説明

フィルム形成性ポリマー水性分散体、特にポリウレタン水性分散体から製造されたエネルギー変換器

本発明は、エネルギー変換器を製造するために用いる、ポリマー水性分散体、特にポリウレタン水性分散体を含む組成物、これから製造されたエネルギー変換器およびこのようなエネルギー変換器の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー変換器を製造するために用いる、ポリマー水性分散体、特にポリウレタン分散体を含有する組成物、およびそれから製造されたエネルギー変換器およびこのような種類のエネルギー変換器の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
変換器は、電気エネルギーを機械エネルギーに、およびその逆に変換する。これらは、検出器、作動装置および発生器に用いられる。
【0003】
このような変換器の基本構造は、例えばWO01/06575に記載のように、電極が両側に被覆された電気活性ポリマーの層からなる。該基本構造は、検出器、作動装置または発生器を製造するための最も多様性のある構造に用いることができる。
【0004】
種々のポリマーは、先行技術において電気活性層として記載されている(例えばWO01/06575参照)。
【0005】
電気活性層を製造するためのポリマー分散体は、これまで記載されていない。
【0006】
ポリマー分散体は、弾性フィルムを製造するための出発点として種々の優位性を示し、特に、これらは比較的多量の溶媒を含まないため安全に取り扱うことができ、また、これらは概してプラスチック基材を部分的に溶解させない。吸引による溶媒の抽出は通常は必要とされず、さらに、作業は概して、室温と100℃との間の温度で進めることができるので、感温性基材を被覆することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第01/06575号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、有利な特性を示す、作動装置、検出器および発生器のための新規な弾性絶縁電気活性層の提供であった。特に、これらは、簡単な処理を可能とし、有利な機械特性を示す。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ポリウレタン水性分散体に基づくフィルム形成性組成物が、作動装置のための弾性絶縁中間層を製造するのによく適していることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0010】
従って、本発明は、作動装置、検出器および発生器を製造するための、ポリマー水性分散体、好ましくはポリウレタン水性分散体を含有するフィルム形成性組成物を提供する。
【0011】
本発明は、ポリマー水性分散体、好ましくはポリウレタン水性分散体から製造されたフィルム、ホイルまたは被覆物を用いることによって作動装置を製造するための方法をさらに提供する。
【0012】
本発明は、ポリマー水性分散体、好ましくはポリウレタン水性分散体からなるフィルムを用いて製造された作動装置をさらに提供する。
【0013】
本発明は、対応する作動装置を含む、電子および電気の製品、機器、装置、構成単位、自動機械、部品および器具をさらに提供する。
【0014】
原則として、全ての既知の水性ポリウレタン分散体を、本発明によるフィルム形成性組成物に用いることができる。しかしながら、アニオン的に親水性化された、およびアニオン的/非イオン的に親水性化されたポリウレタン分散体が好ましい。
【0015】
特に好ましい方法に用いるべきポリウレタン分散体は、
A)A1)有機ポリイソシアネート、
A2)400g/モル〜8000g/モル、好ましくは400g/モルから6000g/モル、特に好ましくは600g/モル〜3000g/モルの数平均分子量、および1.5〜6、好ましくは1.8〜3、特に好ましくは1.9〜2.1のOH官能価を有するポリマーポリオール
A3)必要に応じて、62g/モル〜399g/モルの分子量を有するヒドロキシル官能性化合物、ならびに
A4)必要に応じて、イソシアネート反応性、アニオン性または潜在的アニオン性および/または必要に応じて非イオン性の親水性化剤
からなるイソシアネート官能性プレポリマーを調製し、および
B)次いで、その遊離NCO基を、
B1)必要に応じて、32g/モル〜400g/モルの分子量を有するアミノ官能性化合物により、および
B2)アミノ官能性、アニオン性または潜在的アニオン性の親水性化剤により、
鎖延長を伴って完全にまたは部分的に変換し、および
該プレポリマーを、工程B)前、工程B)中または工程B)後に水中に分散することによって得られる。
【0016】
例えば、イソシアネート反応性基は、第一級および第二級アミノ基、ヒドロキシル基またはチオール基である。
【0017】
ポリウレタン水性分散体は、好ましくは、スルホネート基および/またはカルボキシレート基によりアニオン的に親水性化される。特に好ましい方法では、専らスルホネート基のみがアニオン性親水性化のために含まれる。
【0018】
良好な沈殿安定性を得るために、特別なポリウレタン分散体の数平均粒度は、好ましくは750nm未満、特に好ましくは500nm未満であり、レーザー相関分光法により決定される。
【0019】
ポリウレタン分散体は、その中に含まれるポリウレタンに対して、好ましくは10重量%〜70重量%、特に好ましくは30重量%〜70重量%、もっとも特に好ましくは30重量%〜65重量%の固形分を有する。
【0020】
これらのポリウレタン分散体は、全分散体に対して、好ましくは5重量%未満、特に好ましくは0.2重量%未満の結合していない有機アミンを有する。
【0021】
必要に応じて、プレポリマーは、塩基の添加により、分散工程前、分散工程中または分散工程後にアニオン形態に完全にまたは部分的に変換することができる。
【0022】
アニオン性親水性化を得るために、NCO基に対して反応性の少なくとも1つの基、例えばアミノ基、ヒドロキシ基またはチオール基等を有し、およびアニオン性基として−COOまたは−SOまたは−PO2−、または潜在的アニオン性基として完全にまたは部分的にプロトン化されたこれらの酸形態をさらに有する親水性化剤を、A4)および/またはB2)に用いなければならない。
【0023】
アニオン性または潜在的アニオン性官能基として専らスルホン酸またはスルホネート基(−SOHまたは−SOM、M=アルカリ金属またはアルカリ性土類金属)のみを有する、アニオン性または潜在的アニオン性親水性化のための化合物は、A4)および/またはB2)に好ましく用いられる。
【0024】
成分A1)に属する適当なポリイソシアネートは、当業者にそれ自体既知の2以上のNCO官能価を有する脂肪族、芳香族または脂環式ポリイソシアネートである。
【0025】
このような適当なポリイソシアネートの例は、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,2,4−および/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体ビス(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタンまたは任意の異性体含量でのこれらの混合物、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート(ノナントリイソシアネート)、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トルイレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、2,2’−および/または2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート,1,3−および/または1,4−ビス(2−イソシアナト−プロプ−2−イル)ベンゼン(TMXDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(XDI)ならびにC1〜C8−アルキル基を有するアルキル2,6−ジイソシアナトヘキサノエート(リジンジイソシアネート)である。
【0026】
上記のポリイソシアネートの他に、2以上の官能価を示し、ウレットジオン、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンまたはオキサジアジントリオン構造を有する変性ジイソシアネート、ならびにこれらの混合物を比例的に用いることもできる。
【0027】
好ましくは、専ら脂肪族的にまたは脂環式的に結合したイソシアネート基のみを有する上記の型のポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物またはこれらの混合物であり、混合物の平均NCO官能価は2〜4、好ましくは2〜2.6、より好ましくは2〜2.4である。
【0028】
特に好ましい方法では、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートまたは異性体ビス(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ならびに上記のジイソシアネートの混合物をA1)に用いる。
【0029】
400g/モル〜8000g/モル、好ましくは400g/モル〜6000g/モル、特に好ましくは600g/モル〜3000g/モルの範囲の数平均分子量Mを有するポリマーポリオールをA2)に用いる。これらは、好ましくは1.5〜6、特に好ましくは1.8〜3、もっとも特に好ましくは1.9〜2.1の範囲のOH官能価を示す。
【0030】
このようなポリマーポリオールは、ポリウレタンラッカー技術においてそれ自体既知のポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリエステルポリオール、ポリウレタンポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリカーボネートポリオールおよびポリエステルポリカーボネートポリオールである。これらは、個々にまたは互いの任意の混合物の状態でA2)に用いることもできる。
【0031】
このようなポリエステルポリオールは、ジオールならびに必要に応じてトリオールおよびテトラオールと、ジカルボン酸ならびに必要に応じてトリカルボン酸およびテトラカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸またはラクトンから形成された重縮合物である。遊離ポリカルボン酸の代わりに、対応するポリカルボン酸無水物または対応する低級アルコールのポリカルボン酸エステルを、ポリエステルを調製するために用いることもできる。
【0032】
適当なジオールの例は、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコールなど、さらに1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよび異性体、ネオペンチルグリコールまたはヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルであり、1,6−ヘキサンジオールおよび異性体、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールおよびヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルは好適である。これらの他に、トリメチロールプロパン、グリセロール、エリトリトール、ペンタエリトリトール、トリメチロールベンゼンまたはトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートのようなポリオールを用いてもよい。
【0033】
ジカルボン酸として、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、テトラクロロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マロン酸、スベリン酸、2−メチルコハク酸、3,3−ジエチルグルタル酸および/または2,2−ジメチルコハク酸を用い得る。酸源として、対応する無水物を用いてもよい。
【0034】
エステル化すべきポリオールの平均官能価が2より大きい場合には、さらに、モノカルボン酸、例えば安息香酸およびヘキサンカルボン酸などを併用してもよい。
【0035】
好ましい酸は、上記の種類の脂肪族酸または芳香族酸である。特に好ましいものは、アジピン酸、イソフタル酸およびフタル酸である。
【0036】
末端ヒドロキシル基を有するポリエステルポリオールの製造において共反応物として併用することができるヒドロキシカルボン酸は、例えばヒドロキシヘキサン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシデカン酸、ヒドロキシステアリン酸などである。適当なラクトンは、カプロラクトン、ブチロラクトンおよび同族体である。カプロラクトンは好適である。
【0037】
同様に、400g/モル〜8000g/モル、好ましくは600g/モル〜3000g/モルの数平均分子量Mを有する、ヒドロキシルを有するポリカーボネート、好ましくはポリカーボネートジオールをA2)に用いることができる。これらは、カルボン酸誘導体、例えばジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはホスゲンなどをポリオール、好ましくはジオールと反応させることによって得られる。
【0038】
このような種類のジオールの例は、エチレングリコール、1,2−および1,3−プロパンジオール、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ビスフェノールAおよび上記の種類のラクトン変性ジオールである。
【0039】
ジオール成分は、40重量%〜100重量%のヘキサンジオールを含有し、1,6−ヘキサンジオールおよび/またはヘキサンジオール誘導体が好ましい。このようなヘキサンジオール誘導体は、ヘキサンジオールをベースとし、末端OH基に加えて、エステル基またはエーテル基を有する。このような誘導体は、ヘキサンジオールを過剰のカプロラクトンと反応させることによって、またはヘキサンジオールをそれ自体でエーテル化して、ジヘキシレングリコールまたはトリヘキシレングリコールを生じさせることによって得られる。
【0040】
純粋なポリカーボネートジオールの代わりに、またはこれに加えて、ポリエーテルポリカーボネートジオールをA2)に用いることもできる。
【0041】
ヒドロキシルを有するポリカーボネートは、好ましくは直鎖構造である。
【0042】
同様に、ポリエーテルポリオールをA2)に用いることができる。
【0043】
適当なものは、例えば、カチオン性開環によるテトラヒドロフランの重合によって得られる、ポリウレタン化学においてそれ自体既知のポリテトラメチレングリコールポリエーテルである。
【0044】
同様に、適当なポリエーテルポリオールは、それ自体既知のスチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよび/またはエピクロロヒドリンの二官能性または多官能性出発分子への付加の生成物である。エチレンオキシドの二官能性または多官能性出発分子への少なくとも比例的付加に基づくポリエーテルポリオールを成分A4)(非イオン性親水性化剤)として用いることもできる。
【0045】
適当なスターター分子として、先行技術により既知の全ての化合物、例えば水、ブチルジグリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、プロピレングリコール、ソルビトール、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、1,4−ブタンジオール等を用いることができる。
【0046】
A2)における好ましい成分は、ポリテトラメチレングリコールポリエーテルおよびポリカーボネートポリオールまたはこれらの混合物であり、およびポリテトラメチレングリコールポリエーテルは特に好ましい。
【0047】
20個までの炭素原子を有する所定の分子量範囲のポリオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)、水素化ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセロール、ペンタエリトリトールならびにこれらの互いの任意の混合物などをA3)に用いることができる。
【0048】
また、適当なものは、所定の分子量範囲のエステルジオール、例えばα−ヒドロキシブチル−ε−ヒドロキシヘキサン酸エステル、ω−ヒドロキシヘキシル−γ−ヒドロキシ酪酸エステル、アジピン酸(β−ヒドロキシエチル)エステルまたはテレフタル酸ビス(β−ヒドロキシエチル)エステルなどである。
【0049】
さらに、ヒドロキシル基を含有する単官能性イソシアネート反応性化合物をA3)に用いることもできる。このような単官能性化合物の例は、エタノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、2−エチルヘキサノール、1−オクタノール、1−ドデカノール、1−ヘキサデカノールである。
【0050】
成分A4)の定義に相当する適当なイオン的または潜在的イオン的に親水性化する化合物は、例えば、モノヒドロキシカルボン酸およびジヒドロキシカルボン酸、モノヒドロキシスルホン酸およびジヒドロキシスルホン酸、ならびにモノヒドロキシホスホン酸およびジヒドロキシホスホン酸およびこれらの塩、例えばジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ヒドロキシピバリン酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、例えばDE−A第2446440号(第5〜9頁、式I〜III)に記載の2−ブテンジオールとNaHSOから形成されたプロポキシル化付加物である。
【0051】
成分A4)に属する適当な非イオン的に親水性化する化合物は、例えば、少なくとも1つのヒドロキシル基、アミノ基またはチオール基を含有するポリオキシアルキレンエーテルである。その例は、1分子当たり統計的平均5〜70個、好ましくは7〜55個のエチレンオキシド単位を有する、適当な出発分子のアルコキシル化によって従来の方法により得られる、モノヒドロキシ官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールである(例えばUllmanns Encyclopaedie der technischen Chemie、第4版、第19巻、Verlag Chemie、ワインハイム、第31〜38頁中)。これらは、含まれる全アルキレンオキシド単位に対して、少なくとも30モル%、好ましくは少なくとも40モル%のエチレンオキシド単位を含有する、純粋なポリエチレンオキシドエーテルまたは混合ポリアルキレンオキシドエーテルのいずれかである。
【0052】
特に好ましい非イオン化合物は、40モル%〜100モル%のエチレンオキシド単位および0モル%〜60モル%のプロピレンオキシド単位を有する単官能性混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルである。
【0053】
このような非イオン性親水性化剤のための適当なスターター分子は、飽和モノアルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec.−ブタノール、異性体ペンタノール、ヘキサノール、オクタノールおよびノナノール、n−デカノール、n−ドデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノール、n−オクタデカノール、シクロヘキサノール、異性体メチルシクロヘキサノールまたはヒドロキシメチルシクロヘキサン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンまたはテトラヒドロフルフリルアルコール等、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、例えばジエチレングリコールモノブチルエーテル等、不飽和アルコール、例えばアリルアルコール、1,1−ジメチルアリルアルコールまたはオレイルアルコール等、芳香族アルコール、例えばフェノール、異性体クレゾールまたはメトキシフェノール等、芳香脂肪族アルコール、例えばベンジルアルコール、アニスアルコールまたは桂皮アルコール等、第2級モノアミン、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチルおよびN−エチルシクロヘキシルアミンまたはジシクロヘキシルアミン等、ならびにヘテロ環式第2級アミン、例えばモルホリン、ピロリジン、ピペリジンまたは1Hピラゾール等である。好ましいスターター分子は、上記の種類の飽和モノアルコールである。好ましい方法では、ジエチレングリコールモノブチルエーテルまたはn−ブタノールをスターター分子として用いる。
【0054】
アルコキシル化反応のための適当なアルキレンオキシドは、特に、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドであり、これらは、アルコキシル化反応の過程において任意の順序でまたは混合物の状態でも用い得る。
【0055】
有機ジアミンまたはポリアミン、例えば1,2−エチレンジアミン、1,2−および1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、イソホロンジアミン、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの異性体混合物、2−メチルペンタメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、ヒドラジンヒドラジド、および/またはジメチルエチレンジアミン等を成分B1)として用い得る。
【0056】
さらに、成分B1として、第1級アミノ基に加えて第2級アミノ基を有する化合物、またはアミノ基(第1級または第2級)に加えてOH基を有する化合物を用いてもよい。これらの例は、第1級/第2級アミン、例えばジエタノールアミン、3−アミノ−1−メチルアミノプロパン、3−アミノ−1−エチルアミノプロパン、3−アミノ−1−シクロヘキシルアミノプロパン、3−アミノ−1−メチルアミノブタン等、アルカノールアミン、例えばN−アミノエチルエタノールアミン、エタノールアミン、3−アミノプロパノール、ネオペンタノールアミン等である。
【0057】
さらに、成分B1)として、単官能性イソシアネート反応性アミン化合物、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、イソノニルオキシプロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン、ジエチル(メチル)アミノプロピルアミン、モルホリン、ピペリジンまたはこれらの適当な置換誘導体、ジ第1級アミンおよびモノカルボン酸から形成されたアミドアミン、ジ第1級アミンのモノケチム、第1級/第3級アミン、例えばN,N−ジメチルアミノプロピルアミン等を用いてもよい。
【0058】
1,2−エチレンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシルメタン)、1,4−ジアミノブタン、イソホロンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミンおよびジエチレントリアミンを好ましく用いる。
【0059】
成分B2)に属する適当なアニオン的親水性化化合物は、モノアミノスルホン酸およびジアミノスルホン酸のアルカリ金属塩である。このようなアニオン性親水性化剤の例は、2−(2−アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸、エチレンジアミンプロピルスルホン酸またはエチレンジアミンブチルスルホン酸、1,2−または1,3−プロピレンジアミン−β−エチルスルホン酸またはタウリンの塩である。さらに、アニオン性親水性化剤として、WO−A01/88006に由来するシクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸(CAPS)の塩をさらに用いることも可能である。
【0060】
特に好ましいアニオン性親水性化剤B2)は、イオン基としてスルホネート基と2個のアミノ基とを含有するアニオン性親水性化剤、例えば2−(2−アミノエチルアミノ)エチルスルホン酸の塩および1,3−プロピレンジアミン−β−エチルスルホン酸の塩等である。
【0061】
アニオン性親水性化剤および非イオン性親水性化剤の混合物を、親水性化のために用いてもよい。
【0062】
特別なポリウレタン分散体を調製するための好ましい実施態様では、以下の量で成分A1)〜A4)およびB1)〜B2)を用い、個々の量は常に合計100重量%になる:
成分A1)5重量%〜40重量%、
成分A2)55重量%〜90重量%、
成分A3)とB1)を合計で0.5重量%〜20重量%、
成分A4)とB2)を合計で0.1重量%〜25重量%、ここで、成分A1)〜A4)およびB1)〜B2)の全量に対して0.1重量%〜5重量%の、A4)および/またはB2)に由来するアニオン性または潜在的アニオン性の親水性化剤を用いる。
【0063】
特別なポリウレタン分散体を調製するための特に好ましい実施態様では、以下の量で成分A1)〜A4)およびB1)〜B2)を用い、個々の量は常に合計100重量%になる:
成分A1)5重量%〜35重量%、
成分A2)60重量%〜90重量%、
成分A3)とB1)を合計で0.5重量%〜15重量%、
成分A4)とB2)を合計で0.1重量%〜15重量%、ここで、成分A1)〜A4)およびB1)〜B2)の全量に対して0.2重量%〜4重量%の、A4)および/またはB2)に由来するアニオン性または潜在的アニオン性の親水性化剤を用いる。
【0064】
特別なポリウレタン分散体を調製するためのさらに特に好ましい実施態様では、以下の量で成分A1)〜A4)およびB1)〜B2)を用い、個々の量は常に合計100重量%になる:
成分A1)10重量%〜30重量%、
成分A2)65重量%〜85重量%、
成分A3)とB1)を合計で0.5重量%〜14重量%、
成分A4)とB2)を合計で0.1重量%〜13.5重量%、ここで、成分A1)〜A4)およびB1)〜B2)の全量に対して0.5重量%〜3.0重量%の、A4)および/またはB2)に由来するアニオン性または潜在的アニオン性の親水性化剤を用いる。
【0065】
特別なポリウレタン分散体の製造は、均質相中で1以上の段階で、または多段階反応の場合には、部分的に分散相中で行うことができる。A1)〜A4)からなる重付加を完全にまたは部分的に行った後、分散工程、乳化工程または溶解工程を行う。その直後に、分散相中でさらなる重付加または変性を必要に応じて行う。
【0066】
本発明では、先行技術から既知の全ての方法、例えばプレポリマー混合法、アセトン法または溶融分散法等を用い得る。好ましい方法はアセトン法である。
【0067】
アセトン法による調製のために、通常、成分A2)〜A4)およびポリイソシアネート成分A1)を、イソシアネート官能性ポリウレタンプレポリマーを製造するために、完全にまたは部分的に投入し、必要に応じて、イソシアネートに対して不活性であるが水混和性の溶媒で希釈し、50〜120℃の範囲の温度にまで加熱する。イソシアネート付加反応を加速するために、ポリウレタン化学において既知の触媒を用い得る。
【0068】
適当な溶媒は、従来の脂肪族、ケト官能性溶媒、例えばアセトン、2−ブタノン等であるが、これらは製造の開始時だけでなく、その後にも、必要に応じて部分的に添加し得る。アセトンおよび2−ブタノンは好ましく、アセトンは特に好ましい。イソシアネート反応性基を有さない他の溶媒の添加も可能であるが好ましくない。
【0069】
次いで、反応開始時に必要に応じて未だ添加していないA1)〜A4)の成分を計量した量で添加する。
【0070】
A1)〜A4)に由来するポリウレタンプレポリマーの製造の過程では、イソシアネート基とイソシアネート反応性基のモル比は通常、1.05〜3.5、好ましくは1.1〜3.0、特に好ましくは1.1〜2.5でなる。
【0071】
プレポリマーを生じさせるための成分A1)〜A4)の変換を、部分的にまたは完全に、好ましくは完全に達成させる。こうして、遊離イソシアネート基を含有するポリウレタンプレポリマーは、固体の状態で、または溶液の状態で得られる。
【0072】
その直後、さらなる工程段階において、これが未だ行われていないか、または部分的にのみ行われている場合には、得られたプレポリマーを脂肪族ケトン、例えばアセトンまたは2−ブタノン等を用いて溶解させる。
【0073】
プレポリマーを生じさせるための成分a1)〜a4)の変換を、部分的にまたは完全に、好ましくは完全に達成させる。こうして、遊離イソシアネート基を含有するポリウレタンプレポリマーは、固体の状態で、または溶液の状態で得られる。
【0074】
潜在的アニオン性基をアニオン性基へ部分的にまたは完全に変換するための中和工程においては、第三級アミン、例えば各アルキル基中に1〜12個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有するトリアルキルアミンのような塩基、または相当する水酸化物のようなアルカリ金属塩基を用いる。
【0075】
これらの例は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、トリプロピルアミン、N−メチルモルホリン、メチルジイソプロピルアミン、エチルジイソプロピルアミンおよびジイソプロピルエチルアミンである。アルキル基は、例えば、ジアルキルモノアルカノールアミン、アルキルジアルカノールアミンおよびトリアルカノールアミンの場合のようにヒドロキシル基を有してもよい。中和剤として、必要に応じて、無機塩基、例えばアンモニア水溶液または水酸化ナトリウム、水酸化リチウムまたは水酸化カリウム等も使用可能である。
【0076】
好ましいものは、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミンまたはジイソプロピルエチルアミンならびに水酸化ナトリウム、水酸化リチウムまたは水酸化カリウムであり、特に好ましいものは、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムまたは水酸化カリウムである。
【0077】
塩基のモル量は通常、中和すべき酸基の物質のモル量の50モル%と125モル%の間、好ましくは70モル%と100モル%の間である。中和は、中和剤を予め含有する分散水によって、分散と同時に行ってもよい。
【0078】
工程B)における鎖延長の過程では、NH官能性および/またはNH官能性成分は、なお残存するプレポリマーのイソシアネート基で変換される。好ましくは、鎖延長/連鎖停止は、水中での分散前に行われる。
【0079】
鎖延長のための適当な成分は、有機ジアミンまたはポリアミンB1)、例えばエチレンジアミン、1,2−および1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、イソホロンジアミン、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの異性体混合物、2−メチルペンタメチレンジアミン、ジエチルトリアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタンおよび/またはジメチルエチレンジアミン等である。
【0080】
さらに、化合物B1)として、第1級アミノ基の他に第2級アミノ基を有する化合物、またはアミノ基(第1級または第2級)に加えてOH基を有する化合物を用いることもできる。これらの例は、第1級/第2級アミン、例えばジエタノールアミン、3−アミノ−1−メチルアミノプロパン、3−アミノ−1−エチルアミノプロパン、3−アミノ−1−シクロヘキシルアミノプロパン、3−アミノ−1−メチルアミノブタン等、アルカノールアミン、例えばN−アミノエチルエタノールアミン、エタノールアミン、3−アミノプロパノール、ネオペンタノールアミン等であり、これらを鎖延長または連鎖停止のために用いる。
【0081】
連鎖停止のために、イソシアネートに対して反応性である基を有するアミンB1)、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、イソノニルオキシプロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン、ジエチル(メチル)アミノプロピルアミン、モルホリン、ピペリジンおよび/またはこれらの適当な置換誘導体、ジ第1級アミンとモノカルボン酸から生じるアミドアミン、ジ第1級アミンのモノケチム、第1級/第3級アミン、例えばN,N−ジメチルアミノプロピルアミン等を通常用いる。
【0082】
NH基またはNH基を有する定義B2)に相当するアニオン性親水性化剤を鎖延長のために用いる場合には、プレポリマーの鎖延長は、分散工程前に好ましく行う。
【0083】
鎖延長度、すなわち、鎖延長および連鎖停止に用いる化合物のNCO反応性基とプレポリマーの遊離NCO基との当量比は通常、40%および150%の間、好ましくは50%および120%の間、特に好ましくは60%および120%の間となる。
【0084】
アミン成分B1)およびB2)を、必要に応じて、本発明による方法において水−希釈または溶媒−希釈形態で、個々にまたは混合物の状態で、原理上可能な任意の添加順序で用いることができる。
【0085】
水または有機溶媒を希釈剤として併用する場合には、鎖延長のためにB)に用いる成分中の希釈剤含量は、好ましくは40重量%〜95重量%である。
【0086】
好ましくは、分散工程は、鎖延長直後に行う。かかる目的のために、溶解および鎖延長したポリウレタンポリマーを必要に応じて、強剪断、例えば強撹拌等により、分散水中に導入するか、または反対に、分散水を、鎖延長ポリウレタンポリマー溶液中に撹拌導入する。好ましくは、水を、溶解した鎖延長ポリウレタンプレポリマーに添加する。
【0087】
次いで、分散工程後に分散体中に未だ含まれる溶媒を、通常、蒸留によって除去する。予め分散工程中に除去することも同様に可能である。
【0088】
ポリウレタン分散体中の有機溶媒の残存含量は通常、全分散体に対して10重量%未満、好ましくは3重量%未満である。
【0089】
本発明によるポリウレタン分散体のpH値は通常、8.0未満、好ましくは7.5未満であり、特に好ましい方法では、5.5および7.5の間である。
【0090】
本発明によるフィルム形成性組成物は通常、組成物中に含まれるフィルム形成性ポリマーの固形分に対して少なくとも10重量%のポリウレタンを含有する。しかしながら、好ましくは、少なくとも50重量%、特に好ましくは少なくとも90重量%、さらに特に好ましくは少なくとも95重量%のポリウレタンを、フィルム形成性ポリマーとして含有する。
【0091】
フィルム形成性ポリマーとして専らポリウレタンのみを用いない場合には、さらに、例えばポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシド、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニルおよび/または対応するコポリマーをベースとする他のポリマー分散体を併用し得る。
【0092】
フィルム形成性組成物は、ポリマー分散体の他に補助剤および添加剤をさらに含有してもよい。このような補助剤および添加剤の例は、架橋剤、増粘剤、共溶媒、揺変剤、安定剤、抗酸化剤、光遮蔽剤、乳化剤、界面活性剤、可塑剤、顔料、充填剤およびフロー制御剤である。
【0093】
本発明では、必要に応じて用いる架橋剤は、用いるフィルム形成性ポリマー、特にポリウレタンとの間に共有結合の形成をもたらし、例えば、これにより、機械特性を向上させることができる。適当な架橋剤は、例えば、ブロックトポリイソシアネート架橋剤または非ブロックトポリイソシアネート架橋剤、アミドホルムアルデヒド樹脂およびアミンホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、アルデヒド樹脂およびケトン樹脂、例えばフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、レゾール、フラン樹脂、ウレア樹脂、カルバミン酸エステル樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シアナミド樹脂またはアニリン樹脂等である。好ましいものは、メラミンホルムアルデヒド樹脂であり、この場合には20モル%までのメラミンをウレアの当量に置き換えることができる。特に好ましいものは、メチロール化メラミン、例えばジメチロールメラミン、トリメチロールメラミンおよび/またはテトラメチロールメラミンである。その例として、イソシアネート官能性構造要素によるヒドロキシ官能性ポリウレタンの架橋が挙げられる。好ましくは、このような架橋剤、例えば親水性ポリイソシアネート(EP−A−0540985に記載)等は、フィルムの形成直前にのみポリマー分散体に添加する。この場合、好ましくは、塗布は、二成分法により、例えば二成分噴霧塗布により行う。しかしながら、好ましくは、ポリウレタン分散体は、架橋剤を用いずに本発明による組成物中に用いる。
【0094】
ポリマー分散体の他に、フィルム形成性組成物は、フィルムの誘電率を調節する充填剤をさらに含有してもよい。好ましくは、誘電率を増加させるための特別な充填剤、例えば導電性充填剤または高誘電率を有する充填剤の添加である。その例として、カーボンブラック、グラファイト、単一壁カーボンナノチューブまたは多壁カーボンナノチューブである。
【0095】
誘電率を増加させるためおよび/または破壊電界強度を増加させるための添加剤をフィルム形成後に、例えば1以上のさらなる層の生成によってまたはフィルムに浸透させるためになお添加することもできる。
【0096】
本発明によるフィルム形成性組成物の塗布は、それ自体既知の塗布の全ての形態に従って達成することができ、例えばナイフ塗布、ブラシ法、流し込み法または噴霧法が挙げられる。
【0097】
必要に応じて挿入された乾燥工程を有する多層塗布も原則として可能である。
【0098】
より急速なフォームの乾燥および固定のために、30℃を越える温度を好ましく用いる。30℃および200℃の間の温度が好ましい。被覆物の沸騰を避けるために、対応する上昇温度勾配を有する二段階または多段階乾燥も有用である。乾燥は通常、それ自体既知の加熱および乾燥電化製品、例えば(循環空気)乾燥棚、熱風またはIR放射体等を用いて行う。加熱表面、例えばローラー上に被覆基材を導くことによる乾燥も可能である。塗布ならびに乾燥はそれぞれ、不連続的または連続的に行い得るが、好ましくは完全な連続法である。
【0099】
本発明によるフィルムにさらなる層を付与することができる。これは、片側または両側上で、1層または複数の上下の層において、フィルムの完全または二次元部分的な被覆によって行い得る。
【0100】
フィルムの製造のための支持材料として適当なものは、特に、フィルムを必要に応じて簡単に取り外すことができるガラス、剥離紙、ホイルおよびプラスチックである。
【0101】
個々の層の処理は、流し込み法によってまたは手動または機械により行うナイフ塗布法によって行われ、印刷法、スクリーン印刷法および注入法または噴霧法および浸漬法も可能な処理技術である。通常、全ての技術は、薄い層の塗布の場合に、例えばラッカー被覆の場合に用いることができると考えられる。
【0102】
ポリマー分散体からなるフィルムは、良好な機械的強度および高弾性を示す。通常、最大張力の値(引張強度)は、0.2N/mm(0.2MPa)より大きく、最大伸び(破断点伸び)は250%より大きい。最大張力(引張強度)は、好ましくは0.4MPaおよび50MPaの間であり、伸びは好ましくは350%より大きい。100%の伸びでの弾性係数は、好ましくは0.1MPaおよび10MPaの間、特に好ましくは0.5MPaおよび5MPaの間である(DIN53455による決定)。
【0103】
乾燥後、フィルムは通常、0.1μm〜1500μm、好ましくは1μm〜500μm、特に好ましくは5μm〜200μm、さらに特に好ましくは5μm〜50μmの厚みを有する。
【0104】
エネルギー変換を実施するために、これらのフィルム(電気活性層)は、例えばWO01/06575に記載のように、電極を有する両側上に被覆する。この基本構造は、感知器、作動装置または発生器のための極めて多様性のある構造に用いることができる。
【実施例】
【0105】
特記のない限り、全ての百分率は重量に関する。
【0106】
特記のない限り、全ての分析的測定は23℃の温度に関する。
【0107】
固形分の決定は、DIN−EN ISO 3251に従って行った。
【0108】
特記のない限り、NCO含量は、DIN−EN ISO 11909に従って容量分析的に決定した。
【0109】
遊離NCO基についての監視は、IR分光法(2260cm−1でのバンド)により行った。
【0110】
特定した粘度は、DIN 53019に従う回転粘度測定法により、Anton Paar Germany GmbH(オストフィルデルン、独国)により製造された回転粘度計を用いて23℃で決定した。
【0111】
ポリウレタン分散体の平均粒度(数平均で特定)の決定は、レーザー相関分光法(装置:Malvern Zetasizer 1000、Malvern Inst. Limited)により行った。
【0112】
充填剤の本発明による分散体への組み込みは、SpeedMixer〔Hauschild & Co KG(P.O. Box 4380、D−59039 ハム)により製造された型150FV〕により行った。
【0113】
フィルム層厚みの計測は、Heidenhain GmbH(P.O. Box 1260、D−83292 トラウンレント)により製造された機械キャリパーで行った。試料は、3つの異なった点で測定され、代表的計測値として平均を用いた。
【0114】
引張試験は、1kNの全計測範囲を有するロードセルを備えた、Zwickにより製造された牽引装置、型番1455を用いてDIN53455に従って50mm/分の牽引速度で行った。試料として、S2引張ロッドを用いた。各計測は、同様に製造した3つの試料について行い、得られたデータの平均を評価のために用いた。特にこの目的のために、[MPa]による引張強度TSおよび[%]による破断点伸びEBに加えて、100%(=T100)伸びおよび200%(=T200)伸びでの[MPa]による張力Tを決定した。
【0115】
電気体積抵抗VRの決定は、Keithley Instruments Inc.〔28775 Aurora Road、クリーブランド、オハイオ州 44139、電話:(440)2480400〕により製造された計測配置(電位計:型番6517A、計測ヘッド:型番8009)を用いておよび一緒に組み込まれたプログラム(model number 6524: high resistance measurement software)を用いて行った。+/−50Vの対称矩形波電圧を、1周期あたり4分間、10周期の間、適用した。試験片の抵抗を、電圧の切り替え直前に電流の流れの値から電圧のいずれの周期においても計算し、周期数に対してプロットした。このプロットの最終値は、試料の電気体積抵抗の測定値を示す。
【0116】
誘電率DCの計測は、Novocontrol Technologies GmbH & Co. KG(56414 Hundsangen)により製造された計測配置(計測ブリッジ:alpha−A analyzer、計測ヘッド:ZGS active sample cell test interface)を用いて20mmの試験片の直径で行った。10〜10−2の周波数範囲を調査した。調査した材料の誘電率の測定により、10−2での誘電率の実数部を選択した。
【0117】
用いた物質と略称
〔ジアミノスルホネート〕
NH−CHCH−NH−CHCH−SONa(45%水溶液)
〔Desmophen(登録商標) 2020/C2200〕
ポリカーボネートポリオール、OH価56mgKOH/g、数平均分子量2000g/mol(Bayer MaterialScience AG、レーフェルクーゼン、独国)
〔PolyTHF(登録商標) 2000〕
ポリテトラメチレングリコールポリオール、OH価56mgKOH/g、数平均分子量2000g/mol(BASF AG、ルートヴィヒスハーフェン、独国)
〔PolyTHF(登録商標) 1000〕
ポリテトラメチレングリコールポリオール、OH価112mgKOH/g、数平均分子量1000g/mol(BASF AG、ルートヴィヒスハーフェン、独国)
〔Polyether LB 25〕
エチレンオキシド/プロピレンオキシドに基づく単官能性ポリエーテル、数平均分子量2250g/mol、OH価25mgKOH/g(Bayer MaterialScience AG、レーフェルクーゼン、独国)
〔Printex 140〕
Degussa GmbH(60311 フランクフルト・アム・マイン)から市販されている生成物、平均粒径29nm、BET表面積90m/g、pH値4.5(この全データはDegussaデータシートによる)
【0118】
実施例1:ポリウレタン分散体1
987.0gのPolyTHF(登録商標) 2000、375.4gのPolyTHF(登録商標) 1000、761.3gのDesmophen(登録商標) C2200および44.3gのPolyether LB 25を標準的な撹拌装置中で70℃に加熱した。次いでヘキサメチレンジイソシアネート237.0gとイソホロンジイソシアネート313.2gの混合物を70℃で5分以内に添加し、該混合物を理論NCO値に達するまで120℃で撹拌した。完成プレポリマーをアセトン4830gで溶解し、50℃に冷却し、次いで、エチレンジアミン25.1g、イソホロンジアミン116.5g、ジアミノスルホネート61.7gおよび水1030gの溶液を10分以内に計量した量で添加した。さらなる撹拌時間は10分であった。次いで、水1250gの添加によって分散を行った。次いで、真空中での蒸留により溶媒の除去を行った。
【0119】
得られた白色分散体は以下の特性を有した:

【0120】
実施例2:ポリウレタン分散体7
450gのPolyTHF(登録商標) 1000および2100gのPolyTHF(登録商標) 2000を70℃まで加熱した。次いでヘキサメチレンジイソシアネート225.8gとイソホロンジイソシアネート298.4gの混合物を70℃で5分以内に添加し、理論NCO値未満に達する時間まで100〜115℃で撹拌した。完成プレポリマーを50℃にてアセトン5460gで溶解し、次いで、エチレンジアミン29.5g、ジアミノスルホネート143.2g、および水610gの溶液を計量した量で10分以内に添加した。さらなる撹拌時間は15分であった。次いで分散を10分以内に水1880gの添加により行った。次いで、真空中での蒸留により溶媒の除去を行い、貯蔵安定性である分散体を得た。
【0121】

【0122】
実施例3:ポリウレタン分散体
1700g/モルの平均分子量を有する、アジピン酸、ヘキサンジオールおよびネオペンチルグリコールから形成した1649.0gのポリエステルを65℃まで加熱した。次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート291.7gを70℃で5分以内に添加し、理論NCO値未満に達する時間まで100〜115℃で撹拌した。完成プレポリマーを50℃にてアセトン3450gで溶解し、次いで、エチレンジアミン16.8g、ジアミノスルホネート109.7g、および水425gの溶液を計量した量で3分以内に添加した。さらなる撹拌時間は15分であった。その後、分散を10分以内に水1880gの添加により行った。次いで、真空中での蒸留により溶媒の除去を行い、貯蔵安定性である分散体を得た。
【0123】

【0124】
実施例4:PUR分散体
82.5gのPolyTHF(登録商標) 1000、308gのPolyTHF(登録商標) 2000および10.0gの2−エチルヘキサノールを70℃まで加熱した。次いでヘキサメチレンジイソシアネート41.4gとイソホロンジイソシアネート54.7gの混合物を70℃で5分以内に添加し、理論NCO値未満に達する時間まで110〜125℃で撹拌した。完成プレポリマーをアセトン880gで50℃にて溶解し、次いで、エチレンジアミン3.8g、イソホロンジアミン4.6g、ジアミノスルホネート26.3gおよび水138gの溶液を計量した量で10分以内に添加した。さらなる撹拌時間は15分であった。その後、分散を10分以内に水364gの添加により行った。これに続いて真空中での蒸留により溶媒の除去を行い、貯蔵安定性である分散体を得た。
【0125】

【0126】
適用実験
実施例5(本発明による)
用いた原料を別個に脱気しなかった。実施例2に従う本発明による100gの必要量の分散体は、PPビーカー中に計量投入した。未だ液体の反応混合物から、1mmの湿潤層厚みを有するフィルムをガラス板上に手でナイフ塗布する。製造後、全てのフィルムは終夜30℃にて乾燥棚中で乾燥させ、次いで5分間120℃で後アニールする。アニール後、該フィルムを簡単にガラス板から手で取り外すことができる。
【0127】
実施例6(本発明による)
用いた原料を別個に脱気しなかった。実施例2に従う本発明による100gの必要量の分散体を、PPビーカー中に計量投入し、1.783gの適切な量のPrintex 140を計量投入し、次いで5分以内に3000rpmで混合した。未だ液体の反応混合物から、1mmの湿潤層厚みを有するフィルムをガラス板上に手でナイフ塗布する。製造後、全てのフィルムは終夜30℃にて乾燥棚中で乾燥させ、次いで5分間120℃で後アニールする。アニール後、該フィルムをガラス板から手で簡単に取り外すことができる。
【0128】
実施例7(本発明による)
用いた原料を別個に脱気しなかった。実施例4に従う本発明による100gの必要量の分散体を、PPビーカー中に計量投入した。未だ液体の反応混合物から、1mmの湿潤層厚みを有するフィルムをガラス板上に手でナイフ塗布する。製造後、全てのフィルムは終夜30℃にて乾燥棚中で乾燥させ、次いで5分間120℃で後アニールする。アニール後、該フィルムを簡単にガラス板から手で取り外すことができる。
【0129】
実施例8(比較例):
液体原料を、アルゴン下で三段法により慎重に脱気した。10gのTerathane 650(INVISTA GmbH、D−65795 Hatterheim、分子量Mn=650を有するPoly−THF)を、60mlの使い捨て混合容器(APM−Technika AG、オーダー番号 1033152)中に計量投入する。次いで、0.005gのジブチル錫ジラウレート(Metacure(登録商標) T−12、Air Products and Chemicals, Inc.)および6.06gのイソシアネート N3300(HDIのイソシアヌレートトリマー、Bayer MaterialScience AGから市販されている生成物)を計量投入し、1分間3000rpmにてSpeedMixer中で混合する。該反応生成物をガラス板上に注ぎ、1mmの湿潤厚みのドクターブレードで延展して均質なフィルムを形成する。次いで該フィルムを16時間80℃にてアニールする。
【0130】
実施例9(比較例):
液体原料を、アルゴン下で三段法により慎重に脱気し、カーボンブラックを125μmスクリーンによりふるい分けした。10gのTerathane 650(INVISTA GmbH、D−65795 Hatterheim、分子量Mn=650を有するPoly−THF)を、0.536gのPrintex 140と共に、60mlの使い捨て混合容器(APM−Technika AG、オーダー番号1033152)中に計量投入し、SpeedMixer中で3分間3000rpmにて混合して、均質なペーストを形成する。次いで、0.005gのジブチル錫ジラウレート(Metacure(登録商標) T−12、Air Products and Chemicals, Inc.)および6.06gのイソシアネート N3300(HDIのイソシアヌレートトリマー、Bayer MaterialScience AGから市販されている生成物)を計量投入し、1分間3000rpmにてSpeedMixer〔APM−Technika AG(CH−9435 ヘルブルグ)から市販されている製品、マーケティング D: Hauschild、型DAC 150 FVZ〕中で混合した。該反応生成物をガラス板上に注ぎ、1mmの湿潤厚みのドクターブレードで延展して2%の固形分を有する均質なフィルムを形成させる。次いで該フィルムを16時間80℃にてアニールする。
【0131】

【0132】
実験では、ポリウレタン分散体からなるフィルムが、先行技術との比較により注目すべき優位性を示すことが明らかとなった。
【0133】
とりわけ、分散体からなる本発明に従うフィルムの使用による優位性は、高誘電率および極めて良好な機械特性、例えば高弾性、高引裂点伸び、用途の使用可能な範囲内の穏やかな伸びで低張力を有する良好で適した張力/伸び曲線等である。目的は、少なくとも250%、好ましくは350%、特に好ましくは400%の破断点伸び(EB)、0.2MPaおよび100MPaの間、好ましくは0.4MPaおよび50MPaの間の引張強度(TS)、約100%〜200%の範囲内の穏やかな伸びで10MPa未満、好ましくは0.1MPaおよび10MPaの間の張力を有するさらに極めて平らな張力/伸び曲線、1×1010オームcmを越える電気体積抵抗(VR)および少なくとも20の誘電率(DC)であった。比較例では、100%および200%での張力は、これらの材料が40%〜60%で既に引裂したので測定できなかった。
【0134】
本発明の分散体の使用のさらに有利な特徴は簡単な取り扱いであり、これは低粘性一成分系の課題であるので、反応性基、例えば遊離イソシアネート等の取り扱いは、充填剤を組み込む過程で必要とされない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの電極および該電極間に配置されたポリマーフィルムを少なくとも有する、電気エネルギーを機械エネルギーに変換するための、または機械エネルギーを電気エネルギーに変換するための変換器であって、該ポリマーフィルムは、ポリマー水性分散体、好ましくはポリウレタン水性分散体から製造されることを特徴とする、前記変換器。
【請求項2】
前記ポリマーフィルムは、以下の工程:
A)A1)有機ポリイソシアネート、
A2)分子量(数平均)400g/モル〜8000g/モルおよびOH官能価1.5〜6を有するポリマーポリオール、および
A3)必要に応じて、分子量62g/モル〜399g/モルを有するヒドロキシル官能性化合物、および
A4)必要に応じて、イソシアネート反応性、アニオン性または潜在的アニオン性および必要に応じて非イオン性の親水性化剤
からイソシアネート官能性プレポリマーを調製する工程、
B)A)からのプレポリマーの遊離NCO基を、
B1)必要に応じて、分子量32g/モル〜400g/モルを有するアミノ官能性化合物により、および
B2)アミノ官能性、アニオン性または潜在的アニオン性の親水性化剤により
完全にまたは部分的に変換する工程
を有し、前記プレポリマーを、工程B)前、工程B)中または工程B)後に水中に分散するプレポリマー化法に由来するポリウレタン水性分散体を乾燥することによって製造されることを特徴とする、請求項1に記載の変換器。
【請求項3】
成分A2)は、ポリエーテルポリオール、好ましくはポリテトラメチレングリコールポリエーテルを含有することを特徴とする、請求項3に記載の変換器。
【請求項4】
成分A1)は、二官能性イソシアネート構造要素、好ましくは二官能性脂肪族イソシアネート構造要素、特に好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはイソホロンジイソシアネート、さらに特に好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートの混合物を含有することを特徴とする、請求項2または3に記載の変換器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の少なくとも1つの変換器を有する、作動装置、感知器または発生器。
【請求項6】
請求項5に記載の少なくとも1つの作動装置、感知器または発生器を含む機器、特に電子および電気の製品。

【公表番号】特表2011−507984(P2011−507984A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537264(P2010−537264)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009004
【国際公開番号】WO2009/074192
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】