説明

フィールド機器及びダウンロードファイル提供方法

【課題】ホストコンピュータやダウンロードツール等の上位装置の機能に依存することなく、有償価値のあるソフトウェアを制限的にダウンロードできるフィールド機器並びにダウンロードファイル提供方法を実現する。
【解決手段】上位装置からダウンロードされるソフトウェアに基づいて稼動するフィールド機器において、
前記ソフトウェア及び前記フィールド機器の機器固有情報を有するダウンロードファイルを、前記上位装置からのダウンロードにより取得し、前記フィールド機器の機器固有情報と前記ダウンロードファイルの機器固有情報とを照合する照合管理部を備え、
この照合管理部は、照合結果に基づいて前記ダウンロードファイルのソフトウェアのダウンロードを許可又は不許可する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上位装置からダウンロードされるソフトウェアに基づいて稼動するフィールド機器及びダウンロードファイル提供方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザ環境で稼動しているフィールド機器のソフトウェア(ファームウェア)を、メーカ側で作成したソフトウェアにアップグレードする場合、機器のハードウェアを交換する必要があった。
【0003】
近年では、フィールド機器(例えば、FOUNDATION FIELDBUSに準拠したフィールド機器)にソフトウェアダウンロード機能が搭載されるようになり、フィールドバス通信を介して、ホストコンピュータや専用のダウンロードツール等の上位装置からフィールド機器へソフトウェアをダウンロードすることできる。
【0004】
これにより、機器本体の交換をせずにソフトウェアのアップグレードをすることが可能となった。そして、機器へ新たなソフトウェアをダウンロードすることによって、機器が持つ機能を追加・向上させることができ、機器としての付加価値向上が可能となった。
【0005】
これに伴い、そのソフトウェア自体を商品として(有償価値のあるソフトウェアとして)機器メーカからユーザに提供するという、ソフトウェアビジネスの確立も検討され始めている。
【0006】
従来技術におけるソフトウェアの有償提供手段の例としては、専用のライセンスを用いた手法が挙げられる。この手法の特徴は、ダウンロードする機器台数に応じたライセンスを有償で提供することと、ホストコンピュータやダウンロードツール等の上位装置が、ライセンス情報からダウンロード可能な残回数を確認し、ソフトウェアのダウンロードを管理する。
【0007】
ホストコンピュータやダウンロードツール等の上位装置は、有償価値のあるソフトウェアをフィールド機器へダウンロードする際、その専用ライセンスを判断材料としてソフトウェアのダウンロード可否を判定し、フィールド機器へダウンロードを許可する。
【0008】
ダウンロード台数に応じたライセンスを提供するのは、プラントの規模によってダウンロード対象の台数が大きく異なるフィールド機器の特性を考慮したためである。このような手法は、特許文献1に開示された技術を用いて実現されている。
【0009】
図3は、従来のフィールド機器及びダウンロードファイルの提供方法を説明する機能ブロック図である。鎖線のブロックAで示すユーザ環境において稼動する分散型制御システムは、制御バス10に接続された操作・監視機能を持つホストコンピュータ20及びフィールドコントローラ30を備える。
【0010】
フィールドコントローラ30は、ホストコンピュータ20と制御バス10を介して通信すると共に、フィールドバス40を介してプラントに配置されている複数のフィールド機器51,52,…5nと通信する。
【0011】
ホストコンピュータ20は、ダウンロード部21及びライセンス管理部22を備えている。機器製造メーカBより有償提供されたダウンロードファイル60は、ホストコンピュータ20のダウンロード部21に設定され、ダウンロードファイルに含まれるソフトウェアが、制御バス10、フィールドコントローラ30、フィールドバス40を介してプラントに配置されている複数のフィールド機器51,52,…5nにダウンロードされる。ダウンロード対象のフィールド機器として51を例示すれば、ダウンロードされたソフトウェアは、ソフトウェア保持部51aに設定される。
【0012】
ダウンロードファイル60と共に機器製造メーカBより提供されるライセンスファイル70は、ホストコンピュータ20が備えるライセンス管理部22に設定され、その専用ライセンスを判断材料としてソフトウェアのダウンロード可否を判定し、フィールド機器へダウンロードを許可する指令をダウンロード部21に与える。
【0013】
図4は、従来のダウンロードファイルの提供方法の手順を示すフローチャートである。例として、ホストコンピュータ20より10台のフィールド機器へソフトウェアをダウンロードする際の流れを示す。
【0014】
ステップS1では、ホストコンピュータにダウンロード対象機器用のダウンロードファイルと10台分のライセンスを設定する。ステップS2のチェックで、ホストコンピュータはライセンスをチェックし、ダウンロードの可否を判断する。
【0015】
ステップS2のチェックで、ダウンロード許可であれば、ステップS3に進み、ホストコンピュータからフィールド機器へソフトウェアをダウンロードし、ステップS4で機器はアップグレードされる。ステップS2のチェックで、ダウンロード不許可であればステップS5に進み、ダウンロード不許可と判断し、処理を終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2006−139352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従来技術におけるダウンロードファイル提供方法の1つの特徴は、ソフトウェアの有償提供を、ホストコンピュータやダウンロードツール等の上位装置が備えるライセンス管理機能で実現していることにある。この場合、ホストコンピュータやダウンロードツールがその管理機能を備えている必要があり、ホストコンピュータやダウンロードツールの機能に依存されてしまう。
【0018】
例えばFOUNDATION FIELDBUSに準拠したフィールド機器の場合、フィールド機器はダウンロードされるソフトウェアの機種情報やレビジョン情報等のチェック機能を持つが、有償ファイルか否かのチェックはしていない。
【0019】
そのため、ライセンス管理機能を持たないホストコンピュータやダウンロードツールを用いてソフトウェアをダウンロードする場合には、有償価値のあるソフトウェアも無制限にフィールド機器にダウンロードすることが可能となってしまう。
【0020】
本発明の目的は、ホストコンピュータやダウンロードツール等の上位装置の機能に依存することなく、有償価値のあるソフトウェアを制限的にダウンロードできるフィールド機器並びにダウンロードファイル提供方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
このような課題を達成するために、本発明は次の通りの構成になっている。
(1)上位装置からダウンロードされるソフトウェアに基づいて稼動するフィールド機器において、
前記ソフトウェア及び前記フィールド機器の機器固有情報を有するダウンロードファイルを、前記上位装置からのダウンロードにより取得し、前記フィールド機器の機器固有情報と前記ダウンロードファイルの機器固有情報とを照合する照合管理部を備え、
この照合管理部は、照合結果に基づいて前記ダウンロードファイルのソフトウェアのダウンロードを許可又は不許可することを特徴とするフィールド機器。
【0022】
(2)前記機器固有情報は、前記フィールド機器個別の識別情報であることを特徴とする(1)に記載のフィールド機器。
【0023】
(3)前記機器固有情報は、前記フィールド機器の型名及び所定期間の製造年月日であることを特徴とする(1)に記載のフィールド機器。
【0024】
(4)上位装置からダウンロードされるソフトウェアに基づいて稼動するフィールド機器への前記ソフトウェアのダウンロードファイル提供方法において、
前記ソフトウェア及び前記フィールド機器の機器固有情報を有するダウンロードファイルを、前記上位装置から前記フィールド機器にダウンロードする第1ステップと、
前記フィールド機器の機器固有情報と前記ダウンロードファイルの機器固有情報とを照合する第2ステップと、
照合結果に応じて、前記ダウンロードファイルのソフトウェアのダウンロードを許可又は不許可する第3ステップと、
を備えることを特徴とするダウンロードファイル提供方法。
【0025】
(5)前記機器固有情報は、前記フィールド機器個別の識別情報であることを特徴とする(4)に記載のダウンロードファイル提供方法。
【0026】
(6)前記機器固有情報は、前記フィールド機器の型名及び所定期間の製造年月日であることを特徴とする(4)に記載のダウンロードファイル提供方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、次のような効果を期待することができる。
(1)ホストコンピュータやダウンロードツール等の上位装置の機能に依存することなく、有償価値のあるソフトウェアを制限的にダウンロードできるフィールド機器並びにダウンロードファイル提供方法を実現することができる。
【0028】
(2)ダウンロード対象のフィールド機器が複数台である場合には、その対象となる各フィールド機器の固有情報を、1ファイル内にすべて記述することができる。従って、ダウンロード対象フィールド機器の台数に依存することなく、ソフトウェア有償価値を維持したダウンロードファイルの提供が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を適用した、フィールド機器及びダウンロードファイルの提供方法を説明する機能ブロック図である。
【図2】本発明によるダウンロードファイルの提供方法の手順を示すフローチャートである。
【図3】従来のフィールド機器及びダウンロードファイルの提供方法を説明する機能ブロック図である。
【図4】従来のダウンロードファイルの提供方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明を適用した、フィールド機器及びダウンロードファイルの提供方法を説明する機能ブロック図である。図4で説明した従来構成と同一要素には、同一符号を付して説明を省略する。
【0031】
本発明において、機器製造メーカよりユーザに有償提供されるダウンロードファイル100は、フィールド機器を稼動させるためのソフトウェア101や従来から保持している情報(ソフトウェアの対象機種やレビジョンを示す情報)の他に、ダウンロード対象機器を特定するためのユニーク情報Fで示す機器固有情報102を備えている。
【0032】
1つのダウンロードファイルを複数のフィールド機器へダウンロードする場合には、そのダウンロードファイルの機器固有情報102には、ダウンロード対象となる各フィールド機器のユニーク情報Fをすべて保持する。
【0033】
ユニーク情報Fの例としては、
(a)フィールド機器を個々に特定することが可能な機器識別情報(ID番号等)。
(b)ある決まった条件の機器を特定することが可能な製造年月日の範囲及び型名。
等が挙げられる。
【0034】
ホストコンピュータ20のダウンロード部21からダウンロードされるダウンロードファイル100を取得するフィールド機器501,502,…50nの構成上の特徴を、フィールド機器501を代表として説明する。
【0035】
フィールド機器501は、ダウンロードファイル100のソフトウェアを取得して保持するソフトウェア保持部501a及びダウンロードファイル100のユニーク情報Fを取得する照合管理部501bを備える。
【0036】
照合管理部501bは、夫々のフィールド機器が備える機器固有情報保持部501cの情報を参照し、ダウンロードファイル100から取得したユニーク情報Fと比較し、ダウンロードファイル100に含まれるソフトウェア101をソフトウェア保持部501aにダウンロードすべきか否かを判断する機能を備える。
【0037】
即ち、フィールド機器が備える機器固有情報が、ユニーク情報Fで特定する機器固有情報と一致している場合には、ソフトウェア保持部501aにソフトウェアのダウンロードを許可し、一致していない場合にはダウンロードを不許可とする。
【0038】
本発明において、上位装置からダウンロードされるソフトウェアに基づいて稼動するフィールド機器への前記ソフトウェアのダウンロードファイル提供方法の特徴は、
(1)ソフトウェア及びフィールド機器の機器固有情報を有するダウンロードファイルを、上位装置からフィールド機器にダウンロードする第1ステップ。
(2)フィールド機器の機器固有情報とダウンロードファイルの機器固有情報とを照合する第2ステップ。
(3)照合結果に応じて、ダウンロードファイルのソフトウェアのダウンロードを許可又は不許可する第3ステップ。
よりなる。
【0039】
図2は、本発明によるダウンロードファイルの提供方法の手順を示すフローチャートである。ステップS1では、ホストコンピュータにダウンロード対象機器用のユニーク情報Fを含むダウンロードファイルを設定し、ステップS2でフィールド機器にダウンロードする(第1ステップ)。
【0040】
ステップS3のチェックで、フィールド機器の照合部はユニーク情報Fをチェックし、ダウンロードの可否を判断する(第2ステップ)。
【0041】
ステップS3のチェックで、ダウンロード許可であれば、ステップS4に進み、ホストコンピュータからフィールド機器へソフトウェアをダウンロードし、ステップS5で機器はアップグレードされる。ステップS3のチェックで、ダウンロード不許可であればステップS6に進み、ダウンロード不許可と判断し、処理を終了する(第3ステップ)。
【符号の説明】
【0042】
A ユーザ環境
B 機器製造メーカ
10 制御バス
20 ホストコンピュータ
21 ダウンロード部
30 フィールドコントローラ
40 フィールドバス
100 ダウンロードファイル
101 ソフトウェア
102 機器固有情報
501,502,…50n フィールド機器
501a ソフトウェア保持部
501b 照合管理部
501c 機器保有情報保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位装置からダウンロードされるソフトウェアに基づいて稼動するフィールド機器において、
前記ソフトウェア及び前記フィールド機器の機器固有情報を有するダウンロードファイルを、前記上位装置からのダウンロードにより取得し、前記フィールド機器の機器固有情報と前記ダウンロードファイルの機器固有情報とを照合する照合管理部を備え、
この照合管理部は、照合結果に基づいて前記ダウンロードファイルのソフトウェアのダウンロードを許可又は不許可することを特徴とするフィールド機器。
【請求項2】
前記機器固有情報は、前記フィールド機器個別の識別情報であることを特徴とする請求項1に記載のフィールド機器。
【請求項3】
前記機器固有情報は、前記フィールド機器の型名及び所定期間の製造年月日であることを特徴とする請求項1に記載のフィールド機器。
【請求項4】
上位装置からダウンロードされるソフトウェアに基づいて稼動するフィールド機器への前記ソフトウェアのダウンロードファイル提供方法において、
前記ソフトウェア及び前記フィールド機器の機器固有情報を有するダウンロードファイルを、前記上位装置から前記フィールド機器にダウンロードする第1ステップと、
前記フィールド機器の機器固有情報と前記ダウンロードファイルの機器固有情報とを照合する第2ステップと、
照合結果に応じて、前記ダウンロードファイルのソフトウェアのダウンロードを許可又は不許可する第3ステップと、
を備えることを特徴とするダウンロードファイル提供方法。
【請求項5】
前記機器固有情報は、前記フィールド機器個別の識別情報であることを特徴とする請求項4に記載のダウンロードファイル提供方法。
【請求項6】
前記機器固有情報は、前記フィールド機器の型名及び所定期間の製造年月日であることを特徴とする請求項4に記載のダウンロードファイル提供方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−198273(P2010−198273A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41876(P2009−41876)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】