説明

フィルム

【課題】ヒートシール性と引き裂き性の特性をバランスよく兼ね備えた横一軸延伸したフィルム及びこのフィルムを用いて袋を作成することにより、容易に真っ直ぐに開封でき、さらに開封した際の切り口もきれいな袋を提供する。
【解決手段】高密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンを含む樹脂組成物を横一軸延伸したフィルムであり、樹脂組成物が、高密度ポリエチレン100質量部に対して直鎖状低密度ポリエチレンを10〜60質量部を含むフィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系の横一軸延伸したフィルムとその用途に関する。尚、本発明の配合組成を示す「部」の単位は、特に断らない限り質量基準で表示する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン系樹脂からなるフィルムは、食品や各種の部品等の包装用に広く用いられている。これらのフィルムを包装用に用いる場合、これらのフィルムは、袋状に加工されて、その一部をヒートシールして包装用の袋として用いられる。このような包装袋に用いるフィルムには、輸送や保管時に内容物を保護するために必要な程度の機械的強度や耐衝撃性に加えて、ヒートシール適正があることが要求される。一方で、近年はこれらの袋が、はさみやナイフ等を用いなくても手で容易に開封できることが求められており、その一つの手段として、フィルムに一定方向に適度の引き裂き性を与える為に1軸延伸する方法がある。しかしながら、一般にポリエチレン系樹脂フィルムを1軸方向に延伸したフィルムでは、特定の方向への適度の引き裂き性は有するものの、このフィルムをヒートシールで融着させようとすると、融着する以前にフィルムの収縮が起こり、良好な袋を得ることが困難であった。このような問題点を克服するために、例えば特許文献1に記載されているように、基材フィルムと縦一軸延伸フィルムの積層体の表面にシーラント層を形成する方法が行われている。しかしながら、このようなフィルムはその構成が複雑でありコストも高いので、単層のフィルムであって、ヒートシール適正も有し、且つ特定の方向に適度の引き裂き性を有するポリエチレン系樹脂からなるフィルムが求められていた。
【特許文献1】特開2003−034008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、ヒートシール性と引き裂き性の特性をバランスよく兼ね備えたポリエチレン系のフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、高密度ポリエチレンに直鎖状低密度ポリエチレンを混合した樹脂組成物からなるフィルムを、横1軸方向に延伸することによって、ヒートシール性と引き裂き性の特性をバランスよく兼ね備えたフィルムが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0005】
即ち、本発明は、高密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンを含む樹脂組成物を横一軸延伸したフィルムである。さらに、樹脂組成物が、高密度ポリエチレン100質量部に対して直鎖状低密度ポリエチレンを10〜60質量部を含むことが好ましい。又、ヒートシールが可能であるフィルムであり、そのフィルムを用いた袋である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンを含む樹脂組成物を横一軸延伸することで、単層のフィルムであっても、ヒートシール性と引き裂き性の特性のバランスに優れ、かつ幅方向に引裂き可能な軟包装用袋を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のフィルムは、高密度ポリエチレン(以下「HDPE」と略記する)に直鎖状低密度ポリエチレン(以下「LLDPE」と略記する)を混合したポリエチレン系樹脂組成物からなる。HDPEを単独で用いると、後述する横延伸フィルムにしたときに、ヒートシール性が著しく困難となる。一方で、LLDPEを単独で用いると、横延伸してもヒートシール性は良好であるが、横延伸方向への引き裂き性が著しく劣る。
【0008】
本発明で延伸フィルムを横一軸延伸としたのは、例えば内容物が長物の場合、縦一軸延伸フィルムの包装袋であると、引裂いた場合縦方向、即ち内容物の長手方向にしか引裂けない。このような場合、内容物が袋からとび出してしまい都合が悪い。しかしながら、横一軸延伸フィルムの包装袋の場合、横に引裂けるため長物の包装袋でも内容物を少しずつ押し出しながら使用できたり、内容物の残りに合わせて少しずつ袋を横に切断しながら使用でき、非常に都合が良いからである。
【0009】
本発明で用いるHDPEは、融点がDSC法の測定で126〜136℃の範囲であって、密度が0.93〜0.97g/cm3 のの範囲でメルトフローレート(MFR)が、JISK6922−2に規定される温度190℃、荷重2.16kgの測定条件下において、好ましくは0.03〜5.0(g/10分)であり、さらに好ましくは0.1〜2.0である。MFRが0.03未満では、加熱溶融しても殆ど流動性を示さなくなるため成膜性が悪くなることがあり、逆にMFRが2.0を超えると流動性が大きすぎて成膜が困難になる場合がある。
【0010】
本発明で用いるLLDPEは、エチレンとブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等との共重合体であり、融点がDSC法の測定で115〜125℃であって、密度が0.90〜0.95g/cm3の範囲でメルトフローレート(MFR)が、JISK6922−2に規定される温度190℃、荷重2.16kgの測定条件下において、好ましくは0.05〜10.0(g/10分)であり、さらに好ましくは0.05〜5.0である。MFRが0.1未満では、加熱溶融しても殆ど流動性を示さなくなるため成膜性が悪くなることがあり、逆にMFRが5.0を超えると流動性が大きすぎて成膜が困難になる場合がある。
【0011】
HDPEとLLDPEの配合比としては、HDPE100質量部に対して、LLDPEを10〜60質量部含有することが好ましく、更に好ましくは20〜40質量部である。LLDPEが10質量部未満では、十分なヒートシール性が得られない恐れがあり、60質量%を越えると、十分な引き裂き性が得られない場合がある。
【0012】
本発明のフィルムは以下のようにして得ることができる。まず前記樹脂組成物を用いて未延伸フィルムを形成する。未延伸フィルムの形成方法としては、前記の原料樹脂の混合物を押出機に供給し、溶融し、フィルムダイを通して押し出し、成形機で冷却することにより、厚みが約20〜1400ミクロンの範囲である未延伸フィルムを成形し、100℃〜140℃で、一定幅に横一軸延伸する。本発明においては、成形された未延伸フィルムを横一軸延伸することにより、引き裂き特性に優れたフィルムを得ることができる。
【0013】
本発明のフィルムの横一軸延伸倍率は、2〜16倍、好ましくは6〜14倍の範囲である。延伸倍率が2倍未満では充分な分子配向が得られず、延伸方向に直線的に引き裂けなくなる。一方、16倍を超えると延伸が困難になる。又、延伸されたフィルムの厚さは、5〜100ミクロン、好ましくは10〜60ミクロンの範囲である。厚さが、5ミクロン未満ではフィルムとして必要な強度がなくなり、一方、100ミクロンを超えるとフィルムを引裂くことが困難になる場合がある。
【0014】
具体的な延伸工程は、従来公知の方法が使用できる。例えば、テンター延伸法により延伸することが考えられるが、この場合、延伸温度は100℃〜140℃であり、好ましくは110℃〜130℃で前記延伸倍率の範囲で横延伸する。
【0015】
横延伸後には、寸法を安定させるために、例えば、熱処理(ヒートセット)を100〜165℃で1〜60秒間、施すことが考えられる。熱処理を行うことによって、良好なヒートシール性を有する延伸フィルムが得られるからである。
【0016】
また、縦方向には実質的に延伸しないが、引裂きの方向性が失われないように1〜3倍の範囲で縦延伸しても構わない。
【0017】
本発明のフィルムは、前記のようにヒートシールすることによって袋として用いられる。ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シールなどの公知の方法で行うことができるが、インパルスシールではフィルムの収縮等が小さく、特に優れたヒートシール性が得られる。本発明のフィルムは、は横延伸された包装用の袋として用いる場合、ヒートシール強度が15N/15mm以上であることが好ましい。
【0018】
このようにして得られた、横一軸延伸フィルムの包装袋は、袋の幅方向に対して易開封性があるため、内容物が長物の場合特に使い勝手がよくなる。即ち、内容物の残りの長さに応じて少しずつ袋を切断することができるからである。縦一軸延伸フィルムであると、袋の長さ方向にしか易開封性がないため、このような場合、袋を縦にしか開封できず内容物が袋からとび出してしまい都合が悪い。また、袋の内容物は長物でなくてももちろんかまわない。内容物がどのようなものでも同じように扱うことができる。
【実施例】
【0019】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0020】
【表1】

【0021】
表1において「可能ヒートシール温度」とは、横一軸延伸したフィルムを、ヒートシールテスター(テスター産業社製 TP―701)を用いて、シール圧力0.2MPa、シール幅10mm、シール時間0.5秒で各温度についてヒートシールし、試験片幅15mmのフィルムを引張速度300mm/minで引張ったときのフィルムの破壊状態を温度毎に、以下の基準で評価した。
○ フィルムが材料破壊を起こし、シール部の最大強度が15N/15mm以上のもの。
△ 材料破壊が不十分だったもの。
× 材料破壊せずにヒートシール部分から剥がれたもの。
【0022】
表1において、「引裂き性」とは、フィルムを幅方向に手で引裂き、以下の基準で目視評価した。
○ フィルムが指先のひねりで容易に直線状に切れたもの。
△ 指先の爪をたてることによって切れたもの。
× 指先の爪を立ててもフィルムが伸びて切れず切り傷を入れることによって切れるようになるもの。
【0023】
(実施例1)高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製 ノバテックHD HF313)100質量部に、直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製 ノバテックLL UF421)10質量部をドライブレンドしたものを押出機に供給し、溶融し、フィルムダイを通して押し出し、成形機で冷却することにより、厚みが約200ミクロンの未延伸フィルムを成形した。この未延伸フィルムを120℃のテンター内で10倍に横延伸し、20ミクロンの横一軸延伸フィルムを得た。
【0024】
(実施例2)前記高密度ポリエチレン100質量部に、前記直鎖状低密度ポリエチレン20質量部をドライブレンドしたものを用いた以外、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
【0025】
(実施例3)記高密度ポリエチレン100質量部に、前記直鎖状低密度ポリエチレン40質量部をドライブレンドしたものを用いた以外、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
【0026】
(実施例4)前記高密度ポリエチレン100質量部に、前記直鎖状低密度ポリエチレン60質量部をドライブレンドしたものを用いた以外、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
【0027】
(比較例1)前記高密度ポリエチレンのみを用いた以外、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
【0028】
(比較例2)前記直鎖状低密度ポリエチレンのみを用いた以外、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
【0029】
本発明の横一軸延伸したフィルムは、インパルスシール又はヒートシールが可能であり、又、引き裂き性に優れており、例えば、医薬品、ジュース類、ゼリー状飲料、栄養ドリンク剤、飲料水、お茶、コーヒー飲料、まんじゅう、どら焼き、ケーキ等の洋菓子、スナック菓子、おにぎり、カップ麺、調味料等の袋に好ましく使用することができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
高密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンを含む樹脂組成物を横一軸延伸したフィルム。
【請求項2】
樹脂組成物が、高密度ポリエチレン100質量部に対して直鎖状低密度ポリエチレンを10〜60質量部を含む請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
ヒートシールが可能である請求項1又は請求項2に記載のフィルム。
【請求項4】
請求項3に記載したフィルムを用いた袋。


【公開番号】特開2006−176620(P2006−176620A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−370720(P2004−370720)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】