説明

フィールドバスアダプタ及びその使用方法

【課題】アナログ式のフィールド機器を、自立型制御システムに取り込むことが可能なフィールドバスアダプタを提供する。
【解決手段】 第1の接続部は、フィールドバスに対して着脱可能とされる。第2の接続部は、フィールド機器に対して着脱可能とされる。変換手段は、前記第1の接続部および前記第2の接続部の間に設けられ、前記フィールドバスで取り扱われるデジタル信号と、前記フィールド機器で取り扱われるアナログ信号とを、双方向に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル信号を取り扱うフィールドバスと、アナログ信号を取り扱うフィールド機器との間に接続されるフィールドバスアダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、フィールドバスプロトコルとして、HART、FOUNFATION fieldbus、PROFIBUS、BRAIN、ISA100.11aなどが用いられている。このうち、HART、BRAINなどは、従来の4−20mAアナログ電流出力にデジタル信号を重畳させることで、アナログ制御システムの資源を使用しつつデジタル入出力を実現している。一方、FOUNFATION fieldbus、ISA100.11aでは機能ブロックの使用により、機器同士の計測・演算機能を連結して、自立型の制御システムを構築することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−129754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、アナログ制御システムの資源を使用しつつFOUNFATION fieldbus、ISA100.11aなどの自立型制御システムを導入しようとする場合、既存のHART、BRAINなどのフィールドバスとの互換性がなく、相互利用できない。したがって、アナログ制御システムの資源を自立型制御システムに取り込むことができない。
【0005】
本発明の目的は、アナログ式のフィールド機器を、自立型制御システムに取り込むことが可能なフィールドバスアダプタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のフィールドアダプタは、デジタル信号を取り扱うフィールドバスと、アナログ信号を取り扱うフィールド機器との間に接続されるフィールドバスアダプタであって、前記フィールドバスに対して着脱可能とされた第1の接続部と、前記フィールド機器に対して着脱可能とされた第2の接続部と、前記第1の接続部および前記第2の接続部の間に設けられ、前記フィールドバスで取り扱われるデジタル信号と、前記フィールド機器で取り扱われるアナログ信号とを、双方向に変換する変換手段と、を備えることを特徴とする。
このフィールドアダプタによれば、フィールドバスで取り扱われるデジタル信号と、フィールド機器で取り扱われるアナログ信号とを、双方向に変換する変換手段を備えるので、アナログ式のフィールド機器を、自立型制御システムに取り込むことが可能となる。
【0007】
前記アナログ信号は4−20mA信号であってもよい。
【0008】
前記フィールドバスは、FOUNDATION fieldbusに準拠するバスであってもよい。
【0009】
前記変換手段は、ファンクションブロックアプリケーションを含んで構成されてもよい。
【0010】
前記変換手段は、複数の規格の前記フィールド機器に対応可能とされてもよい。
【0011】
本発明のフィールドバスアダプタの使用方法は、デジタル信号を取り扱うフィールドバスと、アナログ信号を取り扱うアナログ式フィールド機器との間に接続されるフィールドバスアダプタの使用方法であって、前記フィールドバスに対して着脱可能とされた第1の接続部と、前記アナログ式フィールド機器に対して着脱可能とされた第2の接続部と、前記第1の接続部および前記第2の接続部の間に設けられ、前記フィールドバスで取り扱われるデジタル信号と、前記アナログ式フィールド機器で取り扱われるアナログ信号とを、双方向に変換する変換手段と、を備え、前記フィールドバスアダプタの使用方法は、前記第2の接続部を介して第1のアナログ式フィールド機器を前記フィールドバスアダプタに接続することで、前記第1のアナログ式フィールド機器を、前記フィールドバスアダプタを介して前記フィールドバスに接続して使用するステップと、前記第2の接続部を介して前記第1のアナログ式フィールド機器を前記フィールドバスアダプタから取り外すステップと、前記第2の接続部を介して前記第1のアナログ式フィールド機器と異なる第2のアナログ式フィールド機器を前記フィールドバスアダプタに接続することで、前記第2のアナログ式フィールド機器を、前記フィールドバスアダプタを介して前記フィールドバスに接続して使用するステップと、を備えることを特徴とする。
このフィールドバスアダプタの使用方法によれば、フィールドバスで取り扱われるデジタル信号と、アナログ式フィールド機器で取り扱われるアナログ信号とを、双方向に変換する変換手段を備えるので、任意のアナログ式フィールド機器を、自立型制御システムに取り込むことが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフィールドアダプタによれば、フィールドバスで取り扱われるデジタル信号と、フィールド機器で取り扱われるアナログ信号とを、双方向に変換する変換手段を備えるので、アナログ式のフィールド機器を、自立型制御システムに取り込むことが可能となる。
【0013】
本発明のフィールドバスアダプタの使用方法によれば、フィールドバスで取り扱われるデジタル信号と、アナログ式フィールド機器で取り扱われるアナログ信号とを、双方向に変換する変換手段を備えるので、任意のアナログ式フィールド機器を、自立型制御システムに取り込むことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態のフィールドバスアダプタが使用されるフィールド制御システムの構成を示すブロック図。
【図2】無線フィールド機器に対応可能なフィールドバスアダプタの構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明によるフィールドバスアダプタの実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態のフィールドバスアダプタが使用されるフィールド制御システムの構成を示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、フィールド制御システムは、アナログ式のフィールド機器1A、アナログ式のフィールド機器1B、およびFOUNFATION fieldbusのフィールドバスプロトコルに準拠したFFフィールドバス機器であるフィールド機器1Cなど、複数の形式のフィールド機器を含んで構成される。
【0018】
図1に示すように、アナログ式のフィールド機器1Aおよびアナログ式のフィールド機器1Bは、それぞれフィールドバスアダプタ2を介してバス3に接続される。バス3は、FOUNFATION fieldbus(以下、「FF」と表現されることもある)のフィールドバスプロトコルに準拠したFF H1バスまたはHSEバスである。FFフィールドバス機器であるフィールド機器1Cは、直接、バス3に接続される。
【0019】
フィールド機器群の上位には、フィールド機器群に対する操作監視のほか、フィールド制御システム各部のメンテナンスを行うための操作監視装置4が設けられ、操作監視装置4はバス3に接続されている。
【0020】
図1に示すように、フィールドバスアダプタ2には、フィールド機器が接続される接続部2aおよびバス3が接続される接続部2bが設けられている。接続部2aはフィールド機器に対して着脱可能とされ、接続部2aにおける接続、取り外し作業により、フィールドバスアダプタ2に接続されるフィールド機器を切り替えることができる。また、接続部2bはバス3に対して着脱可能とされ、接続部2bを介してバス3の任意の位置にフィールドバスアダプタ2を接続することができる。
【0021】
図1に示すように、フィールドバスアダプタ2は、バス3に対応するFF H1バスまたはHSEに準拠するプロトコルスタック21と、VFD(Virtual Field Device)オブジェクト22と、アナログ/デジタル変換部23と、を備える。
【0022】
VFDオブジェクト22はFF標準仕様に準拠しており、ファンクションブロックアプリケーション22Aを持つ。なお、VFDオブジェクト22はNMA-VFDを持つが、本発明と直接関係しないため、図示を省略している。
【0023】
図1に示すように、ファンクションブロックアプリケーション22Aは、FF標準仕様に準拠している機能ブロックであるAIブロック22aおよびAOブロック22bを持つ。なお、ファンクションブロックアプリケーション22Aに、FF標準仕様に準拠している機能ブロックであるDIブロックおよびDOブロックを追加して持たせることもできる。
【0024】
図1に示すように、アナログ/デジタル変換部23は、HART用のI/OプロセスおよびBRAIN用のI/Oプロセスの双方に対応している。これにより、HARTまたはBRAINに準拠するアナログ式のフィールド機器を使用可能としている。
【0025】
次に、本実施形態のフィールドバスアダプタの動作について説明する。
【0026】
フィールド機器1AのPV(Primary Value)をバス3に出力する場合には、アナログ/デジタル変換部23は、4−20mAのアナログ信号であるフィールド機器1AのPVを読み出して、デジタル値に変換する。このデジタル値はファンクションブロックアプリケーション22AのAIブロック22aに入力され、AIブロック22aにおける演算結果であるデジタルデータがプロトコルスタック21を介してバス3に出力される。このデジタルデータは、フィールド機器1B、フィールド機器1Cを含む他のフィールド機器や操作監視装置4に入力され利用される。
【0027】
一方、他のフィールド機器あるいは操作監視装置4からバス3に出力されたデジタルデータは、プロトコルスタック21を介してファンクションブロックアプリケーション22AのAOブロック22bに入力される。AOブロック22bにおける演算結果はアナログ/デジタル変換部23においてアナログ値に変換され、フィールド機器1Aに入力される。
【0028】
フィールド機器1Bからバス3へのデータ出力、およびバス3からフィールド機器1Bへのデータ入力は、フィールド機器1Bとバス3との間に接続されたフィールドバスアダプタ2を介して、同様に実行される。
【0029】
フィールド機器1Aやフィールド機器1BをFFフィールドバス機器と同様に取り扱うために必要な設定は、プロトコルスタック21を経由してFF標準仕様に準拠した方法で実行される。
【0030】
以上のように、本実施形態のフィールドバスアダプタによれば、アナログ式のフィールド機器とバスの間に接続することにより、FFフィールドバス機器と同様に、アナログ式のフィールド機器を自立型のフィールド制御システムにより制御することが可能となる。
【0031】
また、アプリケーションファンクションブロックをFF標準仕様に準拠するものとしているので、幅広い機種のフィールド機器に適用することが可能となるとともに、接続されるフィールド機器に特有の機器パラメータの操作を必要とせずに、フィールドバスアダプタを変換器として機能させることができる。
【0032】
さらに、アプリケーションファンクションブロックの処理内容をデータの入出力機能に限定しているので、フィールドバスアダプタの汎用性を高めることができるとともに、通常のFFフィールドバス機器のプログラムに比べて実装サイズを大幅に縮小でき、メモリ等の資源を節約できる。
【0033】
また、フィールドバスアダプタの汎用性を高めているため、図1に示すように、例えば、それまでフィールド機器として使用していたフィールド機器1Aを接続部2aから取り外し、接続部2aを介してフィールド機器1Dを接続するだけで、以降はフィールド機器1DをFFフィールドバス機器と同様に取り扱うことが可能となる。この場合、フィールド機器1Dの機種や機能は、フィールド機器1Aと異なっていてもよい。このように、フィールドバスアダプタ2を様々なフィールド機器に対して使い回すことができ、コストダウンやハードウェア資源の節約、あるいはエンジニアリング作業の負担軽減を図ることができる。
【0034】
図2は、無線フィールド機器に対応可能なフィールドバスアダプタの構成例を示すブロック図である。図2において図1と同一構成要素には同一符号を付している。
【0035】
図2に示すように、フィールドバスアダプタ20には、ISA100.11用プロセスを実行するISA100.11用プロセス処理部25が設けられている。これにより、無線フィールド機器10とISA100.11用プロセス処理部25との間での無線通信を介して、無線フィールド機器10がバス3に接続される。この場合、ファンクションブロックアプリケーション22AにDIブロック22cおよびDOブロック22dを設けることで、プロトコルスタック21、ファンクションブロックアプリケーション22AおよびISA100.11用プロセス処理部25を介して無線フィールド機器10とバス3との間でデータ入出力が行われる。このデータ入出力時には、アナログ/デジタル変換部23は使用されない。
【0036】
このように、フィールドバスアダプタ20にISA100.11用プロセス処理部25を設けることにより、無線フィールド機器10をFFフィールドバス機器と同様に取り扱うことが可能となる。
【0037】
上記実施形態では、フィールドバスアダプタに1つのVFDオブジェクトを実装する例を示しているが、フィールドバスアダプタにVFDオブジェクトを複数実装することにより、複数のフィールド機器を1台のフィールドバスアダプタによってバス3に接続することが可能となる。
【0038】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、デジタル信号を取り扱うフィールドバスと、アナログ信号を取り扱うフィールド機器との間に接続されるフィールドバスアダプタに対し、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
2a 接続部(第2の接続部)
2b 接続部(第1の接続部)
22 ファンクションブロックアプリケーション(変換手段)
23 アナログ/デジタル変換部(変換手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル信号を取り扱うフィールドバスと、アナログ信号を取り扱うフィールド機器との間に接続されるフィールドバスアダプタであって、
前記フィールドバスに対して着脱可能とされた第1の接続部と、
前記フィールド機器に対して着脱可能とされた第2の接続部と、
前記第1の接続部および前記第2の接続部の間に設けられ、前記フィールドバスで取り扱われるデジタル信号と、前記フィールド機器で取り扱われるアナログ信号とを、双方向に変換する変換手段と、
を備えることを特徴とするフィールドアダプタ。
【請求項2】
前記アナログ信号は4−20mA信号であることを特徴とする請求項1に記載のフィールドアダプタ。
【請求項3】
前記フィールドバスは、FOUNDATION fieldbusに準拠するバスであることを特徴とする請求項1または2に記載のフィールドアダプタ。
【請求項4】
前記変換手段は、ファンクションブロックアプリケーションを含んで構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィールドアダプタ。
【請求項5】
前記変換手段は、複数の規格の前記フィールド機器に対応可能とされることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィールドアダプタ。
【請求項6】
デジタル信号を取り扱うフィールドバスと、アナログ信号を取り扱うアナログ式フィールド機器との間に接続されるフィールドバスアダプタの使用方法であって、
前記フィールドバスに対して着脱可能とされた第1の接続部と、
前記アナログ式フィールド機器に対して着脱可能とされた第2の接続部と、
前記第1の接続部および前記第2の接続部の間に設けられ、前記フィールドバスで取り扱われるデジタル信号と、前記アナログ式フィールド機器で取り扱われるアナログ信号とを、双方向に変換する変換手段と、
を備え、
前記フィールドバスアダプタの使用方法は、
前記第2の接続部を介して第1のアナログ式フィールド機器を前記フィールドバスアダプタに接続することで、前記第1のアナログ式フィールド機器を、前記フィールドバスアダプタを介して前記フィールドバスに接続して使用するステップと、
前記第2の接続部を介して前記第1のアナログ式フィールド機器を前記フィールドバスアダプタから取り外すステップと、
前記第2の接続部を介して前記第1のアナログ式フィールド機器と異なる第2のアナログ式フィールド機器を前記フィールドバスアダプタに接続することで、前記第2のアナログ式フィールド機器を、前記フィールドバスアダプタを介して前記フィールドバスに接続して使用するステップと、
を備えることを特徴とするフィールドバスアダプタの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−29978(P2013−29978A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165408(P2011−165408)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】