説明

フィルムコーティング組成物及び経口固形製剤

【課題】口腔内での食感に優れ、かつ溶出性が改善されたフィルムコーティング組成物及びかかるフィルムコーティング組成物を用いてコーティングすることで高い光沢が付与された経口固形製剤を提供する。
【解決手段】メチルセルロース単独又はメチルセルロースに加えてヒドロキシプロピルセルロース及び/又はポリビニルアルコールを有する基剤100質量部と、18〜150質量部の可塑剤と、40〜500質量部のタルクを少なくとも含んでなるフィルムコーティング組成物が提供される。また、薬物を少なくとも含有する芯部と、該芯部を被覆する上記フィルムコーティング組成物を少なくとも含む経口固形製剤が提供される。さらに、薬物を少なくとも含有する芯部に、上記フィルムコーティング組成物を溶媒に溶解もしくは分散した溶液を塗布する工程と、その後の乾燥工程とを少なくとも含む経口固形製剤の製造方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムコーティング組成物及びこれを用いた経口固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムコーティングや糖衣は、経口固形製剤における、薬物の不快な味に対するマスキング、薬物の安定性を保つための遮光、経口固形製剤の識別性を向上させるための着色コーティング、経口固形製剤の搬送過程における摩損の防止あるいは製品としての美観の向上などの目的で広く行われている。
【0003】
特に錠剤の美観に関しては糖衣コーティングを施すことにより高い光沢が得られることが知られている。錠剤に高い光沢性を付与する試みとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースにポリエチレングリコールとタルクを特定の比率で配合した組成物を用いることで錠剤表面に高い光沢性を付与できることが提案されている(特許文献1)。また、苦味のマスキング方法としては、メチルセルロースのゲル化特性を応用してメチルセルロースを用いてフィルムコーティングすることにより、口腔内では崩壊しないフィルムコーティングが提案されている(特許文献2)。更に、メチルセルロースに糖類又は糖アルコールを配合することで、苦味マスキングに優れ、薬物の溶出性を改善する方法が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−201713号公報
【特許文献2】特開昭60−13719号公報
【特許文献3】特開2001−151672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、糖衣コーティングは糖衣の作業工程に長時間を要し、製造コストの上昇や、製剤が服用困難な程大きくなること、コーティングに用いられるゼラチンの主成分であるタンパク質が変性してしまい安定性に欠けるという問題がある。また、特許文献1のフィルムコーティング組成物では高い光沢を持つ錠剤が得られるものの、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いてコーティングをした経口固形製剤は口中で速やかに溶解し、口腔内でべとつき感や、ぬめり感があるため高齢者や乳児者などの患者によっては服用しづらいと言った問題があった。これは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの熱ゲル化温度が高く、口腔内で熱ゲル化を起こさないために、フィルムが速やかに溶解することに起因する。一方で、特許文献2で挙げられているようにメチルセルロースを用いる場合、メチルセルロースが37℃で熱ゲル化を起こして溶解できないために、べとつき感やぬめり感を感じずに服用することが可能であるが、熱ゲル化が原因となり、薬物の溶出が遅れることが懸念される。そのため、特許文献3では、メチルセルロースに糖類又は糖アルコールを配合することで溶出性が改善されることが提案されているが、この方法による溶出性の改善は十分ではなく、また、糖類等を配合することで透湿性が向上してしまい、錠剤の保存時の安定性を確保できないと言った問題があった。
【0006】
本発明は、従来のフィルムコーティングと比べて、口腔内での食感に優れ、かつ溶出性が改善されたフィルムコーティング組成物及びかかるフィルムコーティング組成物を用いてコーティングすることで高い光沢が付与された経口固形製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、メチルセルロースに可塑剤とタルクを特定の比率で配合することで上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
本発明によれば、メチルセルロース単独又はメチルセルロースに加えてヒドロキシプロピルセルロース及び/又はポリビニルアルコールを有する基剤100質量部と、18〜150質量部の可塑剤と、40〜500質量部のタルクを少なくとも含んでなるフィルムコーティング組成物が提供される。また、薬物を少なくとも含有する芯部と、該芯部を被覆する上記フィルムコーティング組成物を少なくとも含む経口固形製剤が提供される。さらに、薬物を少なくとも含有する芯部に、上記フィルムコーティング組成物を溶媒に溶解もしくは分散した溶液を塗布する工程と、その後の乾燥工程とを少なくとも含む経口固形製剤の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明のフィルムコーティング組成物を用いて経口固形製剤をコーティングすれば、従来のフィルムコーティングに比べて口腔内でのべとつき感、ぬめり感が改善され、口腔内での食感に優れ、スムーズな嚥下が図れ、且つ、速やかに活性成分を溶出できる溶出性が改善された経口固形製剤を提供できる。また、本発明によれば、糖衣コーティングをすることなく高い光沢性が付与された経口固形製剤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1〜8及び比較例1の溶出試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のフィルムコーティング用組成物は、メチルセルロース単独又はメチルセルロースに加えてヒドロキシプロピルセルロース及び/又はポリビニルアルコールを有する基剤、可塑剤及びタルクを少なくとも含有する。
メチルセルロース(以下、「MC」とも記載する)の粘度は、コーティングを実施するために高濃度溶液としてスプレーできるよう低いものが好ましい。具体的には、20℃における2質量%水溶液の粘度が、好ましくは2〜50mPa・s、更に好ましくは2〜25mPa・s、特に好ましくは2〜15mPa・sである。2mPa・s未満では、MC重合度が極端に低下するためフィルムとしての強度を保持できないおそれがある。また、50mPa・sを超えると、コーティング水溶液の濃度を低く抑えなければならず実用的ではないおそれがある。なお、上記粘度は第16改正日本薬局方に記載の粘度測定方法で測定できる。
MCのメトキシ基の置換度は、特に制限されないが、好ましくは26.0〜33.0質量%、更に好ましくは27.5〜31.5質量%である。なお、MCの置換度は、第16改正日本薬局方に記載のメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースの置換度の測定方法に準拠した方法で測定できる。
【0011】
MC単独の基剤の他に、MCにヒドロキシプロピルセルロース(以下、「HPC」とも記載する)やポリビニルアルコール(以下、「PVA」とも記載する)を配合した基剤を用いることもできる。
HPCの粘度は、コーティングを実施するために低い方が好ましい。具体的には、20℃における2質量%水溶液の粘度が、好ましくは2〜50mPa・s、更に好ましくは3〜10mPa・s、特に好ましくは6〜10mPa・sである。2mPa・s未満では、MC重合度が極端に低下するためフィルムとしての強度を保持できないおそれがある。また、50mPa・sを超えると、コーティング水溶液の濃度を低く抑えなければならず実用的ではないおそれがある。なお、MCと同様の測定方法で測定できる。
また、ヒドロキシプロポキシ基の置換度は特に制限されないが、好ましくは53.4〜77.5質量%、更に好ましくは60.0〜70.0質量%である。なお、HPCの置換度は、MCと同様の測定方法で測定できる。
HPCの配合量は、特に制限されないが、MCの溶出性を改善するという観点から、MCとHPCの質量比で好ましくは49:51〜10:90、更に好ましくは45:55〜35:65である。HPCの配合量が少ないと溶出性の改善に劣り、他方HPCの配合量が多いと経口固形製剤を服用した際に口腔内でぬめり感、べとつき感を感じる恐れがある。
【0012】
PVAは、医薬品添加物規格で規定されたポリビニルアルコール(完全けん化物)およびポリビニルアルコール(部分けん化物)が好ましい。完全けん化ポリビニルアルコールは、けん化度が97モル%以上であり、部分けん化ポリビニルアルコールは、好ましくは、けん化度が78〜96モル%である。
PVAの平均重合度は、好ましくは200〜3500、更に好ましくは400〜1000である。PVAの平均重合度は、JIS K6726に記載の平均重合度の測定方法で測定できる。
PVAの配合量は、特に制限されないが、MCとの相溶性の観点から、MCとPVAの質量比で好ましくは90:10から10:90、更に好ましくは50:50から15:85、特に好ましくは40:60から20:80の範囲である。PVAの配合量が上記の好ましい範囲より少ないと溶出性の改善に劣る場合があり、PVAの配合量が上記の好ましい範囲より多いと経口固形製剤を服用した際に口腔内でぬめり感、べとつき感を感じる場合がある。
【0013】
本発明でいられる可塑剤としては、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチルなどが挙げられるが、MCとの相溶性に優れ、高い光沢性を付与するという観点から、特にポリエチレングリコールが好適である。
ポリエチレングリコールの重量平均分子量は、特に制限されないが、高い光沢を付与するという観点から、好ましくは200〜35000であり、更に好ましくは1500〜35000である。ポリエチレングリコールの重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いたポリスチレン換算で得られる。
フィルムコーティング組成物中の可塑剤の含有量は、基剤100質量部に対して、18〜150質量部であるが、好ましくは22〜100質量部、更に好ましくは40〜80質量部である。可塑剤の含有量が18質量部より少ないと錠剤の光沢性が劣り、可塑剤を必要以上多く配合しても、経済性が劣る。なお、基剤は、MC単独の基剤、MCとHPCからなる基剤、MCとPVAからなる基剤、及びMCとHPCとPVAからなる基剤から選択できる。
【0014】
フィルムコーティング用組成物中のタルクの含有量は、基剤100質量部に対して、40〜500質量部、好ましくは80〜380質量部、より好ましくは150〜250質量部である。タルクの含有量が少ないと錠剤の光沢性が劣り、他方タルクを必要以上多く配合しても、経済性が劣る。
本発明のフィルムコーティング組成物は、可塑剤とタルクとを上記の割合で含有することにより、被覆量の少ないエッジ部分においてコーティング被膜の崩壊が促進され、通常37℃では溶解しないMCのコーティングフィルムから薬物の溶出が起こると考えられる。
【0015】
コーティング組成物は、必要に応じて、通常製剤学的に認められる薬物、組成物の分散性を良くする界面活性剤、着色剤、顔料、甘味料、コーティング剤、消泡剤等を加えても良い。
【0016】
経口固形製剤は、薬物を少なくとも含有する芯部と、芯部を被覆するフィルムコーティング組成物を少なくとも含む。
薬物は、経口投与可能な薬物であれば特に限定されるものではない。
【0017】
薬物を少なくとも含有する芯部には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑択剤、凝集防止剤、医薬化合物の溶解補助剤等、通常この分野で常用され得る種々の添加剤を配合してもよい。賦形剤としては、白糖、乳糖、マンニトール、グルコース等の糖類、でんぷん、結晶セルロース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられ、結合剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、グルコース、白糖、乳糖、麦芽糖、デキストリン、ソルビトール、マンニトール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、マクロゴール類、アラビアゴム、ゼラチン、寒天、でんぷん等が挙げられる。崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース又はその塩、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポリビニルピロリドン、結晶セルロース及び結晶セルロース・カルメロースナトリウム等が挙げられる。また、滑択剤、凝集防止剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、コロイダルシリカ、ステアリン酸、ワックス類、硬化油、ポリエチレングリコール類、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。更に、医薬化合物の溶解補助剤としては、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸等の有機酸等が挙げられる。これら添加剤の含有量は、薬剤の種類等に応じて適宜決定することができる。
【0018】
本発明のフィルムコーティング組成物によりコーティングされる経口固形製剤としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤等が挙げられるが、その中でも特に錠剤が好ましい。
【0019】
次に、経口固形製剤の製造方法について説明する。
コーティングの装置は、従来公知の手段を用いることができる。一般的に行われているのはスプレーコーティングであるが、その場合は、パンコーティング装置、ドラムタイプコーティング装置、流動層コーティング装置、撹拌流動コーティング装置を用いて行えばよく、これらの装置に付帯するスプレー装置にはエアースプレー、エアレススプレー、3流体スプレー等いずれをも用いることができる。
【0020】
本発明のフィルムコーティング組成物溶液を塗布する方法として、例えば上述したコーティング装置を用い、薬物を含有する芯部に、MC、可塑剤及びタルクにさらに必要に応じて添加剤を添加したフィルムコーティング組成物を水またはエタノール等の有機溶媒あるいはこれらの混合液に溶解もしくは分散させた溶液を調整し、噴霧等により塗布することが挙げられる。
MC、HPC、PVA、可塑剤のポリエチレングリコールは、水溶性であり、水とエタノール等の有機溶剤の混合液にも溶解する。タルクは、無機粉末であり、水や有機溶媒に溶解せず、分散される。分散を考慮するとタルクの平均粒径は、レーザ回折散乱法を用いて、好ましくは0.1〜20μmの範囲である。
【0021】
その後、同コーティング装置内で、又は同コーティング装置から取り出して、加熱等により乾燥を行い、経口固形製剤を製造することができる。
乾燥は、特に制限されないが、高い光沢を付与するという点において、乾燥とともにポリッシングを行うことが好ましく、好ましくは、乾燥時に経口固形製剤同士がこすれあう状態(ポリッシング)とする。乾燥は、例えば、上述したコーティング装置内にて、好ましくは20〜100℃、更に好ましくは30〜80℃の温度で行う。コーティング装置内を回転又は撹拌することにより、乾燥とともにポリッシングを行うことができる。また、乾燥は、ポリッシングの有無にかかわらず、好ましくは10分以上、更に好ましくは20分〜60分、特に好ましくは20分〜40分行うことが好ましい。60分以上乾燥又は乾燥しながらポリッシングを行っても光沢度に変化はなく経済性が劣る。
【0022】
芯部(素錠)の表面にコーティングされるフィルムコーティング組成物の被覆量は、固形性製剤の種類、形、大きさ、表面状態、更に固形製剤中に含まれる薬剤及び添加剤の性質等によって異なるが、例えば、素錠に対して、好ましくは1〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%、特に好ましくは2〜6質量%である。被覆量が少なすぎると、完全な皮膜が得られず、他方多すぎるとコーティングに要する時間が必要となる場合がある。
【0023】
本発明の経口固形製剤は、フィルムコーティング組成物からなるフィルム層の下にヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの通常この分野で常用され得る種々のコーティング基剤を用いてアンダーコーティングを行い、複数のフィルムを形成させた多層フィルムコーティング経口固形製剤としても良い。
【0024】
このようにして製造された経口固形製剤は、第16改正日本薬局方に記載の溶出試験(37℃、パドル法、50回転/分、溶媒900mLの水)において85%以上の薬物を放出するまでの時間が、好ましくは試験開始から10分以内である。また、該経口固形製剤表面の光沢度が、精密光沢計(GM−26D(20°/60°)型、村上色彩技術研究所製)を用いて60度鏡面光沢度を測定(錠剤ホルダー5mmφ、測定面積:約3×3mm)した際に、好ましくは6.0以上である。更に、該経口固形製剤は服用した際に口腔内でぬめり感やべとつき感を感じることがなく服用可能である。
【実施例】
【0025】
以下、本発明について実施例をあげて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
リボフラビン(東京田辺製薬社製)2質量部、乳糖(フロイント産業社製、ダイラクトースS)90質量部、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(ヒドロキシプロピル基置換度11質量%)8質量部、ステアリン酸マグネシウム0.5質量部を粉体混合し、ロータリー打錠機(菊水製作所製Vergo)にて、直径8mm、打錠圧1t、打錠予圧0.3t、回転数20rpm、一錠あたりの重量が200mgとなるように打錠し、リボフラビンを薬物に含有した素錠を作成した。
次に、MC(メトキシ基置換度28質量%、20℃における2質量%水溶液の粘度が4.0mPa・s)13.5g、ポリエチレングリコール(日本油脂社製、マクロゴール6000)8.1g(MCに対して0.60)、タルク(クラウン社製)27.0g(MCに対して2.0)、酸化チタン(石原産業製)5.4gを、精製水396.0gに溶解・分散しコーティング溶液を調製した。
上記コーティング溶液を用い下記条件にて、素錠100質量部に対して固形分質量で5質量部までコーティングを行った。コーティング終了後、コーティング装置内にて給気温度60℃、パン回転数24rpmで30分間乾燥・ポリッシングを行い、目的のコーティング錠剤を得た。
使用したコーティング条件は以下の通りである。
装置:通気式パンコーター(内径33cm)
仕込み量:1kg
吸気温度:80℃
排気温度:47〜50℃
吸気エアー量:1m/min
パン回転数:18〜24rpm
スプレー速度:6g/min
スプレーエアー圧:150kPa
【0026】
実施例2
実施例1のコーティング溶液の作成で、MCを24.75g、ポリエチレングリコールを5.45g(MCに対して0.22)、タルクを19.80g(MCに対して0.8)、酸化チタンを9.90g、精製水を490.11gに変えてコーティング溶液を作成し、実施例1と同様にしてコーティング錠剤を得た。
【0027】
実施例3
実施例1のコーティング溶液の作成で、MCを10.5g、ポリエチレングリコールを2.31g(MCに対して0.22)、タルクを39.9g(MCに対して3.8)、酸化チタンを4.2g、精製水を293.09gに変えてコーティング溶液を作成し、実施例1と同様にしてコーティング錠剤を得た。
【0028】
実施例4
実施例1のコーティング溶液の作成で、MCを18.0g、ポリエチレングリコールを22.5g(MCに対して1.25)、タルクを14.4g(MCに対して0.8)、酸化チタンを7.2g、精製水を537.9gに変えてコーティング溶液を作成し、実施例1と同様にしてコーティング錠剤を得た。
【0029】
実施例5
実施例1のコーティング溶液の作成で、MCを10.5g、ポリエチレングリコールを13.13g(MCに対して1.25)、タルクを39.9g(MCに対して3.8)、酸化チタンを4.2g、精製水を282.28gに変えてコーティング溶液を作成し、実施例1と同様にしてコーティング錠剤を得た。
【0030】
実施例6
実施例1のコーティング溶液の作成で、MCを16g、ポリエチレングリコールを2.88g(MCに対して0.18)、タルクを32g(MCに対して2.0)、酸化チタンを6.4g、精製水を342.72gに変えてコーティング溶液を作成し、実施例1と同様にしてコーティング錠剤を得た。
【0031】
実施例7
実施例1のコーティング溶液の作成で、MCを25g、ポリエチレングリコールを15g(MCに対して0.60)、タルクを12.5g(MCに対して0.5)、酸化チタンを10g、精製水を437.5gに変えてコーティング溶液を作成し、実施例1と同様にしてコーティング錠剤を得た。
【0032】
実施例8
実施例1のコーティング溶液の作成で、MCを6.4g、更にHPC(日本曹達社製、ヒドロキシプロポキシ基置換度63質量%、20℃における2質量%水溶液の粘度が8.0mPa・s)9.6g(MC:HPC=4:6)を加えて、ポリエチレングリコールを9.6g(MC/HPCに対して0.60)、タルクを32.0g(MC/HPCに対して2.0)、酸化チタンを6.4g、精製水を336.0gに変えて、コーティング溶液を作成し、実施例1と同様にしてコーティング錠剤を得た。
【0033】
実施例9
実施例1のコーティング溶液の作成で、MCを4.8g、更にPVA(日本酢ビ・ポバール社製、重合度500、けん化度88モル%)11.2g(MC:PVA=3:7)を加えて、ポリエチレングリコールを9.6g(MC/PVAに対して0.60)、タルクを32.0g(MC/PVAに対して2.0)、酸化チタンを6.4g、精製水を336.0gに変えて、コーティング溶液を作成し、実施例1と同様にしてコーティング錠剤を得た。
【0034】
比較例1
実施例1のコーティング溶液の作成でポリエチレングリコール、タルク及び酸化チタンは入れずに、MC56.0gを精製水744.0gに変えてコーティング溶液を作成し、実施例1と同様にしてコーティング錠剤を得た。
【0035】
比較例2
実施例1のコーティング溶液の作成で、ポリエチレングリコールは入れずに、MCを14g、タルクを53.2g(MCに対して3.8)、酸化チタンを5.6g、精製水を277.2gに変えてコーティング溶液を作成し、実施例1と同様にしてコーティング錠剤を得た。
【0036】
比較例3
実施例1のコーティング溶液の作成で、タルクは入れずにMCを22.5g、ポリエチレングリコールを28.13g(MCに対して1.25)、酸化チタンを9g、精製水を390.32gに変えてコーティング溶液を作成し、実施例1と同様にしてコーティング錠剤を得た。
【0037】
比較例4
実施例1のコーティング溶液の作成で、MCを16g、ポリエチレングリコールを2.4g(MCに対して0.15)、タルクを32g(MCに対して2.0)、酸化チタンを6.4g、精製水を343.2gに変えてコーティング溶液を作成し、実施例1と同様にしてコーティング錠剤を得た。
【0038】
比較例5
実施例1のコーティング溶液の作成で、MCを25g、ポリエチレングリコールを15g(MCに対して0.60)、タルクを7.5g(MCに対して0.3)、酸化チタンを10g、精製水を442.5gに変えてコーティング溶液を作成し、実施例1と同様にしてコーティング錠剤を得た。
【0039】
比較例6
実施例1のコーティング溶液の作成で、MCをヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトキシ基置換度28%、ヒドロキシプロポキシ基置換度9%)に変えてヒドロキシプロピルメチルセルロースを16.0g、ポリエチレングリコールを9.6g、タルクを32.0g、酸化チタンを6.4g、精製水を336.0gに変えてコーティング溶液を作成し、実施例1と同様にしてコーティング錠剤を得た。
【0040】
<コーティング錠剤の溶出特性の評価>
実施例1〜9及び比較例1〜6で得られたコーティング錠剤の溶出試験を第16改正日本薬局方記載の溶出試験(37℃、パドル法、50回転/分、溶媒900mLの水)により評価を行った。実施例1〜9及び比較例1の溶出挙動を図1に示す。
溶出試験のサンプリングは、溶出試験開始後1分、3分、5分、7分、10分、20分、30分後に行い、薬物の85%以上が溶出した時間を溶出時間として求め、表1に示す。
図1及び表1から明らかなように、本発明のコーティング錠剤は比較例1のコーティング錠剤に比べ溶出性が改善されている。
【0041】
<コーティング錠剤の光沢度の評価>
実施例1〜9及び比較例1〜6で得られたコーティング錠剤の光沢度を精密光沢計(GM−26D(20°/60°)型、村上色彩技術研究所製)を用いて60度鏡面光沢度を測定(錠剤ホルダー5mmφ、測定面積:約3×3mm)した結果を表1に示す。
表1から明らかなように、本発明のコーティング錠剤は比較例の1〜5のコーティング錠剤に比べて高い光沢度を示した。
【0042】
<口腔内でのぬめり感の有無の評価>
実施例1〜9及び比較例1〜6で得られたコーティング錠剤を健康な成人6人に投与して、口腔内でぬめり感を感じた人の数を表1にまとめた。
表1から明らかなように、本発明のコーティング錠剤は口腔内でぬめり感を示さなかったのに対して、比較例6のコーティング錠剤はぬめり感を示した。
【0043】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルセルロース単独又はメチルセルロースに加えてヒドロキシプロピルセルロース及び/又はポリビニルアルコールを有する基剤100質量部と、18〜150質量部の可塑剤と、40〜500質量部のタルクを少なくとも含んでなるフィルムコーティング組成物。
【請求項2】
上記可塑剤が、ポリエチレングリコールである請求項1に記載のフィルムコーティング組成物。
【請求項3】
薬物を少なくとも含有する芯部と、該芯部を被覆する請求項1又は請求項2に記載のフィルムコーティング組成物を少なくとも含む経口固形製剤。
【請求項4】
薬物を少なくとも含有する芯部に、請求項1又は2に記載のフィルムコーティング組成物を溶媒に溶解もしくは分散した溶液を塗布する工程と、その後の乾燥工程とを少なくとも含む経口固形製剤の製造方法。
【請求項5】
上記乾燥工程が、塗布後の経口固形製剤を乾燥しながらポリッシングを行うことを含み、10分以上行われる請求項4に記載の経口固形製剤の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−95730(P2013−95730A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242053(P2011−242053)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】