説明

フィルムへのゴミ付着防止装置

【課題】プラスチックフィルムの製造ラインやコーティングライン、あるいは輸送ラインなどのフィルム搬送過程においてフィルムへのゴミや埃などの付着を簡便かつ効果的に防止できる装置を提供する。
【解決手段】プラスチックフィルムが搬送される搬送路の下方に空中から落下するゴミや埃などを捕捉する水を収容した水バスを備えたフィルムへのゴミ付着防止装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチックフィルムの製造ラインやコーティングライン、輸送ラインなどのフィルム搬送過程においてフィルムへのゴミや埃などの付着を防止する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フィルム製造やフィルム搬送ラインにおいては機器の配置や建物の制限から床面に近い部分や機器構造物の上部付近をフィルムパスが通る場合がある。また、プラスチッックフィルムでは静電気が起こりやすく、前述のフィルムパス部分において床面上などに溜まったゴミや埃などがフィルムへ静電気力で引き寄せられ付着する。また該当部分付近の気流の流れによってゴミや埃などが舞い上がる時は更にフィルムへのゴミ付着が多くなる。
【0003】
このようにフィルムへゴミや埃などが付着することによって様々な問題が後の工程で発生し、フィルムの品質が著しく損なわれることとなる。しかも、ゴミや埃などの付着自体がフィルム品質の低下となるだけでなく、ゴミや埃などが付着した状態で付着面がロールに接するとロールとフィルムとの間の微小な速度差によりフィルムに傷が発生することもある。
【0004】
したがって、どうしてもフィルムにゴミや埃などが付着することが回避できない場合には、特許文献1に提案されているように、フィルムなどに付着したゴミや埃などを洗浄するようなことが行われている。しかしながら、このような従来技術では、フィルムを洗浄するための装置が必要となるのでコストアップとなるばかりでなく、限られたスペースに洗浄工程を設けることにも制限が生じてしまう。
【0005】
そこで、このようなゴミや埃などの付着という問題を避けるために、単純にフィルム搬送経路をなるべくゴミや埃などの発生源である床面や機器上部から離すことが考えられる。しかしながら、設備配置の制限などからどうしても床面や機器上部にフィルムパスが近くなる場合が発生するので、該当部分を常に清浄に保つように清掃頻度を上げる必要があった。
【0006】
しかし、この様な従来の方法では、床面や機器上部を清掃維持するのはなかなか難しく、特に連続運転ラインでは清掃するタイミングが非常に限られる。その結果として、運転中に清掃作業をするとかえってホコリを舞い上げる結果となりかねない。またこの様に配置に制限がある場合は元々スペースが限られているため、清掃自体が非常にやりにくく、状態が見えづらいことから清掃が完全に行われにくい問題があった。
【0007】
そこで、この対策として粘着シートを床面に設置することもあるが、長時間の使用ではホコリや異物が堆積し効果がなくなる。また、気流によるゴミや埃などの舞い上がりもあり、特に高品質の光学用フィルムなどでは大きな問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−183485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上に説明した従来技術が有する諸問題に鑑み、本発明の目的は、プラスチックフィルムの製造ラインやコーティングライン、あるいは輸送ラインなどのフィルム搬送過程においてフィルムへのゴミや埃などの付着を簡便かつ効果的に防止できる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は、本発明に係る「プラスチックフィルムが搬送される搬送路の下方に空中から落下するゴミや埃などを捕捉する水を収容した水バスを備えたことを特徴とするフィルムへのゴミ付着防止装置」によって解決される。
このとき、本発明に係る装置としては、前記水バスに収容された水を連続的または間欠的に置換する給排水設備を備えることが水を常時清浄に維持できるため好ましい。
【0011】
更に、本発明に係る装置として、前記給排水設備の排水側に堰を設け、前記堰を介して水を排水することが水面上に浮かんだゴミや埃などを絶えず効果的に回収して、水を常時清浄に維持できるために好ましい。
【発明の効果】
【0012】
搬送フィルムへのゴミや埃などの付着の供給元となる、床面や機器上面が浅い水面で覆われているため、一度その部分に落下したゴミや埃などが再び舞い上がり、搬送フィルム側へ付着することがない。また、水面が常時新しい水で置換されるため、常にきれいな状態に自動的に保たれ、落下したゴミや埃などが水面に堆積することがない。
【0013】
したがって、長期連続運転のフィルムラインの搬送部分においても、該当場所でのフィルムへの異物付着がなく、高品質のフィルムの製造が継続的に可能となる。更に、多くの場合フィルムは静電気を帯びて、ゴミや埃などを吸引する力が働いているが、本方法では水によりゴミや埃などの舞い上がりフィルムへの付着が防止される。また、搬送装置周りの風の流れがあってもゴミや埃などの舞い上がることがない環境が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】フィルム搬送系へ適用した本発明に係る装置の一実施形態を例示した説明図(側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の詳細について図面を参照しながら説明する。
図1はポリエステルなどのプラスチックからなるフィルムの製造工程のフィルム搬送路にゴミ付着防止装置を設けた一実施形態を例示した側面図である。この図1において、各参照符号について説明すると、符号1は搬送ロール、符号2は搬送ロール、符号3は床面、符号4は水を収容する水バス、符号5は堰、そして、符号6は水面をそれぞれ表している。
【0016】
一般に、図1に例示したようなフィルムの製造工程において、フィルムは回転するロール1によって駆動され搬送される。このとき、図1の実施形態例に示したように、ロール1からロール2までの間を搬送されるフィルムは、その搬送路が床面3に近接した状態で設けられることも多い。
【0017】
そうすると、床面3から舞い上がった微小なゴミや埃などがフィルムに付着しやすくなる。なお、実際にフィルムにゴミや埃などが付着すると、付着したゴミや埃などがフィルムの品質などに悪影響を与えることは既に説明したとおりである。そこで、本発明においては、搬送路が床面3に近接したような状態で走行するフィルムに対して、浅い水面が形成された水バス4を床面3上に設置する。このようにすれば、ゴミや埃などは床面3上に落下せずに直接水バス4中に落下して、水バス4の中に収容された水に捕捉されることとなり、捕捉されたゴミや埃などが空中に再び舞い上がることがなくなる。
【0018】
しかしながら、床面3上に設置された水バス4に収容された水に捕捉されたゴミや埃などが水バス4に滞留したり、水バス4中に収容された水が置換されずにそのまま放置されたりすると、水が汚れる。
【0019】
そこで、本発明の好ましい実施形態においては、水バス4の一方側から常時少量の水を供給し、他方側から堰5を介してオーバーフローさせて排水する給排水設備を設ける。なお、水バス4に設けられた堰5は、水バス4の水面位置を絶えず一定にする役割を果たす。また、空中に舞い上がるようなゴミや埃などは、水の比重よりも小さな比重を有しているため、水バス4の水面6に浮かんでいるため、堰5を越えてオーバーフローする水と共に移動して排出される。
【0020】
このとき、本発明に係る給排水設備としては、水バス4の給水側にフィルム幅方向に対して数箇所の水の供給箇所を設けて、水バス4の幅方向に均一な水の流れを形成させることが好ましい。更に、堰5の上端を水平に設置することによって、排水がフィルムの幅方向に均一にオーバーフローするようにすることが好ましい。
【0021】
この場合、水バス4の水深は極力浅い方が良いが、水バス4の必要水面積と水バス4の底面の水平度を確保するための製作精度と、水バス4を水平に設置する場合の水平設置精度とに応じて、床面3から舞い上がるゴミや埃などの影響を防止できる水バス4の水面積が確保できる最低限以上あれば良い。なお、水の供給量は設置する場所に発生するゴミや埃などの量の条件に応じて、設置された水バス4の水面が清浄な状態を維持できる量以上であれば良い。あるいは、水バス4の水面が清浄な状態を常時維持できるように、間欠的あるいは連続的に水が供給されて水バス4の内部の水が置換されれば良い。なお、水バス4の設置場所は、床面3に限定することなく、機器上部に設置できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0022】
1:搬送ロール
2:搬送ロール
3:床面
4:水バス
5:堰
6:水面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムが搬送される搬送路の下方に空中から落下するゴミや埃などを捕捉する水を収容した水バスを備えたことを特徴とするフィルムへのゴミ付着防止装置。
【請求項2】
前記水バスに収容された水を連続的または間欠的に置換する給排水設備を備えた、請求項1記載のフィルムへのゴミ付着防止装置。
【請求項3】
前記給排水設備の排水側に堰を設け、前記堰を介して水を排水する、請求項1または請求項2に記載のフィルムへのゴミ付着防止装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−253382(P2010−253382A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106454(P2009−106454)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】