説明

フィルムミラー、その製造方法、および太陽光反射用ミラー

【課題】銀反射層の正反射率が高く、また耐候性に優れ、経時により銀反射層の腐食による正反射率の低下を防止するとともに、軽量で柔軟性があり、製造コストを抑え大面積化・大量生産することのできるフィルムミラー、その製造方法、及びそれを用いた太陽光反射用ミラーを提供すること。
【解決手段】フィルム状支持体の片側に銀反射層と、犠牲防食層とを有するフィルムミラーであって、該犠牲防食層が銅微粒子を含有することを特徴とするフィルムミラー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性に優れ、太陽光に対して良好な反射率を有するフィルムミラー、その製造方法、及びそれを用いた太陽光反射用ミラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油、天然ガス等の化石燃料エネルギーに代わる代替エネルギーとして、石炭エネルギー、バイオマスエネルギー、核エネルギー、並びに風力エネルギー及び太陽エネルギー等の自然エネルギーが検討されているが、化石燃料の代替エネルギーとして最も安定しており、且つ量の多い自然エネルギーは、太陽エネルギーであると考えられる。
【0003】
しかしながら、太陽エネルギーは非常に有力な代替エネルギーであるものの、これを活用する観点からは、(1)太陽エネルギーのエネルギー密度が低いこと、並びに(2)太陽エネルギーの貯蔵及び移送が困難であることが、問題となると考えられる。
【0004】
これらに対して、太陽エネルギーのエネルギー密度が低いという問題は、巨大な反射装置で太陽エネルギーを集めることによって解決する方法が提案されている。
【0005】
反射装置は、太陽光による紫外線や熱、風雨、砂嵐などに晒されるため、従来、板状のガラス製ミラーが用いられてきた。板状のガラス製ミラーは紫外線や温度、湿度に対する耐久性が高い反面、輸送時や設置後の外圧によって破損したり、質量が重いため、ミラーを設置する架台の強度を持たせるために、プラントの建設費がかさむといった問題があった。
【0006】
一方、樹脂フィルムに銀蒸着を施した反射フィルムが液晶ディスプレイのバックライトユニットの反射フィルムとして実用化されて(例えば特許文献1参照)おり、太陽光反射用ミラーに適用すれば、板状ガラス製ミラーの欠点である外圧による破損や質量の重さといった課題が解消できる。
【0007】
このような樹脂製ミラーは、板状のガラスミラーに比べて連続生産適性が高く、生産性を高めやすいという利点があるが、光反射層には真空プロセスを用いた銀蒸着の適用が一般的であり、樹脂フィルムを通過してくる水分や大気中のガスの影響により、腐食が進行してしまうといった課題を抱えていた。銀を反射層に用いたミラーでは、ガラスミラーにおいて、銀反射層に隣接して光の入射面と反対側に銅層を設けて、犠牲防食層として用いる方法が用いられているが、樹脂製ミラーにおいては十分な防食効果を得ることができなかった。
【0008】
そこで本発明者らは、銀反射層と隣接して、銅微粒子を含有する塗布液を塗布することで銅層(例えば特許文献3参照)を形成してみたところ、驚くべきことに十分な犠牲防食効果が得られたばかりか、正反射率についても向上していることを見出した。この効果については、銅微粒子を塗布した銅層が、粒子界面により大きな界面を有しているため、自身の層が容易に腐食するため、犠牲防食層として高い効果が得られたと考えられる。
【0009】
一方、銀蒸着に替わって、有機溶媒に可溶性で、配位子が気化・脱離しうる銀錯体インク(例えば特許文献2参照)を用いて塗布膜を形成した後に、加熱・焼成することによって、Roll to Rollにおいて安価なフィルムミラーを製造する方法が知られている。しかし、この方法では銀蒸着を用いたものよりも正反射率が低く、また屋外環境下に晒された際に、腐食劣化しやすいといった欠点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−280131号公報
【特許文献2】特表2009−535661号公報
【特許文献3】特開2010−146734号公報
【特許文献4】特開2010−132347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、銀反射層の正反射率が高く、また耐候性に優れ、経時により銀反射層の腐食による正反射率の低下を防止するとともに、軽量で柔軟性があり、製造コストを抑え大面積化・大量生産することのできるフィルムミラー、その製造方法、及びそれを用いた太陽光反射用ミラーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0013】
1.フィルム状支持体の片側に銀反射層と、犠牲防食層とを有するフィルムミラーであって、該犠牲防食層が銅微粒子を含有することを特徴とするフィルムミラー。
【0014】
2.前記銀反射層が、気化・脱離しうる配位子を有する銀錯体化合物を含有する塗布膜を加熱焼成することにより形成されたものであることを特徴とする前記1に記載のフィルムミラー。
【0015】
3.前記気化・脱離しうる配位子を有する銀錯体化合物が、アンモニウムカルバメート系化合物又はアンモニウムカーボネート系化合物を銀化合物と反応させることにより得られた気化・脱離しうる配位子を有する銀錯体化合物であることを特徴とする前記1または2に記載のフィルムミラー。
【0016】
4.前記フィルム状支持体が、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、または、ポリエステル系樹脂のいずれかよりなる樹脂フィルムであることを特徴とする前記1〜3のいずれか一項に記載のフィルムミラー。
【0017】
5.前記フィルム状支持体が、ダウンドロー法によって成形されたガラスロールより得られるガラスフィルムであることを特徴とする前記1〜3のいずれか一項に記載のフィルムミラー。
【0018】
6.前記フィルム状支持体が、前記銀反射層に対し光の入射面側に位置し、当該フィルム状支持体の、前記銀反射層とは反対側の最表面に汚れの付着を防止する層を有することを特徴とする前記1から5のいずれか一項に記載のフィルムミラー。
【0019】
7.前記1から前記6までのいずれか一項に記載のフィルムミラーを製造するフィルムミラーの製造方法であって、塗布することにより前記銀反射層の塗布膜が設けられたことを特徴とするフィルムミラーの製造方法。
【0020】
8.前記銀反射層が、気化・脱離しうる配位子を有する銀錯体化合物を含有する塗布膜を形成した後に、該塗布膜を80〜150℃の範囲内の温度において加熱焼成することにより銀反射層を形成することを特徴とする前記7に記載のフィルムミラーの製造方法。
【0021】
9.前記8に記載のフィルムミラーの製造方法において、フィルム状支持体上に、気化・脱離しうる配位子を有する銀錯体化合物を含有する塗布膜と、銅微粒子を含有する塗布液を用いて形成された塗布膜を同時に形成した後に、当該塗布膜を80〜150℃の範囲内の温度において加熱焼成することにより銀反射層を形成することを特徴とするフィルムミラーの製造方法。
【0022】
10.自己支持性の基材に、前記1から前記6までのいずれか一項に記載のフィルムミラーが具備されてなることを特徴とする太陽光反射用ミラー。
【0023】
11.前記自己支持性の基材が、下記のA及びBのいずれかの構成を有することを特徴とする前記10に記載の太陽光反射用ミラー。
A:一対の金属平板と、前記金属平板の間に設けられた中間層とを有し、当該中間層は中空構造を有する層又は樹脂材料から構成される層である。
B:中空構造を有する樹脂材料層からなる。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、銀反射層の正反射率が高く、また耐候性に優れ、経時により銀反射層の腐食による正反射率の低下を防止するとともに、軽量で柔軟性があり、製造コストを抑え大面積化・大量生産することのできるフィルムミラー、その製造方法、及びそれを用いた太陽光反射用ミラーを提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0026】
本発明者らは、配位子が気化・脱離しうる銀錯体インクを用いて形成した銀反射層に隣接して犠牲防食層として銅層を蒸着法により施し、屋外環境下で劣化試験を実施したところ、十分な犠牲防食効果を得ることが出来なかった。そこで本発明者らは、配位子が気化・脱離しうる銀錯体インクを用いて形成した銀反射層に隣接して、銅微粒子を含有する塗布液を塗布することで銅層(例えば特許文献3参照)を形成してみたところ、十分な犠牲防食効果が得られたばかりか、正反射率も向上していることを見出した。更に、銀層、銅層ともにRoll to Rollにより形成することが出来るため、生産性が高く、製造コストも安く抑えることが出来ることを見出した。また、銅微粒子を用いて形成した犠牲防食層は、蒸着法などに比べて膜厚を厚くすることができるため、フィルムミラーの課題であった平面性を克服し、銀面の平面性を良好にするといった効果も合わせて見出した。
【0027】
更に本発明者らは、ロール状に巻くことのできる薄いフィルム状支持体(例えば特許文献4参照)を用いることによって、高い正反射率を維持したまま、更に高耐候性と高生産性を両立し、なおかつフィルムミラーの特徴である軽量、柔軟性を満足するものを提供することができることを見出し、本発明に至った次第である。
【0028】
本発明のフィルムミラーは、フィルム状支持体の片側銀反射層と、犠牲防食層とを有するフィルムミラーであって、該犠牲防食層が銅微粒子を含有することを特徴とする。そのほかに汚れの付着を防止する層、接着層、傷防止層、上部隣接層などの機能層を設けることができる。
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0030】
(犠牲防食層)
一般に、亜鉛などのイオン化傾向の大きい金属を鉄鋼材料などに接触させておくと、亜鉛などが犠牲的に腐食して鉄鋼材料などの腐食を抑制することを犠牲防食と言う。亜鉛が先に腐食して電子を放出することで鉄に電子を供給し、鉄の電子放出を妨げることで防食効果が得られるためである。
【0031】
船舶において、亜鉛を船体に取り付けることで、スクリューなどの重要部品を腐食から守っているのは、この犠牲防食の考え方が使われている。
【0032】
本発明のフィルムミラーには、犠牲防食層が設けられている。本発明でいう犠牲防食層とは、銀反射層を犠牲防食により保護する層のことであり、銀反射層の耐食性を向上させることができる。本発明において、犠牲防食層が銀よりイオン化傾向の高い銅微粒子を含有する。犠牲防食層の厚さは特に制限は無いが、厚い方が犠牲防食効果が高く、厚すぎると生産性が損なわれる場合があるため、50nm〜10μmの範囲が好ましい。より好ましくは100〜1μm、更に好ましくは150〜500nmである。
【0033】
また、銅微粒子の面積当たりの質量としては、0.1〜50g/mが好ましい。より好ましくは0.2〜5g/m、更に好ましくは0.3〜3g/mである。
【0034】
本発明で反射層に使用している銀は、大気中の水分や酸素、硫黄分、塩分などの影響により、容易に腐食が進行することが知られている。犠牲防食層は銀反射層に隣接することが好ましい。犠牲防食層は太陽光入射側とは反対側の銀反射層に隣接することが、より好ましい。一般的なガラス製ミラーにおいては、銀反射層の隣接層に、銀よりもイオン化傾向の高い、銅を配置することで、犠牲防食効果を得る方法が用いられる。
【0035】
〔銅微粒子〕
本発明に用いられる銅微粒子は、平均粒子径が10μm以下の金属銅の微粒子をいう。好ましくは後述するように、銅微粒子の平均粒径が200nm以下の銅ナノ粒子である。
【0036】
本発明に用いられる銅微粒子には、粒子径が1μmより小さい粒子である銅ナノ粒子が含まれることが好ましいが、1μm以上10μm以下の銅マイクロ粒子が含まれていても良い。本発明に用いられる銅微粒子のうち、銅ナノ粒子の質量分率をMa、銅マイクロ粒子の質量分率をMbとしたときに、Ma/(Ma+Mb)の値が0.7以上であることが好ましく、0.8以上1以下であることがより好ましい。銅マイクロ粒子は銅ナノ粒子に比べて焼結しにくいが、銅微粒子の中に少量存在していることで、導電パスとして利用でき、導電しやすくなる場合がある。Ma/(Ma+Mb)の値が0.7以上の場合は膜全体が焼結するのに好ましい。
【0037】
銅微粒子を含む導電性インクや導電性ペーストが、スクリーン印刷、ディスペンシング、インクジェット印刷等の技術を用いて微細な電気回路配線を形成する場合には用いられる。近年、印刷性や配線の緻密性などの観点から、導電性インクや導電性ペーストに含まれる銅ナノ粒子として、粒子径が一層小さいものが求められている。しかしながら、銅微粒子の粒子径を数十ナノオーダーから数ナノオーダーの程度に微小にすると、銅微粒子の表面活性が非常に高くなり、容易に酸化したり、凝集したりしやすくなる。したがって、このような銅ナノ粒子を用いて微細な電気回路配線を製造することは容易でない。しかしながら、本発明の好ましい態様のように、銅微粒子を含むインクを銀反射層に隣接して塗布し、加熱・焼成することによって、銀反射層の犠牲防食層として働く銅層が形成できる。
【0038】
本発明に用いられる銅微粒子は平均粒子径が200nm以下の銅ナノ粒子であることが好ましく、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。200nm以下であれば表面エネルギーが大きくなり、融点が低下して、金属粒子間が低温で融着して銅薄膜が形成しやすくなるので好ましい。また、印刷配線をする上でも粒子径が小さいことは好ましく、数ミクロン幅・間隔の印刷をするためには、銅ナノ粒子の粒子径は100nm以下であることがより好ましい。なお、銅ナノ粒子の粒子径の下限は1nmであることが好ましい。銅ナノ粒子の表面酸化膜との関係から1nm未満ではナノ粒子全てが酸化銅となり、後述する還元剤を添加しても犠牲防食の効果が弱くなる場合があるからである。
【0039】
ここで、粒子径とは、一次粒径を指し、電子顕微鏡による形態観察によって測定できる。また、平均粒子径の算出は、個数平均に基づいており、電子顕微鏡で観察できる範囲の粒子の内、任意の100個の粒子の選び出し、それらの粒子径を粒子の個数で平均することにより求められる。
【0040】
銅微粒子の様態は酸化されていないことが好ましいが、塗膜に還元性物質を含有させることにより、必ずしも酸化されていないことが必須であるわけではなく、粒子が一部又は全部酸化されていても良い。酸化銅としては酸化第一銅及び酸化第二銅があり、銅の酸化状態に制限はないが、金属銅への還元の容易性から、酸化第一銅が好ましい。
【0041】
銅微粒子の表面は有機成分や粒子の酸化物で覆われているものも含む。上記の銅微粒子表面の酸化反応を抑制する効果に加えて、後述する電子写真印刷に代表される粒子の帯電効果を利用した塗布法に対して効果を有する。
【0042】
本発明で用いる銅微粒子は、例えばアルドリッチ社から粒子径50nm、100nmの銅ナノ粒子をそれぞれ含むものを、Alfa Aesar社から粒子径200nmの銅ナノ粒子を含むものを入手することが可能である。また、表面が有機物質で覆われている粒子としては例えば石原産業からゼラチンで覆われた銅微粒子を入手することが可能である。また、特開平1−259108などに記述されているような公知の手法で合成することができる。本発明で用いる銅マイクロ粒子は、例えばキシダ化学から粒子径1μmのものを、アルドリッチ社から、粒子径10μmのものを入手することが可能である。また、金属粉末作製で一般的な製法であるアトマイズ法を用いて銅マイクロ粒子を作製することができる。
【0043】
〈銅微粒子を含む組成物〉
本発明において、フィルム状支持体の片側に塗布される銅微粒子を含む組成物の形態は、粉状、ペースト状などが挙げられる。
【0044】
粉状の場合は、組成物には必要に応じて、後述するバインダー、還元剤、その他添加剤を含有していてもよい。銅微粒子の質量は、粉体の総質量に対して50質量%以上であり、好ましくは80質量%以上である。50質量%より高い場合は、銅微粒子以外の成分が銅微粒子のフィルム状支持体への接触を妨げることなく焼結が容易になる。
【0045】
前記バインダーとは、粒子間同士や粒子とフィルム状支持体との間を接着させる樹脂のことであって、添加することにより、緻密な膜を形成しやすくなる。大きく硬化性樹脂と可塑性樹脂に大別できる。バインダーとして使用できる熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、レゾール樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ポリイミド樹脂等を例示でき、これら樹脂モノマーまたはオリゴマー、誘導体も含む。エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、(クレゾール)ノボラック型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノール樹脂、レゾ、グリセリントリエーテル、ポリオレフィン、エポキシ化大豆油、シクロペンタジエンジオキシド、ビニルシクロヘキセンジオキシドなどが挙げられる。液状のエポキシ樹脂は粘度が低いので好ましく、具体的にはフェノキシアルキルモノグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ネオペンチルグルコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントグリシジルエーテルおよび液状の各種ポリシロキサンジグリシジルエーテルなどが例示される。熱可塑性樹脂としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリグリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。
【0046】
前記還元剤としては、常温において銅微粒子の酸化を妨げる作用、すなわち抗酸化作用を有する物質、銅微粒子を焼結する工程で加熱したときに抗酸化作用および銅微粒子中の酸化物を還元する作用を発揮する物質、またはその両方の性質を有する物質のいずれも用いることができる。還元剤の形態は液状、固形状いずれも用いることができる。粉状の組成物に液状の還元剤を添加する方法としては、粉状の組成物に還元剤を滴下し撹拌して還元剤の沸点より低い温度で室内または真空中で乾燥させる方法が例示できる。沸点より低い温度で乾燥させると銅微粒子表面に還元剤が吸着した状態になる。使用可能な還元剤に特に制限はなく、無機還元剤であっても有機還元剤であっても良い。無機還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム等水素化合物、二酸化イオウ等のイオウ化合物、亜硫酸塩などの低級酸化物の塩、ヨウ化水素、炭素、などを例示できる。
【0047】
有機還元剤としては多価アルコール、糖類、アルデヒド類、ヒドラジン及びその誘導体、ジイミド類、シュウ酸、フェノール類、アスコルビン酸などを例示できる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール等を例示できる。また、グリセロール、トレイトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ペンチトール、ヘキシトール等の糖アルコール類も使用可能であり、ペンチトールにはキシリトール、リビトール、アラビトールが含まれる。また、ヘキシトールには、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール等が含まれる。糖類としては、グリセリンアルデヒド、ジオキシアセトン、トレオース、エリトルロース、エリトロース、アラビノース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、イドース、ソルボース、グロース、タロース、タガトース、ガラクトース、アロース、アルトロース、ラクトース、キシロース、トレハロース、が例示である。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソビチルアルデヒド、パレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ピバリンアルデヒド、カプロンアルデヒド、ヘプトアルデヒド、カプリルアルデヒド、ペラゴンアルデヒド、ウンデシルアルデヒド、ラウリンアルデヒド、トリデシルアルデヒド、ミリスチンアルデヒド、ペンタデシルアルデヒド、パルミチンアルデヒド、マルガリンアルデヒド、ステアリンアルデヒド等の脂肪族飽和アルデヒド、グリオキサール、スクシンジアルデヒド等の脂肪族ジアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、プロピオールアルデヒド等の脂肪族不飽和アルデヒド、ベンズアルデヒド、o−トルアルデヒオ、m−トルアルデヒド、p−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド、シンナムアルデヒド、α−ナフトアルデヒド、β−ナフトアルデヒド等の芳香族アルデヒド、フルフラール等の複素環式アルデヒド等を例示できる。フェノール類は、フェノール、カテコール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、レゾルシノール等を例示できる。ヒドラジン誘導体としては、N−アミノモルホリン、オキサロヒドラジド、4,4−ジメチル−1−フェニル−3−ピラゾリジノン等を例示できる。ジイミド類は、例えば、アゾジカルボン酸塩、ヒドロキシルアミン−O−スルホン酸、N−アレンスルホニルヒドラジドまたはN−アシルスルホニルヒドラジドを熱分解することで得られる。N−アレンスルホニルヒドラジドまたはN−アシルスルホニルヒドラジドとしては、p−トルエンスルホニルヒドラジド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、2,4,6−トリスイソプロピルベンゼンスルホニルヒドラジド、クロロアセチルヒドラジド、o−ニトロベンゼンスルホニルヒドラジド、m−ニトロベンゼンスルホニルヒドラジド、p−ニトロベンゼンスルホニルヒドラジド等を例示することができる。
【0048】
前記その他添加剤としては、金属塩化合物が例示できる。金属塩化合物は還元されると金属が析出するので、析出した金属が焼結銅微粒子間をつなぐ役割をしてより緻密な焼結が出来る可能性がある。具体的には、ギ酸銅、酢酸銅、トリフルオロ酢酸銅、硝酸銅、銅メトキシド、ネオデカン酸銅、銅ケトイミン、2−エチルヘキサン酸銅、チオ硫酸銅、ペンタフルオロプロピオン酸銅、オクタン酸銅等が挙げられる。
【0049】
ペースト状の場合は、組成物には必要に応じて、前述したバインダー、還元剤、その他添加剤および後述する分散媒を含有してもよい。
【0050】
銅微粒子の質量は、塗膜の総質量に対して3質量%以上95質量%以下であり、好ましくは10量%以上90質量%以下である。3質量%以上の場合には、1回の焼成によって得られる銅焼結体の量が多くなり、導電性の薄膜として機能することが容易になる。また、95質量%以下の場合、塗膜が粉状にならず、フィルム状支持体への塗布が容易になる。
【0051】
フィルム状支持体の片側に塗布する銅微粒子を含む組成物には、フィルム状支持体の片側に形成する塗膜中で銅微粒子を分散させるために、適量の液体が分散媒として含まれていることが好ましい。本発明において使用できる分散媒としては、有機溶媒及び/または水が挙げられる。分散媒として用いる有機溶媒の例としては、液体であるアルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒およびエーテル系溶媒を例示できる。また、上記の還元性物質が液体である場合には、これを分散媒として兼ねて使用してもよい。
【0052】
分散媒として用いるアルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノールなどのモノアルコール系溶媒、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセロールなどの多価アルコール系溶媒、およびエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルなどの多価アルコール部分エーテル系溶媒などを挙げることができる。これらのアルコール系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0053】
分散媒として用いるケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノンなどのほか、アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、3,5−オクタンジオン、2,4−ノナンジオン、3,5−ノナンジオン、5−メチル−2,4−ヘキサンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ヘプタンジオンなどのβ−ジケトン類などが挙げられる。
【0054】
分散媒として用いるアミド系溶媒としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルモルホリン、N−アセチルピペリジン、N−アセチルピロリジンなどが挙げられる。エステル系溶媒としては、ジエチルカーボネート、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソアミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチルなどが挙げられる。これらエステル系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0055】
分散媒として用いるエーテル系溶媒としては、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテルなどが挙げられる。
【0056】
これらの分散媒は、単独で用いても、2種以上の分散媒を混合して用いても良い。
【0057】
銅微粒子を焼結する上で、焼結後の膜状態の緻密性や印刷プロセスにおける取扱いを考慮すると、銅微粒子は組成物中またはフィルム状支持体に塗布後の塗膜中に良好に分散していることが好ましい。良好に分散している状態とは、塗膜中の銅微粒子凝集体が少なく、塗膜内の銅微粒子の流動性が高い状態をいう。銅微粒子を組成物中に良好に分散させるには、分散剤を添加することにより化学的に分散状態を補助する方法と、物理的に分散させる方法、及びこれらを組み合わせる方法が挙げられる。
【0058】
銅微粒子を分散させるのに適した分散剤としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の極性基を有する低分子化合物、オリゴマー、ポリマーを例示できる。極性基を有する低分子化合物としては、アルコール系化合物、アミン化合物、アミド化合物、アンモニウム化合物、燐系化合物等を例示できる。極性基を有するポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリメチルビニルエーテル、ポリエチレングリコール等を例示できる。また、分散剤として界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、非極性界面活性剤等を例示できる。極性基を有するポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリメチルビニルエーテル、ポリエチレングリコール等を例示できる。
【0059】
分散剤を用いて銅微粒子を分散させる方法としては、銅微粒子を合成する際に分散剤の存在下で合成して銅微粒子の表面に配位させる方法や、銅微粒子の分散処理を行う際に分散剤の存在下で行うことで銅微粒子の表面に配位させる方法などが考えられる。分散処理の手法については後述する。
【0060】
本発明で用いる銅微粒子を含有する組成物またはこれを塗布した塗膜中には、銅微粒子以外の金属の粒子が含まれていても良い。具体的には金、銀、プラチナ、亜鉛、錫の粒子が挙げられる。金、銀、プラチナは、銅よりも酸化されにくく導電性も非常に高いので、組成物またはこれを塗布した塗膜中に一部混合していることで、より導電性の高い焼結体が得られる効果がある。また、亜鉛、錫は銅よりも融点が低いため、容易に融解して焼結を補助する効果が得られる。これら銅微粒子以外の金属の組成物中の含有率は、銅微粒子に対する割合が好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0061】
〈銅微粒子を含有する組成物(ペースト)の調製方法〉
本発明で用いる組成物は、上記の銅微粒子、分散媒、必要に応じて分散剤、バインダー、還元性物質、その他の添加剤等の塗膜構成物を適切に混合することによりペーストとして形成することが好ましい(以下、ペースト状の該組成物を「ペースト」と記載することがある。)。各構成物が良好に混練されているペーストが好ましく、特に銅微粒子がペースト内で良好に分散され、凝集が少なく流動性の高い状態になっていることが好ましい。
【0062】
銅微粒子をペースト中に分散させる方法としては、粉体を液体に分散する公知の方法を用いることができる。例えば、超音波法、ミキサー法、3本ロール法、2本ロール法、プラネタリーミキサー、ニーダー、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、ジェットミル、乳鉢による破砕等を挙げることができる。通常は、これらの分散手段の複数を組み合わせて分散を行う。これらの分散処理は室温で行ってもよく、溶媒の粘度を下げるために、加熱して行ってもよい。これらの手法の中でも、ペースト中の銅微粒子の凝集を再分散させるためには、3本ロール法、乳鉢による破砕が特に好ましい。
【0063】
これらの処理を、上記の分散剤の存在下で行うとさらに分散状態が良くなる事がある。
【0064】
〈気化・脱離しうる配位子を有する銀錯体化合物〉
本発明のフィルムミラーは、支持体上に銀反射層を有するフィルムミラーであって、当該銀反射層が、配位子が気化・脱離しうる銀錯体化合物を含有する塗布膜を加熱焼成することにより形成されたものであることが好ましい。
【0065】
本願において、「気化・脱離しうる配位子を有する銀錯体化合物」とは、溶液中では銀が安定に溶解するための配位子を有するが、溶媒を除去し、加熱焼成することによって、配位子が熱分解し、COや低分子量のアミン化合物となり、気化・脱離し、金属銀のみが残存することのできる銀錯体化合物のことをいう。
【0066】
このような錯体の例は、公知である特表2009−535661号、特表2010−500475号各公報等に記載されており、下記一般式(1)で表される銀化合物と、一般式(2)〜(4)で表されるアンモニウムカルバメート系化合物又はアンモニウムカーボネート系化合物とを反応して得られる銀錯体化合物であることが好ましい。
【0067】
また、また、本発明の反射層は塗布することにより銀反射層の塗布膜が設けられることが好ましい。本発明に用いることのできる気化・脱離しうる配位子を有する銀錯体化合物は銀コーティング液組成物に含有され、これを塗布することによりフィルム状支持体の片側に本発明に用いることのできる気化・脱離しうる配位子を有する錯体を含有する塗布膜が形成されることが好ましい。気化・脱離しうる配位子を有する銀錯体化合物を用いてフィルム状支持体の片側に塗布膜を形成した後に、塗布膜を80〜150℃の範囲内の温度において加熱焼成することにより銀反射層を形成することが好ましい。更に好ましくは90〜130℃の範囲内の温度である。加熱焼成手段としては、特に制限は無く、一般的に用いられる加熱手段はどんなものでも適用できる。
【0068】
また、フィルム状支持体上に、気化・脱離しうる配位子を有する銀錯体化合物を含有する塗布膜と、銅微粒子を含有する塗布液を用いて形成された塗布膜を同時に形成した後に、当該塗布膜を80〜150℃の範囲内の温度において加熱焼成することにより銀反射層を形成することが好ましい。更に好ましくは90〜130℃範囲内の温度である。
【0069】
以下、下記一般式(1)で表される銀化合物と、一般式(2)〜(4)で表されるアンモニウムカルバメート系化合物又はアンモニウムカーボネート系化合物等について説明をする。
【0070】
一般式(1): Ag
【0071】
【化1】

【0072】
(一般式(1)〜(4)において、Xは、酸素、硫黄、ハロゲン、シアノ、シアネート、カーボネート、ニトレート、ニトライト、サルフェート、ホスフェート、チオシアネート、クロレート、パークロレート、テトラフルオロボレート、アセチルアセトネート、カルボキシレート、及びこれらの誘導体から選択される置換基であり、nは、1〜4の整数であって、R〜Rは、互いに独立して、水素、C1〜C30の脂肪族や脂環族アルキル基、アリール基又はアラルキル(aralkyl)基、官能基が置換されたアルキル及びアリール基、ヘテロ環化合物基と高分子化合物及びその誘導体から選択される置換基である。)
一般式(1)の具体例としては、例えば、酸化銀、チオシアネート化銀、硫化銀、塩化銀、シアン化銀、シアネート化銀、炭酸銀、硝酸銀、亜硝酸銀、硫酸銀、燐酸銀、過塩素酸銀、四フッ素ボレート化銀、アセチルアセトネート化銀、酢酸銀、乳酸銀、シュウ酸銀及びその誘導体などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0073】
また、一般式(2)〜(4)において、R〜Rは、具体的に例えば、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、アミル、ヘキシル、エチルヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ドコデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アリール、ヒドロキシ、メトキシ、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、メトキシプロピル、シアノエチル、エトキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ、メトキシエトキシエチル、メトキシエトキシエトキシエチル、ヘキサメチレンイミン、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ピロール、イミダゾール、ピリジン、カルボキシメチル、トリメトキシシリルプロピル、トリエトキシシリルプロピル、フェニル、メトキシフェニル、シアノフェニル、フェノキシ、トリル、ベンジル及びその誘導体、そしてポリアリールアミンやポリエチレンアミンのような高分子化合物及びこれらの誘導体などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0074】
一般式(2)〜(4)の化合物例としては、例えば、アンモニウムカルバメート(ammonium carbamate)、アンモニウムカーボネート(ammonium carbonate)、アンモニウムバイカーボネート(ammonium bicarbonate)、エチルアンモニウムエチルカルバメート、イソプロピルアンモニウムイソプロピルカルバメート、n−ブチルアンモニウムn−ブチルカルバメート、イソブチルアンモニウムイソブチルカルバメート、t−ブチルアンモニウムt−ブチルカルバメート、2−エチルヘキシルアンモニウム2−エチルヘキシルカルバメート、オクタデシルアンモニウムオクタデシルカルバメート、2−メトキシエチルアンモニウム2−メトキシエチルカルバメート、2−シアノエチルアンモニウム2−シアノエチルカルバメート、ジブチルアンモニウムジブチルカルバメート、ジオクタデシルアンモニウムジオクタデシルカルバメート、メチルデシルアンモニウムメチルデシルカルバメート、ヘキサメチレンイミンアンモニウムヘキサメチレンイミンカルバメート、モルホリニウムモルホリンカルバメート、ピリジウムエチルヘキシルカルバメート、トリエチレンジアミニウムイソプロピルバイカルバメート、ベンジルアンモニウムベンジルカルバメート、トリエトキシシリルプロピルアンモニウムトリエトキシシリルプロピルカルバメート、エチルアンモニウムエチルカーボネート、イソプロピルアンモニウムイソプロピルカーボネート、イソプロピルアンモニウムバイカーボネート、n−ブチルアンモニウムn−ブチルカーボネート、イソブチルアンモニウムイソブチルカーボネート、t−ブチルアンモニウムt−ブチルカーボネート、t−ブチルアンモニウムバイカーボネート、2−エチルヘキシルアンモニウム2−エチルヘキシルカーボネート、2−エチルヘキシルアンモニウムバイカーボネート、2−メトキシエチルアンモニウム2−メトキシエチルカーボネート、2−メトキシエチルアンモニウムバイカーボネート、2−シアノエチルアンモニウム2−シアノエチルカーボネート、2−シアノエチルアンモニウムバイカーボネート、オクタデシルアンモニウムオクタデシルカーボネート、ジブチルアンモニウムジブチルカーボネート、ジオクタデシルアンモニウムジオクタデシルカーボネート、ジオクタデシルアンモニウムバイカーボネート、メチルデシルアンモニウムメチルデシルカーボネート、ヘキサメチレンイミンアンモニウムヘキサメチレンイミンカーボネート、モルホリンアンモニウムモルホリンカーボネート、ベンジルアンモニウムベンジルカーボネート、トリエトキシシリルプロピルアンモニウムトリエトキシシリルプロピルカーボネート、ピリジウムバイカーボネート、トリエチレンジアミニウムイソプロピルカーボネート、トリエチレンジアミニウムバイカーボネート、及びその誘導体から選択される一種又は二種以上の混合物などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0075】
一方、上記のアンモニウムカルバメート又はアンモニウムカーボネート系化合物の種類及び製造方法は、特に制限する必要はない。例えば、米国特許第4,542,214号では、第1アミン、第2アミン、第3アミン、又は少なくとも1つ以上のこれらの混合物と二酸化炭素からアンモニウムカルバメート系化合物が製造できると記述しており、前記アミン1モル当り水0.5モルをさらに添加すると、アンモニウムカーボネート系化合物が得られて、水1モル以上を添加する場合は、アンモニウムバイカーボネート系化合物を得ることができる。この際、常圧又は加圧状態で特別な溶媒を使用せずに直接製造するか、溶媒を使用する場合、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール類、エチレングリコール、グリセリンのようなグリコール類、エチルアセテート、ブチルアセテート、カルビトールアセテートのようなアセテート類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル類、メチルエチルケトン、アセトンのようなケトン類、ヘキサン、ヘプタンのような炭化水素系、ベンゼン、トルエンのような芳香族、そしてクロロホルムやメチレンクロライド、カーボンテトラクロライドのようなハロゲン置換溶媒又はこれらの混合溶媒などが挙げられて、二酸化炭素は、気相状態でバブリング(bubbling)するか、固体相ドライアイスを使用することができて、超臨界(supercritical)状態でも反応することができる。本発明で使用されるアンモニウムカルバメート又はアンモニウムカーボネート誘導体の製造には、上記の方法の他にも、最終物質の構造が同一であれば、公知のいかなる方法を使用してもよい即ち、製造のための溶媒、反応温度、濃度又は触媒などを特に限定する必要はなく、製造収率にも影響しない。
【0076】
このように製造されたアンモニウムカルバメート又はアンモニウムカーボネート系化合物と銀化合物とを反応して、有機銀錯体化合物を製造することができる。例えば、一般式(1)に示したような少なくとも一つ以上の銀化合物と、一般式(2)〜(4)に示したような少なくとも一つ以上のアンモニウムカルバメート又はアンモニウムカーボネート誘導体及びこれらの混合物を、窒素雰囲気の常圧又は加圧状態で、溶媒を使用せずに直接反応するか、溶媒を使用する場合、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール類、エチレングリコール、グリセリンのようなグリコール類、エチルアセテート、ブチルアセテート、カルビトールアセテートのようなアセテート類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル類、メチルエチルケトン、アセトンのようなケトン類、ヘキサン、ヘプタンのような炭化水素系、ベンゼン、トルエンのような芳香族、そしてクロロホルムやメチレンクロライド、カーボンテトラクロライドのようなハロゲン置換溶媒又はこれらの混合溶媒などを使用することができる。
【0077】
本発明で好ましく使用される気化・脱離しうる配位子を有する銀錯体化合物の製造には、上記の方法の他に、一般式(1)の銀化合物と一つ以上のアミン化合物とが混合された溶液を製造した後、二酸化炭素を反応して、銀錯体化合物を製造することもできる。上記のように、窒素雰囲気の常圧又は加圧状態で、溶媒を使用せずに直接反応するか、溶媒を使用して反応することができる。しかしながら、最終物質の構造が同一であれば、公知の如何なる方法を使用してもよい。即ち、製造のための溶媒、反応温度、濃度又は触媒の使用有無などを特に限定する必要はなく、製造収率にも影響しない。
【0078】
本発明で好ましく使用される気化・脱離しうる配位子を有する銀錯体化合物は、特表2008−530001号公報にその製造方法が記載されており、下記一般式(5)の構造で認識される。
【0079】
一般式(5): Ag[A]
(一般式(5)において、Aは、一般式(2)〜(4)の化合物であり、mは、0.5〜1.5である。)
本発明の高反射、高光沢の反射面の形成のために使用される銀コーティング液組成物は、前記の気化・脱離しうる配位子を有する銀錯体化合物を含有し、必要に応じて、溶媒、安定剤、レベリング剤(Leveling agent)、薄膜補助剤、還元剤、熱分解反応促進剤の添加剤を、本発明の銀コーティング組成物に含有することができる。
【0080】
補助剤、還元剤、熱分解反応促進剤の添加剤を、本発明の銀コーティング組成物に含有することができる。
【0081】
一方、前記安定剤としては例えば、第1アミン、第2アミン又は第3アミンのようなアミン化合物や、前記アンモニウムカルバメート、アンモニウムカーボネート、アンモニウムバイカーボネート系化合物、又はホスフィン(phosphine)、ホスファイ(phosphite)、ホスフェート(phosphate)のようなリン化合物、チオール(thiol)やスルフィド(sulfide)のような硫黄化合物と、少なくとも一つ以上のこれらの混合物が挙げられ、アミン化合物としては、具体的に例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、イソアミルアミン、n−ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、イソオクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ドコデシルアミン、シクロプロピルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、アリールアミン、ヒドロキシアミン、アンモニウムヒドロキシド、メトキシアミン、2−エタノールアミン、メトキシエチルアミン、2−ヒドロキシプロピルアミン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルアミン、メトキシプロピルアミン、シアノエチルアミン、エトキシアミン、n−ブトキシアミン、2−ヘキシルオキシアミン、メトキシエトキシエチルアミン、メトキシエトキシエトキシエチルアミン、ジメチルアミン、ジプロピルアミン、ジエタノールアミン、ヘキサメチレンイミン、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、2,2−(エチレンジオキシ)ビスエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ピロール、イミダゾール、ピリジン、アミノアセトアルデヒドジメチルアセタル、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アニリン、アニシジン、アミノベンゾニトリル、ベンジルアミン及びその誘導体、そしてポリアリールアミンやポリエチレンイミンのような高分子化合物及びその誘導体などのようなアミン化合物が挙げられる。
【0082】
安定剤として用いることのできるアンモニウムカルバメート、カーボネート、バイカーボネート系化合物として具体的に例えば、アンモニウムカルバメート(ammonium carbamate)、アンモニウムカーボネート(ammonium carbonate)、アンモニウムバイカーボネート(ammonium bicarbonate)、エチルアンモニウムエチルカルバメート、イソプロピルアンモニウムイソプロピルカルバメート、n−ブチルアンモニウムn−ブチルカルバメート、イソブチルアンモニウムイソブチルカルバメート、t−ブチルアンモニウムt−ブチルカルバメート、2−エチルヘキシルアンモニウム2−エチルヘキシルカルバメート、オクタデシルアンモニウムオクタデシルカルバメート、2−メトキシエチルアンモニウム2−メトキシエチルカルバメート、2−シアノエチルアンモニウム2−シアノエチルカルバメート、ジブチルアンモニウムジブチルカルバメート、ジオクタデシルアンモニウムジオクタデシルカルバメート、メチルデシルアンモニウムメチルデシルカルバメート、ヘキサメチレンイミンアンモニウムヘキサメチレンイミンカルバメート、モルホリニウムモルホリンカルバメート、ピリジウムエチルヘキシルカルバメート、トリエチレンジアミニウムイソプロピルバイカルバメート、ベンジルアンモニウムベンジルカルバメート、トリエトキシシリルプロピルアンモニウムトリエトキシシリルプロピルカルバメート、エチルアンモニウムエチルカーボネート、イソプロピルアンモニウムイソプロピルカーボネート、イソプロピルアンモニウムバイカーボネート、n−ブチルアンモニウムn−ブチルカーボネート、イソブチルアンモニウムイソブチルカーボネート、t−ブチルアンモニウムt−ブチルカーボネート、t−ブチルアンモニウムバイカーボネート、2−エチルヘキシルアンモニウム2−エチルヘキシルカーボネート、2−エチルヘキシルアンモニウムバイカーボネート、2−メトキシエチルアンモニウム2−メトキシエチルカーボネート、2−メトキシエチルアンモニウムバイカーボネート、2−シアノエチルアンモニウム2−シアノエチルカーボネート、2−シアノエチルアンモニウムバイカーボネート、オクタデシルアンモニウムオクタデシルカーボネート、ジブチルアンモニウムジブチルカーボネート、ジオクタデシルアンモニウムジオクタデシルカーボネート、ジオクタデシルアンモニウムバイカーボネート、メチルデシルアンモニウムメチルデシルカーボネート、ヘキサメチレンイミンアンモニウムヘキサメチレンイミンカーボネート、モルホリンアンモニウムモルホリンカーボネート、ベンジルアンモニウムベンジルカーボネート、トリエトキシシリルプロピルアンモニウムトリエトキシシリルプロピルカーボネート、ピリジウムバイカーボネート、トリエチレンジアミニウムイソプロピルカーボネート、トリエチレンジアミニウムバイカーボネート、及びその誘導体などが挙げられる。
【0083】
また、リン化合物としては、一般式RP、(RO)P又は(RO)POで表されるリン化合物で挙げられる。ここでRは、炭素数1〜20のアルキル又はアリール基を示し、具体的に例えば、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、ジベンジルホスフェート、トリエチルホスフェートなどが挙げられる。
【0084】
そして、硫黄化合物として、具体的に例えば、ブタンチオール、n−ヘキサンチオール、ジエチルスルフィド、テトラヒドロチオフェン、アリールジスルフィド、2−メルカプトベンゾアゾール、テトラヒドロチオフェン、オクチルチオグリコレートなどが挙げられる。
【0085】
このような安定剤の使用量は、特に制限する必要はない。しかしながら、その含量は、銀化合物に対し、モル比で0.1%〜90%が好ましい。
【0086】
また、薄膜補助剤としては、有機酸及び有機酸誘導体、又は少なくとも一つ以上のこれらの混合物が挙げられる。具体的に例えば、酢酸、酪酸(Butyric acid)、吉草酸(Valeric acid)、ピバル酸(Pivalic acid)、ヘキサン酸、オクタン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ネオデカン酸(Neodecanoic acid)、ラウリン酸(Lauric acid)、ステアリン酸、ナフタル酸などの有機酸が挙げられ、有機酸誘導体としては、具体的に例えば、酢酸アンモニウム塩、クエン酸アンモニウム塩、ラウリン酸アンモニウム塩、乳酸アンモニウム塩、マレイン酸アンモニウム塩、シュウ酸アンモニウム塩、モリブデン酸アンモニウム塩などの有機酸アンモニウム塩と、Au、Cu、Zn、Ni、Co、Pd、Pt、Ti、V、Mn、Fe、Cr、Zr、Nb、Mo、W、Ru、Cd、Ta、Re、Os、Ir、Al、Ga、Ge、In、Sn、Sb、Pb、Bi、Sm、Eu、Ac、Thなどのような金属を含有するシュウ酸マンガン、酢酸金、シュウ酸パラジウム、2−エチルヘキサン酸銀、オクタン酸銀、ネオデカン酸銀、ステアリン酸コバルト、ナフタル酸ニッケル、ナフタル酸コバルトなどの有機酸金属塩が挙げられる。前記薄膜補助剤の使用量は、特に限定されないが、気化・脱離しうる配位子を有する銀錯体化合物に対して、モル比で0.1〜25%が好ましい。
【0087】
前記還元剤としては、ルイス酸又は弱いブレンステッド酸(bronsted acid)が挙げられ、具体的に例えば、ヒドラジン、ヒドラジンモノハイドレート、アセトヒドラジド、水酸化ホウ素ナトリウム又は水酸化ホウ素カリウム、ジメチルアミンボラン、ブチルアミンボランのようなアミン化合物、第1塩化鉄、乳酸鉄のような金属塩、水素、ヨウ化水素、一酸化炭素、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキサールのようなアルデヒド化合物、ギ酸メチル、ギ酸ブチル、トリエチル−o−ギ酸のようなギ酸化合物、グルコース、アスコルビン酸、ヒドロキノンのような還元性有機化合物を少なくとも一つ以上含有するこれらの混合物を挙げることができる。
【0088】
前記熱分解反応促進剤としては、具体的に例えば、エタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、ヘキサノールアミン、ジメチルエタノールアミンのようなヒドロキシアルキルアミン類、ピペリジン、N−メチルピペリジン、ピペラジン、N,N′−ジメチルピペラジン、1−アミノ−4メチルピペラジン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、モルホリンのようなアミン化合物、アセトンオキシム、ジメチルグリオキシム、2−ブタノンオキシム、2,3−ブタジオンモノオキシムのようなアルキルオキシム類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールのようなグリコール類、メトキシエチルアミン、エトキシエチルアミン、メトキシプロピルアミンのようなアルコキシアルキルアミン類、メトキシエタノール、メトキシプロパノール、エトキシエタノールのようなアルコキシアルカノール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、アセトール、ジアセトンアルコールのようなケトンアルコール類、多価フェノール化合物、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ピロール、エチレンジオキシチオフェン(EDOT)のような酸化重合性樹脂などが挙げられる。
【0089】
なお、銀コーティング液組成物の粘度調節や円滑な薄膜形成のために溶媒が必要な場合があるが、この際使用できる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−メトキシプロパノール、ブタノール、エチルヘキシルアルコール、テルピネオールのようなアルコール類、エチレングリコール、グリセリンのようなグリコール類、エチルアセテート、ブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテートのようなアセテート類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル類、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドンのようなケトン類、ヘキサン、ヘプタン、ドデカン、パラフィンオイル、ミネラルスピリットのような炭化水素系、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族、そしてクロロホルムやメチレンクロライド、カーボンテトラクロライドのようなハロゲン置換溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、又はこれらの混合溶媒などを使用することができる。
【0090】
(フィルム状支持体)
本発明に係るフィルム状支持体としては、従来公知の種々の樹脂フィルムであっても、ガラスフィルムであっても、フィルム状であれば、本発明の支持体として用いることができる。
【0091】
例えば樹脂フィルムであれば、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール等のポリビニルアルコール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂等、ポリ(メタ)アクリル系樹脂よりなる樹脂フィルムを挙げることができる。
【0092】
特にフッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、または、ポリエステル系樹脂のいずれかよりなる樹脂フィルムを用いることが好ましく、溶融流延製膜で製造されたフィルムであっても、溶液流延製膜で製造されたフィルムであってもよい。
【0093】
本発明に係るフィルム状支持体の厚さは、ロール状に巻くことのできるフィルム状支持体であるという観点から、1.0〜200μmの範囲内であることを要する。好ましくは20〜150μm、更に好ましくは30〜130μmである。
【0094】
(ガラスフィルム)
本発明のフィルムミラーは、フィルム状支持体の片側に銀反射層を有するフィルムミラーであって、当該フィルム状支持体が、厚さが1.0〜200μmの範囲内であるガラスフィルムも好ましく用いられる。
【0095】
当該ガラスフィルムとしては、ダウンドロー法によって成形されたガラスロールより得られるガラスフィルムであることが好ましい。すなわち、特開2010−132347号公報に開示されているような、ダウンドロー法によって成形された表裏面が露出したガラスフィルムを、保護シートに重ねてロール状に巻き取ったガラスロールより得られるガラスフィルムであることが好ましい。
【0096】
このような構成によれば、ダウンドロー法によって形成された表裏面が露出したガラスフィルムがそのままの状態で、保護シートとともにロール状に巻き取られてガラスロールが形成される。そのため、梱包前の工程で、ガラスフィルムの表裏面のいずれにもポリマー層等の保護膜を形成する成膜工程を行う必要がなく、開梱後の工程でも、ガラスフィルムの表面からポリマー層等の保護膜を除去する除去工程を行う必要もない。
【0097】
従って、保護膜を形成する工程が不要な分だけ梱包前の工程を短縮化できるので、ガラスフィルムの表裏面に異物が付着する割合を可及的に低減できると共に、開梱後に保護膜に由来する異物が残存するという事態も生じ得ない。その結果、ダウンドロー法に由来したガラスフィルムの表裏面の清浄性を良好に維持することができる。更に、ダウンドロー法により成形した表裏面であれば、フロート法により成形した場合のように事後的にガラスフィルムの表面研磨を行わなくても、未研磨面の状態で清浄性を確保できるという利点もある。
【0098】
また、ガラスフィルムの露出した表裏面は、ガラスロールの状態で保護シートにより保護される。しかも、ガラスフィルムの表裏面は、ポリマー層等の保護膜が形成されていないガラス面であるため、巻き取った段階で、ガラスフィルムと保護シートとが固着するという事態も生じ難い。従って、ガラスロールの状態でのガラスフィルムの破損を確実に低減でき、しかも、ガラスフィルムと保護シートとの分離性も良好に維持できるので、開梱時のガラスフィルムの破損も可及的に低減することができる。
【0099】
なお、ガラスフィルムは、長時間巻き取った状態が保持されたとしても、反りが発生することはなく容易に次工程へと送り込むことができる。さらに、巻き取ることによって長尺物のガラスフィルムとすることができることから、その後自由な長さで切断することができ、様々な大きさの基板に対応することが可能となり、ガラスフィルムの無駄を防止することができる。
【0100】
本発明においては、前記ガラスフィルムの厚さが、1.0〜200μmの範囲内であるであることを要する。なお、ガラスフィルムの厚さは、好ましくは30μm以上150μm以下であることが好ましい。更に好ましくは50〜120μmの範囲内である。厚さが1.0μm以上の場合、ロール状に巻き取る際のテンションに耐えることが容易で破断に対する強度が高い。また、200μmよりも薄いとロールとしての巻き取ることが容易となる。
【0101】
上記のような厚さにすれば、ガラスフィルムに適切な可撓性が付与される。そのため、ガラスフィルムを巻き取った際にガラスフィルムにかかる不当な応力を軽減することができ、破損を防止することができる。
【0102】
上記の構成において、前記ガラスフィルムの幅方向の両端面の算術平均粗さRaが、0.1μm以下であることが好ましい。ここで、「算術平均粗さRa」は、JIS B0601:2001に準拠して測定された値とする。
【0103】
このようにすれば、ガラスフィルムの幅方向の両端面に適切な平滑性が付与される。そのため、ガラスフィルムをロール状に巻き取る際に、ガラスフィルムの両端面に微細な傷が生じ難くなり、ガラスフィルム両端面からの破損を防止することができる。従って、ガラスフィルムの端面の微細な傷に起因する欠けにより発生するガラス粉(カレット)を低減できることから、ガラスフィルムの表裏面の清浄性を確保する上でも非常に有利となる。また、ガラスフィルムの端面と保護シートが接触した場合でも、ガラスフィルムの端面が保護シートに噛み込んで引っかかることがなく、ガラスフィルムと保護シートとの分離性を良好なものとすることができる。
【0104】
上記の構成において、前記ガラスフィルムの幅方向の両端面が、レーザー切断により切断された切断面で構成されていることが好ましい。なお、ここでいうレーザー切断には、レーザー溶断以外にも、レーザー割断も含まれる。
【0105】
(汚れの付着を防止する層)
本発明のフィルムミラーは、光の入射面側の最表面に汚れの付着を防止する層を有しているのが好ましい。本発明の汚れの付着を防止する層は、親水性でも撥水性でも良い。例えば、光触媒を用いて表面を親水性にする場合には、光触媒活性層が自己浄化作用を有しているので、降雨又は散水により、自己浄化できるので、メンテナンスフリーでフィルムを美麗な状態に保つことができる。また、表面にフッ素系樹脂などを塗布することにより、表面を撥水性とし、雨などによる水滴をはじき、汚れの原因となる砂や有機分の付着を防止するといった方法も好ましく適用できる。
【0106】
(接着層)
主に樹脂を用いた層と銀反射層との間か、又は樹脂を用いた層と犠牲防食層との間に、層間の接着性を保つための接着層を有することが好ましい。
【0107】
接着層は層間の接着性を高める機能があるものであれば特に限定はないが、層間の密着性、銀反射層を真空蒸着法等で形成する時の熱にも耐え得る耐熱性、及び銀反射層が本来有する高い反射性能を引き出すための平滑性のあるものが好ましい。
【0108】
当該接着層の厚さは、密着性、平滑性、反射材の反射率等の観点から、0.01〜3μmが好ましく、より好ましくは0.1〜1μmである。
【0109】
接着層が樹脂である場合、前記樹脂として、上記の密着性、耐熱性、及び平滑性の条件を満足するものであれば特に制限はなく、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体系樹脂等の単独またはこれらの混合樹脂が使用でき、耐候性の点からポリエステル系樹脂とメラミン系樹脂の混合樹脂が好ましく、さらにイソシアネート等の硬化剤を混合した熱硬化型樹脂とすればより好ましい。接着層の形成方法は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等、従来公知のコーティング方法が使用できる。接着層が金属酸化物である場合、例えば酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化シリコン、窒化アルミニウム、酸化ランタン、窒化ランタン等、各種真空製膜法により製膜することができる。例えば、抵抗加熱式真空蒸着法、電子ビーム加熱式真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト真空蒸着法、スパッタ法などがある。
【0110】
(傷防止層)
本発明においては、銀反射層を挟んで、フィルム状支持体とは反対側に傷防止層を設けることができる。傷防止層はフィルムミラーの傷防止のために設けることができ、特に銀反射層の傷防止に効果のあるものが好ましい。傷防止層は銀反射層を挟んで、フィルム状支持体とは反対側の最外層に設けられることが好ましい。
【0111】
当該傷防止層は、硬度、平滑性、耐熱性を満足するものであれば特に制限は無いが、前述したフィルム状支持体や、活性エネルギー線硬化型のアクリル系樹脂、または熱硬化型のアクリル系樹脂などを好ましく使用することができる。
【0112】
傷防止層の膜厚は1〜25μmが好ましい。更に好ましくは3〜10μmである。
【0113】
また、本発明のフィルムミラーを作製する際、傷防止層から順に層を設けることもできる。
【0114】
(上部隣接層)
本発明のフィルムミラーに用いられる上部隣接層は、銀反射層の樹脂基材(支持体)から遠い側に隣接し、腐食防止剤を含み、銀の腐食劣化を防ぐとともに、銀反射層の傷防止及び、上部隣接層の外側に形成されるバリア層や傷防止層との接着力向上に寄与するものである。
【0115】
当該上部隣接層に使用するバインダーとしての樹脂は、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等の単独またはこれらの混合樹脂が使用でき、耐候性の点からポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂が好ましく、さらにイソシアネート等の硬化剤を混合した熱硬化型樹脂とすればより好ましい。
【0116】
イソシアネートは、TDI(トリレンジイソシアネート)系、XDI(キシレンジイソシアネート)系、MDI(メチレンジイソシアネート)系、HMDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)系等の従来から使用されてきた各種イソシアネートが使用可能であるが、耐候性の点から、XDI系、MDI系、HMDI系のイソシアネートを使用するのが好ましい。
【0117】
上部隣接層の厚さは、密着性、耐候性等の観点から、0.01〜3μmが好ましく、より好ましくは0.1〜1μmである。
【0118】
上部隣接層の形成方法は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等、従来公知のコーティング方法が使用できる。
【0119】
(自己支持性の基材)
本発明のフィルムミラーを太陽光反射用ミラーに用いる場合、当該フィルムミラーを支持する基材として種々の態様の基材を用いることができるが、自己支持性の基材を用いることが好ましい。すなわち、自己支持性の基材に、本発明のフィルムミラーが具備されてなる太陽光反射用ミラーとすることが好ましい。
【0120】
本発明に係る太陽光反射用ミラーに用いられる自己支持性の基材は、以下のA及びBの何れかの構成を有することが好ましい。
【0121】
A:一対の金属平板と、当該金属平板の間に設けられた中間層とを有し、当該中間層は中空構造を有する層又は樹脂材料から構成される層である。
【0122】
B:中空構造を有する樹脂材料層からなる。
【0123】
本発明で「自己支持性の基材」という場合の、「自己支持性」とは、反射板の基材として用いられる大きさに断裁された場合において、その対向する端縁部分を支持することで、基材を担持することが可能な程度の剛性を有することを表す。反射板の基材が自己支持性を有することで、反射板を設置する際に取り扱い性に優れるとともに、反射板を保持するための保持部材を簡素な構成とすることが可能となるため、反射装置を軽量化することが可能となり、太陽追尾の際の消費電力を抑制することが可能となる。
【0124】
構成Aのように、自己支持性の基材を、一対の金属平板と、当該金属平板の間に設けられた中間層からなる構成とし、中間層は中空構造を有する層か樹脂材料から構成される層とすることにより、金属平板による高い平面性を有するとともに、中間層が中空構造を有する層か、樹脂材料から構成される層とされていることにより、金属平板のみで基材を構成する場合に比べて、基材を大幅に軽量化することが可能となるとともに、比較的軽量な中間層により剛性を上げることができるため、軽量且つ自己支持性を有する支持体とすることが可能となる。中間層として樹脂材料から構成される層を用いる場合においても、中空構造を有する樹脂材料の層とすることで更に軽量化が可能である。
【0125】
また、中間層を中空構造とした場合には、中間層が断熱材としての機能を果たすため、裏面の金属平板の温度変化がフィルムミラーへ伝わることを抑制し、結露の防止や、熱による劣化を抑制することが可能となる。
【0126】
構成Aの表面層を形成する、金属平板としては、鋼板、銅板、アルミニウム板、アルミニウムめっき鋼板、アルミニウム系合金めっき鋼板、銅めっき鋼板、錫めっき鋼板、クロムめっき鋼板、ステンレス鋼板など熱伝導率の高い金属材料が好ましく用いることができる。本発明においては、特に、耐腐食性の良好なめっき鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板などにすることが好ましい。
【0127】
構成Aの中間層を中空構造とする場合、金属、無機材料(ガラス等)、樹脂等の素材を用いることができる。中空構造としては、発泡樹脂からなる気泡構造、金属、無機材料又は樹脂材料からなる壁面を有する立体構造(ハニカム構造等)や、中空微粒子を添加した樹脂材料等を用いることができる。発泡樹脂の気泡構造は、樹脂材料中にガスを細かく分散させ、発泡状又は多孔質形状に形成されたものを指し、材料としては、公知の発泡樹脂材料を使用可能であるが、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン等が好ましく用いられる。ハニカム構造とは、空間が側壁で囲まれた複数の小空間で構成される立体構造全般を表すものとする。中空構造を樹脂材料からなる壁面を有する立体構造とする場合、壁面を構成する樹脂材料としては、エチレン、プロピレン、ブテン、イソプレンペンテン、メチルペンテン等のオレフィン類の単独重合体あるいは共重合体であるポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン)、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のアクリル誘導体、ポリカーボネート、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン−ジエン類等のターポリマー、ABS樹脂、ポリオレフィンオキサイド、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。なお、これらは一種類を単独で用いても、二種類以上を混合して用いてもよい。特に、熱可塑性樹脂のなかでもオレフィン系樹脂又はオレフィン系樹脂を主体にした樹脂、ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂を主体にした樹脂が、機械的強度及び成形性のバランスに優れている点で好ましい。樹脂材料には、添加剤が含まれていてもよく、その添加剤としては、シリカ、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機フィラー、可塑剤、安定剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤等が挙げられる。
【0128】
また、中間層を樹脂プレートからなる層とすることも可能であり、この場合に中間層を構成する樹脂材料としては、前述のフィルムミラーの支持体を構成する材料と同様のものを好ましく用いることができる。
【0129】
中間層は、基材の全ての領域に設けられる必要はなく、金属平板の平面性及び基材としての自己支持性を担保できる範囲であれば、一部の領域に設けられていてもよい。中間層を上述の立体構造とする場合、金属平板の面積に対して、90〜95%程度の領域に立体構造を設けることが好ましく、発泡樹脂を用いる場合は、30〜40%程度の領域に設けることが好ましい。
【0130】
上記の構成Bのように、自己支持性の基材を、中空構造を有する樹脂材料からなる層とすることも可能である。基材を樹脂のみからなる層とした場合、自己支持性を持たせる程度の剛性を得るために必要な厚さが大きくなり、結果として基材の質量が重くなるが、樹脂基材に中空構造を持たせることにより、自己支持性を持たせながら軽量化が可能となる。中空構造を有する樹脂材料からなる層とする場合、表面層として平滑な面を有する樹脂シートを設け、中空構造を有する樹脂材料を中間層として用いることが、フィルムミラーの正反射率を高める観点で好ましい。この樹脂シートの材料としては、前述のフィルムミラーの支持体を構成する材料と同様のものを好ましく用いることができ、中空構造を構成する樹脂材料としては、上述の発泡材料や、立体構造に用いられるものと同様の樹脂材料を好ましく用いることができる。
【0131】
(保持部材)
本発明に係る太陽熱発電用反射装置においては、更に、上述の反射板を太陽を追尾可能な状態で保持する保持部材が設けられることが好ましい。保持部材の形態としては、特に制限はなく、反射板が所望の形状を保持できるように、複数個所を棒状の保持部材により、保持する形態が好ましい。保持部材は太陽を追尾可能な状態で反射板を保持する構成を有するが、太陽追尾に際しては、手動で駆動させてもよいし、別途駆動装置を設けて自動的に太陽を追尾する構成としてもよいが、本願発明の太陽熱発電用反射装置によれば、反射板が軽量化されているため、太陽追尾時の消費電力を抑制することが可能であるため、駆動装置を設けて自動追尾する構成が好ましい。
【実施例】
【0132】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0133】
以下、本発明について実施例及び比較例を用いて具体的に説明する。
【0134】
(銀錯体化合物含有塗布液A)の調製
攪拌器付き500mlのシュレンク(Schlenk)フラスコに、2−エチルヘキシルアンモニウム2−エチルカルバメート65.0g(215ミリモル)を150.0gのイソプロパノールに溶解させた後、酸化銀20.0g(86.2ミリモル)を添加して、常温で反応した。前記反応溶液は、最初は黒色懸濁液(Slurry)で反応が進行され、錯化合物が生成されるにつれて段々色が薄くなり、透明に変わることが観察されて、2時間反応した結果、無色透明な溶液が得られた。この溶液に、安定剤として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルアミン2.5gに、溶媒としてn−ブタノール85.0gとアミルアルコール50.0gを添加して攪拌した後、0.45ミクロンのメンブレンフィルタ(membrane filter)を使用してフィルタし、熱分析(TGA)した結果、銀含量4.87質量%の気化・脱離しうる配位子を有する銀錯体化合物含有塗布液Aを製造した。
【0135】
(銀錯体化合物含有塗布液B)の調製
攪拌器付き500mlのシュレンク(Schlenk)フラスコに、2−エチルヘキシルアンモニウム2−エチルカルバメート33.8g(111.7ミリモル)とイソブチルアンモニウムイソブチルカーボネート30.4g(146ミリモル)を、16.0gのイソプロパノールに溶解させた後、酸化銀20.0g(86.2ミリモル)を添加して、常温で反応した。前記反応溶液は、最初は黒色懸濁液(Slurry)で反応が進行され、錯化合物が生成されるにつれて段々色が薄くなり、透明に変わることが観察されて、2時間反応した結果、無色透明な溶液が得られた。この溶液に、安定剤として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルアミン2.5gを添加して攪拌した後、0.45ミクロンのメンブレンフィルタ(membrane filter)を使用してフィルタし、熱分析(TGA)した結果、銀含量20.56質量%の気化・脱離しうる配位子を有する銀錯体化合物含有塗布液Bを製造した。
【0136】
(銀錯体化合物含有塗布液C)の調製
攪拌器付き500mlのシュレンク(Schlenk)フラスコに、粘性のある液体の2−エチルヘキシルアンモニウム2−エチルヘキシルカーボネート34.6g(144ミリモル)を100mlのメタノールに溶解させた後、炭酸銀10g(36ミリモル)を添加した。前記反応溶液は、黄色懸濁液(Slurry)で反応が進行されるにつれて、だんだん透明な色に変わることが観察されて、6時間が経った後には、完全に黄色の透明な溶液に変わって、錯化合物が生成されたことが分かった。この溶液を0.45ミクロンのメンブランフィルタ(membrane filter)を使用してフィルタし、気化・脱離しうる配位子を有する銀錯体化合物含有塗布液Cを製造した。
【0137】
(銅ナノ粒子含有塗布液A)の調製
ガラス容器内にて、ギ酸銅(II)水和物の59gを蒸留水の520gおよびギ酸の29gで溶解して、銅イオンを含む水溶液を調製した。該水溶液のpHは2.6であった。
【0138】
該水溶液を激しく撹拌しながら、45℃で該水溶液に50質量%の次亜リン酸水溶液の92gを添加した。添加後、45℃で30分間そのまま撹拌を続け、懸濁液を得た。
【0139】
遠心分離によって懸濁液中の凝集物を沈殿させ、沈殿物を分離した。該沈殿物を蒸留水の400gに再分散させた後、再び遠心分離によって凝集物を沈殿させ、沈殿物を分離した。この操作を2回行った。精製後の沈殿物についてX線回折で同定を行ったところ、銅微粒子として、平均粒子径30nmの水素化銅ナノ粒子であることが確認された。
【0140】
以下、銅ナノ粒子の平均粒子径の算出は、電子顕微鏡で観察できる範囲の粒子の内、任意の100個の粒子の選び出し、それらの粒子径を粒子の個数で平均することにより求めた。
【0141】
水素化銅ナノ粒子の0.7gと金属銅粒子(三井金属鉱業社製、1400YP、平均粒子径:7μm)の6.3gをそれぞれ2−プロパノールの10gに懸濁させ、両者を混合した。混合した懸濁液中の2−プロパノールを減圧下に置き、2−プロパノールを除去し、水素化銅と金属銅粒子の複合体を形成した。この複合体を非晶質ポリエステル樹脂(東洋紡績社製、バイロン103)の0.9gをシクロヘキサノン(純正化学社製、特級)の1.1gに溶解させた樹脂バインダ溶液の2.0gに加えた。該混合物を乳鉢中で混ぜ合わせた後、室温で減圧下に置き、シクロヘキサノンを除去し、ペースト状の銅ナノ粒子含有塗布液Aを得た。
【0142】
(銅ナノ粒子含有塗布液B)の調製
精製回数を2回から5回に変更した以外は、銅ナノ粒子含有塗布液Aと同様にして精製されたペースト状の銅ナノ粒子(平均粒子径25nm)含有塗布液Bを得た。
【0143】
(銅ナノ粒子含有塗布液C)の調製
反応時間を45℃30分から50℃1時間に変更した以外は、銅ナノ粒子含有塗布液Aと同様にして精製されたペースト状の銅ナノ粒子(平均粒子径45nm)含有塗布液Cを得た。
【0144】
[比較例1]
(比較例1のフィルムミラーの作製)
傷防止層として、二軸延伸ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ25μm)を用いた。上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、ポリエステル樹脂(ポリエスター SP−181 日本合成化学製)、メラミン樹脂(スーパーベッカミンJ−820 DIC製)、TDI系イソシアネート(2,4−トリレンジイソシアネート)、HDMI系イソシアネート(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)を樹脂固形分比率で20:1:1:2に、固形分濃度10%となるようにトルエン中に混合した樹脂を、グラビアコート法によりコーティングして、厚さ0.1μmの接着層を形成し、接着層上に、銀反射層として、真空蒸着法により厚さ100nmの銀反射層を形成し、銀反射層上に、ポリエステル系樹脂とTDI(トリレンジイソシアネート)系イソシアネートを樹脂固形分比率で10:2に混合した樹脂中に、グリコールジメルカプトアセテートを樹脂に対して10質量%となるよう添加して、グラビアコート法によりコーティングして、厚さ3.0μmの上部隣接層を形成した。
【0145】
次に、上部隣接層の上からドライラミネーションプロセスにより、フィルム状支持体として透明アクリルフィルム(三菱レイヨン製アクリプレンHBS010P 厚さ75μm)を貼合した。更に重量平均分子量50万の付加反応型シリコーン系粘着剤100部に白金系触媒1部を加えて35質量%トルエン溶液としたものを、厚さ25μmのポリエステル製セパレートフィルムの片面に塗布し、130℃で5分間加熱して厚さ35μmのシリコーン系粘着層(Si系)を形成した後、上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの銀反射層と反対面側にラミネートし、比較例1のフィルムミラーを得た。
【0146】
(太陽光反射用ミラーの作製)
厚さ1.0mmで、たて4cm×よこ5cmのアルミ板と上記比較例1のフィルムミラーのポリエチレンテレフタレートフィルム面側とを、粘着層を介して貼り合せて、太陽光反射用ミラー(A−1)を得た。同様にして、下記比較例2及び実施例のフィルムミラーを用いて、太陽光反射用ミラーをそれぞれ作製した。
【0147】
[比較例2]
(比較例2のフィルムミラーの作製)
比較例1の銀反射層と接着層の間に、真空蒸着法により厚さ150nmの銅薄膜層を形成し、更にその後、真空蒸着法で引き続き銀反射層を形成する以外は、比較例1と同様の方法により、比較例2のフィルムミラーを得た。
【0148】
また、太陽光反射用ミラー(A−1)と同様の方法により、比較例2のフィルムミラーを用いて、太陽光反射用ミラー(B−1)を作製した。
【0149】
[実施例1]
(実施例1のフィルムミラーの作製)
比較例2の銅蒸着層の替わりに、銀反射層と接着層の間に銅ナノ粒子含有塗布液Aを塗布し、120℃にて10分焼成し、乾燥後膜厚150nmの銅薄膜層(犠牲防食層)を得た以外は、比較例2と同様の方法により、実施例1のフィルムミラーを得た。
【0150】
また、太陽光反射用ミラー(A−1)と同様の方法により、実施例1のフィルムミラーを用いて、太陽光反射用ミラー(C−1)を作製した。
【0151】
[実施例2]
(実施例2のフィルムミラーの作製)
実施例1の銅ナノ粒子含有塗布液Aを用いて銅薄膜層を乾燥後膜厚300nmとし、焼成条件を120℃−15分とした以外は、実施例1と同様の方法により、実施例2のフィルムミラーを得た。
【0152】
また、太陽光反射用ミラー(A−1)と同様の方法により、実施例2のフィルムミラーを用いて、太陽光反射用ミラー(D−1)を作製した。
【0153】
[実施例3]
(実施例3のフィルムミラーの作製)
実施例2の銅ナノ粒子含有塗布液Aの替わりに銅ナノ粒子含有塗布液Bを用いる以外は、実施例2と同様の方法により、実施例3のフィルムミラーを得た。
【0154】
また、太陽光反射用ミラー(A−1)と同様の方法により、実施例3のフィルムミラーを用いて、太陽光反射用ミラー(E−1)を作製した。
【0155】
[実施例4]
(実施例4のフィルムミラーの作製)
実施例2の銅ナノ粒子含有塗布液Aの替わりに銅ナノ粒子含有塗布液Cを用いる以外は、実施例2と同様の方法により、実施例4のフィルムミラーを得た。
【0156】
また、太陽光反射用ミラー(A−1)と同様の方法により、実施例4のフィルムミラーを用いて、太陽光反射用ミラー(F−1)を作製した。
【0157】
[実施例5]
(実施例5のフィルムミラーの作製)
実施例4の銀反射層の替わりに、銅薄膜層(犠牲防食層)上に銀錯体化合物含有塗布液Aを加熱乾燥後の銀の乾燥後膜厚が100nmとなるように塗布した。ドライオーブンにて150℃、2分間加熱乾燥し、銀反射層を形成して実施例5のフィルムミラーを得た。
【0158】
また、太陽光反射用ミラー(A−1)と同様の方法により、実施例5のフィルムミラーを用いて、太陽光反射用ミラー(G−1)を作製した。
【0159】
[実施例6]
(実施例6のフィルムミラーの作製)
実施例5の接着層上に、銅ナノ粒子含有塗布液Cと銀錯体化合物含有塗布液Aを、それぞれ乾燥後膜厚が300nm、100nmとなるように、押し出しコーターによって同時重層塗布した以外は、実施例5と同様の方法により、実施例6のフィルムミラーを得た。
【0160】
また、太陽光反射用ミラー(A−1)と同様の方法により、実施例6のフィルムミラーを用いて、太陽光反射用ミラー(H−1)を作製した。
【0161】
[実施例7]
(実施例7のフィルムミラーの作製)
フィルム状支持体として、透明アクリルフィルム(三菱レイヨン製アクリプレンHBS010P 厚さ75μm)を用いた。上記アクリルフィルムの片面に、メラミン樹脂(スーパーベッカミンJ−820 DIC製)、TDI系イソシアネート(2,4−トリレンジイソシアネート)、HDMI系イソシアネート(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)を樹脂固形分比率で21:1:2に、固形分濃度10%となるようにトルエン中に混合した樹脂を、グラビアコート法によりコーティングして、厚さ0.1μmの接着層を形成し、次に銀錯体化合物含有塗布液Aを加熱乾燥後の銀の乾燥後膜厚が100nmとなるように塗布した。ドライオーブンにて150℃、2分間加熱乾燥し、銀反射層を形成した。更に銀反射層に、銅ナノ粒子含有塗布液Aを塗布し、120℃にて10分焼成し、乾燥後膜厚300nmの銅薄膜層を得た。
【0162】
次に、重量平均分子量50万の付加反応型シリコーン系粘着剤100部に白金系触媒1部を加えて35質量%トルエン溶液としたものを、厚さ25μmのポリエステル製セパレートフィルムの片面に塗布し、130℃で5分間加熱して厚さ35μmのシリコーン系粘着層(Si系)を形成した後、上記銅薄膜層とラミネートし、実施例7のフィルムミラーを得た。
【0163】
また、太陽光反射用ミラー(A−1)と同様の方法により、実施例7のフィルムミラーを用いて、太陽光反射用ミラー(I−1)を作製した。
【0164】
[実施例8]
(薄膜ガラスフィルムAの製造方法)
液晶表示装置搭載用の薄板ガラスを成形するための装置を用い、無アルカリガラスを熱熔融させたのち、オーバーフローダウンドロー法により、幅1,200mm、厚さ100μm、長さ300mの薄膜ガラスフィルムAをフィルム状支持体として作製した。
【0165】
(実施例8のフィルムミラーの作製)
実施例6のアクリルフィルムの替わりに上記薄膜ガラスフィルムAを用いる以外は、実施例6と同様の方法により、実施例8のフィルムミラーを得た。
【0166】
また、太陽光反射用ミラー(A−1)と同様の方法により、実施例8のフィルムミラーを用いて、太陽光反射用ミラー(J−1)を作製した。
【0167】
[実施例9]
(実施例9のフィルムミラーの作製)
実施例8の銀錯体化合物含有塗布液Aの替わりに銀錯体化合物含有塗布液Bを用いる以外は、実施例8と同様の方法により、実施例9のフィルムミラーを得た。
【0168】
また、太陽光反射用ミラー(A−1)と同様の方法により、実施例8のフィルムミラーを用いて、太陽光反射用ミラー(K−1)を作製した。
【0169】
[実施例10]
(実施例10のフィルムミラーの作製)
実施例7の銀錯体化合物含有塗布液Aの替わりに銀錯体化合物含有塗布液Cを用いる以外は、実施例8と同様の方法により、実施例10のフィルムミラーを得た。
【0170】
また、太陽光反射用ミラー(A−1)と同様の方法により、実施例10のフィルムミラーを用いて、太陽光反射用ミラー(L−1)を作製した。
【0171】
[実施例11]
(実施例11のフィルムミラーの作製)
実施例10の薄膜ガラスフィルムの表面に、防汚コート剤(スケッチ製スーパーグラスバリア)を塗布し、120℃で3分乾燥して汚れの付着を防止する層(防汚層)を形成した以外は、実施例10と同様の方法により、実施例11のフィルムミラーを得た。
【0172】
また、太陽光反射用ミラー(A−1)と同様の方法により、実施例11のフィルムミラーを用いて、太陽光反射用ミラー(M−1)を作製した。
【0173】
また、上記太陽光反射用ミラー(C−1)〜(M−1)を作製する際に、厚さ1.0mmで、たて4cm×よこ5cmのアルミ板に替えて、各フィルムミラーの粘着層と自己支持性の基材を対面して貼り付けて太陽光反射用ミラーを作製した((C−2)〜(M−2))。自己支持性の基材の厚さは2mmのものを使用した。両面材質とは、中空構造を有する層をサンドイッチする材料を言う。金属平板の厚さは片面0.12mmのアルミニウム、中間層の樹脂層は、厚さ1.76mmの発泡ポリエチレン樹脂を充填したものを使用した。重さ及び駆動電力消費率を測定した結果、従来の太陽光反射用ミラーに対して大幅に軽量化でき、その結果、搬送効率がアップし、作業の短縮化が図れ、コスト低減にも寄与した。
【0174】
[評価]
上記で得た太陽光反射用ミラーについて、下記の方法により正反射率及び耐候性、防汚性、および平滑性の尺度としてテクスチャパターンの測定をそれぞれ行った。
【0175】
<正反射率>
島津製作所社製の分光光度計「UV265」に、積分球反射付属装置を取り付けたものを改造し、反射面の法線に対して、入射光の入射角を5°となるように調整し、反射角5°の正反射率を測定した。評価は、350nmから700nmまでの平均反射率として測定した。
【0176】
<耐候性>
温度85℃、湿度85%RHの条件で30日間放置後のフィルムミラーの正反射率を、上記光線反射率測定と同様の方法により測定し、強制劣化前のフィルムミラーの正反射率と強制劣化後のフィルムミラーの正反射率から、正反射率の低下率を算出し、耐候性を評価した。以下に耐候性試験の評価基準を記す。
【0177】
5:正反射率の低下率が5%未満
4:正反射率の低下率が5%以上10%未満
3:正反射率の低下率が10%以上15%未満
2:正反射率の低下率が15%以上20%未満
1:正反射率の低下率が20%以上
<防汚性>
太陽光反射用ミラーを幅10cm×長さ10cmの試験片に切り抜き、アルミ製の枠に固定し、45°に傾けて屋外に暴露した(平成22年1〜6月、場所:東京都八王子市)。屋外暴露6ヵ月後の太陽光反射用ミラーの表面の汚れの程度を目視観察し3段階(○:埃の付着無し、△:埃の付着少々、×:埃の付着多い)で評価した。
【0178】
<テクスチャパターン>
上記太陽光反射用ミラー(A−1)〜(M−1)を用いて、銀反射層に見られるテクスチャパターンを下記の判断基準に基づいて、目視評価を行った。
【0179】
3:テクスチャパターンが見られず、銀反射層は平滑である。
【0180】
2:テクスチャパターンが若干みられるが、実用に耐えうるレベルである。
【0181】
1:著しいテクスチャパターンが見られ、実用に耐えないレベル。
【0182】
<質量>
得られた太陽光反射用ミラーM−1、M−2の1.0mサイズの質量を測定した。
【0183】
<駆動電力消費率>
太陽光反射用ミラーを、複数個所を棒状の保持部材により、保持する形態により、太陽追尾型の太陽熱発電用反射装置に組み込んだ際、太陽光反射用ミラーM−1を組み込んだ1基の追尾にかかる駆動電力を100とした時の比率を算出した。
【0184】
得られた各種フィルムミラーの内容を下記表1に、特性を評価した結果を下記表2、3に示す。
【0185】
なお表1では、フィルム状支持体を支持体、銀錯体化合物含有塗布液A〜Cを銀錯体塗布液A〜C、銅ナノ粒子含有塗布液A〜Cを銅ナノ粒子塗布液A〜C、および汚れの付着を防止する層を防汚層とそれぞれ略記した。
【0186】
【表1】

【0187】
【表2】

【0188】
【表3】

【0189】
表2、3に示した評価結果から明らかなように、本発明に係る実施例の各種特性は、比較例に対して優れていることが分かる。すなわち、本発明の上記手段により、銀反射層の劣化による正反射率の低下を防止するとともに、軽量で柔軟性があり、製造コストを抑え大面積化・大量生産することのできる耐光性、耐候性及び防汚性に優れ、太陽光に対して良好な正反射率を有するフィルムミラー、その製造方法、及びそれを用いた太陽光反射用ミラーを提供することができることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状支持体の片側に銀反射層と、犠牲防食層とを有するフィルムミラーであって、該犠牲防食層が銅微粒子を含有することを特徴とするフィルムミラー。
【請求項2】
前記銀反射層が、気化・脱離しうる配位子を有する銀錯体化合物を含有する塗布膜を加熱焼成することにより形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のフィルムミラー。
【請求項3】
前記気化・脱離しうる配位子を有する銀錯体化合物が、アンモニウムカルバメート系化合物又はアンモニウムカーボネート系化合物を銀化合物と反応させることにより得られた気化・脱離しうる配位子を有する銀錯体化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルムミラー。
【請求項4】
前記フィルム状支持体が、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、または、ポリエステル系樹脂のいずれかよりなる樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルムミラー。
【請求項5】
前記フィルム状支持体が、ダウンドロー法によって成形されたガラスロールより得られるガラスフィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルムミラー。
【請求項6】
前記フィルム状支持体が、前記銀反射層に対し光の入射面側に位置し、当該フィルム状支持体の、前記銀反射層とは反対側の最表面に汚れの付着を防止する層を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のフィルムミラー。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のフィルムミラーを製造するフィルムミラーの製造方法であって、塗布することにより前記銀反射層の塗布膜が設けられたことを特徴とするフィルムミラーの製造方法。
【請求項8】
前記銀反射層が、気化・脱離しうる配位子を有する銀錯体化合物を含有する塗布膜を形成した後に、該塗布膜を80〜150℃の範囲内の温度において加熱焼成することにより銀反射層を形成することを特徴とする請求項7に記載のフィルムミラーの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のフィルムミラーの製造方法において、フィルム状支持体上に、気化・脱離しうる配位子を有する銀錯体化合物を含有する塗布膜と、銅微粒子を含有する塗布液を用いて形成された塗布膜を同時に形成した後に、当該塗布膜を80〜150℃の範囲内の温度において加熱焼成することにより銀反射層を形成することを特徴とするフィルムミラーの製造方法。
【請求項10】
自己支持性の基材に、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のフィルムミラーが具備されてなることを特徴とする太陽光反射用ミラー。
【請求項11】
前記自己支持性の基材が、下記のA及びBのいずれかの構成を有することを特徴とする請求項10に記載の太陽光反射用ミラー。
A:一対の金属平板と、前記金属平板の間に設けられた中間層とを有し、当該中間層は中空構造を有する層又は樹脂材料から構成される層である。
B:中空構造を有する樹脂材料層からなる。

【公開番号】特開2012−137579(P2012−137579A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289202(P2010−289202)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】