説明

フィルム状外用剤組成物

【課題】有効成分としてアミノ酸系薬効成分を安定且つ高濃度に含有し、該有効成分を効率的に肌へ供給するフィルム状外用剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係るフィルム状外用剤組成物は、有効量のアミノ酸系薬効成分と、皮膜形成剤と、を含有することを特徴とする。また、前記フィルム状外用剤組成物において、アミノ酸系薬効成分がグリシルグリシン及び/又はd−グルタミン酸であることが好適である。また、前記フィルム状外用剤組成物は、グリシルグリシン及び/又はd−グルタミン酸を0.01〜10質量%含有することが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム状外用剤組成物に関し、特にその使用性の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の特定の部分に集中的に美容効果を与える手段として、従来、セルロース誘導体、寒天、ゼラチン、糖などの皮膜形成剤の水溶液に有効成分を添加し、基材へ塗布して乾燥させたフィルム状の外用剤が知られている。通常、このタイプの外用剤は、適用箇所で水分を加え、フィルムを溶解させてパック或いは塗布することによって使用される。
このようなフィルム状の外用剤は、不織布などに有効成分を含侵させたシートタイプの外用剤に比べ、適用部に効率よく確実に成分を供給できるという利点がある。特に、ヒドロキシプロピルエチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体を皮膜形成剤として用いたフィルム状外用剤は、溶解性、吸湿性、耐乾燥性、耐ブロッキング性などが優れていることが報告されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−326918号公報
【特許文献2】特開2009−155274号公報
【特許文献3】特開2009−19008号公報
【特許文献4】特開2005−179342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、グリシルグリシンは、毛穴隠蔽効果や肌にハリを与える効果を有するアミノ酸系薬効成分であり、美容液などの化粧料における使用が知られている(特許文献2)。しかし、このようなアミノ酸系薬効成分を配合した美容液は、高温条件や長期経時により該成分による変色、変臭、結晶化が起こり易く、安定性を保持させることが難しかった。また、前記性質から、美容液に配合できるグリシルグリシンには限界があり、該成分をより高濃度に配合し、その有する効果が効率的に発揮される美容液を製造することはできなかった。したがって、従来のグリシルグリシン配合美容液では、使用時における毛穴に対する効果実感が薄いという問題があった。
なお、特許文献3にはグリシルグリシンを含む美容液を特定成分を含む不織布に含侵させ、変色を防ぎ得ることが記載されており、特許文献4にはピールオフ型パックにグリシルグリシンを配合した実施例が記載されている。しかし、このような形態の化粧料においても、経時による結晶化などの問題から、多量の水分に制限された量のグリシルグリシンを含む製品とせざるを得ず、該成分を高濃度で肌に適用し、効果を十分に発揮させるには至っていない。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、有効成分としてアミノ酸系薬効成分を安定且つ高濃度に含有し、該有効成分を効率的に肌へ供給するフィルム状外用剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決するために本発明者らが鋭意検討を行った結果、乾燥した水溶性フィルムの成分とすることにより、アミノ酸系薬効成分を安定に配合することができ、しかも少量の水で前記フィルムを溶解させて用いることで、前記薬効成分を高濃度で肌へ供給できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係るフィルム状外用剤組成物は、有効量のアミノ酸系薬効成分と、皮膜形成剤と、を含有することを特徴とする。
【0006】
また、前記フィルム状外用剤組成物において、前記アミノ酸系薬効成分がグリシルグリシン及び/又はd−グルタミン酸であることが好適である。
また、前記フィルム状外用剤組成物において、グリシルグリシン及び/又はd−グルタミン酸を0.01〜10質量%含有することが好適である。
【0007】
また、前記フィルム状外用剤組成物は、皮膜形成剤としてセルロース誘導体を40〜70質量%含むことが好適である。
また、前記フィルム状外用剤組成物は、水を加えて使用することが好適である。
また、本発明に係るフィルム状外用剤組成物の使用方法は、前記フィルム状外用剤組成物を覆うように、ゲルシートを上から重ねることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アミノ酸系薬効成分を安定的に配合したフィルム状外用剤を得ることができる。さらに、前記フィルム状外溶剤組成物は、肌上で水溶解させると粘度の高い高濃度アミノ酸系薬効成分配合美容液となることから、該薬効成分の効果を効率的に肌へ与えることが可能となる。そのため、本発明にかかるフィルム状外用剤は、毛穴に対する効果感・使用時のべたつきのなさなどの使用性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るフィルム状外用剤組成物は、乾燥状態においてアミノ酸系薬効成分を有効量含有するものである。
本発明において、アミノ酸系薬効成分とは、化粧料や医薬部外品に配合可能なアミノ酸、アミノ酸誘導体、ペプチド及び/又はそれらの塩を意味する。そのようなアミノ酸系薬効成分としては、アミノ酸及びその誘導体として、例えば、トラネキサム酸、d−グルタミン酸、グリシン、アラニン、セリン、アルギニン、リジン、ヒドロキシプロリン及びそれらの塩もしくはそれらの誘導体が挙げられる。また、ペプチド及び/又はそれらの塩としては、グリシルグリシン及び/又はその塩が挙げられる。
中でも、グリシルグリシン及びd−グルタミン酸は、美容液などの液状化粧料に高濃度で配合した場合、高温条件や長期経時に変色、変臭、結晶化を起こしやすく、安定した配合が難しいことから、特に本発明のフィルム状外溶剤組成物における使用に適している。
【0010】
本発明のフィルム状外用剤組成物における前記アミノ酸系薬効成分の配合量は、フィルム状外用剤組成物に対して0.01〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜5質量%である。
アミノ酸系薬効成分の配合量が0.01質量%に満たないと、該薬効成分による効果が十分に得られないことがあり、10質量%を超えて配合するとフィルム使用時に該成分が水へ完全に溶解しないことや使用時にべたつくことがある。
なお、アミノ酸系薬効成分が前記配合量範囲で配合されたフィルム状外用剤は、使用時にフィルムが溶解する程度の水を加えることによって、前記薬効成分の濃度が従来の美容液や化粧水に配合される濃度の4、5倍程度にもなる極めて濃厚な溶液となる。したがって、ほぼ乾燥状態である本発明のフィルム状組成物に対する該薬効成分の配合比率が、従来のアミノ酸系薬効成分配合化粧料と数値上重複するものであっても、肌に適用するアミノ酸系薬効成分水溶液という観点において、両者は全く異なる薬効成分濃度の組成物ということになる。
【0011】
また、本発明に係るフィルム状外用剤組成物においては、有効成分をフィルム状とするための皮膜形成剤を配合することができる。使用する皮膜形成剤の種類は限定されないが、本発明においては特にセルロース誘導体を用いることが好ましい。
セルロース誘導体は、一般に、セルロースのヒドロキシ基の一部または全部に化学修飾を加えた化合物である。本発明においては、特に、化粧品や医薬品分野において使用される水溶性のセルロース誘導体の使用が好ましい。
このようなセルロース誘導体としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の水溶性セルロースエーテルが挙げられる。本発明においては、特に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの使用が好ましい。
【0012】
また、他の皮膜形成剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、コラーゲン、デンプン、ゼラチン、寒天、糖等が挙げられる。
デンプンとしては、天然デンプンの他、エーテル化(例えば、ヒドロキシプロピル化、ヒドロキシエチル化、ヒドロキシメチル化、ヒドロキシプロピルメチル化等のヒドロキシアルキル化など)、エステル化(例えば、アセチル化など)、有機エステル化を施したものや、それらの架橋、酸化、酵素転換、酸加水分解物等の加工デンプンが挙げられる。
【0013】
糖としては、例えば、プルラン、エルシナン、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、タマリンドガム、キサンタンガム、グアガム、タラガム、ローカストビーンガム、アラビノガラクタン、アラビアガム、キトサン、アミロース、アミロペクチン、デキストラン、マンナン等の水溶性多糖類が挙げられる。
【0014】
上記皮膜形成剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その合計配合量は、本発明のフィルム状外用剤組成物に対し40〜70質量%とすることが好ましく、より好ましくは50〜70質量%、さらに好ましくは55〜65質量%である。製造に用いられる全成分に対する皮膜形成剤の配合量が40質量%に満たないと、フィルムの耐ブロッキング性が不十分となることがある。
【0015】
本発明に係るフィルム状外用剤組成物は、上記成分の水溶液を基材上に塗布・乾燥させ、平板のシート状に成形して製造することができる。すなわち、前記フィルム状外用剤組成物は、好ましくは、アミノ酸系薬効成分0.01〜10質量%と、皮膜形成剤40〜70質量%とを含む水溶液を乾燥させてなる。乾燥後のフィルムの厚さは、好ましくは10〜60μm、より好ましくは10〜40μmである。水溶性シートの厚さが60μmを超えると、使用時にフィルムが十分溶解されないことがあり、10μmに満たないと配合成分による肌への効果が不十分なことがある。
【0016】
また、本発明に係るフィルム状外用剤組成物には、上記成分の他にも通常化粧品、医薬品、医薬部外品に使用される成分を本発明の効果を損ねない範囲で配合することができる。
前記成分としては、例えば、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、キシリトール、マルチトール、マルトース、D−マンニット、ヒアルロン酸等の保湿剤;エタノール、プロパノール等の低級アルコール;パラアミノ安息香酸等の安息香酸系紫外線吸収剤、アントラミル酸メチル等のアントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル等のサリチル酸系紫外線吸収剤、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ウロカニン酸、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−tert−ブチル−4'−メトキシベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤;エデト酸ナトリウム塩、メタリン酸ナトリウム、リン酸等の金属イオン封鎖剤;アスコルビン酸、α−トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等の金属イオン封鎖剤;水酸化カリウム、クエン酸塩、酢酸塩等のpH調整剤;キレート剤;パラベン、フェノキシエタノール、グルコン酸クロルヘキシジン等の防腐剤;香料;色素;アミノ酸及びアミノ酸塩;ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩等の無機塩類;タルク、シリカゲル、酸化亜鉛、酸化チタン等の粉体などが挙げられる。また、フィルムの再皮膜化によるかすの発生を防ぐ成分として、ヒドロキシエチルウレアを配合してもよい。
上記のうち、特に保湿剤により、組成物に使用後のつるつる感を付与することができる。ただし、保湿剤の配合量は、セルロース誘導体の成膜性を考慮し、フィルム状外用剤組成物に対して30質量%以下とすることが好ましい。
【0017】
また、ワセリン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素油;ホホバ油、ゲイロウ、カルナウバワックス等のエステル油;オリーブ油、牛脂等のトリグリセライド;セタノール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール;ステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸;ジメチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン等のシリコーン油などの油分や、その他の油溶性成分を界面活性剤等で乳化・可溶化して添加してもよい。
界面活性剤としては、脂肪酸モノグリセライド、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油等のノニオン性界面活性剤;ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸エステル等のアニオン性界面活性剤;第四級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;アルキルベタイン等の両性界面活性剤;アルキル変性カルボキシビニルポリマー等の高分子界面活性剤などが挙げられる。
【0018】
さらに、前記フィルム状外用剤組成物には、上記アミノ酸系薬効成分以外にも、目的に応じて各種薬剤を配合し、薬効を付与することができる。
薬物としては、例えば、ビタミンA油、レチノール、パルミチン酸レチノール、イノシット、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸アミド、ニコチン酸dl−α−トコフェロール、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸2−グルコシド、ビタミンD2(エルゴカシフェロール)、2−Lアスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム塩、dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、パントテン酸、ビオチン、塩酸ピリドキシン、CoQ10等のビタミン類;トラネキサム酸、アラントイン、グリチルリチン酸塩、アズレン、塩化リゾチーム等の坑炎症剤;アルブチン、コウジ酸等の美白剤;酸化亜鉛、タンニン酸等の収斂剤;イオウ;α−リポ酸;メントール:γ−オリザノール、朝鮮人参エキス、ステロール配糖体等の滋養剤;浸透圧調整剤;抗ヒスタミン剤;ステロイドホルモン;殺菌剤;抗真菌剤;血管保護剤;酸化防止剤;色素脱失剤;減感剤;免疫調節剤;抗加齢剤;抗シワ剤;皮脂吸収剤;抗生物質;脱臭剤;柔軟剤などが挙げられる。
なお、上記薬剤は遊離の状態で使用されるほか、造塩可能なものは酸または塩基の塩の型で、またカルボン酸基を有するものはそのエステルの形で使用することができる。
【0019】
本発明に係るフィルム状外用剤組成物は、特に、洗浄直後の皮膚に適用することが好ましい。洗浄直後の皮膚とは、洗浄した直後の何も塗布等していない素肌のことを指す。例えば、本発明を顔に使用する場合は、洗顔後、化粧水や乳液等の基礎化粧料や、ファンデーション等のメーキャップ化粧料を塗布する前にフィルム状外用剤組成物を適用する。
本発明のフィルム状外用剤組成物は、皮膚上において組成物に水を加えることによって使用することができる。水の添加方法は特に限定されず、皮膚に貼付したフィルム状外用剤組成物に水を加えても、水で湿らせた皮膚に、フィルム状外用剤組成物を貼付してもよい。また、掌上等でフィルムに水を加え、その後適用部に塗布してもよい。フィルム状外用剤組成物に水が添加されると、フィルムを構成する水溶性成分が徐々に水に溶け出し、最終的にフィルムが完全に溶解して液状ないしゲル状の組成物となる。液状ないしゲル状となった組成物は、アミノ酸系薬効成分を濃厚に含んでおり、美容液等の液状化粧料を用いるよりも効率的に該製剤薬効成分の効果を皮膚にもたらし得る。なお、液状ないしゲル状となった組成物は、必要に応じて適用部分に塗布する、シート状基材等で覆ってパックする、あるいはそのまま放置するなどして、含有成分を皮膚へ供給することができる。
なお、フィルムに加える水は、フィルム状外用剤組成物を溶解し得る程度の水分を含むものであれば、水以外の成分を含む液状組成物、例えば、化粧水や美容液等であってもよい。
フィルムに添加される水の量は、特に制限は無いものの、フィルム状外用剤組成物が全体に湿潤し、水溶性成分が溶解可能な程度とすることが好ましい。具体的には、フィルム状外用剤組成物の体積の1〜10%程度の水が添加されることが好ましい。
【0020】
本発明のフィルム状外用剤組成物に水を添加し、溶解させるための手段は制限されないが、特に、増粘性多糖類によるゲルシートの使用が好ましい。前記ゲルシートは、水分を増粘性多糖類でゲル化した組成物をシート状に成形したものを指し、通常、皮膚に貼付した本発明のフィルム状外用剤組成物を覆うように上から重ねて使用する。このように使用することで、ゲルシートから次第に染み出す水分によって、フィルム状外用剤組成物を溶解させることができる。さらに、溶解した外用剤組成物は、ゲルシートと皮膚の間に封ぜられた状態に保持しておくことで、容易に効率よくフィルムを溶解させることができる。
なお、前記ゲルシートとしては、例えば、カラギーナン10〜80質量%、ローカストビーンガム5〜50質量%、キサンタンガム5〜50質量%、マンナン5〜50質量%からなる組成物を、水溶液に1〜6質量%の濃度で配合して得られるものが好適に使用できるが、フィルム状外用剤組成物に十分な水分を与え得るものであれば、その組成や形状は限定されない。
さらに、半透明〜透明なゲルシートを用いれば、フィルム状外用剤組成物の溶解状態を容易に確認することができる。
【0021】
また、本発明に係るフィルム状外用剤組成物は、配合するアミノ酸系薬効成分の効果に応じ、毛穴収縮フィルムや保湿フィルムなどの製品形態で用いることができる。また、前記組成物は、本発明の効果が損なわれない限り、上記のようなアミノ酸系薬効成分以外の薬剤を配合し、化粧用及び医療用の各種フィルム又は薬効成分として好適に使用できる。このような本発明の製品形態としては、例えば、肌荒れ改善フィルム、しわ伸ばしフィルム、角質除去フィルム、毛穴対策用フィルム、ボディー用保湿剤、ボディー用美白剤、日焼けトリートメント剤、創傷・やけど保護フィルム、かゆみ止め薬、にきび・化膿防止薬などが挙げられる。
また、本発明は、フィルムを適用する皮膚表面及びその周辺に対して有効成分を直接作用させる以外に、適用部位から離れた部位をターゲットとして薬剤等を経皮投与することを目的とした使用も包含するものである。
【0022】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量%で表す。
【実施例】
【0023】
下記表1に記載の組成から製造した各試験例のフィルム状外用剤組成物(毛穴対策用フィルム)について、5名のパネルによる実使用試験を行い、毛穴に対する効果感・使用時のべたつきのなさ・使用後の肌のつるつる感に基づく使用性についてそれぞれ下記基準に従って採点・評価を行った。結果を表1に示す。
なお、各試験例のフィルム状外用剤組成物の使用方法は次のとおりとした。
<フィルム状外用剤組成物の使用方法A>
洗顔後すぐにフィルム(3cm角)を顔に貼付し、フィルムへ少量の水を加えて溶解させ、垂れ落ちない程度の液状とした。溶解して液状となった成分を肌に塗り広げて馴染ませた。
【0024】
使用性(毛穴に対する効果感・使用時のべたつきのなさ・使用後の肌のつるつる感の各項目)の評価基準
[評価点基準]
5点:非常に優れている
4点:優れている
3点:普通
2点:劣る
1点:非常に劣る
[評価基準]
◎:5名のパネルによる評価点の合計点が21点以上
○:5名のパネルによる評価点の合計点が16〜20点
△:5名のパネルによる評価点の合計点が6〜15点
×:5名のパネルによる評価点の合計点が5点以下
【0025】
経時安定性
サンプルを45℃にて1ヶ月保存した後の組成物の外観を下記基準で評価した。なおフィルム状外用剤組成物の場合は乾燥フィルムの状態で保存した。
○:組成物に変色、変臭、結晶化のいずれも認められない。
△:組成物に変色、変臭、結晶化のいずれかが若干認められる。
×:組成物に変色、変臭、結晶化のいずれかが著しく認められる。
【0026】
【表1】

(フィルム状外用剤組成物の製造方法)
水にヒドロキシプロピルメチルセルロースを入れて混合し、水溶液とした。さらに、前記水溶液に残りの成分を添加し、混合して均一な溶液とした。前記溶液を基材に塗布し、乾燥させて厚さ10μmのフィルム状の組成物を得た。
【0027】
また、下記表2に記載の組成から常法により製造した美容液ついても、同様に5名のパネルによる実使用試験を行い、毛穴に対する効果感・使用時のべたつきのなさ・使用後の肌のつるつる感に基づく使用性、及び経時安定性についてそれぞれ上記基準に従って採点・評価を行った。結果を表2に示す。
<美容液の使用方法>
洗顔後すぐに美容液を適量顔に塗り広げて馴染ませた。
【0028】
【表2】

【0029】
上記表1に示すとおり、グリシルグリシンを0.01〜10質量%配合したフィルム状外用剤組成物(試験例1−2〜1−6)は、少量の水で溶解させることで濃厚なグリシルグリシン溶液として使用することができ、いずれも優れた使用感(毛穴に対する効果感、使用時のべたつきのなさ、使用後のつるつる感)を示した。また、保存試験後もフィルムに変色、変臭、結晶化は生じず、経時安定性においても良好な結果を示した。
特に、グリシルグリシンの配合量を0.05〜5質量%とした試験例1−3〜1−5においては、毛穴に対する効果感と使用時のべたつきのなさの両評価が向上した。
一方、グリシルグリシンの配合量を0.001質量%とした試験例1−1では、毛穴に対する効果感が不十分であり、15質量%配合した試験例1−7ではべたつきが生じ、経時安定性も著しく低下した。
また、保湿剤であるジプロピレングリコールの配合量を増加させた試験例1−8では、使用後のつるつる感が改善された。
【0030】
これらに対し、表2に示すグリシルグリシン配合美容液の場合、経時安定性を維持できる量でグリシルグリシンを配合した試験例1−9では毛穴に対する効果感が不十分となり、グリシルグリシンを表1のフィルムの溶解液と同程度になるように高配合した試験例1−10では、使用感は改善したものの、べたつきが生じ、さらに経時で著しい変色、変臭、結晶化が認められた。
以上のことから、本発明にかかるフィルム状外用材組成物は、アミノ酸系製剤を含む組成物をフィルム状とすることにより、組成物の経時安定性を損ねることなく、アミノ酸系薬効成分を高濃度に含む美容液(フィルム溶液)をもたらし得ることが明らかである。
【0031】
上記表1に示した「試験例1−4」の組成から製造した各試験例のフィルム状外用剤組成物について、5名のパネルによる実使用試験を行い、使用感(使用後のしっとり感とその持続)とフィルム溶解時の操作性を採点・評価した。使用感及びフィルム溶解時の操作性は下記基準に従って採点・評価を行った。結果を表3に示す。
なお、各試験例のフィルム状外用剤組成物の使用は、上記使用方法A及び下記使用方法Bとでそれぞれ行った。
<フィルム状外用剤組成物の使用方法B>
洗顔後すぐにフィルム(3cm角)を顔に貼付し、さらに下記組成によるゲルシートをフィルムが完全に覆われるように貼付した。ゲルシート(7cm角)から滲出する水分によってフィルムが完全に溶解したら、ゲルシートを除去し、溶解したフィルム成分を手で肌に馴染ませた。
【0032】
ゲルシートの組成
(成分) (質量%)
(1)ローカストビーンガム 0.5
(2)キサンタンガム 0.5
(3)マンナン 0.3
(4)カラギーナン 0.6
(5)グリセリン 5.0
(6)1,3−ブチレングリコール 3.0
(7)ジプロピレングリコール 5.0
(8)PEG−60水添ヒマシ油 0.3
(9)防腐剤 適 量
(10)香料 適 量
(11)水 残 余
(ゲルシートの製造方法)
(11)に(5)〜(7)、(9)を溶解した水溶液に(8)及び(10)の混合液を加えて撹拌した後、(1)〜(4)を添加混合してゲル状組成物とし、これをシート状に成形して冷却した。
【0033】
使用性(使用後のしっとり感とその持続)及びフィルム溶解時操作性の評価基準
[評価点基準]
5点:非常に優れている
4点:優れている
3点:普通
2点:劣る
1点:非常に劣る
[評価基準]
◎:5名のパネルによる評価点の合計点が21点以上
○:5名のパネルによる評価点の合計点が16〜20点
△:5名のパネルによる評価点の合計点が6〜15点
×:5名のパネルによる評価点の合計点が5点以下
【0034】
【表3】

【0035】
上記表3に示すように、上からゲルシートを被せるだけでフィルムを溶解させることのできる使用方法Bは、適用部あるいは掌上でフィルムに直接水を加えて溶解させるという使用方法Aに比べ、簡便で垂れ落ちなどもなく、操作性が非常に高かった。また、水分を多量に含むゲルシートを用いることにより、使用後のしっとり感とその持続の向上が認められた。これらのことから、本発明にかかるフィルム状外用剤組成物は、水分を増粘性多糖類でゲル化したゲルシートによりフィルムを溶解させて使用することが好ましい。
【0036】
以下に、本発明のフィルム状外用剤組成物の製造に係る処方例を示すが、これらは単なる一例であって本発明を限定するものではない。配合量は全て質量%を示す。
<処方例1:毛穴ケアフィルム>
(成分) (質量%)
水 残 余
1,3−ブチレングリコール 5
ジプロピレングリコール 5
ヒドロキシプロピルセルロース 60
ヒドロキシエチルウレア 0.1
PEG−60水添ヒマシ油 1.5
グリシルグリシン 1.5
エデト酸二ナトリウム 適 量
防腐剤 適 量
(製造方法)
水にヒドロキシプロピルセルロースを入れて混合し、水溶液とした。さらに、前記水溶液に残りの成分を添加し、混合して均一な溶液とした。前記溶液を基材に塗布し、乾燥させて毛穴ケアフィルムを得た。
【0037】
<処方例2:肌荒れ改善フィルム>
(成分) (質量%)
水 残 余
1,3−ブチレングリコール 5
ジプロピレングリコール 5
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 60
ヒドロキシエチルウレア 0.1
PEG−60水添ヒマシ油 1.5
グリシルグリシン 1.5
トラネキサム酸 1.0
エデト酸二ナトリウム 適 量
防腐剤 適 量
(製造方法)
水にヒドロキシプロピメチルルセルロースを入れて混合し、水溶液とした。さらに、前記水溶液に残りの成分を添加し、混合して均一な溶液とした。前記溶液を基材に塗布し、乾燥させて肌荒れ改善フィルムを得た。
【0038】
<処方例3:毛穴ケアフィルム>
(成分) (質量%)
水 残 余
1,3−ブチレングリコール 5
ジプロピレングリコール 5
メチルセルロース 60
ヒドロキシエチルウレア 0.1
PEG−60水添ヒマシ油 1.5
d−グルタミン酸 0.5
レチノール 0.01
エデト酸二ナトリウム 適 量
防腐剤 適 量
(製造方法)
水にメチルセルロースを入れて混合し、水溶液とした。さらに、前記水溶液に残りの成分を添加し、混合して均一な溶液とした。前記溶液を基材に塗布し、乾燥させて毛穴ケアフィルムを得た。
【0039】
<処方例4:毛穴ケアフィルム>
(成分) (質量%)
水 残 余
1,3−ブチレングリコール 5
ジプロピレングリコール 5
メチルセルロース 60
ヒドロキシエチルウレア 0.1
PEG−60水添ヒマシ油 1.5
グリシルグリシン 1.5
サリチル酸 0.1
エデト酸二ナトリウム 適 量
防腐剤 適 量
(製造方法)
水にメチルセルロースを入れて混合し、水溶液とした。さらに、前記水溶液に残りの成分を添加し、混合して均一な溶液とした。前記溶液を基材に塗布し、乾燥させて毛穴ケアフィルムを得た。
【0040】
<処方例5:保湿フィルム>
(成分) (質量%)
水 残 余
1,3−ブチレングリコール 5
ジプロピレングリコール 5
メチルセルロース 60
ヒドロキシエチルウレア 0.1
PEG−60水添ヒマシ油 1.5
グリシルグリシン 1.5
グリチルリチン酸ジカリウム 0.01
エデト酸二ナトリウム 適 量
防腐剤 適 量
(製造方法)
水にメチルセルロースを入れて混合し、水溶液とした。さらに、前記水溶液に残りの成分を添加し、混合して均一な溶液とした。前記溶液を基材に塗布し、乾燥させて保湿フィルムを得た。
【0041】
<処方例6:肌荒れ改善フィルム>
(成分) (質量%)
水 残 余
1,3−ブチレングリコール 5
ジプロピレングリコール 5
プルラン 60
ヒドロキシエチルウレア 0.1
PEG−60水添ヒマシ油 1.5
グリシルグリシン 1.5
トラネキサム酸 1.0
エデト酸二ナトリウム 適 量
防腐剤 適 量
(製造方法)
水にプルランを入れて混合し、水溶液とした。さらに、前記水溶液に残りの成分を添加し、混合して均一な溶液とした。前記溶液を基材に塗布し、乾燥させて肌荒れ改善フィルムを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のアミノ酸系薬効成分と、皮膜形成剤と、を含有することを特徴とするフィルム状外用剤組成物。
【請求項2】
アミノ酸系薬効成分がグリシルグリシン及び/又はd−グルタミン酸であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム状外用剤組成物。
【請求項3】
グリシルグリシン及び/又はd−グルタミン酸を0.01〜10質量%含有することを特徴とする請求項2に記載のフィルム状外用組成物。
【請求項4】
皮膜形成剤として水溶性のセルロース誘導体を40〜70質量%含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム状外用剤組成物。
【請求項5】
水を加えて使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフィルム状外用剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のフィルム状外用剤組成物を覆うように、ゲルシートを上から重ねることを特徴とするフィルム状外用剤組成物の使用方法。

【公開番号】特開2012−214456(P2012−214456A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−71137(P2012−71137)
【出願日】平成24年3月27日(2012.3.27)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】