説明

フィルム及びその製造方法

【課題】ゴミ等の付着が少なく、微細空孔構造が均一なフィルムをつくる。
【解決手段】フッ素原子を含み前記塗布液の表面張力を低下させる界面活性剤を、有機溶剤とポリマーとを含む塗布液である高分子溶液21に添加する。塗布液21を、支持体である流延バンド26の上に塗布する。塗布して形成された高分子膜40の表面に結露させる。そして、有機溶媒と液滴とを蒸発させることにより、液滴を膜中に入り込ませて空隙を形成する。微細な空孔をもつ構造が、有機溶媒とポリマーとフッ素原子を含み表面張力低下のための界面活性剤とが混合した高分子溶液21を用いることにより形成され、ハニカム構造フィルム12が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己組織化を利用したハニカム状多孔質のフィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学材料や電子材料の分野では、集積度の向上や情報量の高密度化、画像情報の高精細化といった要求が強くなりつつある。また、再生医療分野の研究においては、表面に微細な空孔構造を有する膜が、細胞培養する足場となる基材として有効である(例えば、特許文献1参照)。そのため、それら分野に用いられるフィルムにも微細な構造の形成(微細パターニング)が強く求められている。微細パターニングを行う方法としては、マスクを用いた蒸着法、光化学反応ならびに重合反応を用いた光リソグラフィー技術、レーザーアブレーション技術などの種々の方法が実用化されている。
【0003】
また、特殊な構造を有するポリマーの希薄溶液を高湿度下でキャストすることで、ミクロンスケールのハニカム構造を有する微細空孔フィルムが得られることが知られている(例えば、特許文献2参照)。このフィルムは、面方向に複数の微細な孔が形成されたいわゆる微細空孔フィルムである。さらに、このハニカム構造を有するフィルムに機能性微粒子を含有させたものは、光学及び電子材料として用いられている。例えば、フィルム中に発光材料体を含有させることで、このフィルムは表示デバイスとして用いられる(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
更に、偏光板にも微細空孔が形成されているフィルムが用いられている。このようなフィルムとしては、例えば、モスアイ構造を有する反射防止機能を発現するフィルムがある。このフィルムは、サブμm〜数十μmサイズの規則正しい微細パターンが形成されている。その形成方法の中でも主流であるのは、光リソグラフィーを中心としたマイクロ加工技術を用いた版を作成し、その版の構造をフィルムに転写するトップダウン方式と呼ばれる方法である(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−157574号公報
【特許文献2】特開2002−335949号公報
【特許文献3】特開2003−128832号公報
【特許文献4】特開2003−302532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1〜3に提案される製造方法は、シンプルであり、大面積化も原理的には可能であるものの、実際には、高速製造あるいは大面積化時に面内のばらつきが多いという問題があった。また、特許文献4に記載される方法では、版の作製のために複雑でいくつもの工程を必要とし、高いコストが必要とされる。また、大きな面積の版を製造することが困難であるという問題も生じている。
【0007】
また、上記のような微細空孔フィルムを光学・電子分野や再生医療分野等に用いる場合には、製造時あるいは製造後にごみや微小粒子のフィルムへの付着は極めて好ましくないことであり、ごみや微小粒子の付着を防止する技術も求められている。
【0008】
そこで、本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、ゴミ等の付着が少なく微細空孔構造が均一であるフィルム、及びこのフィルムを大面積で高速かつ安価で連続的もしくは断続的に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のフィルムは、微細空孔構造を有し、該微細空孔構造が、有機溶媒とポリマーとを含む塗布液、及び、フッ素原子を含み前記塗布液の表面張力を低下させる界面活性剤により得られたことを特徴として構成されている。
【0010】
界面活性剤が、フルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位を含むフッ素原子含有ポリマーであることが好ましく、フルオロ脂肪族基含有モノマーが、下記の一般式(1)で表されることが好ましい。
【0011】
【化2】

【0012】
一般式(1)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はメチル基を表す。Lは2価の連結基を表し、mは1以上12以下の整数を表す。Xはフッ素原子又は水素原子を表す。
【0013】
前記界面活性剤の添加量が、総量に対して、0.01〜10質量%であることが好ましく、前記フッ素原子含有ポリマーの質量平均分子量が、2,000〜100,000である事が好ましい。また、前記ポリマーが、疎水性ポリマー及び両親媒性ポリマーから選択される少なくとも1種であることが好ましく、疎水性ポリマーが、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、環状ポリオレフィンの少なくともいずれかひとつであることが好ましい。
【0014】
塗布液が多官能モノマーを含むことが好ましく、微細空孔構造が、自己組織化により作製したハニカム状多孔質構造であることが好ましい。
【0015】
さらに本発明のフィルム製造方法は、支持体上に有機溶媒とポリマーとを含む塗布液を塗布し、かつ、塗布液にフッ素原子を含み前記塗布液の表面張力を低下させる界面活性剤を添加して、得られた膜中に液滴を形成し、前記有機溶媒と液滴とを蒸発させて前記膜中に空孔を有するフィルムを作製するフィルム作製工程を含むことを特徴として構成されている。
【0016】
前記界面活性剤を添加した前記塗布液の表面張力が25mN/m以下であることが好ましく、膜の表面温度をTL(℃)、露点をTD1(℃)とした場合に、0℃≦(TD1−TL)℃となる結露ゾーンを通過させることが好ましい。
【0017】
送風速度と前記膜の相対速度が、0.02m/s以上2m/s以下であるように結露ゾーンで送風し、この風の中の水分を結露させて液滴を形成することが好ましい。露点をTD2(℃)とした場合に、前記膜を、(TL−TD2)℃≧1℃である乾燥ゾーンを通過させることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、ゴミ等の付着が少なく面内の微細構造が均一な微細空孔構造のフィルムを、大面積で高速かつ安価で連続的もしくは断続的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(フィルム)
本発明のフィルムは、微細空孔構造を有し、該微細空孔構造が、有機溶媒とポリマーとを含む塗布液、及び、フッ素原子を含み前記塗布液の表面張力を低下させる界面活性剤(以下、単に「界面活性剤」ともいう。)より得られる。なお、さらに、支持体その他が必要に応じて組み合われた構成であってもよい。前記微細空孔構造は、自己組織化により形成されたハニカム構造もしくはモスアイ構造であることが好ましい。
【0020】
−界面活性剤−
界面活性剤としては、塗布液の表面張力を低下させることができれば特に制限はないが、例えば、フルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位を含むフッ素原子含有ポリマーであることが好ましい。ここで、前記界面活性剤がフッ素原子を含むことは、例えば、原子吸光分析法やICP発光分光分析法などの元素分析をすることにより確認することができる。
【0021】
フルオロ脂肪族基含有モノマーとしては、特に制限はないが、例えば、下記の一般式(1)で表されるモノマーが好ましい。
【0022】
【化3】

【0023】
一般式(1)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はメチル基を表し、水素原子又はメチル基が好ましい。Lは2価の連結基を表す。mは1以上12以下の整数を表し、2〜10が好ましく、4〜8がより好ましく、4又は6が最も好ましい。Xはフッ素原子又は水素原子を表す。
【0024】
前記Lの2価の連結基としては、特に制限はないが、下記一般式(2)で表される構造であることがより好ましい。
(a1)−X10−R20−(b1) ・・・一般式(2)
前記一般式(2)中、(a1)は二重結合側に結合する位置、(b1)はフルオロ脂肪族基側に結合する位置を各々示す。
【0025】
一般式(2)において、X10は単結合、又は(a2)−COO−(b2)、(a2)−COS−(b2)、(a2)−OCO−(b2)、(a2)−CON(R21)−(b2)、(a2)−O−(b2)のいずれかで示される2価の連結基を表す。
ここで、前記(a2)は二重結合側に結合する位置、前記(b2)はR20に結合する位置を各々示す。これらの中でも(a2)−COO−(b2)、(a2)−COS−(b2)、又は(a2)−CON(R21)−(b2)が好ましく、(a2)−COO−(b2)、または(a2)−CON(R21)−(b2)がより好ましく、(a2)−COO−(b2)が特に好ましい。
【0026】
一般式(2)において、R20は、置換基を有していてもよいポリメチレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基等)、置換基を有していてもよいフェニレン基(例えば、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基等)、及びそれらの任意の組み合わせにより形成できる基を表す。これらの中でも、ポリメチレン基がより好ましく、該ポリメチレン基の中でもメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基が好ましく、メチレン基及びエチレン基がより好ましい。
【0027】
21は、水素原子又は炭素数1〜8の置換基を有してもよいアルキル基、あるいは炭素数6〜20の置換基を有してもよいアリール基を表し、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましい。
【0028】
前記一般式(1)で表されるモノマーの具体例としては、以下に示す化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
【化4】

【0030】
【化5】

【0031】
【化6】

【0032】
【化7】

【0033】
【化8】

【0034】
【化9】

【0035】
【化10】

【0036】
【化11】

【0037】
【化12】

【0038】
前記一般式(1)で表されるモノマーが有していてもよい置換基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基、炭素原子数1〜8の鎖状又は環状のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基、炭素原子数7〜12のアラルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数1〜10のアシル基、炭素原子数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素原子数7〜12のアリーロキシカルボニル基、炭素原子数1〜10のカルバモイル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリーロキシ基、炭素原子数2〜12のアシルオキシ基、炭素原子数1〜12のスルホニルオキシ基、炭素原子数0〜10のアミノ基、炭素原子数1〜10のアシルアミノ基、炭素原子数1〜8のスルホニルアミノ基、炭素原子数1〜10のウレイド基、炭素原子数2〜10のウレタン基、炭素原子数1〜12のアルキルチオ基、炭素原子数6〜12のアリールチオ基、炭素原子数1〜8のアルキルスルホニル基、炭素原子数7〜12のアリールスルホニル基、炭素原子数0〜8のスルファモイル基、複素環基などが挙げられる。
【0039】
本発明に用いるフッ素原子含有ポリマーは、前記一般式(1)で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマー以外に、共重合可能な他のモノマーを一種以上重合単位として含む共重合体であってもよい。このような共重合可能な他のモノマーとしては、PolymerHandbook 2nd ed.,J.Brandrup,Wiley lnterscience(1975)Chapter 2Page 1〜483記載のものを用いることができる。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物などを挙げることができる。
【0040】
前記共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、イタコン酸ジアルキル類、フマル酸のジアルキルエステル類又はモノアルキルエステル類などが挙げられる。
【0041】
前記アクリル酸エステル類としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、クロルエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ポリ(オキシアルキレン)アクリレートなどが挙げられる。
【0042】
前記メタクリル酸エステル類としては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、クロルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリ(オキシアルキレン)メタクリレートなどが挙げられる。
【0043】
前記アリル化合物としては、例えば、アリルエステル類、アリルオキシエタノールなどが挙げられる。
【0044】
前記アリルエステル類としては、例えば、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリルなどが挙げられる。
【0045】
前記ビニルエーテル類としては、例えば、アルキルビニルエーテルなどが挙げられる。前記アルキルビニルエーテルとしては、例えば、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、1−メチル−2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0046】
前記ビニルエステル類としては、例えば、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロルアセテート、ビニルジクロルアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β―フェニルブチレート、ビニルシクロヘキシルカルボキシレートなどが挙げられる。
【0047】
前記イタコン酸ジアルキル類としては、例えば、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ブチルなどが挙げられる。
【0048】
前記フマル酸のジアルキルエステル類又はモノアルキルエステル類としては、例えば、ジブチルフマレートなどが挙げられる。
【0049】
その他、前記共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイロニトリル、スチレンなども挙げられる。
【0050】
本発明に用いられるフッ素原子含有ポリマーには、一つのポリマー中に2種類以上のフルオロ脂肪族基含有モノマーが含まれていてもよく、一般式(1)で表されるモノマーが2種以上含まれていてもよい。また、一般式(1)で表されるモノマーと共重合可能なモノマーを1種以上共重合成分として含んでもよい。
【0051】
本発明に用いられるフッ素原子含有ポリマー中、フルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位の含有量は、該フッ素原子含有ポリマーを構成する全重合単位に対して、25〜99質量%であることが最も好ましい。この含有量は、前記一般式(1)におけるXがフッ素原子の場合には25〜60質量%であることがより好ましく、30〜50質量%であることが更に好ましく、35〜45質量%であることが特に好ましい。また、前記Xが水素原子の場合には、50〜99質量%であることがより好ましく、60〜97質量%であることが更に好ましく、70〜95質量%であることが最も好ましい。
【0052】
本発明に用いられるフッ素原子含有ポリマーの質量平均分子量は、2,000〜100,000が好ましく、3,000〜80,000がより好ましく、4,000〜60,000が特に好ましい。ここで、質量平均分子量及び分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(いずれも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した分子量である。
【0053】
前記フッ素原子含有ポリマーは、公知の方法で製造することができる。例えば、前述のフルオロ脂肪族基を有するモノマー、アミド基を有する単量体等に、有機溶媒中で、汎用のラジカル重合開始剤を添加し、重合させることにより製造できる。また、必要に応じて、その他の付加重合性不飽和化合物を添加して、上記と同様の方法にて製造することができる。更に、各モノマーの重合性に応じ、反応容器にモノマーと開始剤を滴下しながら重合する滴下重合法なども、均一な組成のポリマーを得るために有効である。また、用いるモノマーの種類によってはアニオン重合、カチオン重合、乳化重合などの方法を用いてもよい。
【0054】
以下、前記含フッ素原子含有ポリマーの具体的な構造の例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。なお式中の数字は各モノマー成分の質量比率を示す。Mwは質量平均分子量を表す。
【0055】
【化13】

【0056】
【化14】

【0057】
【化15】

【0058】
【化16】

【0059】
【化17】

【0060】
【化18】

【0061】
【化19】

【0062】
本発明では、前記フッ素原子含有ポリマーを1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
前記界面活性剤の添加量は、総量に対して0.01質量%〜10質量%であることが好ましい。すなわち、界面活性剤の質量をx1、フィルムの質量をy1とするときに、100×x1/y1で求める値が0.01(質量%)以上10(質量%)以下となるように、塗布液に対して界面活性剤を添加することが好ましい。なお、界面活性剤は、塗布液に対して添加することには限定されない。例えば、界面活性剤と塗布液の他の原料と混ぜて塗布液としてもよい。界面活性剤の添加量は、0.05質量%〜5質量%であることがより好ましく、0.1質量%〜3質量%であることが更に好ましく、0.1質量%以上1質量%未満であることが最も好ましい。
【0064】
<塗布液>
前記塗布液は、有機溶媒とポリマーとを含み、必要に応じて、多官能モノマー、光重合開始剤、その他の成分を含む。
【0065】
−有機溶媒−
前記有機溶媒としては、ポリマーを溶解させることができる溶媒であれば特に制限はない。例えば、クロロホルム、ジクロロメタン,四塩化炭素、シクロヘキサン、酢酸メチルなどが挙げられる。
【0066】
また、キャストするときの塗布液のポリマー濃度は、キャスト膜を形成できる濃度であれば良く、例えば、0.01質量%以上30質量%以下の範囲であることが好ましい。前記ポリマー濃度が0.01質量%未満であると、フィルムの生産性に劣り工業的大量生産に適さないおそれがある。また、前記ポリマー濃度が30質量%を超える濃度であると、後述する結露乾燥工程において水滴の成長が十分に行われないうちに乾燥してしまうため、好ましい孔サイズをもつような微細空孔構造をつくることが困難になることがある。
【0067】
−ポリマー−
前記ポリマーとしては、特に制限はなく、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、疎水性ポリマー及び両親媒性ポリマーから選択される少なくとも1種が好適である。
【0068】
−−疎水性ポリマー−−
前記疎水性ポリマーとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビニル重合ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロペン、ポリビニルエーテル、ポリビニルカルバゾール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリテトラフルオロエチレンなど)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸など)、ポリラクトン(例えばポリカプロラクトンなど)、ポリアミド又はポリイミド(例えば、ナイロンやポリアミド酸など)、ポリウレタン、ポリウレア、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアロマティックス、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリシロキサン誘導体、セルロースアシレート(トリアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート)などが挙げられる。これらは、溶解性、光学的物性、電気的物性、膜強度、弾性等の観点から、必要に応じてホモポリマーとしてもよいし、コポリマーやポリマーブレンドの形態をとってもよい。なお、これらのポリマーは必要に応じて2種以上のポリマーの混合物として用いてもよい。光学用途に使う場合には、例えば、セルロースアシレート、環状ポリオレフィンなどが好ましい。
【0069】
前記両親媒性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアクリルアミドを主鎖骨格とし、疎水性側鎖としてドデシル基、親水性側鎖としてカルボキシル基を併せ持つ両親媒性ポリマー、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、などが挙げられる。
【0070】
前記疎水性側鎖は、アルキレン基、フェニレン基等の非極性直鎖状基であり、エステル基、アミド基等の連結基を除いて、末端まで極性基やイオン性解離基などの親水性基を分岐しない構造であることが好ましい。該疎水性側鎖としては、例えば、アルキレン基を用いる場合には5つ以上のメチレンユニットからなることが好ましい。
前記親水性側鎖は、アルキレン基等の連結部分を介して末端に極性基やイオン性解離基、又はオキシエチレン基などの親水性部分を有する構造であることが好ましい。
【0071】
前記疎水性側鎖と前記親水性側鎖との比率は、その大きさや非極性、極性の強さ、疎水性有機溶媒の疎水性の強さなどに応じて異なり一概には規定できないが、ユニット比(疎水性側鎖/親水性側鎖)は3/1〜1/3が好ましい。また、コポリマーの場合、疎水性側鎖の親水性側鎖の交互重合体よりも、疎水性溶媒への溶解性に影響しない範囲で疎水性側鎖と親水性側鎖がブロックを形成するブロックコポリマーであることが好ましい。
【0072】
前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性ポリマーの数平均分子量(Mn)は、1,000〜10,000,000が好ましく、5,000〜1,000,000がより好ましい。
【0073】
前記疎水性ポリマーだけでもハニカム構造フィルムを形成することができるが、両親媒性ポリマーと共に用いることが好ましい。
【0074】
前記疎水性ポリマーと前記両親媒性ポリマーとの組成比率(質量比率)は、99:1〜50:50が好ましく、98:2〜70:30がより好ましい。前記両親媒性ポリマーの比率が1質量%未満であると、均一なハニカム構造体が得られなくなることがある。一方、前記両親媒性ポリマーの比率が50質量%を超えると、膜の安定性、特に力学的な安定性が十分に得られなくなることがある。
【0075】
前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性ポリマーは、分子内に重合性基を有する重合性(架橋性)ポリマーであることも好ましい。また、前記疎水性ポリマー及び/又は前記両親媒性ポリマーとともに、重合性の多官能モノマーを配合し、この配合物によりハニカム膜を形成した後、熱硬化法、紫外線硬化法、電子線硬化法等の公知の方法によって硬化処理を施すことも好ましい。
【0076】
前記疎水性ポリマー及び/又は前記両親媒性ポリマーと併用される多官能モノマーとしては、反応性の点から多官能(メタ)アクリレートが好ましい。前記多官能(メタ)アクリレートの例としては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレ−ト、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールカプロラクトン付加物へキサアクリレート又はこれらの変性物、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマ−、N−ビニル−2−ピロリドン、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、又はこれらの変性物などが使用できる。これらの多官能モノマーは耐擦傷性と柔軟性のバランスから、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0077】
前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性ポリマーは、分子内に重合性基を有する重合性(架橋性)ポリマーである場合には、前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性ポリマーの重合性基と反応しうる重合性の多官能モノマーを併用することも好ましい。
【0078】
前記エチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤又は熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、マット粒子及び無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線又は熱による重合反応により硬化して反射防止フィルムを形成することができる。
【0079】
前記光ラジカル開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−アルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。
【0080】
前記アセトフェノン類としては、例えば、2,2−エトキシアセトフェノン、p−メチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンなどが挙げられる。
【0081】
前記ベンゾイン類としては、例えば、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどが挙げられる。
【0082】
前記ベンゾフェノン類としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4−クロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0083】
前記ホスフィンオキシド類としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドなどが挙げられる。
【0084】
前記光ラジカル開始剤としては、最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)にも種々の例が記載されている。また、市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア(651,184,907)等が好ましい例として挙げられる。
【0085】
前記光ラジカル開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、1〜10質量部の範囲で使用することがより好ましい。
【0086】
なお、前記光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。外光増感剤の具体例とし
て、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトン、チオキサントン、などが挙げられる。
【0087】
前記熱ラジカル開始剤としては、例えば、有機過酸化物、無機過酸化物、有機アゾ化合物、有機ジアゾ化合物、などを用いることができる。
【0088】
具体的には、有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシドなどが挙げられる。前記無機過酸化物としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等が挙げられる。前記アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(プロピオニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等が挙げられる。前記ジアゾ化合物としては、例えば、ジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等が挙げられる。
【0089】
前記自己組織化により作製したハニカム状多孔質構造とは、一定形状、一定サイズの空孔が連続かつ規則的に配列している構造を意味する。この規則配列は単層の場合には二次元的であり、複層の場合は三次元的にも規則性を有する。この規則性は二次元的には1つの空孔の周囲を複数(例えば、6つ)の空孔が取り囲むように配置され、三次元的には結晶構造の面心立方や6方晶のような構造を取って、最密充填されることが多いが、製造条件によってはこれら以外の規則性を示すこともある。
【0090】
前記微細空孔構造における空孔の直径は、30μm以下が好ましく、0.01μm以上10μm以下がより好ましい。前記空孔の直径が30μmを超えると、各強度が低下し、延伸過程で破断しやすくなることがある。
【0091】
ここで、前記微細空孔構造の孔径を小さくするためには、迅速乾燥を促すことが有効である。例えば、前記使用溶媒として低沸点溶媒を使用したり、支持体温度を上げたり、展開速度を早くして初期の展開液厚を薄くすることなどが有効である。
【0092】
前記フィルムの厚みは、およそ孔径〜200μmであるが、展開するポリマー濃度を高めることにより、支持体側に空孔のない肉厚の層を設けることもできる。この場合、前記空孔のない肉厚の層の厚みは1〜500μmの範囲内で制御可能である。
【0093】
<支持体>
本発明のフィルムは、支持体を有することが好ましい。支持体としては、透明で、ある程度の強度を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス、金属、シリコンウエハ等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリアミド、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエーテルケトン、ポリフッ化エチレン等の耐有機溶媒性に優れた有機材料;水、流動パラフィン、液状ポリエーテル等の液体、などが挙げられる。
【0094】
前記支持体の厚みは、通常採用される範囲の厚さであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.02〜4.0mmであるのが好ましい。
【0095】
(フィルムの製造方法)
本発明のフィルムの製造方法は、フィルム作製工程を含んでなり、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0096】
−フィルム作製工程−
前記フィルム作製工程は、有機溶媒とポリマー(以下、「高分子化合物」ともいう)とを含む塗布液に、前記塗布液の表面張力を低下させる界面活性剤を添加して支持体上にキャストして膜を形成し、該膜中に液滴を形成し、前記有機溶媒及び前記液滴を蒸発させて前記膜中に空孔を有するフィルムを作製する工程である。
【0097】
前記キャスト法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スライド法、エクストリュージョン法、バー法、グラビア法、などが挙げられる。
【0098】
前記成膜を行う環境としては、相対湿度が50〜95%の範囲にあることが好ましい。前記相対湿度が50%未満であると、溶媒表面での水の凝結が不十分となることがあり、95%を超えると、環境のコントロールが難しく、均一な成膜を維持しにくくなることがある。
【0099】
また、前記成膜を行う環境として、相対湿度のほかに風量が一定の定常風を当てることが好ましい。膜との相対風速は0.02〜2m/sが好ましい。前記風速が0.02m/s未満であると、環境のコントロールが困難になることがあり、2m/sを超えると、溶媒表面の乱れを引き起こし、均一な膜が得にくくなることがある。
【0100】
また、定常風を当てる方向は、支持体面に対して0〜90°のいずれの方向であっても製造可能だが、ハニカム構造体の均一性を高めるためには0〜60°が好ましい。
【0101】
前記成膜の際に送る湿度と流量を制御した気体としては、例えば、空気の他、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスを用いることができるが、事前にフィルターを通過させるなどの除塵処置を施すことが好ましい。雰囲気中の塵は水蒸気の凝結核となって成膜に影響を及ぼすため、製造現場にも除塵設備等を設置することが好ましい。
【0102】
前記成膜を行う環境は、市販の定露点湿度発生装置等を用いるなどして厳密に管理することが好ましい。風量は送風装置等で一定に制御し、外気による影響を防ぐために閉鎖された空間を用いることが好ましい。また、室内は気体が層流にて置換されるよう気体の導入出路及び成膜環境を設定しておくことが好ましい。更に、成膜品質を管理するために温度、湿度、流量等の計測器によるモニターを行うことが好ましい。孔径及び膜厚を高精度で制御するためには、これらのパラメータ(特に湿度、流量)を厳密に管理することが必須である。
【0103】
ここで、本発明に係るフィルムの製造工程図を図1に示す。高分子溶液をキャスト工程10により支持体上にキャストし、膜(以下、「高分子膜」と称することがある)を形成する。その後に、結露乾燥工程11により、高分子膜の表面に水を結露させ高分子膜中に液滴として含有させる。なお、結露乾燥工程11は、後に詳細に説明する。高分子溶液の溶媒及び液滴を蒸発させて微細空孔を有するフィルム12を得る。なお、高分子膜からフィルム12を得るまでの間に、すなわち、キャスト工程10と結露乾燥工程11との間と結露乾燥工程11の中との少なくともいずれか一方で、高分子膜に対して光を照射する照射工程を行うこともできる。その場合には、照射光として紫外線や電子線を用いることができる。
【0104】
フィルム12の素材としては、上述したような非水溶性溶媒に溶解する高分子化合物(以下、「疎水性ポリマー化合物」と称することもある)を好ましく用いることができる。また、前記疎水性ポリマーだけでもフィルム12を形成することができるが、両親媒性の素材を共に用いることが好ましい。両親媒性の素材としては、上述したものを適宜選択して用いることができる。
【0105】
前記各高分子化合物を溶解させて高分子溶液を調製する溶媒(有機溶媒)としては、上述したものを適宜選択して用いることができる。
【0106】
前記界面活性剤を添加した前記有機溶媒と高分子化合物とを含む塗布液の表面張力は、25mN/m以下であることが好ましく、10〜23mN/mがより好ましく、12〜21mN/mが特に好ましい。
【0107】
次に、図2に、本発明に係るフィルム12(以下、「ハニカム構造フィルム」ともいう)を製造するフィルム製造設備20の概略図を示す。前記高分子溶液21がタンク22に入れられている。タンク22には攪拌翼23が備えられ、攪拌翼23が回転することで、高分子溶液21を均一に混合している。高分子溶液21は、ポンプ24により流延ダイ25に送液される。流延ダイ25は、流延ベルト26上に備えられている。また、流延ベルト26は、回転ローラ27,28に掛け渡されている。回転ローラ27,28が図示しない駆動装置により回転することで、流延ベルト26は無端で走行する。また、回転ローラ27,28には温調機29が取り付けられている。回転ローラ27,28の温度を調整することで、流延ベルト26の温度調整を可能としている。また、流延ベルト26上の高分子膜40を剥ぎ取る際に、高分子膜40を支持する剥取ローラ30,高分子膜40をフィルムとして巻き取る巻取機31も備えられている。
【0108】
キャスト工程10では、流延ダイ25から流延ベルト26上に高分子溶液21がキャスト(流延)され高分子膜40が形成される。続いて、結露乾燥工程11(図1参照)を行う。結露乾燥工程11は、図3(a)〜図3(d)と合わせて説明する。図3(a)に示すように高分子膜40は流延ベルト26の上に形成される。なお、高分子膜40の表面温度(以下、「膜面温度」と称することがある)をTL(℃)とする。本発明において、膜面温度TLは0℃以上であることが好ましい。膜面温度TLが0℃未満であると、高分子膜40中の液滴が凝固して所望の孔が形成されないおそれが生じる。
【0109】
流延が行われる流延室内は、図2に示すように結露ゾーン32と乾燥ゾーン33とに区画されている。結露ゾーン32には送風機34が備えられている。送風機34から結露用に調整されている風35を流延ベルト26上の高分子膜40に送風する。送風機34は、図2に示されているように送風口34a,34c,34eと吸引口34b,34d,34fとからなる複数の送風ユニットから構成されていることが好ましい。これにより、高分子膜40の結露条件を調整することが容易となる。なお、図2では、3ユニットから構成されているものを示しているが、本発明においては図示されている形態に限定されるものではない。
【0110】
乾燥ゾーン33には、乾燥機36が設けられている。乾燥機36から高分子膜40に乾燥風37を送風する。乾燥機36も、図2に示されているように送風口36a,36c,36e,36gと吸引口36b,36d,36f,36hとからなる複数の送風ユニットから構成されていることが好ましい。これにより、高分子膜40の乾燥条件を調整することが容易となる。なお、図2では、4ユニットから構成されているものを示しているが、本発明においては図示されている形態に限定されるものではない。
【0111】
温調機29を用いて回転ローラ27,28を介して流延ベルト26の温度調整を行うことがより好ましい。温度調整の方法としては、回転ローラ27,28の内部に液流路を設け、その液流路に伝熱媒体を送液することで調整する方法などが挙げられる。温度の調整は、下限値を流延ベルト26の温度を0℃以上とすることが好ましい。また、上限値は高分子溶液21の溶媒沸点以下とすることが好ましく、より好ましくは(溶媒沸点−3℃)とすることである。これにより、結露した水分が凝固することも無く、また高分子溶液21の溶媒が急激に蒸発することが抑制されるため、形状に優れるハニカム構造フィルム12を得ることができる。更に、温度調整は、高分子膜40の幅方向にわたって、温度分布を±3℃以内とすることにより、膜面温度の分布も±3℃以内となる。高分子膜40の幅方向の温度分布を減少させることにより、ハニカム構造フィルム12の孔の形成に異方性が生じることが抑制されるので、商品価値が向上する。
【0112】
また、流延ベルト26の搬送方向を水平方向に対して±10°以内とすることが好ましい。同様に、搬送方向に対して90°の方向である幅方向における高分子膜40も、水平方向に対して±10°以内とすることが好ましい。搬送方向、幅方向を調整することにより液滴44の形態を調整することができる。液滴44の形態を調整することにより、孔の形態を調整することが可能となる。
【0113】
送風機34から風35が送風されている。風35の露点TD1(℃)は、結露ゾーン32を通過する高分子膜40の表面温度TL(℃)に対して0℃≦(TD1−TL)℃が好ましく、0℃≦(TD1−TL)℃≦80℃がより好ましく、5℃以上60℃以下が更に好ましく、10℃以上40℃以下が特に好ましい。前記(TD1−TL)℃が0℃未満であると、結露が生じ難くなることがあり、80℃を超えると、結露と乾燥とが急峻となり、孔寸法制御やその均一化することが困難となることがある。また、風35の温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、5℃以上100℃以下が好ましい。前記風の温度が5℃未満であると、液特に水の蒸発が生じ難く、形状が良好なハニカム構造フィルム12を得ることができないおそれがある。また、100℃を超えると、高分子膜40内に液滴44が生じる前に、水蒸気として揮発してしまうおそれがある。
【0114】
図3(a)に示すように結露ゾーン32で風35中の水分(モデル的に図示している)43は、高分子膜40上で結露して液滴44となる。そして、図3(b)に示すように液滴44を核として水分43が結露して液滴44を成長させる。図3(c)に示すように乾燥ゾーン33で乾燥風37が高分子膜40に送風されると、有機溶媒42が高分子膜40より蒸発する。なお、この際にも液滴44からも水分が蒸発するが、有機溶媒42の蒸発速度の方が速い。そのため、液滴44は、有機溶媒42の蒸発に伴い表面張力により略均一の形態となる。更に、乾燥が進行すると図3(d)に示すように高分子膜40の液滴44から水分が水蒸気48として蒸発する。高分子膜40から液滴44が蒸発すると、液滴44を形成していた箇所が孔47となり、図4(a)及び(b)に示すようなハニカム構造フィルム12が得られる。
【0115】
本発明においてハニカム構造フィルム12の形態は特に限定されるものではないが、具体的には、隣接する孔47の距離L2は、それらの中心間距離で0.05μm以上100μm以下に制御することができる。なお、このハニカム構造フィルム12は、液滴44の半分以上が高分子膜40の内部に入り込んでつくられたものであるので、表面における孔の開孔径D1が孔の径D2よりも小さい。また、液滴44と液滴44との距離を狭めることにより、孔と孔とを連ねることにより内部に連通路を形成することもできる。このように、本発明は、図4に示す態様に限定されるものではない。上記のように、フッ素系原子を含む界面活性剤により表面張力を低められた塗布液を用いて、ハニカム構造フィルム12を形成する。これにより、ハニカム構造フィルム12には、フッ素系原子を含む界面活性剤が含まれており、これにより、ゴミや埃等が従来のフィルムよりも付着しにくくなる。また、塗布液に該界面活性剤を含ませていることにより、孔がフィルムの内部に均一な大きさでに形成されやすくなる。
【0116】
風35の送風向きは、高分子膜40の移動方向と平行な流れ(並流)の追風とする。風を向流として送風すると、高分子膜40の膜面に乱れが生じて、液滴の成長が阻害されるおそれがある。また、風35の送風速度は、高分子膜40の移動速度との相対速度が0.02m/s以上2m/s以下が好ましく、0.05m/s以上1.5m/s以下がより好ましく、0.1m/s以上1m/s以下が更に好ましい。前記送風速度が0.02m/s未満であると、液滴44が高分子膜40中で充分に成長しないまま高分子膜40が乾燥ゾーン33に搬送されるおそれがある。また、2m/sを超えると、高分子膜40表面に乱れが生じたり、結露が充分に進行しなかったりするおそれがある。
【0117】
高分子膜40が結露ゾーン32を通過する時間は0.1秒以上1000秒以下とすることが好ましい。前記通過時間が0.1秒未満であると、液滴44が充分成長しないまま形成されるため所望の孔を形成することが困難となることがあり、1000秒を超えると、液滴44のサイズが大きくなり過ぎハニカム構造のフィルムを得られないおそれがある。
【0118】
乾燥ゾーン33で高分子膜40を乾燥する乾燥風37の送風速度は、0.02m/s以上20m/s以上が好ましく、0.1m/s以上10m/s以下がより好ましく、0.5m/s以上5m/s以下が更に好ましい。前記送風速度が0.02m/s未満であると、液滴44からの水分の蒸発が充分に進行しないおそれがあり、生産性にも劣ることがあり、20m/sを超えると、液滴44から水分の蒸発が急激に生じて、形成される孔37の形態が乱れるおそれがある。
【0119】
乾燥風37の露点をTD2(℃)とする場合に、膜面温度TL(℃)との関係を(TL−TD2)℃≧1℃とすることが好ましい。これにより、乾燥ゾーン33で高分子膜40の液滴44の成長を停止させて、液滴を構成する水分を水蒸気48として揮発させることが可能となる。
【0120】
送風機34,37からの風の送風は、空気を出す送風口34a,34c,34e,37a,37c,37e,37gと空気を吸引する吸引口34b,34d,34f,37b,37d,37f,37hとを備えるいわゆる2Dノズルで送風する方法以外に、減圧乾燥法により高分子膜40を乾燥することも可能である。減圧乾燥を行うことで、有機溶媒42と液滴44の水分43との蒸発速度を調整することがより容易になる。これを調整することで、高分子膜40中に液滴44を形成し、有機溶媒42を蒸発させつつ液滴44を蒸発させ、前記液滴が設けられている位置に孔47を形成する本発明における孔の大きさ、形状などを変更することができる。
【0121】
また、減圧乾燥法により乾燥する方法や、膜面から3〜20mm程度離れた位置に、膜面より冷却され表面に溝を有する凝縮器を設けて、凝縮器の表面で水蒸気(揮発有機溶媒も含む)を凝縮させて乾燥させる方法も適用することができる。前記いずれかの乾燥方法を適用することで、高分子膜40の膜面への動的な影響を少なくして乾燥させることができるため、より平滑な膜面を得ることができる。
【0122】
また、送風機34、乾燥機36の送風ユニットを複数用いたり、複数のゾーンに区画したりすることにより、異なる露点条件を設定したり、異なる乾燥温度条件を設定したりすることができる。これら条件を選択することで、孔47の寸法制御性の向上や孔均一性の向上を図ることができる。なお、送風ユニットやゾーンの数は特に限定されるものではないが、フィルムの品質と設備のコストの点から最適な組み合わせを決定する。
【0123】
膜面温度TL(℃)と結露ゾーン又は乾燥ゾーンの露点温度TDn(℃)(nは、nゾーン番号を意味する)との関係を0℃≦|TDn−TL|℃≦80℃とすることが好ましい。前記結露ゾーン又は乾燥ゾーンの露点温度TDn(℃)と膜面温度TL(℃)との差を80℃以下とすることにより、有機溶媒及び水分の少なくともいずれかの急激な揮発を抑制でき、所望の形態のハニカム構造フィルム12を得ることができる。また、高分子膜40に不純物が混入すると、ハニカム構造の形成を阻害する原因となる。そのため、送風口34a,34c,34e,36a,36c,36e,36gの塵埃度がクラス1000以下とすることが好ましい。そこで、送風機34,乾燥機36の各ユニットは、それぞれ給気系統に埃などを除去できるフィルターを備え、塵埃度を維持しながら、ハウジング38内の空調を行うことが好ましい。これにより、高分子膜40中に不純物が混入するおそれが減少し、良好なハニカム構造フィルム12を得ることができる。これに加え、空調設備39により、結露ゾーン32及び乾燥ゾーン33の空気清浄及び温湿度の調整を実施することが好ましい。
【0124】
乾燥が進行したハニカム構造フィルム12は、剥取ローラ30で支持しながら流延ベルト26から剥ぎ取られ、巻取機32により巻き取られる。なお、ハニカム構造フィルム12の搬送速度は、特に限定されるものではないが、0.1m/min以上60m/min以下であることが好ましい。前記搬送速度が0.1m/min未満であると、生産性に劣りコストの点から好ましくない。一方、60m/minを超えると、ハニカム構造フィルムを搬送する際に、過大な張力が付与され裂け、ハニカム構造乱れなどの不良の発生原因となる。以上の方法によりハニカム構造フィルム12を連続して製造することができる。なお、高分子溶液21を間欠的に、すなわち断続的に塗布することにより、得られるハニカム構造フィルム12の長さをより短くするように製造することもできる。
【0125】
図5に本発明に係る他の実施形態のフィルム製造設備60を示す。送出機61から支持体となるフィルム62が搬送される。フィルム62はバックアップローラ63に巻き掛けられながら搬送される。バックアップローラ63に対向してスライドコータ64が設けられている。また、スライドコータ64には減圧チャンバ65が設けられている。高分子溶液供給装置66から送液ポンプで送られてくる高分子溶液67が、スライドコータ64から押し出されて、支持体であるフィルム62上に塗布され、高分子膜68が形成される。
【0126】
スライドコータ64は、フィルム62の搬送方向の均一塗布性に優れており、かつ高速で高分子膜68の形成が可能であることから生産性においても高い塗布機であるといえる。また、支持体であるフィルム62の表面に凹凸がある場合でも、フィルム62がバックアップローラ63に巻き掛けられている際に平滑化されるので、均一な塗布性に優れている。更に、フィルム62に非接触で塗布を行うので、フィルム62の表面を傷つけることなく、均一塗布が可能である。
【0127】
フィルム62上に形成されている高分子膜68は、送風機69の風70により結露乾燥工程11が行われる。なお、結露乾燥工程11は前述した説明と同じ条件の箇所の説明は省略する。結露乾燥工程11を経た後にハニカム構造フィルム71は巻取ロール72に巻き取られる。また、フィルム62も巻取ロール73に巻き取られる。高分子膜68が形成されているフィルム62の搬送方向は、水平方向に対して±10°以内とすることが好ましい。また、フィルム62に高分子溶液66の有機溶媒を吸収しやすい性質の素材から形成されているものを用いることがより好ましい。それら素材は、有機溶媒を吸収するものであれば特に限定されるものではない。例えば、高分子溶液67の主溶媒に酢酸メチルを用いている際には、フィルムの素材にセルロースアシレートを用いることが好ましい。
【0128】
図6に、本発明に係るフィルムの製造方法に用いられる他の実施形態のフィルム製造設備80を示す。なお、フィルム製造設備60と同じ箇所の説明は省略する。送出機81から支持体となるフィルム82が搬送される。フィルム82はバックアップローラ83に巻き掛けられながら搬送される。バックアップローラ83に対向して多層式スライドコータ84が設けられている。また、多層式スライドコータ84には減圧チャンバ85が設けられている。高分子溶液供給装置86から送液ポンプで送られてくる高分子溶液87が、多層式スライドコータ84から押し出されて、支持体であるフィルム82上に塗布され、高分子膜88が形成される。フィルム82上に形成されている高分子膜88は、送風機89の風90により結露乾燥工程11が行われる。結露乾燥工程11を経た後にハニカム構造フィルム91は巻取ロール92に巻き取られる。また、フィルム82も巻取ロール93に巻き取られる。
【0129】
多層からなる高分子溶液87をフィルム82上にキャスト(塗布)することにより、ハニカム構造フィルム91の厚み方向における形態,物性などを変更することが可能となる。
【0130】
図7に、本発明に係るフィルムの製造方法に用いられる他の実施形態のフィルム製造設備100を示す。なお、フィルム製造設備60と同じ箇所の説明は省略する。送出機101から支持体となるフィルム102が搬送される。フィルム102はバックアップローラ103に巻き掛けられながら搬送される。バックアップローラ103に対向してエクストリュージョンコータ104が設けられている。また、エクストリュージョンコータ104には減圧チャンバ105が設けられている。高分子溶液供給装置106から送液ポンプで送られてくる高分子溶液107が、エクストリュージョンコータ104から押し出されて、支持体であるフィルム102上に塗布され、高分子膜108が形成される。フィルム102上に形成されている高分子膜108は、送風機109の風110により結露乾燥工程11が行われる。結露乾燥工程11を経た後にハニカム構造フィルム111は巻取ロール112に巻き取られる。また、フィルム102も巻取ロール113に巻き取られる。
【0131】
図8に、本発明に係るフィルムを製造するフィルム製造設備120を示して説明する。(本実施例に限られず、バッチでもよく、連続でもよく、間欠塗布でも良い旨の記載を希望します。)ワイヤーバー塗布機121を用いて高分子溶液122をフィルム123に塗布する。一定速度で移動するフィルム123の移動方向に回転するワイヤーバー124は、その回転により1次側高分子溶液槽125から液貯留部分126に高分子溶液122を引きあげる。この液貯留部分126の高分子溶液122が、フィルム123にワイヤーバー124を介し接触することにより均一な厚さの高分子膜127が形成される。この高分子膜127を送風機128の風129により結露乾燥工程11を行うことで、ハニカム構造フィルム130を得ることができる。ワイヤーバー124を用いたハニカム構造フィルム130の製造方法は、液貯留部分126が高分子溶液122とフィルム123との接触部に空気が混入しないようにするので、高分子膜127に気泡が混入しにくくなるという利点がある。
【0132】
支持体にフィルム62,82,102,123を用いた際には、ハニカム構造フィルム71,91,111,130と支持体とが一体となった複合フィルムとして巻き取り、用いることもできる。
【0133】
図9に、本発明に係るフィルムを製造する製造設備140を示す。フィルム141が圧胴142に巻き掛けられながら搬送される。圧胴142に対向して版胴143が配置されている。版胴143の表面には所望のパターンが形成されている。高分子溶液槽144に入れられている高分子溶液145は版胴143が回転することにより、その凹部に溜まる。ドクターブレード146により過剰な高分子溶液145がかきとられる。その後に圧胴142に巻きかかって走行しているフィルム141上に高分子溶液145が塗布されて高分子膜147が形成される。
【0134】
送風機148により高分子膜147の結露乾燥工程11が行われる。送風機148から送風される風149は、フィルム141の搬送方向と同方向の平行流とする。高分子膜147は、結露乾燥工程11を経ることによりハニカム構造部150が形成される。これにより、フィルム141と所望のパターンが形成されたハニカム構造部150とが一体となった複合フィルム151となる。このように、高分子溶液145が間欠的に塗布された形態とすることもできる。
【0135】
図10にプレス装置160の概略図を示して、ハニカム構造フィルムを版にして、表面に凸形状が並んだフィルムの製造方法を示す。プレスローラ161,162から構成されている。ハニカム構造フィルムロール163,フィルムロール164からそれぞれハニカム構造フィルム165,フィルム166を引き出す。そして、凹凸が形成されているハニカム構造フィルム165を版として、プレス装置160により、フィルム166にハニカム構造フィルム165のパターンを写して、表面に凸形状が並んだいわゆるモスアイ構造のフィルム167を得る。この際に、転写がより確実に行えるように、ハニカム構造フィルム165の反転写面から負圧で吸引することが好ましい。
【0136】
また、ハニカム構造フィルム165を硬化処理したものやハニカム構造フィルム165の表面に金属を蒸着したものをハニカム構造フィルム165に代えて用いることも好ましい。
【0137】
その後に、ハニカム構造フィルム165,表面に凸形状が並んだフィルム167をそれぞれの巻取ロール168,169で巻き取る。モスアイ構造フィルム167は、そのサイズ、形状によりマイクロレンズアレイフィルムや蛾の目の構造に似た反射防止機能等を有する。モスアイ構造フィルム167は、凸形状の底辺ピッチが、0.1μm〜0.3μmで、高さは、底辺に対し、0.5〜2程度である。
【0138】
本発明のフィルムの製造方法に従って得られた本発明のフィルムは、初めから所望の支持体上に製造することでそのまま使用してもよいし、エタノール等の適当な溶媒に浸してから製造時の支持体より剥離した後に所望の基板上に設置して使用してもよい。なお、剥離して使用する場合には、新たな基板との密着性を上げる目的で、エポキシ樹脂、シランカップリング剤等の接着剤を使用してもよい。
【0139】
−用途等−
前記各方法で得られるハニカム構造フィルム、複合フィルム、及びモスアイ構造フィルムは、機能性付与工程をさらに実施することにより、更に他の機能を付与して機能性フィルムとすることもできる。例えば、サイズが小さく、フィルムとの屈折率差が大きな微粒子を、前記フィルムに付与して機能性を得ることができる。なお、機能性付与工程は、ハニカム構造フィルムが得られた後に実施してもよいし、ハニカム構造フィルムの製造過程で実施してもよい。
【0140】
前記微粒子としては、例えば、光励起、導電等により発光するもの、光照射、磁場等により磁性を有して保持できるもの、着色ボール乃至マイクロカプセル、タンパク質、糖、DNA等の生体材料と選択的に結合したり化学反応したりするもの、などが挙げられる。
【0141】
前記光励起、導電等により発光する微粒子としては、例えば、有機顔料、有機染料、発光性希土類化合物などが挙げられる。このような微粒子を含む機能性フィルムは、例えば、フォトニック結晶の作製用に、あるいはレーザ、光導波路、薄型ディスプレイ等の発光材料などとして用いることができる。
【0142】
前記光照射、磁場等により磁性を有して保持できる微粒子を含む機能性フィルムは、例えば、記録乃至メモリ材料として用いることができる。
【0143】
前記着色ボール乃至マイクロカプセルを含む機能性フィルムは、例えば、ペーパーライクディスプレイとして用いることができる。
【0144】
前記タンパク質、糖、DNA等の生体材料と選択的に結合したり化学反応したりする微粒子を含む機能性フィルムは、バイオチップ、細胞培養用の基材として用いることができる。
【実施例1】
【0145】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0146】
実験1では、流延ベルトに流延する高分子溶液21の原料には、以下の両親媒性化合物とフッ素系界面活性剤とポリマーとを用いた。前記フッ素原子含有ポリマーは、原子吸光分析法で解析することによりフッ素原子を含むことが確認できた。
両親媒性化合物 :ポリアルキルアクリルアミドである。これは、親水基数/疎水基が2.5/7.5、分子量であるものである。数平均分子量は約5万。
フッ素系界面活性剤:大日本インキ製メガファックF−781である。
ポリマー :セルローストリアセテート(TAC)または環状ポリオレフィンを使用した。表1ではTACの場合を「P−1」と記載する。
【0147】
送風機34,37から吹き出すための空気は、市販の除塵エアーフィルタ(ろ過度0.3μm)を設置した日立工機株式会社製のコンプレッサSC−820にヤマト科学株式会社製の湿度発生装置を接続し、清浄度と湿度とを制御した。
【0148】
前記フッ素原子含有ポリマーを添加した高分子溶液21の表面張力を協和界面科学製の全自動表面張力計CBVP−Zにより測定を行った。この値は、表1の「表面張力」欄に示す。
【0149】
フィルム12のゴミの付着のし易さを評価するために、帯電性評価を実施した。これは、JIS K 7194の「導電性プラスチックの4探針法による低効率試験方法」に基づく表面抵抗率の測定により実施した。帯電現象の指標としては、表面抵抗値(Ω/sq.)が1.0×1013よりも小さいことが好ましく、1.0×1013以上であるとゴミが付着しやすいといえる。
【0150】
ゴミや埃の付着性の評価としては、タバコの灰をかけ、エアーブロアーで軽く吹いた後にタバコの灰の付着量を目視で評価するという方法で行った。結果については表1の「埃付着性」に記載する。表1における「○」及び「×」は以下の意味である。
○:たばこの灰の付着が見られなかった。
×:たばこの灰の付着が見られた。
【0151】
得られたフィルム12について、厚みの均一性を評価した。孔の大きさが不均一であると厚みが不均一となるので、厚みの均一性を評価することにより孔の大きさの均一性を評価することができる。孔の大きさが均一であると、用途の拡がりは大きい。評価結果は表1に示す。表1において、「○」、「×」は以下の意味である。
○:厚みのばらつきが厚みの平均値に対して±15%以内である場合
×:厚みのばらつきが厚みの平均値に対して±15%より大きい場合。
【0152】
さらに、得られたフィルム12について、微細空孔構造の均一性を評価した。孔の大きさが均一でも孔の並び方の不規則である場合があるからである。そして、孔の大きさの均一性に加えて孔の配列が規則的であると、用途はさらに拡がる。孔の配列の規則性は、レーザ散乱による回折実験により評価した。
結果は表1の「空孔構造の均一性」欄に示す。表1において、「◎」、「○」、「△」、「×」は以下の意味である。
◎:回折スポットがはっきりと確認することができた場合
○:回折スポットが確認された場合
△:回折パターンが多重のリングとなっていた場合
×:回折パターンが確認されなかった場合。
【0153】
ポリマー成分や径面活性剤の添加率等を代えて実験2〜7と比較実験1とを実施した。比較実験1は、本発明に対する比較のための実験であり、界面活性剤を使用していない。実験1〜7と比較実験1の各条件は表1に示す。表1において、「ポリマー」欄の「P−2」は環状ポリオレフィンであることを意味する。
【0154】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明のフィルムは、ゴミ等の付着が少なく、孔の大きさが均一であり、大面積で高速かつ安価で連続的もしくは断続的に製造できるので、例えば、光学・電子材料、再生医療等の用途に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】本発明に係るフィルムの製造方法の一例を説明する工程図である。
【図2】本発明に係るフィルムの製造方法の一例に用いられるフィルム製造設備の概略図である。
【図3】図3(a)〜(d)は、本発明のフィルムの形成方法を説明する説明図である。
【図4】図4(a)は本発明に係るフィルムの一例を示す平面図であり、図4(b)は図4(a)の(b)−(b)線に沿う断面図である。
【図5】本発明に係るフィルムの製造方法に用いられる他の一例を示すフィルム製造設備の概略図である。
【図6】本発明に係るフィルムの製造方法に用いられる更に他の一例を示すフィルム製造設備の概略図である。
【図7】本発明に係るフィルムの製造方法に用いられる更に他の一例を示すフィルム製造設備の概略図である。
【図8】本発明に係るフィルムの製造方法に用いられる更に他の一例を示すフィルム製造設備の概略図である。
【図9】本発明に係るフィルムの製造方法に用いられる更に他の一例を示すフィルム製造設備の概略図である。
【図10】本発明に係るフィルムの製造方法に用いられる更に他の一例を示すフィルム製造設備の概略図である。
【符号の説明】
【0157】
10 キャスト工程
11 結露乾燥工程
12 フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細空孔構造を有し、該微細空孔構造が、有機溶媒とポリマーとを含む塗布液、及び、フッ素原子を含み前記塗布液の表面張力を低下させる界面活性剤により得られたことを特徴とするフィルム。
【請求項2】
前記界面活性剤が、フルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位を含むフッ素原子含有ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記フルオロ脂肪族基含有モノマーが、下記の一般式(1)で表されることを特徴とする請求項2に記載のフィルム。
【化1】

ただし、前記一般式(1)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はメチル基を表す。Lは2価の連結基を表し、mは1以上12以下の整数を表す。Xはフッ素原子又は水素原子を表す。
【請求項4】
前記界面活性剤の添加量が、総量に対して、0.01〜10質量%であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のフィルム。
【請求項5】
前記フッ素原子含有ポリマーの質量平均分子量が、2,000〜100,000であることを特徴とする請求項2から4いずれか1項記載のフィルム。
【請求項6】
前記ポリマーが、疎水性ポリマー及び両親媒性ポリマーから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のフィルム。
【請求項7】
前記疎水性ポリマーが、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、環状ポリオレフィンの少なくともいずれかひとつであることを特徴とする請求項6に記載のフィルム。
【請求項8】
前記塗布液が多官能モノマーを含むことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のフィルム。
【請求項9】
前記微細空孔構造が、自己組織化により作製したハニカム状多孔質構造であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のフィルム。
【請求項10】
支持体上に有機溶媒とポリマーとを含む塗布液を塗布し、かつ、前記塗布液にフッ素原子を含み前記塗布液の表面張力を低下させる界面活性剤を添加して、得られた膜中に液滴を形成し、前記有機溶媒と液滴とを蒸発させて前記膜中に空孔を有するフィルムを作製するフィルム作製工程を含むことを特徴とするフィルムの製造方法。
【請求項11】
前記界面活性剤を添加した前記塗布液の表面張力が25mN/m以下であることを特徴とする請求項10に記載のフィルムの製造方法。
【請求項12】
前記膜の表面温度をTL(℃)、露点をTD1(℃)とした場合に、0℃≦(TD1−TL)℃となる結露ゾーンを通過させることを特徴とする請求項10から11のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
【請求項13】
風の送風速度と前記膜の相対速度が、0.02m/s以上2m/s以下である風を結露ゾーンで送風し、前記風中の水分を結露させて液滴を形成することを特徴とする請求項12に記載のフィルムの製造方法。
【請求項14】
露点をTD2(℃)とした場合に、(TL−TD2)℃≧1℃である乾燥ゾーンを通過させることを特徴とする請求項12から13のいずれかに記載のフィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−84429(P2009−84429A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255827(P2007−255827)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】