説明

フィルムおよび偏光反射体ならびにその製造方法。

【課題】 フィルムの大面積にわたって物性ムラの小さい光学用途に好適に使用できるフィルムを提供すること
【解決手段】 結晶性ポリエステルからなり、示差走査熱量測定(DSC)による2ndRunにおける、結晶化ピーク温度(Tc)とガラス転移点温度(Tg)との差ΔTcgが60℃以下、かつ、分子配向計にて測定されたフィルム面内におけるMORが3以上であり、配向角度の偏差が±2°以内であることを特徴とするフィルムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムとして有用なフィルムおよび偏光反射体、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子をキャスト・製膜してフィルムを得る方法はフィルム状物を得る生産性の高い方法として良く知られており、ポリエチレンテレフタレートは代表的な素材である。そして、ポリエチレンテレフタレートを用いて位相差フィルムや輝度向上フィルムのような光学フィルムを作製することが提案されている。(特許文献1、特許文献2)
一方、係る光学フィルムはその光学的性質を利用するものであるところ、光学フィルムは液晶表示装置のような非常に機微な用途に用いられるものが多く、フィルム面内において光学的性質は均質であることが強く求められている。例えば、偏光フィルムや位相差フィルムはフィルム面内で光学的な異方性をもつフィルムであるが、その配向軸の方向がフィルム面内で一定でなかったり、配向度の大きさにばらつきがあると表示品質に影響を生じるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−162419号公報
【特許文献2】特開2003−526802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、かかる問題を解決するべく、フィルムの大面積にわたって物性ムラの小さい光学用途に好適に使用できるフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、前記課題を解決する本発明の本旨とするところは、結晶性ポリエステルからなり、示差走査熱量測定(DSC)による2ndRunにおける、結晶化ピーク温度(Tc)とガラス転移点温度(Tg)との差ΔTcgが60℃以下、かつ、分子配向計にて測定されたフィルム面内におけるMORが3以上であり、配向角度の偏差が±2°以内であることを特徴とするフィルム、であり、また、後述する種々の好ましい態様である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によって、フィルムの大面積にわたって物性ムラの小さいフィルムを得ることができ、その光学的機能を利用する分野において使用することで光学的なムラのない品位の高い製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】偏光反射体について説明する図
【図2】球晶成長速度と温度との関係を説明する図
【図3】フィルムエッジとフィルムエッジ以外のフィルム部の温度制御を分離して行う手段の例を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らは、かかる光学フィルムにおける光学的性質が一様でないという前記従来技術の問題は、フィルムの製膜工程においてフィルムに加わる延伸応力が一様でないために発生することを発見した。以下、これについて詳説する。
【0009】
すなわち、分子鎖の配向差を利用して光学的異方性を獲得する光学異方性フィルムを例に挙げて説明すると、分子鎖の配向差はある方向の延伸倍率が他の方向の延伸倍率よりも低くすることにより実現されるところ、光学異方性フィルムでは異方性をなるだけ大きくすることが求められるため、一方向のみにしか延伸しないことが殆どである。そして、生産性の観点およびロールによる擦過キズを避けるというフィルム表面品位の観点で、ロールによる縦延伸によるのではなく、テンターによる横一軸延伸が専ら用いられて光学異方性フィルムは製造される。
【0010】
しかしながら、横延伸はテンター内でフィルム両端をクリップにて把持し、両端のクリップ間距離を広げることによって行なわれるのであるが、テンターの構造的な制約上、隣り合うクリップ間では一定の距離を開けてフィルムを把持しなければならない。そのため、クリップで把持された部分には十分な延伸張力が発生するが、把持されていない部分の延伸張力は低くなり、延伸すると長手方向に張力ムラが発生したり、クリップで把持されていない部分は延伸張力によってフィルム内側に引き込まれたりする。この延伸張力ムラ及び延伸のムラによって分子鎖の配向にムラが発生し、ひいてはフィルムの光学的性質にムラが発生するのである。
【0011】
また更に、通常は熱収縮率を低下させるために熱処理が行われるのであるが、該工程ではフィルムに熱が加わることで、幅方向に縮もうとする応力が発生するためにクリップで把持されていない部分はフィルム内側に引き込まれ、結果、光学的性質のムラを更に増大させる。
【0012】
本発明は、光学フィルムにおける光学的性質のムラが分子鎖の配向のムラによるものであり、かかる分子鎖の配向ムラがどのようにして起きるかを探究した結果到達されたものである。
【0013】
以下に本発明について図面を参照しつつ詳細に述べるが、本発明は以下の実施例を含む具体的な実施形態に限定して解釈されるものではなく、発明の目的を達成できて、かつ、発明の要旨を逸脱しない範囲内である限り種々の変更は当然本発明の範囲に含まれる。
【0014】
本発明のフィルムは、結晶性ポリエステル(以下、便宜的に結晶性ポリエステルAとも称する)が用いられる。ポリエステルとはエステル結合でもって2価の有機基が連結されて構成された高分子であり、典型的な製造方法としてはジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合、あるいは、ヒドロキシカルボン酸の重縮合によって合成される。代表的なものとしてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。本発明で使用される結晶性ポリエステルAは結晶性を有していれば共重合体であっても2種以上のポリエステルがブレンドされたものであって良い。なお、結晶性とは、示唆走査熱量分析(DSC)の2ndRunにおいて結晶化に由来するピークが観察される性質をいう。本発明では結晶性や屈折率が高く、均質な光学フィルムが得やすいことから結晶性ポリエステルAとしてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく用いられ、中では、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0015】
また、後述する偏光反射体においては結晶性ポリエステルAとは光学的性質が異なるポリエステル(以下、便宜的にポリエステルBとも称する)が結晶性ポリエステルAと共に使用される。詳細は後述するが、光学的性質が異なるとは、屈折率が異なることをいう。偏光反射体は異なる屈折率の樹脂界面における反射を利用するものであるため屈折率差は高ければ高いほど望ましい。しかし、屈折率は分子構造に依存する部分があり、余りに分子構造が異なる樹脂を採用すると層間の界面の密着性に劣るおそれがある。このため、結晶性ポリエステルAとポリエステルBとは光学的性質が異なるポリエステルとの溶解度パラメータの差としてはなるだけ近い値のものを用いることが望ましい。なお、このポリエステルBは必ずしも結晶性を有している必要はない。しかし、結晶性を有していない場合はポリエステルBによる層は偏光反射体全体の50体積%以下、望ましく30体積%以下とすることが本発明の目的に照らして望ましい。
【0016】
本発明に用いる結晶性ポリエステルAは、示差走査熱量分析(DSC)による2ndRunにおける、結晶化ピーク温度(Tc)とガラス転移点温度(Tg)との差ΔTcgが60℃以下、かつ、分子配向計にて測定されたフィルム面内におけるMORが3以上であり、配向角度の偏差が±2°以内であることを満たす必要がある。
【0017】
ここでいう面内方向とは、フィルム表面若しくはフィルム表面に平行な面における任意の方向をいう。本発明では、長手方向あるいは幅方向がそれぞれ一定の方向を指すのに対して同一平面(フィルム表面若しくはフィルム表面に平行な面)上の不定の方向の意味で用いている。
【0018】
本発明のフィルムは、示差走査熱量測定(DSC)の2ndRunにおける、結晶化ピーク温度(Tc)とガラス転移点温度(Tg)との差ΔTcgが60℃以下である必要がある。DSCによる測定結果は1stRunでは、製造プロセスの履歴がチャートに表れるが、2ndRunでは製造プロセスの履歴は消え樹脂そのものの性質が表れる。該ΔTcgは結晶化速度と関連付けられ、値が低くなるほど、結晶化速度が速くなることを意味するが、該ΔTcgを60℃以下とすることによって前述の延伸による分子鎖の配向ムラを抑制することができる。すなわち、係る特性を具備することによって、幅方向に延伸する前にフィルム端部を結晶化温度近傍で加熱してフィルム端部の結晶化を進行させることができ、この結晶化が進んだフィルム端部が横一軸延伸時においてクリップに把持されていない部分に剛性を与え、延伸時における延伸張力及び延伸ムラを抑制し、また、クリップで把持されていない部分を支持する作用を発揮するため、分子鎖の配向ムラが抑制され、光学的性質のムラが抑制されるのである。前記ΔTcgはより好ましく50℃以下であり、さらに好ましくは40℃以下である。該ΔTcgが低いほど分子鎖の配向ムラを抑えることに有利であるので、該△Tcgの下限は特に限定されないが低くなりすぎると、フィルム端部以外の部分の結晶化が進みすぎて延伸が困難になる場合もあるため、前記ΔTcgは20℃以上とすることが適当である。前記ΔTcgを60℃以下とする方法としては、固有粘度(IV)の低い結晶性ポリエステルを用いる方法や結晶核剤を添加する方法などがあげられるが、後者による方法がフィルムの機械特性に優れたものとできるので望ましい。
【0019】
本発明のフィルムは、分子配向計にて測定されたフィルム面内におけるMORが3以上であることが必要である。MORはフィルム面内方向における誘電率の最大値と最小値の比を表す。MORが大きくなるほど、光学的異方性の大きなフィルムとできるので望ましい。その達成方法はフィルムを幅方向に一軸方向に延伸することである。より好ましい値は3.5以上であり、さらに好ましくは4以上である。
【0020】
本発明のフィルムは配向角度の偏差が±2°以内であることが必要である。すなわち、分子鎖の配向のムラが小さいフィルムとすることによって光学的性質の均質性が保たれる。配向角度の偏差が±2°よりも大きい場合は、要求される品質を満たす部位のみしか製品とできないため収率が低下する。また、液晶ディスプレイのような大面積のフィルムが必要とされる用途には使用が困難である。前記配向角度の偏差は、より好ましく、±1°以内であり、さらに好ましくは±0.5°以内である。前記配向角度の偏差を上記範囲とするためには、幅方向に延伸する前にフィルム端部を結晶化させることが簡便であり、先述したとおり、フィルム把持部とフィルム把持部の間の延伸張力及び延伸ムラを小さくすることで、均一な延伸を行うことができ、また、熱処理時のフィルムの引き込まれを防止できる。
【0021】
前記したとおり、本発明のフィルムに用いる結晶性ポリエステルAは、結晶核剤を含むことが好ましいが、結晶核剤としては、一般にポリマーの結晶核剤として用いられるものを特に制限なく用いることができ、無機系結晶核剤および有機系結晶核剤のいずれをも使用することができる。無機系結晶核剤の具体例としては、タルク、カオリン、モンモリロナイト、合成マイカ、クレー、ゼオライト、シリカ、グラファイト、硫化カルシウム、窒化ホウ素、アルミニウムや、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ネオジウム等の金属酸化物、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩、硫酸バリウム等の金属硫酸塩等を挙げることができる。これらの無機系結晶核剤は、組成物中での分散性を高めるために、有機物で修飾されていることも好ましい。また、有機系結晶核剤の具体例としては、酢酸、シュウ酸、プロピオン酸、ブチル酸、オクタン酸、ステアリン酸、モンタン酸、安息香酸、テレフタル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、トルイル酸、サリチル酸、ナフタレンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸など各種有機カルボン酸や、p-トルエンスルホン酸、スルホイソフタル酸など各種有機スルホン酸とナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、アルミニウム等の各種金属との組み合わせによる有機カルボン酸金属塩、有機スルホン酸金属塩、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)などの有機カルボン酸アミド、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリビニルシクロアルカン、ポリビニルトリアルキルシラン、高融点ポリ乳酸などのポリマー、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸コポリマーのナトリウム塩、スチレン−無水マレイン酸コポリマーのナトリウム塩などのカルボキシル基を有する重合体のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩(いわゆるアイオノマー)、ベンジリデンソルビトールおよびその誘導体、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートなどのリン化合物金属塩、および2,2−メチルビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウムなどを例示することができるがこれらに制限されない。また、上記結晶核剤は複数種用いられて構わない。
【0022】
上述の結晶核剤の中でも特にカルボン酸塩を用いることがこのましい。カルボン酸塩の中では、炭素数10以上の長鎖脂肪族カルボン酸塩が好ましく。炭素数が多くなるほど、異物が抑制されフィルムの透明性が向上する。
【0023】
本発明のフィルムは、光学フィルムとして好適に用いられるものであるが、偏光性や反射性を利用するものであることがより本発明の効果を活かすことができる。そのようなフィルムには、高分子の層を多数積層して干渉反射性を発現させるフィルムが挙げられる。例えば、特開2007−307893号公報に記載されているようなポリエチレンテレフタレートからなる層とポリエチレンテレフタレートの共重合体からなる層とが交互にそれぞれ50層以上積層されたフィルムが例として挙げられる。
【0024】
本発明の偏光反射体は、結晶性ポリエステルAからなるフィルムで構成された層(A層)と、ポリエステルBからなるフィルムで構成された層(B層)が交互にそれぞれ50層以上積層され、下記(1)式および(2)式を満たしている。このようなフィルムにおいては、分子鎖の配向のムラは光学特性のムラとして目立つものとなるので、先述したような延伸時の分子鎖の配向のムラを抑制するために、前記A層を構成する結晶性ポリエステルAのΔTcgが60℃以下、好ましく、50℃以下であり、さらに好ましくは40℃以下のものを用いることが挙げられる。また、エッジを熱結晶化させた際に十分な剛性を持たせるために、A層とB層の層厚み比(A層/B層)は0.5以上が好ましい。この場合は、偏光反射体が前記した本発明のフィルムと同様の作用を持つようになり、より強く分子鎖の配向ムラを抑制するために先述の延伸時におきる諸問題の影響が該光学フィルムに及ぶことを抑制できるのである。
【0025】
Rmin≦40% ・・・(1)式
Rmax≧70% ・・・(2)式
ここで、Rmin、Rmaxは、波長550nmの偏光を該偏光反射体の表面に対して入射角0°で照射し、該偏光反射体を入射光軸を中心に半回転させたときの反射率(%)の最小値(Rmin)と最大値(Rmax)である。半回転とは、フィルム面内にて180°回転させることである。
【0026】
前記A層とB層の積層はその製造が簡便であり層厚みの制御も容易であることから、溶融した結晶性ポリエステルAとポリエステルBをダイ内部で積層して吐出後に冷却固化してそれぞれの層をフィルム化する、共押出法によって積層することが望ましい。
【0027】
本発明の偏光反射体において、A層とB層は異なる光学的性質を有する。A層とB層との屈折率差としては、偏光反射体としたときにおいて好ましく0.03以上、更に好ましく0.05以上の屈折率差を有することが望ましい。屈折率差は面内方向の屈折率において異なることが望ましく、その結果該2種の樹脂層の界面において光が反射されるようになり、多層化することで干渉反射作用が表れる。本発明において異なる光学的性質を有する熱可塑性樹脂としては、1種は結晶性樹脂を用い、もう1種は非晶性樹脂を用いることが好ましい。結晶性樹脂と非晶性樹脂を用いて作製されたシート状物を、面内方向の一軸延伸または二軸延伸(この場合、一方向の延伸倍率は他方向の延伸倍率よりも大きい)を行い、熱処理器内で結晶性樹脂の融点以下、非晶性樹脂のガラス転移点以上の温度にて熱処理を行うことで、結晶性樹脂の層は非晶領域の配向が緩和し結晶領域の結晶化が促進し、非晶性樹脂の層は配向が緩和し無配向状態とできる。その結果、結晶性樹脂の層は複屈折性を持ち、非晶性樹脂の層は複屈折性を持たないため、偏光反射性が獲得される。また、熱を加えても配向緩和および熱結晶化が抑制されるため、熱収縮率を抑制できる。
【0028】
B層に用いるポリエステルBとしては、ポリエチレンテレフタレートの共重合体が望ましく用いられ、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールを主たる構成成分とする単量体からの重合により得られるポリエステルが好ましい。ここで、芳香族ジカルボン酸として、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4′-ジフェニルジカルボン酸、4,4′-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′-ジフェニルスルホンジカルボン酸などを挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。中でも好ましくはテレフタル酸と2,6ナフタレンジカルボン酸を挙げることができる。これらの酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよく、さらには、ヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸などを一部共重合してもよい。
【0029】
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、スピログリコールなどを挙げることができる。中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0030】
共重合量としては、屈折率差を獲得する必要性から10%以上が好ましく、一方、層間の密着性や、熱流動特性の差が小さいため各層の厚みの精度や厚みの均一性に優れることから90%以下が好ましい。さらに好ましくは15%以上、80%以下である。前記のとおり、他の成分に置き換えることで非晶性を示すことが望ましいことはいうまでもない。
【0031】
本発明の偏光反射体において、積層数を増やすことは、高い光反射性能を達成できるので、100層以上とすることが望ましく、より好ましくは400層以上、さらに好ましくは800層以上である。またさらに好ましくは、1600層以上である。積層数は多いほど高い反射率を実現でき、また、後述する層厚みの調整と加えて反射帯域幅を拡げることができるが、積層装置の大型化の観点から上限としては3000層程度である。
【0032】
偏光反射性とは、ある方位に振動面を持つ光を選択的に反射する性質であり、その結果、反射する光も透過する光にも偏光性を持たせることができる。本発明の偏光反射体のRminを示す方位角における透過光(Tmax)の強度が(100−Rmin)から−5%以内、望ましく−2%以内、の範囲であれば、透過光の利用に極めて有利である。また、Rminとしては30%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下であることが透過光の利用効率を高めることになる。また、透過光において高い偏光性を得ることができるため、Rmaxは80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。また、反射光を利用する場合では、Rmax−Rminは好ましく50%以上、より好ましく70%以上、さらにこのましく90%以上である。以下、Rminとなる方位角を透過軸、Rmaxとなる方位角を反射軸と定義する。
【0033】
本発明の偏光反射体において前記の偏光反射性の実現のためには、交互に積層された熱可塑性樹脂からなる層の透過軸方向の屈折率の差が0.04以下であることが好ましく、より好ましくは0.02以下、さらに好ましくは0.01以下である。また、交互に積層された熱可塑性樹脂からなる層の反射軸方向における屈折率の差は0.08以上であることが好ましい、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.12以上である。屈折率の差が大きいほど偏光反射率が高くなり、より少ない層数で高い偏光反射性を実現することができ、また、実際に液晶ディスプレイに実装した際の輝度の向上の効果も大きくなる。
【0034】
ここで、方位角について図を用いて説明する。図1に偏光反射体の表面の上面図を示す。ここで図1中の1はフィルム幅方向、2はフィルム長手方向を示し、それぞれ直角の関係を持つ。偏光反射体に0°の入射角度で入射する偏光の振動方向を4とすると、方位角とは、偏光の振動面4とフィルム長手方向2とで挟まれた角度5のことである。
【0035】
本発明の偏光反射体は、フィルム幅方向の少なくとも1箇所にて、(1)、(2)式を満足していなければならない。より好ましくは、フィルム幅方向の全体においても、(1)、(2)式を満足していることが好ましい。多層積層フィルムの場合、フィルム製膜では、通常、積層ムラや厚みムラ、ボーイングなどが原因でフィルム幅方向物性が異なることで、ディスプレイなどに実装した場合に偏光性能にムラが生じる場合があるが、フィルム幅方向の全体においても、(1)、(2)式を満足していることで均一な偏光性能を保持した偏光反射体を提供できる。このような偏光反射体を製造するための一つの方法として、光学特性の異なる複数の層が交互積層された多層積層フィルムの干渉反射機能を利用する方法がある。ここで、干渉反射は各層間の屈折率差に由来して生じるものであるが、ある方位角では各層間の屈折率差を付与し、前記の方位角と異なる方位角においては各層間の屈折率差を等しくすることにより、偏光反射特性が付与できるものである。
【0036】
本発明の偏光反射体は、ディスプレイ用バックライトユニットに用いることで正面輝度を向上させることができるようになる。バックライトユニットに用いる場合に好ましい構成の一例を以下に記載するが、バックライトユニットの構成は各部材の光学設計に依存するものであり、ここで示す例に限られるものではなく、必要に応じてその他の光学フィルムなどを含めてもよい。
本発明の偏光反射体は結晶性ポリエステルA、特に好ましくポリエチレンテレフタレート、による層を最表層に設けることが好ましい。先述のとおりポリエチレンテレフタレートは高い結晶性を有しているため、ポリエチレンテレフタレートによる層を最表層に設けることで偏光反射体とテンタークリップの粘着を一層効果的に防止することができる。テンタークリップと粘着すると、テンター出口にてクリップから離れる際に、フィルムに強い衝撃が加わり、フィルムが破断しやすくなり生産性が低下する。特に、一方に強く延伸されたフィルムは該延伸方向に裂け易い性質を持つため、クリップの粘着は避けるべきである。また、フィルムの擦過キズを防ぐ作用も期待できる。
【0037】
本発明の偏光反射体を含んだバックライトユニットの好ましい構成は、底面から、反射体、光源(例えば、ランプ)、拡散体、偏光反射体、偏光体の順番で配置されてなるものが典型的なものである。光源から照射された光は、直接に、もしくは、底面に配置された反射体にて反射されて、バックライト上面へと指向される。指向された光は、拡散板にて輝度が均一化された後、液晶ユニットでの表示のために偏光体にて光の偏光方向が一律化される。ここで、偏光反射体を用いない場合には、偏光体にて光の約半量が偏光体にて吸収されるために、ライトから照射された光量に対して実際に表示に用いられる光量が大幅に低下するが、偏光反射体が用いられることで偏光体の透過振動面に垂直な方向の成分を持つ光を反射し、再帰利用することで偏光体において光の吸収を大きく抑制でき、ランプからの光をより有効に利用でき、輝度を向上させることができるようになる。また、底面に配置される反射体を拡散反射体とすることにより、偏光反射体から反射された光の振動面を変えることができ、偏光反射体にて反射された光は再び利用可能な光へ変換されて、より輝度向上を達成できる。また偏光反射体を拡散体の下面に配置することにより、微小なフィルム厚みの差で生じる色ムラを抑制でき、高品位のディスプレイとなる。
【0038】
本発明の成形体とは、本発明の偏光反射体とある形状を有した樹脂体とが一体化されたものをいい、インサート成形品として得ることが簡便である。本発明の偏光反射体と一体成型する樹脂成形体の好ましい例として、光拡散機能を持った樹脂成形体が挙げられる。偏光反射性と光拡散性の両方の機能を一つの成形体にまとめることで、液晶ディスプレイ用バックライトユニットを組み立てる際に、偏光反射体と拡散板それぞれを設置する手間が省け、組み立て効率が高まる。また、液晶ディスプレイ用バックライトユニットを組み立てる際、バックライトユニットの構成上、偏光反射体は最後に設置されるが、偏光反射体を剛性の高い樹脂成形体とフィルムインサート成型することによって、フィルムインサート成型品は設置された各部材を抑える役割を担うことができ、組み立て効率が高まる。フィルムインサート成型品とは、一般にフィルムを金型(mold)に挿入し、次いで加熱流動化した成形材料(射出樹脂)を、その金型に流し込むことによって製造されるタイプの射出成型品のことである。フィルムインサート成型の条件としては、成形樹脂の射出温度は、樹脂の溶融温度であり、一般的にアクリル系では240℃前後、ポリエステル系では280℃前後、ポリアミド系では200℃前後であることが知られている。その他、ポリスチレン、ポリカーボネートなどは270℃前後であり、用いる樹脂に合わせて決定すれば良い。また、金型温度は、本発明の偏光反射体の成形性と接着性の観点から、80℃以上150℃以下であることが好ましい。なお、本発明の偏光反射体の成形体へ意匠性を付与するために、インサートする樹脂、あるいは印刷層は、黒、灰色、青などの着色したものが好ましい。但し、ディスプレイ部材に用いられる場合は、インサート樹脂は、無色透明のポリカーボネート、アクリルが好ましく、印刷層はなくても良い。
【0039】
また、フィルムインサート成型の際に、本発明の偏光反射体を金型に挿入する前に、金型プレス成形、真空成形、真空圧空成形、超高圧成形で予備成型してあることが好ましい。これらの成形方法は、本発明の偏光反射体をクランプ金枠にはさんでヒータで加熱軟化させた後、それぞれの成形方法を適用するものである。金型プレス成形では、雄雌の金型でフィルムをプレスして成形する方法であり、真空成形では、あらかじめ型のコーナーに真空孔を設けた雄型、または雌型を突き上げて真空吸引して成形する方法であり、真空圧空成形は、前記工程にプラスして、型突き上げと同時に圧空箱を降下させ、この中に圧空を加えることにより、大気圧にかわって大きな成形圧力でシートを型に密着成形する方法である。超高圧成形は、吸引がなく、非常に高い圧力のみで型にフィルムを押しつけて成形する方法である。本発明の偏光反射体の加熱温度は、成形方法にもよるが、フィルム破れ、変色を少なくする観点から90℃以上250℃以下であることが好ましい。一方、金型温度についても同様であり、70℃以上150℃以下であることが好ましい。空気圧についても、成形方法によるが、真空圧空の場合、0.5MPa〜5MPa程度が好ましく、超高圧成形の場合は、5MPa〜20MPa以下であることが好ましい。真空度も同様な理由から、差圧表示で100mmHg以下であることが好ましい。
【0040】
本発明において、光学的性質のムラの小さいフィルムを得る方法としては、横一軸延伸前または、横一軸延伸中にフィルムエッジを結晶化させることで達成できる。エッジ加熱温度Tは、図2に示す球晶成長速度と温度との関係をプロットし、球晶成長速度が50nm/分以上、好ましく100nm/分以上となる温度を選択することが望ましい。具体的な例を挙げると、結晶性ポリエステルAとして、IVが中程度のポリエチレンテレフタレートを用いた場合は、130℃以上210℃以下が望ましい。代用的に求める方法としては、下記(3)式を満たすことが好ましい。より好ましくは(4)式を、さらに好ましくは(5)式を満たすことが好ましい。
【0041】
Ta−Ta*a*0.4≦T≦Ta+Ta*a*0.5 ・・・(3)式
Ta−Ta*a*0.3≦T≦Ta+Ta*a*0.4 ・・・(4)式
Ta−Ta*a*0.1≦T≦Ta+Ta*a*0.35 ・・・(5)式
ここでTaは、示差走査熱量測定(DSC)による2ndRunにおけるガラス転移点温度(Tg)と融点(Tm)の平均値(Tg+Tm)/2であり、aはTaとTgの差(Ta−Tg)である。
式(6)は文献(M.R.Tant and W.T.Culberson Polym.eng.sci.,33,1152(1993)によるポリエチレンテレフタレートの球晶の成長速度を表す式である。
【0042】
【数1】

【0043】
Mn=10000とした場合のポリエチレンテレフタレートの温度に対する球晶の成長速度を図2に示す。ポリエチレンテレフタレートのTgは75℃、Tmは255℃であるといわれている。すると、図2より球晶を成長させるには加熱温度は(3)式を満たすことが好ましく、(4)式、(5)式となるにつれて加熱温度Tはより球晶成長速度が速くなることが見て取れる。フィルムエッジの加熱方法としては熱の対流・伝導・放射を利用して行う。それぞれ、ノズルによる熱風の吹き付け、加熱ロールとフィルムの接触、ヒーターによる電磁波の照射によってフィルムエッジを加熱する。これらの方法は一つのみ用いても良く、複数組み合わせても良い。また、加熱はフィルム片側でも良いが、両側の方が加熱時間が少なくなり、加熱の工程の長さを短くできることから好ましい。加熱時間は加熱温度に依存するが、結晶化するのに十分な時間加熱し、少なくとも1秒は必要である。ノズルを用いる場合は、フィルムエッジに吹き付けられた後の熱風がフィルム中央部に流れないようにするため、熱風を真上から吹き付けるよりは、フィルム中央部からフィルムエッジ側に向かうように吹き付ける方が良い。
【0044】
加熱方法としては、ヒーターまたはロールを用いることが好ましい。熱風の吹き付けの場合、熱風をフィルムエッジに吹き付けた後の熱風の流れをコントロールすることが難しくフィルムエッジのみを加熱することは難しい。一方、ヒーターやロールの場合は、フィルムエッジのみを容易に加熱することが出来る。ヒーターの場合は、電磁波の照射範囲をフィルムエッジに合わせれば良く、ロールの場合は、中央が凹んでいる形のものを用いフィルムエッジのみロールと接触させれば良い。
【0045】
フィルムエッジ加熱の際にフィルムエッジ部とエッジ部以外のフィルム部の温度の制御は独立して制御することが好ましい。フィルムエッジが加熱されたときに、熱伝導によってフィルム中央部へも熱が伝搬し温度が徐々に上昇し結晶化する可能性がある。フィルムエッジ部以外のフィルム部の温度を低く保つために例えば、図3に示すように、断熱効果のある板によってフィルムエッジとそれ以外の部分を仕切り、フィルム中央部には冷風を吹き付けることで、フィルムエッジ部以外のフィルム部の温度を低く保ち結晶化を抑制することができる。冷風を吹き付ける面は片側でも良いが、両側の方がフィルムエッジ部以外のフィルム部の温度上昇をより防止できるため好ましい。
【実施例】
【0046】
以下、本発明のフィルム及び偏光反射体を実施例を用いてより具体的に説明する。
【0047】
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
(1)ΔTcg
サンプルを電子天秤で5mg計量し、アルミパッキンで挟み込みセイコーインスツルメント社(株)ロボットDSC−RDC220熱示差走査計を用いて測定を行い、データ解析は同社製ディスクセッションSSC/5200を用いて、JIS−K−7121(1987年)に従って行った。25℃から300℃まで20℃/分で昇温した。その後25℃まで急冷し、再び300℃まで20℃/分で昇温した(2ndRun)。ガラス転移温度(Tg)として、中間点ガラス転移温度を求め、結晶化ピーク温度(Tc)として、結晶化ピークの頂点温度を求めた。測定したTgとTcからΔTcg(Tc−Tg)を求めた。
【0048】
(2)MOR
サンプルサイズを10cm×10cmとし、フィルム幅方向中央において、サンプルを切り出した。KSシステムズ(株)製(現王子計測機器(株))の分子配向計MOA−2001を用いて、MORを求めた。
【0049】
(3)配向角度の偏差
サンプルサイズを5cm×5cmとし、フィルム長手方向5点×幅方向5点、計25点において、5cm間隔で25サンプル切り出した。KSシステムズ(株)製(現王子計測機器(株))の分子配向計MOA−2001を用いて、配向角度を測定した。n数は3とし、その平均値を採用した。なお、フィルムをホルダーに載置する際には各試料は予めマーキングしておくなどしてサンプリング時のフィルムの方向を一致させるようにずれが無いように載置するようにする。25サンプルの配向角度の平均値から偏差(平均値−各サンプルの配向角度)を求め、以下の基準で評価した。
【0050】
◎◎:偏差が−0.5°〜0.5°の範囲内
◎:偏差が−1°〜1°の範囲内
○:偏差が−2°〜2°の範囲内
×:偏差が−2°〜2°の範囲外。
【0051】
(4)偏光反射率、透過率
サンプルをフィルム幅方向中央部から5cm×5cmで切り出した。日立製作所製 分光光度計(U−4100 Spectrophotomater)に付属の12°正反射付属装置P/N134−0104を取り付け、入射角度φ=12度における絶対反射率を測定した。なお、サンプルのMD方向を垂直方向にして、ホルダーに設置した。また、付属のグランテーラ社製偏光子を設置して、偏光成分を0〜180°において、5度刻みで回転させた方位角で波長250〜2600nmの絶対反射率を測定した。測定条件:スリットは2nm(可視)/自動制御(赤外)とし、ゲインは2と設定し、走査速度を600nm/min.で測定し、方位角0〜180度における分光反射率を得た。これらの測定結果から、Rmin、Rmaxを得た。さらに、Rminを測定した方位角における透過率をTmax、Rmaxを測定した方位角における透過率をTminとし、TmaxとTminについても同様の方法で測定を行なった。
【0052】
(実施例1)
IV=0.5のポリエチレンテレフタレートを押出機にて280℃で溶融させ、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、Tダイに供給し、シート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印加電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、未延伸フィルムを得た。
この未延伸フィルムのエッジ両端部に130℃の熱風をフィルムの上下方向から70秒間吹き付け、テンターに導き温度95℃、5.5倍横延伸した後、230℃で30秒間熱処理を施し、約3%幅方向の弛緩処理を実施し厚さ50μmのフィルムを長尺ロール状にて得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。表2に各種条件をまとめた。
【0053】
(実施例2)
重合時にタルクを0.5wt%添加して重合したIV=0.5のポリエチレンテレフタレートを用いたこと以外は実施例1と同様の条件で製膜した。得られたフィルムの物性を表1に示す。表2に各種条件をまとめた。
【0054】
(実施例3)
重合時にモンタン酸Naを0.5wt%添加して重合したIV=0.5のポリエチレンテレフタレートを用いたこと以外は実施例1と同様の条件で製膜した。得られたフィルムの物性を表1に示す。表2に各種条件をまとめた。
【0055】
(実施例4)
未延伸フィルムのエッジ両端を加熱ロールで挟んで加熱することで130℃、70秒間加熱したこと以外は実施例1と同様の条件で製膜した。得られたフィルムの物性を表1に示す。表2に各種条件をまとめた。
【0056】
(実施例5)
未延伸フィルムのエッジ両端をフィルム両面からヒーターにて130℃、70秒間加熱したこと以外は実施例1と同様の条件で製膜した。得られたフィルムの物性を表1に示す。表2に各種条件をまとめた。
【0057】
(実施例6)
未延伸フィルムのエッジ両端をヒーターにて150℃、40秒間加熱し、グラスウールによってフィルムエッジとそれ以外の部分を仕切り、フィルム中央部に25℃の冷風をフィルム両面から吹き付けること以外は実施例1と同様の条件で製膜した。得られたフィルムの物性を表1に示す。表2に各種条件をまとめた。
【0058】
(実施例7)
未延伸フィルムのエッジ両端をヒーターにて160℃、40秒間加熱し、グラスウールによってフィルムエッジとそれ以外の部分を仕切り、フィルム中央部に25℃の冷風をフィルム両面から吹き付けること以外は実施例1と同様の条件で製膜した。得られたフィルムの物性を表1に示す。表2に各種条件をまとめた。
【0059】
[比較例1]
IV=0.7のポリエチレンテレフタレートを用いたこと以外は実施例1と同様の条件で製膜した。得られたフィルムの物性を表1に示す。表2に各種条件をまとめた。
【0060】
[比較例2]
未延伸フィルムのエッジ両端を加熱しないこと以外は実施例1と同様の条件で製膜した。得られたフィルムの物性を表1に示す。表2に各種条件をまとめた。
【0061】
(実施例8)
A層を構成する結晶性の熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂Aとも称する)としてIV=0.5のポリエチレンテレフタレートを用い、またB層を構成する熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂Bとも称する)としてポリエチレンテレフタレートの共重合体(シクロヘキサンジメタノール成分33mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート)を用いた。熱可塑性樹脂AおよびBを、それぞれの押出機にて280℃で溶融させ、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて吐出比が熱可塑性樹脂A/熱可塑性樹脂B=1/1.07になるように計量し、フィードブロックにてB層が最外層となる層構成の801層に積層した。次いで、スクエアミキサーにて、分配比1:0.85の一度の分岐・合流を繰り返すことにより、1601層の積層流とし、Tダイに供給し、シート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムエッジ両端に130℃の熱風をフィルム両面から70秒間吹き付け、その後フィルムがクリップに粘着することを防止するため、フィルム表面温度を25℃に低下させた後、クリップの温度を70℃以下に制御したテンターに導き温度95℃、5.5倍横延伸した後、230℃で30秒間熱処理を施し、約3%幅方向の弛緩処理を実施し厚さ160μmのフィルムを長尺ロール状にて得た。得られたフィルムの物性を表3に示す。表4に各種条件をまとめた。
【0062】
(実施例9)
A層としてIV=0.5のポリエチレンテレフタレートを用い、またB層を構成する熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂Bとも称する)としてポリエチレンテレフタレートの共重合体(シクロヘキサンジメタノール成分33mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート)を用いた。熱可塑性樹脂AおよびBを、それぞれの押出機にて280℃で溶融させ、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて吐出比が熱可塑性樹脂A/熱可塑性樹脂B=1/1.07になるように計量し、フィードブロックにてA層が最外層となる層構成の801層に積層した。次いで、スクエアミキサーにて、分配比1:0.85の一度の分岐・合流を繰り返すことにより、1601層の積層流とし、Tダイに供給し、シート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムエッジ両端に130℃の熱風をフィルム両面から70秒間吹き付け、テンターに導き温度95℃、5.5倍横延伸した後、230℃で30秒間熱処理を施し、約3%幅方向の弛緩処理を実施し厚さ160μmのフィルムを長尺ロール状にて得た。得られたフィルムの物性を表3に示す。表4に各種条件をまとめた。実験中フィルムとクリップの粘着は起こらず、安定して製膜を行なうことができた。
【0063】
(実施例10)
A層にタルクを0.5wt%添加して重合したIV=0.5のポリエチレンテレフタレートを用いたこと以外は実施例9と同様の条件で製膜した。得られたフィルムの物性を表3に示す。表4に各種条件をまとめた。
【0064】
(実施例11)
A層にモンタン酸Naを0.5wt%添加して重合したIV=0.5のポリエチレンテレフタレートを用いたこと以外は実施例9と同様の条件で製膜した。得られたフィルムの物性を表3に示す。表4に各種条件をまとめた。
【0065】
(実施例12)
未延伸フィルムのエッジ両端を、ロールをフィルム両面から接触させることで130℃、70秒間加熱したこと以外は実施例9と同様の条件で製膜した。得られたフィルムの物性を表3に示す。表4に各種条件をまとめた。
【0066】
(実施例13)
未延伸フィルムのエッジ両端を、フィルム両面からヒーターを用いて130℃、70秒間加熱したこと以外は実施例9と同様の条件で製膜した。得られたフィルムの物性を表3に示す。表4に各種条件をまとめた。
【0067】
(実施例14)
未延伸フィルムのエッジ両端をヒーターを用いて150℃、40秒間加熱し、グラスウールによって冷風がフィルムエッジに到達しないようにフィルムの上下空間を仕切り、フィルム中央部に25℃の冷風をフィルム両面から吹き付けること以外は実施例9と同様の条件で製膜した。得られたフィルムの物性を表3に示す。表4に各種条件をまとめた。
【0068】
(実施例15)
未延伸フィルムのエッジ両端をヒーターを用いて160℃、40秒間加熱し、グラスウールによって冷風がフィルムエッジに到達しないようにフィルムの上下空間を仕切り、フィルム中央部に25℃の冷風をフィルム両面から吹き付けること以外は実施例9と同様の条件で製膜した。得られたフィルムの物性を表3に示す。表4に各種条件をまとめた。
【0069】
[比較例3]
A層にIV=0.7のポリエチレンテレフタレートを用いたこと以外は実施例8と同様の条件で製膜した。得られたフィルムの物性を表3に示す。表4に各種条件をまとめた。
【0070】
[比較例4]
未延伸フィルムのエッジ両端を加熱しないこと以外は実施例8と同様の条件で製膜した。得られたフィルムの物性を表3に示す。表4に各種条件をまとめた。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、位相差フィルム、偏光反射体、及びその製造方法に関するものである。また、本発明の偏光反射体は、LCDの輝度を向上させるバックライト部材、偏光サングラス、偏光フィルタ、偏光を利用する光学センサー部材として好適なものである。該偏光反射体は、ディスプレイ部材、自動車部材、ホログラムなどの偽造防止用意匠部材、光学印刷機器、カメラ、太陽電池部材、建材などに好適な偏光反射体およびその成形品である。
【符号の説明】
【0076】
1:幅方向
2:長手方向
3:偏光反射体
4:平面上に投影した振動方向
5:方位角
6:厚さ方向
7:幅方向
8:フィルム
9A、9B、9C、9D:エッジ加熱手段
10:断熱板
11:冷風の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ポリエステルからなり、該結晶性ポリエステルの示差走査熱量測定(DSC)による2ndRunにおける結晶化ピーク温度(Tc)とガラス転移点温度(Tg)との差ΔTcgが60℃以下、かつ、分子配向計にて測定されたフィルム面内におけるMORが3以上であり、配向角度の偏差が±2°以内であることを特徴とするフィルム。
【請求項2】
前記結晶性ポリエステルが結晶核剤を2wt%以下含むことを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記結晶性ポリエステルがポリエチレンテレフタレート若しくはポリエチレンナフタレートである請求項1または2記載のフィルム。
【請求項4】
前記結晶核剤がカルボン酸塩からなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のフィルム。
【請求項5】
フィルムが長尺ロール状であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のフィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のフィルムで構成された層(A層)とA層を構成する結晶性ポリエステルとは光学的性質が異なるポリエステルフィルムで構成された層(B層)とが交互にそれぞれ50層以上積層され、かつ、下記(1)式および(2)式を満たす偏光反射体。
Rmin≦40% ・・・(1)式
Rmax≧70% ・・・(2)式
(ここで、Rmin、Rmaxは、波長550nmの偏光を該偏光反射体の表面に対して入射角0°で照射し、該偏光反射体を入射光軸を中心に半回転させたときの反射率(%)の最小値(Rmin)と最大値(Rmax)である。)
【請求項7】
最表層に請求項1〜5の何れか記載のフィルムが配されていることを特徴とする偏光反射体。
【請求項8】
偏光反射体が長尺ロール状であることを特徴とする請求項6または7に記載の偏光反射体。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載の偏光反射体、および、光源、拡散体、偏光子を用いてなるディスプレイ用バックライトユニット。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかに記載のフィルムを用いた成形体。
【請求項11】
請求項6〜8のいずれかに記載の偏光反射体を用いた成形体。
【請求項12】
未延伸状態のフィルムを横方向に延伸する前、または横方向に延伸中に、フィルムエッジ部を、加熱温度Tが下記(3)式を満たす条件で加熱し、フィルムを延伸することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフィルム若しくは請求項6〜8の何れかに記載の偏光反射体の製造方法。
Ta−Ta*a*0.4≦T≦Ta+Ta*a*0.5 ・・・(3)式
(ここでTaは、示差走査熱量測定(DSC)による2ndRunにおけるガラス転移点温度(Tg)と融点(Tm)の平均値(Tg+Tm)/2であり、aはTaとTgの差(Ta−Tg)である。)
【請求項13】
ヒーターまたはロールを用いて、フィルムエッジ部を加熱することを特徴とする請求項12に記載のフィルム若しくは偏光反射体の製造方法。
【請求項14】
フィルムエッジ部とエッジ部以外のフィルム部の雰囲気温度を不連続に変化させることを特徴とする請求項12または13に記載のフィルム若しくは偏光反射体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−213770(P2011−213770A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80691(P2010−80691)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】