルムが示す破断伸度(%)が、保存前のポリエステルフィルムが示す破断伸度(%)に対して50%となる保存時間を測定することで評価した。
破断伸度保持率半減期が長い程、ポリエステル樹脂組成物、及びこれを用いて得られたポリエステルフィルムの耐加水分解性が優れていることを示す。
【0078】
(揮散性)
2軸押し出し機のダイから発生する煙、臭いを官能評価し、下記の基準にしたがって揮発性を評価した。
〈基準〉
○:煙・臭いの発生はなかった。
△:煙の発生はなかったが、臭いが発生した
×:煙・臭いが発生した。
揮発性が悪いものは、フィルム表面にエポキシ化合物が付着し、異臭や面状ムラなどのフィルム性能を悪化させていた。
【0079】
(面状)
得られたポリエステルフィルムを目視で観察し、下記の基準に従って面状を目視評価した。
〈基準〉
○:皺やブツが認められず面状が良好であった。
△:部分的に若干の皺又はブツが認められた。
×:全面に皺又はブツが認められた。
【0080】
(反応速度定数)
【数1】

【0081】
〈基準〉
◎:1.3×10-6tоn/mоl/hr未満
○:1.30×10-6tоn/mоl/hr以上、1.35×10-6tоn/mоl/hr未満
△:1.35×10-6tоn/mоl/hr以上、1.40×10-6tоn/mоl/hr未満
×:1.40×10-6tоn/mоl/hr以上、1.45×10-6tоn/mоl/hr未満
××:1.45×10-6tоn/mоl/hr以上
【0082】
[実施例2〜22、及び、比較例1〜11]
上述の実施例1において、「2.フィルムの作製」で用いられたポリエステル樹脂、並びに、第一及び第二のポリカルボジイミドを下記表1に従って適宜変更し、更に、製造条件を表1に従って変更した以外は実施例1と同様にして、各実施例及び比較例のフィルムを得た。実施例21では、縦延伸のみを行って1軸延伸フィルムを得た。実施例22では延伸を行わずに無延伸フィルムを得た。尚、ポリエステルのカルボン酸価及び固有粘度(IV)は、重合条件、固相重合温度、時間を適宜調整することにより制御することができる。
【0083】
【表1】

【0084】
表1中、ポリカルボジイミド(モノカルボジイミド)は以下の通りである。
・スタバクゾールP400:ポリカルボジイミド、数平均分子量約20000、ラインケミージャパン(株)製
・スタバクゾールP:ポリカルボジイミド、数平均分子量3000、ラインケミージャパン(株)製
・カルボジライトHMV−8CA:ポリカルボジイミド、数平均分子量約3000、日清紡ケミカル(株)製)
・STABILIZER9000:ポリカルボジイミド、数平均分子量約20000、Rhein Chemie社製)
・スタバクゾールP100:ポリカルボジイミド、数平均分子量約10000、ラインケミージャパン(株)製)
・スタバクゾールI:モノカルボジイミド、数平均分子量360、ラインケミージャパン(株)製
・製造例1:ポリカルボジイミド、数平均分子量約1400
・製造例2:ポリカルボジイミド、数平均分子量約18000
・製造例3:ポリカルボジイミド、数平均分子量約28000
・製造例4:ポリカルボジイミド、数平均分子量約1000
・製造例5:ポリカルボジイミド、数平均分子量約50000
・製造例6:ポリカルボジイミド、数平均分子量約14000
・製造例7:ポリカルボジイミド、数平均分子量約900
・製造例8:ポリカルボジイミド、数平均分子量約17000
【0085】
前記表1において、製造例1〜6は以下のようにしてポリカルボジイミドを作製した。
【0086】
(製造例1〜6)
2,4,6−トリイソプロピルフェニル1,3−ジイソシアネート1000部と、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレンオキシド10部とを、1時間かけて120℃に昇温し、その後温度は変えず20時間反応を行うことで製造例1のポリカルボジイミドを合成した。GPCから得られたポリカルボジイミドの数平均分子量(Mn)は1400であることが分かった。また、添加量や反応時間を適宜制御し、前記表1に記載の数平均分子量を有する製造例2〜6のポリカルボジイミドを同様の手法で合成した。
【0087】
【表2】

【0088】
表2の結果から分かるように、実施例のフィルムは、反応速度定数が良好であり、且つ、破断伸度保持率半減期(耐加水分解性)も全て160hr以上と良好であった。更に、実施例のフィルムは面状も良好であった。
【0089】
3.太陽電池用バックシートの作製
実施例1〜18、比較例1〜13で作製したポリエステルフィルムを用いて、太陽電池用バックシートを作製した。
まず、実施例1〜18、比較例1〜13で作製したポリエステルフィルムの片面に、下記の(i)反射層と(ii)易接着性層をこの順で塗設した。
【0090】
(i)反射層(着色層)
下記組成の諸成分を混合し、ダイノミル型分散機により1時間分散処理して顔料分散物を調製した。
<顔料分散物の処方>
・二酸化チタン ・・・39.9部
(タイペークR−780−2、石原産業(株)製、固形分100質量%)
・ポリビニルアルコール ・・・8.0部
(PVA−105、(株)クラレ製、固形分10%)
・界面活性剤(デモールEP、花王(株)製、固形分:25%) ・・・0.5部
・蒸留水 ・・・51.6部
【0091】
次いで、得られた顔料分散物を用い、下記組成の諸成分を混合することにより反射層形成用塗布液を調製した。
<反射層形成用塗布液の処方>
・前記の顔料分散物 ・・・71.4部
・ポリアクリル樹脂水分散液 ・・・17.1部
(バインダー:ジュリマーET410、日本純薬工業(株)製、固形分:30質量%)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル ・・・2.7部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・オキサゾリン化合物(架橋剤) ・・・1.8部
(エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、固形分:25質量%)
・蒸留水 ・・・7.0部
【0092】
前記より得られた反射層形成用塗布液を各ポリエステルフィルムにバーコーターによって塗布し、180℃で1分間乾燥して、二酸化チタン塗布量が6.5g/m2の(i)反射層(白色層)を形成した。
【0093】
(ii)易接着性層
下記組成の諸成分を混合して易接着性層用塗布液を調製し、これをバインダー塗布量が0.09g/m2になるように(i)反射層の上に塗布した。その後、180℃で1分間乾燥させ、(ii)易接着性層を形成した。
<易接着性層用塗布液の組成>
・ポリオレフィン樹脂水分散液 ・・・5.2部
(カルボン酸含有バインダー:ケミパールS75N、三井化学(株)製、固形分:24質量%)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル ・・・7.8部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・オキサゾリン化合物 ・・・0.8部
(エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、固形分25質量%)
・シリカ微粒子水分散物 ・・・2.9部
(アエロジルOX−50、日本アエロジル(株)製、固形分:10質量%)
・蒸留水 ・・・83.3部
【0094】
次に、ポリエステルフィルムの(i)反射層及び(ii)易接着性層が形成されている側と反対側の面に、下記の(iii)下塗り層、(iv)バリア層、及び(v)防汚層をポリエステルフィルム側から順次、塗設した。
【0095】
(iii)下塗り層
下記組成の諸成分を混合して下塗り層用塗布液を調製し、この塗布液をポリエステルフィルムに塗布し、180℃で1分間乾燥させ、下塗り層(乾燥塗設量:約0.1g/m2)を形成した。
<下塗り層用塗布液の組成>
・ポリエステル樹脂 ・・・1.7部
(バイロナールMD−1200、東洋紡(株)製、固形分:17質量%)
・ポリエステル樹脂 ・・・3.8部
(スルホン酸含有バインダー:ペスレジンA-520、高松油脂(株)製、固形分:30質量%)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル ・・・1.5部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・カルボジイミド化合物 ・・・1.3部
(カルボジライトV−02−L2、日清紡(株)製、固形分:10質量%)
・蒸留水 ・・・91.7部
【0096】
(iv)バリア層
続いて、形成された下塗り層の表面に下記の蒸着条件にて厚み800Åの酸化珪素の蒸着膜を形成し、バリア層とした。
<蒸着条件>
・反応ガス混合比(単位:slm):ヘキサメチルジシロキサン/酸素ガス/ヘリウム=1/10/10
・真空チャンバー内の真空度:5.0×10-6mbar
・蒸着チャンバー内の真空度:6.0×10-2mbar
・冷却・電極ドラム供給電力:20kW
・フィルムの搬送速度 :80m/分
【0097】
(v)防汚層
以下に示すように、第1及び第2防汚層を形成するための塗布液を調製し、前記バリア層の上に第1防汚層用塗布液、第2防汚層用塗布液の順に塗布し、2層構造の防汚層を塗設した。
【0098】
<第1防汚層>
−第1防汚層用塗布液の調製−
下記組成中の成分を混合し、第1防汚層用塗布液を調製した。
<塗布液の組成>
・セラネートWSA1070(DIC(株)製) ・・・45.9部
・オキサゾリン化合物(架橋剤) ・・・7.7部
(エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、固形分:25質量%)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル ・・・2.0部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・反射層で用いた顔料分散物 ・・・33.0部
・蒸留水 ・・・11.4部
【0099】
−第1防汚層の形成−
得られた塗布液を、バインダー塗布量が3.0g/m2になるように、バリア層の上に塗布し、180℃で1分間乾燥させて第1防汚層を形成した。
【0100】
−第2防汚層用塗布液の調製−
下記組成中の成分を混合し、第2防汚層用塗布液を調製した。
<塗布液の組成>
・フッ素系バインダー:オブリガード(AGCコーテック(株)製) ・・・45.9部
・オキサゾリン化合物 ・・・7.7部
(エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、固形分:25質量%;架橋剤)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル ・・・2.0部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・前記反射層用に調製した前記顔料分散物 ・・・33.0部
・蒸留水 ・・・11.4部
【0101】
−第2防汚層の形成−
調製した第2防汚層用塗布液を、バインダー塗布量が2.0g/m2になるように、バリア層上に形成された第1防汚層の上に塗布し、180℃で1分間乾燥させて第2防汚層を形成した。
【0102】
以上のようにして、ポリエステルフィルムの一方の側に反射層及び易接着層を有し、他方の側に下塗り層、バリア層、及び防汚層を有するバックシートを作製した。
【0103】
(密着性)
得られたバックシートに対して、120℃、相対湿度100%の条件で保存処理(加熱処理)を行い、60時間後の密着性を、テープ剥離試験によって評価した。テープ剥離試験は、碁盤目に切り込みを入れて実施し、下記の基準に従って評価した。結果を前記表2に示す。
○:剥がれ無し。
△:1割未満の剥離が認められた。
×:1割以上の剥離が認められた。
【0104】
前記表2からもわかるように、実施例のフィルムを用いたバックシートは、密着性が良好であった。
【0105】
4.太陽電池の作製
前記のようにして作製したバックシートを用い、特開2009−158952号公報の図1に示す構造になるように透明充填剤に貼り合わせ、太陽電池発電モジュールを作製した。このとき、バックシートの易接着性層が、太陽電池素子を包埋する透明充填剤に接するように貼り付けた。
【0106】
5.太陽電池の概観評価
比較例6〜7、12〜13のポリエステルフィルムは面状が悪く、太陽電池素子と貼り合わせる際、欠陥が生じた。一方、実施例1〜18、比較例1〜5、8〜11のポリエステルフィルムは、面状が良好で欠陥のない太陽電池が作製できた。実施例7〜8、実施例16〜17もやや面状が悪かったが、太陽電池として問題が生じるレベルではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーを含むフィルムであって、
前記ポリマーは、主鎖中に−N=C=N−構造と−N=C(R)−NH−構造とを含むポリマー構造単位(但し、前記主鎖中にはエステル結合は含まれず、前記Rは、一方の末端でC原子と結合しているポリエステル構造を表す。)を含み、且つ、
前記ポリマー構造単位として、前記Rを除く部分の数平均分子量が1000〜4000のポリマー構成単位Aと、前記Rを除く部分の数平均分子量が18000以上のポリマー構造単位Bとを含む
ことを特徴とするフィルム。
【請求項2】
前記ポリマー構造単位が、Rで表されるポリエステル構造を介して他の前記ポリマー構造単位と結合されている部位を含む請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記ポリマー構造単位が、前記Rで表されるポリエステル構造の他方の末端にOH又はCOOHを有する請求項1又は請求項2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記ポリマー構造単位Aの前記Rを除く部分の数平均分子量が3000〜4000である請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項5】
前記ポリマー構造単位Aおよび前記ポリマー構造単位Bの少なくとも一方が、下記一般式(1)で表される構造単位を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルム。
【化1】

[R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に、炭素数1〜7のアルキル基あるいは水素原子を表す。nは繰返し単位数を示す。]
【請求項6】
前記ポリマー構造単位Aおよび前記ポリマー構造単位Bの少なくとも一方が、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルフェニレン−2,4−カルボジイミド)、ポリ(1,5-ジイソプロピルフェニレン-2、4-カルボジイミド)、1,3,5−トリイソプロピルフェニレン−2,4−カルボジイミドと1,5-ジイソプロピルフェニレン-2、4-カルボジイミドのランダム共重合物に由来する請求項1〜5のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項7】
前記ポリエステルがポリエチレンテレフタレートである請求項1〜6のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項8】
ポリエステルと、数平均分子量1000〜4000の第一のポリカルボジイミドおよび数平均分子量18000以上の第二のポリカルボジイミドと、を反応させてポリマーを合成する合成工程と、
前記合成工程によって合成された前記ポリマーを成膜してフィルムを形成するフィルム形成工程と、
を含むの製造方法。
【請求項9】
前記合成工程によって、前記ポリエステルの分子末端に前記第1のポリカルボジイミドが結合した部位と、前記ポリエステルの分子末端に前記第2のポリカルボジイミドが結合した部位が形成される請求項8に記載のフィルム。
【請求項10】
前記フィルム形成工程によって形成された前記フィルムを延伸する延伸工程をさらに含む請求項8又は9に記載のフィルム。
【請求項11】
前記延伸がニ軸延伸である請求項9に記載のフィルム。
【請求項12】
MD配向度[Δn(x−z)]とTD配向度[Δn(y−z)]がいずれも0.14以
上である請求項11に記載のフィルム。
【請求項13】
前記延伸工程において、前記フィルムに熱処理を施す請求項10〜12のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項14】
前記延伸工程において、前記熱処理を施した前記フィルムを、長手方向(MD)及び幅方向(TD)の両方向について熱緩和処理を施す請求項13に記載のフィルムの製造方法。
【請求項15】
前記第一のポリカルボジイミドの数平均分子量が3000〜4000である請求項8〜14のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項16】
前記第一のポリカルボジイミドおよび前記第二のポリカルボジイミドの少なくとも一方が、下記一般式(1)で表される構造単位を有する請求項8〜15のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【化2】

[R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に、炭素数1〜7のアルキル基あるいは水素原子を表す。nは繰返し単位数を示す。]
【請求項17】
前記第一のポリカルボジイミドおよび前記第二のポリカルボジイミドの少なくとも一方が、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルフェニレン−2,4−カルボジイミド)、ポリ(1,5-ジイソプロピルフェニレン-2、4-カルボジイミド)、1,3,5−トリイソプロピルフェニレン−2,4−カルボジイミドと1,5-ジイソプロピルフェニレン-2、4-カルボジイミドのランダム共重合物から選ばれる請求項8〜16のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項18】
前記ポリエステルがポリエチレンテレフタレートである請求項8〜17のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項19】
前記ポリエステルのカルボン酸価が20eq/ton以下である請求項8〜18のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項20】
前記ポリエステルのカルボン酸価が15eq/ton以下である請求項8〜18のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項21】
請求項8〜20のいずれか一項に記載の製造方法により製造されるフィルム。
【請求項22】
請求項1〜8および21のいずれか一項に記載のフィルムに、COOH、OH、SO3H、NH2及びその塩から選ばれる少なくとも一つの官能基を含む層を積層したフィルム。

【公開番号】特開2013−28756(P2013−28756A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166959(P2011−166959)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】