説明

フィルム原反の製造方法およびフィルム原反

【課題】連続した帯状のフィルムをロール状に巻いて長期保存する場合、フィルムが帯電しないフィルム原反およびその製造方法を提供する。
【解決手段】連続した帯状のフィルムを巻き取る際、コア表層又はコア全体に静電防止処理が施されている筒状のコアを用いて巻き取るフィルム原反の製造方法であり、また巻かれたフィルム表面の電気抵抗値が1×1015Ω以上であるフィルム原反である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は連続した帯状のフィルムをロール状に巻き取ったフィルム(以下フィルム原反と称する)の製造法およびフィルム原反に関するものであり、更に詳しくは帯状のフィルムが帯電するのを防止することが可能なフィルム原反の製造方法およびフィルム原反に関するものである。
【背景技術】
【0002】
帯状のフィルムは連続して製造できる長所があり、連続で加工できる長所も有している。このような連続した帯状のフィルムは、通常は紙や樹脂、金属などの材質からなる筒状のコアに巻き取りながら製造し、出来上がったフィルムはコアに巻いた状態で保存される。
【0003】
ロール状で保存されるフィルムは、短期間であれば特に問題ないが、保存期間が長期になると静電気の影響で帯電することがある。帯電したフィルム上に接着剤や塗料を塗布しようとすると、帯電の影響で接着剤や塗料にはじきが発生するという問題点を有していた。
【0004】
フレキシブル回路基板として用いられるポリイミドフィルムや液晶ポリマーフィルムでは、通常接着剤を塗布し、その上に銅箔を貼り付けて使用するため、接着剤にはじきが存在するとその部分は銅が貼り付いていない状態となり、銅箔をエッチングして配線を形成した場合、貼り付いていない銅が欠落するという問題が発生する可能性がある。
【0005】
このような問題を改善するために、例えばフィルムと搬送装置との間に発生する摩擦を用いて静電気を除去する方法(例えば特許文献1参照)が開示されている。しかしながら、この方法では、うまく摩擦を利用出来ない場合、静電気を十分に除去できない問題を有していた。
【特許文献1】特開2005−145683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の課題を解決するための方法を提供するものであり、連続した帯状のフィルムを長期に保存した場合でもフィルムが帯電するのを防止し、フィルム上に接着剤を塗布する際に接着剤はじきが発生しない方法およびその方法で得られたフィルム原反を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフィルム原反の製造方法は、前記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
(1)連続した帯状のフィルムを巻き取る際、コア表層又はコア全体に静電防止処理が施されている筒状のコアを用いて巻き取ることを特徴とするフィルム原反の製造方法。
(2)コアの表層及び全体に、静電防止処理剤を塗布することを特徴とする(1)記載のフィルム原反の製造方法。
(3)連続した帯状のフィルムをコアに巻いた原反であって、巻かれたフィルム表面の電気抵抗値が1×1015Ω以上であることを特徴とするフィルム原反。
【発明の効果】
【0008】
本発明のフィルムの巻き取り方法を用いれば、コア表層又はコア全体に静電防止処理が施されているので、連続した帯状のフィルムを巻きつけて長期に保存した場合でもフィルムが帯電することがなく、接着剤や塗料を塗布した場合にはじきが発生しないフィルムを供給することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のフィルム原反の製造方法およびフィルム原反を説明する。
【0010】
かかる本発明の目的は、静電防止処理が施されたコアを用いて連続した帯状のフィルムを巻き取る方法によって解決される。
【0011】
本発明において、筒状のコアとしては、紙、樹脂、金属などの材質からなるコアが選ばれる。これらの材質は単独で用いてもよいが、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0012】
コアとして紙を用いる場合、表面紙の仕様がスパイラルタイプのものや平巻きタイプのものなどが挙げられるが、平均表面粗さの点から平巻きタイプのものが好ましい。更に、表面を研磨したり、重ね合わせて継ぎ目をなくしたり、樹脂を含浸させたり表面に塗布したりすることも好ましい。含浸させたり表面に塗布したりする樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ブタジエンゴム、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
コアとして樹脂を用いる場合、樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ABS樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン樹脂などが選ばれるが、これらに限定されない。これらの樹脂は単独、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0014】
コアとして金属を用いる場合、金属としては鉄、アルミニウム、銅、チタン、鉛、亜鉛、金、ニッケル、クロム、スズ、銀、パラジウム、白金などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの金属は単独、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。また、電解鍍金や無電解鍍金、スパッタリング、蒸着などを適宜組み合わせるのもよい。
【0015】
また、コアの材質として、上述の紙や樹脂、金属に加え、ガラス繊維やカーボン繊維と組み合わせて使用することも好ましい。
【0016】
本発明の最大の特徴は、上記コアの全体あるいはフィルムが接する表層部分に静電防止処理を施すことにある。静電防止処理の方法としては、市販されている静電防止剤を塗布、乾燥させる方法が挙げられる。静電防止剤としては各種イオン系界面活性剤やフッ素系界面活性剤に代表される非イオン系界面活性剤が一般的であるが、これに限定されず、静電防止効果があるものであれば何でもよく、例えば導電性ポリマーや金属を含有した樹脂等を用いてもよい。静電防止剤の具体例としては、ムロマチテクノス(株)製MU−003、イチコウエンジニアリング(株)製MX−50、アキレス(株)製SL−10などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0017】
静電防止剤の静電効果としては、表面抵抗値1×10Ω以上が好ましく、更に好ましくは1×10Ω以上、最も好ましくは1×1010Ω以上である。それ故、静電防止剤の塗布厚みは特に限定されないが、静電効果を十分発揮できる厚みであることが重要であり、0.001μm以上、好ましくは0.01μm以上、最も好ましくは0.1μm以上の厚みで形成するのがよい。
【0018】
本発明における連続した帯状のフィルムとしては、主として回路基板用途に用いられる耐熱性フィルムが選ばれるのが好ましい。具体的には、しわや歪みに対する要求が厳しいポリイミドフィルムや液晶ポリマーフィルム、ポリフェニレンサルファイドなどが選ばれる。フィルムの具体例としては、東レ・デュポン(株)製ポリイミドフィルム“カプトン”、(株)カネカ製ポリイミドフィルム“アピカル”、宇部興産(株)製ポリイミドフィルム“ユーピレックス”、(株)クラレ製液晶ポリマーフィルム“ベクスター”、ジャパンゴアテックス(株)製液晶ポリマーフィルム“バイアック”などが挙げられ、とりわけポリイミドフィルム“カプトン”やポリイミドフィルム“アピカル”が好ましい。
【0019】
より具体的には、ジアミン成分としてパラフェニレンジアミンやメタフェニレンジアミン、ベンチジン、パラキシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメトキシベンチジン、1,4−ビス(3−メチル−5−アミノフェニル)ベンゼンなどを用い、酸二無水物成分としてピロメリット酸二無水物や3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’、4、4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンジカルボン酸二無水物などから成るポリイミドフィルムが好ましい。
【0020】
なお、本発明における連続した帯状のフィルムには、滑り性を向上させる為、リン酸水素カルシウムや炭酸カルシウム、シリカなどの添加剤が含まれていてもよい。
【0021】
また、本発明における連続した帯状のフィルムをロール状に巻いて保存する場合、紙、樹脂及び金属から選ばれる少なくとも1種から主としてなる材料で包むことが好ましい。このような材料で包むことにより、より静電性を向上させることができる。
【0022】
本発明における巻き取り方法として、好ましくは粘着剤やテープなどを用いて帯状のフィルムの端をコアに固定して巻きつけていく方法である。このようにして巻き取られたフィルム原反はしわや歪みがなく、特に回路基板用途に適したフィルムが得られる。
【0023】
以上記載したように、表面に静電防止剤を付与したコアに巻かれたフィルムはフィルム表面には直接静電防止剤が付与されていないにもかかわらず静電効果を示す。このときのフィルム表面の電気抵抗値は1×1015Ω以上が実用上好ましく、1×1016Ω以上がより好ましい。
【実施例】
【0024】
以下実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。コア表面の表面抵抗値は23℃、印加電圧100V、(株)メイセイ製ポータブル表面抵抗率・抵抗計Model272Aを用いて測定した。また、 フィルムの表面抵抗値はASTM D257に準じ23℃、帯電時間60秒、印加電圧500Vで測定した。
【0025】
[実施例1]
コアとしてガラス繊維とポリエステル樹脂からなる千代田興業(株)製樹脂コアFWP−02を用いた。この樹脂コアの表面に、静電防止剤としてムロマチテクノス(株)製MU−003(ポリオキシエチレントリアルキルエーテル類とフッ素系界面活性剤の混合物)を用い、コアの表層にこの静電防止剤を均一に吹きつけ、30℃で5分間乾燥させ、平均膜厚0.1μm、表面抵抗値1×107Ωの静電防止層を形成した。また、連続した帯状のフィルムとして12.5μm厚のポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製“カプトン”EN)を用いた。
【0026】
粘着剤を用いてフィルムの端をコアに固定し、200m巻き取った。30℃で60日間保存してから、フィルムを引き出し、表面抵抗値を測定した。結果は表1に示す通りであり、長期間保管された場合でもフィルムの帯電はほとんどなかった。
【0027】
[実施例2]
紙製のコア表面にポリウレタン樹脂を塗布した紙コア(田中紙管(株)製)であるZコア(表面粗さ計にて測定した算術平均粗さが0.9μmであるフィルム用の平滑コア)を用いた。この紙コアの表面に、静電防止剤としてイチコウエンジニアリング(株)製MX−50(カチオン系界面活性剤)を用い、Zコアの表層にこの静電防止剤を均一に吹きつけ、30℃で5分間乾燥させ、膜厚0.5μm、表面抵抗値1×107Ωの静電防止層を形成した。また、連続した帯状のフィルムとして12.5μm厚のポリイミドフィルム((株)カネカ製“アピカル”NPI)を用いた。
【0028】
粘着剤を用いてフィルムの端をコアに固定し、200m巻き取った。30℃で60日間保存してから、フィルムを引き出し、表面抵抗値を測定した。結果は表1に示す通りであり、長期間保管された場合でもフィルムの帯電はほとんどなかった。
【0029】
[実施例3]
表面紙仕様が平巻きタイプである紙コア(昭和丸筒(株)製)であるMコア(熱硬化性樹脂を含浸させた紙を巻いて熱処理しており、表面粗さ計にて測定した算術平均粗さが1.5μmであるコア)を用いた。この紙コアの表面に、静電防止剤としてアキレス(株)製SL−10(イオン交換水とカチオン系界面活性剤との混合物)を用い、コアをこの静電剤の液中に30℃で5分間浸漬し、その後30℃で24時間乾燥させ、膜厚1.0μm、表面抵抗値1×108Ωの静電防止層を形成した。また、連続した帯状のフィルムとして12.5μm厚のポリイミドフィルム(宇部興産(株)製“ユーピレックス”S)を用いた。
【0030】
粘着剤を用いてフィルムの端をコアに固定し、200m巻き取った。30℃で60日間保存してから、フィルムを引き出し、表面抵抗値を測定した。結果は表1に示す通りであり、長期間保管された場合でもフィルムの帯電はほとんどなかった。
【0031】
[比較例1]
実施例1において、静電防止剤をコアに塗布しないこと以外は全て実施例1と同じ方法で、フィルムの表面抵抗値を測定した。結果は表1に示す通りであり、フィルムに帯電が見られ、表面抵抗値が低下していた。
【0032】
[比較例2]
実施例2において、静電防止剤をコアに塗布しないこと以外は全て実施例2と同じ方法で、フィルムの表面抵抗値を測定した。結果は表1に示す通りであり、フィルムに帯電が見られ、表面抵抗値が低下していた。
【0033】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、接着剤を塗布してフレキシブル配線板を形成するのに優れたポリイミドフィルムの提供が可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続した帯状のフィルムを巻き取る際、コア表層又はコア全体に静電防止処理が施されている筒状のコアを用いて巻き取ることを特徴とするフィルム原反の製造方法。
【請求項2】
コアの表層及び全体に、静電防止処理剤を塗布することを特徴とする請求項1記載のフィルム原反の製造方法。
【請求項3】
連続した帯状のフィルムをコアに巻いた原反であって、巻かれたフィルム表面の電気抵抗値が1×1015Ω以上であることを特徴とするフィルム原反。

【公開番号】特開2007−176034(P2007−176034A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−377887(P2005−377887)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000219266)東レ・デュポン株式会社 (288)
【Fターム(参考)】