説明

フィルム及びその製造方法

【課題】 フィルムを破断させることなくナーリング加工が施されたフィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係るフィルムは、高分子樹脂フィルムの少なくとも何れか一方の面であって、その幅手方向の両端部に、レーザー照射によりナーリング加工が施されて構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幅手方向の両端部にナーリング加工が施されたフィルム、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板の透明保護フィルムなどに使用されるプラスチックフィルムは、例えば、溶液製膜法によって製造され、その後、ロール状に巻き取られてフィルムロールとして保存・搬送される。
【0003】
しかし、フィルムの巻き取りの際、巻きズレや巻き緩み、ブロッキング、あるいはゲージバンドと呼ばれる(ピストンリングとも呼ばれる)厚みムラに起因する外観不良などが発生するという問題があった。この問題を解決する為、従来、フィルムの端部には、ナーリング加工(微小な凹凸を形成する加工であり、エンボス、ローレット加工等とも言う)が施される。
【0004】
前記のナーリング加工としては、例えば、凹凸面を有する一対のエンボスロール間にフィルムを挟み込んで押圧する方法が挙げられる(下記特許文献1、2等)。しかし、エンボスロールを用いた方法であると、フィルムの厚みが薄い(例えば、20〜55μm)場合、ナーリング加工時にフィルムが破断するという問題がある。また、ナーリング加工後もフィルムを屈曲させた場合に、ナーリング加工部が破断し易いという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開2007−91784号公報
【特許文献2】特開2002−211803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、フィルムを破断させることなくナーリング加工が施されたフィルム及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者等は、前記従来の問題点を解決すべく、フィルム及びその製造方法について検討した。その結果、下記構成を採用することにより前記目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明に係るフィルムは、高分子樹脂フィルムの少なくとも何れか一方の面であって、その幅手方向の両端部に、レーザー照射によりナーリング加工が施されて構成される。
【0009】
前記構成によれば、本発明は、高分子樹脂フィルム表面にレーザーを照射することにより、当該表面を局部的に熱溶融させ、又はアブレーションを行ってナーリング加工を行う。その結果、厚みの薄いフィルムに対しても、ナーリング加工時のフィルム破断を防止することができる。更に、屈曲させても、ナーリング加工が施された部分で破断が生じることがない。これは、例えば、一対のエンボスロール間に挟み込んでナーリング加工を行う場合の様に、高分子樹脂フィルムに対し不要な押圧が加わらず、当該高分子樹脂フィルムに残留応力が残らないことに起因すると考えられる。
【0010】
また、加熱されたエンボスロールを押し当ててナーリング加工を行う場合、高分子樹脂フィルム表面がエンボスロールによって削れたり、ナーリング加工部分の周辺で汚染されるという問題がある。しかし、本発明においては、レーザー照射によりナーリング加工が施されたものであるので、高分子樹脂フィルム表面の摩耗や汚染の発生も抑制できる。
【0011】
前記構成に於いては、前記ナーリング加工が施されていない部分の平均厚みをT(μm)とし、前記ナーリング加工が施された両端部での平均厚みTn(μm)とした場合に、前記T(μm)が20〜70μmの範囲内であり、Tn−Tが3〜30μmの範囲内であることが好ましい。ナーリング加工が施された両端部のナーリング高さ(Tn−T)を3〜30μmの範囲内にすることにより、フィルムを巻き取る際の巻きズレや巻き緩み、ブロッキング、厚みムラに起因する外観不良などの発生を十分に抑制すると共に、両端部での破断の発生も抑制することができる。
【0012】
前記構成に於いては、前記高分子樹脂フィルムの引張強度が100MPa以下であり、かつ、引張伸度が80%以下であってもよい。高分子樹脂フィルムが係る物性を有する場合であっても、破断を発生させることなくナーリング加工が施されたフィルムを提供することができる。
【0013】
前記構成に於いて、前記高分子樹脂フィルムは光学フィルムとすることができる。
【0014】
更に、前記光学フィルムは透明保護フィルムとすることができる。
【0015】
また、前記透明保護フィルムは、ノルボルネン系フィルム又はアクリル系フィルムとすることができる。
【0016】
また、本発明は、前記に記載のフィルムを、偏光子の少なくとも片面に設けた偏光板とすることができる。
【0017】
本発明に係るフィルムの製造方法は、高分子樹脂フィルムの少なくとも何れか一方の面であって、その幅手方向の両端部に、所定条件下でレーザーを照射してナーリング加工を施すことを特徴とする。
【0018】
前記方法によれば、本発明は、レーザー照射により高分子樹脂フィルム表面に局部的に熱溶融又はアブレーションさせるので、その両端部で破断を生じさせることなくナーリング加工を施すことが可能になる。また、レーザー照射後のフィルムを屈曲させた場合にも、破断の発生を抑制することができる。
【0019】
更に、前記方法であると、加熱されたエンボスロールではなくレーザー照射によりナーリング加工を施すので、高分子樹脂フィルムに対し摩耗や汚染を発生させることなくナーリング加工が可能になる。
【0020】
また、レーザーの照射位置を適宜変更するだけで凹凸パターンや凹凸の密度が変化させることができるので、エンボスロールを用いた従来の加工と比較してナーリング加工の設計変更が容易である。
【0021】
前記方法においては、レーザー照射の出力を1〜20Wの範囲内にすることが好ましい。レーザー照射の出力を1W以上にすることにより、レーザー照射量が不足するのを防止して高分子樹脂フィルムの表面に対するナーリング加工を十分に施すことができる。その一方、20W以下にすることにより、高分子樹脂フィルムに貫通孔が生じるのを防止すると共に、照射周辺部への熱的影響を抑制し、微細加工幅が拡大するなどして所望の微細パターンが得られなくなるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、高分子樹脂フィルムに対しレーザー照射をすることにより、局部的に熱溶融させ、又はアブレーションを行ってナーリング加工を行うので、ナーリング加工時のフィルム破断や加工後に屈曲した際のフィルム破断を防止することができる。これにより、フィルムの巻き取りの際に生じる、巻きズレ等の問題を一層抑制できるので、偏光板やそれを備えた積層光学フィルムの製造歩留まりを一層向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施の形態について、図を参照しながら以下に説明する。図1は、本実施の形態に係るフィルムを模式的に示す断面図であって、同図(a)はナーリング加工が一方の面に施されている様子を表し、同図(b)は両方の面に施されている様子を表す。
【0024】
図1(a)に示すように、本実施の形態に係るフィルム10は、高分子樹脂フィルム1の一方の面にナーリング加工が施されて構成される。また、図1(b)に示すように、高分子樹脂フィルム1の両方の面にナーリング加工が施したフィルム11の構成であってもよい。
【0025】
本発明に於いては、ナーリング加工が施されない非加工部12の平均厚みT(μm)が、20〜70μmの範囲内であっても破断なくナーリング加工を施すことができる。非加工部12の厚みが20μm未満であると、この部分の表面平滑性が高いフィルムを得ようとする場合に、その製膜が困難となると共に、フィルムの機械的強度が低下し、ナーリング加工時や加工後にフィルムが破断し易くなる。
【0026】
また、ナーリング加工部13の平均厚みをTn(μm)とした場合、ナーリング高さ(Tn−T(μm))は3〜30μmの範囲内であることが好ましく、3〜15μmの範囲内であることがより好ましく、3〜7μmの範囲内であることが更に好ましい。(Tn−T(μm))が3μm未満であると、フィルムを巻き取る際の巻きズレや巻き緩み、厚みムラに起因する外観不良などの発生を抑制する効果が低下する。その一方、(Tn−T(μm))が30μmを超えると、ナーリング加工部13での破断が発生し易くなる場合がある。
【0027】
ナーリング加工部13は、高分子樹脂フィルム1における幅手方向の両端部に帯状に形成されていれば特に限定されない。例えば、図2(a)に示すように、高分子樹脂フィルム1の端から所定の距離だけ離間した位置に形成してもよく、図2(b)に示すように、高分子樹脂フィルム1の端に一致させてもよい。
【0028】
また、ナーリング加工部13の幅Wは、高分子樹脂フィルム1の幅に対し1〜5%の範囲内であることが好ましく、1〜2%の範囲内であることがより好ましい。1%未満であると、ナーリング加工部13の幅が狭すぎるために、フィルムの巻き取りの際に生じる巻きズレ等の防止効果が低減する場合がある。また、5%を超えると、光学特性を発揮させる有効部分が狭くなり、製造コストが上昇する場合がある。
【0029】
レーザー照射により熱溶融、又はアブレーションされて形成された凹部14を平面視した場合、その平面形状は円形状である。これにより、例えば、フィルムに押圧力が加わった場合にも、応力は各凹部14を中心にして周囲に均等に分散されるので、亀裂が生じがたい。
【0030】
ナーリング加工部13における凹凸パターンは特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。具体的には、例えば千鳥状、格子状等が例示できる。また、凹凸パターンは均一であってもよく、領域毎に凹凸パターンを異ならせて不均一にしてもよい。更に、凹部14の密度についても特に限定されないが、10〜1000個/cmの範囲内であることが好ましく、50〜200個/cmの範囲内であることがより好ましい。密度が10個/cm未満であると、フィルムの巻き取りの際に生じる、巻きズレ等の防止効果が低減する場合がある。また、1000個/cmを超えると、ナーリング加工部13での破断が発生し易くなる場合がある。
【0031】
前記ナーリング加工部13は、レーザー照射により加工されたものである。使用するレーザー光としては特に限定されず、例えば、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、XeClエキシマレーザー、YAGレーザーの第3高調波若しくは第4高調波、YLF若しくはYVOの固体レーザーの第3高調波若しくは第4高調波、Ti:Sレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー又は炭酸ガスレーザー等を使用することができる。これらのレーザー光のうち、本発明においては炭酸ガスレーザーが高出力による生産性向上の点で好ましい。
【0032】
レーザー照射の出力は、1〜20Wの範囲内であることが好ましく、5〜15Wの範囲内であることがより好ましい。レーザー照射の出力を1W以上にすることにより、レーザー照射量が不足するのを防止して高分子樹脂フィルム1の表面に対するナーリング加工が十分に施される様にできる。その一方、20W以下にすることにより、高分子樹脂フィルム1に貫通孔が生じるのを防止すると共に、照射周辺部への熱的影響を抑制し、微細加工幅が拡大するなどして所望の微細パターンが得られなくなるのを防止することができる。
【0033】
本発明では、レーザーを用いたナーリング加工を行うので、レーザーの高分子樹脂フィルム1に対する照射位置を適宜変更することにより、凹凸パターンを種々必要に応じて変更することができる。また、不規則なピッチ間隔となるように凹凸パターンを形成することもできる。この点で、凹凸パターンを変更する場合に、異なる凹凸パターンのロールに交換する必要があるエンボスロールと比較して、作業性の向上及び製造コストの低減が図れる。
【0034】
レーザー光の集光径は、凹部14の大きさに応じて適宜設定され得る。従って、集光径を調節することにより、凹部14の大きさの制御が可能になる。集光径は、100〜500μmが好ましく、200〜300μmがより好ましい。集光径が100μm未満であると、凹部14のピッチ間隔が大きくなり過ぎて、フィルムの巻き取りの際に生じる、巻きズレ等の防止効果が低減する場合がある。また、集光径が500μmを超えると、ナーリング加工部13での破断が発生し易くなる場合がある。
【0035】
レーザーの照射回数はその出力にもよるが、通常は1回の照射で凹部14が形成される。従って、ナーリング加工は、高分子樹脂フィルム1を所定のライン速度で搬送させながら、レーザー照射位置を所定の加工ライン上に沿って移動させ、ナーリング加工を行う。レーザーの走査は、ガルバノスキャンまたはX−Yステージスキャンを用いた方法や、マスクイメージング方式による方法が用いられる。
【0036】
尚、本発明においては、ナーリング加工により形成される凹凸パターンとして、バーコードデータを印字することも可能である。これにより、原反フィルムの管理が可能になる。また、従来のロールエンボスを用いたナーリング加工の場合、高分子樹脂フィルムのライン速度等が変更されると、ロール温度、押圧力及びロール材質などの種々の煩雑な設定条件をその都度変更する必要があった。しかし、本発明のレーザー照射を用いたナーリング加工であると、ライン速度等が変更されてもその様な設定条件を特に変更することなく、ナーリング加工が可能である。
【0037】
前記高分子樹脂フィルム1の引張強度は100MPa以下、好ましくは50〜90MPaである。更に、高分子樹脂フィルム1の引張伸度は80%以下、好ましくは1〜30%である。
【0038】
高分子樹脂フィルム1としては、透明保護フィルムなどの光学フィルムが挙げられる。透明保護フィルムは、偏光子の少なくとも片面に積層し偏光板として使用される。透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物があげられる。なお、偏光子の片側には、透明保護フィルムが接着剤層により貼り合わされるが、他の片側には、透明保護フィルムとして、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることができる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などがあげられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0039】
また、透明保護フィルムとしては、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、例えば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物があげられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムがあげられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。これらのフィルムは位相差が小さく、光弾性係数が小さいため偏光板の歪みによるムラなどの不具合を解消することができ、また透湿度が小さいため、加湿耐久性に優れる。
【0040】
透明保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。透明保護フィルムは、5〜150μmの場合に特に好適である。
【0041】
なお、偏光子の両側に透明保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムを用いてもよい。
【0042】
本発明の透明保護フィルムとしては、セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂および(メタ)アクリル樹脂から選ばれるいずれか少なくとも1つを用いるのが好ましい。
【0043】
セルロース樹脂は、セルロースと脂肪酸のエステルである。このようセルロースエステル系樹脂の具体例としでは、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリプロピオニルセルロース、ジプロピオニルセルロース等があげられる。これらのなかでも、トリアセチルセルロースが特に好ましい。トリアセチルセルロースは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。トリアセチルセルロースの市販品の例としては、富士フイルム社製の商品名「UV−50」、「UV−80」、「SH−80」、「TD−80U」、「TD−TAC」、「UZ−TAC」や、コニカ社製の「KCシリーズ」等があげられる。一般的にこれらトリアセチルセルロースは、面内位相差(Re)はほぼゼロであるが、厚み方向位相差(Rth)は、〜60nm程度を有している。
【0044】
なお、厚み方向位相差が小さいセルロース樹脂フィルムは、例えば、上記セルロース樹脂を処理することにより得られる。例えばシクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤を塗工したポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ステンレスなどの基材フィルムを、一般的なセルロース系フィルムに貼り合わせ、加熱乾燥(例えば80〜150℃で3〜10分間程度)した後、基材フィルムを剥離する方法;ノルボルネン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂などをシクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤に溶解した溶液を一般的なセルロース樹脂フィルムに塗工し加熱乾燥(例えば80〜150℃で3〜10分間程度)した後、塗工フィルムを剥離する方法などがあげられる。
【0045】
また、厚み方向位相差が小さいセルロース樹脂フィルムとしては、脂肪置換度を制御した脂肪酸セルロース系樹脂フィルムを用いることができる。一般的に用いられるトリアセチルセルロースでは酢酸置換度が2.8程度であるが、好ましくは酢酸置換度を1.8〜2.7に制御することによってRthを小さくすることができる。上記脂肪酸置換セルロース系樹脂に、ジブチルフタレート、p−トルエンスルホンアニリド、クエン酸アセチルトリエチル等の可塑剤を添加することにより、Rthを小さく制御することができる。可塑剤の添加量は、脂肪酸セルロース系樹脂100重量部に対して、好ましくは40重量部以下、より好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部である。
【0046】
環状ポリオレフィン樹脂の具体例としては、好ましくはノルボルネン系樹脂である。環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂があげられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、ならびに、それらの水素化物などがあげられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーがあげられる。
【0047】
環状ポリオレフィン樹脂としては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR株式会社製の商品名「アートン」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学株式会社製の商品名「APEL」があげられる。
【0048】
(メタ)アクリル樹脂としては、下記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸アルキルエステルの構造単位および一般式(2)で表されるグルタル酸無水物の構造単位を有するものが挙げられる。
【0049】
【化1】

【0050】
一般式(1)中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。Rは水素原子または炭素数1〜6の脂肪族、もしくは脂環式炭化水素基を示す。
【0051】
【化2】

【0052】
一般式(2)中、R、Rは、同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。
【0053】
前記アクリル樹脂としては、特開2004−70290号公報、特開2004−70296号公報、特開2004−163924号公報、特開2004−292812号公報、特開2005−314534号公報、特開2006−131898号公報、特開2006−206881号公報、特開2006−265532号公報、特開2006−283013号公報、特開2006−299005号公報、特開2006−335902号公報などに記載のものがあげられる。
【0054】
上記アクリル樹脂における、一般式(1)で表される構造単位の含有割合は、好ましくは50〜95モル%、より好ましくは55〜90モル%、さらに好ましくは60〜85モル%、特に好ましくは65〜80モル%、最も好ましくは65〜75モル%である。上記含有割合が50モル%より少ないと、一般式(1)で表される構造単位に由来して発現される効果、例えば、高い耐熱性、高い透明性が十分に発揮されないおそれがある。上記含有割合が95モル%よりも多いと、樹脂が脆くて割れやすくなり、高い機械的強度が十分に発揮できず、生産性に劣るおそれがある。
【0055】
上記アクリル樹脂における、一般式(2)で表される構造単位の含有割合は、好ましくは5〜50モル%、より好ましくは10〜45モル%、さらに好ましくは15〜40モル%、特に好ましくは20〜35モル%、最も好ましくは25〜35モル%である。上記含有割合が5モル%より少ないと、一般式(2)で表される構造単位に由来して発現される効果、例えば、高い光学的特性、高い機械的強度、偏光子との優れた接着性、薄型化が十分に発揮されないおそれがある。上記含有割合が50モル%よりも多いと、例えば、高い耐熱性、高い透明性が十分に発揮されないおそれがある。
【0056】
上記アクリル樹脂における、一般式(2)で表される構造単位は、下記一般式(3)で表される構造単位に含まれていることが好ましい。
【0057】
【化3】

【0058】
一般式(3)中、R、Rは、同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。
【0059】
一般式(2)および(3)中、R、Rは、水素原子またはメチル基が好ましく、両方ともにメチル基であることがより好ましい。
【0060】
一般式(1)で表される不飽和カルボン酸アルキルエステルの構造単位および一般式(2)で表されるグルタル酸無水物の構造単位を有するアクリル樹脂は、基本的には以下に示す方法により製造することができる。
【0061】
即ち、上記アクリル樹脂は、一般式(1)で表される構造単位に対応する不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体と、不飽和カルボン酸単量体とを、共重合して共重合体(a)を得た後、当該共重合体(a)を加熱することにより、当該共重合体(a)中の不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体の構造単位と不飽和カルボン酸単量体の構造単位の分子内環化反応を行い、一般式(2)で表されるグルタル酸無水物の構造単位を共重合体中に導入することにより、得ることができる。
【0062】
不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどがあげられる。これらは1種のみが用いられても良いし、2種以上が併用されても良い。これらの中でも、熱安定性に優れる点で、(メタ)アクリル酸メチルがより好ましく、メタクリル酸メチルが特に好ましい。すなわち、一般式(1)において、Rがメチル基、Rがメチル基であることが特に好ましい。
【0063】
不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−置換アクリル酸、α−置換メタクリル酸などが挙げられ、これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの中でも特に、本発明の効果を十分に発揮させる点で、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0064】
分子内環化反応としては、脱アルコール反応および/または脱水による分子内環化反応が好ましく挙げられる。加熱するとともに分子内環化反応を行う方法としては、特に制限はないが、ベントを有する加熱した押出機に通して製造する方法や窒素気流中または真空下で加熱脱気できる装置内で製造する方法が好ましい。
【0065】
なお、共重合体(a)の製造にあたり、単量体の配合割合は、配合した単量体の総和を100重量%として、不飽和カルボン酸単量体は15〜45重量%が好ましく、より好ましくは20〜40重量%である。また、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体は55〜85重量%が好ましく、より好ましくは60〜80重量%である。不飽和カルボン酸単量体の含有量を15〜45重量%とすることによって、共重合体(a)を加熱した際に上記一般式(3)で表されるグルタル酸無水物単位の含有量が20〜40重量%の好ましい範囲となり、耐熱性、無色透明性、滞留安定性の優れたアクリル樹脂を得ることが可能となる。
【0066】
上記アクリル樹脂中には、一般式(1)で表される構造単位および一般式(2)で表される構造単位以外のその他の構造単位を含んでいても良い。
【0067】
上記アクリル樹脂中には、例えば、前記分子内環化反応に関与していない、不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位を0〜10重量%含有することができる。不飽和カルボン酸由来の構造単位の割合は、0〜5重量%がより好ましく、0〜1重量%であるのがさらに好ましい。上記アクリル樹脂中における不飽和カルボン単量体由来の構造単位を10重量%以下とすることによって、無色透明性、滞留安定性、耐湿性を維持することができる。
【0068】
また、本発明のアクリル樹脂は、前記以外の共重合可能な他のビニル系単量体単位を含有することができる。その他のビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、アリルグリシジルエーテル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリン、N−フェニルマレイミド、メタクリル酸フェニルアミノエチル、スチレン、α−メチルスチレン、p−グリシジルスチレン、p−アミノスチレン、2−スチリル−オキサゾリンなどがあげられる。これらは、1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0069】
上記その他のビニル系単量体の中でも、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系構造単位の含有割合を0〜1重量%とすることが好ましく、より好ましくは0〜0.1重量%である。スチレン系構造単位の含有濃度を0〜1重量%とすることで、位相差の悪化および透明性の低下を防ぐことができる。
【0070】
上記アクリル樹脂は、重量平均分子量が、好ましくは1000〜2000000、より好ましくは5000〜1000000、さらに好ましくは10000〜500000、特に好ましくは50000〜500000、最も好ましくは60000〜150000である。重量平均分子量が上記範囲から外れると、本発明の効果が十分に発揮できないおそれがある。
【0071】
上記アクリル樹脂は、Tg(ガラス転移温度)が、好ましくは110℃以上、より好ましくは115℃以上、さらに好ましくは120℃以上、特に好ましくは125℃以上、最も好ましくは130℃以上である。Tgが110℃以上であることにより、例えば、最終的に偏光板に組み入れた場合に、耐久性に優れたものとなり易い。上記アクリル樹脂のTgの上限値は特に限定されないが、成形性等の点から、好ましくは300℃以下、より好ましくは290℃以下、さらに好ましくは285℃以下、特に好ましくは200℃以下、最も好ましくは160℃以下である。
【0072】
上記アクリル樹脂は、射出成形により得られる成形品の、ASTM−D−1003に準じた方法で測定される全光線透過率が、高ければ高いほど好ましく、好ましくは85%以上.より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率が85%未満であると、透明性が低下し、本来目的とする用途に使用できないおそれがある。
【0073】
本発明の透明保護フィルム中の上記アクリル樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは60〜100重量%、さらに好ましくは70〜100重量%、特に好ましくは80〜100重量%である。本発明の透明保護フィルム中の上記アクリル樹脂の含有量が50重量%未満の場合には、上記アクリル樹脂が本来有する高い耐熱性、高い透明性が十分に反映できないおそれがある。
【0074】
本発明の透明保護フィルムにおいて、上記アクリル樹脂以外に、例えば、アクリル弾性体粒子を含有することができる。透明保護フィルム中にアクリル弾性体粒子が分散されていることにより、透明保護フィルムとして優れた靭性を得ることができる。
【0075】
アクリル弾性体粒子は、ゴム質重合体を含むことが好ましい。ゴム質重合体は、原料モノマーとして、アクリル酸エチルやアクリル酸ブチルなどのアクリル成分を必須成分とし、その他に好ましく含まれる成分として、ジメチルシロキサンやフェニルメチルシロキサンなどのシリコーン成分、スチレンやα−メチルスチレンなどのスチレン成分、アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのニトリル成分、ブタジエンやイソプレンなどの共役ジエン成分、ウレタン成分、エチレン成分、プロピレン成分、イソブテン成分などをあげることができる。これらの中でも、アクリル成分、シリコーン成分、スチレン成分、ニトリル成分、共役ジエン成分から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。ゴム質重合体は、原料モノマー(好ましくは上記各成分)の単独重合体を含んでいても良いし、2種以上の原料モノマーの共重合体を含んでいても良いし、それらの両方を含んでいても良い。より好ましくは、上記の成分を2種以上組み合わせたゴム質重合体であり、例えば、アクリル成分およびシリコーン成分を含むゴム質重合体、アクリル成分およびスチレン成分を含むゴム質重合体、アクリル成分および共役ジエン成分を含むゴム質重合体、アクリル成分、シリコーン成分およびスチレン成分を含むゴム質重合体などが挙げられる。
【0076】
ゴム質重合体には、上記成分の他に、ジビニルベンゼン、アリルアクリレート、ブチレングリコールジアクリレートなどの架橋性成分を含むものも好ましい。
【0077】
ゴム質重合体として、アクリル酸アルキルエステル単位と芳香族ビニル系単位との組み合わせを有する重合体を含むことが好ましい。アクリル酸アルキルエステル単位、中でも、アクリル酸ブチルは、靭性向上に極めて効果的であり、これに芳香族ビニル系単位、例えばスチレンを共重合させることによって、アクリル弾性体粒子の屈折率を調節することができる。
【0078】
アクリル弾性体粒子とアクリル樹脂の屈折率差は、0.01以下であることが好ましい。本発明の透明保護フィルムにおいて高い透明性を得ることができるからである。このように、アクリル弾性体粒子とアクリル樹脂の屈折率差を0.01以下にするための方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、アクリル樹脂を構成する各単量体単位の組成比を調整する方法、アクリル弾性体粒子に含まれるゴム質重合体や各単量体の組成比を調整する方法などが挙げられる。特に、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸アルキルエステルにスチレンなどの芳香族ビニル系単位を共重合し、その共重合比率を調整することによって、アクリル樹脂との屈折率差が小さなアクリル弾性体粒子を得ることができる。
【0079】
アクリル弾性体粒子の平均粒子径としては、好ましくは70〜300nm、より好ましくは100〜200nmである。70nm未満の場合は靭性の改良効果が十分とならないおそれがあり、300nmより大きい場合は耐熱性が低下してしまうおそれがある。
【0080】
本発明の透明保護フィルム中のアクリル弾性体粒子の含有量としては、40重量%以下、好ましくは7〜40重量%、より好ましくは12重量%〜20重量%である。7重量%未満の場合は靭性の改良工化が十分とならないおそれがあり、40重量%を超える場合は耐熱性が低下するおそれがある。
【0081】
また、本発明の透明保護フィルムにおいて、上記アクリル樹脂に併用できる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミドなどの他の熱可塑性樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂があげられる。これらは、本発明の目的を損なわない範囲で配合される。
【0082】
その他、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系などの紫外線吸収剤あるいは酸化防止剤、高級脂肪酸、酸エステル系、酸アミド系、高級アルコールなどの滑剤あるいは可塑剤、モンタン酸、その塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびエチレンワックスなどの離型剤、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、ハロゲン系あるいはリン系やシリコーン系の非ハロゲン系の難燃剤、核剤、アミン系、スルホン酸系、ポリエーテル系などの帯電防止剤、顔料などの着色剤、等の添加剤を含有していてもよい。ただし、適用する用途が要求する特性に照らし、本発明の透明保護フィルムの透明性が低下しない範囲で添加するのが好ましい。これら添加剤は、本発明の透明保護フィルムに対する総含有量としては10重量%以下とするのが好ましい。
【0083】
なお、上記アクリル弾性体粒子、その他の樹脂、上記添加剤は、上記アクリル樹脂を形成するための原料に配合して、アクリル樹脂を製造する際に配合してもよく、アクリル樹脂を製造した後に配合してもよい。
【0084】
前記透明保護フィルムは、正面位相差が40nm未満、かつ、厚み方向位相差が80nm未満であるものが、通常、用いられる。正面位相差Reは、Re=(nx−ny)×d、で表わされる。厚み方向位相差Rthは、Rth=(nx−nz)×d、で表される。また、Nz係数は、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)、で表される。[ただし、フィルムの遅相軸方向、進相軸方向及び厚さ方向の屈折率をそれぞれnx、ny、nzとし、d(nm)はフィルムの厚みとする。遅相軸方向は、フィルム面内の屈折率の最大となる方向とする。]。なお、透明保護フィルムは、できるだけ色付きがないことが好ましい。厚み方向の位相差値が−90nm〜+75nmである保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、透明保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)をほぼ解消することができる。厚み方向位相差値(Rth)は、さらに好ましくは−80nm〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
【0085】
一方、前記透明保護フィルムとして、正面位相差が40nm以上および/または、厚み方向位相差が80nm以上の位相差を有する位相差板を用いることができる。正面位相差は、通常、40〜200nmの範囲に、厚み方向位相差は、通常、80〜300nmの範囲に制御される。透明保護フィルムとして位相差板を用いる場合には、当該位相差板が透明保護フィルムとしても機能するため、薄型化を図ることができる。
【0086】
位相差板としては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板の厚さも特に制限されないが、20〜150μm程度が一般的である。
【0087】
高分子素材としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などがあげられる。これらの高分子素材は延伸等により配向物(延伸フィルム)となる。
【0088】
液晶ポリマーとしては、例えば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のものなどをあげられる。主鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサー部でメソゲン基を結合した構造の、例えばネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコティックポリマーやコレステリックポリマーなどがあげられる。側鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート又はポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサー部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するものなどがあげられる。これらの液晶ポリマーは、例えば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコール等の薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化ケイ素を斜方蒸着したものなどの配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより行われる。
【0089】
位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであって良く、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであっても良い。
【0090】
位相差板は、nx=ny>nz、nx>ny>nz、nx>ny=nz、nx>nz>ny、nz=nx>ny、nz>nx>ny、nz>nx=ny、の関係を満足するものが、各種用途に応じて選択して用いられる。なお、ny=nzとは、nyとnzが完全に同一である場合だけでなく、実質的にnyとnzが同じ場合も含む。
【0091】
例えば、nx>ny>nz、を満足する位相差板では、正面位相差は40〜100nm、厚み方向位相差は100〜320nm、Nz係数は1.8〜4.5を満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nx>ny=nz、を満足する位相差板(ポジティブAプレート)では、正面位相差は100〜200nmを満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nz=nx>ny、を満足する位相差板(ネガティブAプレート)では、正面位相差は100〜200nmを満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nx>nz>ny、を満足する位相差板では、正面位相差は150〜300nm、Nz係数は0を超え〜0.7を満足するものを用いるのが好ましい。また、上記の通り、例えば、nx=ny>nz、nz>nx>ny、またはnz>nx=ny、を満足するものを用いることができる。
【0092】
透明保護フィルムは、適用される液晶表示装置に応じて適宜に選択できる。例えば、VA(Vertical Alignment,MVA,PVA含む)の場合は、偏光板の少なくとも片方(セル側)の透明保護フィルムが位相差を有している方が望ましい。具体的な位相差として、Re=0〜240nm、Rth=0〜500nmの範囲である事が望ましい。三次元屈折率で言うと、nx>ny=nz、nx>ny>nz、nx>nz>ny、nx=ny>nz(ポジティブAプレート,二軸,ネガティブCプレート)の場合が望ましい。VA型では、ポジティブAプレートとネガティブCプレートの組み合わせ、または二軸フィルム1枚で用いるのが好ましい。液晶セルの上下に偏光板を使用する際、液晶セルの上下共に、位相差を有している、または上下いずれかの透明保護フィルムが位相差を有していてもよい。
【0093】
例えば、IPS(In−Plane Switching,FFS含む)の場合、偏光板の片方の透明保護フィルムが位相差を有している場合、有していない場合のいずれも使用できる。例えば、位相差を有していない場合は、液晶セルの上下(セル側)ともに位相差を有していない場合が望ましい。位相差を有している場合は、液晶セルの上下ともに位相差を有している場合、上下のいずれかが位相差を有している場合が望ましい(例えば、上側にnx>nz>nyの関係を満足する二軸フィルム、下側に位相差なしの場合や、上側にポジティブAプレート、下側にポジティブCプレートの場合)。位相差を有している場合、Re=−500〜500nm、Rth=−500〜500nmの範囲が望ましい。三次元屈折率で言うと、nx>ny=nz、nx>nz>ny、nz>nx=ny、nz>nx>ny(ポジティブAプレート,二軸,ポジティブCプレート)が望ましい。
【0094】
なお、前記位相差を有するフィルムは、位相差を有しない透明保護フィルムに、別途、貼り合せて上記機能を付与することができる。
【0095】
前記透明保護フィルムは、接着剤をと塗工する前に、表面改質処理を行ってもよい。具体的な処理としてば、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理、ケン化処理などがあげられる。
【0096】
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
【0097】
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層(例えば、バックライト側の拡散板)との密着防止を目的に施される。
【0098】
またアンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜70重量部程度であり、5〜50重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
【0099】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0100】
前記偏光子と透明保護フィルムとの接着処理には、接着剤が用いられる。接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステル等を例示できる。前記接着剤は、通常、水溶液からなる接着剤として用いられ、通常、0.5〜60重量%の固形分を含有してなる。上記の他、偏光子と透明保護フィルムとの接着剤としては、紫外硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等があげられる。電子線硬化型偏光板用接着剤は、上記各種の透明保護フィルムに対して、好適な接着性を示す。特に、接着性を満足することが困難であったアクリル樹脂に対しても良好な接着性を示す。
【0101】
本発明の偏光板は、前記透明保護フィルムと偏光子を、前記接着剤を用いて貼り合わせることにより製造する。接着剤の塗布は、透明保護フィルム、偏光子のいずれに行ってもよく、両者に行ってもよい。貼り合わせ後には、乾燥工程を施し、塗布乾燥層からなる接着層を形成する。偏光子と透明保護フィルムの貼り合わせは、ロールラミネーター等により行うことができる。接着層の厚さは、特に制限されないが、通常30〜1000nm程度である。
【0102】
本発明の偏光板は、実用に際して他の光学層と積層した積層光学フィルムとして用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に、本発明の偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板に更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
【0103】
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護フィルム等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
【0104】
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。
【0105】
偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板とも言う)が用いられる。1/2波長板(λ/2板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0106】
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青又は黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。更に、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。上記した位相差板の具体例としては、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリアミドの如き適宜なポリマーからなるフィルムを延伸処理してなる複屈折性フィルムや液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであってもよい。
【0107】
また上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板又は反射型偏光板と位相差板を適宜な組み合わせで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組み合わせとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記の如く予め楕円偏光板等の積層光学フィルムとしたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
【0108】
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視角補償位相差板としては、例えば位相差フィルム、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
【0109】
また良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
【0110】
偏光板と輝度向上フィルムを貼り合わせた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。
【0111】
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
【0112】
また、偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層又は3層以上の光学層とを積層したものからなっていてもよい。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。
【0113】
偏光板に前記光学層を積層した積層光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して積層光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板やその他の光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0114】
前述した偏光板や、偏光板を少なくとも1層積層されている積層光学フィルムには、液晶セル等の他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
【0115】
また上記に加えて、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層が好ましい。
【0116】
粘着層は、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤などの粘着層に添加されることの添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層などであってもよい。
【0117】
偏光板や積層光学フィルムの片面又は両面への粘着層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解又は分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で偏光板上または積層光学フィルム上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着層を形成してそれを偏光板上または積層光学フィルム上に移着する方式などがあげられる。
【0118】
粘着層は、異なる組成又は種類等のものの重畳層として偏光板や積層光学フィルムの片面又は両面に設けることもできる。また両面に設ける場合に、偏光板や光学フィルムの表裏において異なる組成や種類や厚さ等の粘着層とすることもできる。粘着層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μmであり、5〜200μmが好ましく、特に10〜100μmが好ましい。
【0119】
粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、上記厚さ条件を除き、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
【0120】
なお本発明において、上記した偏光板を形成する偏光子や透明保護フィルムや積層光学フィルム等、また粘着層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【実施例】
【0121】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0122】
(実施例1〜5)
高分子樹脂フィルムとして、幅1300mmのポリメチルメタクリレートフィルム(PMMA)を用い、その幅手方向の両端部に下記の条件下でレーザー照射によりナーリング加工を行った。結果を下記表1に示す。尚、各実施例でのPMMAフィルムの厚さ及びナーリング高さは、下記表1に示す通りとした。
【0123】
[レーザー光照射装置]
使用したレーザー光照射装置は以下の通りである。
レーザー光源:炭酸ガスレーザー
レーザー波長:9.3μm
最高出力 :20W
【0124】
[レーザー光照射条件]
レーザー出力:10W
スポット径:300μmφ
ライン速度:40m/min
印字幅(ナーリング加工部):フィルムの端から13mm幅
印字密度(凹部の密度):100個/cm
ナーリング加工面:片面のみ
印字(凹部)形状:円形状
【0125】
(実施例6〜10)
本実施例では、ナーリング高さを10μmに変更したこと以外は、それぞれ実施例1〜5と同様にして、ナーリング加工を施した。結果を表1に示す。
【0126】
(実施例11〜15)
本実施例では、ナーリング高さを5μmに変更したこと以外は、それぞれ実施例1〜5と同様にして、ナーリング加工を施した。結果を表1に示す。
【0127】
(比較例1〜5)
本比較例では、レーザー照射に替えてロールエンボスによるナーリング加工を行ったこと以外は、前記実施例1と同様にした。結果を表2に示す。尚、各比較例でのPMMAフィルムの厚さ及びナーリング高さは、下記表2に示す通りとした。また、ロールエンボス条件は、下記の通りである。
【0128】
ライン速度:40m/min
ナーリングロール:鉄ロール
バックアップロール:鉄ロール
ロール温度:180℃
印字幅(ナーリング加工部):フィルムの端から13mm幅
凹凸の密度:約100個/cm
線圧:20kgf/cm
彫刻ロール(誘電加熱ロール)形状:ひし形状
【0129】
(比較例6〜10)
本比較例では、ナーリング高さを10μmに変更したこと以外は、それぞれ比較例1〜5と同様にして、ナーリング加工を施した。結果を表2に示す。
【0130】
(比較例11〜15)
本比較例では、ナーリング高さを5μmに変更したこと以外は、それぞれ比較例1〜5と同様にして、ナーリング加工を施した。結果を表2に示す。
【0131】
(実施例16〜20)
本実施例では、PMMAフィルムに替えてノルボルネン系フィルム(商品名;ゼオノア(品番:ZF14)、日本ゼオン(株)製)を用いたこと以外は、それぞれ実施例1〜5と同様にして、ナーリング加工を施した。結果を表3に示す。
【0132】
(実施例21〜25)
本実施例では、ナーリング高さを10μmに変更したこと以外は、それぞれ実施例16〜20と同様にして、ナーリング加工を施した。結果を表3に示す。
【0133】
(実施例26〜30)
本実施例では、ナーリング高さを5μmに変更したこと以外は、それぞれ実施例16〜20と同様にして、ナーリング加工を施した。結果を表3に示す。
【0134】
(比較例16〜20)
本比較例では、PMMAフィルムに替えてゼオノアフィルム(品番:ZF14、日本ゼオン(株)製)を用いたこと以外は、それぞれ比較例1〜5と同様にして、ナーリング加工を施した。結果を表4に示す。
【0135】
(比較例21〜25)
本比較例では、ナーリング高さを10μmに変更したこと以外は、それぞれ比較例16〜20と同様にして、ナーリング加工を施した。結果を表4に示す。
【0136】
(比較例26〜30)
本比較例では、ナーリング高さを5μmに変更したこと以外は、それぞれ比較例16〜20と同様にして、ナーリング加工を施した。結果を表4に示す。
【0137】
<破断性>
先ず、レーザー照射又はロールエンボスによるナーリング加工の際の破断性を確認した。ナーリング加工中に、ナーリング加工部で割れ、ひび又はノッチ等が発生した場合を破断と判定して×とし、突発的に破断した場合を△、全く破断が生じない場合を○とした。
【0138】
また、ナーリング加工後のフィルムに対しマンドレル(直径2mm)を用いて屈曲し、ナーリング加工部に於ける耐屈曲試験(JIS K 5600−5−1)を行った。ナーリング加工部に割れ、ひび又はノッチ等が発生した場合を破断と判定して×とし、突発的に破断した場合を△、全く破断が生じない場合を○とした。
【0139】
<引張強度及び引張伸度>
引張強度(MPa)及び引張伸度(%)は、ASTM D638に準じて測定した。結果を下記表5に示す。
【0140】
【表1】

【0141】
【表2】

【0142】
【表3】

【0143】
【表4】

【0144】
【表5】

【0145】
(結果)
表1及び3から分かる通り、各実施例では、ナーリング加工時において、ナーリング加工部に割れ、ひび、又はノッチ等が全く発生しないことが確認された。また、フィルムの厚みが40μm以上の場合には、ナーリング加工後に耐屈曲試験を行ってもナーリング加工部に破断が発生しなかった。
【0146】
その一方、表2及び4から分かる通り、各比較例では、ナーリング加工時、又はナーリング加工後の耐屈曲試験において破断が生じることが確認された。特に、フィルム厚みが薄い場合に破断が生じた。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本実施の形態に係るフィルムを模式的に示す断面図であって、同図(a)はナーリング加工が一方の面に施されている様子を示し、同図(b)は両方の面に施されている様子を示す。
【図2】前記フィルムを模式的に示す部分平面図であって、同図(a)は、高分子樹脂フィルムの端から離間した位置にナーリング加工部が設けられた様子を表し、同図(b)は、高分子樹脂フィルムの端に一致させた様子を表す。
【符号の説明】
【0148】
1 高分子樹脂フィルム
10、11 フィルム
12 非加工部
13 ナーリング加工部
14 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子樹脂フィルムの少なくとも何れか一方の面であって、その幅手方向の両端部に、レーザー照射によりナーリング加工が施されて構成されるフィルム。
【請求項2】
前記ナーリング加工が施されていない部分の平均厚みをT(μm)とし、前記ナーリング加工が施された両端部での平均厚みTn(μm)とした場合に、
前記T(μm)が20〜70μmの範囲内であり、Tn−Tが3〜30μmの範囲内である請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記高分子樹脂フィルムの引張強度が100MPa以下であり、かつ、引張伸度が80%以下である請求項1又は2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記高分子樹脂フィルムは光学フィルムである請求項1〜3の何れか1項に記載のフィルム。
【請求項5】
前記光学フィルムは透明保護フィルムである請求項4に記載のフィルム。
【請求項6】
前記透明保護フィルムは、ノルボルネン系フィルム又はアクリル系フィルムであることを特徴とする請求項5に記載のフィルム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のフィルムを、偏光子の少なくとも片面に設けた偏光板。
【請求項8】
高分子樹脂フィルムの少なくとも何れか一方の面であって、その幅手方向の両端部に、所定条件下でレーザーを照射してナーリング加工を施すことを特徴とするフィルムの製造方法。
【請求項9】
レーザー照射の出力を1〜20Wの範囲内にすることを特徴とする請求項8に記載のフィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−40964(P2009−40964A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209962(P2007−209962)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】