説明

フィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物

【課題】塗装欠陥が無く、表面の防汚性に優れ、高い耐擦傷性の保護フィルムを形成することが出来る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供する。
【解決手段】活性エネルギー線硬化型樹脂組成物と反応性フッ素防汚剤とを含有するフィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、前記反応性フッ素防汚剤の濁度が20%未満であり、且つ、1つの活性水素を有するパーフルオロポリエーテル、および、活性水素と炭素−炭素二重結合とを有するモノマーを含有する反応性フッ素防汚剤であることを特徴とするフィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、前記フィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物からなる光学シート、フィルム上に前記フィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物なる保護層が形成され、前記フィルムの裏面に粘着面が設けられていることを特徴とする保護粘着フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム、シート等の基材の保護層として用いることに好適な、高硬度の硬化被膜を形成するフィルム用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。さらには、該組成物の硬化被膜からなる保護層を有するフィルム及び該組成物の硬化物からなる保護粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
物品は、その物品同士の接触、他の物品と接触、あるいは置かれる環境の影響を受け、傷付いたり、変形したりする外的な変化やその物品を構成する材料が劣化する内的な変化を受ける。このような変化を防ぐために、物品の表面に保護層を設けたり、物品そのものを強化したりすることがなされている。
【0003】
プラスチックは、加工性が良い、軽量、安価等の理由で、各種分野で使用されている。しかし、加工性が良い反面、柔らかく、表面に傷が付き易いなどの欠点がある。この欠点を改良するために、ハードコート材をコーティングし、表面に保護層を設けることが一般的である。
【0004】
このハードコート材として、(1)速硬化性であること、(2)エネルギーコストが低いこと、(3)低温で硬化が可能であること等の利点を有する、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が多く採用されている。とりわけ、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、紫外線などの活性エネルギー線の照射により、直ちに硬化し硬い被膜を形成するため加工処理スピードが速く、硬さ、耐擦傷性、耐汚染性等に優れ、連続加工処理ができるため、フィルム保護層用ハードコート材としては主流になっている。
【0005】
このハードコート材を保護層にしたフィルムを表面に設けた液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネルディスプレイ等の表示体が、近年、急速に普及している。ハードコート材は、鉛筆硬さやスチールウールなど基本性能に加え、貼り付け時のハンドリングや歩留まり向上のため、低カールも要求される。さらに最近では、タッチパネルや携帯電話など、人の指紋が付き易い表示画面の最表面に使用する塗材に防汚性の要求が高まっている。
【0006】
前記の問題点を解決するため、例えば、反応性フッ素防汚剤を添加することが提案されている。指紋拭き取り性等の防汚性付与には、撥水・撥油性の高いフッ素防汚剤が有効である(例えば、特許文献1参照。)。しかし、樹脂との相溶性不良を生じ、塗材の安定性不良や塗膜の欠陥などの問題が発生する。更に、反応性フッ素防汚剤を前記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に添加して用いると、防汚性は向上するものの、塗膜欠陥(例えば、ハジキ・ブツ)による顧客製品の不良率が増加する問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3963169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、塗装欠陥が無く、表面の防汚性に優れ、高い耐擦傷性の保護フィルムを形成することが出来る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究した結果、前記反応性フッ素防汚剤の濁度を一定値未満に低減させることで、塗膜欠陥の無いフィルム保護層を形成することを見出して、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物と反応性フッ素防汚剤とを含有するフィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、前記反応性フッ素防汚剤の濁度が20%未満であり、且つ、1つの活性水素を有するパーフルオロポリエーテル、および、活性水素と炭素−炭素二重結合とを有するモノマーを含有する反応性フッ素防汚剤であることを特徴とするフィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、前記フィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物からなる光学シート、フィルム上に前記フィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物なる保護層が形成され、前記フィルムの裏面に粘着面が設けられていることを特徴とする保護粘着フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、紫外線などの活性エネルギー線の照射により硬化した際、塗膜欠陥がなく、表面の指紋拭き取り性に優れ、かつ硬化収縮が小さく、高い硬度、高い耐擦傷性を有する硬化被膜を得ることができ、かつフィルム用保護層として有用である。また、硬化収縮が小さいことから、大型のフィルムでもカールの発生が抑制でき、液晶ディスプレイ等の大画面ディスプレイの光学フィルム用保護フィルムとしても好適である。
【0012】
また、液晶パネルやタッチパネル搭載型液晶パネル、ELディスプレイ等の表示装置の表面に設けられるスクリーンパネル保護用の保護粘着フィルムとしても好適である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[ハードコート層]
本発明に使用する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、ポリイソシアネート(a1)と1分子中に1つの水酸基及び2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート(a2)との付加反応物であるウレタンアクリレート(A)と、側鎖に反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系重合体(b1)に前記反応性官能基と反応が可能な官能基を有するα,β−不飽和化合物(b2)を反応させた(メタ)アクリロイル基を有する重合体(B)とを含有したものである。
【0014】
本発明に用いるポリイソシアネート(a1)としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート化合物;ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添メチレンビスフェニレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環式炭化水素に結合したイソシアネート基を2個有する化合物(以下、脂環式ジイソシアネートと略す。);トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族炭化水素に結合したイソシアネート基を2個有する化合物(以下、脂肪族ジイソシアネートと略す。)などが挙げられる。これらのポリイソシアネートは、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0015】
また、これらのポリイソシアネート(a1)のうち、脂肪族ジイソシアネート又は脂環式ジイソシアネートが好ましく、中でも、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添メチレンビスフェニレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。とりわけ、ノルボルナンジイソシアネートが最も好ましい。
【0016】
本発明に用いる1分子中に1つの水酸基及び2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート(a2)としては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の多価水酸基含有化合物のポリアクリレート類が挙げられ、これらのポリアクリレート類とε―カプロラクトンとの付加物、これらのポリアクリレート類とアルキレンオキサイドとの付加物、エポキシアクリレート類などが挙げられる。これらのアクリレート(a2)は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル基」及び「(メタ)アクリル酸」についても同様である。
【0017】
また、これらのアクリレート(a2)のうち、1分子中に1つの水酸基及び3〜5つの(メタ)アクリロイル基を有するアクリレートが好ましい。このようなアクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられ、これらは高硬度の硬化被膜が得られるので特に好ましい。
【0018】
本発明に用いるウレタンアクリレート(A)は、前記ポリイソシアネート(a1)と前記アクリレート(a2)の2成分を付加反応させることにより得られる。前記アクリレート(a2)のポリイソシアネート(a1)中のイソシアネート1当量に対する比率は、水酸基当量として、通常、0.1〜50が好ましく、0.1〜10がより好ましく、0.9〜1.2がさらに好ましい。また、前記ポリイソシアネート(a1)と前記アクリレート(a2)との反応温度は、30〜150℃が好ましく、50〜100℃がより好ましい。
なお、反応の終点は、例えば、イソシアネート基を示す2250cm−1の赤外線吸収スペクトルの消失や、JIS K 7301−1995に記載の方法でイソシアネート基含有率を求めることで確認することができる。
【0019】
さらに、上記の付加反応では反応時間を短くする目的で、触媒を用いることができる。触媒としては、例えば、塩基性触媒(ピリジン、ピロール、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、アンモニア等のアミン類、トリブチルフォスフィン、トリフェニルフォシフィン等のフォスフィン類)や酸性触媒(ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、トリブトキシアルミニウム、テトラブトキシトリチタニウム、テトラブトキシジルコニウム等の金属アルコキシド類、塩化アルミニウム等のルイス酸類、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート等の錫化合物)が挙げられる。これらの中でも、酸性触媒が好ましく、さらに錫化合物が最も好ましい。触媒は、ポリイソシアネート100質量部に対し、通常、0.1〜1質量部加える。必要に応じて、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等の溶剤、あるいは、イソシアネートと反応する部位を持たないラジカル重合性単量体、例えば、後述するラジカル重合性単量体類(C)で水酸基又はアミノ基を有しないものを、溶媒として用いても良い。これらの溶剤、単量体は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0020】
前記ウレタンアクリレート(A)の分子量は、500〜1,500の範囲が好ましい。
分子量がこの範囲であれば、十分に高い硬度の硬化被膜が得られ、硬化収縮が小さくなるので、この硬化被膜を有するフィルムのカールも小さくすることができる。
【0021】
樹脂組成物中の樹脂成分の合計100質量部中の前記ウレタンアクリレート(A)の配合量は、5〜90質量部が好ましく、10〜70質量部がより好ましく、10〜60質量部がさらに好ましい。ウレタンアクリレート(A)の配合量がこの範囲であれば、十分に高い硬度の硬化被膜が得られ、かつ塗膜欠陥がなく、表面の防汚性に優れ、かつ硬化収縮が小さくなるので、この硬化被膜を有するフィルムのカールも小さくすることができる。
【0022】
本発明に用いる側鎖に反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系重合体(b1)の反応性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等が好ましい。また、これらの反応性官能基と反応が可能なα,β−不飽和化合物(b2)が有する官能基としては、イソシアネート基、カルボキシル基、酸ハライド基、ヒドロキシアルキル基、水酸基、エポキシ基等が好ましい。なお、側鎖に反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系重合体(b1)に前記反応性官能基と反応が可能な官能基を有するα,β−不飽和化合物(b2)を反応させた(メタ)アクリロイル基を有する重合体(B)の製造方法は、特に限定はなく、種々の方法で製造することができるが、例えば、下記の製造方法(1)〜(3)が挙げられる。
【0023】
製造方法(1)
前記(メタ)アクリレート系重合体(b1)として、側鎖に反応性官能基として水酸基を有する(メタ)アクリレート系重合体又は共重合体を用いて、その水酸基の一部あるいは全部に、α,β−不飽和化合物(b2)として、(メタ)アクリロイルエチルイソシアネート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロライド等を反応させ、(メタ)アクリロイル基を導入する方法。
【0024】
製造方法(2)
前記(メタ)アクリレート系重合体(b1)として、側鎖に反応性官能基としてカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート系重合体又は共重合体を用いて、そのカルボキシル基の一部あるいは全部に、α,β−不飽和化合物(b2)として、水酸基及び(メタ)アクリロイル基を含有するアクリレート、又はエポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有するアクリレートを反応させ、(メタ)アクリロイル基を導入する方法。
【0025】
製造方法(3)
前記(メタ)アクリレート系重合体(b1)として、側鎖に反応性官能基としてエポキシ基を有する(メタ)アクリレート系重合体又は共重合体を用いて、そのエポキシ基の一部あるいは全部に、α,β−不飽和化合物(b2)として、(メタ)アクリル酸又はカルボキシル基とアクリロイル基とを有するアクリレートを反応させ、(メタ)アクリロイル基を導入する方法。
【0026】
上記の製造方法(3)を例に、重合体(B)の製造方法を、より具体的に説明する。製造方法(3)では、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート系重合体又は共重合体に、α,β−不飽和カルボン酸を反応させることにより、重合体(B)を容易に得ることができる。ここで、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート系重合体は、原料としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル化学工業株式会社製「CYCLOMER M100」、「CYCLOMER A200」)、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する(メタ)アクリレートを用いて、これらを単独重合することにより得られる。
【0027】
また、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート系共重合体は、前記エポキシ基を有する(メタ)アクリレートに加え、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル等のカルボキシル基を有しないα,β−不飽和単量体を原料として、2種以上の単量体を共重合することにより得られる。なお、前記カルボキシル基を有しないα,β−不飽和単量体の代わりにカルボキシル基を有するα,β−不飽和単量体を用いた場合は、グリシジル(メタ)アクリレートとの共重合反応の際、架橋反応を生じ、高粘度化やゲル化を起こすため好ましくない。
【0028】
前記エポキシ基を有する(メタ)アクリレート系重合体又は共重合体と反応するα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシル基とアクリロイル基とを有する化合物(例えば、大阪有機化学株式会社製「ビスコート2100」)等が挙げられる。
【0029】
上記の製造方法で得られる重合体(B)の重量平均分子量は、5,000〜80,000が好ましく、5,000〜50,000がより好ましく、8,000〜35,000がさらに好ましい。重量平均分子量が、5,000以上で硬化収縮を小さくする効果が大きく、80,000以下で硬度が十分に高いものとなる。
【0030】
また、重合体(B)の(メタ)アクリロイル基当量は、100〜300g/eqが好ましく、さらに好ましくは、200〜300g/eqである。重合体(B)の(メタ)アクリロイル基当量がこの範囲であれば、硬化収縮を小さくでき、硬度も十分に高くすることができる。
【0031】
上記の製造方法(1)〜(3)で重合体(B)を製造する際には、上記の重合体(B)の重量平均分子量や(メタ)アクリロイル基当量を満たすように、使用する単量体や重合体の種類、これらの使用量等を適宜選択すると良い。
【0032】
樹脂組成物中の樹脂成分の合計100質量部中の前記重合体(B)の配合量は、はじきが発生しやすい点から、20質量部以下配合することが好ましく、10質量部以下配合することがさらに好ましい。重合体(B)の配合量がこの範囲であれば、十分に高い硬度の硬化被膜が得られ、かつ塗膜欠陥がなく、表面の防汚性に優れ、かつ硬化収縮が小さくなるので、この硬化被膜を有するフィルムのカールも小さくすることができる。
【0033】
本発明に使用する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、前記ウレタンアクリレート(A)及び重合体(B)に加え、前記ウレタンアクリレート(A)及び重合体(B)以外のラジカル重合性単量体類(C)を加えても良い。ラジカル重合性単量体類(C)としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0034】
N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、ビニルピリジン、アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチレンジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メチルトリエチレンジグリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のモノアクリレート類;
【0035】
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリエチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレンオキシド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリエチレンオキシド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリエピクロロヒドリン変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、1,3,5−トリアクロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、トリス(アクリロイロオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラエチレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジエチレンオキシド変性ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(例えば、日本化薬株式会社製「カヤラッドD−310」)、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(例えば、日本化薬株式会社製「カヤラッドD−320」)、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(例えば、日本化薬株式会社製「カヤラッドDPCA−20」)、ジペンタエリスリトールペンタメタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレンオキサイド変性ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサキス(メタクリロイルオキシエチル)シクロトリフォスファゼン(例えば、共栄社化学株式会社製「PPZ」)等の多官能アクリレート類などがある。
【0036】
また、前記ラジカル重合性単量体類(C)の中でも、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートは、硬度を高める効果があるため好ましい。このような多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0037】
さらに、前記ラジカル重合性単量体類(C)として、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等の酸基を有する単量体、アミノ基を有する単量体、アルコキシシリル基、アルコキシチタニル基を有する単量体を用いると、基材との密着性を高めることができるので好ましい。一方、フルオロカーボン鎖、ジメチルシロキサン鎖、炭素原子数12以上のハイドロカーボン鎖を有する単量体は、保護層の表面滑り性、耐汚染性、耐指紋付着性等の表面性を高めることができるので好ましい。
【0038】
前記ラジカル重合性単量体類(C)を樹脂組成物中に配合する際の配合量は、前記ウレタンアクリレート(A)と重合体(B)との合計量100質量部に対して、10〜300質量部が好ましい。また、硬化収縮を小さくし、かつ硬化被膜の表面硬度を高めるには、20〜200質量部がより好ましく、20〜100質量部がさらに好ましい。
【0039】
また、本発明に使用する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、前記ウレタンアクリレート(A)、重合体(B)に加え、前記ウレタンアクリレート(A)以外のウレタンアクリレート(D)を加えても良い。ウレタンアクリレート(D)としては、ポリオールと前記ポリイソシアネート(a1)とを付加反応させた後、さらに前記の1分子中に1つの水酸基及び2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート(a2)を付加反応させたものが挙げられる。このウレタンアクリレート(D)を樹脂組成物中に配合する際の配合量は、前記ウレタンアクリレート(A)と重合体(B)との合計量100質量部に対して、5〜100質量部が好ましく、10〜50質量部がより好ましい。
【0040】
また、前記ウレタンアクリレート(A)と前記重合体(B)に加え、ポリエステルアクリレート(E)を加えても良く、樹脂成分組成が以下の組成・範囲であれば、十分に高い硬度の硬化被膜が得られ、かつ塗膜欠陥がなく、表面の防汚性に優れ、かつ硬化収縮が小さくなるので、この硬化被膜を有するフィルムのカールも小さくすることができる。
例えば、樹脂組成物中の樹脂成分の合計100質量物中の前記ウレタンアクリレート樹脂(A)とポリエステルアクリレート樹脂(E)の配合比率が、質量基準で(A):(E)=10:90〜90:10の範囲が好ましく、(A):(E)=20:80〜80:20の範囲がより好ましく、(A):(E)=25:75〜75:25の範囲だとさらに好ましい。
【0041】
また、前記ウレタンアクリレート樹脂(A)とポリエステルアクリレート樹脂(E)に加え、前記重合体(B)を加えても良い。この重合体(B)を樹脂組成物中に配合する際の配合量は、前記ウレタンアクリレート樹脂(A)とポリエステルアクリレート樹脂(E)との合計量100質量部に対して、25質量部以下配合することが好ましく、12質量部以下がさらに好ましい。
【0042】
[添加剤]
本発明で用いる反応性フッ素防汚剤は、濁度が20%未満であることが必須で、且つ、1つの活性水素を有するパーフルオロポリエーテル、および、活性水素と炭素−炭素二重結合とを有するモノマーを含有する反応性フッ素防汚剤が、指紋拭き取り性等の防汚性に優れるため、好適に用いることができる。
【0043】
前記反応性フッ素防汚剤として、例えば、活性水素を有するパーフルオロポリエーテル(I−1)と活性水素と炭素−炭素二重結合とを有するモノマー(I−2)とを必須成分とする活性水素含有化合物類(I)と、ジイソシアネートを3量体化させたトリイソシアネート化合物(II)とを反応させて得られる炭素−炭素二重結合含有組成物が挙げられる。
【0044】
前記炭素−炭素二重結合含有組成物は、前記トリイソシアネート化合物(II)中のイソシアネート基と前記パーフルオロポリエーテル(I−1)中の活性水素基、及び、前記トリイソシアネート化合物(II)中のイソシアネート基と前記炭素−炭素二重結合とを有するモノマー(I−2)中の活性水素基とが反応したものが好ましい。
【0045】
パーフルオロポリエーテル(I−1)としては、−OCFCFCF−、−OCFCFCF−、−OCFCF−、−OCF−等の繰り返し単位を有し、その繰り返し単位の合計が1〜200の化合物であり、片方の末端、もしくは両末端に、−CHOH等の水酸基含有基を含有し、片方の末端のみが水酸基含有基である場合には他方の末端がフッ素原子である化合物を使用できる。
【0046】
活性水素と炭素−炭素二重結合とを有するモノマー(I−2)としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、HO(CHCHO)i−COC(R)C=CH(R:H、CH、i=2〜10)、CHCH(OH)CHOCOC(R)C=CH(R:H、CH;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート)、CHCHCH(OH)CHOCOC(R)C=CH(R:H、CH;2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート)、COCHCH(OH)CHOCOC(R)C=CH(R:H、CH;2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート)、アリルアルコール、HO(CH)kCH=CH(k=2〜20)、(CHSiCH(OH)CH=CH2が挙げられ、中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の活性水素基として、水酸基を含有する化合物が好ましい。
【0047】
ジイソシアネートを3量体化させたトリイソシアネート化合物(II)としては、下記のジイソシアネートを3量体化して得られたトリイソシアネートが挙げられる。該ジイソシアネートとしては、イソシアネート基が脂肪族的に結合したジイソシアネート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート;イソシアネート基が芳香族的に結合したジイソシアネート、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートが挙げられる。これらの中でも、反応物の相溶性の面から、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のイソシアネート基が脂肪族に結合したジイソシアネート類が好ましい。
【0048】
また、前記トリイソシアネート(II)中のイソシアネート基に対して、活性水素を有するパーフルオロポリエーテル(I−1)中の活性水素基との反応時の当量比〔((I−1)中の活性水素基/((II))中のイソシアネート基)〕は、0.01〜1.2であることが好ましい。
【0049】
また、前記トリイソシアネート(II)中のイソシアネート基に対して、活性水素と炭素−炭素二重結合とを有するモノマー(I−2)中の活性水素基中の活性水素基との反応時の当量比〔((I-2)中の活性水素基/((II)中のイソシアネート基)〕は、1.2〜2.0であることが好ましい。
【0050】
前記活性水素含有化合物類と前記トリイソシアネート化合物とを反応する際の当量比〔((I)中の全活性水素基)/((II)中のイソシアネート基)〕は、1.0以上であることが好ましく、特に、1.0となるようにすることが好ましい。
【0051】
従って、1つの活性水素を有するパーフルオロポリエーテル、および、活性水素と炭素−炭素二重結合とを有するモノマーを含有する反応性フッ素防汚剤としては、トリイソシアネート(II)1モルに対して、活性水素を有するパーフルオロポリエーテル(I−1)を1モル、水酸基を含有する炭素−炭素二重結合とを有するモノマー2モルが反応したものが特に好ましい。
【0052】
フッ素防汚剤は一般的に、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物や前記希釈溶剤との相溶性が悪く、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に添加して用いると防汚性は向上するものの、塗膜欠陥(例えば、ハジキ・ブツ)が発生するといった問題がある。なかでも、前記反応性フッ素防汚剤の場合、塗膜欠陥が発生しやすい。特に、前記反応性フッ素防汚剤そのものの濁度が高いものは、少ない添加量であっても、塗膜欠陥が顕著に発生しやすくなる。
【0053】
前記反応性フッ素防汚剤は、特に、濁度30%以上で、後述する塗膜欠陥〔微細塗膜欠陥及び塗膜欠陥(例えば、ハジキ・ブツ)〕を発生する。また、20〜30%では塗膜欠陥は発生しないが微細塗膜欠陥が発生する。そこで、本発明に用いる前記反応性フッ素防汚剤は、濁度20%未満のものが、塗膜欠陥の無いフィルム保護層を形成できるため、好適に用いることができる。
【0054】
前記濁度が高くなる要因として、例えば、フッ素濃度の高い不純物等の生成(不純物の一例として、トリイソシアネート(II)1モルに、2つ以上の活性水素を有するパーフルオロポリエーテル(I−1)が結合した不均一な組成の組成物)が挙げられる。前記不純物等を制御することが、濁度を低減する方策の一つとして挙げられる。
【0055】
前記反応性フッ素防汚剤の添加量は、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物100質量部に対して、0.05質量部以上添加することが防汚性が顕著となることから好ましく、4質量部以下にすることが塗膜欠陥(例えば、ハジキ・ブツ)を生じさせにくい点から好ましい。更に0.1〜2質量部であることが、特に好ましい。
【0056】
本発明に使用する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、活性エネルギー線を照射すると硬化する樹脂組成物をいう。また、活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線をいう。紫外線を用いる場合には、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中に光重合開始剤を添加する。また、必要であればさらに光増感剤を添加する。一方、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線を用いる場合には、光重合開始剤や光増感剤を用いなくても速やかに硬化するので、特にこれらを添加する必要はない。
【0057】
紫外線で硬化する場合、有効な光重合開始剤としては、分子内開裂型光重合開始剤と水素引き抜き型光重合開始剤に大別できる。分子内開裂型光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ−(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン系化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル等の化合物が挙げられる。
【0058】
一方、水素引き抜き型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;ミヒラ−ケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等の化合物が挙げられる。
【0059】
また、本発明に使用する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に好適に用いられる光増感剤としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン類、o−トリルチオ尿素等の尿素類、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルホネート等の硫黄化合物等が挙げられる。
【0060】
これらの光重合開始剤及び光増感剤の使用量は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対し、各々0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0061】
また、本発明に使用する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、必要に応じて各種添加剤を配合してもよく、所望により溶剤で希釈しても良い。添加剤としては、例えば、重合禁止剤、酸化防止剤、レベリング剤、消泡剤、塗面改良剤(ぬれ性、スリップ性改良剤等)、可塑剤、着色剤等が挙げられる。
【0062】
[溶剤]
希釈に用いる溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;酢酸エチル、エチルソルブアセテート等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0063】
[フィルム基材]
本発明に用いるフィルム基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッソ樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリル樹脂フィルム等を挙げることができる。本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化被膜は、発生する硬化収縮が小さく、かつ高硬度、高耐擦傷性に優れるため、カールに起因する影響をフィルム基材に与えることなく保護できる。さらに、該硬化被膜を有するフィルムを裁断する際に、切断面に割れや欠けを生じないので、裁断時の不良品率を低減できる。このため、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化被膜は各種フィルム基材の保護層として有効である。このフィルム基材としては、図柄や易接着層を設けたものであっても良い。高硬度、高耐擦傷性を発揮させるには、硬化被膜の厚さは、通常0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは3〜50μmであり、特に好ましくは4〜30μmである。
【0064】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化被膜を有するフィルムは、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をフィルム基材上に、該樹脂組成物の乾燥後の質量として、通常0.5〜500g/m(塗膜厚0.5〜500μm)、好ましくは3〜50g/m2 (塗膜厚3〜50μm)、特に好ましくは4〜30g/m(塗膜厚4〜30μm)になるように塗布し、乾燥後、活性エネルギー線を照射し、硬化被膜を形成させることにより得ることができる。なお、該樹脂組成物の乾燥後の質量が0.5g/m未満では、基材の影響を受け硬度が上がらず、500g/m 以上では、硬化時の重合熱で基材の変形等が起きる不具合が発生するため、500g/m以上の膜厚を形成する際は、冷却等の工夫が必要になる。
【0065】
前記フィルム基材の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン−1等のポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂;ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ノルボルネン系樹脂(例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア」)、変性ノルボルネン系樹脂(例えば、(JSR株式会社製「アートン」)、環状オレフィン共重合体(例えば、三井化学株式会社製「アペル」)等が挙げられる。これらの材質の中でも、トリアセチルセルロースは、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化被膜との間で優れた密着性を示すので好ましい。また、これらの樹脂からなる基材を2種以上貼り合わせて用いても良い。これらのフィルム基材は、シート状であっても良く、フィルム基材の厚さは、20〜500μmが好ましい。
【0066】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をフィルム基材に塗布する方法としては、例えば、グラビアコート、ロールコート、コンマコート、エアナイフコート、キスコート、スプレーコート、かけ渡しコート、ディップコート、スピンナーコート、ホイーラーコート、刷毛塗り、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート等が挙げられる。また、オフセット印刷、活版印刷等の印刷方式でも良い。これらの中でも、グラビアコート、ロールコート、コンマコート、エアナイフコート、キスコート、ワイヤーバーコート、フローコートは、より厚みが一定な塗膜が得られるため好ましい。
【0067】
また、プラスチック成形体を本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化被膜によって保護する方法として、上記の硬化被膜を形成させたフィルムを、プラスチックの賦型前に、硬化被膜が最表面になるようにプラスチック表面に貼り付け、その後、ラスチックを該フィルムとともに賦型する方法もある。プラスチック表面への該フィルムの貼り付けは、フィルムとプラスチックとを高温で溶融接着しても、接着剤を用いて接着しても構わない。また、プラスチックを賦型した成形体に、硬化被膜を形成させたフィルムを該成形体の外形に合わせて二次成形したものを貼り付けても良い。
【0068】
さらに、材質がプラスチックや金属等の成形された物品に保護層を設ける方法として、予め本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化被膜からなる保護層を設けた転写フィルムを用いる方法がある。この場合、転写材の保護層が転写後に物品の最外層になるように、水圧転写法等の転写方法を用いて、物品の表面に貼り付ける。この転写材に柄や金属薄層を設けた場合には、物品に意匠性を付与すると同時に、その表面に高い硬度、高い耐擦傷性を付与することができる。また、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、硬化収縮が小さいので、該樹脂組成物を用いた転写フィルムのカールが小さく、転写の際の作業性も高い。
【0069】
一方、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物からなることを特徴とする光学シートは、該樹脂組成物を型に接触された状態で、紫外線などの活性エネルギー線の照射により硬化して型を転写することで得られる。このように型をそのまま転写できるので、特殊な形状を有するフレネルレンズシート等の光学シートにも応用できる。この方法で得られた光学シートは、硬化収縮によるカールが小さく、かつ高硬度、高耐擦傷性に優れるため、他物品との接触で傷が付くことがないため、非常に有用なものである。
【0070】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に、活性エネルギー線として紫外線を照射する場合には、光発生源として、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、水銀−キセノンランプ、ショートアーク灯、ヘリウム・カドミニウムレーザー、アルゴンレーザー、太陽光、LED等が挙げられる。また、閃光的に照射するキセノン−フラッシュランプを使用すると、フィルム基材への熱の影響が小さくなるので有効である。
【0071】
活性エネルギー線として電子線を照射する場合、30〜300kVの加速電圧の電子線加速装置を用いるのが好ましい。また、フィルム基材の樹脂が、電子線で黄変し易い芳香族骨格を有する場合や電子線で劣化し易い場合、例えば、フィルム基材にセルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を用いる場合には、加速電圧を30〜150kVにすると、フィルム基材の黄変や劣化が防止できる。
【0072】
[粘着剤層]
本発明に用いる粘着剤層としては、厚さが5〜20μmの粘着剤層を使用する。本発明においては、粘着剤層の厚さを当該厚さとすることで、被着対象との十分な粘着力を発現できると共に、保護粘着フィルムの表面で応力集中が生じた場合にも、保護粘着フィルム全体の弾性率を高く保持できるため、粘着フィルム表面に設けられたハードコート層の硬度の低下を抑制できると考えられる。
【0073】
本発明に用いる粘着剤層に使用される粘着剤には、種々のアクリル系、ゴム系、シリコーン系の粘着樹脂を使用することができる。そのなかでも、反復単位として炭素数2〜14のアルキル基を有するアクリル酸エステルに由来する反復単位を含有するアクリル系共重合体が、耐光性・耐熱性の点から好ましい。例えば、n−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、エチルアクリレート等に由来する反復単位を含むアクリル系共重合体があげられる。
【0074】
さらに反復単位として、側鎖に水酸基、カルボキシル基、アミノ基などの極性基を有するアクリル酸エステルやその他のビニル系単量体に由来する反復単位を0.01〜15質量%の範囲で含有するのが好ましい。アクリル系共重合体は、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、紫外線照射法、電子線照射法によって共重合させることにより得ることができる。アクリル系共重合体の平均分子量は、40万〜140万が好ましく、更に好ましくは、60万〜120万である。
【0075】
さらに粘着剤の凝集力をあげるために、架橋剤を添加するのが好ましい。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、キレート系架橋剤等が挙げられる。架橋剤の添加量としては、粘着剤層のゲル分率25〜80%になるよう調整するのが好ましい。さらに好ましいゲル分率は、40〜75%である。そのなかでも50〜70%が最も好ましい。ゲル分率が25%未満であると、保護粘着フィルムをパネルに貼付したときの表面鉛筆硬度が低下する。一方、ゲル分率が80%を越えると接着性が低下する。ゲル分率は、養生後の粘着剤層をトルエン中に浸漬し、24時間放置後に残った不溶分の乾燥後の質量を測定し、元の質量に対する百分率で表す。
【0076】
さらに粘着剤層の粘着力を向上させるため、粘着付与樹脂を添加しても良い。本発明の粘着テープの粘着剤層に添加する粘着付与樹脂は、ロジンやロジンのエステル化物等のロジン系樹脂;ジテルペン重合体やα−ピネン−フェノール共重合体等のテルペン系樹脂;脂肪族系(C5系)や芳香族系(C9)等の石油樹脂;その他、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。100℃14日放置後の粘着剤層のb*値を6以下にするためには、不飽和二重結合が少ない、水添ロジンや不均化ロジンのエステル化物や、脂肪族や芳香族系石油樹等を粘着剤層に添加することが好ましい。
【0077】
接着性と耐黄変性を両立させるには、高不均化ロジンエステルと重合ロジンエステルと石油樹脂を併用するのが好ましい。
【0078】
粘着付与樹脂の添加量としては、粘着剤樹脂がアクリル系共重合体である場合は、アクリル系共重合体100質量部に対して10〜60質量部を添加するのが好ましい。接着性を重視する場合は、20〜50質量部を添加するのが最も好ましい。また、粘着剤樹脂がゴム系の樹脂である場合は、ゴム系の樹脂100質量部に対して、粘着付与樹脂を80〜150質量部添加するのが好ましい。なお、一般的に粘着剤樹脂がシリコーン系樹脂である場合は、粘着付与樹脂を添加しない。
【0079】
粘着剤には、上記以外に種々の添加剤を添加することができる。例えば、ガラスへの接着性を向上するために、0.001〜0.005の範囲でシランカップリング剤を添加することができる。その他、可塑剤、軟化剤、充填剤、顔料、難燃剤等が添加できる。
【0080】
粘着剤層の貯蔵弾性率(20℃)は、1.0×10Pa以上が好ましく、さらに好ましくは、2.5×10Pa以上である。1.0×10Pa未満では、粘着剤が軟らかいため、20μm以上の積層した場合、保護フィルムの表面硬度が著しく低下する。
【0081】
[保護粘着フィルム]
保護粘着フィルムは、少なくとも前記フィルム基材、前記ハードコート層及び粘着剤層を積層した保護粘着フィルムである。当該構成の保護粘着フィルムは、表面硬度が高く、硬化収縮によるフィルムの変形が小さいため、従来の保護粘着フィルムでは得られなかった優れた表面硬度と変形防止を実現できる。
【0082】
当該保護粘着フィルムの厚さは、150μm以下、好ましくは120μm以下とすることで、表面保護やガラス飛散防止のために表示装置の表示部等に設ける保護フィルムとして有用である。基材フィルムの厚さとしては、38〜100μmであることが好ましい。また、ハードコート層の厚さは、総厚さを150μm以下の総厚さにおいて、ハードコート機能を発現させるために、5〜25μmの厚さで調整する。好ましくは5〜20μm、更に好ましくは5〜10μmである。5μm未満では、表面鉛筆硬度が低下し、25μmを超えるとハードコート層の硬化収縮により、粘着塗工が困難となる。
【0083】
本発明の保護粘着フィルムは、粘着剤層を介して貼付対象に貼り付けた場合であっても高い表面硬度を実現でき、ガラス板と貼り付けた状態で好ましくは2H以上の硬度を実現できる。
【0084】
[製造方法]
本発明の保護粘着フィルムは、フィルム基材上に上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布して硬化させ、ハードコート層を形成した後、フィルム基材のハードコート層を有する面と逆の面に粘着剤層を形成することで製造できる。
【0085】
粘着剤層の形成においては、粘着剤の塗布に一般的に使用されている方法でフィルム基材上に形成することができる。粘着剤層の組成物を基材フィルムに直接塗布し、乾燥するか、或いは、いったんセパレータ(剥離シート)上に塗布し、乾燥後、基材フィルムに貼り合わせる。
【実施例】
【0086】
以下に実施例および比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0087】
<ウレタンアクリレート(A−1)の合成>
攪拌機、ガス導入管、冷却管、及び温度計を備えたフラスコに、酢酸ブチル254質量部、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」という。)222質量部、p−メトキシフェノール0.5質量部、ジブチル錫ジアセテート0.5質量部を仕込み、70℃に昇温した後、ペンタエリスリトールトリアクリレート(以下、「PE3A」という。)/ペンタエリスリトールテトラアクリレート(以下、「PE4A」という。)混合物(質量比75/25の混合物)795質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、70℃で3時間反応させ、さらにイソシアネート基を示す2250cm−1の赤外線吸収スペクトルが消失するまで反応を行い、ウレタンアクリレート(A−1)/PE4A混合物(質量比80/20の混合物、不揮発分80質量%の酢酸ブチル溶液)を得た。なお、ウレタンアクリレート(A−1)の分子量は818であった。
【0088】
<ウレタンアクリレート(A−2)の合成>
攪拌機、ガス導入管、冷却管、及び温度計を備えたフラスコに、酢酸ブチル161.8質量部、IPDI222質量部、p−メトキシフェノール0.5質量部、ジブチル錫ジアセテート0.5質量部を仕込み、70℃に昇温した後、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレートの不揮発分80%の酢酸ブチル溶液461.3質量部を1時間かけて滴下し、滴下終了後70℃で3時間反応させた。その後、PE3A/PE4A混合物(質量比75/25の混合物)434質量部を1時間かけて滴下し、滴下終了後70℃で3時間反応させ、さらにイソシアネート基を示す2250cm−1の赤外線吸収スペクトルが消失するまで反応を行い、ウレタンアクリレート(A−2)/PE4A混合物(質量比87/13の混合物、不揮発分80質量%の酢酸ブチル溶液)を得た。なお、ウレタンアクリレート(A−2)の分子量は889であった。
【0089】
<重合体(B)の合成>
攪拌機、ガス導入管、冷却管、及び温度計を備えたフラスコに、グリシジルメタクリレート(以下、「GMA」という。)250質量部、ラウリルメルカプタン1.3質量部、メチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」という。)1000質量部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」という。)7.5質量部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、1時間かけて90℃に昇温し、90℃で1時間反応させた。次いで、90℃で攪拌しながら、GMA750質量部、ラウリルメルカプタン3.7質量部、AIBN22.5質量部からなる混合液を2時間かけて滴下した後、100℃で3時間反応させた。その後、AIBN10質量部を仕込み、さらに100℃で1時間反応させた後、120℃付近に昇温し、2時間反応させた。60℃まで冷却し、窒素導入管を、空気導入管に付け替え、アクリル酸(以下、「AA」という。)507質量部、p−メトキシフェノール2質量部、トリフェニルホスフィン5.4質量部を加えて混合した後、空気で反応液をバブリングしながら、110℃まで昇温し、8時間反応させた。その後、p−メトキシフェノール1.4質量部を加え、室温まで冷却後、不揮発分が50質量%になるように、MIBKを加え、重合体(B)(不揮発分50質量%のMIBK溶液)を得た。なお、得られた重合体(B)の重量平均分子量は31,000(GPCによるポリスチレン換算による)で、(メタ)アクリロイル基当量は300g/eqであった。
【0090】
上記で得られたウレタンアクリレート(A−1)〜(A−2)及び重合体(B)を用いて、下記のように活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(主剤)を調製した。
【0091】
(主剤の調製1)
酢酸エチル35.2質量部、ウレタンアクリレート(A−1)/PE4A混合物(質量比87/13の混合物)の酢酸ブチル溶液(不揮発分80%)50.0質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以下、「DPHA」という。)40.0質量部、光開始剤1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(以下、「HCPK」という。)3.2質量部、光開始剤ジフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィン=オキシド(以下、「TPO」という。)0.8質量部を均一に混合し、主剤1(不揮発分65%)を調製した。
【0092】
(主剤の調製2)
酢酸エチル35.2質量部、ウレタンアクリレート(A−2)/PE4A混合物(質量比87/13の混合物)の酢酸ブチル溶液(不揮発分80%)50.0質量部、DPHA40.0質量部、光開始剤HCPK3.2質量部、光開始剤TPO0.8質量部を均一に混合し、主剤2(不揮発分65%)を調製した。
【0093】
(主剤の調製3)
酢酸エチル28.2質量部、重合体(B)のMIBK溶液(不揮発分50%)16.0質量部、ウレタンアクリレート(A−2)/PE4A混合物(質量比87/13の混合物)の酢酸ブチル溶液(不揮発分80%)45.0質量部、DPHA36.0質量部、光開始剤HCPK3.2質量部、光開始剤TPO0.8質量部を均一に混合し、主剤3(不揮発分65%)を調製した。
【0094】
(主剤の調製4)
酢酸エチル5.2質量部、重合体(B)のMIBK溶液(不揮発分50%)80.0質量部、DPHA40.0質量部、光開始剤HCPK3.2質量部、光開始剤TPO0.8質量部を均一に混合し、主剤4(不揮発分65%)を調製した。
【0095】
(ハードコート材の調製1)
主剤の調製1において調製した主剤1(不揮発分65質量%)100質量部、濁度13%の反応性フッ素防汚剤(オプツールDAC;ダイキン工業株式会社製、不揮発分20質量%)2質量部を均一に混合した後、不揮発分が40質量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、「PGME」という。)で希釈して、ハードコート材(1)を得た。
【0096】
(ハードコート材の調製2)
主剤の調製2において調製した主剤2(不揮発分65質量%)100質量部、濁度16%の反応性フッ素防汚剤(オプツールDAC;ダイキン工業株式会社製、不揮発分20質量%)2質量部を均一に混合した後、不揮発分が40質量%となるようにPGMEで希釈して、ハードコート材(2)を得た。
【0097】
(ハードコート材の調製3)
主剤の調製3において調製した主剤3(不揮発分65質量%)100質量部、濁度10%の反応性フッ素防汚剤(オプツールDAC;ダイキン工業株式会社製、不揮発分20質量%)2質量部を均一に混合した後、不揮発分が40質量%となるようにPGMEで希釈して、ハードコート材(3)を得た。
【0098】
(ハードコート材の調製4)
滴下ロート、コンデンサー、温度計、撹拌装置を装着した1Lの3口フラスコにSUMIDUR N3300(ヘキサメチレンジイソシアナートの環状3量体、住友バイエルウレタン社製、NCO基含有率21.9質量%)57gをHCFC225 165gに溶解させ、ジブチルスズジラウレート(和光純薬社製一級試薬)0.4g、を加え、空気中室温で、攪拌しながら4.5時間かけてDEMNUM(CFCFO−(CFCFCFO)10.9−CFCFCHOH、純度86.9%と19F−NMR、1H−NMRから同定されるPFPEモノアルコール、ダイキン工業社製)244gをHCFC225 160gに溶かした溶液を滴下し、室温で6時間撹拌した。40〜45℃に加温し、ヒドロキシエチルアクリレート24.4gを10分で滴下し3時間撹拌した。IRによってNCOの吸収が完全に消失を確認し(生成物の19F−NMRからも−CF−CHOHの消失が確認された。)、パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物の50wt%HCFC225溶液を得た。得られたパーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物の濁度は3%。得られた前記組成物2質量部を反応性フッ素防汚剤(オプツールDAC;ダイキン工業株式会社製)と変えた以外はハードコート材の調製2と同様にして、ハードコート材(4)を得た。
【0099】
(ハードコート材の調製5)
主剤の調製3において調製した主剤3(不揮発分65質量%)100質量部、濁度54%の反応性フッ素防汚剤(オプツールDAC;ダイキン工業株式会社製、不揮発分20質量%)2質量部を均一に混合した後、不揮発分が40質量%となるようにPGMEで希釈して、ハードコート材(5)を得た。
【0100】
(ハードコート材の調製6)
主剤の調製3において調製した主剤3(不揮発分65質量%)100質量部、濁度25%の反応性フッ素防汚剤(オプツールDAC;ダイキン工業株式会社製、不揮発分20質量%)2質量部を均一に混合した後、不揮発分が40質量%となるようにPGMEで希釈して、ハードコート材(6)を得た。
【0101】
(ハードコート材の調製7)
主剤の調製3において調製した主剤3(不揮発分65質量%)100質量部、濁度31%の反応性フッ素防汚剤(オプツールDAC;ダイキン工業株式会社製、不揮発分20質量%)2質量部を均一に混合した後、不揮発分が40質量%となるようにPGMEで希釈して、ハードコート材(7)を得た。
【0102】
(ハードコート材の調製8)
主剤の調製4において調製した主剤4(不揮発分65質量%)100質量部、濁度10%の反応性フッ素防汚剤(オプツールDAC;ダイキン工業株式会社製、不揮発分20質量%)2質量部を均一に混合した後、不揮発分が40質量%となるようにPGMEで希釈して、ハードコート材(8)を得た。
【0103】
(ハードコートフィルムの調製)
上記で得られたハードコート材(1)〜(8)をポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という。)製フィルム基材(東洋紡績株式会社製「コスモシャインA4300 #100」、厚さ:100μm)の片面に、ワイヤーバー(#4)を用いて塗布し、60℃で1分間加熱後、空気雰囲気下で紫外線照射装置(日本電池株式会社製「GS30型UV照射装置」、ランプ:120W/cmメタルハライドランプ2灯、ランプ高さ:20cm、照射光量:0.5J/cm2)を用いて紫外線を照射し、膜厚10μmの硬化被膜を有するハードコートフィルム(1)〜(8)を得た。
【0104】
(粘着剤層の調製)
ハードコートフィルム(1)〜(8)の非ハードコート処理面に、シリコーン化合物の剥離層を形成した剥離ライナーに、DIC社製粘着剤SPS1030Bを塗工して90℃で90秒間乾燥し乾燥後の厚みが10μmの粘着剤層を形成した。
【0105】
(実施例1)
上記で得られたハードコートフィルム(1)のハードコート層を有さない表面を、コロ
ナ処理装置に掛け、表面張力55ダイン/cm(単位確認必要)になるよう表面処理し、
粘着剤層Aを4kg/cmの加圧で貼り合わせ後、40℃で2日間養生後、厚さ93μm
の保護粘着フィルム(1)を得た。
【0106】
(実施例2〜4)
上記実施例1におけるハードコートフィルム(1)を、ハードコートフィルム(2)〜
(4)とした以外は同様にして、保護粘着フィルム(2)〜(4)を得た。
【0107】
(比較例1〜4)
上記実施例1におけるハードコートフィルム(1)を、ハードコートフィルム(5)〜
(8)とした以外は同様にして、保護粘着フィルム(5)〜(8)を得た。
【0108】
(反応性フッ素防汚剤の濁度の測定)
1mmセルに反応性フッ素防汚剤を満たし、濁度を測定した。なお、濁度測定は、上記のJIS K7136に準拠し、濁度計NDH2000(日本電色工業株式会社製)にて測定した。
【0109】
(ハードコートフィルムの塗膜欠陥評価)
上記で得られたハードコートフィルム5cm×5cmにある、塗膜欠陥数を目視にて数えた後、下記の基準で評価した。
○:塗膜欠陥0個
△:塗膜欠陥1〜10個
×:塗膜欠陥10個以上
【0110】
(ハードコートフィルムの微細塗膜欠陥評価)
上記で得られたハードコートフィルム10cm×10cmにある、微細塗膜欠陥数を目視にて数えた後、下記の基準で評価した。前記微細塗膜欠陥とは、塗膜中にある、完全にははじいていないが、かすかなはじきが認められる塗膜欠陥のことである。
○:塗膜欠陥0個
×:塗膜欠陥10個以上
【0111】
(指紋拭き取り性評価)
上記で得られたハードコートフィルム表面に、人差し指の指紋を付けた。その指紋を、ベンコットS−2(旭化成せんい株式会社製)にて指紋を拭き取れる回数を測定した。評価基準は以下の通り。
○:拭き取り回数1〜10回
△:拭き取り回数11〜20回
×:拭き取り回数30回以上
【0112】
(表面鉛筆硬度の測定)
上記で得られたハードコートフィルム、及び、上記の実施例及び比較例で得られた保護粘着フィルムをガラス板に貼り付け、その表面鉛筆硬度を、JIS K 5600−5−4(1999年版)の規定に基づき、株式会社井元製作所製の塗膜用鉛筆引掻き試験機(手動式)を用いて測定した。ハードコートフィルム単体の試験は、フィルムの4隅をセロハンテープでガラス板に固定し、測定した。
【0113】
(重量平均分子量の測定)
なお、本発明におけるGPCによる重量平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR−Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0重量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
【0114】
上記の評価結果を表1に示す。
【0115】
【表1】

【0116】
表1に示した評価結果から、実施例1〜4の本発明のハードコートフィルムは、塗膜欠陥・微細塗膜欠陥が無く、好適な塗膜外観を有するものであった。かつ、表面硬度が高く、表面傷付きもなく、表面の防汚性・指紋拭き取り性能も良好であることが確認された。一方、比較例1及び比較例3〜4のハードコートフィルムは、塗膜欠陥・微細塗膜欠陥が多く見られ、良好な外観が得られなかった。また比較例2のハードコートフィルムは、塗膜欠陥は無かったが、微細塗膜欠陥が見られ、良好な外観が得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物と反応性フッ素防汚剤とを含有するフィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、前記反応性フッ素防汚剤は、濁度が20%未満であり、且つ、1つの活性水素を有するパーフルオロポリエーテル、および、活性水素と炭素−炭素二重結合とを有するモノマーを含有する反応性フッ素防汚剤であることを特徴とするフィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が、ポリイソシアネート(a1)と1分子中に1つの水酸基及び2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート(a2)との付加反応物であるウレタンアクリレート(A)と、側鎖に反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系重合体(b1)に前記反応性官能基と反応が可能な官能基を有するα,β−不飽和化合物(b2)を反応させた(メタ)アクリロイル基を有する重合体(B)、とを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物である請求項1記載のフィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリイソシアネート(a1)が、脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環式ジイソシアネートである請求項2記載のフィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
前記アクリレート(a2)が、1分子中に1つの水酸基及び3〜5つの(メタ)アクリロイル基を有するアクリレートである請求項2又は3項記載のフィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
前記重合体(B)が、グリシジル(メタ)アクリレート系重合体に、α,β−不飽和カルボン酸を反応させた反応生成物である請求項2、3又は4記載のフィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
前記重合体(B)の重量平均分子量が5,000〜80,000であり、かつ(メタ)アクリロイル基当量が100〜300g/eqである請求項5に記載のフィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に、さらに前記(A)及び(B)以外のラジカル重合性単量体類(C)を含有する請求項1〜6のいずれか1つに記載のフィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載のフィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物からなるハードコート層を、基材フィルムの片面に設け、反対面に粘着剤層を設けた保護粘着フィルム。

【公開番号】特開2010−222524(P2010−222524A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73801(P2009−73801)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】