説明

フィルム及びシート用途用の改良された応力白化を有するポリエステルブレンド

【課題】押出成形やカレンダ加工でフィルム又はシートとすることができるポリエステルブレンドの応力白化現象の改良。
【解決手段】(a)特定の結晶化半時間を有する、(i)テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はイソフタル酸の二酸残基及び(ii)シクロヘキサンジメタノール及び炭素数2〜20の他のジオール残基を含む、ランダムコポリマーポリエステル並びに(b)(i)脂環式ジカルボン酸を含む2酸残基及び(ii)脂肪族ジオール、ポリ(オキシアルキレン)−グリコール及びコポリ(オキシアルキレン)グリコール、脂環式ジオール及び芳香族ジオールのジオール残基
を含む、ポリエステルエラストマーを含んでなるポリエステルブレンドであって、(c)前記ポリエステルブレンドのカレンダ加工ロールへの付着を防止するのに有効な量の離型添加剤を更に含むポリエステルブレンド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形及び/又はカレンダ加工用のポリエステルブレンド、更に詳細には、改良された応力白化(stress whitening)挙動を可能とするポリエステルブレンドに関する。本発明は、更に、これらのポリエステルブレンド用の押出成形及び/又はカレンダ加工法並びにそれらから製造されるポリエステルフィルム又はシートに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム及びシート製品は、多くの用途において、組立工程の間に多くの場合応力を受け、冷間成形される。例えば一部の家庭電化製品用途において、不透明な着色フィルムが、多くの場合、塗料の代わりに金属に積層される。この場合に、ポリマーフィルムは平坦な形状で金属に積層される。ポリマーフィルム積層物を有する金属は、次に、一定形状に曲げられるか圧入されて、洗濯機、乾燥機及び冷蔵庫用などの家庭電化製品の筐体を形成する。この冷間成形工程の間に、一部のポリマーフィルム配合物は、それらを一定形状に曲げ延伸する際に白化し、非魅力的な白色の筋が家庭電化製品の仕上がりに現れることを引き起こす傾向がある。この問題は、より暗い色を伴うと一般に言われている。応力白化挙動は、通常、視覚的に測定される。フィルムは、通常、50%又は100%伸びまで延伸され、色変化を検査される。従って、応力白化特性を示さない可撓性フィルム及びシート製品は、多くの用途に対して極めて望ましいものである。
【0003】
カレンダ加工は、軟質及び硬質ポリ(塩化ビニル)(本明細書において「PVC」と略す)及びポリプロピレン組成物などのプラスチックからフィルム及びシート製造するための経済的で極めて効率の良い方法である。フィルム及びシートは、通常、約1ミル(0.025mm)〜約80ミル(2.0mm)の範囲にある厚さを有する。カレンダ加工されたPVCフィルム又はシートは、包装、プールライナー、印刷芸術、トランザクションカード、社会保障カード、ベニヤ、壁装材、製本、フォルダー、フロアタイル及び二次操作において印刷されるか、装飾されるか、又は積層される製品を含む広い範囲の用途において用いることができる種々の形状に、容易に熱成形される。カレンダ加工工程において用いられるポリプロピレン樹脂組成物に関する追加の説明は、日本国特許出願平9−40823号及び欧州特許出願第0744439A1号に見出すことができる。
【0004】
対照的に、ポリエステルのフィルム又はシートへの従来型の加工は、ポリエステル融解生成物をフラットダイのマニホールドに通して押し出すことを含む。手動又は自動のダイ・リップ調整は、材料ウェブの厚さを制御するために用いられる。水冷チル・ロールは、溶融ウェブを急冷するために用いられ、滑らかな表面仕上げを付与する。
【0005】
PVC組成物は、カレンダ加工フィルム及びシート事業の断然たる最大のセグメントである。例えば熱可塑性ゴム、一部のポリウレタン、タルク充填ポリプロピレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレンターポリマー(ABS樹脂)及び塩素化ポリエチレンなどの他の熱可塑性ポリマーの少量は、時々カレンダ加工法により処理される。対照的に、例えばポリ(エチレンテレフタレート)(本明細書において「PET」と略す)又はポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(本明細書において「PBT」と略す)は、うまくカレンダ加工することが難しい。例えば約0.6デシリットル/グラム(本明細書において「dL/g」と略す)のインヘレント粘度値を有するPETポリマーは、一般的に、カレンダ加工ロール上で適正に機能するには不十分な融解強度を有する。融解強度は溶融状態におけるその重量を支持するポリマーの能力として定義される。カレンダ加工において、融解強度は、変形なしでロール工程からフィルムを除去する能力に関係する。例えば、カレンダ加工する時に、低融解強度を有するポリマーは、すぐに垂れ下がり床を打つ;一方で高融解強度を有するポリマーは一段と長い時間帯にわたりその形状を保持し、更に加工することができる。融解強度は、従って、ポリマーがカレンダ加工工程の間に直面する「縮小」及び重力誘導のたるみの量を最小化するために重要である。縮小は、カレンダ加工において、カレンダ加工ロールと巻き取り系間の厚さの減少量として定義され、フィルムがカレンダ加工ロールを出る際の公称厚さ又は幅次元の、巻き取りロールでの同じ次元との比として表される。
【0006】
PET及び他のポリエステルポリマーは、また、一般的な加工温度160℃〜180℃で結晶化しがちであり、またカレンダ軸受上に高い力を引き起こす非均質質量を生じる。加工温度を上げることは、融解粘度を下げると共に加工性を改良する。しかし、より高い温度は、例えば熱劣化、大気水分への暴露によるポリマーの加水分解及び着色体の形成などによるポリエステルの劣化を引き起こすことができる。一般的なPETポリマーは、また、より高い加工温度でカレンダ加工ロールに付着する傾向性を有する。種々のポリエステル組成物のカレンダ加工及びこれらの問題に対するいくつかのアプローチは、例えば米国特許第5,998,005号明細書、同第6,068,910号明細書、同第6,551,688号明細書、米国特許出願第10/086,905号明細書、日本国特許出願第8−283547号明細書、同第7−278418号明細書、同第2002−53740号明細書、同第10−363−908号明細書、同第2002−121362号明細書、同第2003−128894号明細書、同第11−158358号明細書及びWO第02/28967号明細書に記載されてきている。これらの問題点の一部は、ポリマー特性、添加剤及び加工条件の注意深い選択により避けることができるが、高生産量でのポリエステルのカレンダ加工は困難である。
【0007】
上記技術上の欠点は、押出成形又はカレンダ加工により製造することが可能であると共に、応力白化を示さないフィルム又はシート製品に対する必要性を示している。これらの製品は、木材及び金属積層板、印刷芸術、トランザクション(transaction)カード、社会保障カード、ベニヤ、壁装材、製本及びフォルダーなどの用途を有するであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、驚くことに、ポリエステル及びポリエステルエラストマーを含むポリエステルブレンドが、カレンダ加工又は押出成形されて、改良された応力白化特性を示すフィルム又はシートを形成することが可能であることを見出してきた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明は、
(a)少なくとも5分の溶融状態からの結晶化半時間を有するランダムコポリマーであるポリエステル、
(b)1又はそれ以上のポリエステルエラストマー及び
(c)任意的な、ポリエステルブレンドのカレンダ加工ロールへの付着を防止するために有効な量での離型添加剤、
を含むポリエステルブレンドを提供する。
【0010】
本発明のポリエステルブレンドは、カレンダ加工するか、又は押出成形して、優れた応力白化特性、良好な表面特性、強靭性及び可撓性を有するフィルム又はシートを製造することが可能である。本発明のブレンドは、例えば可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、充填剤、着色剤及び顔料などの他の添加剤を包含することが可能である。ポリエステルは、少なくとも5分の溶融状態からの結晶化半時間を有する任意の非晶質又は実質的に非晶質のポリエステルであることが可能である。ポリエステルは、典型的には2酸残基の全体モルに対して、少なくとも80モル%のテレフタル酸残基を含む。ポリエステルエラストマーは、エラストマー特性を示す任意のランダム又はブロックコポリエステルを含むことが可能である。ポリエステルエラストマーの代表的な例には、400〜12,000の分子量を有するポリエステルセグメント及びポリエーテルセグメント及び芳香族−脂肪族ポリエステルを含むランダム又はブロックポリ(エーテルエステル)ポリマーが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0011】
本発明は、また、
(a)(i)2酸残基の全体モルに対して、少なくとも80モル%のテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサン−ジカルボン酸又はイソフタル酸の1又はそれ以上の残基を含む2酸残基、及び
(ii)ジオール残基の全体モルに対して、約10〜約100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基及び0〜約90モル%のエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2,4,4―テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA及びポリアルキレンングリコールから選択される1又はそれ以上のジオール残基を含むジオール残基、
を含むランダムコポリマーである、ブレンドの全体重量に対して、約5〜約95重量%の、少なくとも5分の溶融状態からの結晶化半時間を有するポリエステル、
(b)(i)置換又は非置換の、直鎖又は分岐の炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸、置換又は非置換の、直鎖又は分岐の炭素数5〜20の脂環式ジカルボン酸及び置換又は非置換の炭素数6〜20の芳香族ジカルボン酸からなる群から選択される1又はそれ以上の2酸残基を含む2酸残基及び
(ii)炭素数2〜20の脂肪族ジオール、分子量約400〜約12000のポリ(オキシアルキレン)−グリコール及びコポリ(オキシアルキレン)グリコール、炭素数5〜20の脂環式ジオール及び炭素数6〜20の芳香族ジオールからなる群から選択される1又はそれ以上の置換又は非置換の、直鎖又は分岐ジオールの残基を含むジオール残基、
を含む、ブレンドの全体重量に対して、約5〜約95重量%の1又はそれ以上のポリエステルエラストマー及び
(c)任意的な、ポリエステルブレンドのカレンダ加工ロールへの付着を防止するのに有効な量の離型添加剤、
を含むポリエステルブレンドを提供する。
【0012】
本発明は、更に、
(a)少なくとも5分の溶融状態からの結晶化半時間を有するランダムコポリマーであるポリエステル、
(b)(i)炭素数5〜20の1又はそれ以上の置換又は非置換の脂環式ジカルボン酸の残基を含む2酸残基及び
(ii)炭素数2〜20の脂肪族ジオール、分子量約400〜約12000のポリ(オキシアルキレン)−グリコール及びコポリ(オキシアルキレン)グリコール、炭素数5〜20の脂環式ジオール及び炭素数6〜20の芳香族ジオールからなる群から選択される1又はそれ以上の置換又は非置換の、直鎖又は分岐ジオールの残基を含むジオール残基、
を含む1又はそれ以上のポリエステルエラストマー及び
(c)任意的な、ポリエステルブレンドのカレンダ加工ロールへの付着を防止するのに有効な量の離型添加剤、
を含むポリエステルブレンドを提供する。
【0013】
加えて、本発明は、本発明のポリエステルブレンドを押出成形するか又はカレンダ加工することを含むフィルム又はシートを製造する方法を提供する。
【0014】
本発明は、また、本明細書において記載される押出成形又はカレンダ加工法により製造されるポリエステルフィルム又はシートを提供する。
【0015】
本発明のポリエステルブレンド、フィルム及びシートは、また、それらの可撓性を増大させるために、可塑剤及び/又は難燃剤を包含することが可能であり、難燃性を必要とする商業的用途におけるそれらの使用を可能とする。フィルム又はシートは、優れた外観、可撓性及び難燃性を有し、極めて多様な装飾及び包装用用途において用いることができる。フィルム又はシートは、食品及び非食品両方用の特定包装用途のための種々の形状に容易に熱成形される。それらは、広く多様なインクにより印刷することが可能であり、インライン又はオフラインのいずれかで布又は他のプラスチックフィルム又はシートと共に積層することが可能である。一部の特定末端用途には、印刷芸術、トランザクションカード、社会保障カード、ベニヤ、壁装材、製本及びフォルダーなどが挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一つの実施形態において、本発明は、
(a)少なくとも5分の溶融状態からの結晶化半時間を有するランダムコポリマーであるポリエステル、
(b)1又はそれ以上のポリエステルエラストマー、及び
(c)任意的なポリエステルブレンドのカレンダ加工ロールへの付着を防止するのに有効な量の離型添加剤、
を含むポリエステルブレンドを提供する。
【0017】
本発明のポリエステルブレンドは、カレンダ加工されるか、又は押出成形されて、優れた応力白化特性、良好な表面特性、強靭性及び可撓性を有するフィルム又はシートを製造することが可能である。ポリエステルブレンドは、また、カレンダ加工されたポリエステルフィルムの可撓性及び柔らかさを増大させ、ポリエステルの加工性を改良し、ポリエステルのカレンダ加工ロールへの付着を防止することを支援するために1又はそれ以上の可塑剤を含むことが可能である。本発明は、また、新規なポリエステルブレンドをカレンダ加工することによりフィルム又はシートを作製するための方法及びこうしたカレンダ加工法から製造されるフィルム又はシートを提供する。カレンダ加工されたフィルム又はシートは、一般的に、約1ミル(0.05mm)〜約80ミル(2mm)の範囲にある厚さを有する。
【0018】
特記しない限り、本明細書及びクレームにおいて用いる、成分の量、分子量などの特性、反応条件などを表現するすべての数字は、すべての事例において用語「約」により修飾されているとして理解されたい。従って、そうではないと記されていない限り、以下の明細書及び添付特許請求の範囲に述べられる数値パラメータは、本発明により得ようとして求められる望ましい特性に応じて変わることが可能である近似値である。最低限でも、各数値パラメータは、少なくとも、報告された重要な数字の数に照らして、及び普通の丸め技術を適用することによって解釈することが好ましい。更に、本開示及び特許請求の範囲において述べられる範囲は、端点(複数を含む)はもちろん、全体の特定範囲を包含するように意図されている。例えば0〜10であると述べられる範囲は、例えば1、2、3、4、などの0〜10間のすべての整数、0〜10間のすべての分数、例えば1.5、2.3、4.57、6.1113など、そして端点0及び10を明示するように意図されている。また、例えば「C1〜C5炭化水素」などの化学置換基に関連する範囲は、C1及びC5炭化水素並びにC2、C5及びC4炭化水素を特定的に包含し明示するように意図されている。
【0019】
本発明を説明するために用いられる数値範囲及びパラメータは、近似値である。それにも拘わらず、特定の実施例において記載される数値は、できるだけ正確に報告する。しかし、あらゆる数値は、本質的に、それらそれぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じるある種の誤差を含有する。
【0020】
本明細書において用いる用語「ポリエステル」は「コポリエステル」を包含するように意図されており、1又はそれ以上の2官能性カルボン酸と1又はそれ以上の2官能性ヒドロキシル化合物との重縮合により製造される合成ポリマーを意味すると理解されたい。一般的に、2官能性カルボン酸はジカルボン酸であり、2官能性ヒドロキシル化合物は、例えばグリコール及びジオールなどの2価アルコールである。あるいは、2官能性カルボン酸は、例えばp−ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸であることが可能であり、2官能性ヒドロキシル化合物は、例えばヒドロキノンなどの2ヒドロキシル置換基を担持する芳香族核であることが可能である。
【0021】
本明細書において用いる用語「残基(residue)」は、対応するモノマーを含む重縮合反応を通してポリマー又は可塑剤中に組み込まれる任意の有機構造を意味する。本明細書において用いる用語「反復単位」は、カルボニルオキシ基を通して結合されるジカルボン酸残基とジオール残基を有する有機構造を意味する。従って、ジカルボン酸残基は、ジカルボン酸モノマー又はその関連酸ハロゲン化物、エステル、塩、無水物又はそれらの混合物から誘導することが可能である。従って、本明細書において用いる用語「ジカルボン酸」は、高分子量ポリエステルを製造するためにジオールとの重縮合工程において有用な、ジカルボン酸及びその関連酸ハロゲン化物、エステル、半エステル、塩、半塩、無水物、混合無水物又はそれらの混合物を含むジカルボン酸の任意の誘導体を包含するように意図されている。
【0022】
本発明のポリエステルブレンドは、ジカルボン酸残基、ジオール残基及び任意的な分岐モノマー残基を含むポリエステルから製造される。本発明のポリエステルは、反復単位の全体モルが100モル%に等しくなるように実質的に等しい割合で反応する酸残基(100モル%)及びジオール残基(100モル%)の実質的に等しいモル割合を含有する。従って、本開示において提供されるモル%は、酸残基の全体モル、ジオール残基の全体モル又は反復単位の全体モルに対するものであることが可能である。例えば、全体酸残基に対して30モル%のイソフタル酸を含有するポリエステルは、ポリエステルが酸残基全体100モル%の内イソフタル酸残基30モル%を含有することを意味する。従って、酸残基100モル毎の間にイソフタル酸残基30モルが存在する。別の実施例において、全体ジオール残基に対して30モル%のエチレングリコールを含有するポリエステルは、ポリエステルがジオール残基全体100モル%の内エチレングリコール残基30モル%を含有することを意味する。従って、ジオール残基100モル毎の間にエチレングリコール残基30モルが存在する。
【0023】
本発明のポリエステルは、少なくとも5分の溶融状態からの結晶化半時間(crystallization half−time)を有する。結晶化半時間は、例えば少なくとも7分、少なくとも10分、少なくとも12分、少なくとも20分及び少なくとも30分であることが可能である。一般的に、少なくとも5分の結晶化半時間を示すポリエステルは、コポリエステルか又はランダムコポリマーである。本明細書において用いる用語「ランダムコポリマー」は、ポリエステルが各種ジオール又は2酸残基が中でポリマー鎖に沿って不規則に分配される1を超えるジオール及び/又は2酸残基を含むことを意味する。従って、本発明のポリエステルの関連で用いる用語「ランダムコポリマー」は、ポリエステルが当業者により理解されるであろうような「ホモポリマー」又は「ブロックコポリマー」でないことを意味する。好ましくは、ランダムコポリマーであるポリエステルは、ポリエステルがポリマーの実質的に不規則な領域を含むことを意味する、実質的に非晶質な形態を有する。非晶質又は半結晶性ポリマーは、一般的に、ガラス転移温度(本明細書において「Tg」と略す)単独のみか、又は例えば、示差走査熱量測定(「DSC」)などの周知の技術により測定される融点(本明細書において「Tm」と略す)に加えてのガラス転移温度のいずれかを示す。融解生成物からの望ましい結晶動力学は、また、例えば可塑剤などの高分子添加剤の添加により、又はポリマーの分子量特性を変えることにより達成することが可能である。
【0024】
本明細書において用いるポリエステルの結晶化半時間は、当業者に周知の方法を用いて測定することが可能である。例えば、結晶化半時間は、パーキン・エルマー(Perkin−Elmer)モデルDSC−2示差走査熱量計を用いて測定することが可能である。結晶化半時間は、以下の手順を用いて溶融状態から測定する:ポリエステルの15.0mg試料をアルミ鍋の中に密閉し、2分間にわたり約320℃/分の速度で290℃に加熱する。次に、試料を、ヘリウムの存在下、約320℃/分の速度で直ぐに所定の等温結晶化温度に冷却する。等温結晶化温度は、結晶化最高速度を与えるガラス転移温度と融点間の温度である。等温結晶化温度は、例えばElias,H.Macromolecules,Plenum Press:NY,1977,p391に記載されている。結晶化半時間は、等温結晶化温度に達してからDSC曲線上の結晶化ピーク点までの時間帯として測定する。
【0025】
ポリエステルの2酸残基は、好ましくは、2酸残基の全体モルに対して、少なくとも80モルパーセント(モル%)の、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はイソフタル酸の1又はそれ以上の残基を含む。任意のナフタレンジカルボン酸の種々の異性体又は異性体の混合物を用いることができるが、1,4−、1,5−、2,6−及び2,7−異性体が好ましい。例えば1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸は、純粋なシス又はトランス異性体で、又はシス及びトランス異性体の混合物として存在することが可能である。例えばポリエステルは、テレフタル酸からの2酸残基約80〜約100モル%及びイソフタル酸からの2酸残基0〜約20モル%を含むことができる。
【0026】
ポリエステルは、また、1,4−シクロヘキサンジメタノール残基約10〜約100モル%及び炭素数2〜約20の1又はそれ以上の他のジオール残基0〜約90モル%を含むことが可能であるジオール残基を含有する。本明細書において用いる用語「ジオール」は、用語「グリコール」と同義語であり、任意の2価のアルコールを意味する。例えばジオール残基は、ジオール残基全体モルに対して、約10〜約100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基及び0〜約90モル%の、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2,4,4―テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA及びポリアルキレンングリコールから選択される1又はそれ以上のジオール残基を含むことが可能である。適するポリアルキレングリコールの例には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリブチレングリコールなどが挙げられる。本発明のポリエステルにおいて用いることが可能なジオールの更なる例には、トリエチレングリコール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、チオジエタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレンジオール、ビスフェノールS又は2又はそれ以上のこれらグリコールの組合せが挙げられる。脂環式ジオール、例えば1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールは、純粋なシス又はトランス異性体として、又はシス及びトランス異性体の混合物として、存在することが可能である。別の実施例において、ジオール残基は、約10〜約100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基及び0〜約90モル%のエチレングリコール残基を含むことが可能である。更なる実施例において、ジオール残基は約20〜約80モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基及び約20〜約80モル%のエチレングリコール残基を含むことが可能である。別の実施例において、ジオール残基は約20〜約70モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基及び約80〜約30モル%のエチレングリコール残基を含むことが可能である。なお別の実施例において、ジオール残基は約20〜約65モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基、そして2酸残基は約95〜約100モル%のテレフタル酸残基、を含むことが可能である。
【0027】
ポリエステルは、更に、0〜約20モル%の炭素数約4〜約40の1又はそれ以上の改質用2酸残基を含むことが可能である。用いることが可能な改質用ジカルボン酸の例には、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸又は2又はそれ以上のこれら酸の混合物が挙げられる。改質用ジカルボン酸の具体例には、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、又はスルホイソフタル酸の1又はそれ以上が挙げられるが、これらに限定するものではない。改質用ジカルボン酸の追加例には、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、フタル酸、ジフェン酸、4,4’−オキシジ安息香酸及び4,4’−スルホニルジ安息香酸が挙げられる。
【0028】
ポリエステルは、ポリエステル全体重量に対して、約0.05〜約1重量%の、3又はそれ以上のカルボキシル置換基、ヒドロキシル置換基又はそれらの組合せを有する分岐モノマーの1又はそれ以上の残基を含むことが可能である。分岐モノマーの例には、トリメリト酸、無水トリメリト酸、ピロメリト酸2無水物、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、クエン酸、酒石酸及び3−ヒドロキシグルタル酸などの多官能性酸又は多官能性アルコールが挙げられるが、これらに限定するものではない。好ましくは、分岐モノマー残基は、約0.1〜約0.7重量%の、無水トリメリト酸、ピロメリト酸2無水物、グリセロール、ソルビトール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスルトール、トリメチロールエタン又はトリメシン酸の1又はそれ以上の残基を含む。分岐モノマーは、ポリエステル反応混合物に添加するか、又は、例えば米国特許第5,654,347号明細書に記載されているように濃縮物(コンセントレート)の形態においてポリエステルとブレンドすることが可能である。
【0029】
本発明のポリエステルは、約0.5〜約1.2dL/g、好ましくは約0.55〜約0.85dL/gのインヘレント粘度を有することができる。本明細書において「I.V.」と略すインヘレント粘度は、フェノール60重量%及びテトラクロロエタン40重量%からなる溶媒50mL当りポリマー0.25グラムを用いて、25℃でなされるインヘレント粘度測定値を指す。ポリエステルブレンドにより示すことが可能であるI.V.値の他の例には、約0.55〜約0.70dL/g、約0.55〜約0.65dL/g、及び約0.60〜約0.65dL/gが挙げられる。
【0030】
ポリエステルに加えて、本発明のポリエステルブレンドは、ポリエステルエラストマーを含む。本明細書において用いる用語「ポリエステルエラストマー」は、約1〜500メガパスカル(MPa)(室温で)の弾性率を有する任意のポリエステルを意味すると理解される。一般的に、この弾性率範囲にあるポリエステルは、容易に変形を起こすと共に、小さな印加応力下で可逆性伸び、即ち、弾性を示す。本明細書において用いる用語「可逆性(reversible)」とは、ポリエステルが、伸びの後、その元の形状に戻ることを意味する。本発明のポリエステルエラストマーは(i)炭素数2〜20の置換又は非置換で直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸、炭素数5〜20の置換又は非置換の、直鎖又は分岐の脂環式ジカルボン酸及び炭素数6〜20の置換又は非置換の芳香族ジカルボン酸からなる群から選択される1又はそれ以上の2酸の残基を含む2酸残基及び(ii)炭素数2〜20の脂肪族ジオール、分子量約400〜約12000のポリ(オキシアルキレン)−グリコール及びコポリ(オキシアルキレン)グリコール、炭素数5〜20の脂環式ジオール及び炭素数6〜20の芳香族ジオールからなる群から選択される、1又はそれ以上の置換又は非置換の、直鎖又は分岐ジオールの残基を含むジオール残基を含むことができる。これまでランダムコポリマーとして記載されてきた本発明のポリエステルの種々の実施形態に較べて、本発明のポリエステルエラストマーは、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーであることが可能である。
【0031】
上述のように、ポリエステルエラストマーは、1又はそれ以上の脂肪族、脂環式及び/又は芳香族ジカルボン酸の残基を含むことが可能である。例えばポリエステルエラストマーは、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、アゼライン酸、ダイマー酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも一つの2酸の残基を含むことが可能である。代表的な脂肪族酸には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、ダイマー酸、グルタル酸、アゼライン酸及びアジピン酸が挙げられる。例えば1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸は、純粋なシス又はトランス異性体で、又はシス及びトランス異性体の混合物として、存在することが可能である。代表的な芳香族ジカルボン酸には、テレフタル酸、フタル酸及びイソフタル酸、ナトリウムスルホイソフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。
【0032】
ポリエステルエラストマーは、また、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチルプロパンジオール、2,2−ジメチルプロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカンジオール、2,2,4,4―テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリ(エチレンエーテル)グリコール、ポリ(プロピレンエーテル)グリコール及びポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールからなる群から選択される少なくとも一つのジオールの残基を含む。一つの実施例において、ポリエステルエラストマーは、例えば分子量約500〜2000、及び1:2〜1:4の酸素対炭素比率を有するポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールなどのポリ(オキシアルキレン)グリコールを含む。本発明のポリエステルブレンド中に用いることが可能な市販ポリエステルエラストマーの例には、エクデル(ECDEL)(登録商標)ポリエステルエラストマー(イーストマン・ケミカル(Eastman Chemical Company)から市販)及びハイトレル(HYTREL)(登録商標)ポリエステルエラストマー(デュポン(DuPont Company)から市販)が挙げられる。
【0033】
加えて、ポリ(エーテルエステル)エラストマーは、その中に1又はそれ以上のラクトン又はポリラクトンを組み込むことが可能である。本明細書において適するラクトンは、例えばユニオン・カーバイド(Union Carbide Corporation)及びアルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals)から幅広く市販されている。イプシロンカプロラクトンは特に好ましいが、一方で、ラクトンがアルファ、ベータ、ガンマ、デルタ又はイプシロン位でメチル又はエチル基などの低級アルキル基により置換される置換ラクトンを用いることも可能である。加えて、これらのポリ(エーテルエステル)におけるブロック単位として、ホモポリマー及びそれらの1又はそれ以上の成分とのコポリマーを含むポリラクトン並びにヒドロキシ末端基ポリラクトンを用いることは可能である。
【0034】
ポリエステルエラストマーは、ポリエステルエラストマーの全体重量に対して、約0.05〜約1重量%の、3又はそれ以上のカルボキシル置換基、ヒドロキシル置換基又はそれらの組合せを有する分岐剤の1又はそれ以上の残基を含むことが可能である。分岐剤の例には、トリメリト酸、無水トリメリト酸、ピロメリト酸2無水物、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、クエン酸、酒石酸及び3−ヒドロキシグルタル酸などの多官能性酸又はグリコールが挙げられるが、これらに限定するものではない。ポリエステルエラストマー内の分岐剤レベルの他の例には、約0.1〜約0.9重量%及び0.1〜約0.7重量%が挙げられる。
【0035】
本発明の更なる実施形態において、ポリエステルエラストマーは、2酸残基の全体モルに対して、少なくとも90モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びテレフタル酸からなる群から選択される少なくとも一つの2酸の残基;全体ジオール残基に対して、約2〜約20モル%の、分子量約500〜2000及び1:2〜1:4の酸素対炭素比率を有するポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール及び、全体ジオール残基に対して、約98〜約80モル%の、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び1,4−ブタンジオールからなる群から選択される少なくとも一つのジオールの残基;及び全体2酸残基に対して、約0.1〜約2モル%の、トリメリト酸、無水トリメリト酸及びピロメリト酸2無水物からなる群から選択される少なくとも一つの分岐剤の残基を含む。なお別の実施例において、ポリエステルエラストマーは、2酸残基の全体モルに対して、少なくとも95モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸残基;及び全体ジオール残基に対して、約98〜約80モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含む。
【0036】
ポリエステルエラストマーは、また、脂肪族−芳香族ポリエステル(本明細書において「AAPE」と略す)を含むことが可能である。AAPEは、炭素数2〜約8の脂肪族ジオール、炭素数2〜8のポリアルキレンエーテルグリコール及び炭素数4〜約12の脂環式ジオールから選択される、1又はそれ以上の置換又は非置換の、直鎖又は分岐ジオールの残基を含有するジオール残基を含む、直鎖ランダムポリエステル又は分岐及び/又は鎖延長ポリエステルであることが可能である。置換ジオールは、一般的に、ハロ(halo)、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシ基から独立に選択される1〜約4個の置換基を含有する。用いることが可能であるジオールの例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、2,2,4―トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールが挙げられ、これらに限定するものではないが、好ましいジオールは1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールから選択される1又はそれ以上のジオールを含む。
【0037】
AAPEは、また、2酸残基の全体モルに対して、約35〜約99モル%の、炭素数2〜約12の脂肪族ジカルボン酸及び炭素数約5〜約10の脂環式ジカルボン酸から選択される、1又はそれ以上の置換又は非置換の、直鎖又は分岐非芳香族ジカルボン酸の残基を含有する2酸残基を含むことが可能である。置換非芳香族ジカルボン酸は、一般的に、ハロ、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシ基から選択される1〜約4個の置換基を含有する。脂肪族及び脂環式ジカルボン酸の非限定例には、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸、及び2,5−ノルボルナンジカルボン酸が挙げられる。非芳香族ジカルボン酸に加えて、AAPEは、2酸残基の全体モルに対して、約1〜約65モル%の、炭素数6〜約10の1又はそれ以上の置換又は非置換の芳香族ジカルボン酸の残基を含む。置換芳香族ジカルボン酸が用いられる場合に、それらは、一般的に、ハロ、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシ基から選択される1〜約4個の置換基を含有する。本発明のAAPE中に用いることが可能である芳香族ジカルボン酸の非限定例には、テレフタル酸、イソフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。
【0038】
一つの実施形態において、AAPEは、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール又は1,4−シクロヘキサンジメタノールの1又はそれ以上の残基及び(i)酸残基の全体モルに対して、約35〜約95モル%の、グルタル酸、ジグリコール酸、コハク酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びアジピン酸から選択される1又はそれ以上の非芳香族ジカルボン酸の残基及び(ii)酸残基の全体モルに対して、約5〜約65モル%の、テレフタル酸及びイソフタル酸から選択される1又はそれ以上の芳香族ジカルボン酸の残基を含む2酸残基を含む。更に好ましくは、非芳香族ジカルボン酸はアジピン酸を含み、芳香族ジカルボン酸はテレフタル酸を含み、ジオールは1,4−ブタンジオールを含む。
【0039】
本発明のAAPEの他の例には、2酸成分100モル%及びジオール成分100モル%に対して、以下のモル%での、以下のジオール及びジカルボン酸(又はジエステルなどのそれらのコポリエステル形成性同等品)から製造されるものが挙げられる:
(1)グルタル酸(約30〜約75%)、テレフタル酸(約25〜約70%)、1,4−ブタンジオール(約90〜100%)及び改質用ジオール(0〜約10%)、
(2)コハク酸(約30〜約95%)、テレフタル酸(約5〜約70%)、1,4−ブタンジオール(約90〜100%)及び改質用ジオール(0〜約10%)並びに
(3)アジピン酸(約30〜約75%)、テレフタル酸(約25〜約70%)、1,4−ブタンジオール(約90〜100%)及び改質用ジオール(0〜約10%)。
【0040】
改質用ジオールは、好ましくは1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びネオペンチルグリコールから選択される。好ましいAAPEは、アジピン酸残基約50〜約60モル%、テレフタル酸残基約40〜約50モル%及び少なくとも95モル%の1,4−ブタンジオール残基を含む直鎖、分岐又は鎖延長のコポリエステルである。なお更に好ましくは、アジピン酸残基は約55〜約60モル%であり、テレフタル酸残基は約40〜約45モル%であり、1,4−ブタンジオール残基は約95〜100モル%である。こうしたポリマーは、BASF(BASF Corporation)から商品名エコフレックス(ECOFLEX)(登録商標)ポリエステルで市販されている。
【0041】
追加的に、好ましいAAPEの具体例には、(a)グルタル酸残基50モル%、テレフタル酸残基50モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%、(b)グルタル酸残基60モル%、テレフタル酸残基40モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%又は(c)グルタル酸残基40モル%、テレフタル酸残基60モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%を含有するポリ(テトラメチレングルタレート−co−テレフタレート);(a)コハク酸残基85モル%、テレフタル酸残基15モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%又は(b)コハク酸残基70モル%、テレフタル酸残基30モル%及び1−4−ブタンジオール残基100モル%を含有するポリ(テトラメチレンスクシネート−co−テレフタレート);コハク酸残基70モル%、テレフタル酸残基30モル%及びエチレングリコール残基100モル%を含有するポリ(エチレンスクシネート−co−テレフタレート);及び(a)アジピン酸残基85モル%、テレフタル酸残基15モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%、又は(b)アジピン酸残基55モル%、テレフタル酸残基45モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%を含有するポリ(テトラメチレンアジペート−co−テレフタレート)が挙げられる。
【0042】
ポリエステルブレンドは、好ましくはポリエステル約5〜約99重量%及びポリエステルエラストマー約1〜約95重量%を含む。ブレンドの他の代表例には、ポリエステル5重量%、ポリエステルエラストマー95重量%;ポリエステル10重量%、ポリエステルエラストマー90重量%;ポリエステル20重量%、ポリエステルエラストマー80重量%;ポリエステル30重量%、ポリエステルエラストマー70重量%;ポリエステル40重量%、ポリエステルエラストマー60重量%;ポリエステル50重量%、ポリエステルエラストマー50重量%;ポリエステル60重量%、ポリエステルエラストマー40重量%;ポリエステル70重量%、ポリエステルエラストマー30重量%;ポリエステル80重量%、ポリエステルエラストマー20重量%;ポリエステル90重量%、ポリエステルエラストマー10重量%;ポリエステル95重量%、ポリエステルエラストマー5重量%が挙げられる。
【0043】
上述のポリエステルブレンドは、ポリエステルブレンドのカレンダ加工ロールへの付着を防止するために有効な量の離型添加剤を含むことが可能である。離型添加剤は、ポリエステルブレンドが、それ自体をロール周りに包み込んだり、又はロール表面上にポリエステルブレンドの過剰層を作り出したりすることなく、カレンダ加工ロールの間を自由に通ることを手助けすることができる。ポリエステルブレンド中で用いられる添加剤の量は、一般的に、ポリエステルブレンドの全体重量%に対して、約0.1〜約10重量%である。用いられる離型添加剤の最適量は、技術上周知の因子により決定され、装置、材料、プロセス条件及びフィルム厚さの変化に応じて決まる。離型添加剤レベルの追加例には、約0.1〜約5重量%及び約0.1〜約2重量%が挙げられる。本発明の離型添加剤の例には、エルシルアミド及びステアルアミドなどの脂肪酸アミド;ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸亜鉛などの有機酸の金属塩;ステアリン酸、オレイン酸及びパルミチン酸などの脂肪酸;脂肪酸塩;脂肪酸エステル;パラフィンワックス、リン酸エステル、ポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックスなどの炭化水素ワックス;化学的に改質されたポリオレフィンワックス;カルナバワックスなどのエステルワックス;モノ−及びジ−ステアリン酸グリセロールなどのグリセリンエステル;タルク;微結晶性シリカ;及びアクリルコポリマー(例えばローム&ハース(Rohm & Haas)から市販されているパラロイド(PARALOID)(登録商標)K175)が挙げられる。一般的に、添加剤はエルシルアミド、ステアルアミド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、モンタン酸、モンタン酸エステル、モンタン酸塩、オレイン酸、パルミチン酸、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、モノステアリン酸グリセロール又はジステアリン酸グリセロールの1又はそれ以上を含む。
【0044】
用いることが可能な別の離型添加剤は、(i)炭素数18超の脂肪酸又は脂肪酸塩及び(ii)炭素数18超の脂肪酸残基及び炭素数2〜約28のアルコール残基を含むエステルワックスを含む。脂肪酸又は脂肪酸塩対エステルワックスの比率は、1:1又はそれ以上であることが可能である。この実施形態において、上記比率での脂肪酸又は脂肪酸塩及びエステルワックスの組合せは、フィルム又はシートに5%未満のヘイズ値を提供する追加の利点を与える。炭素数18又はそれ以下の脂肪酸成分を有する添加剤は、低分子量を有し、従って、ポリエステルと混和性となる。こうした混和性添加剤は、不良剥離又はヘイズ値増大をもたらす不良の界面移動表面品質を有する。別の実施例において、脂肪酸又は脂肪酸塩対エステルワックスの比率は2:1又はそれ以上である。
【0045】
脂肪酸は、脂肪酸塩がモンタン酸のナトリウム塩、モンタン酸のカルシウム塩又はモンタン酸のリチウム塩の1又はそれ以上を含むことが可能であるモンタン酸を含むことが可能である。エステルワックスの脂肪酸残基はモンタン酸を含むことが可能である。エステルワックスのアルコール残基は、好ましくは炭素数2〜28である。アルコールの例には、モンタニルアルコール、エチレングリコール、ブチレングリコール、グリセロール及びペンタエリスリトールが挙げられる。添加剤は、また、例えば水酸化カルシウムなどの塩基により部分的に鹸化されたエステルワックスを含むことが可能である。
【0046】
本発明のポリエステル及びポリエステルエラストマーは、一般的な重縮合反応条件を用いて、適切なジカルボン酸、エステル、無水物又は塩、適切なジオール又はジオール混合物及び任意の分岐モノマーから容易に製造される。それらは、連続、半連続及びバッチ方式の運転により製造することが可能であり、多様な反応器タイプを用いることが可能である。適する反応器タイプの例には、攪拌タンク、連続攪拌タンク、スラリー、管型、ワイプトフィルム、流下膜式又は押出成形反応器が挙げられるが、これらに限定するものではない。本明細書において用いる用語「連続」は、中断無しのやり方で反応物質を導入し、生成物を同時に引き出す工程を意味する。「連続」とは、工程が、「バッチ」工程に較べて、実質的に又は完全に連続運転であることを意味する。「連続」は、例えばスタートアップ、反応器保全又は計画的シャットダウン期間のための工程連続性の正常な中断を禁じることを決して意味するものではない。本明細書において用いる用語「バッチ」は、すべての反応物質を反応器に添加し、次に、その間、材料を反応器中に全く供給しないか又は除去しない反応の所定の経路により処理する工程を意味する。用語「半連続(semicontinuous)」は、一部の反応物質を工程の初めに投入し、残りの反応物質を反応の進行につれて連続的に供給する工程を意味する。あるいは、半連続工程は、1又はそれ以上の生成物を反応の進行につれて連続的に除去することを除いて、すべての反応物質を工程の初めに添加するバッチ工程に類似の工程を包含することも可能である。工程は、経済的な理由により、及び高温で余りに長時間にわたって反応器中に留まってしまう場合、外見の劣化が生じるおそれがあるのでポリマーの優れた色合いを生み出すために連続工程として有利に運転される。
【0047】
本発明のポリエステルは当業者に公知の手順により製造することができる。ジオール、ジカルボン酸及び任意的な分岐モノマー成分の反応は、従来型のポリエステル重合条件を用いて行うことが可能である。例えば、エステル交換反応により、即ちジカルボン酸成分のエステル形態からポリエステルを製造する時に、反応工程は2段階を含むことが可能である。第1段階において、ジオール成分及び例えばジメチルテレフタレートなどのジカルボン酸成分は、高温、一般的に約150℃〜約250℃、約0.0kPaゲージ〜約414kPaゲージ(60ポンド/平方インチ、「psig」)の範囲にある圧力で、約0.5〜約8時間にわたり反応する。好ましくは、エステル交換反応用の温度は、約1〜約4時間にわたり約180℃〜約230℃の範囲にあり、一方、好ましい圧力は約103kPaゲージ(15psig)〜約276kPaゲージ(40psig)の範囲にある。その後、反応生成物は、より高温で、且つ減圧下に加熱して、これらの条件下で容易に揮発し、系から除去されるジオールの排除によりポリエステルを形成する。この第2段階、又は重縮合段階は、高真空下、且つ一般に約230℃〜約350℃、好ましくは約250℃〜約310℃、最も好ましくは約260℃〜約290℃の範囲にある温度で、約0.1〜約6時間、又は好ましくは約0.2〜約2時間にわたり、インヘレント粘度により測定する望ましい程度の重合度を有するポリマーが得られるまで続けられる。重縮合段階は、約53kPa(400トール)〜約0.013kPa(0.1トール)の範囲にある減圧下で行うことが可能である。攪拌又は適切な条件は、反応混合物の適切な熱伝達及び表面再生を確保するために両方の段階において用いられる。両方の段階の反応速度は、例えばアルコキシチタン化合物、アルカリ金属水酸化物及びアルコラート、有機カルボン酸塩、アルキル錫化合物及び金属酸化物などの適切な触媒により増大する。米国特許第5,290,631号明細書に記載されているものに類似の3段階の製造手順も、また、特に酸及びエステルの混合モノマー原料を用いる場合に、用いることが可能である。
【0048】
エステル交換反応によるジオール成分とジカルボン酸成分の反応が完遂することを確実にするために、ジカルボン酸成分1モルに対して、ジオール成分約1.05〜約2.5モルを用いることは、望ましいこともある。しかし、当業者は、ジオール成分対ジカルボン酸成分の比率が、一般に、反応過程が中で起こる反応器の設計により決定されることを理解する。
【0049】
直接エステル化による、即ちジカルボン酸成分の酸形態からのポリエステルの製造において、ポリエステルは、ジカルボン酸又はジカルボン酸混合物を、ジオール成分又はジオール成分混合物及び任意の分岐モノマー成分と反応させることにより製造する。約1.4〜約10の平均重合度を有する低分子量ポリエステル製品を製造するために、反応は、約7kPaゲージ(1psig)〜約1379kPaゲージ(200psig)、好ましくは約689kPa(100psig)未満の圧力で行われる。直接エステル化反応の間に用いる温度は、一般的に、約180℃〜約280℃の範囲にあり、更に一般的に約220℃〜約270℃の範囲にある。この低分子量ポリマーは、次に、重縮合反応により重合することが可能である。
【0050】
本発明のポリエステルブレンドは、また、可塑剤を含むことが可能である。可塑剤の存在は、カレンダ加工フィルム又はシートの可撓性及び良好な機械的特性を高めるために有用である。可塑剤は、また、ポリエステルの加工温度を低くすることに役立ち、ポリエステルブレンドのカレンダーロールへの付着を防止するために役立つことが可能である。可塑剤は、一般的に、1又はそれ以上の芳香族環を含む。好ましい可塑剤は、5ミル(0.127mm)厚さのポリエステルフィルムを溶解して160℃又はそれ以下の温度で透明な溶液を生成することにより示されるように、ポリエステル中に溶解する。更に好ましくは、可塑剤は、5ミル(0.127mm)厚さのポリエステルフィルムを溶解して150℃以下の温度で透明な溶液を生成することにより示されるように、ポリエステル中に溶解する。ポリエステル中への可塑剤の溶解度は以下のように測定することが可能である。
【0051】
1.厚さ5ミル(0.127mm)及びほぼガラスビンの幅に等しい標準参照フィルムの1/2インチ部分を小さなガラスビン中に置き、
2.ガラスビンに、フィルムが完全に覆われるまで可塑剤を添加し、
3.フィルム及び可塑剤を有するガラスビンを棚上に置いて、1時間後、及び再度4時間で観察し(フィルム及び液体の外見に注意すること)、
4.室温での観察後、ガラスビンを加熱ブロック中に置き、温度を1時間にわたり75℃一定にとどめ、フィルム及び液体の外見を観察し、
5.それぞれ以下の温度(℃):100、140、150、及び160に対して段階4を繰り返す。
【0052】
上記試験により測定される可塑剤及びそれらの溶解度の例は、表Iに示す。試験された温度範囲にわたる4又はそれ以上の値は、可塑剤が本発明における使用のための候補であることを示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
【表5】

【0058】
上記のそれに類似の試験は、Society of Plastic Engineers/Wiley and Sons,New York,1982,pp 136〜137により公開されているJ.Kern Sears and Joseph R.DarbyによるThe Technology of Plasticizersに記載されている。この試験において、ポリマー粒子は加熱顕微鏡試料台上の1滴の可塑剤中に置く。ポリマーが消える場合、結果としてそれは溶解している。本発明のポリエステルを溶解することで最も有効である可塑剤は、表Iにより4を超える溶解度を有すると共に、また、それらの溶解度パラメータにより区別することができる。可塑剤の溶解度パラメータ、又は凝集エネルギー密度の平方根、はColeman et al.,Polymer31,1187(1990)により記載されている方法により計算することができる。最も好ましい可塑剤は、約9.5〜約13.0cal0.5cm-1.5の範囲にある溶解度パラメータ(δ)を有する。可塑剤の溶解度パラメータがポリエステルの溶解度パラメータの1.5単位内にあることが好ましいことは、一般に理解される。表IIのデータは、この範囲内の溶解度パラメータを有する可塑剤はポリエステルを溶解するが、一方でこの範囲外の溶解度パラメータを有する可塑剤は有効でないことを示す。
【0059】
【表6】

【0060】
一般に、高分子量可塑剤は、カレンダ加工工程間の可塑剤の発煙及び損失を防止するために好ましい。可塑剤含量の好ましい範囲は、基材ポリエステル及び可塑剤の特性に応じて決まる。特に、周知のフォクス(Fox)式(T.G.Fox,Bull.Am.Phys.Soc.,1,123(1956))により予測されるように、ポリエステルのTgが低下するにつれて、十分にカレンダ加工することが可能であるポリエステルブレンドを得るために必要とされる可塑剤の量も低下する。一般的に、ポリエステルブレンドは、ポリエステルブレンドの全体重量に対して、約5〜約50重量%の可塑剤を含む。可塑剤レベルの他の例には、ポリエステルブレンドの約10〜約40重量%、約15〜約40重量%及び約15〜約30重量%が挙げられる。
【0061】
本発明により用いることが可能である可塑剤の例には、(i)フタル酸、アジピン酸、トリメリト酸、安息香酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、酪酸、グルタル酸、クエン酸又はリン酸の1又はそれ以上の残基を含む酸残基及び(ii)炭素数が約20個以下の脂肪族、脂環式、又は芳香族アルコールの1又はそれ以上の残基を含むアルコール残基を含むエステルが挙げられる。可塑剤のアルコール残基の更なる非限定例には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ステアリル・アルコール、ラウリル・アルコール、フェノール、ベンジル・アルコール、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及びジエチレングリコールが挙げられる。可塑剤は、また、1又はそれ以上の安息香酸エステル、フタル酸エステル、リン酸エステル又はイソフタル酸エステルを含むことが可能である。別の実施例において、可塑剤は、本明細書において「DEGDB」と略されるジ安息香酸ジエチレングリコールを含む。
【0062】
ポリエステルブレンドは、また、リン含有難燃剤を含むことが可能である。リン含有難燃剤はポリエステル又は可塑化ポリエステルと混和性であることが好ましい。本明細書において用いる用語「混和性(miscible)」は、難燃剤と可塑化ポリエステルを一緒に混合して加工条件又は使用条件下で多相に分離しない安定な混合物を形成することを意味すると理解されたい。従って、用語「混和性」は、難燃剤と可塑化ポリエステルが中で真の溶液を形成する「溶解性(soluble)」混合物及び難燃剤と可塑化ポリエステルの混合物が必ずしも真の溶液を形成しないが、単に安定したブレンドを形成することを意味する「適合性(相容性)(compatible)」混合物の両方を包含するように意図されている。好ましくは、リン含有化合物は、例えば有機置換基を含有するリン酸エステルなどの非ハロゲン化有機化合物である。難燃剤は、例えばホスフィン、亜リン酸エステル、亜ホスフィン酸エステル、亜ホスホン酸エステル、ホスフィン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィンオキシド及びホスフェートなどの技術上周知の広い範囲のリン化合物を含むことが可能である。リン含有難燃剤の例には、リン酸トリブチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブトキシエチル、リン酸t−ブチルフェニルジフェニル、リン酸2−エチルヘキシルジフェニル、リン酸エチルジメチル、リン酸イソデシルジフェニル、リン酸トリラウリル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシレニル、ジフェニルリン酸t−ブチルフェニル、レゾルシノール・ビス(リン酸ジフェニル)、リン酸トリベンジル、リン酸フェニルエチル、チオノリン酸トリメチル、チオノリン酸フェニルエチル、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、ペンチルホスホン酸ジエチル、メチルホスホン酸ジラウリル、メチルホスホン酸ジフェニル、メチルホスホン酸ジベンジル、クレジルホスホン酸ジフェニル、クレジルホスホン酸ジメチル、メチルチオノホスホン酸ジメチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸ベンジル、ジフェニルホスフィン酸メチル、トリメチルホスフィン・オキシド、トリフェニルホスフィン・オキシド、トリベンジルホスフィン・オキシド、4−メチルジフェニルホスフィン・オキシド、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリラウリル、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリベンジル、亜リン酸フェニルジエチル、亜リン酸フェニルジメチル、亜リン酸ベンジルジメチル、メチル亜ホスホン酸ジメチル、ペンチル亜ホスホン酸ジエチル、メチル亜ホスホン酸ジフェニル、メチル亜ホスホン酸ジベンジル、クレジル亜ホスホン酸ジメチル、ジメチル亜ホスフィン酸メチル、ジエチル亜ホスフィン酸メチル、ジフェニル亜ホスフィン酸フェニル、ジフェニル亜ホスフィン酸メチル、ジフェニル亜ホスフィン酸ベンジル、トリフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、及びメチルジフェニルホスフィンが挙げられる。
【0063】
本発明のリン含有難燃剤を説明する上で用いる用語「リン酸」は、リン酸などの無機酸、ホスホン酸及びホスフィン酸などの直接炭素−リン結合を有する酸及びリン酸などの第1及び第2段階のエステルなどの少なくとも一つの残留遊離酸基を含有する部分的にエステル化されたリン酸を包含する。本発明において用いることができる一般的なリン酸には、ジベンジルリン酸、ジブチルリン酸、ジ(2−エチルヘキシル)リン酸、ジフェニルリン酸、メチルフェニルリン酸、フェニルベンジルリン酸、ヘキシルホスホン酸、フェニルホスホン酸、トリルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、2−フェニルエチルホスホン酸、メチルヘキシルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、フェニルナフチルホスフィン酸、ジベンジルホスフィン酸、メチルフェニルホスフィン酸、フェニル亜ホスホン酸、トリル亜ホスホン酸、ベンジル亜ホスホン酸、ブチルリン酸、2−エチルヘキシルリン酸、フェニルリン酸、クレジルリン酸、ベンジルリン酸、フェニル亜リン酸、クレジル亜リン酸、ベンジル亜リン酸、ジフェニル亜リン酸、フェニルベンジル亜リン酸、ジベンジル亜リン酸、メチルフェニル亜リン酸、フェニルフェニルホスホン酸、トリルメチルホスホン酸、エチルベンジルホスホン酸、メチルエチル亜ホスホン酸、メチルフェニル亜ホスホン酸及びフェニルフェニル亜ホスホン酸が挙げられるが、これらに限定するものではない。難燃剤は、一般的に、1又はそれ以上のリン酸のモノエステル、ジエステル又はトリエステルを含む。別の実施例において、難燃剤は、本明細書において「RDP」と略されるレゾルシノールビス(リン酸ジフェニル)を含む。
【0064】
難燃剤は、ポリエステルブレンドの全体重量に対して、約5重量%〜約40重量%の濃度でポリエステルブレンドに添加することが可能である。難燃剤レベルの他の例には、約7重量%〜約35重量%、約10重量%〜約30重量%及び約10重量%〜約25重量%が挙げられる。リン含有難燃剤は、また、ポリエステルに対する可塑剤として機能することが可能である。この実施形態において、難燃剤は、難燃剤の可塑剤としての有効性に応じて、ポリエステルブレンドの可塑剤成分の一部又はすべてに対して代替することが可能である。一般的に、可塑化性難燃剤を用いる場合に、カレンダ加工されたフィルム又はシートの望ましい燃焼速度又は難燃度を達成するために必要とされる難燃剤の量が、最初に決定し、次に、フィルム又はシートの望ましいTgを作り出すために必要とされる可塑剤の量を調整する。
【0065】
酸化安定剤は、また、ロール上での溶融又は半溶融材料の処理間の酸化劣化を防止するために、本発明のポリエステルと共に用いることが可能である。こうした安定剤には、チオジプロピオン酸ジステアリル又はチオジプロピオン酸ジラウリルなどのエステル;チバ・ガイギー(Ciba−Geigy AG)から市販されているイルガノックス(IRGANOX)(登録商標)1010、エチル(Ethyl Corporation)から市販されているエタノックス(ETHANOX)(登録商標)330及びブチル化ヒドロキシトルエンなどのフェノール系安定剤;及びチバ・ガイギーから市販されているイルガフォス(IRGAFOS)(登録商標)及びGEスペシャルティー・ケミカルズ(GE Specialty Chemicals)から市販されているウエストン(WESTON)(登録商標)安定剤が挙げられる。これらの安定剤は単独で又は組合せて用いることが可能である。
【0066】
ポリエステルブレンドの溶融強度を望ましいレベルに増大させるために、スルホイソフタル酸などの作用物質を用いることも可能である。加えて、ポリエステルブレンドは、所望により、染料、顔料、充填剤、艶消し剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、発泡剤、チョップトファイバ、ガラス、衝撃調整剤、カーボンブラック、タルク及びTiO2などを含有することが可能である。時にトナーと呼ばれる着色剤は、ポリエステルブレンド及びカレンダ加工された製品に望ましい中性色相及び/又は輝度を付与するために添加することが可能である。
【0067】
例えば難燃剤、離型添加剤、可塑剤及びトナーなどのポリエステルブレンドの種々の成分は、バッチ、半連続又は連続工程において混合することが可能である。小規模のバッチは、カレンダ加工の前にバンバリーミキサーなどの当業者に周知の任意の高強度混合装置中で容易に製造することが可能である。成分は、また、適切な溶媒中の溶液にブレンドすることが可能である。融解混合法は、ポリエステルを融解するために十分な温度で、ポリエステル、可塑剤、難燃剤、添加剤及び任意の追加の非重合成分を混合することを包含する。ブレンドは更なる使用のため冷却しペレット化することが可能であるか、又は融解ブレンドはこの溶融ブレンドからフィルム又はシートに直接カレンダ加工することができる。本明細書において用いる用語「融解(melt)」は、単にポリエステルを軟化することを包含するが、これに限定するものではない。ポリマー技術分野において一般に公知である融解混合法については、「Mixing and Compounding of Polymers」(I.Manas−Zloczower & Z.Tadmor editors,Carl Hanser Verlag Publisher,1994,New York,N.Y.)を参照すること。着色シート又はフィルムを望む場合に、顔料又は着色剤は、ジオールとジカルボン酸の反応間にポリエステル混合物中に包含することが可能であるか、又は、それらは予備成形ポリエステルと融解混合することが可能である。着色剤を包含する好ましい方法は、着色剤がその色相を改良するために、ポリエステル中に共重合され組み込まれるような反応基を有する熱的に安定な有機着色化合物を有する着色剤を用いることである。例えば青及び赤置換アントラキノンに限定するものではないが、それらを含む反応性ヒドロキシル及び/又はカルボキシル基を持つ染料などの着色剤は、ポリマー鎖中に共重合することが可能である。染料を着色剤として用いる場合に、それらは、エステル交換又は直接エステル化反応後、ポリエステル反応工程に添加することが可能である。
【0068】
別の実施形態において、本発明は、
(a)(i)2酸残基の全体モルに対して、少なくとも80モル%のテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサン−ジカルボン酸又はイソフタル酸の1又はそれ以上の残基を含む2酸残基及び
(ii)ジオール残基の全体モルに対して、約10〜約100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基及び0〜約90モル%のエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA及びポリアルキレンングリコールから選択される1又はそれ以上のジオール残基を含むジオール残基、
を含むランダムコポリマーである、少なくとも5分の溶融状態からの結晶化半時間を有するポリエステルの、混合物の全体重量に対して、約5〜約95重量%、
(b)(i)置換又は非置換の、直鎖又は分岐の炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸、置換又は非置換の、直鎖又は分岐の炭素数5〜20の脂環式ジカルボン酸及び置換又は非置換の、炭素数6〜20の芳香族ジカルボン酸からなる群から選択される1又はそれ以上の2酸残基を含む2酸残基及び
(ii)炭素数2〜20の脂肪族ジオール、分子量約400〜約12000のポリ(オキシアルキレン)−グリコール及びコポリ(オキシアルキレン)グリコール、炭素数5〜20の脂環式ジオール及び炭素数6〜20の芳香族ジオールからなる群から選択される1又はそれ以上の置換又は非置換の、直鎖又は分岐ジオールの残基を含むジオール残基
を含む1又はそれ以上のポリエステルエラストマーの混合物の全体重量に対して、約5〜約95重量%及び
(c)任意的な、ポリエステル混合物のカレンダ加工ロールへの付着を防止するのに有効な量の離型添加剤、
を含んでなるポリエステルブレンドを提供する。
【0069】
なお別の実施例において、本発明は、
(a)少なくとも5分の溶融状態からの結晶化半時間を有するランダムコポリマーであるポリエステル、
(b)(i)炭素数5〜20の1又はそれ以上の置換又は非置換の脂環式ジカルボン酸の残基を含む2酸残基及び
(ii)炭素数2〜20の脂肪族ジオール、分子量約400〜約12000のポリ(オキシアルキレン)−グリコール及びコポリ(オキシアルキレン)グリコール、炭素数5〜20の脂環式ジオール及び炭素数6〜20の芳香族ジオールからなる群から選択される1又はそれ以上の置換又は非置換の、直鎖又は分岐ジオールの残基を含むジオール残基、
を含む1又はそれ以上のポリエステルエラストマー及び
(c)任意的な、ポリエステルブレンドのカレンダ加工ロールへの付着を防止するのに有効な量の離型添加剤、
を含んでなるポリエステルブレンドを提供する。
【0070】
ブレンドは、上述のように、分岐モノマー、難燃剤及び可塑剤などを含むことが可能である。
【0071】
本発明は、また、本発明のポリエステルブレンドを押出成形するか又はカレンダ加工することを含む、フィルム又はシートを製造する方法を提供する。当業者に公知の方法を用いる従来型のカレンダ加工又は押出成形装置は、本発明のフィルム及びシートを製造するために用いることが可能である。
【0072】
本発明の方法は、更に、特にカレンダ加工法を参照して例証し、説明することが可能である。従来型のカレンダ加工法及び装置は、本発明のポリエステルブレンドをカレンダ加工するために用いることが可能である。本発明の方法において、ポリエステル組成物は、溶融、ペレット又は粉末形態にあることが可能であり、約100℃〜約200℃の温度で少なくとも二つのカレンダ加工ロール間の圧縮間隙を通過する。一般的に、ポリエステルブレンドは、可塑剤、難燃剤、添加剤及び他の成分と混合する。混合成分はニーダー又は押出成形機中で可塑化する。熱、剪断及び圧力を通して、乾燥粉末は溶解され、均質な溶融材料を形成する。押出成形機は、溶融材料を、連続工程において、第1及び第2の加熱カレンダーロールの間に挟まれたカレンダ加工ラインのカレンダ加工部分の上部に供給する。一般的に、3組の間隙又は隙間を形成するために、4本のロールを用いる。例えばロールは「L」型、逆「L」型又は「Z」構造に構成することが可能である。ロールは各種のフィルム幅を収容するために、大小の差がある。ロールは個別の温度及び速度制御を有する。材料は供給間隙と呼ばれる最初の二つのロール間の間隙を通して前に進む。ロールは、ロールの幅にわたり材料が広がるのを助けるために、反対方向に回転する。材料は第1と第2、第2と第3、第3と第4のロールなどの間を曲がりくねって進む。ロール間の隙間は、それが進むにつれてロールセット間で材料が薄くなるように、各ロール間の厚さを減じる。従って、得られるフィルム又はシートは、ポリエステル組成物を加熱ロール間の圧縮間隙に通すことにより作り出される均一な厚さを有する。事実上、ポリエステル組成物はロールを分離する間隙間で締め付けられる。カレンダ加工ロール間の各連続間隙は、最終フィルム又はシート寸法が得られるまでフィルム厚さを低下させる。
【0073】
本発明の一つの実施形態において、ポリエステルブレンドは、約0.55〜約0.85dL/gのインヘレント粘度及び、ポリエステルの全体重量に対して、約0.05〜約1重量%の分岐モノマーを有するポリエステルを含む。分岐剤と組み合わせたこのインヘレント粘度(以後「I.V.」と略す)の範囲は、より高い溶融強度及びより高い程度の剪断薄化を付与することができ、これは、本発明の新規なポリエステルブレンドが、より低い温度で、高いライン速度で、そして得られるフィルム又はシートの過度の縮小なしで、カレンダ加工することを可能にする。ポリエステルにより示すことが可能なI.V.値の他の例には、約0.55〜約0.70dL/g、約0.55〜約0.65dL/g及び約0.60〜約0.65dL/gが挙げられる。
【0074】
ロールに対する一般的な加工温度は、一般に、約80℃〜約220℃、好ましくは約100℃〜約200℃、更に好ましくは約130℃〜約180℃の範囲にある。一部の加水分解に不安定なポリエステルに対して、ポリエステル樹脂ブレンドを予備乾燥すること、又は加工の間に過度の水分を排出することは、加水分解によるポリマー劣化を防止するために望ましい。カレンダ部分を通過した後、材料は、それが延伸され次第に冷却されフィルム又はシートを形成する別の一連のロールを移動する。材料は、また、冷却前にエムボス加工するか又は焼きなましをすることが可能である。冷却された材料は、次にマスタロール上に巻きつける。カレンダ加工工程の一般的な説明は、Jim Butschli,Packaging World,p.26〜28,June 1997 and W.V.Titow,PVC Technology,4th Edition,pp 803〜848(1984),Elsevier Publishing Co.に開示されている。
【0075】
押出成形法はフィルム、シート及びプロファイル製品の製造に対して周知である。押出成形法を用いるフィルム及びシート製造のため、2軸又は1軸法を用いることが可能である。本発明の目的のため、2軸及び1軸の押出成形法の両方で実行可能である。押出成形機は、また、カレンダ加工工程の前部に供給するために用いることが可能である。この実施形態において、押出成形機は1軸押出成形機、2軸押出成形機、プラネタリ押出成形機又はコニーダーであることが可能である。フィルム及びシート用の押出成形法において、溶融ポリマーブレンドは押出成形機の末端上のスリットダイに供給され、溶融材料は、次に、成形ロールに押し出されて冷却され研磨される。ポリエステル用の一般的な押出成形法は、匹敵するカレンダ加工法よりも約20℃〜約80℃高く運転される。
【0076】
従って、本発明は、更に、本明細書において記載されるポリマーブレンドを含む、押出成形法又はカレンダ加工法により製造されるフィルム又はシートを提供する。フィルム又はシートは、更に、種々の実施形態、濃度範囲及びポリエステルブレンド用に本明細書において記載されるポリエステル、ポリエステルエラストマー、ジオール、2酸、分岐モノマー、離型添加剤、難燃剤及び可塑剤、改質用2酸の組合せ、本発明のカレンダ加工及び押出成形法を包含することが可能である。本発明は、更に、以下の実施例により例証し、説明する。
【実施例】
【0077】
ポリエステル組成物
非晶質コポリエステルA、B、C及びD並びにポリエステルエラストマーE及びFを、例1〜7において用いられるポリエステルブレンドを製造するために用いた。これらのポリエステル及びポリエステルエラストマーの組成を以下の表IIIに一覧する。
【0078】
【表7】

【0079】
試験手順
1.折り曲げ(Bend Crease)
例1〜5において製造したフィルムを以下の折り曲げ試験手順にかけた。
【0080】
長さ5インチ及び少なくとも1/2”幅のフィルムを切り出す。両端を一緒に合わせ、元のフィルム形態から180°変化を形成するようなやり方でフィルム長さの中央を曲げる。ペン又は類似の器具によって曲がりに沿って滑り圧力を加えることにより、曲がりに折り目をつける。外径の白化を観察する。ここで、フィルムが「開かれ」、折り目を開けて平らになるまで折り目を元のように開ける。フィルムの白化、及び容易に見ることができる割れを観察する。
【0081】
2.引張応力
例6〜7において製造したフィルムを以下の引張応力手順にかけた。
【0082】
幅1インチx長さ5インチのフィルムを切り出す。一定圧力をかけてフィルムを延伸し、中心点の反対方向に引っ張る。延伸速度は出発から2”/分一定であることが好ましい。元からの透明度/ヘイズレベルの変化を観察する。
【0083】
透明度の低下、従ってヘイズ値の増加は、応力白化の証拠である。透明度/ヘイズ値変化がないことはフィルムを非白化とみなせる。
【0084】
この手順の拡大部分は、それらの多くが応力白化の表示を生じる応力及びボイド化の形成を増幅させる着色剤又は充填剤を添加することである。同様の延伸手順に従った後、色が保持され、白化せず、及び/又は延伸部のフィルム表面が壊れない場合、非白化の表示が記録される。
【0085】
3.引張及び伸び
引張及び伸びを両方ともASTM・D882に従って測定した。
【0086】
4.引裂力及び平均引裂抵抗
引裂力及び平均引裂抵抗を両方ともASTM・D1938に従って測定した。
【0087】
5.60°での光沢
この試験をASTM・D523に従って行った。
【0088】
6.計測装置付き衝撃
この試験をASTM・D3763に従って行った。
【0089】
例1
170℃〜180℃間の温度で、Dr.コリン(Collin)2ロールミルを用いて、ポリエステルAをポリエステルエラストマーFと融解混合しカレンダ加工することにより、以下のフィルムを製造した。各ブレンドは、2ロールミルへの付着を防止するために、0.75重量%の離型添加剤ワックス(リコワックス(LICOWAX)(登録商標)Sモンタン酸(クラリアント(Clariant Corporation)から市販)、及びリコワックス(登録商標)OP(クラリアントから市販、水酸化カルシウムにより部分的に鹸化されたモンタン酸のブチレングリコールエステル)の重量で1:1のブレンド)を含有した。得られるフィルム試料を、材料が折り曲げられた後、視覚検査により白化を吟味した。結果を以下の表IVに示す。
【0090】
【表8】

【0091】
例2
195℃で、Dr.コリン2ロールミルを用いて、上記ポリエステルB(90重量%)を、ポリエステルエラストマーF(10重量%)及び約0.9重量%の離型添加剤ワックス(クラリアントから市販されているリコモント(LICOMONT)(登録商標)ET−132)と融解混合しカレンダ加工した。このブレンドから形成されるフィルムに対して、フィルムが折り曲げられた後、白化は全く見られなかった。
【0092】
例3
ポリエステルC、ポリエステルエラストマーF(1重量%、5重量%、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%及び50重量%)及び0.2重量%の離型添加剤ワックス(リコモント(登録商標)ET−132)を含有する一連のブレンドを製造し、175℃〜190℃間の温度で、Dr.コリン2ロールミルを用いてカレンダ加工した。5重量%を超えるポリエステルエラストマーFを含有するすべてのブレンド配合物から形成されるフィルムは、材料が折り曲げられた後、白化を示さなかった。
【0093】
例4
上記ポリエステルAを、ポリエステルエラストマーE(5重量%、10重量%及び20重量%)、0.75重量%の離型添加剤ワックス(リコワックス(登録商標)Sモンタン酸(クラリアントから市販)、及びリコワックス(登録商標)OP(クラリアントから市販、水酸化カルシウムにより部分的に鹸化されたモンタン酸のブチレングリコールエステル)の重量で1:1のブレンド)、及び約5重量%のカーボンブラックと共に融解混合し、170℃で、Dr.コリン2ロールミルを用いてカレンダ加工した。これらの配合物から形成されるいかなるフィルムにも、材料が折り曲げられた後、白化の証拠は全く見られなかった。
【0094】
例5
ポリエステルAを、0重量%、10重量%、20重量%及び30重量%のポリエステルエラストマーF、及び1重量%のカーボンブラックと融解混合し、得られる混合物を249℃〜257℃(480〜495°F)間の温度で押し出して名目上の厚さ10ミル(254μm)を有するフィルムを形成した。
【0095】
フィルム試料を100℃で140時間にわたり乾燥器中で熟成し、それらの物理的特性を未熟成フィルム試料と比較した。熟成及び未熟成フィルムに対する物理的データを以下の表V〜VIIIに与える。
【0096】
フィルムを、アクリル接着剤を用いて2インチX4インチX1/8インチ厚さのアルミ板に積層し、板を180度角度に曲げることにより折り曲げた後、これらブレンドのフィルム、又は対照フィルム(0重量%のポリエステルエラストマーF)において白化は全く見られなかった。「非熟成」対照品及び実験ブレンドフィルムは、良好な強度及び強靭性を示した。100℃での140時間にわたる「熟成」後、対照フィルムは衝撃特性を失うと共に、脆さの増大を示した。しかし、「熟成」ブレンドフィルム試料は、良好な耐熱性、強度、及び強靭性を示した。「熟成」したポリエステルエラストマーFの20%又はそれ以上のブレンドは、0℃の衝撃温度においてさえそれらの延性性質を保持した。
【0097】
【表9】

【0098】
【表10】

【0099】
【表11】

【0100】
【表12】

【0101】
例6
ポリエステルDを、0.75重量%の離型剤ワックス(リコワックス(登録商標)Sモンタン酸(クラリアントから市販)、及びリコワックス(登録商標)OP(クラリアントから市販、水酸化カルシウムにより部分的に鹸化されたモンタン酸のブチレングリコールエステルの、重量で1:1のブレンド)及び表IXに一覧されるレベルでのストレス添加剤と共に、165〜170℃のロール設定温度、前方から後方への差動設定10%を伴うロール20rpm及び0.20mmの隙間設定での、計測装置付きDr.コリン2ロールミルを用いて配合した。融解生成物形成及び均一なポリマー層分布及び回転の確立が完了すると、フィルムを5rpmで除去した。引張応力評価を行う前に、これらのフィルムを放置して少なくとも24時間にわたり「熟成」した。結果を表IXに示す。表中の「あり」は、目に見える白化又は表面破裂が観察されたことを意味し、「なし」は、白化又は表面破裂がフィルム中に全く観察されなかったことを意味する。
【0102】
【表13】

【0103】
例7
一部のストレス添加剤、及びポリエステルブレンドへの着色剤として添加されるカーボンブラック1重量%を伴って、例6を繰り返した。シトレス添加剤、それらの濃度、引張応力評価の結果を表Xに示す。表中の「あり」は、目に見える白化又は表面破裂が観察されたことを意味し、「なし」は、白化又は表面破裂がフィルム中に全く観察されなかったことを意味する。
【0104】
【表14】

【0105】
本発明は、その好ましい実施形態を特に参照して詳細に説明してきたが、その変化及び修正が、本発明の精神及び範囲内で達成することができることは理解されたい。
以下に、本発明及びその関連態様を記載する。
態様1.(a)少なくとも5分の、溶融状態からの結晶化半時間を有するランダムコポリマーであるポリエステル、並びに
(b)(i)炭素数5〜20の、1又はそれ以上の置換又は非置換の脂環式ジカルボン酸の残基を含む2酸残基、及び
(ii)炭素数2〜20の脂肪族ジオール、分子量400〜12000のポリ(オキシアルキレン)−グリコール及びコポリ(オキシアルキレン)グリコール、炭素数5〜20の脂環式ジオール及び炭素数6〜20の芳香族ジオールからなる群から選択される1又はそれ以上の置換又は非置換で、直鎖又は分岐ジオールの残基を含むジオール残基を含む1又はそれ以上のポリエステルエラストマー、
を含んでなるポリエステルブレンド。
態様2.前記ポリエステルブレンドのカレンダ加工ロールへの付着を防止するのに有効な量の離型添加剤を更に含む態様1に記載のポリエステルブレンド。
態様3.離型添加剤がエルシルアミド、ステアルアミド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、モンタン酸、モンタン酸エステル、モンタン酸塩、オレイン酸、パルミチン酸、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、モノステアリン酸グリセロール及びジステアリン酸グリセロールからなる群から選択される態様2に記載のポリエステルブレンド。
態様4.離型添加剤が(i)炭素数18超の脂肪酸又はその塩及び(ii)炭素数18超の脂肪酸残基及び炭素数2〜28のアルコール残基を含むエステルワックスを含む態様2に記載のポリエステルブレンド。
態様5.可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、充填剤、着色剤及び顔料からなる群から選択される1又はそれ以上の添加剤を更に含む態様1に記載のポリエステルブレンド。
態様6.ポリエステルがコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸及びスルホイソフタル酸からなる群から選択される1又はそれ以上の改質用酸を更に含む態様1に記載のポリエステルブレンド。
態様7.ポリエステルが、ポリエステルの全体重量に対して、0.05〜1重量%の、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸2無水物、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、クエン酸、酒石酸及び3−ヒドロキシグルタル酸からなる群から選択される分岐モノマーの1又はそれ以上の残基を更に含む態様1に記載のポリエステルブレンド。
態様8.ポリエステルエラストマーが1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,3−シクロヘキサンジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも一つの2酸の残基を含む態様1に記載のポリエステルブレンド。
態様9.ポリエステルエラストマーがエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチルプロパンジオール、2,2−ジメチルプロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカンジオール、2,2,4,4―テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリ(エチレンエーテル)グリコール、ポリ(プロピレンエーテル)グリコール及びポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールからなる群から選択される少なくとも一つのジオールの残基を含む態様1に記載のポリエステルブレンド。
態様10.ポリエステルエラストマーが、ポリエステルエラストマーの全体重量に対して、0.05〜1重量%の、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸2無水物、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、クエン酸、酒石酸、及び3−ヒドロキシグルタル酸からなる群から選択される分岐モノマーの1又はそれ以上の残基を更に含む態様9に記載のポリエステルブレンド。
態様11.ポリエステルエラストマーが
(a)(i)2酸残基の全体モルに対して、少なくとも90モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸残基及び
(ii)全体2酸残基に対して、0.1〜2モル%のトリメリット酸、無水トリメリット酸及びピロメリット酸2無水物からなる群から選択される少なくとも一つの分岐剤の残基
を含む2酸残基並びに
(b)(i)全体ジオール残基に対して、2〜20モル%の、分子量500〜2000のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール及び
(ii)全体ジオール残基に対して、98〜80モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール及び1,4−ブタンジオールからなる群から選択される少なくとも一つのジオールの残基
を含むジオール残基
を含む態様1に記載のポリエステルブレンド。
態様12.15〜25重量%のポリエステルエラストマーを含む態様1に記載のポリエステルブレンド。
態様13.態様1に記載のポリエステルブレンドをカレンダ加工するか、又は押出成形することを含んでなるフィルム又はシートの製造方法。
態様14.態様2に記載のポリエステルブレンドをカレンダ加工するか、又は押出成形することを含んでなるフィルム又はシートの製造方法。
態様15.態様1に記載のポリエステルブレンドを含む、押出成形又はカレンダ加工法により製造されるフィルム又はシート。
態様16.態様2に記載のポリエステルブレンドを含む、押出成形又はカレンダ加工法により製造されるフィルム又はシート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも5分の、溶融状態からの結晶化半時間を有するポリエステルであって、(i)二酸残基の合計モル数に基づいて、少なくとも80モル%の、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はイソフタル酸から選ばれた1種又はそれ以上の酸の二酸残基及び
(ii)シクロヘキサンジメタノールから選ばれたジオール残基10〜100モル%及び炭素数2〜20の1種又はそれ以上の他のジオール残基0〜90モル%
を含む、ブレンドの合計重量に基づいて10〜90重量%の、ランダムコポリマーポリエステル並びに
(b)(i)炭素数5〜20の、1又はそれ以上の置換又は非置換の脂環式ジカルボン酸の残基を含む2酸残基及び
(ii)炭素数2〜20の脂肪族ジオール、分子量400〜12000のポリ(オキシアルキレン)−グリコール及びコポリ(オキシアルキレン)グリコール、炭素数5〜20の脂環式ジオール及び炭素数6〜20の芳香族ジオールからなる群から選択される1又はそれ以上の置換又は非置換で、直鎖又は分岐ジオールの残基を含むジオール残基
を含む、ブレンドの合計重量に基づき、10〜90重量%の1又はそれ以上のポリエステルエラストマー
を含んでなるポリエステルブレンドであって
(c)前記ポリエステルブレンドのカレンダ加工ロールへの付着を防止するのに有効な量の離型添加剤を更に含むポリエステルブレンド
【請求項2】
離型添加剤がエルシルアミド、ステアルアミド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、モンタン酸、モンタン酸エステル、モンタン酸塩、オレイン酸、パルミチン酸、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、モノステアリン酸グリセロール及びジステアリン酸グリセロールからなる群から選択される請求項1に記載のポリエステルブレンド。
【請求項3】
離型添加剤が(i)炭素数18超の脂肪酸又はその塩及び(ii)炭素数18超の脂肪酸残基及び炭素数2〜28のアルコール残基を含むエステルワックスを含む請求項1に記載のポリエステルブレンド。
【請求項4】
可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、充填剤、着色剤及び顔料からなる群から選択される1又はそれ以上の添加剤を更に含む請求項1に記載のポリエステルブレンド。
【請求項5】
ポリエステル(a)がコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸及びスルホイソフタル酸からなる群から選択される1又はそれ以上の改質用酸を更に含む請求項1に記載のポリエステルブレンド。
【請求項6】
ポリエステル(a)が、ポリエステルの全体重量に対して、0.05〜1重量%の、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸2無水物、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、クエン酸、酒石酸及び3−ヒドロキシグルタル酸からなる群から選択される分岐モノマーの1又はそれ以上の残基を更に含む請求項1に記載のポリエステルブレンド。
【請求項7】
ポリエステルエラストマーが1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,3−シクロヘキサンジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも一つの2酸の残基を含む請求項1に記載のポリエステルブレンド。
【請求項8】
ポリエステルエラストマーがエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチルプロパンジオール、2,2−ジメチルプロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカンジオール、2,2,4,4―テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリ(エチレンエーテル)グリコール、ポリ(プロピレンエーテル)グリコール及びポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールからなる群から選択される少なくとも一つのジオールの残基を含む請求項1に記載のポリエステルブレンド。
【請求項9】
ポリエステルエラストマーが、ポリエステルエラストマーの全体重量に対して、0.05〜1重量%の、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸2無水物、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、クエン酸、酒石酸、及び3−ヒドロキシグルタル酸からなる群から選択される分岐モノマーの1又はそれ以上の残基を更に含む請求項8に記載のポリエステルブレンド。
【請求項10】
ポリエステルエラストマーが
(a)(i)2酸残基の全体モルに対して、少なくとも90モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸残基及び
(ii)全体2酸残基に対して、0.1〜2モル%のトリメリット酸、無水トリメリット酸及びピロメリット酸2無水物からなる群から選択される少なくとも一つの分岐剤の残基
を含む2酸残基並びに
(b)(i)全体ジオール残基に対して、2〜20モル%の、分子量500〜2000のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール及び
(ii)全体ジオール残基に対して、98〜80モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール及び1,4−ブタンジオールからなる群から選択される少なくとも一つのジオールの残基
を含むジオール残基
を含む請求項1に記載のポリエステルブレンド。
【請求項11】
15〜25重量%のポリエステルエラストマーを含む請求項1に記載のポリエステルブレンド。
【請求項12】
請求項1に記載のポリエステルブレンドをカレンダ加工するか、又は押出成形することを含んでなるフィルム又はシートの製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載のポリエステルブレンドを含む、押出成形又はカレンダ加工法により製造されるフィルム又はシート。

【公開番号】特開2013−14788(P2013−14788A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−235585(P2012−235585)
【出願日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【分割の表示】特願2007−541360(P2007−541360)の分割
【原出願日】平成17年11月12日(2005.11.12)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】