説明

フィルム状基材の接着法

本発明は、2成分ポリウレタン接着剤をフィルム、次いで第2フィルム上へ塗布し、少なくとも2つのNCO基を有する少なくとも1つのプレポリマーを含有する成分A、NCO基と反応性の少なくとも2つの基を有する少なくとも1つのポリマーまたはオリゴマー架橋剤を含有する成分Bからなる2成分ポリウレタン接着剤を用いる、フィルム状基材を接着的に接合するための方法に関する。本発明は、成分Bが0.05〜5重量%の低分子量化合物Cを含有し、前記化合物Cは、NCOと反応性である求核性基およびO=C−OまたはO=C−C−OまたはO=C−C=C−Oまたはプロトン化形態から選択される水素架橋を形成する基を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、向上した2成分ポリウレタン積層接着剤を用いる、フィルム状基材を接着により接合して多層フィルムを形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多層フィルムは、包装産業において一般に知られている。これらは、2以上の層から構成されてよく、個々の層は、フィルムとして互いに接着により接合される。これらのフィルムは、ポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドまたはポリエステル等から構成されてよいが、紙層および金属フィルムを含んでもよい。金属化表面を、さらに用いてもよい。この接着接合のための接着剤は、広い分野の応用において知られている。これらは、水ベース接着剤またはホットメルト接着剤であってよく、さらに1成分または2成分架橋系が知られている。
【0003】
US5891960は、溶媒含有架橋性組成物を被覆剤として記載する。該組成物は、エポキシ基を有するポリマー骨格から構成され、クエン酸をエポキシ基と反応させてカルボキシル基含有ポリマーを形成する。次いで該COOH基含有ポリマーは、イソシアネートと架橋して被覆物を形成する。
【0004】
GB2222592もまた知られている。これは、金属表面、例えば鋼を、水溶液中でポリヒドロキシアリール化合物により、次いで架橋性エポキシ化合物により被覆するための方法を記載する。このエポキシ架橋性組成物は、芳香族フェノール、カルボン酸エステル基またはカルボンアミド基を含有してよい。上記ポリヒドロキシアリールを含有するポリウレタン系は、記載されていない。
【0005】
WO2007/008199は、架橋系および防蝕剤を含有する水性プライマー組成物を記載する。種々の金属イオンおよび錯化剤が防蝕剤として記載される。
【0006】
先行技術は、金属表面のための接着剤および被覆剤を記載する。これらは、種々の物質、とりわけフェノール誘導体を含有すべきであり、種々の架橋性系もまた記載されている。柔軟性および弾性材料の広い面積の接着接合のための積層性接着剤は記載されていない。プラスチック基材の柔軟性金属基材への接着接合において生じる問題も記載されていない。金属表面およびプラスチックフィルムを含む複合材料においては、金属表面への適切な接着が生成されないという問題が存在することが多い。適切な柔軟性を得るために、接着剤は、その特性を薄膜中で発現するべきである。また、更なる問題は、熱または湿気の影響下で生じる接着の悪化である。さらに、この接着は急速に生成されるべきであり、このような複合材料は、可能な限り素早く更なる処理を施すことができる。接着剤は、薄層において塗布を可能とする塗布特性を有し、および均一な欠陥の無い接着層を作らなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5891960号明細書
【特許文献2】英国特許第2222592号明細書
【特許文献3】国際公開第2007/008199号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先行技術は、プラスチックと金属表面の間で良好な接着を有する接着剤層を製造し、2つの基材間で接着の急速な構築を可能とし、多層フィルムを形成する持続的な接合をもたらす、フィルムを接着により接合するための方法を提供するという課題を生じさせる。低い塗布粘度が、更に得られることとなる。また、複合材料の向上した接着接合安定性が得られることとなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、2成分ポリウレタン接着剤をフィルムへ塗布し、次いで第2フィルムを加圧下で適用し、少なくとも2つのNCO基を有する少なくとも1つのプレポリマーを含有する成分A、NCO基と反応する少なくとも2つの基を有する少なくとも1つのポリマーまたはオリゴマー架橋剤を含有する成分Bからなる2成分ポリウレタン接着剤を用い、成分Bは、0.05〜5重量%の低分子量化合物Cを含有し、該低分子量化合物は、NCO基と反応する求核基を有するべきであり、およびO=C−OまたはO=C−C−OまたはO=C−C=C−Oまたはプロトン化形態から選択される水素架橋基を含有する、フィルム状基材を接着により接合するための方法により解決される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、対応する2成分ポリウレタン接着剤を用いて本発明の方法により接着接合された、フィルム内に少なくとも1つの金属層を有する多層フィルムに更に関する。
【0011】
フィルムを積層するための方法は、既知である。このために、種々の接着剤を用いることができる。本発明によれば、特別に変性された2成分ポリウレタン積層性接着剤を使用し、これは、作業するのに適当であり、接着接合基材の向上した接着をもたらす。既知の柔軟性フィルム状基材、例えばプラスチックフィルム、金属フィルム、紙フィルムまたはカード等を、本発明による方法において基材として用いることができる。これらを、2以上の層において接着により接合して多層フィルムを形成する。
【0012】
このような多層フィルムを製造するためのフィルム材料として、既知の柔軟性フィルムを本発明の方法により用いることができる。これらは、フィルム形態で、熱可塑性プラスチック、例えばポリオレフィン、例えばポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP、CPP、OPP)等、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリエステル、例えばPET、ポリアミド、天然ポリマー、例えばセロファンまたは紙等から構成される基材である。フィルム材料は、例えばポリマーを官能基で変性することによって変性することができ、または更なる成分、例えば顔料、染料または発泡層を該フィルム中に含ませることができる。これらは、着色、印刷、無色または透明フィルムであってよい。
【0013】
多層フィルムは、対応する柔軟性フィルム材料から適当な2成分ポリウレタン接着剤と共に製造することができる。この表面は、部分的または完全に酸化することもできる。このため、好ましい実施態様によれば、2成分ポリウレタン接着剤は、金属フィルム、特にアルミニウムフィルム、またはアルミニウム被覆表面を有するプラスチックフィルムへ塗布する。
【0014】
接着剤は、既知のデバイスを用いてフィルムへ塗布することができる。これは、当業者に既知であり、噴霧塗布、ナイフ塗布、印刷塗布およびローラー塗布が含まれる。
【0015】
本発明に従って適当な接着剤は、1成分としてNCO基を含有するプレポリマーおよび第2成分としてNCO基と反応する少なくとも2つの官能基を有する少なくとも1つの架橋剤を、更なる接着剤と共に含有する2成分接着剤である。架橋剤成分は、本発明に従って必要な低分子量化合物Cを更に含有する。
【0016】
少なくとも2つのイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーまたはそのようなPUプレポリマーの混合物は、例えばポリオール成分と化学両論的に過剰の少なくとも1つの2官能性イソシアネートとを反応させることにより得られ、成分Aとして用いる。
【0017】
本発明の意義の範囲内におけるPUプレポリマーは、OH基またはNH基を有する化合物と過剰のポリイソシアネートとの反応生成物である。PUプレポリマーの合成に用いることができるポリマーおよびポリイソシアネートは、当業者に既知である。これらは、接着剤用途について既知のポリオールまたは第2級および/または第1級アミノ基を有する対応する化合物である。OH基を含有する出発化合物が好ましい。20000g/モルまで、特に100〜10000g/モル(GPCにより決定することができる数平均分子量、M)の分子量を有するポリオールは、特に前記プレポリマーを合成するために適当である。これらは、例えばポリエーテル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリレート、アルキレンポリオールに基づくポリオール、または他の実施態様として、NH基を有する類似化合物であってよい。
【0018】
ある実施態様は、好ましくは、1500g/モル未満の分子量を有する低分子量非分枝ポリオールを用い、前記ポリオールは、3個または好ましくは2個のOH基を有するべきである。個々のポリオールを選択することができるが、ポリオールの混合物を用いることもできる。特にジオール、とりわけ末端OH基を有するジオールを好ましく選択する。他の実施態様は、1500〜20000g/モルの分子量を有するOH含有ポリマーを用いる。本発明では、多くのOH基あるいは単に2つのOH基を含ませることができる。
【0019】
ポリオール成分は、約60g/モル〜1500g/モルの低分子量を有してよいが、より高い分子量のポリマー、例えば1500〜20000g/モルの分子量を有するポリマーを反応させることもできる。平均2個の反応性基を、ポリオール、例えばジオールに存在させるべきであるが、複数の官能基を有する化合物を反応させることも可能である。
【0020】
2以上のイソシアネート基を有するそれ自体既知のポリイソシアネートを、ポリイソシアネートとしてプレポリマー合成に用いることができる。適当なポリイソシアネートは、1,5−ナフチレンジイソシアネート、2,4−または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水素化MDI(H12MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、ジ−およびテトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート(TDI)の異性体、1−メチル−2,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,6−ジイソシアナト−2,2,4−トリメチルヘキサン、1,6−ジイソシアナト−2,4,4−トリメチルヘキサン、1−イソシアナトメチル−3−イソシアナト−1,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、燐またはハロゲン含有ジイソシアネート、テトラメトキシブタン−1,4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサン−1,6−ジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、メチレントリフェニルトリイソシアネート(MIT)、フタル酸ビス−イソシアナトエチルエステル、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトブタン、1,12−ジイソシアナトドデカン、ダイマー脂肪酸ジイソシアネートおよびリシンエステルジイソシアネートを含む群から選択される。ジイソシアネートの三量化またはオリゴマー化により、またはジイソシアネートとヒドロキシル基またはアミノ基を含有する多官能性化合物とを反応させることにより製造される少なくとも三官能性のイソシアネートを用いることもできる。好ましくはジイソシアネートを主に用いる。
【0021】
反応制御は、イソシアネートの量により影響を与えることができる。大過剰のイソシアネートを用いる場合、OH基をイソシアネート基により官能基化させたPUプレポリマーが形成される。ここで分子量のほんの僅かな上昇が得られる。イソシアネートのより少ない量を用いる場合には、または反応を段階的に行う場合には、プレポリマーの分子量が、出発化合物と比べて上昇することが知られている。この場合、過剰のイソシアネートを完全な反応に対して用いることを全体において確保しなければならない。
【0022】
イソシアネートの混合物から製造されたPUプレポリマーも同様に既知である。このようなプレポリマーは、異なる反応性のイソシアネート基を含有してよい。
【0023】
ポリオール化合物とイソシアネートとの反応は、既知の方法により行うことができる。溶媒中で生じさせることができるが、出発化合物を、互いに溶媒を用いずに反応させることもできる。過剰のイソシアネートを用いて、未反応モノマーイソシアネートを反応混合物中に存在させながら生じさせることが更に可能である。他の操作の態様は、ほんの僅かな量の未反応モノマーイソシアネートを混合物中に存在させることを反応制御の種類により確保する。更なる操作の態様は、特に低いモノマー含有量を有する生成物を製造することを可能としながら未反応ジイソシアネートを留去する。
【0024】
反応性NCO基を有する既知のPUプレポリマーは、本発明に用いることができる。このようなプレポリマーは、当業者に既知であり、市販のプレポリマーであってもよい。ポリエステルポリオールをベースとしてジイソシアネートとの反応により製造されたPUプレポリマーは、本発明において特に好ましい。本発明に用いるPUプレポリマーは一般に、500〜約30000g/モル、好ましくは15000g/モルまで、特に1000〜5000g/モルの分子量を有する。
【0025】
一実施態様では、本発明に従う適当な反応性NCO基を有するPUプレポリマーは必要に応じて、ポリイソシアネートを成分A中に更に含有してもよい。これらは、脂肪族、芳香族またはポリマーイソシアネートであってよい。その例は、既知の接着剤ポリイソシアネート、例えばMDI、TDI、HDI、IPDI、XDI、TMXDI、NDI、pMDIまたは対応するカルボジイミド、イソシアヌレートまたはビウレット等である。これらは、プレポリマー製造反応中に添加することができるが、後の段階において成分Aへ添加することもできる。このようなポリイソシアネートは、特に適当であり、25℃にて低蒸気圧、例えば0.01ミリバール未満しか有さない。
【0026】
適当なPUプレポリマーの他に、成分Aは、更なる補助物質および添加剤を含有してもよい。本発明では、イソシアネート基と反応することができない成分だけを添加することを確保することが重要である。
【0027】
本発明によれば2成分PU接着剤の成分Bは、イソシアネート基と反応する少なくとも2つの基を有する少なくとも1つの化合物を含有しなければならない。これらは、例えばSH基、COOH基、NH基またはOH基であってよく、ポリオールが特に好ましく、これらは異なる化学構造または異なる分子量のポリオールの混合物であってもよい。これらの化合物は、架橋剤として働く。
【0028】
多くのポリオールが成分Bに用いるためのポリオール成分として適している。例えばこれらは1分子当たり2個〜10個までのOH基を有するポリオールであってよい。脂肪族化合物または芳香族化合物であってよく、適切な数のOH基を有するポリマーを用いることもできる。これらは、第1級または第2級OH基であってよいが、これらはイソシアネート基と適切な反応性を有する。
【0029】
このようなポリオールの例は、好ましくは2〜10個のOH基を有する低分子量脂肪族ポリオール、特にC〜C36アルコールである。その例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール−14、ヘキサンジオール−16、オクタンジオール−18、ダイマー脂肪酸ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトールまたは糖アルコールである。
【0030】
芳香族環を有するポリオールは、他の適当な架橋性ポリオールの群である。これらは、例えばレゾルシノール、ピロガロール、ヒドロキノンまたは他の芳香族ポリオールの誘導体であってよい。
【0031】
他の適当なポリオールの群は、例えばポリエーテルである。これらは、2〜4個の炭素原子を有するアルキレンオキシドと低分子量アルコールとの反応生成物である。このような化合物の例は、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリ−THFである。ポリエーテルポリオールは、200〜10000g/モル、特に400〜5000g/モルの分子量を有すべきである。
【0032】
ポリエステルポリオールは、成分Bに用いるための更に適当なポリオール化合物の群である。接着剤のための既知のポリエステルポリオールを用いることができる。これらは、例えばジオール、特に低分子量アルキレンジオールまたはポリエーテルジオールとジカルボン酸との反応生成物であってよい。これらは、脂肪族または芳香族カルボン酸またはその混合物であってよい。これらのカルボン酸のエステルまたは無水物を、必要に応じて反応させることもできる。
【0033】
このようなポリエステルポリオールは、多くの形態で当業者に既知であり、市販されている。これらのポリエステルポリオールは、約200〜約20000g/モル、特に400〜5000g/モルの分子量を特に有するべきである。
【0034】
ポリマーラクトンまたはポリアセタールは、更なる適当なポリオール化合物の群であるが、これらは少なくとも2つの官能基および対応する適当な分子量を有する。
【0035】
OH官能性ポリ(メタ)アクリレートは、適当なポリオールの更なる群である。このようなポリ(メタ)アクリレートは、例えばエチレン性不飽和モノマーの重合により得られ、多くのモノマーは、OH基を付加的に有する。このようなポリアクリレートの分子量は、例えば500〜20000、特に5000g/モルであってよい。
【0036】
OH基を含有するポリウレタンは、更なるポリオールの群である。ここで、既知のポリウレタンはポリオールおよびイソシアネートの反応生成物として用いることができる。この場合には、成分の割合は、OH基を含有するポリウレタンが得られるように選択する。このようなポリウレタンの分子量は、500〜10000g/モル、特に5000g/モルまでであってよい。
【0037】
適当な架橋剤は、少なくとも2つの反応性基を有し、単独でまたは混合物中で用いることができる。化合物は、互いに混和性であり、相分離が起こらないことを確保することが重要である。粘度は、成分Bの構成成分の選択により影響を与えることができる。ポリマーポリオールを用いる場合、Bは、より高い粘度を有する。低分子量ポリオール、例えば12個までの炭素原子を有するポリアルキレンポリオールの割合を用いる場合には、粘度はより低くなる。本発明によれば、成分Bが液体であることが好都合である。これは、ポリオールの選択により達成することができるが、他の実施態様では、不活性有機溶媒を添加することが可能である。
【0038】
本発明による接着接合効果のために、成分Bは、NCO基と反応する求核性基を有するべきであり、および少なくとも1つの水素架橋基を更に含有する少なくとも1つの低分子量化合物Cを含有することが必要である。500g/mol未満、特に400g/モル未満の分子量を有する化合物は、低分子量化合物Cとして理解される。
【0039】
例えばOH、NHR、SH、COOHは、化合物Cの求核性基として含ませることができる。OH基は特に好ましい。
【0040】
カルボニル基および/またはヒドロキシル基を炭素原子においてまたは2つの隣接した炭素原子において有する基が、水素架橋基として挙げられる。構造:
【化1】

【化2】

【化3】

を有する化合物または対応するプロトン化形態が特に適当である。
【0041】
これらの化学基が金属基材または酸化表面へ、特にアルミニウム基材へ良好な接着を生じさせることを見出した。本発明では、対応する官能基を有する多くの化合物が適当である。複数の適当な化合物の選択は、例えば個々のO基間の距離の量子化学的計算により選択することができる。2.5および3.5Åの間のO原子間の距離は、特に適当であると示された。
【0042】
化合物Cは、種々の構造を有することができる。例えば、これらは脂肪族または脂環式化合物であってよく、1以上のフェニル環を有する芳香族化合物を用いることもできる。該化合物は、これらが室温で固体である化合物であるように選択する。脂肪族化合物の例は、分子において少なくとも1つのOH基をも更に有する、4〜14個の炭素原子を有するジカルボン酸またはトリカルボン酸である。環式化合物の例は、置換シクロヘキサンであり、これは例えばカルボキシル基および少なくとも1つのOH基をシクロヘキサン環において有し、α−ヒドロキシケトン、1,3−ジケトンまたは1,3−エステルケトンが挙げられる。適当な芳香族化合物の例は、置換フェノールであり、これはCOOH、OH、NHから選択される更なる置換基を付加的に有する。更なる化合物の群は、1以上の芳香族環を有する化合物、例えば置換ナフタレンカルボン酸または置換ピラン誘導体である。適当な化合物Cは、500g/モル未満、特に400g/モル未満の分子量を有する。
【0043】
適当な置換基は、カルボキシル基、カルボニル基についてα位にヒドロキシル基またはカルボニル基についてβ位にヒドロキシル基、またはカルボン酸エステル基のいずれかを含有しなければならない。さらに、反応性OH基、特にフェノールOH基を更に含まなければならない。
【0044】
本発明による接着剤に特に適したこのような化合物の例は、モリン(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3,5,7−トリヒドロキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン)、3,7−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸(3,7−ジヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸)、ピロガロールカルボン酸(2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸)、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸、没食子酸(3,4,5−トリヒドキシ安息香酸)、p−アミノサリチル酸(4−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸)、パモン酸(4,4’−メチレンビス(3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸)、クエン酸(2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸)を包含する。これらの化合物の1つを用いることができるが、混合物を用いることも可能である。好ましい選択は、接着剤として塗布する場合に、接着剤の変色がほとんどまたは全く起こらない化合物を用いる。これは、特にクエン酸、没食子酸またはp−アミノサリチル酸での場合である。
【0045】
2成分PU接着剤は、完全な接着剤に対して0.05〜5重量%、特に0.1〜2重量%の量で化合物Cを含有するべきである。
【0046】
更なる成分、例えば溶媒、可塑剤、触媒、樹脂、安定剤、接着促進剤、顔料または充填剤等がこれらの2成分PU接着剤に含まれることは好都合である。
【0047】
一実施態様では、適当な接着剤は、少なくとも1つの粘着付与性樹脂を含有する。樹脂は、更なる粘着性をもたらす。相溶性の、すなわち、非常に均質の混合物を形成する全ての樹脂を、原則として用いることができる。例えば芳香族、脂肪族または脂環式炭化水素樹脂を、その変性または水素化バージョンと共に用いることができる。樹脂は一般に、1500g/モル未満、特に1000g/モル未満の低い分子量を有する。樹脂は、接着剤に対して0〜50重量%、好ましくは30重量%までの量で用いることができる。
【0048】
可塑剤、例えばホワイトオイル、ナフテン鉱油、パラフィン炭化水素油、ポリプロピレンオリゴマー、ポリブテンオリゴマー、ポリイソプレンオリゴマー、水素化ポリイソプレンおよび/またはポリブタジエンオリゴマー、フタレート、アジペート、ベンゾエートエステル、植物油または動物油およびこれらの誘導体等を含ませることもできる。食品規制感覚において安全である可塑剤は、特に適当である。
【0049】
高分子量の立体障害フェノール、多官能性フェノール、硫黄含有および燐含有フェノールまたはアミンは、安定剤または抗酸化剤として任意の使用について適当である。
【0050】
シラン化合物を接着促進剤として接着剤へ更に添加することが可能である。既知の有機官能性シラン、例えば(メタ)アクリルオキシ官能性、エポキシ官能性、アミン官能性または非反応性置換シランを、接着促進剤として用いることができる。その例は、ビニルトリアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシメチルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシメチルトリエトキシシラン、2−グリシジルオキシエチルトリメトキシシランまたは対応するジアルコキシ誘導体(ブトキシ基、プロポキシ基、特にメトキシ基またはエトキシ基が好適である)である。好ましい実施態様では、0.1〜5重量%の上記シランを接着剤へ添加する。シランの選択に応じて、これを1成分中でのみ混合することが好都合である。早期の反応および貯蔵安定性の減少は、この方法により防止することができる。
【0051】
2成分PU接着剤は、必要に応じて更に存在させる接着剤として触媒を含有させることもできる。OH基およびNCO基の反応を触媒することができる全ての既知の化合物を、触媒として用いることができる。その例は、チタネート、例えばテトラブチルチタネートまたはチタンテトラアセチルアセトネート等、ビスマス化合物、例えばビスマストリス−2−エチルヘキサン酸等、錫カルボキシレート、例えばジブチル錫ジラウレート(DBTL)、ジブチル錫ジアセテートまたはジブチル錫ジエチルヘキサン酸等、錫酸化物、例えばジブチル錫オキシドおよびジオクチル錫オキシド等、有機アルミニウム化合物、例えばアルミニウムトリスアセチルアセトネート等、キレート化合物、例えばジルコニウムテトラアセチルアセトネート等、tert−アミン化合物またはそれとカルボン酸との塩、例えばトリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、モルホリン、N−メチルモルホリンおよび1,8−ジアザビシクロ−(5,4,0)−ウンデセン−7−(DBU)等、アミノ基を有するシラン接着促進剤である。触媒は、接着剤の全重量に対して0.01〜約5重量%、好ましくは0.05〜1重量%、特に好ましくは0.1重量%を越える量の触媒を用いる。
【0052】
特定の実施態様では、顔料も被覆剤へ添加する。これらは、例えば<5μmの粒度を有する微細粒子顔料である。本発明の1つの実施態様は、バインダーの1成分中に分散させることができるプレートレット形状顔料により働く。次いでこれらは、微細な分散形態であり、すなわち顔料または充填剤をプレートレット形態で分散し、従って僅かな厚みのみを有する。このような顔料は、当業者に既知であり、例えば異なった組成物のフィロケイ酸塩である。他の操作の態様は、ナノ粒子を用いる。これらは通常、<500nm、特に100nm未満の粒度を有する。このようなナノ顔料は、例えばTiO、SiO、FeOまたは類似の酸化物またはオキシヒドレートに基づくナノ顔料であってよい。このような顔料は、当業者に既知である。これらは、通常の考慮に基づいて選択することができ、従来法によりバインダーの一方または両方に微細に分散することができる。
【0053】
接着剤に溶媒を含有させることも可能である。これらは、120℃までの温度において蒸発することができる通常の溶媒である。溶媒は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、特にC〜Cアルコール並びに水の群から選択することができる。他の実施態様では、2成分接着剤は溶媒不含である。
【0054】
適当な2成分PU接着剤は、反応性NCO基を含有する成分A、反応性NHまたは特にOH基を含有する成分Bおよび成分Bにおいて化合物Cから構成される。さらに、0〜30%、特に1〜15重量%の添加剤および補助物質を、成分AおよびBに含ませることができる。添加剤は、原則として両方の成分中に存在させることができる。しかしながら、好ましくはNCO反応性基を含有する添加剤をOH成分中に含ませることを確保することが重要である。そうでなければ、生成物の貯蔵安定性が減少する。
【0055】
対応する成分を製造するための方法は、当業者に既知である:出発材料を、必要に応じて乾燥させ、次いで既知の装置により混合させることができる。得られる成分Aおよび成分Bは、個々に貯蔵する場合、安定性である。該成分を、塗布する直前に混合し、架橋性接着剤を得る。2成分は、おおよそ等しいOH基とNCO基の当量比を含むように混合するべきである。ネットワークを架橋する間に形成させ、OH基を有する低分子量添加剤を必要に応じて化学的に一体化させてもよく、この場合、更に移行しない。
【0056】
2成分PU接着剤では、既知の補助剤および添加剤を成分Aまたは成分Bへ添加することができるが、これらは添加剤と反応させない。溶媒を含ませることができるが、本発明の特定の実施態様は、溶媒を用いずに働く。成分Aおよび成分Bの選択により、特に低粘度を室温、例えば25℃にて有する成分AおよびBの混合物が得られることを確保することができる。
【0057】
接着剤が広い表面積を被覆するために特に適している場合、これらは、約20〜90℃の塗布温度にて低い粘度を有するべきである。成分の混合直後に計測した2成分PU接着剤の粘度は、塗布温度にて200および5000mPasの間、好ましくは500〜3000mPasとなるべきである(20〜60℃にて、EN ISO 2555によりBrookfield粘度計)。
【0058】
本発明の方法によれば、適当な接着剤を層として基材へ塗布する。接着剤を、1g/m〜100g/m、好ましくは2〜35g/mのフィルム厚みで塗布するべきである。塗布粘度は、低くあるべきである。被覆法を簡単にするために、2成分PU接着剤を高温、例えば30〜60℃へ加熱することが可能である。処理は、第2フィルム層との接着接合直後に継続することができる。多層フィルムは、接着の急速な構成により処理および/または包装することができることを見出した。フィルム基材および金属層間の接着剤は、極めて良好であり、滑りが生じない。
【0059】
本発明の方法および適当な2成分PU接着剤の使用により、多層フィルムの接着接合を向上させることが可能である。特に、プラスチック基材の他の金属表面を有する軟質基材への安定性接着接合を向上させる。接着接合直後、接着剤は、対応する接着強度を素早く発現する。これは、多層フィルムの直ぐの更なる処理を可能とすることを確保する。更なる処理として、付加的なフィルムとの接着接合を付与することができ、対応するフィルムを印刷することができ、または包装手段を行うことができる。
【実施例】
【0060】
実施例1
成分Aは、市販のポリエステルプレポリマー(Liofol UK 3640、Henkel)から構成され、脂肪族および芳香族ジカルボン酸を含むポリエステルおよび過剰の4,4’−MDIと2.25%のプレポリマー中のNCO含有量で反応させたポリアルキレンジオールを含有する。PUプレポリマーを、酢酸エチル中に溶解させた(固形分60%)。
粘度:20℃にて約350mPas(Brookfield、LVT)
【0061】
2成分積層性接着剤は、上記PUプレポリマーとジエチレングリコールに基づく硬化剤とを1.25:1の割合で混合することにより得られる。
【0062】
0.3%の次の物質の1つを、実施例1からの接着剤へ成分Bにおいて添加する。接着剤は、いずれの場合にも混合することにより製造する。
【0063】
アルミニウムフィルムを、本発明の接着剤を4g/mのフィルム厚みで塗布したポリプロピレンフィルム(200μm)上へ積層する。
【0064】
接着により接合したフィルムを、10日間室温において貯蔵した。次いで引張試験を行った。更なる試料を、対応する方法で接着により接合し、次いで120℃、2バール、30分間、滅菌した。これらの試料について同様に引張試験を行った(DIN 53278、90度角)。
【0065】
【表1】

【0066】
滅菌後、接着促進剤を含有する接着接合フィルムは、応力を受けていない試料と比べて良好または向上した接着を示す。さらに、明らかな改良を、既知の接着促進剤および添加剤を有さない試料との比較により確立することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状基材を接着により接合するための方法であって、2成分ポリウレタン接着剤をフィルムへ塗布し、次いで第2フィルムを適用し、
・少なくとも2つのNCO基を有する少なくとも1つのプレポリマーを含有する成分A、
・NCO基と反応する少なくとも2つの基を有する少なくとも1つのポリマーまたはオリゴマー架橋剤を含有する成分B、
からなる2成分ポリウレタン接着剤を用い、成分Bは、0.05〜5重量%の低分子量化合物Cを含有し、該低分子量化合物は、
・NCO基と反応する求核性基を有するべきであり、および
・O=C−OまたはO=C−C−OまたはO=C−C=C−Oまたはプロトン化形態から選択される水素架橋基を含有する、方法。
【請求項2】
化合物Cは、−OH、−NHR、−SH、−COOHから選択される求核性基、特にOH基またはCOOH基を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
成分Aは、化学量論的過剰の芳香族ジイソシアネートと反応させたポリエーテルジオールまたはポリエステルジオールの反応生成物をベースとする少なくとも1つのPUプレポリマーを含有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
成分Bは、OH基またはNH基を有する架橋剤、特に3000g/モル未満の分子量を有するジオールを含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
化合物Cは、Al表面と錯体を形成する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
化合物Cは、芳香族骨格を有し、特にフェノールOH基を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
化合物Cを、0.1〜2重量%の量で含ませる、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
第1フィルムは金属表面を有し、請求項1〜7のいずれかに記載の接着剤を前記フィルムへ塗布し、次いでこうして被覆したフィルムを、更なるフィルム状基材へ接着により接合する、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
接着剤を、1〜100g/mの量で塗布する、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
接着剤は、200〜5000mPasの粘度を有する(20〜60℃、EN ISO 2555)、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
接着剤を、25〜75℃の温度にて塗布する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
Cからの求核性基を、NCO基と、成分Bの反応性基より徐々に反応させる、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの金属化表面を有するフィルムを含む、請求項1〜12のいずれかに記載の方法により製造された多層フィルム。
【請求項14】
金属化表面はアルミニウムから構成される、請求項13に記載の多層フィルム。
【請求項15】
接着剤層は、100g/m未満のフィルム厚みを有する、請求項13または14に記載の多層フィルム。

【公表番号】特表2013−507459(P2013−507459A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532519(P2012−532519)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062898
【国際公開番号】WO2011/042267
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】