説明

フィルム型培地による微生物検査方法およびこの微生物検査方法に用いる画像取込ツ−ル

【課題】ユーザが専用の機器や知識・経験を必要とせずに正確なコロニーカウント測定結果を取得することができるような新規なシステムを構築する。
【解決手段】培養層で検体をインキュベ−トした後のフィルム型培地10をトレイ20に載置した状態で汎用スキャナ30やデジタルカメラを用いて取り込んだ元画像データをユーザから受信し、該元画像データの傾きおよび位置、さらには画質を補正して補正画像データを作成する。これにより元画像データの取り込みに使用した機器の仕様や取り込み時の位置ずれなどによる個体差を排除し、統一的な基準の下で正確なコロニーカウントを行うことができるようになる。ユーザは、元画像データ取込ツールとして、傾き補正に参照する位置認識マーカ24a〜24d、画質補正に参照するカラーチャート25、グレースケールチャート26などが表示されたトレイ20を使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム型培地による微生物検査方法およびこの微生物検査方法に用いる画像取込ツ−ルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年ますます食品衛生に関する要求が高まっており、様々な国から食品の輸入・輸出が行われているグロ−バル環境の下で、食品の安心と安全は全世界の共通課題として今後より一層クロ−ズアップされるものと思われる。
【0003】
食品衛生検査の主要な一手段として、検体を培地で培養した後に検体内のコロニー数をカウントするコロニーカウント処理が広く行われている。この培地としては、古くからシャ−レに充填した寒天培地が使用されてきたが、近年、これに代えて、フィルムないしシ−ト状の乾燥培地の使用が徐々に普及してきている。このフィルム型培地は、基材シ−トと、該基材シ−ト上に形成される枠と、該枠内に設けられる培養層と、該培養層を被覆するカバ−シ−トとを有して構成されるものであり、下記特許文献1〜4などに公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−15379号公報
【特許文献2】特表平7−501943号公報
【特許文献3】特表平9−508279号公報
【特許文献4】特表2004−515236号公報
【0005】
このようなフィルム型培地を用いることで、培養層に検体を接種した後、カバ−シ−トを被せて所定温度で所定時間インキュベ−トし、これをコロニーカウント装置に投入して、インキュベ−ト後の発生コロニー数をカウントして、検体中の一般生菌数、大腸菌群数などを測定することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フィルム型培地を用いたとしても、コロニーカウントのためのシグナル解析には専用の機器とオペレ−タの知識・経験を必要とする。
【0007】
そこで、本発明者らは、インキュベ−ト済のフィルム型培地を専用の高価なコロニーカウント装置に投入して熟練オペレ−タによって解析することに代えて、汎用の安価なフラットベッドスキャナやデジタルカメラを利用して誰でも簡便に且つ低コストで微生物検査を行うことについて検討した。フラットベッドスキャナはデジタルカメラの普及などに伴って現在では各社から多種多様な製品がきわめて安価に提供されており、その操作も容易であるから、ユ−ザサイドにおいてこれを用いるだけでコロニーカウント処理が行われるようになれば、大規模ラボのみならず、小規模ラボやラボを持たない新興国などにおいても容易に導入可能である。
【0008】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、ユ−ザサイドでは安価で汎用性の高いフラットベッドスキャナやデジタルカメラを用い、スキャナの場合は、インキュベ−ト済のフィルム型培地を載せて画像デ−タを取り込み、デジタルカメラの場合は、三脚にて垂直にフィルム型培地を配置して撮影するだけで、正確なコロニーカウント測定結果を取得することができるような新規なシステムを構築することである。
【0009】
また、本発明が解決しようとするもう一つの課題は、上記システムにおいてインキュベ−ト済のフィルム型培地をフラットベッドスキャナに載せたりデジタルカメラで撮影して画像デ−タを取り込む際に好適に用いられる画像デ−タ取込用ツ−ルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に係る本発明は、フィルム型培地の培養層で検体をインキュベ−トした後の該フィルム型培地の元画像データをユーザからのデータ送信によって取得する元画像データ取得ステップと、取得した元画像データの傾きを補正する第一の補正ステップと、取得した元画像データの画質を補正する第二の補正ステップと、これら第一および第二の補正ステップで得た補正画像データを用いて培養層中のコロニー数をカウントする測定ステップと、を含むことを特徴とするフィルム型培地による微生物検査方法である。
【0011】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載のフィルム型培地による微生物検査方法において、前記第一の補正ステップは、前記第一の補正ステップは、前記元画像データに含まれる位置情報から特定される矩形の傾き角度を補正する処理を含み、前記測定ステップは、前記第一の補正ステップで補正された後の矩形内においてフィルム型培地の培養層に対応する画像領域内でコロニー数をカウントすることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る本発明は、請求項1または2記載のフィルム型培地による微生物検査方法において、前記第二の補正ステップは、前記元画像データの各画素を明度補正する処理を含み、前記測定ステップは、補正された明度が閾値より大きいときにその画素がコロニーの存在を示すものと判定することを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る本発明は、請求項3記載のフィルム型培地による微生物検査方法において、前記第二の補正ステップは、さらに前記元画像データの各画素を色相補正する処理を含み、前記測定ステップは、補正された色相を基にしてコロニーの菌種を判定し、補正された明度を基にして菌種ごとのコロニー数をカウントすることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る本発明は、請求項1ないし4のいずれか記載のフィルム型培地による微生物検査方法において、前記元画像データは、一または複数の前記インキュベート済フィルム型培地が装着されたトレイを描写する画像データであり、前記第一の補正ステップにおける補正処理に用いられる位置情報および前記第二の補正ステップにおける補正処理に用いられるカラーチャートおよびグレースケールチャートがいずれも前記トレイにあらかじめ表示されていることを特徴とする。
【0015】
請求項6に係る本発明は、請求項1ないし4のいずれか記載のフィルム型培地による微生物検査方法において、前記元画像データは、一または複数の前記インキュベート済フィルム型培地と該フィルム型培地とは別体として用意されたチャートシートとを含めて描写する画像データであり、前記第一の補正ステップにおける補正処理に用いられる位置情報は各フィルム型培地にあらかじめ表示されており、前記第二の補正ステップにおける補正処理に用いられるカラーチャートおよびグレースケールチャートは前記チャートシートにあらかじめ表示されていることを特徴とする。
【0016】
請求項7に係る本発明は、請求項1ないし4のいずれか記載のフィルム型培地による微生物検査方法において、前記元画像データは、一または複数の前記インキュベート済フィルム型培地を描写する画像データであり、前記第一の補正ステップにおける補正処理に用いられる位置情報および前記第二の補正ステップにおける補正処理に用いられるカラーチャートおよびグレースケールチャートがいずれも各フィルム型培地にあらかじめ表示されていることを特徴とする。
【0017】
請求項8に係る本発明は、請求項1ないし4のいずれか記載のフィルム型培地による微生物検査方法において、前記元画像データは、一または複数の前記インキュベート済フィルム型培地と共に前記第一の補正ステップにおける補正処理に用いられる位置情報を描写する第一の元画像データと、前記第二の補正ステップにおける補正処理に用いられるカラーチャートおよびグレースケールチャートを描写する第二の元画像データとからなり、前記元画像データ取得ステップは、前記第一の元画像データを取得する第一の元画像データ取得ステップと、前記第二の元画像データを取得する第二の元画像データ取得ステップとからなり、前記第一の元画像データ取得ステップで前記第一の元画像データを取得する都度前記第一の補正ステップを行って第一の元画像データについて各々第一の補正画像データを作成し、前記第二の元画像データ取得ステップで取得した前記第二の元画像データに基づいて行われる前記第二の補正ステップの処理結果を各第一の補正画像データに一元的に適用して第二の補正画像データを作成することを特徴とする。
【0018】
請求項9に係る本発明は、請求項5記載のフィルム型培地による微生物検査方法においてユーザが前記元画像データを取り込む際に使用する画像取込ツールであって、該画像取込ツールが前記トレイからなり、該トレイは、インキュベート済フィルム型培地を装着可能な培地収容部を複数備えると共に、前記位置情報と、前記カラーチャートおよびグレースケールチャートがあらかじめ表示されていることを特徴とする。
【0019】
請求項10に係る本発明は、請求項6記載のフィルム型培地による微生物検査方法においてユーザが前記元画像データを取り込む際に使用する画像取込ツールであって、該画像取込ツールは、前記フィルム型培地にあらかじめ表示された前記位置情報と、前記フィルム型培地とは別体として用意された前記チャートシートとからなることを特徴とする画像取込ツール。
【0020】
請求項11に係る本発明は、請求項10記載の画像取込ツールにおいて、前記チャートシートにも前記第一の補正ステップにおける補正処理に用いられる位置情報があらかじめ表示されていることを特徴とする。
【0021】
請求項12に係る本発明は、請求項7記載のフィルム型培地による微生物検査方法においてユーザが前記元画像データを取り込む際に使用する画像取込ツールであって、該画像取込ツールが、あらかじめ前記フィルム型培地自体に表示された前記位置情報と前記カラーチャートおよびグレースケールチャートとからなることを特徴とする画像取込ツール。
【0022】
請求項13に係る本発明は、請求項8記載のフィルム型培地による微生物検査方法においてユーザが前記第一の元画像データを取り込む際に使用する画像取込ツールであって、該画像取込ツールが前記トレイからなり、該トレイは、インキュベート済フィルム型培地を装着可能な培地収容部を複数備えると共に、前記位置情報があらかじめ表示されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ユ−ザサイドでは安価で汎用性の高いフラットベッドスキャナやデジタルカメラを用い、スキャナの場合は、インキュベ−ト済のフィルム型培地を載せて画像デ−タを取り込み、デジタルカメラの場合は、三脚にて垂直にフィルム型培地を配置して撮影して元画像データを取得し、これを処理サーバを備える解析センターに送信するだけで、正確なコロニーカウント測定結果を取得することができる。したがって、大規模ラボのみならず、小規模ラボやラボを持たない新興国などにおいても容易に微生物検査を行うことができ、きわめて利便性が高い。
【0024】
さらに、本発明によれば、ユーザがスキャナやデジタルカメラを用いて画像データを取り込む作業を容易にするための画像取込ツールが提供されるので、ユーザはこの画像取込ツールを用いて、簡単に画像データを取得することができる。
【0025】
処理サーバには多数のユーザから多種多様な機器(スキャナやデジタルカメラ)を用いて取り込まれた画像データが送られ、画像データ取込の際の位置ずれ(傾き)なども含まれる可能性があるが、取得した元画像データの傾きを補正する第一の補正ステップと、取得した元画像データの画質を補正する第二の補正ステップとを通じて、処理サーバが備えるコロニーカウントシステムや関連ソフトウェアでの解析に適した補正画像データに変換されるので、ユーザサイドにおける画像取込機器の機種や画像取込時の位置ずれなどに起因するバラツキがあっても、これを解消して、正確なコロニーカウント測定結果を得ることができる。元画像データ送信元のユーザは、これをPCのディスプレイ上で確認し、必要に応じてデータ保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明で用いるフィルム型培地の一例を示す斜視図である。
【図2】インキュベ−ト済フィルム型培地を所定個数載置可能なトレイ(本発明のフィルム型培地による微生物検査方法で用いる画像取込ツ−ル)の一実施形態を示す平面図である。
【図3】図2A−A切断線による断面図である。
【図4】本発明によるフィルム型培地による微生物検査システムの概略構成図である。
【図5】本システムにおいてコロニーカウント処理を行うときの概略的な処理フロ−を示す図である。
【図6】図2のトレイの各培地収容部にインキュベ−ト済フィルム型培地を載置収容した状態の平面図である。
【図7】本システムにおいて解析センタの処理サーバで実行される処理のフローチャートである。
【図8】この処理中の傾き補正処理についての説明図である。
【図9】この処理において使用される元画像データ(a)と傾き補正処理後の画像データ(b)を示す説明図である。
【図10】本発明のフィルム型培地による微生物検査方法で用いる画像取込ツールの別の実施形態において使用されるチャートシートの平面図である。
【図11】この実施形態において図10のチャートシートと共に使用されるフィルム型培地を示す平面図である。
【図12】この実施形態においてユーザがスキャナまたはデジタルカメラで取り込んだ元画像データの一例を示す説明図である。
【図13】本発明のフィルム型培地による微生物検査方法で用いる画像取込ツールのさらに別の実施形態において用いられるフィルム型培地を示す平面図である。
【図14】他の実施形態によるシステムにおいて解析センタの処理サーバで実行される処理のフローチャートである。
【図15】インキュベ−ト済フィルム型培地を所定個数載置可能なトレイ(本発明のフィルム型培地による微生物検査方法で用いる画像取込ツ−ル)の他実施形態を示す平面図である。
【図16】図15のトレイの変形例によるトレイを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0027】
まず、本発明で用いるフィルム型培地の一例について図1を参照して説明する。このフィルム型培地10は、特許文献1〜4に示される公知のものと同様に、基材シ−ト11と、基材シ−ト11上に形成される枠12と、枠12内に設けられる培養層13と、培養層13を被覆するカバ−シ−ト14とを有して構成される。
【0028】
基材シ−ト11はたとえばポリエチレンテレフタレ−ト(PET)で形成される。枠12はたとえばホットメルト樹脂などにより円形に形成され、その中に、たとえばポリビニルピロリドン(PVP)にゲル化剤を配合した培養層13が設けられる。カバ−シ−ト14にはたとえばOPPなどの透明軟質フィルムが用いられ、本例では基材シ−ト11と略同サイズにカットして用いて基材シ−ト11の上端縁部分にラミネ−トなどにより接着されている。
【0029】
本例のフィルム型培地10の基材シ−ト11には、培養層13でインキュベ−トした検体の希釈率をマーク式で記入する希釈率記入欄15、任意の検体情報をマーク式で記入する検体情報記入欄16、各フィルム型培地10を特定する(したがって該フィルム型培地10の培養層13でインキュベ−トした検体を特定する)シリアルナンバ−が格納されたシリアルナンバ−バ−コ−ド17が印刷表示されている。希釈率は検体情報の一つとして検体情報記入欄に含めても良く、この場合は希釈率表示欄15を設ける必要はない。また、検体情報のうち培地種別や消費期限などの各検体に固有のデ−タではなく多数の検体に共用できるデ−タについては、検体情報バ−コ−ド18を設けて印刷表示しても良い。
【0030】
このフィルム型培地10を使用して、所定の希釈率で希釈した所定量(たとえば1mL)の検体を培養層13に注入した後、孵卵器に入れて所定温度(たとえば36℃)および所定期間(たとえば48時間)インキュベ−トし、インキュベ−ト後のコロニー数をカウントするが、このコロニーカウント処理を行うに先立ってユーザが元画像データを取り込む際に使用する画像取込ツールとして、インキュベ−ト済フィルム型培地10を所定個数載置可能なトレイ20を使用することが好ましい。このトレイ20の一例について図2を参照して説明する。
【0031】
このトレイ20は、6個のフィルム型培地10,10・・・を載置収容可能に構成されており、PETなどの樹脂から所定サイズ(A4など)の平板状に成形されたベ−ス21には、フィルム型培地10の形状およびサイズ(基材シ−ト11の形状およびサイズ)に対応した所定数の培地収容部22,22・・・が形成されている。本例では、図示のように、3段×2列に形成された計6個の培地収容部22,22・・・を有している。
【0032】
具体的には、図3に示すように、フィルム型培地10の外寸より若干小さい寸法の矩形収容部22をベ−ス21の所定箇所に凹設すると共に、その外周縁下方部を外側に向けて切除して、フィルム型培地10と略同一の厚さ(深さ)および略同一の外寸(外径)を有する係止溝23を周設する。このような構成において、フィルム型培地10を収容部22に嵌め込んでその外周縁を係止溝23に嵌着させることにより、フィルム型培地10を収容部22に載置収容可能である。また、このようにして一旦収容部22に収容されたフィルム型培地10は、その後にトレイ20を裏返しても脱落することなく収容部22内に保持されるので、画像取込の際に、フィルム型培地10を載置収容したトレイ20を裏返した状態でスキャナにセットする作業を簡単に行うことができる。
【0033】
なお、図3に示す構造は、トレイ20を裏返したときにも収容部22に収容されたフィルム型培地10を脱落させずに保持するために採用し得る構造の一例にすぎず、同様の作用を果たすものであれば他の任意の構造を採用して良いことはもちろんである。たとえば、トレイ20の表面側に収容部22の一部、たとえば各辺の中央から内方に突出する係合爪を突出させておき、これら係合爪をトレイ裏返し時の脱落防止片として使用することができる。
【0034】
また、フィルム型培地10の外寸法と略同寸法の矩形開口をトレイ20に形成して培地収容部22としても良い。この構成にあっては、スキャナで画像取込するときは、トレイ20を裏返してスキャナの原稿台に置いた後、各培地収容部22の開口内にインキュベート済の矩形フィルム型培地10を裏返して嵌め込むようにして使用する。デジタルカメラで使用する場合は裏返す必要はなく、机などの上に表向きにして配置したトレイ20の各培地収容部22の開口内にインキュベート済の矩形フィルム型培地10を表向きに嵌め込むようにして使用する。
【0035】
また、ベ−ス21には、これら培地収容部22,22・・・の余白部の四隅に各々位置認識c24a〜24dが表示されている。これら4つの位置認識マ−カのうちの一つ、図3において左下の位置認識マ−カ24cは天地認識用の反転マ−カであり、他の3つの位置認識マ−カ24a,24b,24dとは異なる色(たとえば白色の位置認識マ−カ24a,24b,24dに対して反転マ−カ24cは黒色)に印刷されていて輝度が明確に異なるものとされている(詳細は後述)。
【0036】
さらに、ベ−ス21には、各段の培地収容部22,22間の余白部を利用して、カラ−チャ−ト25とグレ−スケ−ルチャ−ト26が表示されている。カラ−チャ−ト25はいわゆる色見本配列表であり、グレ−スケ−ルを除く基本12色を含むカラ−配列として表示されている。本例では18色のカラ−チャ−ト25が採用されている。グレ−スケ−ルチャ−ト26は白から黒までの無彩色を明暗で階調表示したものである。これらカラ−チャ−ト25およびグレ−スケ−ルチャ−ト26はベ−ス21上の上記所定箇所に印刷して表示しても良いし、市販されているものを貼着しても良い。
【0037】
次に、このトレイを用いて行うコロニーカウント処理システムの概要について図4を参照して説明する。
【0038】
このシステムにおいて、ユ−ザは、インキュベ−ト済のフィルム型培地10を載置収容したトレイ20を裏返した状態でフラットベッドスキャナ30(以下単に「スキャナ」と言う。)のガラス原稿台にセットして、該スキャナ30の用法に従ってスキャンする。そして、このスキャン画像デ−タを、スキャナ30にパラレルポ−トやUSBなどを介して接続されているPC40からインタ−ネットなどのネットワ−クNETを通じて解析センタ50に送信する。
【0039】
なお、この図ではユーザがスキャナ30を用いて画像データを取得しているが前述したように、デジタルカメラによる撮影画像データを取得しても良い。この場合は、インキュベ−ト済のフィルム型培地10を載置収容したトレイ20を、必要に応じて三脚やスタンドなどを使用して正面からデジタルカメラで撮影し、その画像データをSDカードやUSBを介して上記同様に解析センタ50に送信する。
【0040】
したがって、ユ−ザにおいては、フィルム型培地10と、インキュベ−ト済のフィルム型培地10を載置収容するためのトレイ20と、このトレイ20の画像デ−タを取り込むためのスキャナ30またはデジタルカメラと、スキャナ30またはデジタルカメラに接続されると共に解析センタ50とのデ−タ送受信を可能にするためのネットワ−クNET環境に接続可能なPC40を備えるだけで良い。ここで、PC40およびネットワ−クNET環境は既にほとんどのユ−ザが所持および設定済であり、画像データの取得についても既述したように安価に市販されていて容易に入手可能な汎用的なスキャナやデジタルカメラを機種を問わずに使用することができ、新たなコスト負担をほとんど必要とせずにシステム構築が可能である。
【0041】
解析センタ50は、ネットワ−クNETを介してユ−ザPC40とのデ−タ送受信を実行するウエブサ−バ51と、ユ−ザPC40からネットワ−クNETおよびウエブサ−バ51を介して受信したスキャン画像デ−タを後述のようにして補正した上でコロニーカウントする処理サ−バ52と、処理サ−バ52で処理した後のコロニーカウントデ−タを保存するデ−タベ−ス53を備えている。
【0042】
ここで、ユ−ザインタ−フェ−ス(UI)はJAVA(登録商標)アプレットやFLASH(登録商標)などのブラウザ上で動作するアプリケーションとし、ユーザは特別なソフトウェアをスト−ルする必要なしに、ウエブサ−バ51とネットワ−クNET接続されている環境において所定のウエブサイトから所定のソフトウェアをPC40にダウンロ−ドすることができる。
【0043】
次に、図4のシステム構成においてコロニーカウント処理を行うときの概略的なフロ−を図5を参照して説明する。
【0044】
前述したように、ユ−ザは、図1のフィルム型培地10を用い、所定の希釈率で希釈された検体を滅菌ピペットなどで培養層13に所定量(たとえば1mL)滴下した後、このフィルム型培地10を孵卵器に入れて所定温度(たとえば36℃)および所定期間(たとえば48時間)インキュベ−トする(図5:S1)。
【0045】
各フィルム型培地10にはあらかじめシリアルナンバ−が二次元コ−ド17として表示され、また、該培地10の培養層13の培地種類や消費期限その他の検体情報を示すデ−タがあらかじめバ−コ−ド18として表示され、あるいは検体情報記入欄16にユ−ザが書き込むことによって表示されている。また、各フィルム型培地10の培養層13でインキュベ−トした検体の希釈率がユ−ザによる書き込みで希釈率記入欄15(または検体情報記入欄16)に表示されている。
【0046】
そして、インキュベ−ト済のフィルム型培地10をトレイ20の培地収容部22に載置収容する(図5:S2)。本例のトレイ20は6個の培地収容部22を有するので、最大6個のフィルム型培地10を載置収容可能であり、これによって同時に最大6個のフィルム型培地10についてインキュベ−ト済検体を解析処理することができる。
【0047】
図6には、6個の培地収容部22の各々にインキュベ−ト済フィルム型培地10を載置収容したトレイ20が示されている。
【0048】
次いで、このトレイ20を裏返した状態、すなわちトレイ20に載置収容したフィルム型培地10が透明カバ−シ−ト14を介してフラットベッドスキャナ30(以下単に「スキャナ」と言う。)のガラス原稿台に向き合った状態にして、スキャナ30にセットする(図5:S3)。
【0049】
そして、使用したスキャナ30の通常の用法に従ってスキャニングして画像デ−タを取得する(図5:S4)。このようにして取得した画像デ−タ(元画像データ)は、図6に示されるトレイ平面図と実質的に同様の二次元画像デ−タである。
【0050】
なお、ここではスキャナ30を用いて元画像データを取得しているが、前述したように、培地収容部22の各々にインキュベ−ト済フィルム型培地10を載置収容したトレイ20をデジタルカメラで撮影することによって元画像データを取得しても良い。この場合は、三脚などを用いて、トレイ20に対してトレイ中心からの垂線上に配置したデジタルカメラで撮影することが好ましい。
【0051】
取得した元画像デ−タを、スキャナ30またはデジタルカメラに接続したユ−ザPC40からネットワ−クNETを介して解析センタ50に送信する(図5:S5)。元画像データを一旦SDカードなどの記録媒体に保存し、これをユーザPCから解析センタ50に送信しても良い。解析センタ50は、受信した元画像データを処理サ−バ52で補正処理した上でコロニーカウントする(図5:S6)。
【0052】
処理サ−バ52での解析の結果取得されたコロニーカウントデ−タは、検査対象の培地を表示したカラー画像(コロニーを確認できる画像)と一意に対応付けた計測結果データとして、解析センタ50が備えるデ−タベ−ス53に格納されると共に、ウエブサ−バ51に収載されて送信元のユ−ザPC40に送信される(図5:S7)。これによりユ−ザは各フィルム型培地10でインキュベ−ト後の検体に含まれる培地に存在するコロニーの種類や菌数などの解析結果をリアルタイムに知ることができ、また、デ−タベ−ス53に格納されたデ−タをネットワ−クNETを通じていつでも取得することができる。
【0053】
このようなシステムは、いわゆるクラウドコンピュ−ティングとして構築することが、ユ−ザの利便性を図る上で好ましい形態である(図4参照)。ユ−ザは、解析センタ50によって提供されるサ−ビスを該センタが備えるサ−バ群(デ−タベ−スも含む)を意識することなく、また処理のためのソフトウエアをあらかじめダウンロ−ドする必要もなしに、あたかも自らのPC40上で処理していると同様の感覚で実行できるメリットがある。また、解析センタ50が提供する画像処理やUIアプリケーションのソ−スなどは随時保守またはアップグレ−ド可能であり、これによってユ−ザは常に最新のサ−ビスを受けることができる。
【0054】
より具体的には、ユ−ザによる本サ−ビスの利用時間に応じた課金システムを導入することが好ましい。すなわち、本サ−ビスの利用を希望するユ−ザは、あらかじめ登録して顧客IDを取得した上で、PC40からネットワ−クNETを通じて解析センタ50のウエブサ−バ51にアクセスして本サ−ビス利用のためのソフトウエアをダウンロ−ドして起動させ、所要の画面にて顧客IDを入力する。これによって本サ−ビスの利用が開始される。
【0055】
その後、当該ソフトウエアによって画面表示される処理手順に従って、インキュベ−ト済フィルム型培地10を載置収容したトレイ20をスキャナ30にセットし(図5:S3)、元画像デ−タを取得し(図5:S4)、これを解析センタ40にアップロ−ドして(図5:S5)、解析センタ40の処理サ−バ52による解析処理(図5:S7)を待つ。解析によって得られたコロニーカウントデ−タはウエブサ−バ51に収載され、送信元ユ−ザPC30に画面表示される(図5:S7)ので、ユ−ザはこれを確認して本サ−ビスの利用を終了する。
【0056】
上記において、本サ−ビスの利用開始から利用終了までの時間に応じたサ−ビス利用料がユ−ザに課金される。
【0057】
また、解析結果としてのコロニーカウントデ−タを分析(合否判定)や報告書作成などの追加処理をユ−ザが希望する場合は、該処理のために必要な別のソフトをダウンロ−ドして実行させることができ、その利用時間に応じた追加サ−ビス利用料をユ−ザに課金するようにしても良い。
【0058】
時間に応じた課金システムを採用することに代えて、またはこれと併用して、ユーザに提供するサービスの内容(コロニーカウント処理する培地数、上記合否判定や報告書作成などの追加処理の有無など)に応じた課金システムを採用しても良い。また、単位処理ごとに課金したり、月極や年間一括払いなど、各種の短期・長期契約で課金システムを実行することが可能である。
【0059】
ところで、コロニーカウント処理においては、画素ごとの明度を比較することによって画像上のコロニーを認識している。すなわち、処理画像データ中の各画素について明度を測定し、所定の閾値より大きい明度を有する画素がコロニーの存在を示すものと判断する。しかしながら、本システムではユ−ザが手持ちのスキャナ30でインキュベ−ト済フィルム型培地10をスキャニングして取得した画像データや、手持ちのデジタルカメラで撮影した画像データが元画像デ−タとしてそのまま解析センタ50に送られてくる。処理サ−バ52においては、ユーザが元画像デ−タ取得に使用した機種や仕様を特定することができず、様々な機器を用いて様々なユーザからアップロードされてくる元画像データは解像度や画質の個体差がきわめて大きいものとなっている。したがって、正確なコロニーカウント数を計測するためには、処理画像データ中の画素の明度を統一的な基準で判定することが要求される。
【0060】
また、フィルム型培地10の培養層13には検査対象とする菌種によって異なる培地が用いられ、たとえば一般生菌の場合は培地にTTC(トリフェニルテトラゾリウムクロライド)を含ませておくことによりTTCを還元して赤色のTPF(トリフェニルフォルマザン)を生じさせて赤色集落として観察され、黄色ブドウ球菌は酸性フォスファターゼにより酵素基質X−Phos(5ブロモ4クロロ3インドリルフォスフェート)を分解して青色のインディゴを生成する。大腸菌群は培地中の酵素基質が大腸菌群の持つβ−ガラクトシダーゼに反応してX−Gal(5ブロモ4クロロ3インドリルβ−ガラクトシダーゼ)またはMagenta−Gal(5ブロモ6クロロ3インドリルβ−ガラクトシダーゼ)を加水分解し、酸化重合を経て赤紫ないし紫色のブロモクロロインディゴを生成し、大腸菌は特異的に持つβ−グルクロニダーゼが酵素基質X−GLUC(5ブロモ4クロロ3インドリルβ−グルクロニダーゼ)を上記同様に分解して青色のブロモクロロインディゴを生成する。
【0061】
ここで、単一菌種のコロニー数を計測する場合や菌種を区別する必要なくトータルのコロニー数を把握すれば十分な場合であれば色の判定は必須ではないが、たとえば大腸菌群と大腸菌の両方を同じ培地でインキュベートする場合において各菌種ごとにコロニー数を計測するためには、大腸菌群の赤紫〜紫の集落と大腸菌の青色集落とを判別しなければならない。しかしながら、前述のように、本システムにおいてユーザから処理サーバ52にアップロードされる元画像データは画質の個体差がきわめて大きく、これらの異なる菌種の色相の閾値を正確に把握することができない。したがって、菌種ごとのコロニーカウント計測を正確に行うためには、処理画像データ中の画素の色相についても統一的な基準で判定することが要求される。また、培養層13に含まれる残渣などの異物と測定対象微生物とを識別するためにも色相を補正することが好ましい。
【0062】
また、ユーザが元画像データを取得するためにトレイ20をスキャナ30にセットする(図5:S3)際に、正しい位置にセットされなかったり傾いた状態でセットされることがあり、元画像データに位置ずれや傾きの誤差が含まれている可能性も考慮しなければならない。
【0063】
そこで、本発明では、処理サ−バ52は、取得した元画像デ−タに含まれる位置認識マ−カ24a〜24dにより該元画像デ−タの傾きを補正する処理を行い、さらに、該補正後の画像デ−タに含まれるカラ−チャ−ト25およびグレ−スケ−ルチャ−ト26を参照することにより元画像デ−タの色相および明度の個体差を極小化する処理を行う。これらの処理は図5:S6で行われるが、その詳細を別途図7のフロ−を参照して説明する。
【0064】
まず、ユ−ザがスキャナ30で取得してウエブサ−バ51にアップロ−ドした元画像デ−タを取得する(図7:S61)。既述したように、この元画像デ−タには、ユ−ザが使用したスキャナ30の機種依存性に伴う明度や色相などの個体差や、トレイ20をスキャナ30にセットする際の傾きや位置ずれなどの不統一要因が含まれている。
【0065】
そこで、最初の補正処理として、図7:S61で取得した元画像デ−タの傾きを補正する処理を行う(図7:S62)。この処理は、トレイ20の四隅余白部に印刷されている位置認識マ−カ24a〜24dの元画像デ−タ中の位置を検出することによって行う。たとえば図5に示すように、位置認識マーカ24a〜24dが円とその中に表示される十字線とで構成されている場合、元画像データの各画素について外側に向かうにつれて輝度が所定の条件で変化するか否かを判定し、この条件を満たす画素を位置認識マーカ24a〜24dの中心位置(座標)にあるものと判断する。
【0066】
すなわち、元画像デ−タの各画素を公知の変換式によりRGB表色系から輝度(Y)に変換する。ここで、2つの画素同士の輝度の差が所定の閾値より小さいときに、それらは同一の輝度を有するものと判断する。そして、元画像デ−タの各画素について、以下の判定をおこなう。なお、ここでは輝度値レンジを0〜255としている。
【0067】
まず、対象画素を中心とし、垂直から複数の角度方向に移動しながら輝度を調べていく。移動するにつれて中心の輝度が一旦異なる値となった後に再び中心の輝度と同一になり、さらに4方向の距離(半径)が一致したら、中心と半径から得られる円を仮定する(図8(a))。
【0068】
さらに、対象画素から隣接する同一輝度の画素を次々に繋げていくと、90度間隔の4方向で円周に到達する(図8(b))。
【0069】
以上の条件が満たされた場合、その画素は位置認識マ−カ24a〜24dの中心であると判断する。なお、本実施例で用いるトレイ20においては、位置認識マ−カ24a〜24dのうち天地認識用の反転マーカ24cは中心が白色、その他の位置認識マーカ24a,24b,24dは中心が黒色で表示されているので、位置認識マーカと判断されたもののうち、中心画素の輝度が所定の閾値(たとえば上記レンジの中間値)以上のものを白色表示の天地認識用反転マ−カ24cと判断する。
【0070】
各位置認識マ−カから同一輝度で伸びる線分の一つをさらに伸ばしていくと、4つの位置認識マ−カ24a〜24dが一組になって、中心座標を(cx,cy)とする長方形が特定される(図8(c))ので、このときの各位置認識マ−カ24a〜24dの中心画素の座標(x1,y1),(x2,y2),(x3,y3),(x4,y4)からこの長方形Rの傾きθを求める(数1)。スキャナによる読み取り精度の問題やデジカメ撮影画像などの場合に4つの位置認識マーカ24a〜24dの座標を頂点とする矩形が正しい長方形にならずに歪むことも考えられるが、その場合には近似値から長方形Rを仮定する。
【0071】
ユーザから取得した元画像データ中のすべての画素について、傾きθを逆方向に回転させた補正座標を求めることを繰り返す。元画像データの座標(X1,Y1)の補正座標を(X2,Y2)とし、傾き補正された長方形R’の幅をWIDTH、高さをHEIGHTとすると、数2が得られる。傾き補正後の長方形R’の頂点の座標は、左上頂点を原点として、右上頂点(WIDTH−1,0)、左下頂点(0,HEIGHT−1)、右下頂点(WIDTH−1,HEIGHT−1)で表すことができるので、この補正後の長方形R’の中の各座標(X2,Y2)から逆に補正前の座標(X1,Y1)を数2で求めていく。求めたX1,Y1の値は公知の丸め処理により整数化したものである。
【0072】
【数1】

【数2】

【0073】
上記処理によって得られた補正画像データAは、元画像データの長方形R内の各画素座標(X1,Y1)が傾き補正された長方形R’内の補正座標(X2,Y2)に変換された画素の集合体であり、たとえばユ−ザから取得した元画像デ−タが図9(a)のように傾いていた場合であっても、図9(b)のように傾き補正した補正画像デ−タAが得られる。
【0074】
この補正画像デ−タAは、数2から明らかなようにサイズ(幅と高さ)および中心座標(cx,cy)で定められる傾きのない長方形にトリミングされている。処理サーバ52は、トレイ20におけるインキュベート済フィルム型培地10の領域(すなわち培地収容部22の領域)および各インキュベート済フィルム型培地10に含まれる培養層13の領域、カラーチャート25およびグレースケールチャート26の領域ならびにこれらチャートにおける各色表示領域などを、あらかじめ位置認識マーカ24a〜24dで特定される長方形に対応付けた相対的位置(論理座標)のデータを保有している。したがって、元画像データを取り込む際にユーザが正しい位置にトレイ20をセットしなかったり、その際に用いた機種の精度が低いような場合であっても、各領域を正確に把握することができる。
【0075】
また、ユーザがトレイ20を天地逆にしてスキャナ30にセットしたような場合、上記処理により傾き補正して得られる補正画像データの長方形も天地逆になるが、この場合は、長方形の頂点となる4つの位置認識マーカ24a〜24dにおける反転マーカ24cの位置関係(座標)から元画像データにおいて天地が逆になっていると判断することができるので、得られた補正画像データをさらに180度回転させて天地補正したものとを補正画像データAとする。
【0076】
なお、トレイ20では四隅に位置認識マーカ24a〜24dを設け、元画像データにおけるこれら位置マーカ24a〜24dの画素座標から長方形Rを特定した上で傾き補正処理を行っているが、上記処理において明度変化に基づいて座標位置および徴兵系を特定できるものであれば位置マーカ24a〜24dの具体的構成は問われない。たとえば、トレイ20の外縁部を囲むように黒塗りされた枠や、四隅に表示した四角形や二等辺三角形あるいは「+」印などを位置情報(目印)として傾き補正処理に用いても良い。
【0077】
次に、この補正画像デ−タAについて画質補正処理を行う(図7:S63)。一例として、スキャナ30で取得した画像デ−タは各画素デ−タがRGB表色系によって表されているが、これを一旦色相(H)・明度(L)・彩度(S)により表現したHLS表色系に変換し、テ−ブル値との比較および線形補間して画質補正を行った後に再びRGB表色系に変換することで、画質補正処理を行うことができる。
【0078】
まず、トレイ20に印刷表示されているカラ−チャ−ト25の各色に色相順に1から番号を付け、これに基準値と計測値とを対応付けてカラ−比較テ−ブルを作成し、処理サ−バ52が備えるメモリに格納しておく。カラ−比較テ−ブルの一例を表1に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
同様に、トレイ20に印刷表示されているグレ−スケ−ルチャ−ト26の各色に明度順に1から番号を付け、これに基準値と計測値とを対応付けてグレ−スケ−ル比較テ−ブルを作成し、処理サ−バ52が備えるメモリに格納しておく。グレ−スケ−ル比較テ−ブルの一例を表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
ここで、基準値は、あらかじめ基準とする特定のスキャナでカラ−チャ−ト25の各色およびグレースケールチャート26の各色のデ−タを取得し、上記(1)の処理によりRGB表色系からHLS表色系に変換した値である。計測値は、ユ−ザPC40からアップロ−ドされた元画像デ−タに含まれるカラーチャート25の各色およびグレースケールチャートの各色(グレースケール)に対応する部分の各画素をRGB表色系からHLS表色系に変換した値である。
【0083】
なお、各色のデ−タとは、その領域に含まれる複数画素のRGB各要素を平均化した値とする。
【0084】
その後、画像デ−タの各画素をHLS表色系に変換した値H,L,Sについて、以下のようにして色相および明度を補正する。
【0085】
色相Hについては、前述のカラー比較テーブルを参照して、たとえば次のようにして補正色相値hを求めることができる。なお、ここでは色相値レンジを1〜360としている。
【0086】
H≧H’maxのときは、
=Hmax
=H+360
h’=H’max
h’=H’
であり、ここでもしも h’ >h’ならば、h’=h’+360 とする。
H<H’のときは、
=Hmax−360
=H
h’=H’max
h’=H’
であり、ここでもしも h’ >h’ならば、h’=h’−360 とする。
【0087】
上記以外の場合は、H’≦H<H’n+1となるnを1から増分して見つける。
=H
=Hn+1
h’=H’
h’=H’n+1
【0088】
そして、次の数式から補正色相値hを求める。
【0089】
【数3】

【0090】
ここで、もしも h<0ならば、h=h+360 とする。もしも h>360ならば、h=h−360 とする。
【0091】
明度についても、前述のグレースケール比較テーブルを参照して、上記と略同様にして補正明度値lを求めることができる。
【0092】
このようにして補正されたHLS表色系の値であるh,l,s(ここでは彩度補正は行っていないのでl=L)をRGB表色系の値に変換する。
【0093】
以上により、傾き補正された補正画像デ−タAをさらに画質補正処理して機種依存による画質個体差を解消した補正画像デ−タBを得ることができる。傾き補正を行うことで、ユーザが元画像データ取り込みの際の位置ずれや使用機器の精度誤差などがあっても、補正画像データA中の相対座標を把握することで、検査対象となる培養層13やチャート25,26その他の解析を要する領域を正確に特定することができる。また、画質補正処理を行うことで、大腸菌群と大腸菌の両方を同じ培地でインキュベートするような場合であっても、機種依存性を排して、大腸菌群の赤紫〜紫の集落と大腸菌の青色集落とを色相の閾値で判別することができ、各菌種ごとにコロニー数を計測することが可能となり、さらには培養層13に含まれる残渣などの異物との識別も可能となる。
【0094】
処理サーバ52は、この補正画像データBについてコロニーカウント処理を行う(図7:S64)。具体的には、補正画像データBの長方形において相対座標で特定される培養層13について、所定の順序で移動させながら、各培養層画像領域に含まれるコロニー数を(必要に応じて菌種ごとに)測定する。このコロニーカウント処理については、出願人である株式会社エルメックスが提供するコロニーカウンティングシステム「アイザック/iSac」(登録商標)などを使用して行うことができ、該処理自体は公知であるので、詳細な説明を省略する。
【0095】
なお、上記説明においては元画像データの補正処理として、まず傾きを補正して補正画像データAを得た(図7:S62)後に、この補正画像データAを基にして画質補正して補正画像データB(最終的な補正画像データ)を得る(図7:S63)ものとしているが、この補正処理の順序は限定的ではなく、取得した元画像データについて、最初に画質補正処理を行い、次に傾き補正処理を行っても良い。ただし、画質補正処理は元画像データ中の培養層13に対応する領域およびカラースケール25,グレースケール26に対応する領域について行えば良いので、上記したように、まず傾き補正処理を行ってこれらの領域を正確に特定した上で画質補正処理を行うことが好ましい。
【実施例2】
【0096】
以上の説明では、複数のインキュベート済みフィルム型培地10をトレイ20に載置収容して元画像データを取得するものとしたが、一またはごく少数のフィルム型培地だけを検査することが多い運用の場合は、処理する元画像データ上での無駄が多くなり、トレイ20を使用することの利便性が薄れる。このような場合に適した本発明の実施形態について以下に詳述する。
【0097】
この実施形態では、既述実施例1で使用した複数のフィルム型培地10を載置収容可能なトレイ20を使用しないが、処理サーバ52で傾き補正を行う(図7:S62)ために使用する位置認識マーカ24a〜24dと、画質補正を行う(図7:S63)ために使用するカラーチャート25およびグレースケールチャート26が、処理サーバが取得する元画像データに含まれていなければならない。
【0098】
このため、まず画質補正用のツールとして、カラーチャート25およびグレースケールチャート26が表示されたチャートシート27(図10)を用いる。カラーチャート25およびグレースケールチャート26は、既述実施例1においてトレイ20に表示されたものと同一であって良い。チャートシート27には、周囲余白部の四隅に位置認識マーカ28a〜28dがあらかじめ表示されており、そのうちの一つ28cが天地認識用の反転マーカである。
【0099】
また、フィルム型培地10Aとして、既述実施例1で使用したフィルム型培地10の構成に加えて、周囲余白部の四隅に位置認識マーカ19a〜19dがあらかじめ表示されており、そのうちの一つ19cが天地認識用の反転マーカである(図11)。位置認識マーカ19a〜19d,28a〜28dは、既述実施例1においてトレイ20に表示された位置認識マーカ24a〜24dと実質的に同一であって良い。
【0100】
すなわち、ユーザが元画像データを取り込む際に使用する画像取込ツールとして、既述実施例1では位置認識マーカ24a〜24dと、カラーチャート25およびグレースケールチャート26とがあらかじめ表示されたトレイ20を使用したが、この実施形態では、フィルム型培地10Aにあらかじめ表示された位置認識マーカ19a〜19dと、このフィルム型培地10Aとは別体として用意されたチャートシート27にあらかじめ表示された位置認識マーカ28a〜28dとカラーチャート25、グレースケールチャート26とからなる該画像取込ツールを使用するものである。
【0101】
この実施形態によるコロニーカウント処理も、既述実施例1の場合と同様にして行うことができる。すなわち、位置認識マーカ19a〜19d付きのフィルム型培地10Aを用いて所定条件でインキュベートし(図5:S1)、この一またはごく少数のインキュベート済フィルム型培地10Aを、位置認識マーカ28a〜28d付きのチャートシート27と共に、いずれも裏返した状態にしてスキャナ30のガラス原稿台にセットする(図5:S3)。以下同様にして図5:S4〜S7の処理を実行する。異なるインキュベート済フィルム型培地10Aを順次に処理する場合は、チャートシート27はスキャナ30に置いたままにして、インキュベート済フィルム型培地10Aを交換してスキャニングすれば良い。スキャナ30に代えてデジタルカメラで撮影して元画像データを取得しても良いことも、既述実施例1で説明したと同様である。
【0102】
この場合も、ユーザPC40からウエブサーバ51を介して処理サーバ52に送信される元画像データには、フィルム型培地10Aの四隅に表示された位置認識マーカ19a〜19dおよびチャートシート27に表示されたカラーチャート25,グレースケールチャート26が含まれているので、これらを用いて傾き補正処理(図7:S62)および画質補正処理(図7:S63)を行って、元画像データの機種依存性ないし個体差を極小化することができる。これらの補正処理は図7を参照して既述したと同様にして行うことができるので、説明を省略する。
【0103】
既述実施例1で詳しく説明したように、インキュベート済フィルム型培地10Aおよびチャートシート27の位置およびそれらの中の各領域(培養層13やチャート内の各色など)は、位置認識マーカ19a〜19d,28a〜28dで定義される長方形の画像データ中の相対位置で自動認識されるので、元画像データにおけるフィルム型培地10Aとチャートシート27の配置は自由である。たとえば、スキャナ30にインキュベート済フィルム型培地10Aとチャートシート27とをセットする際に、これらをラフに並べて図12に例示するような元画像データとして取得されたような場合であっても、各パーツそれぞれに設けられた位置認識マーカ19a〜19d,28a〜28dを基にして処理サーバ52が傾き補正処理(図7:S62)および画質補正処理(図7:S63)を行うことができる。
【0104】
なお、図10ではカラーチャート25とグレースケールチャート26の両方が表示されたチャートシート27とされているが、カラーチャート25とグレースケールチャート26とで別々のチャートシートを作成して使用しても良い。別々のチャートシートとする場合は、各チャートシートに位置認識マーカを表示させておく必要がある。
【実施例3】
【0105】
この実施形態は既述実施例2の変形例であり、位置認識マーカ19a〜19dに加えてカラーチャート25およびグレースケールチャート26をも表示したフィルム型培地10B(図13)を用いるものである。このフィルム型培地10Bは、既述実施例1におけるトレイ20の機能をフィルム型培地自体に包含させたものと言える。すなわち、この実施形態では、ユーザが元画像データを取り込む際に使用する画像取込ツールを構成する位置認識マーカ19a〜19dと、カラーチャート25およびグレースケールチャート26が、いずれもフィルム型培地10B自体にあらかじめ表示されている。
【0106】
このフィルム型培地10Bを用いた場合の処理は既述実施例2と同様であるので、説明を省略する。
【実施例4】
【0107】
既述実施形態では、処理サーバ52がユーザから取得する各元画像データには、インキュベート済フィルム型培地10,10A,10Bの画像に加えて、傾き補正処理(図7:S62)を行うための位置情報(すなわち位置認識マーカ24a〜24dあるいは所定の長方形)および画質補正処理(図7:S63)を行うための画質情報(カラーチャート25,グレースケールチャート26)が含まれている。したがって、処理サーバ52は、ユーザから元画像データを取得する都度、その元画像データに基づいて傾き補正を行うと共に画質補正処理を行う。
【0108】
傾き補正については、元画像データ取込の際に使用するスキャナ30などの機種が本来的・固有的に有している機種依存性による変動要因だけでなく、ユーザが元画像データを取り込むときにインキュベート済フィルム型培地収容トレイ20やインキュベート済フィルム型培地10A,10Bをスキャナ30にセットする際の位置ずれなども起こり得るので、正確なコロニーカウント処理を行うためにはその都度傾き補正を行う必要があり、したがって、ユーザから取得する元画像データには常にこの傾き補正を行うための位置情報が含まれている必要がある。
【0109】
一方、画質補正については、ユーザが使用する機器の機種依存性による変動要因と、当該機器の経年による解像度などの性能変化を考慮すれば十分であり、ユーザから順次に送信されてくるインキュベート済フィルム型培地の画像データについてその都度画質補正処理を行う必要性に乏しいと考えられる。したがって、より簡便なシステム構成においては、たとえば既述したようにクラウドコンピューティングによるサービス提供を受けようとするユーザは、最初に使用機器の機種依存性に基づく画質補正に必要な情報を送信し、その後、傾き補正に必要な情報と共にインキュベート済フィルム型培地の画像データを順次に送信する。あるいは、逆に、傾き補正に必要な情報と共にインキュベート済フィルム型培地の画像データを順次に送信し終えた後に、使用機器の機種依存性に基づく画質補正に必要な情報を送信する。
【0110】
この場合のシステム構成におけるコロニーカウント処理は図5のフローに示される通りであるが、そのS6で行われる具体的処理として、図7:S61で取得する元画像データは、インキュベート済フィルム型培地の撮像データと共に傾き補正用に必要な位置情報を含む第一の元画像データと、画質補正用に必要な画質情報を含む第二の元画像データとからなる。そして、ユーザは一連のインキュベート済フィルム型培地について処理サーバ52によるコロニーカウント処理を依頼する場合、第一の元画像データを必要分だけ順次に送信する前または後に、一回だけ、第二の元画像データを送信すれば良い。
【0111】
上記のようにシステム構成した場合、第一の元画像データには画質補正用の情報(カラーチャート25,グレースケールチャート26)を必要としない。したがって、第一の元画像データを順次に取り込む際には既述実施例2で用いたフィルム型培地10A(図10)を使用し、第二の元画像データを取り込む際(最初または最後の一回のみ)には既述実施例2で用いたチャートシート27(図11)を使用することができる。すなわち、この場合は、図12に示すようにフィルム型培地10Aとチャートシート27の両方をスキャナ30にセットして画像を取り込むのではなく、第一の元画像データを順次に取り込む際には培養層13でインキュベートした後のフィルム型培地10Aのみを任意数だけスキャナ30にセットして画像を取り込み、第二の元画像データを一回取り込む際にはチャートシート27のみをセットして画像を取り込む。
【0112】
この場合の具体的処理について、図14のフローを参照して説明する。処理サーバ52は、インキュベート済フィルム型培地の撮像データと共に傾き補正用に必要な位置情報を含む第一の元画像データを順次に取得し(図14:S601)、これら第一の元画像データについて各々傾き補正処理を行って、各第一の元画像データについて傾き補正された補正画像データAを得る(図14:S602)。このときの傾き補正処理については既述したと同様にして行うことができるので、説明を省略する。
【0113】
第一の元画像データの取得後、画質補正用の情報を含む第二の元画像データを取得し(図14:S603)、これに基づいて画質補正処理を行う(図14:S604)。このときの画質補正処理についても既述したと同様にして行うことができるので、説明を省略する。この画質補正処理結果を全ての補正画像データAに一元的に適用して補正画像データBを得る(図14:S605)。これによってユーザ使用機器の機種依存性による画質変動要因が排除されるので、後のコロニーカウント処理(図14:S606)における正確性が担保される。
【0114】
なお、図14のフローでは第一の元画像データを順次取得した後に第二の元画像データを取得するものとしているが、最初に第二の元画像データを取得してその画質処理結果を保持しておき、その後に順次取得する第一の元画像データを傾き補正すると共に画質処理結果を一元適用する処理フローを採用しても良い。
【0115】
この場合に用いるチャートシート27についても、図11に示すようにカラーチャート25とグレースケールチャート26の両方が一つのチャートシート27に表示されているものであっても良いし、カラーチャート25とグレースケールチャート26が別々のチャートシートとして作成されたものであっても良い。いずれの場合であってもチャートシート27の構成は任意であり、既述の傾き補正処理(図14:S602)を行うための位置情報(位置認識マーカ28a〜28dなどの目印となるもの)を有し且つ既述の画質補正処理(図14:S605)を行うことができるものであればいかなる構成を有するものであっても良い。
【実施例5】
【0116】
図15は上記実施例4において使用可能なトレイ60を示す。このトレイ60は、所定数のフィルム型培地10(図1)を載置収容可能に構成されており、PETなどの樹脂シートや厚紙などから所定サイズ(A4など)の平板状に成形されたベース61に、フィルム型培地10の形状およびサイズに応じた形状およびサイズの培地収容部62,62・・・が所定の位置および配列で設けられている。本例では、最大8個のフィルム型培地10を載置収容可能とするべく、4段×2列に形成された計8個の培地収容部62,62・・・を有している。
【0117】
各培地収容部62の一つの対角線位置にスリット63a,63bが形成されていて、これらスリット63a,63bにインキュベート済のフィルム型培地10の対角部を差し込むことによってフィルム型培地10を所定位置に保持するようにしている。対角部をスリット63a,63bに差し込んで保持するので、スキャナ30にセットする際に裏返しても脱落することなくしっかり保持することができる。図示例では一方のスリット63aを円弧状に切り抜いて形成することによってフィルム型培地10の角部の挿入を容易にしているが、スリット63a,63bの形状は任意であり特に限定されない。あるいは、このようなスリットを省略し、インキュベート済のフィルム型培地10を両面テープや接着剤などで培地収容部62に貼り付けるようにしても良い。
【0118】
トレイ60の外周部は黒塗りされた枠部64とされ、中央には同様に黒塗りされた帯状部65が形成されている。実施例1のトレイ20には位置認識マーカ24a〜24dが設けられ(図2)、処理サーバ52が第一の元画像データの傾きを補正する(図7:S62)際の位置情報として用いられるが、この実施例のトレイ60では位置認識マーカ24a〜24dが省略され、代わりに枠部64を設けて傾き補正用の位置情報として用いるものとしている。この実施形態の場合においても、実施例1において説明したと同様に、第一の元画像データに含まれる各画素について所定方向に移動させたときの輝度変化を測定することによって枠部64に囲まれる長方形Rを特定することができるので、図8(c)および図9を参照して既述したと同様の手法により、第一の元画像データ中の長方形Rに傾きや歪みがあっても適正に補正処理することができる。また、中央の帯状部65を位置情報として傾き補正処理を行うことも可能である。
【実施例6】
【0119】
図16は上記実施例5のトレイ60の変形例によるトレイ70を示す。このトレイ70も、トレイ60と同様に、所定数のフィルム型培地10(図1)を載置収容可能に構成されており、PETなどの樹脂シートや厚紙などから所定サイズ(A4など)の平板状に成形されたベース71に、フィルム型培地10の形状およびサイズに応じた形状およびサイズの培地収容部72,72・・・が所定の位置および配列で設けられている。本例では、最大6個のフィルム型培地10を載置収容可能とするべく、3段×2列に形成された計6個の培地収容部72,72・・・を有している。
【0120】
このトレイ70は、3つの異なるタイプのフィルム型培地を載置収容可能な兼用型として構成されている。すなわち、各培地収容部72にはスリット73a〜73eが形成されていて、スリット73cはスリット73bの対角位置に設けられ、スリット73dとスリット73eはスリット73aの対角位置に設けられている。そして、第一のタイプのフィルム型培地80Aはスリット73a,73bおよび73cを利用して保持可能であり、第二のタイプのフィルム型培地80Bはスリット73aおよび73dを利用して保持可能であり、第三のタイプのフィルム型培地80Cはスリット73aおよび73eを利用して保持可能である。図16には、便宜的に、各1個のフィルム型培地80A,80B,80Cをこれらスリットを利用して右列中段、右列下段および左列下段の各培地収容部72に保持した状態が示されている。いずれのフィルム型培地80A,80B,80Cも少なくとも一つの対角部がスリットに挿入されるので、既述のトレイ60と同様にスキャナ30にセットする際に裏返しても脱落することなくしっかり保持することができる。
【0121】
図示例では片側のスリット73a,73bを直線状に形成しながら、他側のスリット73c〜73eを円弧状に形成してフィルム型培地10の角部の挿入を容易にしているが、各スリット73a〜73eの形状は任意であり特に限定されない。あるいは、このようなスリットを省略し、フィルム型培地80A,80B,80Cを両面テープや接着剤などで各培地収容部72における対応区画に貼り付けるようにしても良い。
【0122】
トレイ70の外周部は黒塗りされた枠部74とされ、これが傾き補正用の位置情報として用いられることについては上記実施例5のトレイ60と同様であり、その際の傾き補正処理も同様であるので、説明を省略する。
【0123】
なお、実施例5のトレイ60および実施例6のトレイ70にはいずれも天地補正用の位置情報(実施例1のトレイ10における反転マーカ24c)が含まれていないので、スキャナ30へのセットやデジカメでの撮影時には、規定の天地が得られるように注意して画像取込を行う必要がある。もちろん、これらのトレイ60,70に天地補正用の位置情報を設けることも可能である。
【符号の説明】
【0124】
10,10A,10B フィルム型培地
11 基材シート
12 枠
13 培養層
14 カバーシート
15 希釈率記入欄
16 検体情報記入欄
17 シリアルナンバーバーコード
18 検体情報バーコード
19a〜19d 位置認識マーカ
19c 天地認識用の反転マーカ
20 トレイ
21 ベース
22 フィルム型培地の収容部
23 係止溝
24a〜24d 位置認識マーカ
24c 天地認識用の反転マーカ
25 カラーチャート
26 グレースケールチャート
27 チャートシート
30 フラットベッドスキャナ
40 PC
50 解析センタ
51 ウエブサーバ
52 処理サーバ
53 データベース
60 トレイ
61 ベース
62 フィルム型培地の収容部
63a,63b スリット
64 枠部
65 帯状部
70 トレイ
71 ベース
72 フィルム型培地の収容部
73a〜73e スリット
74 枠部
80A,80B,80C フィルム型培地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム型培地の培養層で検体をインキュベ−トした後の該フィルム型培地の元画像データをユーザからのデータ送信によって取得する元画像データ取得ステップと、取得した元画像データの傾きを補正する第一の補正ステップと、取得した元画像データの画質を補正する第二の補正ステップと、これら第一および第二の補正ステップで得た補正画像データを用いて培養層中のコロニー数をカウントする測定ステップと、を含むことを特徴とするフィルム型培地による微生物検査方法。
【請求項2】
前記第一の補正ステップは、前記元画像データに含まれる位置情報から特定される矩形の傾き角度を補正する処理を含み、前記測定ステップは、前記第一の補正ステップで補正された後の矩形内においてフィルム型培地の培養層に対応する画像領域内でコロニー数をカウントすることを特徴とする請求項1記載のフィルム型培地による微生物検査方法。
【請求項3】
前記第二の補正ステップは、前記元画像データの各画素を明度補正する処理を含み、前記測定ステップは、補正された明度が閾値より大きいときにその画素がコロニーの存在を示すものと判定することを特徴とする請求項1または2記載のフィルム型培地による微生物検査方法。
【請求項4】
前記第二の補正ステップは、さらに前記元画像データの各画素を色相補正する処理を含み、前記測定ステップは、補正された色相を基にしてコロニーの菌種を判定し、補正された明度を基にして菌種ごとのコロニー数をカウントすることを特徴とする請求項3記載のフィルム型培地による微生物検査方法。
【請求項5】
前記元画像データは、一または複数の前記インキュベート済フィルム型培地が装着されたトレイを描写する画像データであり、前記第一の補正ステップにおける補正処理に用いられる位置情報および前記第二の補正ステップにおける補正処理に用いられるカラーチャートおよびグレースケールチャートがいずれも前記トレイにあらかじめ表示されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか記載のフィルム型培地による微生物検査方法。
【請求項6】
前記元画像データは、一または複数の前記インキュベート済フィルム型培地と該フィルム型培地とは別体として用意されたチャートシートとを含めて描写する画像データであり、前記第一の補正ステップにおける補正処理に用いられる位置情報は各フィルム型培地にあらかじめ表示されており、前記第二の補正ステップにおける補正処理に用いられるカラーチャートおよびグレースケールチャートは前記チャートシートにあらかじめ表示されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか記載のフィルム型培地による微生物検査方法。
【請求項7】
前記元画像データは、一または複数の前記インキュベート済フィルム型培地を描写する画像データであり、前記第一の補正ステップにおける補正処理に用いられる位置情報および前記第二の補正ステップにおける補正処理に用いられるカラーチャートおよびグレースケールチャートがいずれも各フィルム型培地にあらかじめ表示されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか記載のフィルム型培地による微生物検査方法。
【請求項8】
前記元画像データは、一または複数の前記インキュベート済フィルム型培地と共に前記第一の補正ステップにおける補正処理に用いられる位置情報を描写する第一の元画像データと、前記第二の補正ステップにおける補正処理に用いられるカラーチャートおよびグレースケールチャートを描写する第二の元画像データとからなり、前記元画像データ取得ステップは、前記第一の元画像データを取得する第一の元画像データ取得ステップと、前記第二の元画像データを取得する第二の元画像データ取得ステップとからなり、前記第一の元画像データ取得ステップで前記第一の元画像データを取得する都度前記第一の補正ステップを行って第一の元画像データについて各々第一の補正画像データを作成し、前記第二の元画像データ取得ステップで取得した前記第二の元画像データに基づいて行われる前記第二の補正ステップの処理結果を各第一の補正画像データに一元的に適用して第二の補正画像データを作成することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか記載のフィルム型培地による微生物検査方法。
【請求項9】
請求項5記載のフィルム型培地による微生物検査方法においてユーザが前記元画像データを取り込む際に使用する画像取込ツールであって、該画像取込ツールが前記トレイからなり、該トレイは、インキュベート済フィルム型培地を装着可能な培地収容部を複数備えると共に、前記位置情報と、前記カラーチャートおよびグレースケールチャートがあらかじめ表示されていることを特徴とする画像取込ツール。
【請求項10】
請求項6記載のフィルム型培地による微生物検査方法においてユーザが前記元画像データを取り込む際に使用する画像取込ツールであって、該画像取込ツールは、前記フィルム型培地にあらかじめ表示された前記所定の矩形と、前記フィルム型培地とは別体として用意された前記チャートシートとからなることを特徴とする画像取込ツール。
【請求項11】
請求項10記載の画像取込ツールにおいて、前記チャートシートにも前記第一の補正ステップにおける補正処理に用いられる位置情報があらかじめ表示されていることを特徴とする画像取込ツール。
【請求項12】
請求項7記載のフィルム型培地による微生物検査方法においてユーザが前記元画像データを取り込む際に使用する画像取込ツールであって、該画像取込ツールが、あらかじめ前記フィルム型培地自体に表示された前記位置情報と前記カラーチャートおよびグレースケールチャートとからなることを特徴とする画像取込ツール。
【請求項13】
請求項8記載のフィルム型培地による微生物検査方法においてユーザが前記第一の元画像データを取り込む際に使用する画像取込ツールであって、該画像取込ツールが前記トレイからなり、該トレイは、インキュベート済フィルム型培地を装着可能な培地収容部を複数備えると共に、前記位置情報があらかじめ表示されていることを特徴とする画像取込ツール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−212013(P2011−212013A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59013(P2011−59013)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000128418)株式会社エルメックス (6)
【出願人】(510074922)有限会社ミギ− (1)
【Fターム(参考)】