説明

フィルムの処理方法

【課題】皺や傷、液滴混などを発生させることなく、連続的かつ効率的にフィルムの液処理や乾燥処理などの処理を行い、高品位のフィルムを得る方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係るフィルムの処理方法は、有機ポリマーを基材上に塗布し乾燥する工程、および有機ポリマーフィルムを基材から剥離せずに液処理する工程を含むことを特徴とする。前記液処理は、前記基材を有する有機ポリマーフィルムを支持体により方向転換させて液中を搬送させることにより行われること、前記液処理後に、さらにリンス用スリットノズルを用いて均一な液膜状の洗浄液でリンス処理する工程を含むこと、前記リンス用スリットノズルのスリット間隔(ギャップ)が10〜500μmであることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の有機ポリマーフィルムの処理方法に関する。より詳しくは、有機ポリマーフィルムを液処理等する際に、フィルム表面に発生する傷、皺および液滴痕などを低減し、高品位のフィルムを効率的に処理することができる処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ポリマーフィルムは、一般的にTダイなどを用いた押出法や基材上にポリマー溶液を流延するキャスティング法などにより製膜される。製膜されたフィルムには、品質の向上や付加価値を設けるために、乾燥、延伸、表面処理などの様々な処理がなされる。これらの処理を効率的に行うために、フィルムを液中で取り扱うプロセスを用いることがある。
【0003】
金属フィルムのように液を吸収しないフィルムの場合は、特別な工夫を行わずに、液中での搬送が可能であるが、樹脂フィルムの場合は、液を吸収することによりフィルムの物性が変化することがあり、また、空気中と同じ搬送条件ではフィルムの皺や傷などの品質不良やフィルムの破断などのトラブルを引き起こすことがある。特に、フィルムが膨潤してサイズが変わる場合、フィルムの弾性率や破断強度が下がる場合、フィルムが薄膜である場合などにおいては、非常に取り扱いが困難になる。
【0004】
また、液処理後のフィルムはエアーブローや吸水ロール等で液滴を除去した後に、乾燥処理するが、エアーブローでは充分に液滴除去がされず水滴跡が残ることがあり、吸水ロールではロールが乾燥途中のフィルムを挟むため皺発生の原因となる。さらに、吸水性が高く寸法変化率の大きいフィルムにおいては、乾燥とともにフィルムのサイズが変化するため、水滴の除去や乾燥を連続的に行うことが非常に難しいという問題がある。
【0005】
このような問題を解決する方法としては、フィルムを枠などに固定して枚葉で液処理を行う方法も知られているが、生産効率を高めるためには連続処理プロセスが望ましい。
このように、フィルムを液中で搬送するには種々の問題点があり、特に傷が付きやすいフィルムや高品質が要求される光学用フィルムなどでは、品質と生産性を両立させることが非常に困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、皺や傷、液滴混などを発生させることなく、連続的かつ効率的にフィルムの液処理や乾燥処理などの処理を行い、高品位のフィルムを得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、基材を有するフィルムを用いることにより、液中での搬送を容易にし、乾燥時の収縮による皺や傷などがない高品位のフィルムが効率よく得られることを見出した。さらに、液処理後のフィルムを特定の形状のノズルを用いてリンス処理およびエアーブロー処理することにより、液滴痕のない、より高品位のフィルムが得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明に係るフィルムの処理方法は、有機ポリマーを基材上に塗布し乾燥する工程、および得られた有機ポリマーフィルムを基材から剥離せずに液処理する工程を含むことを特徴とする。
【0009】
上記フィルムの処理方法において、
前記液処理が、前記基材を有する有機ポリマーフィルムを支持体により方向転換させて液中を搬送させることにより行われること、
前記液処理後に、さらにリンス用スリットノズルを用いて均一な液膜状の洗浄液でリンス処理する工程を含むこと、
前記リンス用スリットノズルのスリット間隔(ギャップ)が10〜500μmであること、
前記基材を有する有機ポリマーフィルムを、5〜500N/mの張力をかけて液中搬送すること、
前記基材が、ポリエチレンテレフタレートフィルムであること、
前記有機ポリマーフィルムの乾燥状態の膜厚が1〜500μmであること、
前記有機ポリマーが、スルホン酸基を有するポリマーであること
が望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡便な方法で生産性を損なうことなく、品質に優れたフィルムを製造することができる。
本発明により得られたフィルムは、配光膜や位相差膜などの光学フィルムや、プロトン伝導膜などに好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係るフィルムの処理方法について詳細に説明する。
本発明に係るフィルムの処理方法は、有機ポリマーフィルムを基材上に塗布して乾燥し、得られた有機ポリマーフィルムを基材から剥離せずに液処理する工程を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明において処理に供されるフィルムを形成する有機ポリマーとしては、フィルムを形成できるものであれば特に限定されず、たとえば、主鎖にポリフェニレン、ポリアゾール、ポリイミド、ポリアリーレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール構造などを有する重合体が挙げられる。さらに上記重合体がスルホン酸基を有していてもよく、ナフィオン(登録商標)などのパーフルオロスルホン酸系ポリマーも挙げることができる。
【0013】
これらのフィルムの製造方法は特に限定されず、たとえばキャスティング法や押出成形法など従来公知の方法が採用される。また、いわゆるフィルム状であってもシート状であってもよいが、乾燥後の膜厚としては、通常1〜500μm、好ましくは3〜200μm、特に好ましくは10〜100μmである。膜厚が上記範囲内にあることにより、後工程において充分な洗浄効率を確保することができる。
【0014】
本発明で用いられる基材としては、キャスティング法などによってフィルムを成形する際に通常用いられる基材であれば特に限定されないが、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエステルフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルムなどのプラスチック製基材や、金属製基材などが挙げられる。これらの中では、PETフィルムが好適に用いられる。
【0015】
液処理等を行う前のフィルムには通常保護フィルムが積層されているため、巻き出す際に保護フィルムを剥離する必要がある。しかしながら、保護フィルムを剥離する際に、液
処理の効率を高めるために基材を予め剥離していた場合、フィルムに皺や傷が発生するという問題があった。また、フィルム搬送時においても同様に皺や傷が付くことがあり、さらに液処理後に液中からフィルムを取り出した際にも、フィルムが収縮してフィルムに皺や傷などが発生することがある。
【0016】
これに対し、本発明では、上記のように基材を有するフィルムから保護フィルムを剥離することにより、フィルムに発生する皺や傷を低減することができる。また、基材を有するフィルムを搬送することにより、搬送時や液からの取り出しの際に発生する皺や傷などを低減することができる。
【0017】
上記のようにして巻き出したフィルムを、フィルム中に残留している塗工溶媒や不純物などの抽出処理またはフィルムの表面改質処理などの液処理を行うために、液処理槽に搬送する。液処理は、液中においてフィルムをロールなどの接触型の支持体または非接触ターンバーのような非接触型の支持体で方向転換をさせて行う。
【0018】
上記支持体は、フィルムを液と接触させる液処理槽内に上下に交互に設置することが好ましく、このように設置することで、フィルムの進行方向を反転させ、液中を蛇行させることができるため、充分な洗浄効率などを得るための滞留時間を確保することができるとともに、装置を小型化することができる。なお、支持体の数は、フィルムの液中における滞留時間等により適宜決定することができる。
【0019】
被処理フィルムを基材を有する状態で液処理することで、液処理槽内においてもフィルムに適度な張力を加えることができる。液中での張力は基材として用いるフィルムの強度および厚さに依存するが、通常、5〜500N/m幅、好ましくは10〜100N/m幅を加えることができるため、液中の滞留時間を延ばすために液槽を大型化し、液中の滞留長さを伸ばした場合でも、フィルムを安定して搬送することができる
本発明に係る処理方法における液処理は、たとえば有機ポリマーを有機溶剤に溶解して溶液とした後、キャスティングにより基材上に流延し、フィルム状に成形する溶液流延法により製造したフィルムから溶媒を除去する方法に好適に用いることができる。溶媒が水溶性の場合、液処理槽に充填される液および支持体から押し出される液としては水を用いることができる。
【0020】
フィルムを水に浸漬する際には、フィルム1重量部に対し、水が10重量部以上、好ましくは30重量部以上の接触比となるようにすることが好ましい。得られるフィルムの残存溶媒量をより少なくするためには、できるだけ大きな接触比を維持することが好ましい。また、浸漬に使用する水をオーバーフローさせて、常に水中の有機溶媒濃度を一定濃度以下に維持しておくことも、得られるフィルムの残存溶媒量の低減に有効である。フィルム中に残存する有機溶媒量の面内分布を小さく抑えるためには、水中の有機溶媒濃度を撹拌等によって均質化させることは効果がある。
【0021】
フィルムを水に浸漬する際の水の温度は、好ましくは5〜80℃の範囲である。高温ほど、有機溶媒と水との置換速度は速くなるが、フィルムの吸水量も大きくなるので、乾燥後に得られるフィルムの表面状態が荒れる懸念がある。通常、置換速度と取り扱いやすさから10〜60℃の温度範囲が好都合である。
【0022】
浸漬時間は、初期の残存溶媒量や接触比、処理温度にもよるが、通常1分〜24時間の範囲である。好ましくは3分〜5時間の範囲である。
上記のようにして液処理することにより、フィルムが基材を有していても充分にフィルム中の有機溶媒を除去することができる。また、フィルムの膜厚を薄くすることにより、除去効率をさらに向上することができる。
【0023】
上記のようにして液処理したフィルムの表面には処理液が付着しており、このまま乾燥処理を行うと液滴痕が残り、また処理液によっては不純物がフィルム表面に残留することになる。フィルムの用途によっては、このような液滴痕や不純物の残留が問題となることもある。したがって、液処理後のフィルムを、洗浄液を用いてすすぎ洗浄処理(リンス処理)を行うことを検討したが、このリンス処理の方法によっては、洗浄液の液滴が残留することになる。
【0024】
そこで本発明の処理方法では、液処理後のフィルムをリンス用スリットノズルを用いて均一な液膜状の洗浄液、通常、純水でリンス処理する。このようにスリット形状のノズルを用いて洗浄液を噴射することにより、フィルム表面が均一で切れ目のない液膜でムラなく洗浄されるため、フィルム表面の不純物や液滴を効率良く除去することができ、さらにフィルム表面に残る液滴も大幅に低減される。
【0025】
本発明で用いられるリンス用スリットノズルのスリット間隔(ギャップ)は、純水を均一な液膜状で噴射することができれば特に限定されないが、通常、10〜500μm、好ましくは50〜300μmである。また、ノズルの横幅は、フィルム全体に純水を噴射することができる幅であることが望ましく、複数のノズルを並列してもよい。
【0026】
上記リンス処理に用いられる洗浄液(純水)の温度は、洗浄効率や取り扱い性などを考慮すれば、通常5〜80℃、好ましくは10〜60℃程度である。洗浄液の量としては、通常、片面の幅1m当たり0.2〜10m3/h 好ましくは0.5〜5m3/hである。また、洗浄液を噴射する際の圧力は、ノズルの間隙や洗浄水量に依存するが、通常、5〜300kPaである。このようにして液膜を用いてリンス処理することにより、フィルムが基材を有していても充分な洗浄効果が得られるとともに、フィルム表面に残留する液滴を大幅に低減(ほぼ完全に除去)することができる。
【0027】
上記のようにしてリンス処理したフィルムを、さらにエアーブロー用ノズルによる均一なエアーブローまたは吸水ロールにより、フィルム表面に残っている液滴を除去することもできる。このようにリンス処理においてスリットノズルを用いて連続的に処理することにより、液滴の除去効率を大幅に向上することができる。したがって、乾燥後のフィルムに液滴痕はほとんど発生しなくなり、高品位のフィルムを得ることができる。
【0028】
エアーブロー用スリットノズルのスリット間隔(ギャップ)は、通常、10〜1000μm、好ましくは50〜300μmである。スリット幅が上記範囲内にあることにより、フィルム表面に付着した液滴を効率的に除去することができる。
【0029】
上記エアーブロー処理におけるエアーは水滴を飛ばすことが目的であり、温度に関わらず十分な効果が得られるため、室内の空気をそのまま利用することができるが、乾燥工程を兼ねる場合などでは、30〜200℃、好ましくは40〜100℃の温風も用いられる。また、エアーの噴射量は、通常、片面の幅1m当たり100〜2000L/min 好
ましくは200〜1000L/minであり、エアーブローする際の圧力は、通常、0.
005〜0.5MPa 好ましくは0.01 〜0.2MPaである。
【0030】
上記のようにしてリンス処理をし、必要に応じてさらにエアーブロー処理したフィルムを乾燥処理する。乾燥処理は、一般的なフィルムの乾燥処理方法および条件で行うことができる。たとえば、熱風ドライヤーなどを用いて、乾燥温度30〜150℃で1分〜10時間乾燥処理することにより所望の乾燥フィルムが得られる。また、フィルムが基材を有していることにより、エアーブローや乾燥時におけるフィルムの寸法変化を基材の変化率に抑えることができるため、PETフィルムなどの吸水性が非常に低い基材を選択するこ
とで、皺の発生を防ぎ、品質を大幅に向上することができる。
【0031】
乾燥処理後のフィルムは基材を有したまま巻き取られ、そのまま製品として供給することもでき、基材を剥がし製品単体で巻き取ることもできる。
次に、図面を参照しつつ本発明を具体的に説明する。
【0032】
図1は、本発明に係るフィルムの処理方法に用いられる処理装置の一例を示す。図1に示すように、この処理装置では、処理に供されるフィルムを巻き出す手段としての巻き出し装置1と、ガイドローラ11と、液処理槽2内に設けられた支持体としての水中ロール12a、12b、12cと、リンス用スリットノズル13と、エアーブロー用スリットノズル14と、エアーターンバー15と、乾燥手段としてのドライヤー16と、処理を施したフィルムを巻き取る手段としての巻き取り装置3とを有している。
【0033】
巻き出し装置1において、必要に応じて保護フィルム17が剥離されて、連続的に送り出された基材を有するフィルム10は、液処理槽2中に上下に計3本設置された水中ロール12a、12b、12cの外周面に巻回されることにより、進行方向が反転され液処理槽2中において蛇行するように支持される。水中ロールの代替として非接触式の水中ターンバーなどを用いてもよい。なお、図1では、支持体としてのロールは3本設置されているが、本発明ではフィルムの液中での滞留時間等により適宜変更することができる。
【0034】
液処理槽2中において液と接触させたフィルム10は、リンス用スリットノズル13により液膜洗浄処理され、液滴の除去と表面の洗浄が行われ、エアーブロー用スリットノズル14により残存する液が除去された後、ドライヤー16により乾燥され、巻き取り装置3により巻き取られる。なお、液処理槽2中には、液供給管18により処理液を供給するとともに、液排出管19から液を排出することにより、液処理槽2中の処理液の量が一定の量となるようにしている。
【0035】
上記のような本発明によると、基材を有する長尺の有機ポリマーフィルムを液中で移動させながら連続的に液と接触させる際に、フィルム表面を傷つけることなくフィルムを搬送することができるとともに、フィルムを液処理槽内を蛇行させて搬送することができるため、フィルムの液中の滞留時間を長くすることができ、かつ処理装置を小型化することができる。
【0036】
したがって、本発明の処理方法によれば、従来の処理法と比較して、皺、傷および液滴痕などが大幅に低減された高品位のフィルムを効率的に得ることができる。
本発明の方法により処理されたフィルムは、電解質膜や光学部品用として有用であり、また、電子・電気部品、包装材料にも使用することができる。なかでも、燃料電池用部品やTFT型LCD、STN型LCD、PDPなどの表示デバイスの基板などの部品、導光板、保護フィルム、位相差フィルム、タッチパネル、透明電極基板、CD、MD、DVDなどの光学記録基板などに用いられる。
【0037】
〔実施例〕
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されることはない。なお、得られたフィルムについては下記の方法により評価した。
【0038】
[評価方法]
〈残溶媒〉
フィルム0.2gを溶媒DMAc(ジメチルアセトアミド)5gに浸漬させ一昼夜おいた後、ガスクロマトグラフ(島津製作所製GC−14B)を用いて測定した。
【0039】
〈表面性状〉
目視および光学顕微鏡50倍にて判断し、皺および傷の大きさや頻度、液滴痕の有無からA〜C(A:良品、B:合格品だが用途によってはNG品、C:NG品)の3ランクに分類した。
【0040】
[製造例1]処理前フィルムの製造法
〈ポリマー合成〉
2,5−ジクロロ−4'−(4−フェノキシフェノキシベンゾフェノン)と、4,4−ジ
クロロベンゾフェノンと、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンから得られる4−クロロベンゾイル末端のオリゴマー(数平均分子量11,200)とから得られる共重合体(数平均分子量;50,000)をスルホン化し、スルホン酸当量2.08ミリ当量/gのスルホン化ポリマーを得た。
【0041】
〈キャスト〜一次乾燥〉
このスルホン化ポリマーを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)とメタノールからなる混合溶媒(重量比1/1)に溶解して、該スルホン化ポリマーの15wt%溶液を調製し、これをPETフィルム(厚み125μm)上に流延し、150℃のオーブンで1時間乾燥させることにより厚さ20μmのフィルムAを得た。このフィルムの幅は430mmであり、乾燥後のフィルムA中の残留NMP量は20重量%であった。
【0042】
〔実施例1〕
図1に示した処理装置を用い、製造例1で得られたPETフィルム(基材)を有するフィルムAの溶媒抽出を行った。この処理装置の液処理槽は幅0.8m×長さ0.8m×高さ1m(液浸0.8m)の大きさであり槽には純水が400L/h供給されている。液処理槽中にはフィルムの進行方向を反転させるためのロールがが上下に計3本設置されており、フィルムのパスラインを蛇行させることで液中の滞留長さは3.0mの距離が得られている。
【0043】
この中にPETフィルムを有するフィルムAを0.05m/minの速度および40Nの張力で非接触搬送しNMPの抽出を行った(液処理槽における滞留時間:1時間)。抽出後に、リンス用スリットノズル(スリット間隔100μm)を用いて純水で洗浄し、エアーブロー用スリットノズル(スリット間隔100μm)を用いて液滴を除去した後、50℃の熱風ドライヤーで5分間乾燥しフィルムA−1を得た。この処理を行ったフィルムA−1の評価結果を表1に示す。
【0044】
〔比較例1〕
実施例1において、予めフィルムAから基材であるPETフィルムを剥離して処理したこと以外は実施例1と同様にして処理を行い、フィルムA−2を得た。この処理したフィルムA−2の評価結果を表1に示す。
【0045】
〔比較例2〕
実施例1において、リンス処理せずにエアーブローのみ行ったこと以外は実施例1と同様にして基材を有するフィルムAを処理し、フィルムA−3を得た。この処理を行って得られたフィルムA−3の評価結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1に示すように、本発明の処理法(実施例1)により得られたフィルムは、表面に皺や傷などが発生しておらず、フィルム中の残留溶媒量についても充分に低減されていた。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】フィルムの液処理を行うための装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0049】
1 …フィルム巻き出し装置
2 …液処理槽
3 …フィルム巻き取り装置
10…フィルム
11…ガイドローラ
12a、12b、12c…水中ロール
13…リンス用スリットノズル
14…エアーブロー用スリットノズル
15…エアーターンバー
16…ドライヤー
17…保護フィルム
18…液供給管
19…液排出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリマーを基材上に塗布し乾燥する工程、および
得られた有機ポリマーフィルムを基材から剥離せずに液処理する工程を含むことを特徴とするフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記液処理が、前記基材を有する有機ポリマーフィルムを支持体により方向転換させて液中を搬送させることにより行われることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記液処理後に、さらにリンス用スリットノズルを用いて均一な液膜状の洗浄液でリンス処理する工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記リンス用スリットノズルのスリット間隔が10〜500μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフィルムの処理方法。
【請求項5】
前記基材を有する有機ポリマーフィルムを、5〜500N/m幅の張力をかけて液中搬送することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフィルムの処理方法。
【請求項6】
前記基材が、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフィルムの処理方法。
【請求項7】
前記有機ポリマーフィルムの乾燥状態の膜厚が1〜500μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のフィルムの処理方法。
【請求項8】
前記有機ポリマーが、スルホン酸基を有するポリマーであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のフィルムの処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−21172(P2006−21172A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203832(P2004−203832)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】