説明

フィードブロックおよび多層延伸フィルムの製造方法

【課題】エッジ単層部との境界付近に生じる特異で局所的、シャープな厚み斑による延伸時の切断を防止するフィルムの製造方法および製造装置の提供。
【解決手段】樹脂Aと樹脂Bとを、溶融状態で合流させ積層体Cとし、その巾方向端部に、樹脂Aを溶融状態でエッジ単層部として合流させエッジ単層部付き積層体Dを形成する際に、エッジ単層部として合流させる樹脂Aの流路巾(エッジ流路巾)が、一方向に複数段階以上で漸増する領域を有するフィードブロックおよびそれを用いたフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多層延伸フィルムの製造に用いるフィードブロックとそれを用いた多層延伸フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂を溶融状態でダイから押し出して未延伸シートとし、巾方向に延伸して延伸フィルムとする場合、巾方向に延伸された延伸フィルムの幅方向の両端(エッジ)は、通常トリミングされる。
そこで、特許文献1、2、3などでは、トリミングされるエッジ部分に、製品部分とは異なる、例えば比較的安価な他の樹脂からなるエッジ単層部を設けて、製品部分の生産性を向上させることが提案されている。
【0003】
また、製品部分が多層フィルムである場合、特許文献4では、マルチマニーホールドダイを用い、多層フィルムの幅方向の両端にあるエッジ部分の各層の吐出量を変化させて、エッジ部分に優先的に単一の樹脂を存在させることにより、トリミングされるエッジ部分を回収して、再度利用しやすいようにすることが提案されている。また、特許文献5では、多層フィルムの両端のエッジ部分に単一樹脂からなるエッジ単層部をフィードブロックで付加することが提案されている。
このように、フィルムを製膜する場合、トリミングされるエッジ部分を安価な樹脂にしたり、回収して使用することで、フィルムの生産性を向上させることが検討されてきている。
【0004】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献4に記載のマルチマニーホールドダイを用いるのでは、製品部である多層フィルムの層数ごとに用意する必要があり、また生産のたびに、幅方向のダイのリップ角度を調整する必要があり、決して生産性を向上できるものではなかった。
【0005】
そこで、製品部分が多層フィルムで、その両端のエッジ部分に特許文献1〜3や5に記載のエッジ単層部を、多層フィルムを構成する樹脂の一つで形成しようとしたとき、中央の製品部分である多層フィルムの部分とエッジ単層部との境界付近に、特異で局所的、シャープな厚み斑が生じることが判明した。そして、この局所的厚み斑が存在するために、巾方向に高度の延伸を施して厚みの薄いフィルムを得ようとすると、前記局所的厚み斑の部分に応力集中が生じ、延伸後のフィルムの巾方向の厚み斑がひどくなったり、ひどい場合は切断することが判明した。これは、延伸時に厚み斑の厚い部分は伸び難くその周辺は逆に伸びやすく過度の延伸となり、極端に薄い部分が生じこの部分から切断するためと考えられる。そして、この局所的厚み斑はエッジに回収フィルムを用いる場合は、製品多層部とエッジ部で溶融樹脂の流動特性が大きく異なるため厚み斑が生じるためと推定される。つまりダイから押し出された溶融シートは流動特性の違いからエッジ単層部と製品部との境界付近でネックインする量が異なり、換言すれば流動してシート化する際の軌跡が境界付近で異なり、これにより厚み斑が生じると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−207119号公報
【特許文献2】特開2004−181753号公報
【特許文献3】特開2006−159803号公報
【特許文献4】特開昭55−28825号公報
【特許文献5】特開2009−56797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前述のように従来技術では解決できなかった、エッジ単層部と製品部分である多層フィルムの境界付近に生じる特異で局所的におこるシャープな厚み斑による延伸時の切断を防止できるフィードブロックとそれを用いた多層延伸フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決しようと鋭意研究した結果、特許文献1〜3および5のようなフィードブロックにてエッジ単層部を設ける際に、エッジ単層部として合流される樹脂の流路が、特許文献1〜3および5のようなエッジ単層部の流路断面が多層延伸フィルムの厚み方向に対して対称な構造では、エッジ単層部と製品部分である多層フィルムの境界部分がシャープになり、一方非対称にするとき前記境界部分をブロードにでき、結果として前述の局所的に起こるシャープな厚み斑を抑制できることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
かくして本発明によれば、以下の(A)〜(F)のフィードブロックおよび以下の(G)〜(N)の多層延伸フィルムの製造方法が提供される。
(A) 単層ダイの上流側に配されるフィードブロックであって、
樹脂Aと樹脂Bとを、溶融状態で合流させ積層体Cを形成させる第1の合流部と、前記積層体Cの少なくとも一方の巾方向端部に、樹脂Aを溶融状態でエッジ単層部として合流させエッジ単層部付き積層体Dを形成させる第2の合流部とを有し、
第2合流部におけるエッジ単層部として合流させる樹脂Aの流路について、樹脂Aの進行方向に直交する断面(エッジ流路断面)をみたとき、エッジ流路断面の巾(エッジ流路巾)が、積層体Cの厚み方向に沿って一方向に漸増する領域を有するフィードブロック。
(B) 前記漸増するエッジ流路巾は、少なくとも積層体Cの樹脂Bと接する領域において、連続的に漸増する上記(A)記載のフィードブロック。
(C) 前記漸増するエッジ流路巾は、最小エッジ流路巾(Wa)、最大エッジ流路巾(Wb)および平均エッジ流路巾(Wm)とが、以下の関係を満足する上記(A)記載のフィードブロック。
0.3≦(Wm−Wa)/(Wb−Wa)≦0.7
(ここで、Wmは、エッジ流路断面の断面積を、エッジ流路断面の巾方向に直交する方向の最大長さ(エッジ流路高さ:Hg)で割った値である。)
(D) 最小エッジ流路巾(Wa)と最大エッジ流路巾(Wb)とが、以下の関係を満足する上記(A)記載のフィードブロック。
0.05≦Wa/Wb≦0.9
(E) 最小エッジ流路巾(Wa)および最大エッジ流路巾(Wb)と、エッジ流路高さ(Hg)とが、以下の関係を満足する上記(A)記載のフィードブロック。
0.05≦(Wb−Wa)/Hg≦0.5
(F) 前記漸増するエッジ樹脂流路巾が、溝を設けた円形のピン部材によって形成される上記(A)記載のフィードブロック。
(G) 単層ダイの上流側に請求項1〜6のいずれかに記載のフィードブロックを配し、樹脂Aと樹脂Bとを溶融状態で合流させ、樹脂Aと樹脂Bの割合が5:95〜40:60の積層体Cを形成し、前記積層体Cの少なくとも一方の巾方向端部に、樹脂Aを溶融状態でエッジ単層部として合流させエッジ単層部付き積層体Dを形成する工程と、
得られた積層体Dをシート状にダイから押し出して未延伸シートとする工程と、
得られた未延伸状態の積層体Dを製膜方向およびその厚み方向に直交する方向(巾方向)に延伸し、エッジ単層部をトリミングして多層延伸フィルムとする工程とを有する多層延伸フィルムの製造方法。
(H) 各層を形成するために用いる樹脂のそれぞれの固有粘度を測定したとき、固有粘度の最大値と最小値の差が0.010〜0.085である上記(G)記載の多層延伸フィルムの製造方法。
(I) 前記最小の固有粘度を示す樹脂が、樹脂Aである上記(H)記載の多層延伸フィルムの製造方法。
(J) 前記樹脂Aの少なくとも一部に、エッジ単層部をトリミングした回収樹脂を用いる上記(G)記載の多層延伸フィルムの製造方法。
(K) 前記多層延伸フィルムの厚みが1.0〜10.0μmである上記(G)記載の多層延伸フィルムの製造方法。
(L) 樹脂Aおよび樹脂Bがエチレンナフタレートまたはまたはエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる繰り返し成分とする上記(G)記載の多層延伸フィルムの製造方法。
(M) 前記巾方向の延伸の延伸倍率が2.5〜8.0の範囲である上記(G)記載の多層延伸フィルムの製造方法。
(N) 前記未延伸シートの製膜方向に直交する断面をエッジ単層部から巾方向における中心部の位置までみたとき、樹脂Bが存在してから未延伸シートの巾方向における中心部の位置の樹脂Bと同じになるまでの巾(エッジ部層構成遷移領域の巾)が15〜200mmの範囲である上記(G)記載の多層延伸フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、前述のシャープな厚み斑をブロードでマイルドにすることにより延伸時の切断を防止でき、歩留まりが高く低コストのフィルムの生産が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一つの実施形態を例示した多層フィルムの押出装置のうち押出機からキャスティングドラムまでを示す図である。
【図2a】本発明の一つの実施形態を例示した積層体Cが3層のフィードブロックの積層体Cの流れ方向および厚み方向に平行な方向の断面図である。
【図2b】本発明の一つの実施形態を例示した積層体Cの巾方向の両端にエッジ単層部をもけるフィードブロックの積層体Cの流れ方向および巾方向に平行な方向の断面図である。
【図3a】本発明の一つの実施形態を例示した図2のF−F断面における3層フィルム用の流路の断面図である。
【図3b】本発明の一つの実施形態を例示した図2のF−F断面における2層フィルム用の流路の断面図である。
【図3c】本発明の一つの実施形態を例示した図2のF−F断面における50層フィルム用の流路の断面図である。
【図4a】図2のF−F断面における従来の技術の流路の断面図である。
【図4b】図2のF−F断面における従来の技術の流路の断面図である。
【図5】本発明の一つの実施形態を例示した図2のF−F断面における2層フィルム用の流路の断面図である。
【図6】(a)本発明により得られた未延伸シートの厚み斑である。 (b)図6(a)の拡大図である。
【図7】(a)従来の技術により得られた未延伸シートの厚み斑である。 (b)図7(a)の拡大図である。
【図8】(a)従来の技術により得られた3層エッジ単層の未延伸シート断面の層構成である。 (b)本発明により得られた2層エッジ単層の未延伸シート断面の層構成である。 (c)本発明により得られた3層エッジ単層の未延伸シート断面の層構成である。 (d)従来の技術により得られた2層エッジ単層の未延伸シート断面の層構成である。 (e)本発明により得られた2層エッジ単層の未延伸シート断面の層構成である。 (f)従来の技術により得られた50層エッジ単層の未延伸シート断面の層構成である。 (g)本発明により得られた50層エッジ単層の未延伸シート断面の層構成である。
【図9】本発明の一つの実施形態を例示したピン部材の溝の斜視図である。
【図10】本発明の一つの実施形態を例示した図2のF−F断面におけるエッジ流路の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のひとつは、単層ダイの上流側に配されるフィードブロックであって、樹脂Aと樹脂Bとを、溶融状態で合流させ積層体Cを形成させる第1の合流部と、前記積層体Cの少なくとも一方の巾方向端部に、樹脂Aを溶融状態でエッジ単層部として合流させエッジ単層部付き積層体Dを形成させる第2の合流部とを有し、第2合流部におけるエッジ単層部として合流させる樹脂Aの流路について、樹脂Aの進行方向に直交する断面(エッジ流路断面)をみたとき、エッジ流路断面の巾(エッジ流路巾)が、積層体Cの厚み方向に沿って一方向に漸増する領域を有するフィードブロックであり、もうひとつの本発明は、単層ダイの上流側に上記フィードブロックを配し、樹脂Aと樹脂Bとを、溶融状態で合流させ樹脂Aと樹脂Bの割合が5:95〜40:60の積層体Cを形成し、前記積層体Cの少なくとも一方の巾方向端部に、樹脂Aを溶融状態でエッジ単層部として合流させエッジ単層部付き積層体Dを形成する工程と、得られた積層体Dをシート状にダイから押し出して未延伸シートとする工程と、得られた未延伸状態の積層体Dを製膜方向およびその厚み方向に直交する方向(巾方向)に延伸し、エッジ単層部をトリミングして多層延伸フィルムとする工程とを有する多層延伸フィルムの製造方法である。
【0013】
なお、本発明における樹脂Aとは、製品部とエッジ単層部の両方に使用されることからエッジ単層部用樹脂と言え、また樹脂Bとは製品部に使用され、エッジ単層部に使用されないことから、非エッジ単層部用樹脂と言える。また、積層体Dは前述の通り積層体Cにエッジ単層部を付加したものであり、そういった観点から、積層体Cは積層体Dからエッジ単層部を除いた積層体を意味する。さらにまた、説明の便宜上、特に断りの無い限り、積層体Cの樹脂Aと樹脂Bの界面に直交する方向で、後述の図中においてzで示される方向を厚み方向と称し、厚み方向における距離を「高さ(H)」と称する。また、樹脂AまたはBの進行方向で、後述の図中でにおいてyで表される方向を、製膜方向、縦方向または進行方向と称し、製膜方向における距離を「長さ(L)」と称する。さらにまた、前記厚み方向および製膜方向に直交する方向で、後述の図中においてxで表される方向を、巾方向または横方向と称し、巾方向における距離を「巾(W)」と称する。
【0014】
以下、本発明を、まず図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一つの実施形態を例示した押出機からキャスティングドラムまでを示している。
図1中の1は樹脂Aの上流側に位置する押し出し機であり、樹脂Aは押し出し機1で溶融状態にされたのち、図示を省略するが、ギアポンプ、フィルターなどを介してポリマーパイプ2を通り、フィードブロック5へと流れる。図1中の3は樹脂Bの上流側に位置する押し出し機であり、樹脂Bは押し出し機3で溶融状態にされたのち、同じく図示を省略するが、ギアポンプ、フィルターなどを介してポリマーパイプ4を通り、フィードブロック5へと流れる。なお、本発明において、樹脂Bは複数あっても良く、例えば樹脂B1とB2の2つがある場合、それぞれに押し出し機3とポリマーパイプ4を用意すればよい。
【0015】
そして、前述の積層体Cが、樹脂Bの両面に樹脂Aが積層された3層で、その幅方向の両端部にエッジ単層部を設ける場合、フィードブロック5の内部で樹脂Aは第1の合流部で樹脂Bの両表層に配される2つと、両エッジ単層部に配される2つの合計4つに分岐される。そして、第1の合流部で、樹脂Bの両面に樹脂Aが積層され、その後積層体Cの巾方向における両端部に両エッジ単層部に配される樹脂Aが溶融状態で合流され、単層ダイ6からシート状に溶融未延伸シート8として押し出される。そして、例えばポリエチレンテレフタレートなどの2軸延伸フィルムであれば、この未延伸溶融シートを図示省略した公知のピンニング方法で例えば静電式やエアチャンバー、ニップロールの方法でキャスティングドラム7に密着冷却させ、未延伸シート8とする。その後、図示しない装置によって未延伸シート8の巾方向に、必要に応じて製膜方向に延伸を施し、エッジ単層部をトリミングして多層延伸フィルムとなる。
【0016】
図2は、本発明の一つの実施形態を例示したフィードブロックの断面図であり、図2aはフィードブロックの巾方向における中心の位置で切断したときの断面であり、図2bはフィードブロックの厚さ方向における中心の位置で切断したときの断面である。なお、図2aおよびbのフィードブロックは、積層体Cが樹脂Bの片面に樹脂Aを積層した2層の多層フィルムで、その幅方向の両端にエッジ単層部を設ける場合の例である。
【0017】
図2aおよびb中の5aは第1の合流部で、5bは第2の合流部である。そして、まず第1の合流部5aで樹脂Aと樹脂Bとが合流して2層の積層体Cとなり、その後、第2の合流部5bに進行して、積層体Cの両端部にエッジ単層部として合流される樹脂Aが合流して、前述の積層体Dとなる。ここで、第2合流部における11aと11bはエッジ単層部として合流される樹脂Aの流路巾を調整するピン部材であり、12aと12bとはピン部材11aとピン部材11bとによってそれぞれ形成されたエッジ単層部として合流される樹脂Aの流路である。
【0018】
なお、図2aおよび図2bでは省略しているが、ポリマーパイプ2よりフィードブロック5に供給される樹脂Aは第1の合流部5aで樹脂Bと積層されるa2の流れと、第2の合流部5bで積層体Cと合流する2つのa1の流れに分割され、それぞれの合流位置までフィードブロック内を進行する。
また、図2b中のF−Fは、第2の合流部樹脂aまたはbの進行方向に直交する断面であり、後述の図3〜5は、このF−F断面の断面図である。
【0019】
図3〜図5中の12aおよび12bは、エッジ単層部として合流させる樹脂Aの流路断面(以下、エッジ流路断面と称することがある。)であり、換言すればピン部材11aおよび11bの溝の断面である。このエッジ流路断面は、エッジ単層部として合流させる樹脂Aの進行方向に直交する断面である。また、図3〜図5中の、13は、積層体Cの流路断面であり、斜線部分は樹脂Aで、斜線でない部分は樹脂Bである。また、図3〜図5中のHgは、エッジ単層部として合流させる樹脂Aの流路断面を見たときの、流路の高さ(エッジ流路高さ)であり、Haは、エッジ単層部として合流させる樹脂Aの流路断面を見たときの、エッジ流路巾が最小値である流路の高さ、Ha−bはエッジ単層部として合流させる樹脂Aの流路断面を見たときの、エッジ流路巾が最小値から最大値に変化している流路の高さ、Hbはエッジ単層部として合流させる樹脂Aの流路断面を見たときの、エッジ流路巾の最大値である流路の高さ(エッジ流路高さ)であり、Waはエッジ流路断面の最小の流路巾で、Wbは最大の流路巾で、Wmはエッジ流路断面の流路断面積を、エッジ流路高さ(Hg)で割った平均エッジ流路巾である。
【0020】
図3a〜図3cは、本発明の一つの実施形態を例示した前述の図2bにおけるF−F断面の断面図である。例えば、図3bは、エッジ流路巾(W)が、積層体Cの樹脂B側の上端の位置においてWa、そこから積層体Cの樹脂Bと樹脂Aの界面付近まで直線的に漸増してWbとなり、積層体Cの樹脂Aとの部分ではエッジ流路巾がWbで一定しているエッジ流路断面を、積層体Cの両端部に合流させている断面図である。また、図3aはそのときの積層体Cが樹脂Bの両面に樹脂Aを積層した3層である場合、図3bはそのときの積層体Cが樹脂Bの片面に樹脂Aを積層した2層である場合、図3cは積層体Cが樹脂Aと樹脂Bを交互に多数積層した場合を示している。
【0021】
図4aおよび図4bは、従来の一つの実施形態を例示した、前述の図2bにおけるF−F断面の断面図である。図4aは、積層体Cが樹脂Aと樹脂Bの2層で、エッジ流路巾(W)が一定のエッジ流路断面のものであり、図4bは特許文献4に記載されたエッジ流路巾(W)が厚さ方向に中央から対照的に広がるエッジ流路断面を付加したものである。
【0022】
図5は、本発明のもう一つの実施形態を例示した前述の図2bにおけるF−F断面の断面図である。図5は、エッジ流路巾(W)が、厚さ方向の中央部でWaからWbに直線的に漸増するエッジ流路断面を、樹脂Bの片面に樹脂Aを積層した2層の積層体Cの両端部に合流させている断面図である。
【0023】
図10は、本発明の他のエッジ流路断面の実施体系を例示したもので、前述の図2bにおけるF−F断面の断面図におけるエッジ流路断面12aを例示したものである。なお、エッジ流路断面12bは、図9のエッジ流路断面12aを左右反転させればよい。
【0024】
図6aおよび図6bは、本発明の製造方法によって得られる未延伸シート8の厚みを、巾方向に測定したときの厚さ分布であり、横軸が未延伸シート8の幅方向の位置、縦軸が未延伸シート8の厚みである。図6aの2つの丸で囲まれた部分が、冒頭で説明した局所的な厚み斑で、図6aの縦軸をより拡大したものが図6bである。そして図6bのcは、局所的な厚み斑の巾であり、dは局所的厚み斑の段差の絶対値である。
【0025】
また、図7aおよび図7bは、従来の製造方法によって得られる未延伸シート8の厚みを、巾方向に測定したときの厚さ分布であり、横軸が未延伸シート8の幅方向の位置、縦軸が未延伸シート8の厚みである。図7aの2つの丸で囲まれた部分が、冒頭で説明した局所的な厚み斑で、図7aの縦軸をより拡大したものが図7bである。そして図7bのcは、局所的な厚み斑の巾であり、dは局所的厚み斑の段差の絶対値である。
【0026】
図8は、溶融状態でダイから押し出される積層体Dの進行方向に直交する積層体Dの断面である。なお、図8(a)、図8(d)、図8(f)は従来の厚み方向に対称なエッジ単層部を設けた場合の積層体Dの断面図であり、図8(b)、図8(c)、図8(e)および図8(g)は、それぞれ本発明の実施形態の一つで、厚み方向に非対称な、すなわち一方向にエッジ流路巾が漸増するエッジ単層部を設けた積層体Dの断面図である。
図9は、本発明の実施態様の一つで、図3a〜図3cで示したエッジ流路断面を形成するピン部材の11aおよび11bの概略図である。
【0027】
以下、本発明について、さらに詳述する。
図4(a)や図4(b)の従来のエッジ流路断面が厚み方向に対称なエッジ単層部を設けるフィードブロックを用いると、図8dのような積層体Dの断面となり、積層体Cを3層にすると図8(a)のような積層体Dの断面となる。図8(a)を例にとると、積層体Cにおける樹脂Aと樹脂Bとの境界21aおよび21bはおおむね巾方向に平行であり、積層体Cの樹脂Bとエッジ単層部の樹脂Aとの境界22a、22bも概ねシートの厚み方向に沿って並行であり、層構成としては概ね理想的である。
【0028】
しかしながら、冷却後に同未延伸シートの厚み斑を巾方向に測定すると図7(a)の2個の丸印部分において急峻な厚み斑が発生する。図7(a)の厚み斑部分を拡大表示すると図7(b)のように段差は非常に鋭くシャープであり、段差の巾cは非常に狭く、かつその段差の絶対値dも大きい。そのため、この未延伸シートをクリップでシートの両端を把持し、フィルムの巾方向に延伸すると、該段差部の近傍で切断することが判った。該段差の発生位置は前記図8(a)の断面で言えば、境界22a、22b付近の位置である。
【0029】
切断のメカニズムは推定ではあるが段差部分の局所的に厚い部分は横延伸の際にあまり延伸されず厚いまま残り、この厚い部分の近傍では応力集中が起こり局所的に必要以上に横延伸され所定の厚み以下の薄い部分ができ、この部分から切断に至ると考えられる。
【0030】
そこで、本研究者らは、この切断の本質原因を究明するためさらに検討を重ねたところ、樹脂Aと樹脂BのIV差(固有粘度差)が大きくなるほど、また積層体Cの樹脂Bの割合が増える、すなわちエッジ単層における樹脂Aと積層体Cの樹脂Bの部分との接合部の割合が多いほど、前述の段差がより大きくかつ急峻になることが確認できた。また、未延伸シートの厚みが薄いほど、その後の幅方向の延伸で切断が顕在化することが判った。しかし、多層延伸フィルムの層構成、樹脂の特性、未延伸シートの厚みは、求められるフィルムの機能からおのずと決まるものであり、これらによる局所的な厚み斑の段差の低減では根本的な解決にならない。そこで、さらに検討を重ねたところ、前述の局所的な厚み斑の段差は、ダイ6から押し出された溶融未延伸シート8で既に観察されることから、ダイから吐出された時点で形成されることが判明した。これらのことから、本発明者は、発生のメカニズムとして、樹脂の溶融粘度が違うため伸長粘度も異なり、積層体Cとエッジ単層部でネックインの量や溶融樹脂の軌跡が異なり、ネックインや軌跡の不連続は厚みで補償されるため、結果的に段差が現れると考えた。
そこで、本発明者は、さらに検討を重ね、この段差の軽減については、層構成が急激に変化することを緩和することが有効であることを見出し、冒頭の本発明に至った。
【0031】
すなわち、本発明の特長の一つは、図3a、図3b、図3c、図5および図9に示すように、エッジ流路巾(W)を、厚み方向zに沿って、一方向に漸増させることである。これによりエッジ単層部は厚み方向に非対称な巾の分布をもって積層体Cと溶融状態で合流接合され、その結果、図8の(b)、(c),(e)または(g)のような積層体Cの樹脂Bとエッジ単層部の樹脂Bとのエッジ境界22a、22bを斜めにでき、エッジ部層構成遷移領域の巾(Ws)を形成できる。そして、このようにエッジ部層構成遷移領域において樹脂Bの分率を徐々に変化させることにより、図6(a)や(b)のように、局所的な厚み斑の段差を軽減できるのである。ここで、図6bと図7bとを見比べれば容易に理解出来るように、図6bでは、段差部の巾cが広がり、段差の絶対値dが小さくなっており、図7bで見られたシャープな段差の形状はマイルドになっている。そして、段差の絶対値dを段差の巾cで割った値(d/c)でみると、その値(d/c)は非常に小さく、応力集中が緩和され巾方向に延伸する際の切断を抑制できることを見出したのである。なお、エッジ部層構成遷移領域とは、未延伸シートの巾方向における端部から樹脂Bの割合を見ていったとき、樹脂Bが存在してから、幅方向の中央部における樹脂Bの割合(厚み比)に対して、95%になるまでの領域である。また、幅方向の端部から幅方向における樹脂Bの割合を見たとき、幅方向の端部から樹脂Bが確認できるまでの巾がエッジ単層部巾(Wd)である。そして、未延伸シートを巾方向に見たとき、前述のエッジ単層部巾(wd)と前述のエッジ部層構成遷移領域巾(Ws)とを、未延伸シートの全巾から除いた部分が最終的にトリミングされて多層延伸フィルムの製品部分として使用できる製品部の巾(Wp)である。なお、この製品部の巾(Wp)は、換言すれば、巾方向における各位置での樹脂Bの割合(Cx)を測定し、それらCxを巾方向における中央部の樹脂Bの割合(Cc)で割った値が(Cx/Cc)95%以上である領域の巾である。
【0032】
ところで、エッジ単層部の流路断面を厚み方向に非対称にすることで、エッジ部層構成遷移領域巾(Ws)が生じる理由としては、厚み方向に樹脂Aの流量の大小が生じ、積層体流と合流する際に図3aのMaの方向にモーメントがかかるためと考えられる。すなわち、エッジ単層部における樹脂Aには回転成分が生じ、その結果、境界22aおよび22bを効率的に斜めにでき、エッジ部層構成遷移領域巾(Ws)を大きくできるのだと考えられる。一方、図4aや図4bに示す従来の厚み方向に対称な流路形状では、モーメントMbが打ち消し合うため、エッジ流路巾に大きな差をつけても、境界22aおよび22bを効率的に斜めにしにくく、特に図4bでは図4a対比、むしろエッジ部層構成遷移領域巾(Ws)が小さくなるのだと考えられる。なお、従来はエッジ部層構成遷移領域巾(Ws)をなるべく小さくしようとするのに対し、本発明は、局所的な厚み斑というこれまで見過ごされてきた課題に直面し、これまでの考えとは全く逆の発想で、すなわちエッジ部層構成遷移領域巾(Ws)をより大きくしたものともいえる。
【0033】
つづいて、本発明のフィードブロックの好ましい態様について、以下説明する。
まず、本発明におけるエッジ流路巾が厚み方向に一方向に漸増するとは、厚み方向に沿って一方向に流路巾が減少せずに少なくとも一つ以上の増加する領域を有することを意味する。したがって、流路巾が変化しない区間があってもよい。特に、前述のモーメントMaを大きくしやすいことから、エッジ流路巾は、積層体Cの樹脂Bと接する部分において、その最小値であるWaから最大値であるWbに変化することが好ましく、さらにその変化が複数の段階で行われることが好ましく、特に厚み方向にある程度の巾をもった連続的な変化であることが好ましい。一方、積層体Cの樹脂Aと接するエッジ単層部の部分は、エッジ流路巾を変化させても良いし、一定としても良い。
【0034】
そういった観点から、前記漸増するエッジ流路巾は、最小エッジ流路巾(Wa)、最大エッジ流路巾(Wb)、および平均エッジ流路巾(Wm)とが、以下の関係を満足することが好ましい。
0.3≦(Wm−Wa)/(Wb−Wa)≦0.7
(Wm−Wa)/(Wb−Wa)がこの範囲を外れると、前述のモーメントMaが小さくなりエッジ部層構成遷移領域巾(Ws)を大きくしにくくなる。そのような観点から、より好ましい(Wm−Wa)/(Wb−Wa)の下限は、0.33、上限は0.67である。
【0035】
さらにまた、同様な観点から、最小エッジ流路巾(Wa)および最大エッジ流路巾(Wb)と、エッジ流路高さ(Hg)とは、以下の関係を満足することが好ましい。
0.05≦(Wb−Wa)/Hg≦0.5
(Wb−Wa)/Hgがこの範囲を外れると、前述のモーメントMaが小さくなりエッジ部層構成遷移領域巾(Ws)を大きくしにくくなる。そのような観点から、より好ましい(Wb−Wa)/Hgの下限は、0.07、上限は0.4である。
【0036】
ところで、最小エッジ流路巾(Wa)と最大エッジ流路巾(Wb)とは、以下の関係を満足することが好ましい。
0.05≦Wa/Wb≦0.9
Wa/Wbが上限より大きいと従来技術に近づき段差をマイルドにする効果が少なく横延伸時の切断頻度が増し、下限より小さいと、例えば図8(c)の層構成の遷移巾Wsが増大し、完全単層巾Wdは減少し、エッジ単層部に回収ポリマーを投入しようとするとその比率が下がるため、コストダウンの観点から好ましくない。そのような観点から、より好ましいWa/Wbの下限は0.1、上限は0.8である。
【0037】
本発明において、前記漸増するエッジ樹脂流路巾を形成する方法としては特に制限されないが、図9に示したような溝を設けた円形のピン部材で形成されることが好ましい。エッジ流路断面をピン部材の溝で形成することにより、このピン部材を回転させることで、エッジ流路巾を微調整でき、また複数の溝形状を一つのピン部材に形成することで、エッジ流路断面を大きく変えたり、さらにはエッジ単層部を付加しない製膜も可能となる。なお、ピン部材の溝は機械加工やワイヤー放電加工で加工できる。ピン部材以外のエッジ流路断面の形状を変える方法としては、チョークバーによる矩形の部材の平行移動による絞りなどが挙げられる。
本発明において、第2合流部の積層体Cの断面13は矩形が好ましく、単層遷移域を精密に制御でき、また多層製品部の最エッジまで良好な層厚みで積層できる。
【0038】
また、本発明において、第1の合流部における合流方法は、それ自体公知の方法を用いることができる。例えば、2〜数層であれば前述のエッジ合流で説明したピン方式やチョークバーを例示できる。第1の合流部は、厚み方向に溶融樹脂を積層する合流部が幾つあっても良く5〜11層であれば3層合流部を流れ方向に直列に並べのが常法である。例えば7層であれば、3層合流部を3個直列に並べ、3+2+2=7層とできる。一方、10層以上で幾つかの樹脂を交互に積層するいわゆる超多層では、狭いスリットを多数並べて溶融樹脂を通過させそのスリットので出口で超多層に積層する方法、さらに超多層の積層流の最外層に厚い層を積層する方法を例示できる。
また、第1の合流部における樹脂Aと樹脂Bとの流路は、後述の通り、積層体Cにおける樹脂Aと樹脂Bの割合が5:95〜40:60の範囲になるような流路断面を持つように形成されていれば良い。
【0039】
つぎに、もう一つの本発明である多層延伸フィルムの製造方法について、説明する。
本発明の多層延伸フィルムの製造方法は、単層ダイの上流側に前述のフィードブロックを配し、樹脂Aと樹脂Bとを溶融状態で合流させ、樹脂Aと樹脂Bの割合(面積比)が5:95〜40:60の積層体Cを形成し、前記積層体Cの少なくとも一方の巾方向端部に、樹脂Aを溶融状態でエッジ単層部として合流させエッジ単層部付き積層体Dを形成する工程と、得られた積層体Dをシート状にダイから押し出して未延伸シートとする工程と、得られた未延伸状態の積層体Dを製膜方向およびその厚み方向に直交する方向(巾方向)に延伸し、エッジ単層部をトリミングして多層延伸フィルムとする工程とからなる。
【0040】
本発明において、積層体Cにおける樹脂Aと樹脂Bの割合(面積比)は5:95〜40:60である。樹脂Aの割合が上限より多いと樹脂Bとエッジ単層部との接合部が少なく、そもそも段差は軽微で本発明の効果は発現しにくく、他方下限より少ないと回収したポリマーをエッジ単層部用樹脂の一部に再利用する際に、投入できる量が少なくなり、コスト高のフィルムとなり産業上のメリットが少ない。好ましい積層体Cにおける樹脂Aと樹脂Bの割合(面積比)は7:93〜35:65である。
本発明において、未延伸シートにおけるWsの巾は、ダイ6の巾にもよるが、15〜200mmが好ましい。ダイ6の巾は500〜3000mmが好ましく、トリミングしてフィルム屑とするエッジの巾は製品の採り巾と巾歩留まりの観点から2軸延伸後で30〜300mmが好ましい。
【0041】
本発明では、樹脂Aと樹脂B溶融させて多層に積層し、さらに再度樹脂Aをエッジ単層部にも使用する。この際、樹脂Aと樹脂Bの固有粘度(IV)の差は、前述のとおり、なるべく小さいことが好ましい。一方、樹脂Bは冒頭で述べた通り、複数あっても良いので、樹脂Aおよび樹脂Bにおいて、固有粘度が最も大きい樹脂の固有粘度と固有粘度がもっとも小さい樹脂の固有粘度の差は、0.085dl/g以下であることが好ましい。さらに好ましい固有粘度の差の上限は、0.05dl/g以下である。上限より大きいと局所的な厚み斑が大きくなりやすい。一方、固有粘度の差の下限は特に制限されないが、製品としての設計の自由度を広げることや、本発明の効果をより発現しやすくすることから、0.01dl/g以上であることが好ましい。
【0042】
なお、樹脂Aまたは樹脂Bは、単独の樹脂であってもよいが、通常はペレットやチップと呼ばれる状態で、複数の樹脂を混ぜ合わせて一つの樹脂とされることが多い。この場合、樹脂Aよび樹脂Bの固有粘度とは、混ぜ合わせる個々の樹脂の固有粘度を測定し、それを混ぜ合わせる重量分率に応じて算術した、すなわち重量平均の固有粘度とする。例えばコストダウンを目的としてエッジ単層部用樹脂に、フィルム屑など回収したポリマーを再生して樹脂をある割合で使用する場合も、混ぜ合わせる個々の樹脂の固有粘度を測定して算出すればよい。なお、一般的には、回収ポリマーは、溶融押出工程を少なくとも2回以上通過するため、固有粘度が低くなりやすい。そして、回収したポリマーの利用率をあげる観点からは、回収ポリマーを出来るだけ多く、例えば60〜100wt%の割合で用いる必要があり、前述の固有粘度の差をある程度許容できることが必要であり、そういった観点からも本発明の製造方法は極めて有益である。そして、回収ポリマーは、製品部にあまり影響を与えないようにするため、エッジ単層部に用いることが好ましく、そういった観点から前記最小の固有粘度を示す樹脂は、樹脂Aであることが好ましい。また換言すれば、前記樹脂Aの少なくとも一部に、エッジ単層部をトリミングした回収ポリマー(回収樹脂)を用いることが好ましい。
【0043】
本発明において、樹脂Aおよび樹脂Bは、フィルムへの製膜が可能な熱可塑性樹脂であれば、それ自体公知のものを採用でき、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を用いることができ、特にポリエステル系樹脂(以下、単にポリエステルという)が好ましい。ポリエステルの中でも、ヤング率等の力学的特性を高める場合は、ジオール成分と芳香族ジカルボン酸成分との重縮合によって得られる芳香族ポリエステルが好ましく、かかる芳香族ジカルボン酸成分として、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸などの6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸が挙げられ、またジオール成分として、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオールが挙げられる。これらの中でも、寸法安定性を要求される場合は、エチレンテレフタレートまたはエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる繰り返し単位とするものが好ましい。もちろん、樹脂AおよびBには、必要に応じて、それ自体公知の滑剤などの機能剤を含有させても良い。
【0044】
本発明において得られる多層延伸フィルムの厚みは特に制限されないが、横延伸時の破断をより効果的に発現させやすいことから比較的薄いものが好ましく、1.0〜10.0μmの範囲にあることが好ましい。また、同様な理由から、前記横方向の延伸の延伸倍率は、横延伸時の破断をより効果的に発現させやすいことから、ある程度異常高いことが好ましく、そういった観点から2.5〜8.0倍の範囲であることが好ましい。
【0045】
本発明の製造方法で製造される多層延伸フィルムを、例えばデータストレージのベースフィルムなどに用いる場合、二軸配向フィルムであることが好ましく、また薄い厚みで高ヤング率であることが好ましい。そういった観点から、二軸配向フィルムの厚みは1.0〜10.0μm、さらに3〜6μmの範囲にあることが好ましい。また、二軸配向フィルムのヤング率は、長手方向が4〜11GPa、さらに5〜10GPa、特に5.5〜9GPaの範囲であり、巾方向が5〜11GPa、さらに6〜11GPa、さらに7〜10GPa、特に8〜10GPaの範囲であることが好ましい。このような二軸配向フィルムは、上述の熱可塑性樹脂を溶融状態で押出し、二軸方向に延伸することで製造でき、製膜方法などはそれ自体公知のものを採用することができる。しかも、このような薄いフィルムで高ヤング率を得るには高配向とするため、例えばテンターを用い高倍率で横延伸することが必要であり、本発明のフィードブロックや多層延伸フィルムの製造方法による切断防止効果が最大限に発揮される。
【0046】
つづいて、本発明の多層延伸フィルムの製造方法について、回収ポリマーをエッジ単層部用樹脂の一部に投入し、二軸配向多層フィルムとする場合を例として説明する。まず、原料である数種類のチップは、スクリューフィーダーやブレンダーである一定の重量割合で混合ブレンドされ、そのチップを必要に応じて一定の時間乾燥し、図1の押出機1および3にそれぞれ供給され、そこでそれぞれの熱可塑性樹脂の融点(Tm)〜(Tm+50)℃の温度で溶融させ、ダイ6からシート状に押出し、例えば熱可塑性樹脂がポリエステルである場合、20〜70℃のキャスティングドラム7で急冷固化し、未延伸シート8を得る。その後、未延伸シートを常法に従い、一軸方向(縦方向または横方向)に(熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)−10)〜(Tg+70)℃の温度で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは3.0〜7.5倍の倍率で延伸し、次いで上記延伸方向とは直角方向(一段目延伸が縦方向の場合には、二段目延伸は横方向となる)に(Tg)〜(Tg+70)℃の温度で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは4.5〜7.5倍の倍率で延伸する。さらに、必要に応じて、縦方向および/または横方向に再度延伸してもよい。すなわち、2段、3段、4段あるいは多段の延伸を行ってもよい。全延伸倍率としては、面積延伸倍率で、通常9倍以上、好ましくは10〜35倍、さらに好ましくは12〜30倍である。全横延伸倍率としては2.5〜8.0倍が好ましい。延伸前にフィルムへの付加機能膜を塗工し、延伸、乾燥させても良い。
【0047】
さらに、前記二軸配向多層フィルムは(Tg+70)〜(Tm−10)℃の温度、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムの場合、180〜250℃で熱固定結晶化することによって、優れた寸法安定性が付与される。その際、熱固定時間は1〜60秒が好ましい。前述の説明で、樹脂Aおよび樹脂Bが合流した後のTgおよびTmはもっとも高いTg、Tmを有する樹脂の値である。
【0048】
そして、熱固定された延伸フィルムは、エッジ単層部をトリミングし、エッジ単層部は回収再チップ化系統へと移送する。このとき、トリミングされるエッジ単層部にはエッジ部層構成遷移領域も含むようにトリミングすると、製品として得られる多層延伸フィルムの厚み斑と巻き姿がより良好となる。回収系統では従来の公知である方法、装置を用いることができる。例えば、回収された部分を細かく裁断し必要に応じ乾燥し、再生押出機、フィルター、口金を用いて棒状に溶融押出させさらに水冷固化させ裁断機でサイコロ状にカットし、必要に応じ脱水処理し、再生チップとする。製品部のフィルム屑については、通常エッジ単層部とは組成がことなるため別系統で回収し前述と同様の手法で再生チップ化する。そして、再生チップ化された樹脂が複数ある場合や樹脂Aと若干組成が異なる場合は、樹脂Aの組成と合うように混合比を変えたり、別の樹脂を混合すればよい。そういった観点から、樹脂Aは、その一部に樹脂Bの樹脂種を有することが好ましい。なお、図1の押出機や前述の再生押出機が2軸押出機である場合は、材料の乾燥を省略してもよい。さらに図1の押出機が2軸押出機であればフィルム屑を直接投入してもよい。
【実施例】
【0049】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明では、以下の方法により、その特性を測定および評価した。
【0050】
(1)固有粘度(IV)
得られたポリエステルの固有粘度はP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒を用いてポリマーを溶解して35℃で測定して求めた。
【0051】
(2)ヤング率
得られたフィルムを試料巾10mm、長さ15cmで切り取り、チャック間100mm、引張速度10mm/分、チャート速度500mm/分の条件で万能引張試験装置(東洋ボールドウィン製、商品名:テンシロン)にて引っ張る。得られた荷重―伸び曲線の立ち上がり部の接線よりヤング率を計算した。
【0052】
(3)多層フィルムの厚み
延伸後の多層フィルムを層間の空気を排除しながら10枚重ね、JIS規格のC2151に準拠し、(株)ミツトヨ製ダイヤルゲージMDC−25Sを用いて、10枚重ね法にて厚みを測定し、1枚当りのフィルム厚みを計算する。この測定を10回繰り返して、その平均値を1枚あたりの多層フィルムの全体厚みとした。
【0053】
(4)エッジ単層部との遷移境界巾Wsとエッジ部の完全単層巾Wd
未延伸シートから小片を切り出しエポキシ樹脂にて固定成形し、ミクロトームにて約60nmの厚みの超薄切片(フィルムの製膜方向および厚み方向に平行に切断する)を作成する。この超薄切片の試料を透過型電子顕微鏡(日立製作所製H−800型)にて観察し、層の境界を調べた。シートの巾方向に沿って2mmピッチで観察を繰り返し、樹脂Bの割合の変化からWp、Ws、Wdを求めた。なお、Wsは未延伸シートのヘーズ(透過率の差異による曇り)の変化としても、目視で概ね特定できる。なお、延伸後のフィルムで層構成を測定することも可能ではある。
【0054】
(5)未延伸シートの巾方向の厚み斑と段差d/c
未延伸シートをシートの巾方向全巾に渡り短冊状に切り出した。製膜方向には約10mmの巾とした。その表面をアルコールで拭きゴミ採りをしたのち、アンリツ製の接触式厚み計で、短冊を10mm/sで走行させシート巾方向1mmピッチで厚みを測定しグラフにした。図6(b)と図7(b)において厚み斑の2つ以上の変極点のうち極小のうちの最小値と極大のうちの最大値を同図のように選び、段差の巾c(mm)と段差の絶対値d(μm)からd/cを求めた。
【0055】
(6)段差d/cの滑らか性の評価
○ ・・・ d/cが1.00未満である(段差が滑らか)
× ・・・ d/cが1.00以上である(段差がシャープである)
【0056】
(7)製膜性の評価
実施例および比較例にて、3時間以上製膜し、横延伸での切断の頻度に応じて、以下の基準で判定した。
○ ・・・ 横延伸する際、フィルムが0回/3時間で切断する。
△ ・・・ 横延伸する際、フィルムが1〜2回/3時間で切断する。
× ・・・ 横延伸する際、フィルムが3回以上/3時間で切断する。
【0057】
なお、実施例、比較例で用いた樹脂は以下の通りである。
PEN1:固有粘度0.620dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレート
PEN2:PEN1を溶融製膜したのち、回収した固有粘度0.572dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレート
PEN3:PEN2を再度溶融製膜したのち、回収した固有粘度0.535dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレート
PEN4:6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を全酸成分の70モル%共重合した固有粘度0.620dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレート
PEN5:PEN1とPEN4とを溶融製膜したのち、回収した6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を全酸成分の12モル%共重合した固有粘度0.572dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレート
【0058】
[実施例1]
図1及び図2及び図3bで示される装置を用い未延伸シートを連続的に作成し、さらに延伸して2層フィルムを製膜した。
すなわち、樹脂Aとして前述のPEN2を、樹脂Bとして前述のPEN1とを用意し、170℃で6時間乾燥後、押出し機1および3にそれぞれ供給し、295℃まで加熱して溶融状態とし、ギアポンプで吐出量を一定とし、ポリマーフィルターで約5〜10分の滞留時間で濾過し、ポリマーパイプを通してフィードブロック5へ導いた。フィードブロックの2層合流部5aで、樹脂Aを2つに分岐し、一方をa2として樹脂Bと重ね第1の合流部で2層積層体流とし、他方をエッジ樹脂a1として第2の合流部5bに導いた。a1をエッジ樹脂の流路12a、12bで絞り、流路の形状はHg=24mm、Hb=6mm、Ha−b=18mm、Wa=5mm、Wb=10mm、Wm=8.1とし、2層積層体流と合流させダイ6へ導きシート状に吐出させ、図示省略した静電ピンニングワイヤーで60℃に温調されたキャスティングドラム7にシートを密着冷却させ、巾445mmの未延伸シート8を連続的に作成した。なお、未延伸積層フィルムで確認したときの、積層体Cにおける樹脂Aと樹脂Bの厚み比は、32:68であった。
【0059】
そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が135℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率5.3倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをテンターに導き、145℃で横方向(巾方向)に延伸倍率6.0倍で延伸し、その後190℃で5秒間熱固定処理を行い、さらに冷却し、テンターの出口で、2軸延伸フィルムの巾方向の両端部より250mmの位置でエッジ単層部をトリミングし、厚さ5μmの二軸配向多層積層ポリエステルフィルムを65m/分の速度で得た。このような連続製膜を約48時間行ったが、テンターでの切断はなかった。
得られた2層製品部のヤング率は、48時間連続したときと、縦が5.9GPa、横が8.4GPaであって層構成は巾方向の中央で樹脂Pの層厚みが32%であった。
【0060】
また、トリミングしたエッジ単層部を、粉砕機でフレーク状に粉砕し、約170℃の温度で約15分乾燥し、押出機に投入して約295℃の温度で溶融させ、口金より棒状に押出し水冷しカッターでサイコロ状に裁断して脱水し、再生チップ1を得た。また、巻き取った2層フィルムの製品部を、前述のエッジ単層部の再生方法と同様の方法で粉砕し再生チップ2とした。2層製品部からの再生チップ2のIVは0.550dl/g、エッジ単層部からの再生チップ1のIVは0.530dl/gであった。これらの再生チップ1と2とPEN1とを、重量比3:3:4で混合した平均の固有粘度が0.572dl/gである再生樹脂を、上記樹脂Aの原料として用いたPEN2の代わりに使用し、前述の方法で連続8時間製膜したが、テンターでの切断はなかった。
得られた2層製品部のヤング率は、48時間連続したときと、縦が5.9GPa、横が8.4GPaであって層構成は巾方向の中央で樹脂Pの層厚みが32%であった。
【0061】
[実施例2]
図3bにおいて、表1に示すように、Wa=8mm、Wm=9.3のエッジ流路断面のもに変更し、積層体Cでの樹脂Aと樹脂Bの割合を変更した以外は実施例1と同様の方法で連続8時間製膜し2層2軸延伸フィルムを得た。この間、テンター切断はなかった。
【0062】
[実施例3]
図3bにおいて、Wa=1mm、Wm=6.6のエッジ流路断面のもに変更し、積層体Cでの樹脂Aと樹脂Bの割合を変更した以外は実施例1と同様の方法で連続3時間製膜し2層2軸延伸フィルムを得た。この間、テンター切断はなかった。
【0063】
[実施例4]
樹脂AとしてPEN2をPEN3に変更しIV差を大きくした以外は実施例1と同様の方法で連続24時間製膜し2層2軸延伸フィルムを得た。この間、テンター切断はなかった。
さらに、実施例1と同じく、トリミングしたエッジ単層部から再生チップ3と、巻き取った2層フィルムの製品部から再生チップ3を製造した。2層製品部からの再生チップ4のIVは0.540dl/g、エッジ単層部からの再生チップ3のIVは0.520dl/gであった。これらの再生チップ3と4とを、重量比25:75で混合した平均の固有粘度が0.535dl/gである再生樹脂を、上記樹脂Aの原料として用いたPEN3の代わりに使用し、連続3時間製膜した。この間もテンターで切断はなかった。
【0064】
[実施例5]
エッジ単層部として合流させる樹脂Aの流路断面を、Wa=5mm、Wb=10mm、Wm=7.3、Hg=24mm、Ha=12mm、Ha−b=2mm、Hb=10mmの図5で示される流路断面のもに変更し、積層体Cでの樹脂Aと樹脂Bの割合を変更した以外は実施例1と同様の方法で連続3時間製膜した。この間、テンター切断はなかった。
【0065】
[実施例6]
図3aの第2の合流部を用い、第1の合流部で3層積層とした以外は実施例1と同様の方法で連続3時間製膜した。この間、テンター切断はなかった。
なお、未延伸積層フィルムで確認したときの、積層体Cにおける樹脂Aと樹脂Bの厚み比は、32:68(具体的には樹脂A:樹脂B:樹脂A=16:68:16)であった。
【0066】
[実施例7]
樹脂AをPEN2からPEN5に変更してエッジ樹脂とし、図3cの第2の合流部を用い、Wa=5mm、Wb=10mm、Wm=8.5、Hg=24mm、Hb=2mm、Ha−b=22mmとし、第1の合流部で2種類の樹脂を交互に50層に積層し、横延伸倍率を7.8に変更した以外は実施例1と同様の方法で連続24時間製膜した。この間、テンター切断はなかった。
なお、未延伸積層フィルムで確認したときの、積層体Cにおける樹脂Aと樹脂Bの厚み比は、32:68(具体的には樹脂A:樹脂B・・・樹脂A:B=1.28:2.72・・・1.28:2.72)であった。
得られた50層製品部のヤング率は縦が5.7GPa、横が8.5GPaであって、層構成は巾方向の中央で樹脂Bの層厚みが68%、樹脂Aと樹脂Bの各樹脂の層は概ね均等な厚みであった。
【0067】
さらに、実施例1と同じく、トリミングしたエッジ単層部から再生チップ5と、巻き取った2層フィルムの製品部から再生チップ6を製造した。2層製品部からの再生チップ6のIVは0.550dl/g、エッジ単層部からの再生チップ5のIVは0.530dl/gであった。これらの再生チップ5と6とPEN1とPEN4とを、PEN5と同じ共重合量および重量平均固有粘度となるように混合した再生樹脂を、上記樹脂Aの原料として用いたPEN5の代わりに使用し、連続3時間製膜した。この間もテンターで切断はなかった。
得られた50層製品部のヤング率は縦が5.7GPa、横が8.5GPaであって、層構成は巾方向の中央で樹脂Bの層厚みが68%、樹脂Aと樹脂Bの各樹脂の層は概ね均等な厚みであった。
【0068】
[比較例1]
図4aの第2の合流部を用い、エッジ樹脂の溝巾を8mm均一に変更した以外は実施例1と同様の方法で製膜を開始した。テンターに一軸縦延伸フィルムを通しても数分でエッジの遷移領域付近から切断することを5回繰り返し約2時間経過した時点で断念した。最後のサンプルは製品部の厚みが5μm、層構成は製品の中央で樹脂Aの層厚みが32%であった。
【0069】
[比較例2]
エッジ単層部として合流させる樹脂Aの流路断面を、Wa=5mm、Wb=10mm、Wm=7.5、Hg=24mm、Ha−b=12mmと12mmの図4bで示される流路断面のもに変更し、積層体Cでの樹脂Aと樹脂Bの割合を変更した以外は実施例1と同様の方法で連続3時間製膜した。実施例1と同様の方法で製膜した。遷移巾Wdが小さく、約3時間でテンターでの切断が4回であった。
【0070】
[比較例3]
図4aの第2の合流部を用い、エッジ樹脂の溝巾を8mmに変更した以外は実施例6と同様の方法で製膜した。約3時間でテンターでの切断が4回で、生産性の悪い結果となった。製品部の厚みは5μm、層構成は製品の中央で樹脂Pの層厚みの合計が32%であった。
【0071】
[比較例4]
図4aの第2の合流部でエッジ樹脂の溝巾を8mmに変更した以外は実施例7と同様の方法で製膜した。約3時間でテンターでの切断が3回で、生産性の悪い結果となった。製品部の厚みは5μm、50層製品部の層構成は巾方向の中央で樹脂Bの層厚みが68%であった。
【0072】
【表1】

【0073】
なお、表1中のAir面/CD面とは、未延伸フィルムをキャスティングドラム7に密着させて冷却するときに、キャスティングドラムと接しない側をAir面、接する側をCD面として表しており、図3で示すWaとWbがAir面側に位置するのか、CD面側に位置するのかを表している。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、異なる樹脂の接合部分が多いエッジ単層の多層フィルムを延伸時に切断することなく歩留まり良く生産でき、かつ生産コストを削減できる。
【符号の説明】
【0075】
1:樹脂A側の押出機
2:樹脂A側のポリマーパイプ
3:樹脂B側の押出機
4:樹脂B側のポリマーパイプ
5:フィードブロック
5a:フィードブロックの第1の合流部
5b:フィードブロックの第2の合流部
6:ダイ
7:キャスティングドラム
8:溶融未延伸シートまたは未延伸シート
11a、11b:ピン部材
12a、12b:エッジ単層部として合流させる樹脂Aの流路断面(ピン部材の溝またはピン部材溝断面)
13:積層体Cの流路断面
21a、21b:未延伸シート断面における積層A中の樹脂Aと樹脂Bの境界
22a、22b:未延伸シート断面における積層体Cの樹脂Bとエッジ単層部の樹脂Aとの境界
A:樹脂A(エッジ単層部用樹脂)
B:樹脂B(非エッジ単層部用樹脂)
F−F:エッジ合流部、または第2の合流部の分割線
Hg:エッジ単層部として合流させる樹脂Aの流路断面を見たときの、流路の高さ(エッジ流路高さ)
Ha:エッジ単層部として合流させる樹脂Aの流路断面を見たときの、エッジ流路巾が最小値である流路の高さ
Ha−b:エッジ単層部として合流させる樹脂Aの流路断面を見たときの、エッジ流路巾が最小値から最大値に変化している流路の高さ
Hb:エッジ単層部として合流させる樹脂Aの流路断面を見たときの、エッジ流路巾の最大値である流路の高さ(エッジ流路高さ)
Ma:本発明のエッジ樹脂の流れに作用するモーメントのイメージ
Mb:従来技術のエッジ樹脂の流れに作用するモーメントのイメージ
Wa:エッジ流路巾の最小値
Wb:エッジ流路巾の最大値
Wm:平均エッジ流路巾(エッジ流路断面の断面積をエッジ流路高さHgで割った値)
Wd:未延伸シートの流れ方向に直交する方向の断面を見たときの、エッジ単層部の巾
Wp:未延伸シートの流れ方向に直交する方向の断面を見たときの、樹脂Bの割合が幅方向の中央部と5%以上の変化しない製品となる部分の巾
Ws:未延伸シートの流れ方向に直交する方向の断面をエッジ単層部から巾方向における中心部の位置までみたとき、樹脂Bが存在してから未延伸シートの巾方向における中心部の位置の樹脂Bの割合の95%になるまでの巾(エッジ部層構成遷移領域の巾)
a:樹脂Aの流れ方向
a1:エッジ単層部に置ける樹脂Aの流れ方向
a2:積層体Cにおける樹脂Aの流れ方向
b:積層体Cにおける樹脂Bの流れ方向
c:未延伸シートの巾方向に厚みを測定したときのエッジ部層構成遷移領域における局所的厚み斑の巾(局所的厚み斑の巾)
d:未延伸シートの巾方向に厚みを測定したときのエッジ部層構成遷移領域における局所的厚み斑の段差絶対値(局所的厚み斑の段差の絶対値)
x:積層体Cの樹脂Aと樹脂B界面に沿った方向で、かつ、樹脂AまたはBの進行方向に直交する方向(巾方向)
y:樹脂AまたはBの進行方向(製膜方向)
z:積層体Cの樹脂Aと樹脂Bの界面に直交する方向(厚み方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単層ダイの上流側に配されるフィードブロックであって、
樹脂Aと樹脂Bとを、溶融状態で合流させ積層体Cを形成させる第1の合流部と、前記積層体Cの少なくとも一方の巾方向端部に、樹脂Aを溶融状態でエッジ単層部として合流させエッジ単層部付き積層体Dを形成させる第2の合流部とを有し、
第2合流部におけるエッジ単層部として合流させる樹脂Aの流路について、樹脂Aの進行方向に直交する断面(エッジ流路断面)をみたとき、エッジ流路断面の巾(エッジ流路巾)が、積層体Cの厚み方向に沿って一方向に漸増する領域を有することを特徴とするフィードブロック。
【請求項2】
前記漸増するエッジ流路巾は、少なくとも積層体Cの樹脂Bと接する領域において、連続的に漸増する請求項1に記載のフィードブロック。
【請求項3】
前記漸増するエッジ流路巾は、最小エッジ流路巾(Wa)、最大エッジ流路巾(Wb)および平均エッジ流路巾(Wm)とが、以下の関係を満足する請求項1記載のフィードブロック。
0.3≦(Wm−Wa)/(Wb−Wa)≦0.7
(ここで、Wmは、エッジ流路断面の断面積を、エッジ流路断面の巾方向に直交する方向の最大長さ(エッジ流路高さ:Hg)で割った値である。)
【請求項4】
最小エッジ流路巾(Wa)と最大エッジ流路巾(Wb)とが、以下の関係を満足する請求項3記載のフィードブロック。
0.05≦Wa/Wb≦0.9
【請求項5】
最小エッジ流路巾(Wa)および最大エッジ流路巾(Wb)と、エッジ流路高さ(Hg)とが、以下の関係を満足する請求項1記載のフィードブロック。
0.05≦(Wb−Wa)/Hg≦0.5
【請求項6】
前記漸増するエッジ樹脂流路巾が、溝を設けた円形のピン部材によって形成される請求項1記載のフィードブロック。
【請求項7】
単層ダイの上流側に請求項1〜6のいずれかに記載のフィードブロックを配し、樹脂Aと樹脂Bとを溶融状態で合流させ、樹脂Aと樹脂Bの割合が5:95〜40:60の積層体Cを形成し、前記積層体Cの少なくとも一方の巾方向端部に、樹脂Aを溶融状態でエッジ単層部として合流させエッジ単層部付き積層体Dを形成する工程と、
得られた積層体Dをシート状にダイから押し出して未延伸シートとする工程と、
得られた未延伸状態の積層体Dを製膜方向およびその厚み方向に直交する方向(巾方向)に延伸し、エッジ単層部をトリミングして多層延伸フィルムとする工程とを有する多層延伸フィルムの製造方法。
【請求項8】
各層を形成するために用いる樹脂のそれぞれの固有粘度を測定したとき、固有粘度の最大値と最小値の差が0.010〜0.085である請求項7に記載の多層延伸フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記最小の固有粘度を示す樹脂が、樹脂Aである請求項8記載の多層延伸フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記樹脂Aの少なくとも一部に、エッジ単層部をトリミングした回収樹脂を用いる請求項7記載の多層延伸フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記多層延伸フィルムの厚みが1.0〜10.0μmである請求項7に記載の多層延伸フィルムの製造方法。
【請求項12】
樹脂Aおよび樹脂Bがエチレンナフタレートまたはまたはエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる繰り返し成分とする請求項7記載の多層延伸フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記巾方向の延伸の延伸倍率が2.5〜8.0の範囲である請求項7記載の多層延伸フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記未延伸シートの製膜方向に直交する断面をエッジ単層部から巾方向における中心部の位置までみたとき、樹脂Bが存在してから未延伸シートの巾方向における中心部の位置の樹脂Bと同じになるまでの巾(エッジ部層構成遷移領域の巾)が15〜200mmの範囲である請求項7記載の多層延伸フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−6311(P2013−6311A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139439(P2011−139439)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】