説明

フィールド無線監視表示装置

【課題】集中して配置されている各デバイスの状態を、表示画面を部分拡大することなく個別に目視確認できるフィールド無線監視表示装置を実現すること。
【解決手段】プラントエリアにおける無線通信機能を有するフィールド機器の設置場所に、少なくとも各フィールド機器を表す所定のアイコンと各フィールド機器の信号送信経路を所定の線分で表示するように構成されたフィールド無線監視表示装置において、
集中配置されている前記フィールド機器をグループ化し所定のアイコンで表示するとともに、グループの内容は選択的にフィールド機器のリスト、プラントの配線図、フィールド機器の配置画像、フィールド機器のアイコンのいずれかの所定の形式で表示することを特徴とするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィールド無線監視表示装置に関し、詳しくは、無線通信機能を有するフィールド機器で構成される工業用フィールド無線システムの通信状態を監視表示する装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の無線技術の進化に伴い、産業界でも無線が活用されつつある。2009年9月、国際計測制御学会(ISA:International Society of Automation)は、インダストリアルオートメーション用無線通信規格ISA100.11aを、ISA規格として発行した。ISA100.11aは、冗長化を含む高信頼性、ネットワークの拡張性、各種インダストリアルオートメーション用のプロトコル対応など、多くの特長を持つものである(非特許文献1)。
【0003】
プラントを構成するフィールド機器と制御システム間の通信を無線を介して行う無線システム化することにより、配線やエンジニアリングコストを削減できる、配線が困難な場所にも機器の設置が可能になる、機器の追加・削除が容易であるなど、多くのメリットが得られ、これらのメリットを活用することで今までの配線では不可能とされていた現場での計装の実現も期待できる。
【0004】
このように構成される無線システムにおいて、フィールド機器と制御システム間の通信が異常になると、プラントを安定に運転できなくなってしまう。
【0005】
そこで、従来から、たとえば図5に示すようなフィールド無線監視表示装置が用いられている。図5において、フィールド無線監視表示装置は、無線通信設定監視用ソフトウェアに基づいて動作する監視用PC10で構成されている。監視用PC10は、たとえばCPU11と操作部12とメモリ13と通信部14と表示部15が、内部バスBを介して接続されている。
【0006】
表示部15の表示画面には、プラントエリアの見取図が表示されていて、その見取図上のプラントを構成する各フィールド機器の設置場所には各フィールド機器を表す所定のアイコン(B(バックボーンルータ)、R(ルーティングデバイス)、I(I/Oデバイス))とそれぞれの機器タグ(BBR01、DEV01〜11、TMP01)が表示され、さらに各フィールド機器の信号送信経路が矢印付の線分で表示されている。
【0007】
具体的には、ルーティングデバイスDEV07はルーティングデバイスDEV04に向けて送信し、ルーティングデバイスDEV04はルーティングデバイスDEV01とバックボーンルータBBR01に向けて送信し、ルーティングデバイスDEV01はバックボーンルータBBR01に向けて送信している。
【0008】
I/OデバイスDEV02、DEV05、DEV06、DEV08、DEV09、DEV10およびDEV11は、それぞれバックボーンルータBBR01に向けて送信している。
【0009】
ルーティングデバイスTMP01はルーティングデバイスDEV03とバックボーンルータBBR01に向けて送信し、ルーティングデバイスDEV03はバックボーンルータBBR01に向けて送信している。
【0010】
ところで、プラントを構成する各フィールド機器は、I/OデバイスDEV05、DEV08、DEV09、DEV10およびDEV11のように、広いプラントエリアの特定の場所に集中して配置されることがある。そこで、これら集中配置された各フィールド機器のアイコン表示を見やすくするために、たとえば図6に示すように、必要に応じて図示しない拡大縮小ボタンを操作して注目部分(破線で囲んだ領域)を拡大縮小表示することが行われている。
【0011】
非特許文献1には、ISA規格として発行されたインダストリアルオートメーション用無線通信規格ISA100.11aについて記載されている。
【0012】
特許文献1には、ユーザがネットワーク環境のグループ・ビューを動的に生成するとともに、新たなグループ・ビューを含む更新されたリストを表示することについて記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】山本 周二、外2名、「計装を革新するISA100.11a準拠フィールド無線ソリューション」、横河技報、横河電機株式会社、2010年、Vol.53 No.2(2010) p.69−74
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2000−82029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、図5および図6に示すような従来の構成によれば、集中して配置されている各デバイスを個別に見ようとして表示画面を部分拡大するとプラントエリア全体が見えなくなってしまい、逆にプラントエリア全体を見ようとすると集中して配置されている個別のデバイスが見えなくなってしまう。
【0016】
本発明は、このような課題を解決するものであり、その目的は、集中して配置されている各デバイスの状態を、表示画面を部分拡大することなく個別に目視確認できるフィールド無線監視表示装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
プラントエリアにおける無線通信機能を有するフィールド機器の設置場所に、少なくとも各フィールド機器を表す所定のアイコンと各フィールド機器の信号送信経路を所定の線分で表示するように構成されたフィールド無線監視表示装置において、
集中配置されている前記フィールド機器をグループ化し所定のアイコンで表示するとともに、グループの内容は選択的にフィールド機器のリスト、プラントの配線図、フィールド機器の配置画像、フィールド機器のアイコンのいずれかの所定の形式で表示することを特徴とする。
【0018】
請求項2の発明は、請求項1記載のフィールド無線監視表示装置において、
前記プラントエリアは、地図および航空写真のいずれかを含む背景画像上に各フィールド機器およびフィールド機器のグループを表す所定のアイコンを配置して表示されていることを特徴とする。
【0019】
請求項3の発明は、請求項1記載のフィールド無線監視表示装置において、
前記プラントエリアは、トポロジー形式で表示されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
これらにより、集中配置されている各デバイスの状態を、表示画面を部分拡大することなく個別に目視確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に基づく表示画面例図である。
【図2】本発明の表示画面における表示色の割当例図である。
【図3】本発明の表示画面におけるデバイスグループの詳細リスト図である。
【図4】本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図5】従来のフィールド無線監視表示装置の一例を示すブロック図である。
【図6】図5の表示画面例図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に基づく表示画面例図であり、図5および図6と共通する部分には同一の符号を付けている。
【0023】
図1において、集中配置されている複数のI/OデバイスDEV05、DEV08、DEV09、DEV10およびDEV11は、機器タグがGRP01のデバイスグループとしてグループ化されてグループオブジェクトとして登録されていて、デバイスグループを表す所定のアイコンで表示されている。
【0024】
バックボーンルータはBBR01とBBR02の2台が設けられていて、これらバックボーンルータBBR01とBBR02は、時刻同期を行うために1点鎖線で示す信号線を介して相互に接続されている。
【0025】
なお、これらバックボーンルータBBR01とBBR02は、設定ブロック20と監視ブロック30とBBR接続部40を主要部として構成される監視用PC10に接続されている。BBR接続部40は、2台のバックボーンルータBBR01とBBR02を同時に並行駆動したり、いずれか一方で監視用PC10との間で信号の授受を行い他方を予備として冗長化するように接続を切替制御する。
【0026】
これらデバイスグループGRP01と追加されたバックボーンルータBBR02を含む各フィールド機器の信号送信経路は、図5および図6と同様に、矢印付の線分で表示されている。信号送信経路は、実線で表示されるプライマリ経路と、破線で表示されるセカンダリ経路の2種類が設けられている。なお、プライマリ信号は各フィールド機器から必ず送信されるが、セカンダリ信号は設置現場の状況などに応じて必要なフィールド機器から送信するように選択的に設定される。
【0027】
具体的には、ルーティングデバイスDEV07はルーティングデバイスDEV04に向けてプライマリ信号を送信するとともにルーティングデバイスDEV01に向けてセカンダリ信号を送信し、ルーティングデバイスDEV04はバックボーンルータBBR01に向けてプライマリ信号だけを送信する。
【0028】
ルーティングデバイスDEV01はバックボーンルータBBR02に向けてプライマリ信号を送信するとともにルーティングデバイスDEV04に向けてセカンダリ信号を送信し、デバイスグループGRP01はバックボーンルータBBR01に向けてプライマリ信号を送信するとともにルーティングデバイスDEV03に向けてセカンダリ信号を送信する。
【0029】
ルーティングデバイスTMP01はバックボーンルータBBR01に向けてプライマリ信号を送信するとともにルーティングデバイスDEV04に向けてセカンダリ信号を送信し、I/OデバイスDEV02はルーティングデバイスDEV01に向けてプライマリ信号を送信するとともにルーティングデバイスDEV03に向けてセカンダリ信号を送信する。
【0030】
I/OデバイスDEV06はルーティングデバイスDEV04に向けてプライマリ信号を送信するとともにルーティングデバイスDEV01に向けてセカンダリ信号を送信し、ルーティングデバイスDEV03はルーティングデバイスDEV04に向けてプライマリ信号を送信するとともにルーティングデバイスDEV01に向けてセカンダリ信号を送信する。
【0031】
図1の表示画面に表示される機器タグの文字色、各フィールド機器の表示色および時刻同期経路を含む各信号送信経路の表示色は、図2に示すように、各表示項目の値のそれぞれの動作状態ランクに応じて、黒、薄緑、緑、赤、黄のいずれかの所定の色に変化する。
【0032】
表示項目「接続状況」において、値は「接続処理中」、「接続済」、「未接続」の3つに分類される。「接続処理中」の状態ランクは「正常」と判断されて、文字色は黒、機器色は薄緑、経路色は緑で表示される。「接続済」の状態ランクも「正常」と判断されて、文字色は黒、機器色は緑、経路色は緑で表示される。「未接続」の状態ランクは「エラー」と判断されて、文字色は赤、機器色も赤、経路色も赤で表示される。
【0033】
表示項目「信号強度」において、値として「閾値未満」が検出されると、状態ランクは「警告」と判断されて、文字色は赤、機器色は黄、経路色も黄で表示される。
【0034】
表示項目「PER:パケットエラーレート」において、値として「閾値以上」が検出されると、状態ランクは「警告」と判断されて、文字色は赤、機器色は黄、経路色も黄で表示される。
【0035】
表示項目「電池寿命」において、値として「閾値未満」が検出されると、状態ランクは「警告」と判断されて、文字色は赤、機器色は黄、経路色も黄で表示される。
【0036】
オペレータは、図1の表示画面に表示されるデバイスグループGRP01の機器タグの文字色、アイコンの表示色または信号送信経路の表示色のいずれかが赤または黄になったことを目視確認することにより、デバイスグループGRP01に属しているI/OデバイスDEV05、DEV08、DEV09、DEV10およびDEV11のいずれかに異常が発生したことを把握することができる。
【0037】
デバイスグループGRP01内の詳細は、図3に示すようなデバイスグループGRP01内の詳細リストを、たとえばマウスでアイコンをダブルクリックしたり、右クリックメニューしたり、タッチパネルの場合にはタップなどで選択して、画面上にポップアップ表示させることにより確認できる。
【0038】
図3において、デバイスグループGRP01のプライマリルータとしてバックボーンルータBBR01を指定するとともにセカンダリルータとしてルーティングデバイスDEV03を指定している。I/OデバイスDEV05、DEV08、DEV09、DEV10およびDEV11はいずれも同じ製造者「***」の同じ型名「DEV110B」である。接続状況は、I/OデバイスDEV05のみが「接続済」で、他はいずれも「未接続」になっている。このリスト画面は、下部に設けられている「Close」ボタンを操作することで閉じることができる。
【0039】
なお、図3のようなポップアップ画面に代えて、デバイスグループGRP01全体の静止画像画面や動画面を表示させてもよい。特に、ウェブカメラなどの動画面を表示することにより、デバイスグループGRP01の設置現場の状況をリアルタイムで的確に把握できる。
【0040】
図4は、本発明に基づく監視用PC10における主要部の一実施例を示すブロック図である。図4において、設定ブロック20は、機器接続設定情報入力部21と、機器接続設定情報格納部22と、機器接続設定制御部23と、グループ情報格納部24とで構成されている。監視ブロック30は、接続状態判定部31、信号強度判定部32、パケットエラー判定部33、電池監視部34、要素別表示色選択部35、表示画面生成部36と、グループ別リスト編集部37と、グループ選択検出部38とで構成されている。これら設定ブロック20と監視ブロック30は、BBR接続部40を介してバックボーンルータBBR01、BBR02に接続されている。
【0041】
設定ブロック20において、機器接続設定情報入力部21は、各フィールド機器について、送信先となるプライマリルータおよびセカンダリルータをそれぞれ設定し、機器接続設定情報格納部22に格納する。機器接続設定制御部23は、機器接続設定情報格納部22に格納されている機器接続設定情報に基づき、プラントエリアに配置されているバックボーンルータBBR01、BBR02を介して各フィールド機器に送信先となるプライマリルータおよびセカンダリルータを設定する。
【0042】
グループ情報格納部24には、グループ化されている各デバイスグループのフィールド機器の属性情報が格納されている。グループ情報格納部24に格納されている各デバイスグループのフィールド機器の属性情報は、グループ別リスト編集部37に入力される。
【0043】
監視ブロック30において、接続状態判定部31、信号強度判定部32、パケットエラー判定部33および電池監視部34には、バックボーンルータBBR01、BBR02を介して各フィールド機器から接続状態情報、信号強度情報、パケットエラー情報および電池監視情報が入力される。
【0044】
接続状態判定部31は、接続状態情報に基づき、「接続処理中」、「接続済」、「未接続」の3つのいずれかを判定して、判定結果を要素別表示色選択部35および表示画面生成部36に入力する。
【0045】
信号強度判定部32は、信号強度情報に基づき、あらかじめ設定されている閾値未満であるか否かを判定して、判定結果を要素別表示色選択部35および表示画面生成部36に入力する。
【0046】
パケットエラー判定部33は、パケットエラーに基づき、あらかじめ設定されている閾値以上であるか否かを判定して、判定結果を要素別表示色選択部35および表示画面生成部36に入力する。
【0047】
電池監視部34は、電池監視情報に基づき、あらかじめ設定されている閾値未満であるか否かを判定して、判定結果を要素別表示色選択部35および表示画面生成部36に入力する。
【0048】
要素別表示色選択部35は、接続状態判定部31、信号強度判定部32、パケットエラー判定部33および電池監視部34から入力される各フィールド機器の判定結果に基づき、各フィールド機器の機器タグの文字色、各フィールド機器のアイコンの表示色および各信号送信経路の表示色について、それぞれ要素別の表示色を割り当てて表示画面生成部36に入力する。
【0049】
表示画面生成部36は、接続状態判定部31、信号強度判定部32、パケットエラー判定部33および電池監視部34から入力される各フィールド機器の判定結果および要素別表示色選択部35から入力される要素別の表示色情報に基づき、表示部に表示される図1のような表示画面を生成する。
【0050】
グループ別リスト編集部37は、グループ情報格納部24から入力される各デバイスグループのフィールド機器の属性情報に基づいて図3に示すようなデバイスグループGRP01内の詳細リストを編集し、表示画面生成部36に入力する。
【0051】
グループ選択検出部38は、オペレータが図1の表示画面上でデバイスグループGRP01のアイコンを選択したことを検出すると、選択されたデバイスグループGRP01に対応したアイコン検出信号を表示画面生成部36に入力する。
【0052】
表示画面生成部36は、グループ選択検出部38から入力されたアイコン検出信号に基づき、図3に示すような選択されたデバイスグループGRP01を構成するフィールド機器の詳細リストをたとえばポップアップ表示する。
【0053】
なお、上記実施例では、プラントエリアの見取図にフィールド機器の単独アイコンとグループアイコンとそれぞれの機器タグおよび信号送信経路をそれぞれの状態に応じて割り当てられた所定の表示色で表示する例について説明したが、グループアイコンの使用は見取図に限るものではなく、地図やトポロジー形式にも使用できる。
【0054】
以上説明したように、本発明によれば、集中して配置されている各デバイスの状態を、表示画面を部分拡大することなく個別に目視確認できるフィールド無線監視表示装置を実現できる。
【符号の説明】
【0055】
10 監視用PC
20 設定ブロック
21 機器接続設定情報入力部
22 機器接続設定情報格納部
23 機器接続設定制御部
30 監視ブロック
31 接続状態判定部
32 信号強度判定部
33 パケットエラー判定部
34 電池監視部
35 要素別表示色選択部
36 表示画面生成部
40 BBR接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントエリアにおける無線通信機能を有するフィールド機器の設置場所に、少なくとも各フィールド機器を表す所定のアイコンと各フィールド機器の信号送信経路を所定の線分で表示するように構成されたフィールド無線監視表示装置において、
集中配置されている前記フィールド機器をグループ化し所定のアイコンで表示するとともに、グループの内容は選択的にフィールド機器のリスト、プラントの配線図、フィールド機器の配置画像、フィールド機器のアイコンのいずれかの所定の形式で表示することを特徴とするフィールド無線監視表示装置。
【請求項2】
前記プラントエリアは、地図および航空写真のいずれかを含む背景画像上に各フィールド機器およびフィールド機器のグループを表す所定のアイコンを配置して表示されていることを特徴とする請求項1記載のフィールド無線監視表示装置。
【請求項3】
前記プラントエリアは、トポロジー形式で表示されていることを特徴とする請求項1記載のフィールド無線監視表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−114471(P2013−114471A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260340(P2011−260340)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】