説明

フイルタ

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、洗濯機の洗濯液や濯ぎ水等の浄化を行うためのフイルタに形状記憶合金ないしは形状記憶樹脂を用いたフイルタの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、特開昭50ー107773号公報、あるいは特開昭50ー107774号公報にあるように、洗濯機の濯ぎ時に濯ぎ水をポンプで循環し濯ぎ水に含まれる粒子の除去や洗剤成分をフイルタで除去して濯ぎ水を浄化するものがあった。これらのフイルタの濾過機能や浄化能力の寿命向上のために特開昭50ー107774号公報では濯ぎ終了時に濯ぎ水の方向を浄化時とは逆方向にしてフイルタに加え、汚垢等を外部に排出して目詰まりを防止していた。
【0003】フイルタの目詰まりを防止するために形状記憶合金を利用した例としては、特開昭60ー58220号公報にあるように濾過体の材料(以下濾材と称す)を形状記憶合金の細線材で形成し、浄化に使用して目詰まりを生じたときにそのフイルタを所定の温度に加熱し形状記憶合金の作用によって目の粗さを変えて不純物粒子を除去するものがある。
【0004】また、実開平1ー61916号公報にあるように、ハウジングに濾材を充填したフイルタ装置のハウジングの上面と下面を波型形状に形成した形状記憶合金の線条体の網で形成し、形状記憶合金の温度変化に伴う線条体の交差部分の摺動作用により濾材に付着した濾垢を分離することを特徴とするフイルタがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前記のように、フイルタの循環水の方向を逆にしてフイルタに付着した粒子や汚垢を外部に排出する方式では正逆回転ポンプの圧力を高くする必要があって、効果的にフイルタを再生することが難しく、綿糸等を含まず形状記憶合金の細線材のみで形成したフイルタでは洗濯液に溶けた洗剤を吸着することができないまた、濾材の上面と下面のみを波型の形状記憶合金線で編んだ網で形成したものでは、変態点以上の温度に加熱したときの網の形状記憶合金線の摺動作用によって表面の濾垢を分離できても濾材の内部までも効果的に再生することができない。
【0006】そこで本発明は、フイルタの濾材と形状記憶合金線を効果的に配することによって洗剤を吸着浄化でき、かつ再生にあたり濾材の内部の濾垢をも分離して排出することが可能な寿命の長いフイルタを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のフイルタは前記のような課題を解決したもので、複数の透孔を有する円柱状の濾芯に綿糸と形状記憶合金線を共に巻きながら所定の厚みに巻き上げて濾材としたものであり、さらに浄化水路とは異なる濾垢の分離排出のための排水路を有し、濾材に設けた温度センサーが循環水の水温が上昇したことを検出すると循環水を排水路に排水するための切換弁を設けたものである。
【0008】さらに、本発明のフイルタは比較的温度の高い循環水の浄化を目的として濾材に綿糸と形状記憶樹脂線を用い、濾芯に綿糸と形状記憶樹脂線をともに巻きあげたものである。
【0009】
【作用】本発明のフイルタは前記構成にて、濾材に綿糸と形状記憶合金線を共に巻いたものをフイルタに用い、循環水が流入路から流入すると循環水中に含まれる洗剤成分が綿糸によって吸着されてごみや粒子等は濾垢として濾材の表面に付着していくが、微粒子ほど表面から濾芯へと濾材の内部に入り込む。そして、一定期間フイルタを使用した後フイルタの流入路から高温の水を注入すると濾材に設けられた温度センサーが温度上昇を検出し切換弁によって循環水の流路を流出路から排水路へ切換える。
【0010】さらに、濾材が温度上昇してゆくと濾材に巻き込まれた形状記憶合金線が温度上昇して収縮し、コイル状に巻かれた形状記憶合金線のコイルの径が縮小変形して綿糸を圧縮する。これにより濾材の内部にまで入り込んだ微粒子や綿糸に吸着された洗剤は濾材の外部に押し出され排水路を経て排水されフイルタが再生される。
【0011】さらに、濾材に綿糸と形状記憶樹脂線を共に巻いたフイルタの場合は、循環水の温度が比較的高い状態で利用され、一定期間フイルタを使用した後フイルタの流入路から低温の水を注入すると、このとき濾材に設けられた温度センサーが温度降下を検出し切換弁によって循環水の流路を排水路へ切換える。
【0012】さらに、濾材が温度降下してゆくと濾材に巻き込まれた形状記憶樹脂線が温度降下することによって収縮し形状記憶樹脂線のコイルの径が縮小変形して綿糸を圧縮し、濾材の内部の微粒子や綿糸に吸着された洗剤は外部に排水されてフイルタが再生される。
【0013】
【実施例】以下、本発明のフイルタの実施例を図面とともに説明する。図1は本発明のフイルタの一実施例を示す概略要部断面図であり、図1において、フイルタのケース1の中心には複数の透孔を有しステンレスやプラスチックからなる円柱状の剛体の濾芯2があり、濾芯2には直径0.03〜0.3mmの形状記憶合金線あるいは直径0.5〜1mmの形状記憶樹脂線が、木綿糸を撚った直径1〜3mmの撚糸と共に撚糸10本に対し1本以上の割合で20mmの厚さに巻かれて濾材3を形成している。
【0014】撚糸と形状記憶合金線あるいは形状記憶樹脂線とは互いに層状に巻いてもよいしランダムに巻いてもよく、ほぼ均等に混在するように巻き上げておく。ほぼ均等に混在するようにするためには木綿糸と形状記憶合金線ないしは形状記憶樹脂線とをあらかじめ撚糸に撚ってから濾芯2に巻き上げてもよい。
【0015】ケース1には蓋4が螺合されておりその蓋4にはパイプからなる循環水の流入路5と流出路6とが接続されており、流入路5からは循環水が矢印aのように箱体1に圧送されて流入し、濾材3を通過して浄化され濾芯2の複数の透孔を通って濾芯2に接続された流出路6から矢印bのように流出する。
【0016】流出路6にはまた排水路7が接続されており、循環水は切換弁8によって切換えられて矢印cのように排水路7流れる。切換弁8の切換えは循環水の温度に従って行われ、濾芯3の表面ないしは内部に設けられた温度センサー9が循環水の温度を検出すると、図示しない検出回路と切換弁駆動部によって流出路6か排水路7のどちらかに切換え駆動される。
【0017】いま、濾材3が撚糸とTi−Ni合金からなる形状記憶合金線のとき、循環水が形状記憶合金の変態点65℃以下であれば循環水は流入路5からケース1に流入し、濾材3を通過するときに溶解している洗剤成分等は撚糸に吸着されて流出路6に流れる。長期間に渡ってフイルタを使用すると不純物やごみ等の微粒子は時間とともに濾材3の表面から内部にまで入り込んで濾材3に付着して行き目詰まりしてフイルタの浄化能力を次第に弱めてゆく。
【0018】所定の時間の後、フイルタの再生のために循環水を変態点65℃を越える高温にすると温度センサー9がそれを検知し図示しない検出回路と切換弁駆動部によって切換弁8を駆動し循環水を排水路7に排水する。濾材3が温度上昇し形状記憶合金線が変態点を越えると濾芯2にコイル状に巻かれている形状記憶合金線は約5%収縮するのでコイルの径がそれによって縮小したりコイルの形状が変形して共に巻かれている撚糸を圧縮する。濾材3の内部にまで入り込んだ不純物やごみ等の微粒子と撚糸に吸着された洗剤等は圧縮されて絞り出され高温の循環水と共に排水路7に排出されてフイルタの再生が行われる。
【0019】つぎに、濾材3が撚糸とエチレンとシクロペンタジェンの共重合体やトランスポリイソプレン、スチレンとブタジェンの共重合体、ポリウレタン等の形状記憶樹脂の場合には、フイルタは比較的高温の循環水の浄化に用いられ、目詰まりによってフイルタの浄化能力が低下したとき、循環水を形状記憶樹脂の変態点65℃以下の温度に下げると温度センサー9がそれを検出し図示しない検出回路と切換弁駆動部はこのとき切換弁8を駆動し循環水を排水路7に排水する。
【0020】濾材3が温度降下し形状記憶樹脂線が変態点以下になると濾芯2にコイル状に巻かれている形状記憶樹脂線は約1%収縮するのでコイルの径がそれによって縮小したりコイルの形状が変形して共に巻かれている撚糸を圧縮する。これにより形状記憶合金の場合と同様にフイルタの再生が行われる。
【0021】図2及び図3は、濾材3の中の形状記憶合金線10が低温から変態点以上の高温になったときに収縮変形して撚糸を圧縮する様子を示しており、図2は濾材3の中の形状記憶合金線10が低温時(変形前)の場合の拡大部分説明図であり、また図3は濾材3の中の形状記憶合金線10が高温時(変形後)の場合の拡大部分説明図である。そして、形状記憶樹脂線についても前記形状記憶合金線10の場合と同様である。
【0022】図4は本発明のフイルタの他の実施例を示す概略要部説明図(直接過熱方式の電極部分の説明図)であり、図4において、濾材3が導電性の形状記憶合金線と撚糸からなる場合について、形状記憶合金線の両端にそれぞれ電極11を設けケース1の外部から電極間に交流電力12を印加することによって形状記憶合金線を直接に加熱して変態点以上の温度にする方法を示しており、循環水の温度を変えることなくフイルタを再生することができる。
【0023】
【発明の効果】本発明のフイルタは前記のような構成であるから、濾材の中にまで入り込んだ不純物やごみ等を循環水の温度を変化あるいは濾材を直接に通電加熱することによって効果的に排出でき、これまで寿命の短かった糸巻きフイルタの再生能力を向上することができる。
【0024】さらに、形状記憶合金線あるいは形状記憶樹脂線を綿糸と共に巻きあげて濾材を形成しそれらと綿糸がほぼ均等に分布して巻かれているので、綿糸のみを巻いたうえにそれら単体のコイルを形成するのに比べて同一の再生能力を発生するためにはそれらの線形を細くすることができ、特に濾材を厚くする必要がある場合に有効である。
【0025】また、濾材の一部に形状記憶樹脂を用いた場合は比較的高温の循環水の浄化を行うことができ、常温の循環水を流入すれば容易にフイルタを再生できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフイルタの一実施例を示す概略要部断面図。
【図2】本発明のフイルタの濾材の中の形状記憶合金線が低温時の場合の拡大部分説明図である。
【図3】本発明のフイルタの濾材の中の形状記憶合金線が高温時の場合の拡大部分説明図である。
【図4】本発明のフイルタの他の実施例を示す概略要部説明図である。
【符号の説明】
2 濾芯
3 濾材
5 流入路
6 流出路
7 排水路
8 切換弁
9 温度センサー
10 形状記憶合金線
12 交流電力

【特許請求の範囲】
【請求項1】 洗剤等の界面活性剤を吸着する綿糸と形状記憶合金線をともに巻いて濾過体を形成し、その濾過体の形状記憶合金線の変態点を越える温度に前記濾過体を加熱することによりフイルタを再生する再生手段を設けてなることを特徴とするフイルタ。
【請求項2】 洗剤等の界面活性剤を吸着する綿糸と形状記憶樹脂線をともに巻いて濾過体を形成し、その濾過体の形状記憶樹脂線の変態点以下に前記濾過体を冷却することによりフイルタを再生する再生手段を設けたことを特徴とするフイルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3151359号(P3151359)
【登録日】平成13年1月19日(2001.1.19)
【発行日】平成13年4月3日(2001.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−206363
【出願日】平成6年8月31日(1994.8.31)
【公開番号】特開平8−71337
【公開日】平成8年3月19日(1996.3.19)
【審査請求日】平成10年7月3日(1998.7.3)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【参考文献】
【文献】特開 昭60−58220(JP,A)
【文献】特開 昭50−107774(JP,A)
【文献】特開 昭50−107773(JP,A)
【文献】実開 平1−61916(JP,U)
【文献】実公 平1−3460(JP,Y2)
【文献】実公 昭46−36379(JP,Y1)