説明

フィルムコンデンサ

【課題】両面に金属膜を有したフィルムを用いたフィルムコンデンサにおいて、各フィルムの電極同士の位置関係を一々合わせて捲回しなくても、自己保安機構を実現できるようにする。
【解決手段】両面に金属膜(23)を有し、一方の面の金属膜(23)が、等間隔に並んだ複数の矩形状の第1電極(21b)を形成する第1金属化フィルム(21)と、両面に金属膜(23)を有し、一方の面の金属膜(23)が、等間隔に並んだ複数の矩形状の第2電極(22b)を形成する第2金属化フィルム(22)とを設ける。第1及び第2電極(21b,22b)の一方には、メタリコン電極(11)と電気的に接続されるヒューズ(21e)を金属膜(23)によって形成する。そして、互いに隣り合った第2電極(22b)の間隔(D2)は、第1電極(21b)の並び方向の長さ(W1)よりも大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属膜を有したフィルムを用いたフィルムコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
帯状のフィルムの片面に金属膜が蒸着された金属化フィルム(片面蒸着フィルム)を巻芯上に捲回してなるフィルムコンデンサが知られている。このようなフィルムコンデンサは、電子機器や電気機器等において、特に安定した電気特性を要する回路に多く用いられている。また、近年のフィルムコンデンサは、電解コンデンサと比較して低損失であり、信頼性にも優れているため、空調機やハイブリッド自動車等のインバータ回路の平滑コンデンサとしても利用されている。
【0003】
このようなフィルムコンデンサでは、保安性を確保する観点から、いわゆる自己保安機構が設けられることがある。ここで言う自己保安機構は、フィルムコンデンサが何らかの理由で短絡するなどして過大な電流が流れた際に、フィルムコンデンサ全体が破損に至るのを防止する機構である。
【0004】
このような自己保安機構を有したフィルムコンデンサとしては、一例として特許文献1に記載されたものがある。このフィルムコンデンサは、特許文献1の第1図に示されているように、金属化フィルムに対して、該フィルムの長さ方向に複数個の島状に蒸着空白部分で絶縁して分離するように電極(分割電極)を設け、さらに、それぞれの電極とメタリコン電極との間に絶縁部を設けることによって幅狭小部であるパスを形成し、そのパスをヒューズとして使用している。すなわち、この例では、一つの分割電極が許容する電流を制限してフィルムコンデンサに保安機能を付与するもので、上記のパスの部分がヒューズの役割を果たすことによって、絶縁破壊した分割電極のみを切り離すことができ、コンデンサ全体の短絡状態が回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-45466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、両面に金属膜を有したフィルム(両面蒸着フィルム)を捲回してフィルムコンデンサを形成した場合に、上記の自己保安機構を実現するには、両面蒸着フィルムを長さ方向に分割して電極(分割電極)を構成し、2枚の両面蒸着フィルムの分割電極同士を向かい合わせて、向かい合った電極同士が互いにずれないように捲回する必要があると考えられる。向かい合った分割電極の位置がずれると、一方の両面蒸着フィルムにおける分割電極が、もう一方の両面蒸着フィルムにおける分割電極間の橋渡しの役目となって、分割されていない連続蒸着膜を有するフィルムコンデンサと電気的に等価な構造になってしまうからである。
【0007】
しかしながら、製造時に2枚の両面蒸着フィルムの電極同士の位置関係がずれないように重ね合わせて捲回するのは容易ではない。
【0008】
本発明は上記の問題に着目してなされたものであり、両面に金属膜を有したフィルムを用いたフィルムコンデンサにおいて、各フィルムの電極同士の位置関係を一々合わせて捲回しなくても、自己保安機構を実現できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、第1の発明は、
金属化フィルム(21,22)が捲回されて、両側端にメタリコン電極(11)が設けられたフィルムコンデンサであって、
両面に金属膜(23)を有し、一方の面の金属膜(23)が、等間隔に並んだ複数の矩形状の第1電極(21b)を形成する第1金属化フィルム(21)と、
両面に金属膜(23)を有し、一方の面の金属膜(23)が、等間隔に並んだ複数の矩形状の第2電極(22b)を形成する第2金属化フィルム(22)と、
を備え、
前記第1及び第2電極(21b,22b)の一方には、前記メタリコン電極(11)と電気的に接続されるヒューズ(21e)が前記金属膜(23)によって形成され、
互いに隣り合った第2電極(22b)の間隔(D2)は、前記第1電極(21b)の並び方向の長さ(W1)よりも大きく、
前記第1金属化フィルム(21)と前記第2金属化フィルム(22)とは、前記第1及び第2電極(21b,22b)のそれぞれの並び方向が揃い、且つ前記第1電極(21b)側の面と前記第2電極(22b)側の面とが互いに合わさるように重ね合わせられて捲回されていることを特徴とする。
【0010】
この構成では、互いに隣り合った第2電極(22b)の間隔(D2)が、前記第1電極(21b)の並び方向の長さ(W1)よりも大きいので、第1電極(21b)と第2電極(22b)との位置関係を一々合わせなくても、何れの第1電極(21b)も、互いに並んだ2つの第2電極(22b)間を橋渡ししないようにできる。すなわち、このフィルムコンデンサでは、一群の第1電極(21b)同士(例えば2つの第1電極(21b))が第2電極(22b)によって橋渡しされて電気的に繋がることがあっても、その一群の第1電極(21b)の両端の第1電極(21b)は、橋渡しをしている第2電極(22b)の隣の第2電極(22b)に重なることはない。これにより、前記一群の第1電極(21b)に繋がるヒューズ(21e)が溶断すれば、この一群の第1電極(21b)(さらには、これらを橋渡ししていた第2電極(22b))は、他の第1電極(21b)とは電気的に遮断される。この場合、遮断された一群の第1電極(21b)とこれらを橋渡ししていた第2電極(22b)とは、コンデンサの電極としては機能できなくなるが、その他の第1及び第2電極(21b,22b)は、依然としてコンデンサの電極として機能することができる。
【0011】
また、第2の発明は、
第1の発明のフィルムコンデンサにおいて、
前記第2電極(22b)の並び方向の長さ(W2)は、互いに隣り合った第1電極(21b)の間隔をD1、前記第1電極(21b)の並び方向の長さをW1とした場合に、(2×D1+W1)よりも小さいことを特徴とする。
【0012】
この構成により、第2電極(22b)が2つ以上の第1電極(21b)に重ならないようにできる。すなわち、1箇所の短絡によって機能を失う第1電極(21b)の数を2つ以下にすることが可能になる。
【0013】
また、第3の発明は、
第1又は第2の発明のフィルムコンデンサにおいて、
前記第1及び第2電極(21b,22b)は、蒸着によってそれぞれ形成されていることを特徴とする。
【0014】
この構成により、いわゆる両面蒸着フィルムを用いたフィルムコンデンサにおいて、自己保安機構が実現される。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、第1電極(21b)と第2電極(22b)の位置関係を一々合わせて捲回しなくても、自己保安機構を実現することが可能になる。
【0016】
また、第2の発明によれば、何れの第2電極(22b)も、2つ以上の第1電極(21b)に重ならないようにできるので、1箇所の短絡によって機能を失う第1電極(21b)の数を2つ以下にすることが可能になる。
【0017】
また、第3の発明によれば、両面蒸着フィルムを用いたので、それぞれの電極(21b,22b)やヒューズ(21e)を容易に形成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るフィルムコンデンサの概略構成を示す縦断面図である。
【図2】2枚の金属化フィルムを重ね合わせる直前の状態を示す斜視図である。
【図3】2枚の金属化フィルムを重ね合わせた状態を示す断面図である。
【図4】重ね合わせた金属化フィルムの長手方向の断面図であり、第1電極と第2電極とが互いにずれて重ね合わせられた状態を模式的に示す図である。
【図5】図4に対応した平面図である。
【図6】他の実施形態に係る金属化フィルムの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0020】
《フィルムコンデンサの全体構成》
図1は、本発明の実施形態に係るフィルムコンデンサ(10)の概略構成を示す縦断面図である。このフィルムコンデンサ(10)は、例えばインバータ回路とコンバータ回路との間の平滑コンデンサ等に用いられる。このフィルムコンデンサ(10)は、図1に示すように、コンデンサ本体(20)、メタリコン電極(11)、外部端子(12)、絶縁カバー(13)、及び封止樹脂(14)を備えている。
【0021】
〈コンデンサ本体(20)の構成〉
コンデンサ本体(20)は、第1金属化フィルム(21)、第2金属化フィルム(22)、及び巻芯(25)を備えている。そして、第1金属化フィルム(21)と第2金属化フィルム(22)とは、厚み方向に重ね合わされて巻芯(25)の外周に捲回され、このコンデンサ本体(20)は略円柱状に形成されている。そして、コンデンサ本体(20)の両側端にメタリコン電極(11)が設けられている。図2は、2枚の金属化フィルムを重ね合わせる直前の状態を示す斜視図である。また、図3は、2枚の金属化フィルムを重ね合わせた状態を示す断面図である。
【0022】
-第1金属化フィルム(21)-
第1金属化フィルム(21)は、帯状の部材であり、両面に金属膜(23)を有した第1フィルム体(21a)により形成されている。この第1フィルム体(21a)には、例えばPP(polypropylene)、PET(Polyethylene Terephthalate)、PVDF(PolyVinylidene DiFluoride)等の誘電体フィルムからなる帯状のフィルム体を採用できる。この第1金属化フィルム(21)は、図2に示すように、一方の面の金属膜(23)によって第1電極(21b)が形成され、もう一方の面の金属膜(23)によって第1対向電極(21c)が形成されている。以下では説明の便宜上、第1フィルム体(21a)の第1電極(21b)側の面を表面(或いは表側)と呼び、第1対向電極(21c)側の面を裏面(或いは裏側)と呼ぶことにする。
【0023】
この第1金属化フィルム(21)では、複数の第1電極(21b)が形成されている。それぞれの第1電極(21b)は、矩形状(この例では長方形)であり、第1フィルム体(21a)の長手方向に、等間隔に並んでいる。また、これらの第1電極(21b)は、図2に示すように、第1フィルム体(21a)の両側の縁から所定の距離だけ離間している。以下では、離間している部分をサイドマージン部と呼ぶことにする(図2を参照)。
【0024】
また、第1フィルム体(21a)の表面には、メタリコン電極(11)と接続されるメタリコン接続部(21d)が、前記金属膜(23)によって形成されている。メタリコン接続部(21d)は、第1フィルム体(21a)の縁に沿った帯状の形態を有し、第1電極(21b)からは所定の距離だけ離間している。
【0025】
また、それぞれの第1電極(21b)とメタリコン接続部(21d)との間には、これらを互いに接続するヒューズ(21e)が、第1フィルム体(21a)上の金属膜(23)により形成されている。これらのヒューズ(21e)は、フィルムコンデンサ(10)の使用中などに、第1電極(21b)が短絡した際に溶断するように、大きさが定められている。
【0026】
一方、第1対向電極(21c)は、前記第1電極(21b)及び後述の第2電極(22b)と対向する電極であり、第1及び第2電極(21b,22b)とともにコンデンサを構成する。この第1対向電極(21c)は、第1金属化フィルム(21)の長手方向に連続した帯状の形態を有している。なお、第1フィルム体(21a)の裏面には、表面のメタリコン接続部(21d)に対向する側の縁に沿って、金属が設けられていない部分(サイドマージン部と呼ぶ)が帯状に形成されている(図2を参照)。
【0027】
-第2金属化フィルム(22)-
第2金属化フィルム(22)も、前記第1金属化フィルム(21)と同様の帯状の部材であり、両面に金属膜(23)を有した第2フィルム体(22a)により形成されている。この第2フィルム体(22a)にも、例えばPP、PET、PVDF等の誘電体フィルムからなる帯状のフィルム体を採用できる。この第2金属化フィルム(22)は、図2に示すように、一方の面の金属膜(23)によって第2電極(22b)が形成され、もう一方の面の金属膜(23)によって第2対向電極(22c)が形成されている。以下では説明の便宜上、第2フィルム体(22a)の第2電極(22b)側の面を表面(或いは表側)と呼び、第2対向電極(22c)側の面を裏面(或いは裏側)と呼ぶことにする。
【0028】
この第2金属化フィルム(22)では、複数の第2電極(22b)が形成されている。それぞれの第2電極(22b)は、矩形状(この例では長方形)であり、第2フィルム体(22a)の長手方向に、等間隔に並んでいる。また、これらの第2電極(22b)は、図2に示すように、第2フィルム体(22a)の両側の縁から所定の距離だけ離間している。以下では、離間している部分をサイドマージン部と呼ぶことにする(図2を参照)。
【0029】
そして、本実施形態では、互いに隣り合った第2電極(22b)の間隔(D2)は、第1電極(21b)の並び方向(第1金属化フィルム(21)の長手方向)の長さ(W1)よりも大きい。
【0030】
一方、第2対向電極(22c)は、第1及び第2電極(21b,22b)と対向する電極であり、これらの電極(21b,22b)とともにコンデンサを構成する。この第2対向電極(22c)は、第2金属化フィルム(22)の長手方向に連続した帯状の形態を有している。なお、第2フィルム体(22a)の裏面には、該第2フィルム体(22a)の一方の縁に沿って、金属が設けられていない部分(サイドマージン部と呼ぶ)が帯状に形成されている(図2を参照)。
【0031】
この第2金属化フィルム(22)は、後述するように、表面(第2電極(22b)側の面)が、第1金属化フィルム(21)の表面(第1電極(21b)側の面)と互いに合わさるように重ね合わせられるのであるが、このように両者を重ね合わせる際には、各金属化フィルム(21,22)の裏面(対向電極(21c,22c)がある側)のサイドマージン部が同じ側方(図2の例では右側)に揃えられる。なお、第1及び第2電極(21b,22b)の幅や各マージン部などの大きさは、このように第1及び第2金属化フィルム(21,22)の両者を重ね合わせた際に、ヒューズ(21e)が第2電極(22b)に接触しないように定められている。
【0032】
-第1及び第2金属化フィルム(21,22)の製造-
第1及び第2金属化フィルム(21,22)は、アルミニウム等の金属を蒸着させて製造できる。その場合、サイドマージン部や各電極(21b,22b)間の隙間等のように金属を未蒸着としたい部分に、予めマスキングを行ってから金属を蒸着させることによって、第1及び第2電極(21b,22b)、メタリコン接続部(21d)、ヒューズ(21e)を形成することができる。
【0033】
-巻芯(25)-
巻芯(25)は、図1に示すように、円筒状の樹脂部材で構成されている。なお、この円筒状の巻芯(25)の内部には、金属製の芯部を設けてもよい。この場合、芯部を、メタリコン電極(11)を介して外部端子(12)に接続すれば、第1及び第2金属化フィルム(21,22)で発生した熱を、芯部からメタリコン電極(11)及び外部端子(12)を介して外部へ放出することができる。
【0034】
〈メタリコン電極(11)〉
メタリコン電極(11)は、コンデンサ本体(20)の両端部にそれぞれ設けられた電極である。このメタリコン電極(11)は、それぞれ、コンデンサ本体(20)の軸方向端部に金属を溶射することによって形成されていて、コンデンサ本体(20)の軸方向端部において、該端部にまで延びている金属膜(23)と電気的に導通している。
【0035】
〈外部端子(12)〉
外部端子(12)は、その基端部が巻芯(25)に対応する位置で、メタリコン電極(11)と電気的に接続されている。これらの外部端子(12)は、メタリコン電極(11)の径方向外方に向かって延びて、その先端部が封止樹脂(14)から外方に突出している。これらの外部端子(12)は、図1に示すように、例えば基板(26)等に対して半田付けなどによって接続される。
【0036】
〈絶縁カバー(13)〉
絶縁カバー(13)は、樹脂材料からなるシート状の部材を、円筒状のコンデンサ本体(20)の外周面に沿うように丸めて円筒状にしたものである。この絶縁カバー(13)は、コンデンサ本体(20)の外周面全体を覆うように設けられている。なお、この絶縁カバー(13)は必須ではなく、例えば、該コンデンサ本体(20)を封止樹脂(14)で直接、封止するような構成であってもよい。
【0037】
〈封止樹脂(14)〉
封止樹脂(14)は、絶縁カバー(13)の外周側、メタリコン電極(11)及び外部端子(12)の基端部を封止するように設けられている。すなわち、この封止樹脂(14)は、外部端子(12)の先端側を除いて、フィルムコンデンサ(10)の構成部品全体を覆うように設けられている。
【0038】
《コンデンサ本体(20)の製造》
コンデンサ本体(20)は、巻芯(25)に対して 第1金属化フィルム(21)と第2金属化フィルム(22)とを捲回して製造する。第1金属化フィルム(21)と第2金属化フィルム(22)の捲回には、例えば、従来からある、片面蒸着フィルムを用いたフィルムコンデンサ用の製造装置(捲回機)を利用することができる。この場合、第1金属化フィルム(21)と第2金属化フィルム(22)とは、第1及び第2電極(21b,22b)のそれぞれの並び方向が揃い、且つ第1電極(21b)側の面(表面)と第2電極(22b)側の面(表面)とが互いに合わさるように重ね合わせて捲回する。この場合従来のフィルムコンデンサであれば、自己保安機構を実現するために、2枚の金属化フィルムを、それぞれの電極(分割電極)がちょうど重なり合うように捲回する必要があった。しかしながら、本実施形態では、これらの電極(21b,22b)の位置関係を一々合わせていない。
【0039】
図4は、本実施形態における、重ね合わせた2つの金属化フィルム(21,22)の長手方向の断面図であり、この例では第1電極(21b)と第2電極(22b)とが互いにずれて重ね合わせられた状態を模式的に示している。図4では、それぞれの第1電極(21b)等を識別するために符号に枝番を付してある(例えば第1電極(21b-1)、第1電極(21b-2)…)。この例では、1つの第2電極(22b-1)が2つの第1電極(21b)を橋渡ししている箇所がある。
【0040】
《コンデンサ本体(20)における自己保安機構》
図5は、図4に対応した平面図であり、説明の便宜上、第1金属化フィルム(21)と第2金属化フィルム(22)とを上下に分けて記載してある。この図5でも、それぞれの第1電極(21b)等を識別するために、図4と同様に符号に枝番を付してある。
【0041】
この例では、第1金属化フィルム(21)と第2金属化フィルム(22)とを捲回した状態で、第2電極(22b-1)が、第1電極(21b-1)と第1電極(21b-2)とに重なっている。すなわち、第2電極(22b-1)は、第1電極(21b-1)と第1電極(21b-2)とを導通させている。同様に、第2電極(22b-2)は、第1電極(21b-3)と第1電極(21b-4)とに重なって、該第2電極(22b-2)は、この2つの第1電極(21b)を導通させている。
【0042】
しかしながら、このコンデンサ本体(20)では、D2>W1であるので、何れの第1電極(21b)も、互いに並んだ2つの第2電極(22b)間を橋渡しすることはない。図5の例でも、第1電極(21b-2)と第2電極(22b-1)とは重なっているが、この第1電極(21b-2)が第2電極(22b-2)に重なることはない。同様に、第1電極(21b-4)と第2電極(22b-2)とは重なっているが、この第1電極(21b-4)が第2電極(22b-3)に重なることはない。
【0043】
この例において、フィルムコンデンサ(10)の使用中に、例えば、第1電極(21b-1)が第1対向電極(21c)と短絡したとすると、第1電極(21b-1)に繋がるヒューズ(21e)、及び第1電極(21b-2)に繋がるヒューズ(21e)が溶断する。そうすると、第1電極(21b-1)及び第1電極(21b-2)は、メタリコン電極(11)(すなわち外部端子(12))と電気的に切り離される。すなわち、フィルムコンデンサ(10)における短絡状態が解消されるのである。この場合、第1電極(21b-1)、第1電極(21b-2)、及び第2電極(22b-1)は、コンデンサの電極としては機能できなくなるが、その他の第1及び第2電極(21b,22b)は、依然としてコンデンサの電極として機能することができる。
【0044】
《本実施形態における効果》
以上のように、このフィルムコンデンサ(10)では、互いに隣り合った第2電極(22b)の間隔(D2)が、前記第1電極(21b)の並び方向の長さ(W1)よりも大きいので、何れの第1電極(21b)も、互いに並んだ2つの第2電極(22b)間を橋渡しすることはない。すなわち、このフィルムコンデンサ(10)では、一群の第1電極(21b)同士(上記の例では、第1電極(21b-1)と第1電極(21b-2)の一群や、第1電極(21b-3)と第1電極(21b-4)の一群)が第2電極(22b)によって橋渡しされて電気的に繋がっていても、その一群の第1電極(21b)の両端の第1電極(21b)は、橋渡しをしている第2電極(22b)の隣の第2電極(22b)に重なることはない。これにより、一群の第1電極(21b)に繋がるヒューズ(21e)が溶断すれば、この一群の第1電極(21b)(さらには、これらの第1電極(21b)を橋渡ししていた第2電極(22b))は、他の第1電極(21b)とは電気的に遮断される。この場合、遮断された一群の第1電極(21b)とこれらを橋渡ししていた第2電極(22b)とは、コンデンサの電極としては機能できなくなるが、その他の第1及び第2電極(21b,22b)は、依然としてコンデンサの電極として機能することができる。すなわち、本実施形態によれば、第1電極(21b)と第2電極(22b)の位置関係を一々合わせて捲回しなくても、自己保安機構を実現することが可能になる。
【0045】
なお、両面蒸着フィルムを用いたコンデンサで自己保安機構を実現するには、例えば、自己保安機構を発揮する同一電極となる2つの両面蒸着フィルムの分割金属化面の間に絶縁体を介在させて、2面の同極蒸着面を分離することでヒューズ機構を実現することも考えられる。しかし、このような構造だと、フィルムコンデンサのサイズが増大するうえ、従来からある、片面蒸着フィルムを用いたフィルムコンデンサ用の製造装置(捲回機)を利用して製造することができない。
【0046】
これに対し、本実施形態では、このようにフィルムコンデンサのサイズを増大させることがない。また、このコンデンサ本体(20)は、従来からある、片面蒸着フィルムを用いたフィルムコンデンサ用の製造装置(捲回機)を利用して製造することも可能である。
【0047】
《その他の実施形態》
〈1〉なお、第2電極(22b)の並び方向の長さ(W2)は、互いに隣り合った第1電極(21b)の間隔をD1、前記第1電極(21b)の並び方向の長さをW1とした場合に、(2×D1+W1)よりも小さい値(例えばW2=W1)が望ましい。
【0048】
第1及び第2電極(21b,22b)をこのような寸法関係とすることで、各第2電極(22b)は、図6に示すように、2つ以上の第1電極(21b)に重なることはない。すなわち、1箇所の短絡によって機能を失う第1電極(21b)の数を2つ以下にすることが可能になる。
【0049】
〈2〉また、ヒューズ(21e)は何れのフィルム側に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、金属膜を有したフィルムを用いたフィルムコンデンサとして有用である。
【符号の説明】
【0051】
10 フィルムコンデンサ
11 メタリコン電極
21 第1金属化フィルム
21b 第1電極
21e ヒューズ
22 第2金属化フィルム
22b 第2電極
23 金属膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属化フィルム(21,22)が捲回されて、両側端にメタリコン電極(11)が設けられたフィルムコンデンサであって、
両面に金属膜(23)を有し、一方の面の金属膜(23)が、等間隔に並んだ複数の矩形状の第1電極(21b)を形成する第1金属化フィルム(21)と、
両面に金属膜(23)を有し、一方の面の金属膜(23)が、等間隔に並んだ複数の矩形状の第2電極(22b)を形成する第2金属化フィルム(22)と、
を備え、
前記第1及び第2電極(21b,22b)の一方には、前記メタリコン電極(11)と電気的に接続されるヒューズ(21e)が前記金属膜(23)によって形成され、
互いに隣り合った第2電極(22b)の間隔(D2)は、前記第1電極(21b)の並び方向の長さ(W1)よりも大きく、
前記第1金属化フィルム(21)と前記第2金属化フィルム(22)とは、前記第1及び第2電極(21b,22b)のそれぞれの並び方向が揃い、且つ前記第1電極(21b)側の面と前記第2電極(22b)側の面とが互いに合わさるように重ね合わせられて捲回されていることを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項2】
請求項1のフィルムコンデンサにおいて、
前記第2電極(22b)の並び方向の長さ(W2)は、互いに隣り合った第1電極(21b)の間隔をD1、前記第1電極(21b)の並び方向の長さをW1とした場合に、(2×D1+W1)よりも小さいことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のフィルムコンデンサにおいて、
前記第1及び第2電極(21b,22b)は、蒸着によってそれぞれ形成されていることを特徴とするフィルムコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−3836(P2011−3836A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147696(P2009−147696)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】