説明

フィルムケース

【課題】切断時のラップの張りを確実に確保し、なおかつ切断後のラップの蓋部側への付着やラップの巻き戻りを抑制する。
【解決手段】フィルムケース1は、収納されたラップRを巻筒Aから引き出すための開口部20が形成されたケース本体部10と、ケース本体部10の長手方向に延びる軸22の周りに回動し、開口部20を開閉する蓋部11を有する。蓋部11の内面には、開口部20を閉鎖する際にラップRを切断する刃部30と、ケース本体部10との間でラップRを押える押え部31、32が設けられている。押え部31、32は、蓋部11の幅方向の刃部30を挟んだ両側に配置されている。ケース本体部10には、刃部30と押え部31、32が挿入される溝50〜52がそれぞれ設けられている。押え部31、32の少なくとも一方は、刃部30よりも開口部20側に突出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻筒に巻かれたフィルムを収納するフィルムケースに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば円筒状の巻筒に巻かれたラップなどのフィルムは、フィルムケースに収納される。通常フィルムケースには、蓋に刃が取り付けられており、使用者は、フィルムをフィルムケースから必要な長さ引き出し蓋の刃で切断して使用する。
【0003】
上述のフィルムケースには、様々な種類のものがある。例えば刃付きの蓋を閉めることによって、フィルムを切断するフィルムケースが提案されている(特許文献1、2参照)。このフィルムケースでは、蓋を閉めないとフィルムを切断できないため、使用者のフィルムの切断のやり方が自然に同じになり、誰が使っても適切にフィルムを切断することができる。
【0004】
上記種類のフィルムケースとして、例えば蓋側の刃が入る切断溝の両側にフィルムのグリップ面が配置され、フィルムの切断時には、当該グリップ面と、その両側の縦フランジでフィルムを保持し、フィルムに張力を付加するものが提案されている(特許文献3参照)。これにより、フィルムの切断を滑らかに行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−136966号公報
【特許文献2】特開2005−88991号公報
【特許文献3】特表2005−526630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のフィルムケースでは、フィルムのグリップ面への引っ掛かり具合によって、フィルムに十分な張力がかからない可能性がある。フィルムに十分な張力がかからない場合があると、切断時にフィルムが撓んで切断が適切に行われないことが生じるので、切断が安定しなくなる。また、上述のフィルムケースでは、切断後に蓋側の縦フランジにフィルムが付着したり、フィルムが巻筒に巻き戻ることが考えられ、その場合、次にフィルムを引き出す作業が困難になる。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、切断時のフィルムの張りを確実に確保し、なおかつ切断後のフィルムの蓋側への付着やフィルムの巻き戻りを抑制することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明は、巻筒に巻かれたフィルムを収納するフィルムケースであって、収納されたフィルムを前記巻筒から引き出すための開口部が長手方向に沿って形成されたケース本体部と、前記ケース本体部の長手方向に延びる軸の周りに回動し、前記開口部を開閉する蓋部と、を有し、前記蓋部の前記開口部側の内面には、当該蓋部の長手方向に沿って形成され、前記開口部を閉鎖する際にフィルムを切断する刃部と、前記蓋部の長手方向に沿って形成され、前記開口部を閉鎖する際に前記ケース本体部との間でフィルムを押える押え部が設けられ、前記押え部は、前記蓋部の幅方向の前記刃部を挟んだ両側に配置され、前記ケース本体部には、前記蓋部により前記開口部を閉鎖する際に前記刃部と前記押え部が挿入される溝がそれぞれ設けられ、前記押え部の少なくとも一方は、前記刃部よりも前記開口部側に突出している。
【0009】
本発明によれば、蓋部の刃部の両側に配置された押え部が、ケース本体部側の溝内に挿入されるので、切断時のフィルムの張りを確実に確保でき、フィルムの切断を安定させることができる。また、切断時にフィルムが溝の中に入り、フィルムとケース本体部との密着性が上がるので、切断後のフィルムの蓋部側への付着やフィルムの巻き戻りを抑制でき、次のフィルムの引き出し作業を適切に行うことができる。また、刃部の外側の押え部が溝に入るので、刃部が外部から完全に隠れ、切断時に使用者が誤って刃部に触れることも防止される。なお、両方の前記押え部が、前記刃部よりも前記開口部側に突出していてもよい。
【0010】
前記刃部より前記蓋部の幅方向の外側の押え部は、内側の押え部よりも前記開口部側に突出していてもよい。かかる場合、フィルムの刃部よりも外側の部分、つまりフィルムの使用者側に近い部分が先に押えられ、その後フィルムの刃部よりも内側の部分が押えられて、刃部におけるフィルムの張りができる。それ故、使用者によるフィルムの引き出しの張力の強弱に関わらず、刃部におけるフィルムの張りを確保できる。
【0011】
また、前記刃部の先端は、前記外側の押え部と内側の押え部との頂点を結んだ仮想線の内部に位置してもよい。かかる場合、前記刃部と使用者の指先等との接触を回避することができる。前記内側の押え部が前記刃部の先端よりも突出した構成であれば、なおよい。
【0012】
前記蓋部の前記内側の押え部より内側には、前記蓋部により前記開口部を閉鎖する際に前記ケース本体部との間でフィルムを押える他の押え部が設けられ、前記ケース本体部には、前記蓋部により前記開口部を閉鎖する際に前記他の押え部が挿入される他の溝が設けられていてもよい。かかる場合、切断により巻筒側に残るフィルムが押えられるので、切断時にフィルムの巻き戻りを防止できる。また、フィルムとケース本体部の密着性が上がるので、切断後のフィルムの蓋部側への付着を抑制できる。これにより、次のフィルムの引き出し作業がより行い易くなる。
【0013】
前記他の溝には、前記他の押え部が入り込む凹部が形成されていてもよい。かかる場合、フィルムとケース本体部との密着性がさらに上がるので、切断後のフィルムの蓋側への付着やフィルムの巻き戻りを抑制でき、次のフィルムの引き出し作業がより行い易くなる。
【0014】
前記押え部と当該押え部が挿入される前記溝は、前記蓋部の軸周りの周方向に沿った円弧状に形成されていてもよい。かかる場合、蓋の開閉に伴う押え部の回動に沿った形で、溝の形が形成されるので、例えば溝の幅を最小限にしてケース本体部をコンパクト化できる。
【0015】
前記刃部より前記蓋部の幅方向の外側の押え部が挿入される前記溝の外側の内壁には、内側に突出する突部が形成されていてもよい。かかる場合、外側の押え部と、その溝の外側の内壁の突部との間にフィルムを挟んで押えることができるので、刃部に対して溝の内側の内壁に比べてより遠いところでフィルムが押えられる。これにより、フィルムを押える部分と切断する部分との間に十分な距離ができ、例えばフィルムの一部に張力がかかり過ぎて切断に不具合が生じることを抑制できる。また、フィルムが押えられる部分がよりフィルムの取り出し口側に近くなるので、切断後のフィルムを取り出し易くなる。
【0016】
前記刃部より前記蓋部の幅方向の内側の押え部が挿入される前記溝の内側の内壁には、外側に突出する突部が形成されていてもよい。かかる場合、内側の押え部と、溝の内側の内壁の突部との間にフィルムを挟んで押えることができるので、刃部に対して溝の外側の内壁に比べてより遠いところでフィルムが押えられる。これにより、フィルムを押える部分と切断する部分との間に十分な距離ができ、例えばフィルムの一部に張力がかかり過ぎて切断に不具合が生じることを抑制できる。
【0017】
前記刃部より前記蓋部の幅方向の外側の押え部が挿入される前記溝の外側の内壁の上端面は、当該溝の内側の内壁の上端面よりも低くなっていてもよい。かかる場合、切断後のフィルムを取り出し易くなる。
【0018】
前記ケース本体部のフィルム操作側端部から、開口部の10%から60%を覆う、巻筒に対する押え片が形成され、当該押え片は、前記フィルム操作側端部に設けられた長手方向に延びる軸の周りに回動可能に形成されていてもよい。かかる場合、フィルムの引出し操作がスムーズ化する。また、不測の事態によりフィルム先端部が前記ケース本体部内へ巻き戻った場合でも、巻筒への貼り付きが抑制されるので、復帰操作が容易になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、切断時のフィルムの張りを確実に確保できるので、フィルムの切断を安定させることができる。また、切断後のフィルムの蓋部側への付着やフィルムの巻き戻りを抑制できるので、次のフィルムの引き出し作業を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態にかかるフィルムケースの斜視図である。
【図2】フィルムケースにフィルムを収納する際の説明図である。
【図3】フィルムケースの断面図である。
【図4】外側の押え部によりフィルムを押えた状態を示すフィルムケースの断面図である。
【図5】刃部がフィルムに接触した状態を示すフィルムケースの断面図である。
【図6】蓋部が閉まった状態を示すフィルムケースの断面図である。
【図7】蓋部が開いた状態を示すフィルムケースの縦断面図である。
【図8】巻筒の押え片の一例を設けたフィルムケースの縦断面図である。
【図9】内側の押え部よりも刃部の先端が突出している場合のフィルムケースの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかるフィルムケース1の構成の概略を示す斜視図である。
【0022】
フィルムケース1は、例えば図1に示すようにケース本体部10と、蓋部11を有している。ケース本体部10は、略円筒状に形成され、図2に示すように円筒状の巻筒Aに巻かれたフィルムとしてのラップRを内部に収納できる。ラップRは、例えばポリエチレン製のフィルムである。なお、ラップRは、塩化ビニリデン製フィルム、その他の材質のフィルムであってもよい。ケース本体部10の上面には、ラップRを巻筒Aから引き出すための開口部20が形成されている。開口部20は、ケース本体部10の長手方向(図2のX方向)の両端部に亘り形成されている。また、開口部20は、図3に示すようにケース本体部10の最上部から周方向の一方向(図3の時計周り方向)に例えば35〜40°程度、他方向(図3の反時計周り方向)に例えば20〜25°程度の範囲で形成されている。
【0023】
ケース本体部10は、図2に示すように長手方向の両端面にフィルム交換用の蓋21が脱着自在に設けられている。蓋21の中心部には、ケース本体部10の長手方向の中心側に突出する円錐部21aが形成されている。円錐部21aは、ケース本体部10内の巻筒Aの中心孔に挿入され、巻筒Aを回転自在に保持しながら、巻筒Aの位置決めを行うことができる。また、蓋21の外側面には、突出部や曲面部が無いように平坦部が形成されている。これにより、蓋21を取り付けたケース本体部10はテーブル上で縦置きすることができる。なお、ケース本体部10の下部には、足部Bが取り付けられており、蓋21の下部には足部Bが挿入可能な溝部が設けられている。
【0024】
蓋部11は、開口部20を覆うような板状に形成され、図3に示すようにケース本体部10の開口部20に面する背面側(図3の左側)の端部に回動自在に接続されている。蓋部11は、長手方向の軸22周りに回動することによって、開口部20を開閉できる。
【0025】
蓋部11の開口部20側の内面には、蓋部11により開口部20を閉鎖する際にラップRを切断する刃部30と、開口部20を閉鎖する際にケース本体部10との間でラップRを押える押え部31、32が設けられている。刃部30、押え部31、32は、蓋部11の幅方向(図3のY方向)の外側(正面側)に配置されている。押え部31、32は、蓋部11の幅方向に刃部30を挟んだ両側に配置されている。刃部30、押え部31、32は、蓋部11の長手方向の両端部に亘って平行に形成されている。
【0026】
刃部30は、蓋部11の内面から開口部20側に突出し、その先端でラップRを切断できる。押え部31、32は、蓋部11の内面から開口部20側に板状に突出している。押え部31、32は、例えば蓋部11の回動の周方向に沿った円弧状に湾曲して形成されている。
【0027】
押え部31、32は、刃部30よりも長く開口部20側に突出している。また、外側の押え部31は、内側(背面側)の押え部32よりも長く開口部20側に突出している。したがって、蓋部11を閉めると、略水平に引き出されたラップRに対し最初に外側の押え部31が接触し、次に内側の押え部32が接触し、最後に刃部30が接触する。
【0028】
蓋部11の内側の押え部32のさらに内側(背面側)には、他の押え部33が形成されている。他の押え部33は、押え部31、32と同様に蓋部11の長手方向の両端部に亘り形成され、開口部20側に板状に突出している。他の押え部33は、例えば内側の押え部32よりも短く形成されている。なお、他の押え部33は、押え部31、32と同様に蓋部11の回動の周方向に沿った円弧状に湾曲して形成されていてもよい。
【0029】
蓋部11の刃部30、押え部31、32、他の押え部33に対向するケース本体部10の部分は、他の部分に比べて肉厚に形成されている。この肉厚部40は、例えば巻筒Aの形状に合う円筒状の内面10aに対し、正面側の外面10bを垂直にすることにより形成されている。また、肉厚部40の上面はおよそ水平に形成されている。
【0030】
肉厚部40には、開口部20の閉鎖時に、刃部30、押え部31、32、他の押え部33が挿入される溝50、51、52、53がそれぞれ形成されている。各溝50〜53は、刃部30、押え部31、32、他の押え部33が完全に挿入されて蓋部11が閉まるような深さに形成されている。例えば溝51、52は、押え部31、32の形状に合わせて円弧状に形成されている。
【0031】
図4に示すように溝51の外側の内壁51aの上部には、内側に突出する突部51bが形成されている。蓋部11が閉まる際に、押え部31が突部51aに押し付けられる。また、溝51は、外側の内壁51aの上端面が内側の内壁51cの上端面よりも低くなっている。
【0032】
溝52の内側の内壁52aには、外側に突出する突部52bが形成されている。蓋部11が閉まる際に、押え部32が突部52aに押し付けられる。
【0033】
また、溝53(他の溝)の底には、蓋部11が閉まる際に他の押え部33の先端が入り込む凹部53aが形成されている。
【0034】
なお、ケース本体部10には、図8に示すように、フィルム操作側端部Cから、開口部20を10%〜60%の範囲で覆う、巻筒の押え片54が形成されていてもよい。この押え片54は、フィルム操作部端部Cに設けられた長手方向に延びる軸54aの周りに回動可能に形成されている。
【0035】
なお、ケース本体部10と、刃部30以外の蓋部11は、例えば射出成形により成形されている。ケース本体部10と蓋部11、押え片54の成形は、通常公知の方法を用いて可動できるように行われ、特に、一般的にプラスチックの「異形押出法」として知られる押出成形法により、ケース本体部10と蓋部11、押え片54が連続的に一体成形されることが生産上好ましい。ケース本体部10とフィルム交換用の蓋21、刃部30以外の蓋部11の材質には、プラスチック、アルミニウムなどが用いられる。プラスチックでは、成形性の良いポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ABS樹脂等が用いられる。また、刃部30の材質は、ブリキ等の金属、プラスチック、紙等、適宜フィルムに合わせて、刃先形状も含めて選定される。
【0036】
次に、以上のように構成されたフィルムケース1の作用について説明する。
【0037】
巻筒Aに巻かれたラップRは、図2に示すようにフィルム交換用の蓋21が取り外され、ケース本体部10の長手方向の端部から収納される。ラップRを巻筒Aから切り取る際には、フィルムケース1の蓋部11が開けられ、開口部20を通じてラップRがフィルムケース1の正面方向に引っ張られ、巻筒Aが回転して、ラップRが所望の長さに引き出される。次に、蓋部11が閉められて、刃部30によりラップRが切断される。
【0038】
このラップRの切断時において、蓋部11が閉められる際には、図4に示すように先ず外側の押え部31がラップRに接触しラップRを下方に押しながら、溝51内に挿入される。このとき、ラップRは、押え部31と溝51の突起51bとの間に挟まれて押えられる。蓋部11がさらに閉められると、内側の押え部32がラップRに接触しラップRを下方に押しながら、溝52内に挿入される。このとき、ラップRは、押え部32と溝52の突起52bとの間に挟まれて押えられる。こうして、ラップRの押え部31、32の間の刃部30に対向する部分に張力が付与される。なお、このとき、ラップRが溝51、52に入り込むので、その分巻筒Aが回転して、ラップRが引き出される。
【0039】
図5に示すように蓋部11がさらに閉められると、他の押え部33がラップRに接触しラップRを下方に押しながら溝53内に挿入される。次に、刃部30がラップRに接触しラップRを押し、蓋部11が完全に閉まる前、或いは蓋部11が完全に閉まるとほぼ同時にラップRが切断される。図6に示すように蓋部11が完全に閉まると、他の押え部33の先端がラップRを挟んで溝53の底の凹部53aに当接する。この他の押え部33により、切断により巻筒A側に残ったラップRがケース本体部10に対して押えられる。切断されたラップRは、フィルムケース1の正面側に引っ張られて取り出される。そして、次のラップRの引き出しのために、図7に示すように蓋部11が開けられると、巻筒Aに通じるラップRは、ケース本体部10側の溝50、溝52、53内に入り込んだ状態になる。
【0040】
以上の実施の形態によれば、蓋部11の刃部30の両側に配置された押え部31、32が、ケース本体部10側の溝51、52内に挿入されるので、切断時のラップRの張りを確実に確保でき、ラップRの切断を安定させることができる。また、切断時にラップRが溝51、52の中に入り、ラップRとケース本体部10との密着性が上がるので、切断後のラップRの蓋部11側への付着やラップRの巻き戻りを抑制でき、次のラップRの引き出し作業を適切に行うことができる。また、外側の押え部31が溝51に入るので、刃部30が外部から完全に隠れ、使用者が誤って刃部30に触れることも防止される。
【0041】
外側の押え部31は、内側の押え部32よりも開口部20側に突出しているので、ラップRの刃部30よりも使用者側に近い部分が先に押えられ、その後ラップRの刃部30よりも内側の部分が押えられて、刃部30におけるラップRの張りができる。このため、使用者によるラップRの引き出しの張力の強弱に関わらず、刃部30におけるラップRの張りを確保できる。
【0042】
内側の押え部32より内側には、他の押え部33が設けられ、ケース本体部10には、その溝53が形成されているので、切断により巻筒A側に残るラップRが押えられ、切断時のラップRの巻き戻りを防止できる。また、ラップRとケース本体部10との密着性が上がるので、切断後のラップRの蓋部11側への付着を抑制でき、次のラップRの引き出し作業がより行い易くなる。
【0043】
他の押え部33が挿入される溝53には、他の押え部33が入り込む凹部53aが形成されているので、ラップRとケース本体部10との密着性がさらに上がる。よって、切断後のラップRの蓋部11側への付着やラップRの巻き戻りを抑制でき、次のラップRの引き出し作業がより行い易くなる。
【0044】
ケース本体部10の開口部20に押え片54が形成された場合、前述の押え部や溝等の効果で抑制しきれなかったラップRの巻き戻りによる巻筒Aへの貼り付きを抑制することができ、復帰操作が容易になる。
【0045】
押え部31、32と溝51、52は、蓋部11の軸22の周りの周方向に沿った円弧状に形成されている。このため、蓋部11の開閉に伴う押え部31、32の回動に沿った形で、溝51、52の形が形成されるので、例えば溝51、52の幅を最小限にしてケース本体部10をコンパクト化できる。
【0046】
溝51の外側の内壁51aには、内側に突出する突部51bが形成されているので、外側の押え部31と突部51bとの間にラップRが挟まれて押えられる。このため、刃部30に対して溝51の内側の内壁51cに比べてより遠いところでラップRが押えられ、ラップRを押える部分と切断する部分との間に十分な距離ができる。この結果、フィルムの一部に張力がかかり過ぎて切断に不具合が生じることを抑制できる。また、ラップRが押えられる部分がよりラップRの取り出し口側に近くなるので、切断後のラップRを取り出し易くなる。
【0047】
溝52の内側の内壁52aには、外側に突出する突部52bが形成されているので、内側の押え部32と突部52bとの間にラップRが挟まれて押えられる。このため、刃部30に対して溝52の外側の内壁に比べてより遠いところでラップRが押えられ、ラップRを押える部分と切断する部分との間に十分な距離ができる。この結果、ラップRの一部に張力がかかり過ぎて切断に不具合が生じることを抑制できる。
【0048】
溝51の外側の内壁51aの上端面は、当該内側の内壁51cの上端面よりも低くなっているので、切断後のラップRが取り出し易い。
【0049】
図7に示すように刃部30の先端は、外側の押え部31と内側の押え部32との頂点を結んだ仮想線Dの内部に位置している。これにより、刃部30と使用者の指先等との接触を回避することができる。なお、かかる場合において、図9に示すように刃部30の先端が、内側の押え部32よりも開口部20側に突出していてもよい。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0051】
例えば上記実施の形態において、内側の押え部32と外側の押え部31が刃部30よりも開口部20側に突出しているものがあったが、いずれか一方のみが刃部30より突出していてもよい。また上記実施の形態では、フィルムケース1がラップRを収納するものであったが、本発明に係るフィルムケースは、ラップ以外のアルミホイル、クッキングペーパーなどの他のフィルムのケースにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、切断時のフィルムの張りを確実に確保し、なおかつ切断後のフィルムの蓋部側への付着やフィルムの巻き戻りを抑制する際に有用である。
【符号の説明】
【0053】
1 フィルムケース
10 ケース本体部
11 蓋部
20 開口部
30 刃部
31、32 押え部
33 他の押え部
50〜53 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻筒に巻かれたフィルムを収納するフィルムケースであって、
収納されたフィルムを前記巻筒から引き出すための開口部が長手方向に沿って形成されたケース本体部と、
前記ケース本体部の長手方向に延びる軸の周りに回動し、前記開口部を開閉する蓋部と、を有し、
前記蓋部の前記開口部側の内面には、当該蓋部の長手方向に沿って形成され、前記開口部を閉鎖する際にフィルムを切断する刃部と、前記蓋部の長手方向に沿って形成され、前記開口部を閉鎖する際に前記ケース本体部との間でフィルムを押える押え部が設けられ、
前記押え部は、前記蓋部の幅方向の前記刃部を挟んだ両側に配置され、
前記ケース本体部には、前記蓋部により前記開口部を閉鎖する際に前記刃部と前記押え部が挿入される溝がそれぞれ設けられ、
前記押え部の少なくとも一方は、前記刃部よりも前記開口部側に突出している、フィルムケース。
【請求項2】
両方の前記押え部が、前記刃部よりも前記開口部側に突出している、請求項1に記載のフィルムケース。
【請求項3】
前記刃部より前記蓋部の幅方向の外側の押え部は、内側の押え部よりも前記開口部側に突出しており、
前記刃部の先端は、前記外側の押え部と内側の押え部との頂点を結んだ仮想線の内部に位置する、請求項1又は2に記載のフィルムケース。
【請求項4】
前記蓋部の前記内側の押え部より内側には、前記蓋部により前記開口部を閉鎖する際に前記ケース本体部との間でフィルムを押える他の押え部が設けられ、
前記ケース本体部には、前記蓋部により前記開口部を閉鎖する際に前記他の押え部が挿入される他の溝が設けられている、請求項1〜3のいずれかに記載のフィルムケース。
【請求項5】
前記他の溝には、前記他の押え部が入り込む凹部が形成されている、請求項4に記載のフィルムケース。
【請求項6】
前記押え部と当該押え部が挿入される前記溝は、前記蓋部の軸周りの周方向に沿った円弧状に形成されている、請求項1〜5のいずれかに記載のフィルムケース。
【請求項7】
前記刃部より前記蓋部の幅方向の外側の押え部が挿入される前記溝の外側の内壁には、内側に突出する突部が形成されている、請求項1〜6のいずれかに記載のフィルムケース。
【請求項8】
前記刃部より前記蓋部の幅方向の内側の押え部が挿入される前記溝の内側の内壁には、外側に突出する突部が形成されている、請求項1〜7のいずれかに記載のフィルムケース。
【請求項9】
前記刃部より前記蓋部の幅方向の外側の押え部が挿入される前記溝の外側の内壁の上端面は、当該溝の内側の内壁の上端面よりも低くなっている、請求項1〜8のいずれかに記載のフィルムケース。
【請求項10】
前記ケース本体部の幅方向のフィルム操作側端部から、開口部の10%から60%を覆う、巻筒に対する押え片が形成されており、当該押え片は、前記フィルム操作側端部に設けられた長手方向に延びる軸の周りに回動可能に形成されている、請求項1〜9のいずれかに記載のフィルムケース。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−105389(P2011−105389A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237243(P2010−237243)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(390017949)旭化成ホームプロダクツ株式会社 (56)
【Fターム(参考)】