フィルムの製造方法および該製造方法で得られたフィルム

【課題】電解液が染み込み・浸透しやすい性質を有し、熱収縮が低減され、取り扱い性に優れ、電解液中でも視認可能であるフィルムおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】下記工程(1A)、工程(2A)、工程(3)および工程(4)を含む、または
工程(1B)、工程(3)および工程(4)を含む
ことを特徴とするフィルムの製造方法。
工程(1A):延伸ポリテトラフルオロエチレン膜と、無機粉体が含まれた溶液とを接触させる工程、
工程(2A):工程(1A)で得られた膜と、親水性基を有する樹脂が含まれた溶液とを接触させる工程、
工程(1B):延伸ポリテトラフルオロエチレン膜と、無機粉体および親水性基を有する樹脂が含まれた溶液とを接触させる工程、
工程(3):工程(2A)または工程(1B)で得られた膜に、シランカップリング剤を付着させる工程、
工程(4):工程(3)で得られた膜を、50〜200℃で加熱し、乾燥させる工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムの製造方法および該製造方法で得られたフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタ用セパレータとしては、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)や、セルロース、ポリエステル、アラミド等の繊維を混合、抄紙して得られる混抄紙が用いられてきた。
【0003】
近年では、電気二重層キャパシタを大容量化するために、電解液の溶媒として耐電圧の大きいプロピレンカーボネート等の有機溶媒が使用されている。このような大容量の電気二重層キャパシタで使用されるセパレータは、十分な耐熱性を有することが望ましく、一般に、耐熱性を有するアラミド樹脂やポリエステル樹脂より形成されるセパレータが、広く生産され使用されている。
【0004】
ところが、アラミド樹脂およびポリエステル樹脂等は疎水性であるため、非プロトン性極性溶媒であるプロピレンカーボネート等を溶媒とする電解液に対して濡れ性が低くなってしまうという問題があった。
【0005】
そこで、特許文献1には、ガラス繊維を含む繊維と、前記繊維の表面に添着されたヒドロゾルを形成する無機化合物とを含んでなるセパレータは、電解液に対する濡れ性が好適であり、且つ、柔軟性を有する旨開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のセパレータは、機械的強度や耐薬品性等に劣るものであった。
ここで、耐熱性、耐薬品性等に優れる樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素含有樹脂が知られており、特許文献2には、電子部品用セパレータとして、多孔質ポリエチレンテレフタレートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−349586号公報
【特許文献2】特開2006−344506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素含有樹脂は、撥水撥油性を有するため、水や非プロトン性極性溶媒であるプロピレンカーボネート等を溶媒とする電解液に対して濡れ性が低くなってしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、延伸ポリテトラフルオロエチレン膜を基材として、電解液が染み込み・浸透しやすい性質を有し、熱収縮しにくく、取り扱い性に優れ、さらに、電解液中でも視認可能であるフィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のフィルムの製造方法は、下記工程(1A)、工程(2A)、工程(3)および工程(4)を含む、または
下記工程(1B)、工程(3)および工程(4)を含むことを特徴とする。
【0011】
工程(1A):延伸ポリテトラフルオロエチレン膜と、無機粉体が含まれた溶液とを接触させる工程、
工程(2A):工程(1A)で得られた膜と、親水性基を有する樹脂が含まれた溶液とを接触させる工程、
工程(1B):延伸ポリテトラフルオロエチレン膜と、無機粉体および親水性基を有する樹脂が含まれた溶液とを接触させる工程、
工程(3):工程(2A)または工程(1B)で得られた膜に、シランカップリング剤を付着させる工程、
工程(4):工程(3)で得られた膜を、50〜200℃で加熱し、乾燥させる工程。
【0012】
前記工程(1A)は、延伸ポリテトラフルオロエチレン膜を、無機粉体が含まれた溶液に浸漬させる工程であり、浸漬時間が5〜60秒であることが好ましい。
前記延伸ポリテトラフルオロエチレン膜が多孔質膜であって、その最大孔径(表面張力16dynes/cmのGalwickを用い、ASTM F316−86法に基づいて測定、測定装置;PMI社製PERM−POROMETER測定器)が0.01〜10μmであることが好ましい。
【0013】
前記シランカップリング剤は、ビニル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、スチリル系シランカップリング剤、(メタ)アクリロキシ系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤、クロロプロピル系シランカップリング剤、ポリスルフィド系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、トリアジン系シランカップリング剤およびイミダゾール系シランカップリング剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましく、
さらには、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランおよび3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0014】
前記無機粉体は、酸化チタンの表面をシリカでコーティングしてなる粉末、シリカ、酸化チタンおよびアルミナからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましく、その動的光散乱法で測定した平均粒子径が、使用する延伸ポリテトラフルオロエチレン膜の最大孔径以下であることが好ましい。
【0015】
前記親水性基を有する樹脂は、水酸基含有樹脂、カルボン酸基含有樹脂、スルホン酸基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂およびアミノ基含有樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましく、ポリビニルアルコールであることがさらに好ましい。
【0016】
本発明のフィルムは、前記製造方法で得られることを特徴とする。
前記フィルムは、275℃における収縮率が10%以下であることが好ましく、電解液中で視認可能であることが好ましい。
【0017】
前記フィルムは、セパレータであることが好ましく、電気二重層キャパシタ用セパレータであることがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の製造方法によれば、電解液(電解質)が染み込み・浸透しやすい性質を有し、熱収縮しにくく、取り扱い性に優れ、さらに、電解液中でも視認可能であるフィルムを容易に、安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、電解液中に浸漬させた実施例1で得られた膜、または未処理のePTFE膜のデジタルカメラ写真である。
【図2】図2は、水に浸漬させた後の、実施例1または参考例1で得られた膜の透過率曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るフィルムの製造方法および該製造方法で得られたフィルムにつき、さらに詳細に説明する。
≪フィルムの製造方法≫
本発明に係るフィルムの製造方法は、 下記工程(1A)、工程(2A)、工程(3)および工程(4)を含む、または
工程(1B)、工程(3)および工程(4)を含むことを特徴とするフィルムの製造方法。
【0021】
工程(1A):延伸ポリテトラフルオロエチレン膜と、無機粉体が含まれた溶液とを接触させる工程、
工程(2A):工程(1A)で得られた膜と、親水性基を有する樹脂が含まれた溶液とを接触させる工程、
工程(1B):延伸ポリテトラフルオロエチレン膜と、無機粉体および親水性基を有する樹脂が含まれた溶液とを接触させる工程、
工程(3):工程(2A)または工程(1B)で得られた膜に、シランカップリング剤を付着させる工程、
工程(4):工程(3)で得られた膜を、50〜200℃で加熱し、乾燥させる工程。
【0022】
このようなフィルムの製造方法によれば、電解液に対する濡れ性に優れ、電解液が染み込み・浸透しやすい性質を有し、熱収縮しにくく、取り扱い性に優れ、さらに、電解液中でも視認可能である等の性質を有するフィルムを容易に、安価に製造することができる。
【0023】
<工程(1A)、工程(2A)、工程(1B)>
工程(1A)では、後述するようなePTFE膜と、無機粉体(a)が含まれた溶液とを接触させる。工程(2A)では、工程(1A)で得られた膜と、親水性基を有する樹脂(b)が含まれた溶液とを接触させる。
【0024】
このePTFE膜は、該膜を形成する繊維間に多数の空隙(空間、孔)が存在し、これら空隙(孔)は、未延伸PTFE膜が1軸または2軸延伸され、少なくともその一部が繊維化することで画成(形成)される。これら空隙(孔)は、膜の表裏面や側面を貫通していたり、膜内部に存在している。
【0025】
工程(1A)および工程(2A)により、ePTFE膜の表面および/または孔内に、無機粉体(a)および親水性基を有する樹脂(b)等が付着(吸着)し、または結合(化学的、物理的)した膜を得ることができると考えられる。
【0026】
本発明に係るフィルムの製造方法では、工程(1A)および工程(2A)を含むことが無機粉体等が脱落する現象である「粉落ち」等のより起こりにくいフィルムを得ることができる点等から好ましいが、工程(1A)+工程(2A)は、ePTFE膜と、無機粉体および親水性基を有する樹脂が含まれた混合液とを接触させる工程(1B)であってもよい。工程(1B)により、ePTFE膜の表面および/または孔内に、無機粉体(a)および親水性基を有する樹脂(b)等が付着(吸着)し、または結合(化学的、物理的)した膜を得ることができると考えられる。
【0027】
ePTFE膜と、無機粉体(a)が含まれた溶液とを接触させる方法、工程(1A)で得られた膜と、親水性基を有する樹脂(b)が含まれた溶液とを接触させる方法、ならびにePTFE膜と、無機粉体(a)および親水性基を有する樹脂(b)が含まれた溶液とを接触させる方法は、特に制限されないが、例えば、
(x)膜に溶液を接触させる方法、具体的には、膜に溶液を滴下する方法、膜に溶液を塗布する方法等、
(y)溶液に膜を接触させる方法、具体的には、溶液に膜を浸漬させる方法等、
(z)膜と溶液を同時に容器に加え、両者を同時に接触させる方法
などが挙げられる。
【0028】
これらの中でも、ePTFE膜を、無機粉体(a)が含まれた溶液に浸漬する方法、および工程(1A)で得られた膜を、親水性基を有する樹脂(b)が含まれた溶液に浸漬する方法が好ましい。
【0029】
工程(1A)、工程(2A)および工程(1B)で用いられる溶液は、それぞれ、無機粉体(a)および/または親水性基を有する樹脂(b)に、溶媒(c)等を含んでなることが好ましく、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で添加剤等を含んでなることが好ましい。この溶液に含まれてもよい添加剤としては、架橋剤等が挙げられる。
【0030】
本発明では、工程(1A)または工程(1B)の前に、ePTFE膜を溶媒(c)等が含まれた溶液に浸漬する工程(0)を設けることが、基材となる膜と工程(1A)または工程(1B)で用いる溶液との接触性を向上でき、無機粉体が付着または結合しやすい膜を得る点から好ましい。工程(0)で用いる溶液は、実質的に、工程(1A)または工程(1B)で用いる溶液における溶媒と同じ溶媒のみからなることが好ましい。
【0031】
本発明においては、工程(1A)および/または工程(2A)の後、すなわち、工程(1A)と工程(2A)の間、または工程(2A)と工程(3)の間に、および工程(1B)の後に、工程(1A)、工程(2A)または工程(1B)で得られた膜(ウェット膜)を乾燥する工程(1’)を設けることが好ましい。
【0032】
本発明では、工程(2A)、工程(1B)または工程(1’)の後、工程(2A)、工程(1B)または工程(1’)で得られた膜を架橋剤が含まれた溶液に浸漬する工程(2’)を設けることが好ましい。この工程を設けることにより、無機粉体等が脱落する現象である「粉落ち」等のより起こりにくいフィルムを得ることができる。なお、工程(2’)で用いる溶液には、溶媒等が含まれていることが好ましく、前記溶媒としては、下記溶媒(c)が好ましい。架橋剤の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限されない。
【0033】
また、工程(2’)の後には、さらに、前記架橋剤を架橋させる工程(2’’)を設けることが好ましい。前記架橋剤を架橋させる方法は、用いる架橋剤の特性に応じて適宜選定され、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
【0034】
(工程(1A)、工程(2A)および工程(1B)の温度、圧力、時間条件)
工程(1A)、工程(2A)および工程(1B)は、通常室温(15〜25℃)、常圧(標準大気圧、1013.25hPa)下で行えばよいが、加熱(好ましくは25〜90℃)下で行ってもよく、常圧にさらに、好ましくは400〜2000Pa程度加圧した圧力下で行ってもよい。加圧下で行うことにより、無機粉体がよりePTFE膜の孔内に嵌入し、粉落ちの少ないフィルムを得ることができる場合がある。
【0035】
工程(1A)および工程(1B)が、ePTFE膜を溶液に浸漬する方法である場合における浸漬時間は、無機粉体(a)が付着または結合すれば特に制限されないが、好ましくは5〜60秒、さらに好ましくは5〜30秒である。浸漬時間が上記範囲にあると、過剰の無機粉体(a)が付着または結合しないため、粉落ちの少ないフィルムを得ることができ、工程時間が短くなることにより生産性が向上することが考えられる。
【0036】
[延伸ポリテトラフルオロエチレン膜(ePTFE膜)]
本発明で用いられる延伸ポリテトラフルオロエチレン膜(ePTFE膜)は、ポリテトラフルオロエチレンを延伸してなる膜であって、一軸延伸してなる膜または二軸延伸してなる膜のいずれでも構わないが、得られるフィルムの機械的強度等を考慮すると二軸延伸してなる膜が好ましく、多孔質膜であることが好ましい。
【0037】
このePTFE膜は、PTFEが有する耐熱性、耐薬品性、耐侯性および電気的絶縁性等の特性に加え、延伸していることにより孔を有し、柔軟性に富み、機械的強度が高い膜である。
【0038】
本発明で用いられるePTFE膜は、その表面には多数の孔が存在し、また、ePTFE膜は連通孔を有している。それらのうちの最大孔径(表面張力16dynes/cmのGalwickを用い、ASTM F316−86法に基づいて測定、測定装置;PMI社製PERM−POROMETER測定器)が、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.05〜2.0μmであり、さらに好ましくは0.1〜1.3μmであり、空孔率(ePTFE膜の所定体積中に存在する孔(空隙)の総(体積)割合をいう。測定方法;(PTFEの真密度−みかけの密度)×100/PTFEの真密度)は、好ましくは10〜90%である。
【0039】
ePTFE膜の表面に存在し、該膜の内部にも表裏面を連通するように存在する「孔」の最大孔径や、ePTFE膜の空孔率が前記範囲にあると、シランカップリング剤、無機粉体(a)および親水性基を有する樹脂(b)等を該ePTFE膜の表面および/または孔内に強固に保持することができ、ePTFE膜表面や該表面に存在する孔から無機粉体等が脱落する現象である「粉落ち」等の起こりにくいフィルムを得ることができる。また、ePTFE膜の最大孔径が前記範囲にあると、無機粉体(a)が付着または結合した後でも電解液中のイオンをスムーズに透過させることができるため、得られるフィルムはセパレータ、電気二重層キャパシタ用セパレータとして好適に使用することができる。
【0040】
本発明で用いられるePTFE膜の厚みは、所望の用途に応じて適宜変更することができるが、得られるフィルムの強度等を考慮すると、好ましくは3〜100μmであり、さらにこのましく3〜30μmである。ePTFE膜の厚みが前記範囲にあると、電極同士の接触を防ぎ、かつ、電解液中のイオンをスムーズに透過させることができるため、得られるフィルムは、セパレータ、電気二重層キャパシタ用セパレータとして好適に使用することができる。
【0041】
本発明で用いられるePTFE膜は、従来公知の方法で製造したもの(製造品)または市販品を用いることができる。
製造品としては、例えば、乳化重合PTFEを、押出・カレンダー成形して予備成形品を形成し、この予備成形品を延伸、熱処理(例えば、100〜370℃)することで得ることができる。
市販品としては、例えば日本バルカー工業(株)製、sa−PTFETM(平均孔径:0.3μm、空孔率:90%)などを挙げることができる。
【0042】
[無機粉体(a)]
本発明で用いられる無機粉体(a)としては、特に制限されないが、例えば、酸化チタン表面をシリカなどで表面コーティングした無機粒子、シリカ、酸化チタン、アルミナ、および炭素(カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンマイクロコイル(CMC)、ナノダイヤモンド等)粉末を挙げることができる。これらの無機粉体は、1種単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0043】
前記無機粉体(a)を用いることで、工程(1A)、工程(2A)、工程(1B)および工程(3)で得られる膜、ならびに工程(4)で得られるフィルムは熱収縮しにくくなり、得られるフィルムの腰を強化でき、該フィルムのハンドリング性(取扱い性)、および視認性を向上させることができる。
【0044】
これらの中でもシランカップリング剤(d)と結合し得る無機粉体であることが好ましく、酸化チタン表面をシリカでコーティングしてなる粉末、シリカ粉末、酸化チタンおよびアルミナからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましく、シリカ粉末または酸化チタン粉末がより好ましい。シリカ粉末または酸化チタン粉末を用いると、得られるフィルムは熱収縮しにくく、得られるフィルムに腰が現れる(弾力性に優れる)ため、取り扱い性が向上し、さらに、得られるフィルムの視認性を向上させることができる。また、該フィルム内に電解液が染み込み・浸透しやすい性質を有する。
ここで、「視認性」とは、フィルムを電解液中に静置した際に、該フィルムの存在を目視にて確認できる性質をいう。
【0045】
本発明で用いられる無機粉体の動的光散乱法で測定した平均粒子径は、上記ePTFE膜の表面や、表面から内部に向かって存在する孔の最大孔径以下であれば特に制限されないが、好ましくは0.01〜1μmである。無機粉体の孔径が前記範囲にあると、粉落ち等の起こりにくいフィルムを得ることができる。
【0046】
この工程(1A)および工程(1B)で用いられる溶液100重量部中の無機粉体(a)の含有量は、好ましくは0.01〜30重量部であり、さらに好ましくは0.1〜5重量部である。無機粉体の量が前記範囲にあると、粉落ち等が起こりにくく、視認性に優れるフィルムを得ることができる。
【0047】
[親水性基を有する樹脂(b)]
本発明で用いられる親水性基を有する樹脂(b)としては、親水性基を有する樹脂であれば特に制限はされないが、シランカップリング剤(d)と化学的または物理的に結合し得る樹脂であることが好ましい。
【0048】
親水性基を有する樹脂としては、例えば、水酸基含有樹脂、カルボン酸基含有樹脂、スルホン酸基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂およびアミノ基含有樹脂が挙げられる。
これらの樹脂は、1種単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0049】
水酸基含有樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコールとビニル基含有モノマーとの共重合体(例;ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等)、アクリルポリオール、フッ素含有ポリオール、ポリオキシアルキレンおよびポリエステルポリオールが挙げられる。
【0050】
カルボン酸基含有樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィン系モノマー;ブタジエン等のジエン系モノマー;スチレン等の芳香族基含有モノマー;アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマーのうちの何れか1種または2種以上のモノマー(i)と、
アクリル酸およびメタクリル酸等のカルボン酸基(−COOH)を有するモノマー(ii)とのコポリマー;
アクリル酸およびメタクリル酸等のカルボン酸基を有するモノマー(ii)のホモポリマー;
が挙げられる。
【0051】
スルホン酸基含有樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、スチレンとアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)の共重合体;
スチレンとn−ブチルアクリレートとアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)との3元系共重合体;
スチレンと2−エチルヘキシルアクリレートとアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)との3元系共重合体;
が挙げられる。
【0052】
エポキシ基含有樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、エポキシ基を有するアクリル系(共)重合体樹脂、エポキシ基を有するポリブタジエン樹脂、エポキシ基を有するポリウレタン樹脂およびこれらの樹脂の付加物もしくは縮合物が挙げられる。
【0053】
アミノ基含有樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアミドポリアミン、ポリアミジン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートおよびポリジメチルアミノエチルアクリレートが挙げられる。
【0054】
これらの親水性基を有する樹脂は、1種単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
これらの親水性基を有する樹脂の中でも、水酸基を多く有するため、ポリビニルアルコールが好ましい。
【0055】
親水性基を有する樹脂(b)は、工程(2A)および工程(1B)で用いる溶液中の親水性基を有する樹脂(b)の濃度が好ましくは0.001〜5重量%、より好ましくは0.1〜2重量%となる量で用いられる。
【0056】
親水性基を有する樹脂の使用量が前記範囲にあると、撥水撥油性のePTFEが基材であっても、電解液が染み込み・浸透しやすいフィルムを得ることができ、無機粉体の剥落が起こりにくいフィルムを得ることができる。
本発明で用いられる親水性基を有する樹脂(b)の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、500〜100000程度の範囲が好ましい。
【0057】
(溶媒(c))
前記溶媒(c)としては、前記無機粉体(a)を分散することができ、前記親水性基を有する樹脂(b)を溶解することができ、乾燥しやすい溶媒が好ましく、特に制限されないが、具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールおよびイソブチルアルコールなどのアルコール類;
酢酸メチル、酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどのエステル類;
アセトンおよびメチルエチルケトンなどのケトン類;
トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素類;
ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキサンなどのエーテル類;
等が挙げられる。
【0058】
これらの溶媒は1種単独で、または2種以上を混合して使用できる。これらの中でも、ePTFE膜に浸透しやすく、前記親水性基を有する樹脂(b)を溶解でき、無機粉体(a)と親水性基を有する樹脂(b)とを均一に混合できるため、イソプロピルアルコールが好ましい。
【0059】
なお、工程(1A)、工程(2A)および工程(1B)で用いられる溶媒は、同一であっても異なっていてもよい。
工程(1A)および工程(1B)における溶媒(c)の使用量は、特に制限されないが、工程(1A)および工程(1B)で用いられる溶液100重量部に対し、好ましくは70〜99.99重量部、より好ましくは95〜99.9重量部となる量で用いることが好ましい。
【0060】
工程(2A)における溶媒(c)は、特に制限されないが、工程(2A)で用いる溶液中の親水性基を有する樹脂(b)の濃度が前記範囲となる量で使用されることが好ましい。
【0061】
また、溶媒(c)の使用量は、工程(1A)、工程(2A)および工程(1B)で用いられる溶液の粘度が0.00001〜2Pa・s、さらには0.0001〜0.01Pa・sとなる量で用いることが好ましい。
【0062】
溶媒(c)使用量が前記範囲にあると、ePTFE膜を前記溶液に浸漬しやすくなる。
なお、溶媒(c)は、ePTFE膜の表面および/または孔内に無機粉体(a)および親水性基を有する樹脂(b)が付着、または結合(化学的および/または物理的)したフィルム(膜)を得るために用いられるものであるため、工程(1A)、工程(2A)および工程(1B)の後の膜、および最終的に得られるフィルム中には、前記溶媒(c)は実質的に残存していないことが好ましい。
【0063】
(架橋剤)
前記架橋剤は、特に制限されず、使用する親水性基を有する樹脂の種類に応じて、適宜選択すればよいが、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、クロルペンタンジオン等のケトン化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5トリアジン等の反応性のハロゲンを有する化合物;ジビニルスルホン等の反応性のオレフィンを持つ化合物;N−メチロール化合物;イソシアナート類;アジリジン化合物類;カルボジイミド系化合物類;エポキシ化合物;ムコクロル酸等のハロゲンカルボキシアルデヒド類;ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン誘導体;クロム明ばん、硫酸ジルコニウム、ほう酸、ほう酸塩、リン酸塩等の無機架橋剤;1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン等のジアゾ化合物;ジスクシイミジルエステルを含む化合物;および2官能性マレイン酸イミドなどが挙げられる。これらの中では、グルタルアルデヒドが好ましい。これらの架橋剤は、1種単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。前記架橋剤は、親水性基を有する樹脂(b)を架橋することができる化合物であり、前記架橋剤を用いることで、無機粉体(a)をePTFE膜の表面および/または内部に存在する孔内に強固に保持することができ、該膜から粉落ち等が起こりにくく、ひび割れしにくいフィルムを得ることができる。
【0064】
<工程(1’)>
工程(1’)では、工程(1A)、工程(2A)または工程(1B)で得られた膜(ウェット膜)を乾燥する。乾燥する方法としては特に制限されないが、工程(1A)、工程(2A)および工程(1B)で得られた膜を送風乾燥することが好ましい。
【0065】
工程(1’)の条件は、ePTFE膜の延伸状態を保持しつつ、ウェット塗膜中の溶剤を気散・除去できれば特に限定されず、温度、時間、圧力などの条件は、適宜設定し得るが、乾燥する温度は、好ましくは25〜200℃である。送風乾燥する際には、ノズルから送り出される気体がこの温度範囲にあることが好ましい。また、上記温度での乾燥時間は、好ましくは、10sec〜30minであり、また、圧力は、通常、常圧が採用されることが多い。
【0066】
<工程(3)>
工程(3)では、工程(2A)または工程(1B)で得られた膜(あるいは、工程(1’)で得られた乾燥膜)に、シランカップリング剤(d)を付着させる。
【0067】
工程(3)を実施することにより、工程(2A)または工程(1B)で得られた膜、あるいは、工程(1’)で得られた乾燥膜の表面および/またはその孔内に、シランカップリング剤等が付着し、または結合(化学的、物理的)した膜を得ることができると考えられる。
【0068】
工程(3)は、実質的にシランカップリング剤(d)のみを用いて行ってもよいし、さらに、溶媒等の添加剤を含んだ溶液(D)を用いて行ってもよいが、膜の表面および/またはその孔内に、均一にシランカップリング剤等が付着し、または結合(化学的、物理的)した膜を得る観点から、シランカップリング剤が含まれている溶液(D)を用いて行うことが好ましい。溶媒としては、前記と同様の溶媒(c)が挙げられる。
【0069】
工程(2A)または工程(1B)で得られた膜(工程(1’)で得られた乾燥膜)に、シランカップリング剤が含まれている溶液を付着させる方法としては、特に制限されないが、例えば、膜に溶液を滴下する方法、膜に溶液を塗布する方法および、膜を溶液に浸漬させる方法などが挙げられる。
【0070】
溶液を滴下する方法、溶液を塗布する方法は、従来公知の方法で行えばよい。なお、膜を溶液に浸漬させる方法は、前記と同様の方法が挙げられる。
溶媒(c)を含有する溶液を用いる場合であって、工程(2A)または工程(1B)(あるいは、工程(1’))で得られた膜を該溶液に浸漬することで、工程(3)を行う場合には、浸漬時間を短時間、好ましくは5分以下、さらに好ましくは30秒以下とすることが好ましい。
【0071】
工程(3)は、通常室温(15〜25℃)、常圧(標準大気圧、1013.25hPa)下で行えばよいが、加熱(好ましくは25〜90℃)下で行ってもよく、常圧にさらに、好ましくは400〜2000Pa程度加圧した圧力下で行ってもよい。
【0072】
[シランカップリング剤(d)]
本発明で用いられるシランカップリング剤としては、特に制限されないが、ビニル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、スチリル系シランカップリング剤、(メタ)アクリロキシ系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤、クロロプロピル系シランカップリング剤、ポリスルフィド系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤トリアジン系シランカップリング剤およびイミダゾール系シランカップリング剤などから選択使用でき、
エポキシ系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤および(メタ)アクリロキシ系シランカップリング剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。また、無機粉体(a)および親水性基を有する樹脂(b)と化学的または物理的に結合し得る化合物であることが好ましい。これらのシランカップリング剤は1種単独で、または2種以上を混合して使用できる。
【0073】
ビニル系シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン(KA−1003、信越シリコーン社製)、ビニルトリメトキシシラン(KMB−1003、同社製)、ビニルトリエトキシシラン(KBE−1003、同社製)、ビニルフェニルトリメトキシランが挙げられ、
エポキシ系シランカップリング剤としては、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越シリコーン社製)、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、4−グリシジルブチルトリメトキシシランが挙げられ、
スチリル系シランカップリング剤としては、例えば、p-スチリルトリメトキシシランが等挙げられ、
(メタ)アクリロキシ系シランカップリング剤としては、例えば、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM−502、信越シリコーン社製)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503、同社製)、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(KBE−503、同社製)、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(KBE−502、同社製)、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、同社製)が挙げられ、
アミノ系シランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、KBM−903、信越シリコーン社製)、N−3−(4−(3−アミノプロポキシ)ブトキシ)プロピル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(KBM−502、同社製)、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、KBM−603、同社製)、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE−603、同社製)、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミンとその部分加水分解物、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−573、同社製)、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩(KBM−575、同社製)が挙げられ、
ウレイド系シランカップリング剤としては、例えば、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン(KBE−585,信越シリコーン社製)が挙げられ、
クロロプロピル系シランカップリング剤としては、例えば、3-クロロプロピルトリメトキシシラン(KBM−703,信越シリコーン社製)が挙げられ、
ポリスルフィド系シランカップリング剤としては、例えば、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが挙げられ、
イソシアネート系シランカップリング剤としては、例えば、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられ、
メルカプト系シランカップリング剤としては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM−803、信越シリコーン社製)、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(KBM−802、同社製)が挙げられる。
【0074】
その他に、トリアジン系のトリアジンシラン、イミダゾール系のイミダゾールシラン(日鉱金属(株)製):
【0075】
【化1】

等が挙げられる。
【0076】
これらのシランカップリング剤のうちでは、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルフェニルトリメトキシラン、4−グリシジルブチルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−3−(4−(3−アミノプロポキシ)プトキシ)プロピル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシランおよびγ−メルカプトプロピルトリメトキシシランが無機粉体をePTFE膜表面および/または孔に良好に保持・固定できる点を考慮すると好ましく挙げられる。
【0077】
これらの中でも、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランおよび3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが同上の点から好ましい。
【0078】
また、前記シランカップリング剤は、用いる電解液の種類にもよるが、エーテル基を有することが、得られるフィルムの電解液に対する濡れ性を向上することができる点から好ましい。
【0079】
シランカップリング剤は、得られる膜に本発明の効果を損なわない範囲でシランカップリング剤が付着するような量で用いれば特に制限されないが、工程(3)を溶媒等の添加剤を含んだ溶液(D)を用いて行う場合には、シランカップリング剤は、該溶液(D)中のシランカップリング剤の濃度が好ましくは0.001〜20重量%、より好ましくは0.5〜15重量%となる量で用いられる。シランカップリング剤の使用量が前記範囲にあると、無機粉体および親水性基を有する樹脂等を、該ePTFE膜の表面および/または内部に存在する孔内に強固に保持することができ、該膜から粉落ち等が起こりにくく、視認性に優れるフィルムを得ることができる。
本発明で用いられるシランカップリング剤は、従来公知の方法で製造したものまたは市販品を用いることができる。
【0080】
<工程(4)>
工程(4)では、工程(3)で得られた膜を加熱し、乾燥させる。この工程(4)で印加する温度は、工程(3)で得られた膜に含まれていることのある溶媒を乾燥できる温度であれば特に制限れないが、50〜200℃、好ましくは100〜200℃であり、より好ましくは100〜120℃である。さらに、ePTFE膜の表面および/または孔内付着または結合(化学的および/または物理的)したシランカップリング剤(d)が反応する温度であることが好ましい。
【0081】
工程(4)を実施することにより、シランカップリング剤(d)等が無機粉体(a)や親水性基を有する樹脂(b)と反応し、ePTFE膜の表面および/または該表面から膜内部に向かって存在する孔内に、無機粉体(a)や親水性基を有する樹脂(b)等が強固に付着し、または結合(化学的、物理的)した膜を得ることができると考えられる。
【0082】
この結果、電解液中での視認性に優れ、腰があり、取扱い性に優れ、熱収縮率しにくい、電解液をePTFE膜に短時間に含浸させることができるなど、所望の物性を具備し、セパレータとして、特に、電気二重層キャパシタ用のセパレータや電池セパレータとして好適に使用し得るフィルムを得ることができると考えられる。
【0083】
乾燥時間は、特に制限されないが、好ましくは30秒〜300分である。
乾燥は、前記温度範囲で、常圧(標準大気圧、1013.25hPa)下で行えばよいが、加圧下で行ってもよい。
【0084】
本発明では、工程(4)の後に、さらに工程(4)で得られた膜に存在し得る溶媒および未反応の親水性基を有する樹脂(b)、架橋剤、シランカップリング剤(d)等を溶解させる工程(4’)を設けることが好ましい。工程(4’)の方法は、特に制限されない。
【0085】
この工程を行うことにより、最終的に得られるフィルムの使用時に、該使用環境において不純物となり得る未反応の親水性基を有する樹脂(b)、架橋剤、シランカップリング剤(d)等の溶出量を低減することができる。
【0086】
≪フィルム≫
本発明のフィルムは、前記製造方法で得られる。
該フィルムにおいては、ePTFE膜の表面および/または孔内に無機粉体、親水性基を有する樹脂およびシランカップリング剤等が強固に付着し、または結合(化学的および/または物理的)していると考えられる。
【0087】
このフィルムは、
(イ)水との接触角が好ましくは0〜30°であり、滴下後1秒以内に膜の色が変化するため、水の浸透性が極めて良好である。
【0088】
(ロ)電解液(製品名TEMA−BF/SLF:DMC、東洋合成社製、組成(重量比);0.9Mホウフッ化トリエチルメチルアンモニウム(TEMA−BF)/テトラヒドロチオフェン1,1−ジオキシド(SLF):炭酸ジメチル(DMC)=8:2)との接触角が0〜30°であり、滴下後、10秒以内に膜の色が変化するため、浸透性が極めて良好である。
【0089】
(ハ)275℃における収縮率が好ましくは10%以下であり、より好ましくは8%以下である。
(二)電解液中でも視認可能である。(視認性は、色度計、分光光度計などを用いて確認することができる。)
特に、電解液(製品名TEMA−BF/SLF:DMC、東洋合成社製、組成(重量比);0.9Mホウフッ化トリエチルメチルアンモニウム(TEMA−BF)/テトラヒドロチオフェン1,1−ジオキシド(SLF):炭酸ジメチル(DMC)=8:2)中で視認可能であることが好ましい。
【0090】
このため、本発明のフィルムは、ePTFEの有する耐熱性、耐薬品性、耐侯性、電気的絶縁性および機械的強度に優れる特性を有し、かつ、電解液に対する濡れ性に優れ、電解液が染み込み・浸透しやすい性質等を有する。また、本発明のフィルムは、熱収縮しにくく、腰が強く取り扱い性に優れ、さらに、電解液中でも視認可能であるため、例えば、電気二重層キャパシタを製造するに際して、該キャパシタ用のセパレータとして電解液中にセットしたり、さらには、このフィルム(セパレータ)が適正位置にセット(装着)されているか否かの判断(検査・確認)も容易であり、キャパシタを製造する際の作業性、取扱い性に等優れる。
【0091】
本発明のフィルムは、前記の特性を有するため、電気二重層キャパシタ用、リチウムイオン二次電池用、ポリマーリチウム電池用、アルミニウム電解コンデンサ用のセパレータおよび燃料電池用材料等として好適に用いることができる。
【0092】
電気二重層キャパシタでは、その電解液として、水系、有機系(プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、アセトニトリル、スルホランなどの非プロトン性極性溶媒に、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートやテトラエチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルアンモニウム過塩素酸塩などの有機溶質、または、リチウム、第4級ホスホニウム、トリエチルメチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウム、などのカチオンとBF、PF、ClO、CFSOなどのアニオンからなる無機溶質を溶解したものなど)およびイオン液体(イミダゾリウム系、ピリジウム系、脂環式アミン系、脂肪族アミン系、脂肪族ホスホニウム系等の陽イオンと、BF、PF等の無機イオン系、CFSO、(CFSO、CFCO等のフッ素系等の陰イオンとの組合せたもの)などが用いられているが、本発明のフィルムには、そのどちらの電解液(電解質)に対しても濡れ性に優れ、染み込み・浸透しやすい。そのため、このような本発明のフィルムを電気二重層キャパシタ用セパレータとして用いる場合には、電気二重層キャパシタの製造時間を短縮し、生産性を向上させることができる。また、本発明のフィルムは、基材がポリテトラフルオロエチレンからなるため、様々な種類の電解液に対しても腐食しにくい。そのため、様々な電解液を選択でき、さらに、寿命の長いセパレータを得ることができる。
【0093】
本発明に係るフィルムの最大孔径(表面張力16dynes/cmのGalwickを用い、ASTM F316−86法に基づいて測定、測定装置;PMI社製PERM−POROMETER測定器)は、好ましくは0.01〜10μmである。
【0094】
本発明に係るフィルムの孔径が前記範囲にあると、電解液中のイオンをスムーズに透過させることができるため、電気二重層キャパシタ用セパレータとして好適に使用することができる。
【0095】
本発明に係るフィルムの厚みは、所望の用途に応じて適宜変更することができるが、得られるフィルムの強度等を考慮すると、好ましくは3〜100μmであり、さらにこのましく3〜30μmである。本発明に係るフィルムの厚みが前記範囲にあると、電極同士の接触を防ぎ、かつ、電解液中のイオンをスムーズに透過させることができるため、電気二重層キャパシタ用セパレータとして好適に使用することができる。
【0096】
[実施例]
以下、本発明の製造方法を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0097】
[実施例1]
平均孔径0.3μm、厚み25μm、最大孔径(表面張力16dynes/cmのGalwickを用い、ASTM F316−86法に基づいて測定、測定装置;PMI社製PERM−POROMETER測定器)0.4μmのePTFE膜(日本バルカー工業(株)製、sa−PTFETM)をイソプロピルアルコール溶液(以下「IPA」ともいう。)に浸漬させた。CIKナノテック社製、RTIPA15WT%−G0(IPAにルチル型TiOを分散させたスラリー状液体、TiO濃度;15重量%)をIPAで50倍に希釈した溶液500mlを入れたバットに、IPA溶液に浸漬後のePTFE膜を30秒間浸漬させた。得られた膜を1重量%濃度に調整したポリビニルアルコール(和光純薬株式会社製、重合度1500、以下「PVA」ともいう)水溶液500ml中に浸し、次いで、グルタルアルデヒド5%溶液500ml(和光純薬株式会社製25%グルタルアルデヒド水溶液を純水にて希釈、5%溶液に調整したもの)に数秒間浸漬させた。その後、グルタルアルデヒドを架橋させるために塩酸(濃度0.05N水溶液)に数秒間浸漬させた。
【0098】
得られた膜をシランカップリング剤のIPA希釈溶液(信越化学工業株式会社製、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、KBM−403を10vol%濃度に調整したIPA溶液)に浸漬させ、その後、110℃で、10分間乾燥させた。乾燥は乾燥機内で行った。次いで、乾燥後のサンプルを水中に入れ、95℃にて30分間煮沸し、未反応のPVA、グルタルアルデヒド、シランカップリング剤、およびIPAを溶解させることで、フィルムを得た(以下「処理品」ともいう。)。
【0099】
このように作ったフィルムを以下の方法で評価した。
[参考例1]
CIKナノテック社製、RTIPA15WT%−G0をIPAで50倍に希釈した溶液500mlを入れたバットに、IPA溶液に浸漬後のePTFE膜を30秒間浸漬させる工程を行わない以外は、実施例1と同様にして膜を得た(以下「無機物未含有品」ともいう。)。
【0100】
(接触角評価)
接触角計(協和界面科学株式会社製、接触角計、CA−X型)を用いて、下記電解液の浸透性についての検討を行った。
【0101】
・電解液 (TEMA−BF/SLF:DMC、東洋合成社製、組成(重量比);0.9Mホウフッ化トリエチルメチルアンモニウム(TEMA―BF)/テトラヒドロチオフェン1,1−ジオキシド(SLF):炭酸ジメチル(DMC)=8:2)
なお、浸透性の評価は、実施例1で得られた処理品、および、日本バルカー工業(株)製のsa−PTFETM(平均孔径0.3μm、厚み25μmのePTFE膜、以下「未処理品」ともいう。)を上記電解液に浸漬後、10秒以内に浸透した場合を「◎」、10秒を超えて30秒以内に浸透した場合を「○」、30秒を超えて60秒以内に浸透した場合を「△」、60秒を超えても浸透しない場合を「×」として行った。
【0102】
【表1】

【0103】
(収縮率の検討1)
下記表2に示す縦(A)、横(B)の大きさに切り出したサンプルを275℃のホットプレート上に置き、で熱収縮試験を行った。熱収縮率は、用いたサンプルの大きさと、30秒ホットプレート上に置いた後のサンプルの大きさ(縦(a)、横(b))と、から算出した。「収縮率」は、−(a−A)×100/Aまたは、−(b−B)×100/Bで表わされる式により算出した。
【0104】
未処理品と比較した場合、27%から7%まで、25%から5%までの熱収縮率の改善ができた。
【0105】
【数1】

【0106】
【表2】

【0107】
(収縮率の検討2)
実施例1の処理品または未処理品を直径15mmの円状に打ち抜き、下記電解液中に浸した。電解液は浸漬から数秒後に処理品に浸透した。
【0108】
・電解液(TEMA−BF/SLF:DMC、東洋合成社製、組成(重量比);0.9Mホウフッ化トリエチルメチルアンモニウム(TEMA−BF)/テトラヒドロチオフェン1,1−ジオキシド(SLF):炭酸ジメチル(DMC)=8:2)
電解液が浸透した後の処理品を金属のプレートにのせ、275℃に設定した電気炉内に放置し、30秒後に取り出し、収縮率を測定した。
【0109】
また、未処理品を電解液に浸漬させた状態で、275℃に設定した電気炉内に放置し、30秒後に取り出し、収縮率を測定した。
処理品は、寸法にほとんど変化がなかった。
【0110】
なお、「収縮率」は、−(x−X)×100/Xまたは、−(y−Y)×100/Yで表わされる式により算出した。
本発明のフィルムは、275℃という高温下でも寸法がほとんど変化しないため、リフロー工程に十分耐えうるフィルムである。よって、本発明のフィルムは、高温下でも収縮、熱溶融および破損等しにくいため、高温下で長時間使用でき、セパレータ、電気二重層キャパシタ用セパレータに好適に用いることができる。また、本発明のセパレータを用いることで、電気二重層キャパシタを容易に製造することができる。
【0111】
【表3】

【0112】
【数2】

【0113】
(色の評価)
前記収縮率の検討2で電解液に浸漬中のサンプルを、デジタルカメラを用いて撮影した。
結果を図1に示す。一番左の点線で囲った部分にあるのが未処理品であり、真ん中と右の円状物は、実施例1で得られた処理品である。円の周りの黒い部分は、電解液である。
【0114】
実施例1で得られた処理品は、電解液中に存在することを目視により確認することができるが、未処理品は、電解液中では、その存在を目視により確認することができなかった。
また、処理品と未処理品とは、RGBの数値で表わした時に差異がある。
【0115】
(視認性の評価(透過率))
視認性を検討するためにU−3000型分光光度計(日立ハイテク社製)を用いて測定した。具体的には、実施例1または参考例1で得られた膜を水中に10分間浸漬したサンプルを用い、水含浸後のサンプルの透過率を、波長340〜900nmの範囲で測定した。
【0116】
水含浸後の参考例1で得られた無機物未含有品は、波長340〜900nmの範囲で比較的高透過率を示した。一方、実施例1で得られた処理品は低波長ほど透過率が下がり、紫外領域近くでは、透過率がほぼゼロになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(1A)、工程(2A)、工程(3)および工程(4)を含む、または
工程(1B)、工程(3)および工程(4)を含む
ことを特徴とするフィルムの製造方法。
工程(1A):延伸ポリテトラフルオロエチレン膜と、無機粉体が含まれた溶液とを接触させる工程、
工程(2A):工程(1A)で得られた膜と、親水性基を有する樹脂が含まれた溶液とを接触させる工程、
工程(1B):延伸ポリテトラフルオロエチレン膜と、無機粉体および親水性基を有する樹脂が含まれた溶液とを接触させる工程、
工程(3):工程(2A)または工程(1B)で得られた膜に、シランカップリング剤を付着させる工程、
工程(4):工程(3)で得られた膜を、50〜200℃で加熱し、乾燥させる工程。
【請求項2】
前記工程(1A)が、延伸ポリテトラフルオロエチレン膜を、無機粉体が含まれた溶液に浸漬させる工程であり、浸漬時間が5〜60秒であることを特徴とする請求項1に記載のフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記延伸ポリテトラフルオロエチレン膜が多孔質膜であって、その最大孔径(表面張力16dynes/cmのGalwickを用い、ASTM F316−86法に基づいて測定、測定装置;PMI社製PERM−POROMETER測定器)が0.01〜10μmであることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記シランカップリング剤が、ビニル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、スチリル系シランカップリング剤、(メタ)アクリロキシ系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤、クロロプロピル系シランカップリング剤、ポリスルフィド系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、トリアジン系シランカップリング剤およびイミダゾール系シランカップリング剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記シランカップリング剤が、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランおよび3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記無機粉体が、酸化チタンの表面をシリカでコーティングしてなる粉末、シリカ、酸化チタンおよびアルミナからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記無機粉体の動的光散乱法で測定した平均粒子径が、使用する延伸ポリテトラフルオロエチレン膜の最大孔径以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記親水性基を有する樹脂が、水酸基含有樹脂、カルボン酸基含有樹脂、スルホン酸基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂およびアミノ基含有樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記親水性基を有する樹脂が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法で得られたフィルム。
【請求項11】
前記フィルムの275℃における収縮率が10%以下であることを特徴とする請求項10に記載のフィルム。
【請求項12】
前記フィルムが電解液中で視認可能であることを特徴とする請求項10または11に記載のフィルム。
【請求項13】
前記フィルムが、セパレータであることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項14】
前記セパレータが、電気二重層キャパシタ用セパレータであることを特徴とする請求項13に記載のフィルム。

【図2】
image rotate

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−99574(P2012−99574A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244472(P2010−244472)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)
【Fターム(参考)】