説明

フィルム引出し装置

【課題】フィルムウエブを切断してフィルムシートを形成するにあたり、フィルムウエブのばたつきを発生させることなくフィルムウエブの引出しが行え、且つ、フィルムシートのシート長を容易に可変することができるフィルム引出し装置を提供する。
【解決手段】フィルム引出し装置は、フィルムシートにおけるシート長の大部分に相当する分だけ、フィルムウエブWの定長引出しを引出し経路8に沿って実施する引出しグリッパ16と、シート長の不足分を補うべくフィルムウエブWの予備引出しを実施し、引出し経路8上にてフィルムシートの先端位置を一定にする切断・予備引出しユニット18と、切断・予備引出しユニット18をウエブ供給経路4に沿って往復動させ、フィルムシートの後端位置となるフィルムウエブWの切断位置を可変させるリニアアクチュエータ32とを備え、切断・予備引出しユニット18はフィルムウエブWのカッタ20及びフィルムウエブWの挟持具26を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上包み包装機のためのフィルム引出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のフィルム引出し装置はフィルムウエブを引出して切断し、包材としてのフィルムシートを形成するために使用される。通常、フィルムウエブの引出し量は、要求されるフィルムシートの長さに応じて一義的に設定されるが、引出し量を可変可能とし、その汎用性を高めたフィルム引出装置も知られている。
【0003】
このような汎用型のフィルム引出し装置は例えば、フィルム把持部材を備えた引出しアームの回動量を調整するフィルム引出量制御機構を含み、この制御機構は、カムの回転により揺動する主アーム、制御アーム、リンク及び、動力原としての補助モータ、タイミングベルト及び制御アームの定位置検出器により構成されている(特許文献1の段落0031参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-339727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のフィルム引出し装置の場合、主アームの揺動動作と制御アームの回動動作とからなる2つの動作が組み合わさってフィルムウエブの引出しをなすため、フィルムウエブの引出しを滑らかに行うことができず、その引出し中、フィルムウエブはばたつき易い。このようなばたつきはフィルムウエブからの正常なフィルムシートの形成を妨げ、この後のフィルムシートの折り込みによる上包み包装を不良にするか、又は、上包み包装自体を不能にする虞がある。
【0006】
本発明は上述の事情に基づいてなされたもので、その目的とするところはフィルムシートのシート長を容易に変更でき、且つ、フィルムウエブの引出しを安定して行うことができるフィルム引出し装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明のフィルム引出装置は、フィルムウエブの供給経路から、フィルムウエブを一定の長さずつ引出す定長引出しを繰返して実施する引出し手段であって、この長さが所望のフィルムシートのシート長の大部分を占める、引出し手段と、供給経路に設けられ、引出し手段によるフィルムウエブの各定長引出しの後にフィルムウエブを繰り返して切断する切断器と、前記シート長と前記長さとの間の差に基づいて、定長引出しに先立ち前記フィルムウエブの切断端にて規定されるフィルムシートの先端の端位置又は定長引出し後、前記フィルムウエブの切断によって形成されるフィルムシートの後端の端位置の少なくとも一方を可変する端位置可変手段とを備える(請求項1)。
【0008】
上述のフィルム引出し装置によれば、定長引出しに先立ち、フィルムシートの先端の端位置又は定長引出し後におけるフィルムシートの後端の端位置を可変するようにしたから、フィルムウエブの定長引出しに拘わらず、フィルムウエブの実際の引出し量が調整され、所望のシート長を有するフィルムシートの形成が可能となる。
また、フィルムウエブにおける大部分の引出しは定長引出しによってなされるから、この定長引出し中、フィルムウエブがばたつくことはない。
【0009】
具体的には、引出し手段は、供給経路側に位置したフィルムウエブの把持位置とこの把持位置から離間したフィルムウエブの開放位置との間にて直線的に往復動する引出しグリッパを含んでいる(請求項2)。
一方、端位置可変手段は、前記フィルムシートの後端となる端位置に配置可能な切断器と、定長引出しに先立ち、フィルムウエブの切断端を把持位置に移動させるべくフィルムウエブの予備引出しをなす予備引出し機構とを含むことができる(請求項3)。
【0010】
この場合、定長引出しがなされた後、フィルムシートに所望のシート長を付与すべく切断器にてフィルムウエブの切断がなされ、この後、予備引出し機構はフィルムウエブの切断端を把持位置に移動させるべくフィルムウエブの予備引出しを実施する。
即ち、フィルムウエブに要求される引出し量、即ち、シート長は把持位置からの定長引出しと切断器によるフィルムウエブの切断位置とによって決定される。
【0011】
好ましくは、予備引出し機構は、切断器の直上流に配置され、フィルムウエブを挟持可能な挟持部材と、この挟持部材及び切断器を供給経路に沿い連動して往復動させるリニアアクチュエータとを含むことができる(請求項4)。この場合、切断器は、定長引出し中、フィルムシートの後端となる端位置に向けて移動され、その端位置に配置される。
【0012】
また、端位置可変手段は、定長引出しに先立つフィルムウエブの予備繰出しにより、フィルムウエブの切断端、即ち、フィルムシートの先端の端位置を可変する予備繰出し手段であってもよい(請求項5)。この場合、フィルムウエブに要求される引出し量、即ち、シート長は定長引出しと予備繰出しとの合計によって決定される。
【0013】
具体的には、予備繰出し手段は、供給経路上のフィルムウエブを挟持しながらフィルムウエブを繰出す一対の繰出しローラと、これら繰出しローラの回転方向をフィルムウエブの繰出し方向のみに規制する一方向クラッチとを有する(請求項6)。この場合、フィルムウエブの定長引出し中、一対の繰出しローラはアイドル状態にあり、定長引出しに伴って回転する。
【0014】
好ましくは、予備繰出し手段は、少なくとも定長引出しの終了時、フィルムウエブの挟持を開放すべく一対の繰出しローラを互いに離間させる退避機構を更に有する(請求項7)。定長引出しの終了時、退避機構は一対の繰出しローラを互いに離間させることで、フィルムウエブの挟持を開放し、この際、繰出しローラの惰性回転に起因するフィルムウエブの連れ送りが阻止される。
【0015】
一方、端位置可変手段は、請求項3の切断器と、請求項5の予備繰出し手段とを同時に含むことができる(請求項8)。この場合、定長引出しに先立ち、フィルムシートの先端の端位置が予備繰出し手段によって可変できるばかりでなく、定長引出し後、フィルムシートの後端の端位置を切断装置によっても可変できる。
それ故、フィルムシートの先端及び後端の端位置が同時に調整可能であるので、たとえシート長が一定であっても、定長引出し時におけるフィルムシートの供給位置をその引出し方向に調整することができる。このことは、フィルムシートが製品の回りに胴巻きされて、互いに重ね合わされた両端を胴シールにて接着する際、製品に対する胴シール位置(胴巻きの合わせ目)が変更できることを意味する。
【0016】
更に好ましくは、フィルムウエブがシート長に相当する間隔毎にレジマークを有している場合、端位置可変手段は、供給経路に設けられ、フィルムウエブのレジマークを検出し、この検出信号を出力するマーク検出器と、供給経路に設けられ、フィルムウエブが引出されるとき、フィルムウエブの引出し量を測定し、この測定信号を出力する測長器とを含んでいる(請求項9)。
【0017】
この場合、端位置可変手段は、マーク検出器の検出信号及び測長器の測長信号に基づき、前述したフィルムウエブの予備引出し又は予備繰出しを行え、フィルムウエブの切断端を正確に位置決めできる。また、フィルムウエブが個々のフィルムシートのための模様を有している場合、フィルムウエブの切断端に対してフィルムシートの模様合わせをなすべく、検出信号及び測長信号に基づいて予備引出し又は予備繰出しの補正や、レジマークの検出補正が可能となり、模様合わせを精度良く行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1〜9のフィルム引出し装置は、個々のフィルムシートの形成にあたり、フィルムウエブに要求される引出し量、即ち、そのシート長の大部分を定長引出しに割り当て、そして、シート長と定長引出し長さとの差を切断器による切断位置の調整又は予備繰出しによって補うようにしたから、フィルムウエブの定長引出し中、フィルムウエブがばたつくことはなく、また、フィルムシートのシート長の変更に容易に対処できる。それ故、正常なフィルムシートの形成を確実に行え、この後のフィルムシートによる包装の仕上がりを綺麗にするうえで大きく寄与する。
【0019】
また、フィルムシートが模様を有する場合には、フィルムウエブの予備引出し又は予備繰出しにて、フィルムシートの模様合わせを精度良く容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一実施例のフィルム引出装置を備えた上包み包装機を概略的に示す斜視図である。
【図2】一実施例のフィルム引出し装置におけるフィルムウエブの引出し動作を説明するための図である。
【図3】フィルムウエブの予備引出し(予備繰出し)を制御するブロック構成図である。
【図4】変形例のフィルム引出装置におけるフィルムウエブの引出し動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1を参照すると、上包み包装機は製品Aの移送経路2を備え、この移送経路2は水平に延びている。移送経路2上の製品Aは間隔を存した状態で、移送経路2の終端位置2eに向けて移送され、この終端位置2eに順次位置付けられる。
【0022】
一方、移送経路2の移送方向前方にはフィルムウエブWのウエブロールWRが配置され、このウエブロールWRからは移送経路2に向けてウエブ供給経路4が延びている。ウエブ供給経路4は多数のガイドローラによって形成され、その途中には補助繰出しローラユニット6が配置されている。この補助繰出しローラユニット6はウエブロールWRからウエブ供給経路4に沿ってフィルムウエブWを移送経路2側に向けて繰出し、フィルムウエブWの準備繰出しを実施する。
【0023】
一方、ウエブ供給経路4の近傍にはテープロールTRが配置され、このテープロールTRからティアテープTが引き出されている。引き出されたティアテープTはフィルムウエブWに貼付けされ、フィルムウエブWの繰出しに伴いテープロールTRから繰り出される。
【0024】
ウエブ供給経路4の終端からはフィルムウエブWの引出し経路8が延び、この引出し経路8は移送経路2における終端位置2eの上方を移送経路2に沿って延びている。ウエブ供給経路4の終端域から引出し経路8に亘って一実施例のフィルム引出し装置10が配置されており、このフィルム引出し装置10はウエブ供給経路4から引出し経路8に沿ってフィルムウエブWを引出した後にフィルムウエブWを切断し、終端位置2eの上方に所望のシート長を有するフィルムシートSを形成する。フィルム引出し装置10の詳細については後述する。
【0025】
一方、引出し経路8の上方には包装経路12が配置されている。この包装経路12は引出し経路8の上方位置から移送経路2の前方に向けて水平に延び、その下流域がチェーンプッシャ14によって形成されている。
【0026】
移送経路2の終端位置2eに製品Aが位置付けられ、且つ、引出し経路8上にてフィルムシートSが形成されたとき、製品Aはエレベータ(図示しない)により、引出し経路8上のフィルムシートSとともに包装経路12まで上昇され、この包装経路12の始端位置に配置される。この際、フィルムシートSは製品Aの回りに胴折りされ、この胴折りにより形成される一対の胴フラップは製品Aの下面にて重ね合われ、そして、ヒートシール、即ち、胴シールを受けることで互いに接着される。即ち、この時点で、フィルムシートSによる製品Aの胴巻きが完了し、フィルムシートSの胴巻きは、製品Aの左右にそれぞれ突出する耳部Eを形成する。
【0027】
胴巻き製品Aは包装経路12の始端位置からチェーンプッシャ14に向けて押し出され、チェーンプッシャ14に受け渡される。この際、胴巻き製品Aの左右の耳Eは耳折りされ、ここでの耳折りは耳Eに上下のサイドフラップSFを形成する。この後、胴巻き製品Aがチェーンプッシャ14によって移送される際、上下のサイドフラップSFに対してサイド折込みが順次行われ、これら上下のサイドフラップSFは製品Aの対応する端面上にて重ね合わされた後、ヒートシールを受け、互いに接着される。この時点で、製品Aの上包み包装が完了し、上包み包装品Hが得られる。この後、上包み包装品Hはチェーンプッシャ14から次工程に向けて移送される。
【0028】
次に、図1に加え、図2及び図3を参照しながらフィルム引出し装置10について詳述する。
図2に示されるようにフィルム引出し装置10は、フィルムウエブWの引出し手段としての引出しグリッパ16を備えている。この引出しグリッパ16は開閉可能であり、また、引出し経路8に沿いウエブ供給経路4側に規定された引出し開始位置G1と移送経路2側に規定された引出し終了位置G2との間にて直線的に往復動可能である。
【0029】
一方、フィルム引出し装置10は切断・予備引出しユニット18を更に備え、この切断・予備引出しユニット18はウエブ供給経路4の終端領域にて、引出しグリッパ16の往復動方向に沿って移動自在に配置されている。
【0030】
詳しくは、切断・予備引出しユニット18は切断器としてのカッタ20を含み、このカッタ20はウエブ供給経路4を一対の切断刃22(図1参照)と、これら切断刃22を開閉させて、ウエブ供給経路4上のフィルムウエブWを切断させる開閉機構24とを有する。更に、切断・予備引出しユニット18はカッタ20の直下流に位置付けられた挟持具26をも含み、この挟持具26はウエブ供給経路4の直下に位置するバックプレート28と、このバックプレート28との間にてウエブ供給経路4上のフィルムウエブWを挟み込むピンチローラ30とを有し、このピンチローラ30はフィルムウエブWの引出し方向にのみ、その回転を許容する一方向クラッチ(図示しない)を備えている。
【0031】
更にまた、切断・予備引出しユニット18はリニアアクチュエータ32に接続されており、このリニアアクチュエータ32は切断・予備引出しユニット18全体をウエブ供給経路4に沿って往復動移動させることができる。
リニアアクチュエータ32はコントローラに電気的に接続されており、このコントローラは、前述した製品Aの包装に要求されるフィルムシートSのシート長Lrや、前述した引出しグリッパ16によるフィルムウエブWの定長引出し長さLc(即ち、引出し開始位置G1と引出し終了位置G2との間の距離)に基づき、切断・予備引出しユニット18の移動を制御する。ここで、定長引出し長さLcはシート長Lrの大部分を占めている。
【0032】
具体的には、図3に示されているようにコントローラ34にはシート長Lr及び定長引出し長さLcが与えられる一方、レジマークセンサ36及び測長器38が電気的に接続され、これらレジマークセンサ36及び測長器38は図1に示されるように切断・予備引出しユニット18の上流にそれぞれ配置されている。
【0033】
レジマークセンサ36は、フィルムウエブWに付与されているレジマーク(図示しない)を光学的に検出し、その検出信号をコントローラ34に供給する。なお、レジマークはフィルムウエブWの長手方向に一定の間隔を存して配置され、この間隔はシート長Lrに等しい。
【0034】
一方、測長器38はピンチローラ型であって、フィルムウエブWが通過する際にフィルムウエブWの通過長さを測長し、その測長信号をコントローラ34に供給する。
次に、図2の(a)〜(d)を参照しながら、前述したフィルム引出し装置10によるフィルムウエブWの引出し動作について説明する。この場合、コントローラ34にはシート長LrとしてLr1が設定されている。
【0035】
先ず、図2の(a)の状態は、切断・予備引出しユニット18のカッタ20によるフィルムウエブWの切断が切断位置C1(図2(d)参照)にて完了し、カッタ20、即ち、切断・予備引出しユニット18全体が切断位置C1から引出しグリッパ16の引出し開始位置G1に向けてリニアアクチュエータ32により往動されている過程にある。このとき、フィルムウエブWはバックプレート28とピンチローラ30との間にて挟持されていることから、切断・予備引出しユニット18の往動に伴い、フィルムウエブWの予備引出しが実施される。一方、このとき、引出しグリッパ16は引出し終了位置G2に位置付けられている。
【0036】
この後、引出しグリッパ16は開かれ状態で、引出し終了位置G2から引出し開始位置G1に向けて前進するが、この過程にて、切断・予備引出しユニット18のカッタ20、つまり、フィルムウエブWの切断端が先端把持位置K(図2(b)参照)に位置付けられると、この時点で、切断・予備引出しユニット18の往動が停止される。
【0037】
ここで、先端把持位置Kは、引出しグリッパ16が引出し開始位置G1に位置付けられたとき、引出しグリッパ16にてフィルムウエブWの切断端が把持長さΔLを存して把持されるように設定され(図2(c)参照)、そして、切断位置C1は、引出し開始位置G1にある引出しグリッパ16の先端と切断位置C1までの切断調整距離D1がLr1−Lc−ΔLとなるように設定されている。
【0038】
この後、引出しグリッパ16が引出し開始位置G1に到達する直前にて、切断・予備引出しユニット18のカッタ20は開閉機構24により開かれ、引出しグリッパ16の受け入れを許容する。そして、引出しグリッパ16が引出し開始位置G1に到達した地点で、引出しグリッパ16は閉じられ、フィルムウエブWの切断端を把持する。
【0039】
この後、切断・予備引出しユニット18はリニアアクチュエータ32により切断位置C1に向けて復動されるが、このとき、フィルムウエブWの切断端は引出しグリッパ16によって既に把持されている。それ故、バックプレート28とピンチローラ30と間にフィルムウエブWが挟み込まれていても、フィルムウエブWを引き戻すことなく、切断・予備引出しユニット18、つまり、バックプレート28及びピンチローラ30はカッタ20とともに復動する。
【0040】
そして、切断・予備引出しユニット18の復動はそのカッタ20が切断位置C1に達したときに停止され、カッタ20は切断位置C1に位置決めされる。この後、引出しグリッパ16は引出し開始位置G1から引出し終了位置G2まで後退し、フィルムウエブWの定長繰出しを前述した引出し経路8に沿って実施する。そして、引出しグリッパ16が引出し終了位置G2に到達すると、カッタ20が開閉機構24により閉作動され、カッタ20は切断位置C1にてフィルムウエブWを切断し、フィルムウエブWからフィルムシートSを形成する(図2(d)参照)。
【0041】
この後、フィルムシートSは前述したように製品Aとともに包装経路12に向けて上昇され、フィルムシートSによる製品Aの上包み包装が前述したように実施され、一方、切断・予備引出しユニット18はフィルムウエブWを予備引出しながら、引出し開始位置G1に向けて往動し、図2(a)の状態となる。
【0042】
ここで、フィルムシートSのシート長Lr1は、引出しグリッパ16による定長引出し長さLcに前述した把持長さΔL及び切断調整距離Dを加えた長さに相当するので、把持長さΔLが一定とすれば、切断調整距離D、即ち、切断位置を変更するだけで、製品Aの包装に要求されるフィルムシートSのシート長Lrを容易に変更することができる。
【0043】
即ち、図2(e)〜(h)は、シート長Lr1よりも短いシート長Lr2を有したフィルムシートSの形成する際のフィルム引出し装置10の引出し動作を示し、(e)〜(h)は(a)〜(d)にそれぞれ対応する。
【0044】
図2(h)から明らかなように、切断・予備引出しユニット18のカッタ20は切断位置C2にてフィルムウエブWを切断し、切断位置C2と引出し開始位置G1にある引出しグリッパ16の先端との間にて規定される切断調整距離D2はD1よりも、Lr1とLr2との間の差だけ短い。
【0045】
図2(a)〜(d)と図2(e)〜(h)とを対比すれば明らかなように、一実施例のフィルム引出し装置10は、次に形成されるべきフィルムシートSの後端位置、即ち、カッタ20によるフィルムウエブWの切断位置を可変することで、フィルムシートSのシート長Lrを変更し、この場合、引出し経路8上にて、フィルムシートSの先端位置はシート長Lrに拘わらず一定となる。
【0046】
フィルム引出し装置10の場合、定長引出し長さLcはシート長Lr1の大部分を占めることから、フィルムシートSの形成に際し、フィルムウエブWの実質的な引出しは引出しグリッパ16による定長引出しとなる。それ故、フィルムウエブWはばたつくことなく引出され、フィルムシートSの安定した形成を可能とする。このことは、この後のフィルムシートSによる製品Aの上包み包装が綺麗になされることを意味し、上包み包装品Hの包装品質の向上に大きく寄与する。
【0047】
更に、前述したフィルムウエブWの予備引出しや、切断・予備引出しユニット18の復動、即ち、切断位置へのカッタ20の位置付けはリニアアクチュエータ32の作動がコントローラ34によって制御されることで正確に実施される。
【0048】
詳しくは、特にフィルムウエブWの予備引出しの実施に際し、コントローラ34は測長器38の測長信号を読み込むことで、これら検出信号及び測長信号に基づき、レジマークを基準としてフィルムウエブWの引出し長さを正確に測定できるから、フィルムウエブWの切断端を前述した先端把持位置Kに正確に位置付けることができる。これは、形成されるべきフィルムシートSの先端位置を一定にするうえで重要である。なお、予備引出し長さは、前述した切断調整距離D、即ち、D1又はD2に把持長さΔLを加えた長さに相当する。
【0049】
次に、図4の(a)〜(h)を参照しながら、変形例のフィルム引出し装置10及びそのフィルムウエブWの引出し動作について説明する。
先ず、変形例のフィルム引出し装置10は、前述の切断・予備引出しユニット18に代えてカッタ40及び一対の予備繰出しローラ42を備え、これらカッタ40及び一対の予備繰出しローラ42がウエブ供給経路4に固定して配置されている点で相違する。
【0050】
更に詳しくは、カッタ40は切断位置C3に配置され、これに対し、一対の予備繰出しローラ42はカッタ40の直上流に配置されている。ここで、引出し開始位置G1にある引出しグリッパ16の先端と切断位置C3との間には一定の離間距離D3が確保されている。
【0051】
また、カッタ40は前述の開閉機構24と同様な開閉機構44を含み、そして、一対の予備繰出しローラ42は退避機構46を含んでいる。この退避機構46は一対の予備繰出しローラ42を互いに離間させることで、ウエブ供給経路4上からそれぞれ退避させる。
【0052】
更に、各予備繰出しローラ42は一方向クラッチ48を内蔵しており、この一方向クラッチ48はその予備繰出しローラ42の回転方向を引出し経路8に向かうフィルムウエブWを繰出し方向のみに制限する。
【0053】
図4(a)〜(d)のフィルム引出し装置10は、シート長Lr1を有したフィルムシートSを形成すべく、フィルムウエブWの引出し動作を実施する。
先ず、図4(a)は、前回のフィルムシートSの形成が完了し、このフィルムシートSが引出し経路8から製品Aとともに包装経路12に上昇された直後の状態を示す。このとき、カッタ40は閉じた状態にある。
【0054】
この後、カッタ40が開閉機構44によって開かれると同時に、一対の予備繰出しローラ42が回転され、これら予備繰出しローラ42の回転に伴い、フィルムウエブWはその切断端が先端把持位置K1に到達するまで予備繰出しされる(図4(b)参照)。ここで、先端把持位置K1は、引出し開始位置G1にて引出しグリッパ16によりフィルムウエブWの切断端が把持長さΔL1を存して把持される位置に設定され、一方、このとき、引出しグリッパ16は開かれた状態で、引出し終了位置G2から引出し開始位置G1に向けて前進する。
【0055】
この後、フィルムウエブWの切断端が先端把持位置K1に位置付けられると、一対の予備繰出しローラ42によるフィルムウエブWの予備繰出しは停止され、そして、引出しグリッパ16が引出し開始位置G1に位置付けられた時点で、引出しグリッパ16は閉じ、フィルムウエブWの切断端を把持長さΔL1だけ把持する(図4(c)参照)。
【0056】
この状態で、引出しグリッパ16は引出し開始位置G1から引出し終了位置G2に向けて後退し、フィルムウエブWの定長引出しを開始する。そして、少なくとも引出しグリッパ16が引出し終了位置G2に達する直前、即ち、その定長引出しが終了する直前にて、前述した退避機構46はウエブ供給経路4上から一対の予備繰出しローラ42を退避させ、これにより、一対の予備繰出しローラ42によるフィルムウエブWの挟み込みが解放される。
【0057】
それ故、引出しグリッパ16が引出し終了位置G2に位置付けられたとき、予備繰出しローラ42の惰性回転に伴い、フィルムウエブWが連れ送りされることもなく、引出しグリッパ16はフィルムウエブWの定長引出しを正確に行うことができる。
引出しグリッパ16が引出し終了位置G2にて停止したとき、カッタ40はその開閉機構44により閉じられてフィルムウエブWを切断し、この時点で、フィルムウエブWからフィルムシートSが形成される。ここで、フィルムシートSのシート長Lr1は、定長引出し長さLcに前述した把持長さΔL1及び離間距離D3を加えた長さに相当する。この後、フィルム引出し装置10は図4(a)に示す状態に復帰する。
【0058】
前述の説明から明らかなように、定長引出し長さLc及び離間距離D3は共に一定であるため、フィルムシートSのシート長Lrを変更するには把持長さΔLを可変すればよい。
具体的には、図4(e)〜(h)は、シート長Lr2(>Lr1)を有したフィルムシートSを形成するためのフィルムウエブWの引出し動作が示されている。この場合、図4(e)〜(h)は図(a)〜(d)にそれぞれ対応する。
【0059】
図4(g)から明らかなように、フィルムウエブWの先端把持位置K2は前述の場合よりも切断位置C3から遠くに位置付けられ、引出しグリッパ16が把持長さΔL2を存してフィルムウエブWの切断端を把持すべく設定されている。把持長さΔL2と前述の把持長さΔL1との間の差はシート長Lr1とシート長Lr2との間の差に相当する。
【0060】
上述した変形例のフィルム引出し装置10の場合、図4から明らかなように切断位置C3が固定であるから、引出し経路8上でのフィルムシートSの後端位置もまた一定であり、そのシート長Lrに従い、フィルムシートSにおける先端位置が変化する。
それ故、正確なシート長Lrを有したフィルムシートSの形成には、引出しグリッパ16の把持長さΔL(先端把持位置K,K1,K2)を正確に決定する必要がある。しかしながら、この変形例の場合にも、コントローラ34は一対の予備繰出しローラ42の回転、即ち、フィルムウエブWの予備繰出しを前述したようにレジマークセンサ36の検出信号及び測長器38の測長信号に基づいて制御可能であるので(図3参照)、フィルムシートSのシート長Lrを容易且つ簡単に可変することができる。
【0061】
なお、変形例の場合にも、フィルムウエブWの引出しはその大部分が引出しグリッパ16による定長引出しによって占められているので、前述の一実施例と同様な作用効果を発揮することは言うまでもない。
更に、前述の説明から明らかなようにコントローラ34にはレジマークセンサ36の検出信号及び測長器38の測長信号がそれぞれ供給されることから、フィルムウエブWが個々のフィルムシートSのための模様を繰り返して有する場合、コントローラ34は、レジマークセンサ36の検出信号及び測長器38の測長信号に基づき、コントローラ34に設定されているシート長Lrを補正する。それ故、前述した予備引出しや予備繰出しは補正後のシート長Lrに基づいて実施されることで、フィルムシートSに対する模様合わせを容易になすことができる。
【0062】
本発明は、上述の一実施例や変形例のフィルム引出し装置に制約されるものではなく、種々の変更が可能である。
例えば、一実施例の場合、カッタ20及び挟持具26は独立したリニアアクチュエータによりそれぞれ往復動されてよいが、一実施例のように切断・予備引出しユニット18として往復動されれば、リニアアクチュエータが1個で済み、全体の構成を簡単にすることができる。また、挟持具26はバックプレート28とピンチローラ30との組合せに限らず、他の構成を使用可能である。
更に、一実施例及び変形例では何れも引出し経路8が水平に延びているが、引出し経路8は鉛直に延びていてもよい。
【0063】
更にまた、本発明のフィルム引出し装置は、ウエブ供給経路4に沿って往復動可能な一実施例のカッタ20と、変形例の一対の予備繰出しローラ42とを同時に備えることができる。この場合、前述の説明から明らかなようにフィルムシートSにおける先端及び後端の端位置を予備繰出しローラ42による予備繰出し及びカッタ20の移動によってそれぞれ可変できることから、たとえシート長が一定であっても、定長引出し時におけるフィルムシートSの供給位置を引出し経路8上にて調整することができる。このことは、前述したフィルムシートSの胴巻きに関し、製品Aに対する胴シールの位置が可変できることを意味する。
【符号の説明】
【0064】
4 ウエブ供給経路
8 引出し経路
16 引出しグリッパ(引出し手段)
18 切断・予備引出しユニット(端位置可変手段)
20 カッタ(切断器)
24 開閉機構
26 挟持具(予備引出し機構)
32 リニアアクチュエータ(予備引出し機構)
36 レジマークセンサ(マーク検出器)
38 測長器
40 カッタ
42 予備繰出しローラ(予備繰出手段)
44 開閉機構
46 退避機構(退避手段)
48 一方向クラッチ
S フィルムシート
W フィルムウエブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムウエブの供給経路から、前記フィルムウエブを一定の長さずつ引出す定長引出しを繰り返して実施する引出し手段であって、前記長さが所望のフィルムシートのシート長の大部分を占める、引出し手段と、
前記供給経路に設けられ、前記引出し手段による前記フィルムウエブの各定長引出しの後に前記フィルムウエブを繰り返して切断する切断器と、
前記シート長と前記長さとの間の差に基づいて、定長引出しに先立ち前記フィルムウエブの切断端にて規定されるフィルムシートの先端の端位置及び定長引出し後、前記フィルムウエブの切断によって形成されるフィルムシートの後端の端位置の少なくとも一方を可変する端位置可変手段と
を具備したことを特徴とするフィルム引出し装置。
【請求項2】
前記引出し手段は、前記供給経路側に位置した前記フィルムウエブの把持位置とこの把持位置から離間した前記フィルムウエブの開放位置との間にて直線的に往復動する引出しグリッパを含むことを特徴とする請求項1に記載のフィルム引出し装置。
【請求項3】
前記端位置可変手段は、前記フィルムシートの後端となる端位置に配置可能な前記切断器と、
前記定長引出しに先立ち、前記フィルムウエブの切断端を前記把持位置に移動させるべく前記フィルムウエブの予備引出しをなす予備引出し機構と
を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム引出し装置。
【請求項4】
前記予備引出し機構は、前記切断器の直上流に配置され、フィルムウエブを挟持可能な挟持部材と、この挟持部材及び前記切断器を前記供給経路に沿い連動して往復動させるリニアアクチュエータとを含むことを特徴とする請求項3に記載のフィルム引出し装置。
【請求項5】
前記端位置可変手段は、前記定長引出しに先立つ前記フィルムウエブの予備繰出しにより、フィルムシートの先端の端位置を可変する予備繰出し手段を含むことを特徴する請求項1又は2に記載のフィルム引出し装置。
【請求項6】
前記予備繰出し手段は、前記供給経路上のフィルムウエブを挟持しながら前記フィルムウエブを繰出す一対の繰出しローラと、これら繰出しローラの回転方向を前記フィルムウエブの繰出し方向のみに規制する一方向クラッチとを有することを特徴とする請求項5に記載のフィルム引出し装置。
【請求項7】
前記予備繰出し手段は、少なくとも前記定長引出しの終了時、前記フィルムウエブの挟持を開放すべく前記一対の繰出しローラを互いに離間させる退避機構を更に有することを特徴する請求項6に記載のフィルム引出し装置。
【請求項8】
前記端位置可変手段は、
前記フィルムシートの後端となる端位置に配置可能な前記切断器と、
前記定長引出しに先立つ前記フィルムウエブの予備繰出しにより、フィルムシートの先端の端位置を可変する予備繰出し手段と
を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム引出し装置。
【請求項9】
前記フィルムウエブは、前記シート長に相当する間隔毎にレジマークを有し、
前記端位置可変手段は、前記供給経路に設けられ、前記フィルムウエブの前記レジマークを検出し、この検出信号を出力するマーク検出器と、前記供給経路に設けられ、前記フィルムウエブが引出されるとき、前記フィルムウエブの引出し量を測定し、この測定信号を出力する測長器とを含むこと特徴とする請求項3,5又は8に記載のフィルム引出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−116400(P2011−116400A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274329(P2009−274329)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000151461)株式会社東京自働機械製作所 (106)
【Fターム(参考)】