説明

フィルム延伸装置およびフィルムの延伸方法

【課題】クリップチェーンでフィルムを保持し、クリップチェーンを走行することによってフィルムを長手方向に搬送しつつ幅方向に引っ張って延伸するフィルム延伸装置において、簡素な構成かつ少ない工数で、フィルムの延伸の度合いを調整する。
【解決手段】クリップチェーン3をガイドするために上側に配置された上側基準レール15と、クリップチェーン3をガイドするために下側に配置された下側基準レール17と、クリップチェーン3を構成している複数のクリップ5と、各クリップ5間の間隔を調整するために配置された間隔調整レール13と、各クリップ5同士を接続すると共に、間隔調整レール13に当接して、クリップ5の間隔を調整するクリップ間隔調整機構7とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム延伸装置およびフィルムの延伸方法に係り、特に、クリップチェーンを用いてフィルムの端部を保持し、クリップチェーンを走行させてフィルムを搬送しつつ延伸するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リンク機構を用いて構成されたクリップチェーンと、チェーン初期折れ装置(ローラチェーン初期折れ装置)とを用いて、フィルムを保持しこの保持したフィルムの延伸の度合いを調整する構成の同時二軸延伸装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
また、複数のクリップを連結部材を用いてつなぐことにより構成されたクリップチェーンと、間隔調整レール(ガイドレール)とを用いて、フィルムを保持しこの保持したフィルムの延伸の度合いを調整する構成のフィルム延伸装置が知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−95825号公報
【特許文献2】特開昭62−211124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載のフィルム延伸装置では、リンク機構を用いていると共に、フィルムの延伸の度合いを調節すべく、クリップチェーンにおけるフィルム保持部の間隔を縮めるためのチェーン初期折れ装置を設けてあるので、装置の構成が煩雑になっている。
【0006】
また、上記特許文献2に記載のフィルム延伸装置では、連結部材の一部を間隔調整レールに当接させ各クリップの間隔を縮めてフィルムの延伸の度合いを調節するように構成されているが、連結部材が上側と下側との2箇所で間隔調整レールに当接するようになっているので、装置の構成が煩雑になっていると共に、装置の調整に多くの工数を要するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、フィルムの幅方向の端部を保持するクリップチェーンを備え、このクリップチェーンでフィルムを保持し、前記クリップチェーンを走行することによってフィルムを長手方向に搬送しつつ幅方向に引っ張って延伸するフィルム延伸装置において、簡素な構成かつ少ない工数で、フィルムの延伸の度合いを調整することができるフィルム延伸装置およびフィルム延伸装置を用いたフィルムの延伸方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、フィルムの幅方向の端部を保持するクリップチェーンを備え、このクリップチェーンで前記フィルムを保持し、前記クリップチェーンを走行することによって前記フィルムを搬送しつつ延伸するフィルム延伸装置において、前記クリップチェーンをガイドするために上側に配置された上側基準レールと、前記クリップチェーンをガイドするために下側に配置された下側基準レールと、前記クリップチェーンを構成している複数のクリップと、前記各クリップ間の間隔を調整するために配置された間隔調整レールと、前記各クリップのうちのお互いに隣り合っているクリップ同士を接続すると共に、前記間隔調整レールに当接して、前記各クリップの間隔を調整するクリップ間隔調整機構とを有するフィルム延伸装置である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、厚さ方向が上下方向になり水平な一方向が長手方向になり、この長手方向に直交する水平な他の一方向が幅方向になるように、フィルムの幅方向の一端部を前記フィルムの長手方向に並んだ複数の箇所で保持する第1のクリップチェーンと、前記フィルムの幅方向の他端部を前記フィルムの長手方向に並んだ複数の箇所で保持する第2のクリップチェーンとを備え、前記各クリップチェーンで前記フィルムを保持し、前記各クリップチェーンを走行することによって前記フィルムを長手方向に搬送しつつ幅方向に引っ張って延伸するフィルム延伸装置において、前記第1のクリップチェーンをガイドするために上側に配置された第1の上側基準レールと、前記第1のクリップチェーンをガイドするために下側に配置された第1の下側基準レールと、前記第2のクリップチェーンをガイドするために上側に配置された第2の上側基準レールと、前記第2のクリップチェーンをガイドするために下側に配置された第2の下側基準レールと、前記第1のクリップチェーンを構成している複数の第1のクリップと、前記第1の各クリップの間隔を調整するために配置された第1の間隔調整レールと、前記第1の各クリップのうちのお互いに隣り合っている第1のクリップ同士を接続すると共に、前記第1の間隔調整レールに当接して、前記第1の各クリップの間隔を調整する第1のクリップ間隔調整機構と、前記第2のクリップチェーンを構成している複数の第2のクリップと、前記第2の各クリップの間隔を調整するために配置された第2の間隔調整レールと、前記第2の各クリップのうちのお互いに隣り合っている第2のクリップ同士を接続すると共に、前記第2の間隔調整レールに当接して、前記第2の各クリップの間隔を調整する第2のクリップ間隔調整機構とを有するフィルム延伸装置である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のフィルム延伸装置において、前記クリップ間隔調整機構は、前記お互いに隣り合っているクリップのうちの一方のクリップに一方の側が回動自在に係合し、前記お互いに隣り合っているクリップのうちの他方のクリップに他方の側が係合している回動部材を備えていると共に、前記回動部材の一部が前記間隔調整レールに当接することによって前記回動部材が回動し、前記各クリップの間隔を調整するように構成されているフィルム延伸装置である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のフィルム延伸装置において、前記クリップ間隔調整機構は、前記お互いに隣り合っているクリップのうちの一方のクリップに一方の側が移動自在に係合し、前記お互いに隣り合っているクリップのうちの他方のクリップに他方の側が移動自在に係合している移動部材を備えていると共に、前記移動部材の一部が前記間隔調整レールに当接することによって前記移動部材が移動し、前記クリップの間隔を調整するように構成されているフィルム延伸装置である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のフィルム延伸装置において、前記クリップ間隔調整機構は、前記お互いに隣り合っているクリップの間に設けられている第1のエレメントと第2のエレメントとを備えて構成されており、前記第1のエレメントは、基端部側が前記お互いに隣り合っている各クリップのうちの一方のクリップに回動自在に係合しており、先端部側が、前記お互いに隣り合っている各クリップのうちの他方のクリップの側に延出しており、前記第2のエレメントは、基端部側が前記お互いに隣り合っている各クリップのうちの他方のクリップに回動自在に係合しており、先端部側が、前記お互いに隣り合っている各クリップのうちの一方のクリップの側に延出して、先端部側が前記第1のエレメントの先端部側に回動自在に係合していると共に、基端部と先端部とをお互いに結ぶ方向と交差する方向に基端部から突出している突出部位が設けられており、前記第2のエレメントの突出部位が前記間隔調整レールに当接することによって、前記各エレメントが回動し、前記お互いに隣り合っている各クリップの間隔が調整されるように構成されているフィルム延伸装置である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のフィルム延伸装置において、前記クリップ間隔調整機構の突出部位の先端部側には、前記間隔調整レールに当接するローラが設けられており、前記クリップに対する前記第2のエレメントの回動中心と、前記ローラの回動中心との間の距離が、前記クリップに対する前記第2のエレメントの回動中心と、前記第1のエレメントと前記第2のエレメントとの回動中心との間の距離よりも大きくなっているフィルム延伸装置である。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項5または請求項6に記載のフィルム延伸装置において、前記クリップ間隔調整機構の突出部位が前記基準レールに当接したときに、前記突出部位が前記間隔調整レールで押され、前記第1のエレメントの先端部側と第2のエレメントの先端部側とが、各クリップチェーンで保持されているフィルムから離れる側に移動して、お互いに隣り合っている各クリップの間隔が小さくなるように構成されているフィルム延伸装置である。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のフィルム延伸装置において、前記クリップ間隔調整機構における前記間隔調整レールに当接する部位が、上下方向で、前記上側基準レールと下側基準レールとの間に位置しているフィルム延伸装置である。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のフィルム延伸装置を用いて、フィルムを延伸するフィルムの延伸方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フィルムの幅方向の端部を保持するクリップチェーンを備え、このクリップチェーンでフィルムを保持し、前記クリップチェーンを走行することによってフィルムを長手方向に搬送しつつ幅方向に引っ張って延伸するフィルム延伸装置において、簡素な構成かつ少ない工数で、フィルムの延伸の度合いを調整することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るフィルム延伸装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】フィルム延伸装置に使用されているクリップチェーンの概略構成を示す平面図である。
【図3】1つのクリップの正面図である。
【図4】クリップとクリップ間隔調整機構との概略構成を示す断面図である。
【図5】クリップとクリップ間隔調整機構との概略構成を示す断面図である。
【図6】第1のエレメントと第2のエレメントとが、「く」字状に折れ曲がり、お互いに隣り合っている各クリップの間隔が小さくなった状態を示す図であって、図2に対応した図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るフィルム延伸装置に使用されているクリップチェーンの概略構成を示す平面図であり、図2に対応した図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るフィルム延伸装置に使用されているクリップチェーンの概略構成を示す平面図であり、図2に対応した図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係るフィルム延伸装置に使用されているクリップチェーンの概略構成を示す平面図であり、図2に対応した図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係るフィルム延伸装置に使用されているクリップチェーンの概略構成を示す平面図であり、図2に対応した図である。
【図11】本発明の第5の実施形態に係るフィルム延伸装置に使用されているクリップチェーンの概略構成を示す平面図であり、図2に対応した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るフィルム延伸装置1の概略構成を示す平面図である。
【0020】
図2は、フィルム延伸装置1に使用されているクリップチェーン3の概略構成を示す平面図である。
【0021】
なお、クリップチェーン3は、複数のクリップ5の間にクリップ間隔調整機構(クリップ5と同数のクリップ間隔調整機構)7を配して(・・・クリップ5、クリップ間隔調整機構7、クリップ5、クリップ間隔調整機構7・・・の順に、クリップ5とクリップ間隔調整機構7とを交互に配して)、環状に形成されているのであるが(図1参照)、図2では、クリップチェーン3を構成している複数のクリップ5のうちでお互いに隣り合っている2つのクリップ5とその間に設けられている1つのクリップ間隔調整機構7とを描いてある。
【0022】
図3は、1つのクリップ5の正面図であり、図4、図5は、クリップ5とクリップ間隔調整機構7との概略構成を示す断面図である。
【0023】
フィルム延伸装置(フィルム横延伸装置)1は、フィルム(シート)Fの幅方向の一端部をクリップチェーン3Aで保持(たとえば把持)し、フィルムFの幅方向の他端部をクリップチェーン3Bで保持(たとえば把持)しつつ、クリップチェーン3(3A,3B)を同期させて走行することによって、フィルムFをこの長手方向(図1に矢印A1で示す方向;X方向)に搬送しつつフィルムFをこの幅方向(Y方向)に引っ張って延伸する装置である。
【0024】
なお、クリップチェーン3A,3Bで保持されて搬送されるフィルムFは、フィルムFの厚さ方向が上下方向(Z軸方向)になり、フィルムFの水平な一方向(X軸方向)がフィルムFの長手方向(搬送方向)になり、この長手方向に直交する水平な他の一方向(Y軸方向)がフィルムFの幅方向(横方向)になっている。
【0025】
また、クリップチェーン3で保持されて搬送されるフィルムFは、上述したように、フィルムFの幅方向の一端部が、クリップチェーン3Aによって保持されている。すなわち、各クリップ5に設けられているフィルム保持部(クランパー)9を用いて、フィルムFの厚さ方向でフィルムFを挟んで、フィルムFを保持している。これにより、フィルムFは、この幅方向の一端部が、フィルムFの長手方向に並んだ複数の箇所で、各クランパー9によって把持されている。同様にして、フィルムFの幅方向の他端部が、クリップチェーン3Bによって保持されている。
【0026】
図1に示すように、環状に形成されているクリップチェーン3Aは、スプロケットSPに巻き掛けられて、矢印A2の方向に走行するようになっている。クリップチェーン3Bも、矢印A2の方向に走行するようになっている。なお、スプロケットSPへの係合は、たとえば、クリップチェーン3のクリップ5に設けられた被係合部でなされるようになっている。
【0027】
フィルムFは、お互いが対向しているクリップチェーン3Aとクリップチェーン3Bとの部位(図1で、フィルムFの幅方向の両端部に存在している部位)で、幅方向の各端部がクランパー9により把持されおり、この把持された状態で搬送されるようになっている。なお、クリップチェーン3Aとクリップチェーン3Bとの他の部位(図1で、フィルムFの幅方向の両端部から離れている部位)では、フィルムFを把持していない。
【0028】
フィルムFの幅方向の各端部がクランパー9により把持されて搬送される領域(ゾーン)は、フィルムFの搬送方向の上流から下流に向かって順に、ゾーンZ1、ゾーンZ2、ゾーンZ3、ゾーンZ4、ゾーンZ5に区分される。ゾーンZ1は、フィルムFの予熱ゾーンであり、ゾーンZ2は、フィルムFの延伸ゾーン(横延伸ゾーン)であり、ゾーンZ3は、熱固定ゾーンであり、ゾーンZ4、ゾーンZ5は、フィルムFの幅方向と長手方向との2方向でフィルムFの引っ張り具合いを緩めるリラックスゾーンである。なお、ゾーンZ4では、フィルムFをリラックスさせる度合いが徐々に大きくなり、ゾーンZ5では、ゾーンZ4で大きくなったリラックスの度合いがほぼ一定に保たれている。
【0029】
ここで、ゾーンZ4やゾーンZ5でのフィルムFのリラックスの度合いについて詳しく説明する。
【0030】
まず、フィルムFの幅方向におけるリラックスの度合いについて説明する。フィルムFの幅方向におけるリラックスの度合いは、ゾーンZ4では、フィルムFが矢印A1の方向に搬送されるにしたがって次第に大きくなっている(各クリップチェーン3A,3B間の距離が次第に小さくなっている)。一方、上記リラックスの度合いは、ゾーンZ5では、フィルムFの矢印A1の方向への搬送にかかわらずほぼ一定になっている(各クリップチェーン3A,3B間の距離がほぼ一定になっている)。
【0031】
次に、フィルムFの長手方向におけるリラックスの度合いについて説明する。フィルムFの長手方向におけるリラックスの度合いは間隔調整レール13(13A,13B)によって、規定されるようになっている。そして、ゾーンZ4とゾーンZ5とでのフィルムFのリラックスの度合いは、ほぼ一定になっている。すなわち、ゾーンZ3とゾーンZ4との境界で、フィルムFの長手方向におけるリラックスが所定の度合いで始まり、この所定の度合いが、ゾーンZ4とゾーンZ5とで維持されるようになっている。
【0032】
なお、間隔調整レール13の設置形態を適宜変更することによって、フィルムFの長手方向におけるリラックスの度合いを適宜変更してもよい。たとえば、フィルムFの長手方向におけるリラックスの度合いが、ゾーンZ4で、フィルムFが矢印A1の方向に搬送されるにしたがって次第に大きくなるように構成してもよいし、間隔調整レール13をゾーンZ4に設置せずに、ゾーンZ4で、フィルムFの長手方向のリラックスをさせない構成であってもよい。
【0033】
フィルム延伸装置1についてより詳しく説明する。
【0034】
フィルム延伸装置1は、フィルム延伸装置1のベースとなるフレーム(図示せず)と、上側基準レール15(15A,15B)と下側基準レール17(17A,17B)と支持レール19(19A,19B)とを備えて構成されている。
【0035】
各レール15A,17A,19Aは、クリップチェーン3Aの走行をガイドするためのレールであるので、各レール15A,17A,19Aは、図1に示すクリップチェーン3Aに沿って環状に配置され、前記フレームに一体的に設けられている。
【0036】
上側基準レール15Aは、各クリップチェーン3A,3Bで保持されているフィルムFの上側で、各クリップチェーン3A,3Bで保持されているフィルムFの幅方向の一方の側に配置されている。
【0037】
また、上側基準レール15Aは、上下方向では、ほぼ一定のところに設置されており、各クリップチェーン3A,3Bで保持されているフィルムFの長手方向および幅方向で(各クリップチェーン3A,3Bで保持されているフィルムFが、フィルムFの長手方向で搬送されかつフィルムFの幅方向に引っ張られるような水平な二次元のXY方向で)、クリップチェーン3Aの走行をガイドするようになっている。
【0038】
下側基準レール17Aも、上側基準レール15Aと同様にして、各クリップチェーン3A,3Bで保持されているフィルムFの下側で、各クリップチェーン3A,3Bで保持されているフィルムFの幅方向の一方の側に配置されている。そして、上側基準レール15Aと下側基準レール17Aとに係合して、クリップチェーン3Aが上下の両端部でガイドされ走行するようになっている。
【0039】
また、上側基準レール15Aと下側基準レール17Aとは、クリップチェーン3Aで保持されているフィルムFの幅方向および厚さ方向(上下方向)で、クリップチェーン3Aで保持されているフィルムFから離れている。また、平面視において、上側基準レール15Aと下側基準レール17Aとはお互いが重なっている。これにより、クリップチェーン3Aが上方と下方とで同時にガイドされて滑らかに移動するようになっている。
【0040】
支持レール19Aは、クリップチェーン3Aの走行をフィルムFの厚さ方向(上下方向)でガイドするようになっている。すなわち、クリップチェーン3Aが水平方向で一定の高さを維持しつつ走行するようにクリップチェーン3Aをガイドしている。
【0041】
クリップチェーン3Aは、上述したように、それぞれがフィルムFを保持するクランパー9を備えた複数のクリップ5を、クリップ間隔調整機構7を用いてつなげることによって環状に形成されている。
【0042】
クリップ間隔調整機構7は、環状のクリップチェーン3Aを形成するために、各クリップ5のうちのお互いに隣り合っているクリップ5同士をお互いに接続している。また、クリップ間隔調整機構7は、クリップチェーン3Aが走行するときに、間隔調整レール13Aに高さ方向(上下方向)の一箇所で当接して、各クリップ5の間隔を調整する(たとえば、間隔が小さくなるように変更する)ようになっている。
【0043】
間隔調整レール(ピッチ調整レール)13Aも、前記フレームに一体的に設けられている。間隔調整レール13Aは、クリップチェーン3Aの各クリップ5の間隔を調整するために、上側基準レール15A(下側基準レール17A)に沿って設けられている。また、間隔調整レール13Aは、上下方向では上側基準レール15Aと下側基準レール17Aとから離れて、たとえば、上側基準レール15Aと下側基準レール17Aとの間に設けられており、長手方向では、上側基準レール15A(下側基準レール17A)の少なくとも一部の箇所(クリップ5の間隔の調整が必要な箇所;たとえば、ゾーンZ4、ゾーンZ5)で前記フレームに一体的に設けられ配置されている。
【0044】
なお、各レール15B,17B,19B,13Bは、各レール15A,17A,19A,13Aと同様に構成されている。そして、各クリップチェーン3A,3Bで保持されているフィルムFの幅方向の中心線を含み上下方向に展開している平面に対して、各レール15A,17A,19A,13Aと対称に配置されている。したがって、クリップチェーン3Aとクリップチェーン3Bとは、上記中心線を含み上下方向に展開している平面に対して、対称に配置されて走行するようになっている。
【0045】
そこで、以下、一方のクリップチェーン3A等についてさらに詳しく説明するが、他方のクリップチェーン3B等についても、一方のクリップチェーン3A等と同様に考えることができる。
【0046】
クリップ間隔調整機構7は、お互いに隣り合っているクリップ5の間に設けられている第1のエレメント21と第2のエレメント23とを備えて構成されている。第1のエレメント21は、基端部側の部位が、お互いに隣り合っている各クリップ5のうちの一方のクリップ(図2で示す右側のクリップ)5に、上下方向に延びた軸C1を中心にして回動自在に係合している。第1のエレメント21の先端部側は、お互いに隣り合っている各クリップ5のうちの他方のクリップ(図2で示す左側のクリップ)5の側に延出している。
【0047】
第2のエレメント23は、基端部側の部位がお互いに隣り合っている各クリップのうちの他方のクリップ(図2で示す左側のクリップ)5に、上下方向に延びた軸C2を中心にして回動自在に係合している。第2のエレメント23の先端部側は、お互いに隣り合っている各クリップ5のうちの一方のクリップ(図2で示す右側のクリップ)5の側に延出している。そして、第2のエレメント23の先端部側の部位が、上下方向に延びた軸C3を中心にして、第1のエレメント21の先端部側の部位に回動自在に係合している。
【0048】
さらに、第2のエレメント23には、突出部位25が設けられている。突出部位25は、第2のエレメント23の基端部(軸C2)と第2のエレメント23の先端部(軸C3)とをお互いに結ぶ方向と交差する方向であって、各クリップチェーン3A,3Bで保持されているフィルムFから離れる方向に、第2のエレメント23基端部から突出している。なお、突出部位25は、たとえば、第2のエレメント23の本体と一体で形成されている。
【0049】
そして、第2のエレメント23の突出部位25が間隔調整レール13Aに当接することによって、各エレメント21,23が回動し、お互いに隣り合っている各クリップ5の間隔が、小さくなるようにして調整されるようになっている。
【0050】
また、クリップ間隔調整機構7における間隔調整レール13Aに当接する部位が、上下方向(各クリップチェーン3A,3Bで保持されているフィルムFの厚さ方向)で、上側基準レール15A(上側基準レール15Aとカムフォロア27との接触部位)と下側基準レール17A(下側基準レール17Aとカムフォロア29との接触部位)との間(たとえばほぼ真ん中)に位置している(図4参照)。
【0051】
なお、第2のエレメント23の突出部位25が間隔調整レール13Aに当接しておらず、クリップチェーン3AがフィルムFを保持して走行している状態では、各エレメント21,23に張力が加わって各エレメント21,23が直線状の延びきっており、お互いに隣り合っている各クリップ5の間隔が最も大きくなっている。すなわち、クリップ5に対する第1のエレメント21の回動中心C1と、クリップ5に対する第2のエレメント23の回動中心C2と、第1のエレメント21と第2のエレメント23との回動中心C3とが、ほぼ一直線上に存在しており、各回動中心C1,C2,C3がクリップチェーン3Aの走行方向に沿って並んでいる。また、突出部位25は、各エレメント21,23の回動中心C1,C2,C3を間にして、フィルム保持部(クランパー)9とは反対側にしている。
【0052】
突出部位25は、第2のエレメント23の基端部と先端部とをお互いに結ぶ方向に対して鋭角の角度αで交差して突出している。すなわち、突出部位25は、第1のエレメント21側に斜めに延びている。そして、突出部位25が間隔調整レール13Aに当接したときには、突出部位25が間隔調整レール13Aで押され、図6で示すように、第1のエレメント21の先端部側と第2のエレメント23の先端部側とが、各クリップチェーン3A,3Bで保持されているフィルムFの側(クリップ5のフィルム保持部9の側)に移動して、第1のエレメント21と第2のエレメント23とが、これらの係合部のところ(回動中心軸C3)で「く」字状に折れ曲がり、お互いに隣り合っている各クリップ5の間隔が小さくなるようになっている。
【0053】
なお、上記構成にあっては、突出部位25の先端部側にローラ31が設けられており、このローラ31が間隔調整レール13Aに当接するようになっている。ローラ31は、上下方向に延びた軸C4を中心にして、突出部位25に回転自在に設けられている。
【0054】
また、クリップ5に対する第1のエレメント21の回動中心C1と、第1のエレメント21と第2のエレメント23との回動中心C3との間の距離が、クリップ5に対する第2のエレメント23の回動中心C2と、第1のエレメント21と第2のエレメント23との回動中心C3との間の距離と等しくなっている。これに対して、クリップ5に対する第2のエレメント23の回動中心C2と、ローラ31の回動中心C4との間の距離が、クリップ5に対する第2のエレメント23の回動中心C2と、第1のエレメント21と第2のエレメント23との回動中心C3との間の距離よりも小さくなっている。
【0055】
ところで、上側基準レール15Aや下側基準レール17Aは、図4で示すように、複数枚の薄板をこれらの厚さ方向で互いに重ねて形成されている。これにより、上側基準レール15Aや下側基準レール17Aを、図1で示すように環状に形成することが容易になっている。なお、図4の紙面に直交する方向に、クリップチェーン3Aが走行(各クリップ5が移動)するようになっている。
【0056】
また、上側基準レール15Aや下側基準レール17Aは、「コ」字状に形成されたレール支持部材33に一体的に支持されている。レール支持部材33は、クランパー9側(図1では、環状のクリップチェーン3Aの外側)に開口するようにして、前記フレームに一体的に設けられている。支持レール19Aは、断面が「コ」字状に形成されており、下側基準レール17Aの下側で、レール支持部材33に一体的に設けられている。
【0057】
クリップ5は、ほぼ「コ」字状に形成されたベース体37を備えて構成されている。ベース体37には、カムフォロア27,29が設けられており、カムフォロア27で上側基準レール15Aを挟み込んでおり、カムフォロア27が上側基準レール15Aに対して転がり対偶をなしている。同様にして、カムフォロア29で下側基準レール17Aを挟み込んでいる。
【0058】
また、ベース体37には、カムフォロア支持体39を介して、カムフォロア41が設けられており、カムフォロア41が、支持レール19Aの内側に入り込んで、カムフォロア41が支持レール19Aに対して転がり対偶をなしている。
【0059】
ところで、ローラ31は、円柱状の支持部材43を介して、第2のエレメント23の突出部位25の箇所に、回転自在に設けられている。ローラ31は、複数のベアリング31A,31B,31Cをこの中心軸C4の方向(上下方向)に並べて構成されている。これにより、間隔調整レール13Aでの乗り移りを少なくとも1つのベアリングが転がり接触しながら連続的に各エレメント21,23の押し曲げをすることができる。すなわち、単に図4の紙面に平行な平面を間隔調整レール13Aの継ぎ目にするのではなく、特開2007−230143号公報で示すように、間隔調整レール13Aの継ぎ目をたとえば凹凸状にして間隔調整レール13Aをつないだ場合、3つのベアリング31A,31B,31Cのうちの少なくとも1つのベアリングが間隔調整レール13Aの継ぎ目以外の面に当接するので、間隔調整レール13Aの継ぎ目におけるローラ31の乗り移りがスムーズになされ、フィルム延伸装置1を安定した状態で稼働させることができる。
【0060】
次に、フィルム延伸装置1の動作について説明する。
【0061】
まず、図1に示すように、初期状態として、押し出し成形機または繰り出し機から原反としてのフィルムFが送り出され、フィルム延伸装置1が稼動して(各クリップチェーン3A,3B同士が同期して走行しつつ)フィルムFを延伸しているものとする。
【0062】
上記初期状態において、ゾーンZ1の入口のところで、クリップ5のクランパー9がフィルムFを保持する。
【0063】
クリップ5のクランパー9がフィルムFを保持したまま、ゾーンZ1〜ゾーンZ5までフィルムFを搬送し、この搬送をするときに、フィルムFの延伸等がなされる。
【0064】
そして、ゾーンZ5の出口のところで、クリップ5のクランパー9がフィルムFを離し、この後、クリップ5は、フィルムFとは反対側を移動し、ゾーンZ1の入口のところまで戻り、再び、クリップ5のクランパー9がフィルムFを保持する。
【0065】
フィルム延伸装置1によれば、クリップ間隔調整機構7で各クリップ5をお互いにつないでいると共に、クリップ間隔調整機構7の構成部品(ローラ31)を間隔調整レール13に当接させることによってクリップ5の間隔を調整しているので、複雑なリンク機構等が使用されておらず、装置の構成が簡素化されている。
【0066】
また、フィルム延伸装置1によれば、クリップ間隔調整機構7のローラ(クリップ間隔調整機構7を構成しているローラ;突出部位25に設けられているローラ)31が上下方向の1箇所で間隔調整レール13に当接するので、装置の構成が簡素化されていると共に、フィルムFの延伸の度合いを容易に調整することができる。
【0067】
すなわち、上記特許文献2に記載のフィルム延伸装置では、間隔調整レールが上下2箇所に設けられていると共に、これらの間隔調整レールのそれぞれにローラを当接させる構成であるので、上側の間隔調整レールと下側の間隔調整レールとの位置が僅かにずれただけで、上側と下側とでクリップの間隔にずれが生じ、安定した運転ができなくなる。安定した運転をするためには、上側間隔調整レールの位置と下側間隔調整レールの位置の調整をしなければならないが、この位置の調整は難しい作業であり、多くの時間を要する。そして、調整がうまくなされていないと、片方の間隔調整レールにのみローラが当接し、偏った磨耗が発生し装置の寿命が短くなってしまう。
【0068】
これに対して、フィルム延伸装置1では、間隔調整レール13が上下方向で1箇所にしか設けられていないので、上述した難しい調整作業は発生せず、フィルムFの延伸の度合いを容易に調整することができ、装置の寿命を延ばすことができる。なお、上側基準レール15(15A,15B)および下側基準レール17(17A,17B)は、剛性の高いレール支持部材33の面(たとえば機械加工によって精度良く加工された仕上面)に直接接合されているので、精度良く保持されて設置されている。
【0069】
また、フィルム延伸装置1によれば、クリップ間隔調整機構7がクリップ5に対して回動する各エレメント21,23を備えて構成されているので、各エレメント21,23の形態を変えることによって、お互いに隣り合うクリップ5の間隔の調整幅等を変更することが容易になり、設計の自由度が高くなっている。
【0070】
さらに、フィルム延伸装置1によれば、クリップ間隔調整機構7における間隔調整レール13に当接する部位(ローラ31)が、上下方向で、上側基準レール15と下側基準レール17との間に位置しているので、クリップ間隔調整機構7のローラ31が間隔調整レール13に当接することよりクリップ5やクリップ間隔調整機構7に外力が作用しても、この外力によってクリップ間隔調整機構7やクリップ5に大きなモーメントが発生することがなくなり、安定した状態でクリップチェーン3を走行させることができる。
【0071】
[第2の実施形態]
図7、図9は、本発明の第2の実施形態に係るフィルム延伸装置に使用されているクリップチェーン3aの概略構成を示す平面図であり、図2に対応した図である。
【0072】
第2の実施形態に係るフィルム延伸装置は、クリップ間隔調整機構7の突出部位25aの形態が、第1の実施形態に係るフィルム延伸装置1のものと異なり、その他の点は、第1の実施形態に係るフィルム延伸装置1と同様に構成されている。
【0073】
すなわち、第2の実施形態に係るフィルム延伸装置では、クリップ間隔調整機構7の突出部位25aが、第1の実施形態に係るフィルム延伸装置1のものより長く突出している。突出部位25aの先端部側にはローラ31が設けられている。そして、クリップ5に対する第2のエレメント23の回動中心C2と、ローラ31の回動中心C4との間の距離が、クリップ5に対する第2のエレメント23の回動中心C2と、第1のエレメント21と第2のエレメント23との回動中心C3との間の距離よりも大きくなっている。
【0074】
このように、回動中心C2と回動中心C4との間の距離が、回動中心C2と回動中心C4との間の距離よりも大きくなっているので、てこの原理によって、お互いに隣り合うクリップ5の間隔を調整する力を増幅させることができ、間隔調整レール13とローラ31との間の接触圧の上昇を抑えつつ、お互いに隣り合うクリップ5の間隔を確実に精度良く調整することができる。
【0075】
なお、図7に示すものでは、突出部位25aが円弧状に突出しているが、図9に示すものでは、突出部位25aが直線状に突出している。
【0076】
[第3の実施形態]
図8は、本発明の第3の実施形態に係るフィルム延伸装置に使用されているクリップチェーン3bの概略構成を示す平面図であり、図2に対応した図である。
【0077】
第3の実施形態に係るフィルム延伸装置は、クリップ間隔調整機構7の突出部位25bの突出方向が、第2の実施形態に係るフィルム延伸装置のものと異なり、その他の点は、第2の実施形態に係るフィルム延伸装置と同様に構成されている。
【0078】
すなわち、第3の実施形態に係るフィルム延伸装置では、クリップ間隔調整機構7の突出部位25bが、各クリップチェーン3A,3Bで保持されているフィルムFの長手方向では、第1のエレメント21から離れる側に延びている。すなわち、クリップ間隔調整機構7の突出部位25bに設けられているローラ31の回動中心軸C4と、第2のエレメント23とクリップ5との回動中心軸C2とをお互いに結ぶ直線と、第2のエレメント23とクリップ5との回動中心軸C2と、第1のエレメント21とクリップ5との回動中心軸C1とをお互いに結ぶ直線とが、鈍角の角度βで交差している。
【0079】
そして、クリップ間隔調整機構7の突出部位25bのローラ31が間隔調整レール13に当接したときに、突出部位25bが間隔調整レール13で押され、第1のエレメント21の先端部側と第2のエレメント23の先端部側と(回動中心C3)が、各クリップチェーン3A,3Bで保持されているフィルムF(クリップ5のフィルム保持部9)から離れる側に移動して(図8で示すように、第1のエレメント21と第2のエレメント23とが、これらの係合部のところで、図8の下方に「く」字状に折れ曲がり、)お互いに隣り合っている各クリップ5の間隔が小さくなるように構成されている。
【0080】
このように、各エレメント21,23がフィルム保持部9とは反対側の向かって曲がることによって、お互いに隣り合うクリップ5の間隔を調整するので、各エレメント21,23がクリップ5等と干渉することを避けつつ、お互いに隣り合うクリップ5の間隔の調整幅を大きくすることができる。
【0081】
[第4の実施形態]
図10は、本発明の第4の実施形態に係るフィルム延伸装置に使用されているクリップチェーン3cの概略構成を示す平面図であり、図2に対応した図である。
【0082】
第4の実施形態に係るフィルム延伸装置は、クリップ間隔調整機構7の形態が、第1の実施形態に係るフィルム延伸装置1のものとは異なり、その他の点は、第1の実施形態に係るフィルム延伸装置1と同様に構成されている。
【0083】
すなわち、第4の実施形態に係るフィルム延伸装置では、クリップ間隔調整機構7が、回動部材45を備えて構成されている。そして、お互いに隣り合っているクリップのうちの一方のクリップ5に、回動部材45一方の側の部位が、上下方向に延びた軸C5を中心にして回動自在に係合しており、回動部材45の他方の側の部位が、お互いに隣り合っているクリップのうちの他方のクリップ5にスライド自在に係合している。
【0084】
そして、回動部材45の一部の部位(ローラ31)が間隔調整レール13に当接することによって回動部材45が矢印A5で示す力を受け、回動部材45が矢印A6で示す方向に回動し、各クリップ5が矢印A7で示す方向に移動し、各クリップ5の間隔を調整するように構成されている。
【0085】
なお、回動部材45の他方の側の部位と他方のクリップ5との係合は、回動部材45の他方の側に設けられている長孔47に、クリップ5に一体的に設けられている突起49がすべり対偶をなしてなされており、突起49が長孔47の長手方向に移動するようになっている。
【0086】
[第5の実施形態]
図11は、本発明の第5の実施形態に係るフィルム延伸装置に使用されているクリップチェーン3dの概略構成を示す平面図であり、図2に対応した図である。
【0087】
第5の実施形態に係るフィルム延伸装置は、クリップ間隔調整機構7の形態が、第1の実施形態に係るフィルム延伸装置1のものと異なり、その他の点は、第1の実施形態に係るフィルム延伸装置1と同様に構成されている。
【0088】
すなわち、第5の実施形態に係るフィルム延伸装置では、クリップ間隔調整機構7が、移動部材51を備えて構成されている。そして、移動部材51の一方の側の部位が、お互いに隣り合っているクリップのうちの一方のクリップ5に、各クリップチェーン3A,3Bで保持されているフィルムFの幅方向で、たとえば、リニアガイドベアリング(図示せず)を介して、直線的に移動自在に係合している。同様にして、移動部材51の他方の側の部位が、お互いに隣り合っているクリップのうちの他方のクリップ5に、直線的に移動自在に係合している。
【0089】
そして、移動部材51の一部の部位(ローラ31)が間隔調整レール13に当接することによって移動部材51がクリップ5に対して、矢印A8の方向に移動し、この移動によって、各クリップ5が矢印A9で示す方向に移動し、各クリップ5の間隔を調整するように構成されている。
【0090】
なお、移動部材51とクリップ5との係合は、第4の実施形態と同様にして、各長孔53と各突起55とによってなされている。
【0091】
ところで、上記各実施形態に係るフィルム延伸装置の間隔調整レール13(13A,13B)を、ゾーンZ4,Z5のリラックスゾーンに設けるだけでなく、他のゾーンZ1〜Z3に設けてもよい。
【0092】
たとえば、間隔調整レール13(13A,13B)を、予熱ゾーンZ1に設け、熱をあたえることによって発生するおそれのあるフィルムFのたるみを吸収してもよい。また、たとえば、延伸ゾーンZ2の入口や出口のところに間隔調整レール13(13A,13B)を設け、延伸ゾーンZ2の入口(延伸開始)や出口(延伸終了)での基準レール15、17の屈曲部とこの前後でのクリップ5の間隔(お互いに隣り合っているクリップ5の間隔)の変化を調整して補正してもよい。
【0093】
また、図2、図6、図7、図8、図9では、フィルムFを保持している各クリップ5が、図の左側から右側に向かって移動しつつフィルムFを左側から右側に搬送するようになっているが、逆に、図2、図6、図7、図8、図9において、フィルムFを保持している各クリップ5が、図1の右側から左側に向かって移動しつつフィルムFを右側から左側に搬送するようになっていてもよい。
【0094】
また、上述したフィルム延伸装置は、フィルムの幅方向の端部を前記フィルムの長手方向に並んだ複数の箇所で保持するクリップチェーンを備え、このクリップチェーンで前記フィルムを保持し、前記クリップチェーンを走行することによって前記フィルムをこの長手方向に搬送しつつ前記フィルムをこの幅方向に引っ張って前記フィルムを延伸するフィルム延伸装置であって、前記クリップチェーンをガイドするために上側に配置された上側基準レールと、前記クリップチェーンをガイドするために下側に配置された下側基準レールと、前記クリップチェーンの走行を上下方向でガイドするための支持レールと、前記クリップチェーンを構成している複数のクリップと、前記各クリップ間の間隔を調整するために配置された間隔調整レールと、前記各クリップのうちのお互いに隣り合っているクリップ同士をお互いに接続すると共に、前記間隔調整レールに当接して、前記各クリップ間の間隔を調整するクリップ間隔調整機構とを有するフィルム延伸装置の例である。
【符号の説明】
【0095】
1 フィルム延伸装置
3、3A、3B、3a、3b、3c、3d クリップチェーン
5 クリップ
7 クリップ間隔調整機構
9 フィルム保持部(クランパー)
13、13A、13B 間隔調整レール
15、15A、15B 上側基準レール
17、17A、17B 下側基準レール
21 第1のエレメント
23 第2のエレメント
25、25a、25b 突出部位
31(31A、31B、31C) ローラ(ベアリング)
45 回動部材
51 移動部材
F フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの幅方向の端部を保持するクリップチェーンを備え、このクリップチェーンで前記フィルムを保持し、前記クリップチェーンを走行することによって前記フィルムを搬送しつつ延伸するフィルム延伸装置において、
前記クリップチェーンをガイドするために上側に配置された上側基準レールと;
前記クリップチェーンをガイドするために下側に配置された下側基準レールと;
前記クリップチェーンを構成している複数のクリップと;
前記各クリップ間の間隔を調整するために配置された間隔調整レールと;
前記各クリップのうちのお互いに隣り合っているクリップ同士を接続すると共に、前記間隔調整レールに当接して、前記各クリップの間隔を調整するクリップ間隔調整機構と;
を有することを特徴とするフィルム延伸装置。
【請求項2】
厚さ方向が上下方向になり水平な一方向が長手方向になり、この長手方向に直交する水平な他の一方向が幅方向になるように、フィルムの幅方向の一端部を前記フィルムの長手方向に並んだ複数の箇所で保持する第1のクリップチェーンと、前記フィルムの幅方向の他端部を前記フィルムの長手方向に並んだ複数の箇所で保持する第2のクリップチェーンとを備え、前記各クリップチェーンで前記フィルムを保持し、前記各クリップチェーンを走行することによって前記フィルムを長手方向に搬送しつつ幅方向に引っ張って延伸するフィルム延伸装置において、
前記第1のクリップチェーンをガイドするために上側に配置された第1の上側基準レールと;
前記第1のクリップチェーンをガイドするために下側に配置された第1の下側基準レールと;
前記第2のクリップチェーンをガイドするために上側に配置された第2の上側基準レールと;
前記第2のクリップチェーンをガイドするために下側に配置された第2の下側基準レールと;
前記第1のクリップチェーンを構成している複数の第1のクリップと;
前記第1の各クリップの間隔を調整するために配置された第1の間隔調整レールと;
前記第1の各クリップのうちのお互いに隣り合っている第1のクリップ同士を接続すると共に、前記第1の間隔調整レールに当接して、前記第1の各クリップの間隔を調整する第1のクリップ間隔調整機構と;
前記第2のクリップチェーンを構成している複数の第2のクリップと;
前記第2の各クリップの間隔を調整するために配置された第2の間隔調整レールと;
前記第2の各クリップのうちのお互いに隣り合っている第2のクリップ同士を接続すると共に、前記第2の間隔調整レールに当接して、前記第2の各クリップの間隔を調整する第2のクリップ間隔調整機構と;
を有することを特徴とするフィルム延伸装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のフィルム延伸装置において、
前記クリップ間隔調整機構は、
前記お互いに隣り合っているクリップのうちの一方のクリップに一方の側が回動自在に係合し、前記お互いに隣り合っているクリップのうちの他方のクリップに他方の側が係合している回動部材を備えていると共に、前記回動部材の一部が前記間隔調整レールに当接することによって前記回動部材が回動し、前記各クリップの間隔を調整するように構成されていることを特徴とするフィルム延伸装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のフィルム延伸装置において、
前記クリップ間隔調整機構は、
前記お互いに隣り合っているクリップのうちの一方のクリップに一方の側が移動自在に係合し、前記お互いに隣り合っているクリップのうちの他方のクリップに他方の側が移動自在に係合している移動部材を備えていると共に、前記移動部材の一部が前記間隔調整レールに当接することによって前記移動部材が移動し、前記クリップの間隔を調整するように構成されていることを特徴とするフィルム延伸装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のフィルム延伸装置において、
前記クリップ間隔調整機構は、
前記お互いに隣り合っているクリップの間に設けられている第1のエレメントと第2のエレメントとを備えて構成されており、
前記第1のエレメントは、基端部側が前記お互いに隣り合っている各クリップのうちの一方のクリップに回動自在に係合しており、先端部側が、前記お互いに隣り合っている各クリップのうちの他方のクリップの側に延出しており、
前記第2のエレメントは、基端部側が前記お互いに隣り合っている各クリップのうちの他方のクリップに回動自在に係合しており、先端部側が、前記お互いに隣り合っている各クリップのうちの一方のクリップの側に延出して、先端部側が前記第1のエレメントの先端部側に回動自在に係合していると共に、基端部と先端部とをお互いに結ぶ方向と交差する方向に基端部から突出している突出部位が設けられており、
前記第2のエレメントの突出部位が前記間隔調整レールに当接することによって、前記各エレメントが回動し、前記お互いに隣り合っている各クリップの間隔が調整されるように構成されていることを特徴とするフィルム延伸装置。
【請求項6】
請求項5に記載のフィルム延伸装置において、
前記クリップ間隔調整機構の突出部位の先端部側には、前記間隔調整レールに当接するローラが設けられており、前記クリップに対する前記第2のエレメントの回動中心と、前記ローラの回動中心との間の距離が、前記クリップに対する前記第2のエレメントの回動中心と、前記第1のエレメントと前記第2のエレメントとの回動中心との間の距離よりも大きくなっていることを特徴とするフィルム延伸装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のフィルム延伸装置において、
前記クリップ間隔調整機構の突出部位が前記基準レールに当接したときに、前記突出部位が前記間隔調整レールで押され、前記第1のエレメントの先端部側と第2のエレメントの先端部側とが、各クリップチェーンで保持されているフィルムから離れる側に移動して、お互いに隣り合っている各クリップの間隔が小さくなるように構成されていることを特徴とするフィルム延伸装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のフィルム延伸装置において、
前記クリップ間隔調整機構における前記間隔調整レールに当接する部位が、上下方向で、前記上側基準レールと下側基準レールとの間に位置していることを特徴とするフィルム延伸装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のフィルム延伸装置を用いて、フィルムを延伸することを特徴とするフィルムの延伸方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−247393(P2010−247393A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97768(P2009−97768)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】