説明

フェニコール抗生物質のカーボネート

本発明は、抗生物質プロドラッグとしての有用な特性を有する、変数が特許請求の範囲に定義の通りの式IおよびIIのフェニコール化合物のカーボネート誘導体に関し、かつ、これらの化合物を作製および使用する方法に関する。本発明は、薬剤として許容される賦形剤または溶媒と合わせて、有効量の式Iまたは式IIによるフェニコールカーボネート化合物もしくはその溶媒和物を含む医薬組成物も含む。フェニコールカーボネートは、組成物の約80重量%〜約5重量%を構成することが好ましい。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、適切な溶媒担体中で、改善された溶解性と低い粘度を有するフェニコール化合物のカーボネートプロドラッグに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
クロラムフェニコール、チアンフェニコールおよびフロルフェニコールは、一般に「フェニコール」として知られている広域抗生物質である。フロルフェニコールは、多くのグラム陰性菌やグラム陽性菌に対して活性を有する広域抗生物質である。フロルフェニコールは、哺乳動物、鳥類、は虫類、魚類および貝類における、感受性病原体に起因する細菌性感染症の予防および治療に有用である。その主要な用途の1つは、マンヘミアヘモリチカ(Mannhemia haemolytica)、パスツレラムルトシダ(Pasteurella multocida)および(または)ヒストフィルスソムニ(Histophilus somni)によって引き起こされるウシの肺炎および関連する呼吸器系感染症(しばしば総称的にウシ呼吸器系疾患またはBRDと称される)の治療におけるものである。これは、フソバクテリウムネクロホラム(Fusobacterium necrophorum)および/またはプレボテラメラニノジェニカス(Prevotella melaninogenicus)によって引き起こされるウシの感染性足皮膚炎、パスツレラムルトシダ、アクチノバチルスプレウロニウモニア(Actinobacillus pleuropneumoniae)、ストレプトコッカススイス(Streptococcus suis)サルモネラコレラスイス(Salmonella cholerasuis)および(または)マイコプラズマ属(Mycoplasma spp.)によって引き起こされるブタの呼吸器系疾患、大腸菌によって引き起こされるニワトリの大腸菌症、エドワジエライクタルリ(Edwardsiella ictaluri)によって引き起こされるナマズの腸敗血症、およびアエロモナスサルモニシダ(Aeromonas salmonicida)によって引き起こされるサケのせつ腫症の治療にも指示される。フロルフェニコールに対して感受性を示す細菌の他の種属には、エンテロバクター属(Enterobacter)、クレブシエラ属(Klebsiella)、スタヒロコッカス属(Staphylococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ボルデテラ属(Bordetella)、プロテウス属(Proteus)および赤痢菌が含まれる。特に、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、E.クロアカエ(E.cloacae)、腸チフス菌(S.typhus)および大腸菌などの有機体のクロラムフェニコール耐性菌は、フロルフェニコールに対して感受性がある。
【0003】
以下に示すように、フロルフェニコールは、ヒトにおけるクロラムフェニコール誘発による非用量依存性の不可逆的再生不良性貧血に関与する芳香族ニトロ基が、メチルスルホニル基で置き換えられたクロラムフェニコールの誘導体であるチアンフェニコールの構造類似物である。
【0004】
【化18】

フロルフェニコールは、クロラムフェニコールおよびチアンフェニコールの第一ヒドロキシル基の代わりにフッ素原子を有するものである。これは、クロラムフェニコールおよびチアンフェニコールの第一ヒドロキシル基をアセチル化するプラスミドコード化酵素、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)を含む細菌による非活性化に対して、フロルフェニコールを、より感受性の低いものにする。アセチル化は、これらの抗生物質が感受性細菌のリボソームサブユニットと結合するのを阻止する。この部類の抗生物質のリボソームサブユニットとの結合は、細菌中での成長ペプチド鎖へのアミノ酸の移動、およびそれに続くタンパク生成に関与するペプチジルトランスフェラーゼの阻害におけるクロラムフェニコールとチアンフェニコールの作用の主要な(しかしそれだけではない)機序をなすものである。
【0005】
フロルフェニコールはその利点から利益を得ることができる対象に経口、皮下または非経口のいずれか(後者は主に筋肉内または静脈内である)で最もしばしば投与される。獣医の場(setting)における経済的な単回投与治療の必要性を考えると、高濃度でのフロルフェニコールの新規な処方物が依然として必要とされている。
【0006】
さらに、治療における経済性の向上を実現するため、例えば、特に獣医の場において単回投与治療をより簡単に提供するために、長期間、効果的な血漿抗生物質濃度を維持できる形態のフロルフェニコールも必要である。
【0007】
当分野の技術では、フロルフェニコールの単回注入による利益の拡大を目指し、フロルフェニコールエステル誘導体をプロドラッグとして考えられている。例えば、Murthyらは、公開されている特許文献1に、酢酸フロルフェニコール、プロピオン酸フロルフェニコール、酪酸フロルフェニコール、ペンタン酸フロルフェニコール、ヘキサン酸フロルフェニコール、ヘプタン酸フロルフェニコール、オクタン酸フロルフェニコール、フロルフェニコールナノエート、デカン酸フロルフェニコール、ウンデカン酸フロルフェニコール、ドデカン酸フロルフェニコールおよびフタル酸フロルフェニコールなどのエステル化フロルフェニコールを記載している。
【0008】
水への高い溶解性とフロルフェニコールリン酸エステルの形態のプロドラッグ活性とを有するフロルフェニコールも、公開されている共同所有の特許文献2に記載されている。
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0014828号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0182031号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それでも、当業界において、経済的な単回投与治療を提供できる、適切な担体中で高い溶解度を有する他のフェニコールが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書のどの文献引用も、そうした文献が「従来技術として」本出願に適用できることを許容するものと解釈されるべきではない。
【0011】
(発明の要旨)
したがって、上記必要性に対処するため、本発明は有用なプロドラッグ特性を有するフェニコールのカーボネート誘導体を提供する。本発明の一実施形態では、式(I)に相当するフェニコールカーボネート化合物を提供する。
【0012】
【化19】

(式中、R
【0013】
【化20】

からなる群から選択され、
はジクロロメチル、ジフルオロメチル、クロルフルオロメチル、クロロメチルおよびメチルからなる群から選択され、
はヒドロキシメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチルおよびCHO−C(O)O−Rからなる群から選択され、
およびRは、置換または非置換C1〜10直鎖、分枝鎖または環状アルキル、置換または非置換C1〜10アルコキシアルキル、C1〜10アリール、C1〜10アリールアルキル、置換または非置換C1〜10直鎖、分枝鎖または環状アルケニルからなる群から独立に選択される)。好ましくは、RはCHFである。特定の実施形態では、RはCHSOであり、RはCHClであり、RはCHFである。さらに、RがNOである場合、RはCHO−C(O)O−Rでない。
【0014】
他の実施形態では、RおよびRは、メチル、メトキシ、カルボキシ、カルボアルコキシおよびアシルオキシからなる群から選択される部分で独立に置換されている。
【0015】
さらに他の実施形態では、RおよびRは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−オクタデシル、2−メチル−ブチル、1−エチル−プロピル、3−メチル−プロプ−2−エニル、2−メトキシ−エチル、2−エトキシ−エチル、2−プロポキシ−エチル、2−ブトキシ−エチル、1−メチル−2−メトキシ−エチル、シクロプロピル−メチル、シクロペンチル−メチル、シクロヘキシル−メチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、3,7−ジメチルオクト−6−エニル、ベンジル、2−メチル−ベンジル、3−メチル−ベンジル、4−メチル−ベンジル、2−メトキシ−ベンジル、3−メトキシ−ベンジル、4−メトキシ−ベンジル、メチル−2−フリル、2−(メトキシ−エトキシ)−エチル、2−(エトキシ−エトキシ)−エチル、2−[2−(メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチル、2−[2−(エトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチル、2−(ヒドロキシ−エトキシ)−エチル、2−[2−(ヒドロキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチル、2−アセトキシ−エチル、2−(アセトキシ−エトキシ)−エチル、3−アセトキシ−プロピル、2−カルボキシ−エチル、3−カルボキシ−プロピル、4−カルボキシ−ブチル、2−メトキシカルボニル−エチル、3−メトキシカルボニル−プロピル、4−メトキシカルボニル−ブチル、2−メトキシカルボニル−ベンジル、3−メトキシカルボニル−ベンジル、4−メトキシカルボニル−ベンジル、1−エトキシカルボニル−エチル、1−メトキシカルボニル−エチル、フェニル、4−メチル−フェニル、4−メトキシ−フェニル、4−カルボキシ−フェニル、2−カルボキシ−フェニル、4−メトキシカルボニル−フェニル、2−メトキシカルボニル−フェニルおよび4−アセチルアミノ−フェニルからなる群から独立に選択される。
【0016】
他の実施形態では、Rは、
【0017】
【化21】

からなる群から選択され、Rはジクロロメチルまたはジフルオロメチルであり、Rはヒドロキシメチル、フルオロメチルおよびCHO−C(O)O−Rからなる群から選択され、任意選択で、R
メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、イソブチル、フェニル、イソペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−オクタデシル、2−メチル−ブチル、1−エチル−プロピル、3−メチル−プロペン−2−エニル、2−メトキシ−エチル、2−エトキシ−エチル、2−プロポキシ−エチル、2−ブトキシ−エチル、1−メチル−2−メトキシ−エチル、シクロプロピル−メチル、シクロペンチル−メチル、シクロヘキシル−メチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、3,7−ジメチルオクト−6−エニル、ベンジル、2−メチル−ベンジル、3−メチル−ベンジル、4−メチル−ベンジル、2−メトキシ−ベンジル、3−メトキシ−ベンジル、4−メトキシ−ベンジル、メチル−2−フリル、2−(メトキシ−エトキシ)−エチル、2−(エトキシ−エトキシ)−エチル、2−[2−(メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチル、2−[2−(エトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチル、2−(ヒドロキシ−エトキシ)−エチル、2−[2−(ヒドロキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチル、2−アセトキシ−エチル、2−(アセトキシ−エトキシ)−エチル、3−アセトキシ−プロピル、2−カルボキシ−エチル、3−カルボキシ−プロピル、4−カルボキシ−ブチル、2−メトキシカルボニル−エチル、3−メトキシカルボニル−プロピル、4−メトキシカルボニル−ブチル、2−メトキシカルボニル−ベンジル、3−メトキシカルボニル−ベンジル、4−メトキシカルボニル−ベンジル、1−エトキシカルボニル−エチル、1−メトキシカルボニル−エチル、フェニル、4−メチル−フェニル、4−メトキシ−フェニル、4−カルボキシ−フェニル、2−カルボキシ−フェニル、4−メトキシカルボニル−フェニル、2−メトキシカルボニル−フェニルおよび4−アセチルアミノ−フェニルからなる群から独立に選択される。
【0018】
さらに他の実施形態では、RはCHSOまたはNOであり、RはCHClであり、RはOHであり、Rはエチルであるか、あるいはRはCHSOまたはNOであり、RはCHClであり、R
【0019】
【化22】

であり、Rはエチルである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
好ましくは、本発明のフェニコールカーボネートは以下の群の化合物から選択される。
【0021】
【化23】

本発明は、具体的には、本明細書の以下の表2に挙げるフェニコールカーボネートを含む本明細書で例示する化合物も含む。
【0022】
さらに、本発明の化合物にはビス−フェニコールカーボネートも含むことも考慮する。例えば、そうしたビス−フェニコールカーボネートは、以下の式IIの構造を含む化合物を含む。
【0023】
【化24】

(式中、Rは、
【0024】
【化25】

からなる群から選択され、
a、cおよびeは独立に0〜4の値の範囲の整数であり、bおよびdは独立に0〜2の値の範囲の整数であり、但し、整数a、b、c、dおよびeの合計は2〜8の値の範囲にあり、
51およびR52はH、メチル、ヒドロキシ、メトキシおよびアセトキシからなる群から独立に選択される)
a、b、c、dおよびeの合計は2〜4の値の範囲であることが好ましい。
【0025】
本発明は、Rが、
【0026】
【化26】

であり、RがCHFである式IIの化合物を含むことがより好ましい。
【0027】
本発明は、
【0028】
【化27】

からなる群から選択される構造を有する式IIの化合物を含むことがさらに好ましい。
【0029】
他の実施形態では、本発明は、薬剤として許容される賦形剤または溶媒と合わせて、有効量の式Iまたは式IIによるフェニコールカーボネート化合物もしくはその溶媒和物を含む医薬組成物も含む。フェニコールカーボネートは、組成物の約80重量%〜約5重量%を構成することが好ましい。
【0030】
薬剤として許容される溶媒は、少なくとも1種の薬剤として許容されるアルコール、例えばベンジルアルコールを含むことが好ましい。一般に、医薬組成物のアルコール含量は、組成物の約5重量%〜約98重量%の範囲である。アルコール含量は、組成物の約10重量%〜約90重量%の範囲であることが好ましい。アルコール含量は、組成物の約20重量%〜約45重量%の範囲であることがより好ましい。最大で45重量%のベンジルアルコール濃度が特に有利である。
【0031】
本発明は、薬剤として許容される賦形剤または溶媒と合わせて、有効量の式Iのフェニコールカーボネート(RはCHSOであり、RはCHClであり、RはCHFである)を含む医薬組成物をさらに含む。
【0032】
本発明は、薬剤として許容される賦形剤または溶媒と合わせて、有効量の式Iまたは式IIのフェニコールカーボネートを含み、かつ、それぞれ、式Iまたは式IIのフェニコールカーボネートによってインビボで放出されるフェニコールと同一のフェニコールである対応するフェニコールを含む医薬組成物をさらに含む。
【0033】
本発明の医薬組成物は、それを必要とする動物に、本発明のフェニコールカーボネートの前、後および/またはそれと同時に投与できる少なくとも1種の追加の治療薬をさらに含むことも考える。
【0034】
追加の薬剤は、例えばフロルフェニコールおよび/またはそれを必要とする動物に投与するのに適した他の任意のタイプの薬剤である。そうした追加の薬剤には、例えばアベルメクチンなどの内部外部寄生虫殺虫性化合物が含まれる。アベルメクチンは、単なる例としては、イベルメクチン、ドラメクチン、アバメクチン、セラメクチン、エマメクチン、エプリノメクチン、モキシデクチン、ミルベマイシンおよびその組合せからなる群から選択される。アベルメクチン化合物は、約0.03重量/容積%〜約20重量/容積%の量で存在することが好ましい。追加の薬剤は、任意選択で、内部外部寄生虫殺虫性剤または以下でさらに詳細に説明する他の薬剤と合わせて、殺吸虫剤(flukicide)をさらに含むこともできる。
【0035】
さらに他の実施形態では、本発明は、式IIIのフェニコール化合物と合わせて、式Iのフェニコールカーボネートを含む医薬組成物を含む。
【0036】
【化28】

但し、式Iのフェニコールカーボネートと式IIIのフェニコールは重量で50:1〜1:50の比で存在し、RはCHSOであり、RはCHClであり、RはOHまたはFである。式IIIのR、RおよびRは、上記式Iで定義の通りである。同一かまたは類似した比で式IIと式IIIを含む類似組成物も考えられる。本発明の医薬組成物は、予防上有効量で、かつ/または大量予防(metaphylaxis)のために、必要物および/または実施上の利益として動物または魚に投与することができる。
【0037】
予防上有効量の本発明の医薬組成物を投与、かつ/または大量予防するための対応する方法も、必要に応じてかつ/または実際上の利益としても本発明によって提供される。本発明は、それを必要とする動物の疾患または障害を、治療または予防する方法も提供する。そうした方法は、以下に記載する実施例1〜30の化合物のいずれをも含む式Iおよび/または式IIのフェニコールカーボネートを、薬剤として有効量で投与することを含むことができる。有効量の範囲は、例えば約1〜約150mg/kg(治療を受ける動物)である。概して、治療を受ける動物は、本発明の化合物の投与によって利益を受ける任意の動物である。一般に、治療を受ける動物は、哺乳動物、鳥類、魚類、は虫類または無脊椎動物であり、以下にさらに詳細に挙げる動物のいずれも含まれる。
【0038】
本発明は、適切な溶媒中で、フェニコール化合物を対応するクロロホーメートと反応させることを含む、式Iの化合物の合成方法をさらに提供する。適切な溶媒は、例えば塩素化溶媒、エステル溶媒、ポリエーテル溶媒、ホルムアルデヒドアセタールエーテル、環状エーテル、ケトン、混合エーテルエステル溶媒およびジエチレングリコールを含むことができ、テトラヒドロフランを含むことが好ましい。
【0039】
その合成方法は、触媒、例えば4−ジメチルアミノ−ピリジン、4−メチルピリジン、ピリジンおよびその組合せの存在下で実行することが好ましい。
【0040】
合成方法は、酸捕捉剤、例えばトリエチルアミン、ピリジン、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよびその組合せの存在下で実施することが好ましい。
【0041】
合成方法は、クロロホーメートが、
【0042】
【化29】

(式中、Rは上記式Iで定義の通りである)
である形で実行することが好ましい。
【0043】
合成方法は、フェニコール化合物が次の構造
【0044】
【化30】

を有し、反応の間、クロロホーメートがフェニコール化合物に対して過剰モル存在する形で実行することが好ましい。RおよびRは式Iについて上記で定義した通りである。
【0045】
式IIの化合物の合成方法は、適切な溶媒中でフェニコール化合物を対応するビス−クロロホーメートと反応させることを含む。そのフェニコール化合物は、クロロホーメートに対して過剰モル存在する。
【0046】
好ましくは、式IIの化合物を調製する方法において、フェニコールは以下の化合物であり、
【0047】
【化31】

ビス−クロロホーメートは好ましくは
【0048】
【化32】

(RおよびRは式Iおよび/または式IIについて上記に定義した通りである)
である。
【0049】
(発明の詳細な説明)
したがって、本発明は、カーボネートの形態のフェニコール、例えばフロルフェニコールプロドラッグを提供する。そうしたフェニコールカーボネートは、通常水には難溶性であるが、注入による投与に有用であり、かつ細菌性感染症を治療および/または予防するのに用いられる他の非刺激性の適切な有機溶媒に非常によく溶解する。本発明による化合物は、インビボで遊離活性抗生物質に容易に転換される。
【0050】
本発明をより完全に理解するために、以下の定義を示す。
【0051】
記述の都合上単数表現が用いられているが、これはそのように限定しようとするものではない。したがって、例えば、「微生物(a microbe)」という言及には、そうした微生物の1つまたは複数への言及が含まれる。別段の指定のない限り、複数表現も限定的なものではない。例えば、「フェニコールのカーボネート誘導体」などの用語は、別段の指定のない限り、そうした単一の化合物だけ、またはそうした化合物の2つ以上の組合せを含む本明細書で特定されるフェニコールの任意のカーボネート誘導体を指すものとする。
【0052】
本明細書で用いる「約(approximately)」という用語は、「約(about)」という用語と互換的に用いられ、一般に、別段の指定のない限り、ある値が指定された値の20%以内であることを意味する。
【0053】
本明細書で用いる「プロドラッグ」という用語は、ある対象に投与されると、代謝プロセスまたは化学的プロセスによる化学的転換を受けて活性薬物をもたらす、薬物の前駆体である化合物を指す。例えば、フェニコール抗生物質のカーボネートは、インビボでフェニコール抗生物質を放出するプロドラッグである。
【0054】
本明細書で用いるベンジル型という用語は、置換または非置換の結合が、フェニル環または置換フェニル環と直接結合している脂肪族の飽和炭素原子の位置である置換または非置換の結合を指す。ベンジル型カーボネートという用語は、そうしたベンジルの位置に結合しているカーボネート置換体、O−(O)C−ORを指す。
【0055】
本明細書で用いる「医薬組成物」は、その溶媒和物を含む本発明の化合物(例えば、フロルフェニコールプロドラッグ)と、薬剤として許容される賦形剤および/または担体を合わせた処方物を指す。本発明の化合物は、担体中に約1〜約80重量%の量で存在する。特定の実施形態では、担体は、特定の有機溶媒などの、生体組織に対して比較的非刺激性であり、かつ注入に適している本発明の化合物の溶媒である。
【0056】
有機溶媒は、その粘度が溶媒によって相当に異なっており、それらの有機溶媒は、フェニコールおよびフェニコールプロドラッグの処方物の成分として、最終処方物の粘度に影響を及ぼす。したがって、より低い粘度の有機溶媒は、フェニコールおよびフェニコールプロドラッグの高濃度の処方物の好ましい成分である。例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール、グリセロールホルマール(例えば、1,3−ジオキサン−5−オルと1,3−ジオキサラン−4−イルメタノールの平衡混合物)、エチレングリセロールの低分子量モノエーテルは、注入可能な処方物として使用できる低粘度溶媒の例を代表するものである。エステル(酢酸ベンジル、エチレングリコールビスアセテート、プロピレングリコールビスアセテート)、エーテル(エチレングリコールまたはプロピレングリコールの低分子量ビスエーテル)またはアミド(2−メチルピロリジノン、2−ピロリジノン)などの比較的低い粘度の他の溶媒も、フェニコールカーボネートプロドラッグ溶液の総括粘度を低下させる溶媒混合物の成分として用いることができる。しかし、そうした溶媒、またはその溶媒を含む組合せは通常、親フェニコール薬物に対して十分な溶解性を提供しない。それでも、フェニコールベンジル型カーボネートプロドラッグを用いることによって、低粘度溶媒、または高い割合の低粘度溶媒を含む溶媒混合物中でのフェニコールの所望の高濃度を実現することができる。好ましい溶媒は、任意選択の賦形剤と組み合わせたベンジルアルコールである。より好ましくは、2:1(容積/容積)の比でトリアセチン/ベンジルアルコールを含む担体である。
【0057】
「賦形剤」は、活性成分の投与をさらに容易にするために薬理学的組成物に加えられる不活性物質を指す。賦形剤の例には、これらに限定されないが、例えば、様々な糖類や各種のでんぷん、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが含まれ、必要に応じて当業界で周知の安定剤、着色料等が含まれる。
【0058】
本明細書で用いる「治療有効量」という用語は、対象の細菌性感染症の症状の1つまたは複数をある程度軽減できる濃度で活性フェニコールを提供するのに十分に速く、かつ十分な量で加水分解する本発明のプロドラッグのその量を指す。特定の実施形態では、治療有効量は、対象に投与した場合、対象に活性抗生物質、例えばフェニコールを十分な血漿濃度で送達して、(1)対象の体内の細菌性細胞の個体群を減少させ、好ましくは排除する;(2)細菌性細胞の増殖を阻害する(すなわち、遅延させるかまたは停止させる);(3)細菌性感染症のまん延を阻止する(すなわち、遅延させ、好ましくは停止させる);かつ/または(4)その感染症に伴う1つまたは複数の症状を軽減する(好ましくは排除する)本発明の化合物のその量を指す。
【0059】
「予防上有効量」という用語は、動物または魚に投与した場合、その活性抗生物質に感受性の細菌に起因する感染症の可能性および/または程度を相当に低下させるのに十分な血漿濃度の対応活性抗生物質をもたらす本発明のプロドラッグの量を指す。動物または魚の中の細菌性細胞の個体群を低いレベルに維持する(または排除する)ために、本発明の予防上有効量の本発明の化合物を、その前の抗生物質レジメンの投与に続いて用いることもできる。
【0060】
「大量予防」は、例えば感染症のリスクの高い1匹または複数の動物における予測される疾患の発生を排除するかまたは最小限にするための、時機を得た動物群全体への集団投薬である。1つの特定の実施形態では、高リスクの子ウシは、未知の病歴を有する軽量で、混蔵されて長距離輸送されるウシである。
【0061】
本明細書で用いる「最小阻害濃度」という用語は、「MIC」と互換的に用いられる。「MIC50」は、その濃度で分離株のうちの50%の成長が阻害される化合物(例えば、本発明のプロドラッグ)の濃度である。同様に、MIC90は、その濃度で分離株のうちの90%の成長が阻害される化合物の濃度である。
【0062】
本発明の化合物の合成の関連で、本明細書で用いる「適切な」溶媒とは、反応物がその中に溶解でき、かつ、それ自体で反応混合物の1つまたは複数の成分と反応するか、またはその成分相互の反応に干渉して反応に悪影響を及ぼすことのない溶媒を指す。所与の任意の反応について、適切な溶媒を選択することは十分に当業者の能力の範囲内であり、必要以上の実験をすることなくそれを具現化することができる。
【0063】
本発明の化合物の合成
以下の反応スキームは、本発明の化合物の調製の仕方を示す。
【0064】
スキーム1。
【0065】
クロロホーメートを用いたフロルフェニコールおよびフロルフェニコール類似物ベンジル型カーボネートプロドラッグの合成
一実施形態では、ベンジル型ヒドロキシ基(例えば、フロルフェニコールおよびその類似物)だけを有するフェニコールに適用できる、ベンジル型カーボネートプロドラッグを調製するための好都合な方法を図1Aに示す。図に示したように、触媒を用いるかまたは用いないで、適当な溶媒中でフェニコール化合物(1)を対応するクロロホーメートと反応させてベンジル型カーボネート(2)を生成する。すべての図のR、RおよびRは、式Iの化合物について上記に定義した通りである。適切な溶媒には、例えば、ジクロロメタンおよび1,2−ジクロロエタンなどの塩素化溶媒;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソアミル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、グリセロールトリアセテートなどのエステル溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテルなどのモノエーテル溶媒;エチレングリコールエーテル:ジメチルエチレングリコールエーテル、ジエチレングリコールエーテル:ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのポリエーテル溶媒;ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、ジブトキシメタンなどのホルムアルデヒドアセタールエーテル;テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサンなどの環状エーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン溶媒;2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−(メトキシ−エトキシ)エチルアセテート、2−(エトキシ−エトキシ)エチルアセテートなどのエチレンとジエチレングリコールのモノエーテルで代表される混合エーテル/エステル溶媒が含まれる。以下に示す実施例は、溶媒としてテトラヒドロフランを用いて例示する。
【0066】
フェニコールをベンジル型プロドラッグへ転換させる反応は任意選択で、フェニコールに対して過剰(最大で3倍)モルのクロロホーメート試薬、触媒または触媒の組合せ、触媒と酸捕捉剤の組合せ、長い反応時間および高温を含む。好ましい触媒には、例えば4−ジメチルアミノ−ピリジン、4−メチルピリジンおよびピリジンが含まれる。好ましい酸捕捉剤には、例えばトリエチルアミン、ピリジン、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムが含まれる。反応は約0.5〜約10時間の範囲の時間、約0℃〜約50℃の範囲の温度で実施することが好ましい。
【0067】
一般に、反応は、テトラヒドロフラン溶液中の1.5〜2.0当量のクロロホーメートを、0℃でフェニコール、1.0当量のトリエチルアミンおよび0.5当量の4−N,N−ジメチルアミノピリジンを含むテトラヒドロフラン溶液に加え、反応を完了するまで進行させることによって実施する。未反応フェニコール(反応後に存在すれば)は当業界での標準的な方法で完全に除去するか、あるいは、フロルフェニコールを投与後直ぐに高い初期濃度にするために、任意選択で、最終の精製したベンジルカーボネートプロドラッグ材料中に残留させることができる。
【0068】
クロロホーメート試薬は、例えば、対応するアルコールをホスゲンまたはホスゲン同等物(例えば、ジホスゲン、トリホスゲン)と反応させることによって調製する。有利には、得られた粗クロロホーメート溶液は、精製することなく、カーボネート生成のステップで用いることができる。あるいは、入手可能であれば、市販のクロロホーメートをカーボネート生成のステップで用いることができる。適切なクロロホーメートの市場での入手先には、例えばAldrichやLancasterが含まれる。
【0069】
スキーム2。
【0070】
クロロアンフェニコール型(ジヒドロキシフェニコール)のベンジル型/第一アルコールビスカーボネートプロドラッグの合成
他の実施形態では、図1Bに示すように、ベンジル型カーボネートプロドラッグエステル、例えば化合物(4)は、フェニコール、例えば2個のヒドロキシ基を担持する化合物(3)(例えば、クロラムフェニコール、チアンフェニコール、セトフェニコール)から、ベンジル型ヒドロキシ基を対応するカーボネートプロドラッグに選択的に変換するか、またはベンジル型と末端第一ヒドロキシ基の両方を、プロドラッグ部分に変換してベンジル型/第一アルコールビスカーボネートプロドラッグを生成することによって調製することもできる。
【0071】
2個のヒドロキシ基を担持するフェニコール(クロラムフェニコール型)は、フロルフェニコール型フェニコールについて上記したものと同様の条件を用いて、対応するフェニコールを2当量以上の適切なクロロホーメートと反応させることによってベンジル型/第一アルコールビスカーボネートプロドラッグに転換させることができる。そうした条件では、両方のヒドロキシ官能基の転換を同時に行って、ベンジル型/第一アルコールビスカーボネートプロドラッグを得ることができる(スキーム2)。
【0072】
スキーム3。
【0073】
クロロアンフェニコール型(ジヒドロキシフェニコール)のベンジル型モノカーボネートプロドラッグの合成−方法A
図2Aに示すように、クロロアンフェニコール型(ジヒドロキシ、R=NO)のベンジル型モノカーボネートプロドラッグは、1モル当量未満のクロロホーメート試薬を用いて調製し、表5に示す溶媒を用いた結晶化かまたは例えばシリカゲルクロマトグラフィーによって、得られたモノカーボネートとビスカーボネートの混合物から所望のベンジル型カーボネートプロドラッグを単離することができる(スキーム3)。
【0074】
スキーム4。
【0075】
クロロアンフェニコール型(ジヒドロキシフェニコール)のベンジル型モノカーボネートプロドラッグの合成−方法B
図2Bに示すように、クロロアンフェニコール型(ジヒドロキシ、R=NO)のベンジル型モノカーボネートプロドラッグは、第一アルコール官能基に保護基を選択的に導入し、続いてベンジル型アルコールにカーボネートプロドラッグ部分を選択的に導入するクロロホーメートとの反応により、保護基の手法を用いて調製することもできる(スキーム4)。
【0076】
第一アルコールの保護に用いる保護基は、ギ酸エステル、酢酸エステル、安息香酸エステル、ピバル酸エステルなどのエステル基、tert−ブトキシカーボネートなどのカーボネート基、トリメチルシリル、tert−ブチルジメチルシリルなどのシリル保護基であってよい。フェニコール分子のベンジル型アルコール位に所望のカーボネートプロドラッグ部分を導入した後の保護基の取り外しは、特定の基の取り外しに適した条件を用いて化学的に行うか(Protective Groups in Organic Synthesis; Theodora W. Greene、Peter G. M. Wuts;第3版、1999年6月、John Wiley & Sons Inc)、あるいは、ベンジル型カーボネートプロドラッグ部分に影響を及ぼすことなく保護基の取り外しを可能にする選択的酵素加水分解によって行うことができる(スキーム4)。
【0077】
スキーム5。
【0078】
クロロアンフェニコール型(ジヒドロキシ)のベンジル型モノカーボネートプロドラッグの合成−方法C
図3Aに示すように、クロロアンフェニコール型(ジヒドロキシフェニコール、R=NO)のベンジル型モノカーボネートプロドラッグの調製は、最初にベンジル型/第一ビスカーボネートプロドラッグを調製し、続いて、化学的または酵素的に行われる第一アルコールカーボネート官能基の選択的加水分解によっても実施することができる(スキーム5)。
【0079】
スキーム6。
【0080】
クロロホーメート以外のX−(O)C−O−R試薬を用いたフロルフェニコールおよびフロルフェニコール類似物のベンジル型カーボネートプロドラッグの合成
図3Bに示すように、クロロホーメート以外の試薬を、フェニコールのベンジル型カーボネートプロドラッグの調製に用いることもできる。触媒の添加を伴うかまたは伴わないで、クロロホーメートとの反応と類似した仕方でカーボネート部分を導入するために、クロリド以外の離脱基を有する試薬を用いることができる。そうした変換に用いることができる試薬の多くの例は文献に記載されている。そのいくつかを以下に示す。
【0081】
図3B、スキーム6を参照すると、Xの値は、以下の表1に一覧表にした部分(moiety)のどれを含んでもよい。そうした各部分について代表的な文献を引用する。それぞれを参照により本明細書に組み込む。
【0082】
【表1−1】

【0083】
【表1−2】

【0084】
【表1−3】

スキーム7aおよび7b。
【0085】
ベンジル型および第一アルコール官能基で異なるカーボネート部分を有するクロラムフェニコール型(ジヒドロキシフェニコール)のベンジル型/第一アルコールビスカーボネートプロドラッグの合成
図7Aに示すように、ベンジル型および第一アルコール官能基で異なるカーボネート部分を有するクロラムフェニコール型(ジヒドロキシフェニコール)のベンジル型/第一アルコールビスカーボネートプロドラッグの調製は、スキーム7aに示すように、上記の方法A〜Cによって得られたベンジル型モノカーボネート(化合物6)を用い、それらに、スキーム6に関連して上記したタイプのクロロホーメートCl−(O)C−O−R(R≠R)またはX−(O)C−OR(R≠R)試薬との第2の反応を施して実施することができる。
【0086】
あるいは、所望のカーボネートプロドラッグ官能基を、最初に第一アルコール官能基に導入し、得られた第一アルコールカーボネート中間体(化合物5)を、スキーム6に関連して上記したタイプのクロロホーメートCl−(O)C−O−R(R≠R)またはX−(O)C−O−R(R≠R)試薬とさらに反応させて所望のベンジル型/第一アルコールビスカーボネートプロドラッグを得ることができる(図7Bで示した、調製スキーム7b)。この特定の合成スキームでは、第一アルコール官能基の予想される高い反応性を好都合に活用することができる。
【0087】
本発明の化合物を用いた方法
本発明は、予防、すなわち予防(prophylaxis)のため、かつ/または、必要性および/または実施上の利益に応じて、大量予防のため、かつ/または、インビボで、本発明の化合物により放出される抗生物質または薬剤によって予防および/または治療等をすることができる感染症、例えば細菌性感染症の治療のために予防上有効な量を投与する方法も提供する。保護または治療を受ける動物は、これらに限定されないが、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳動物、鳥または魚である。本発明の化合物またはそうした化合物の適切な組合せのどれも、対象動物に投与することができる。適切な対象動物には、野生動物、家畜(例えば、食用肉、乳汁、バター、卵、毛皮、皮革、羽毛および/または羊毛用に飼育されるもの)、荷物運搬用の役畜、研究用動物、コンパニオンアニマル、ならびに動物園、野生動植物の生息地および/またはサーカスのため、またはその中で飼育される動物が含まれる。
【0088】
特定の実施形態では、対象動物は哺乳動物である。治療される哺乳動物には、霊長類、例えばサル、大型類人猿および任意選択でヒトが含まれる。他の哺乳動物には、牛科の動物(例えば、ウシまたは乳牛)、豚類(例えば、去勢雄豚(hog)またはブタ)、羊類(例えば、ヤギまたはヒツジ)、馬科の動物(例えば、ウマ)、犬科の動物(例えば、イヌ)、猫科の動物(例えば、飼い猫)、ラクダ、シカ、アンテロープ、ウサギ、テンジクネズミおよび齧歯類(例えば、リス、ラット、マウス、スナネズミおよびハムスター)、クジラ類(クジラ、イルカ、ネズミイルカ)、ひれ足動物(アザラシ、セイウチ)が含まれる。鳥類には、カモ科(Anatidae)(例えば、ハクチョウ、カモおよびガン)、ハト科(Columbidae)(例えば、野バト(dove)および飼いバト(pigeon))、キジ科(Phasianidae)(例えば、ヤマウズラ、ライチョウおよびシチメンチョウ)、テシエニダエ(Thesienidae)(例えば、家禽)、オウム類(例えば、インコ、コンゴウインコおよびオウム)、狩猟鳥類および走鳥類(例えば、ダチョウ)が含まれる。
【0089】
本発明の化合物によって治療または保護される鳥類は、営利的かまたは非営利的な鳥類飼育に関連することができる。これらにはとりわけ、例えばハクチョウ、カモおよびガンなどのカモ科、ハト科、例えば、野バトおよびドバトなどの飼いバト、キジ科、例えばヤマウズラ、ライチョウおよびシチメンチョウ、テシエニダエ、例えば、家禽、例えばペットまたはコレクター市場用に飼育されたオウム類、例えば、インコ、コンゴウインコおよびオウムが含まれる。
【0090】
本発明のためには、「魚」という用語は、非限定的にテレオスチグループ(Teleosti grouping)の魚、すなわち真骨魚類(teleosts)を含むと理解されたい。サケ目(Salmoniformes order)(サケ科(Salmonidae family)を含む)とスズキ目(Perciformes order)(サンフィッシュ科(Centrarchidae family)を含む)の両方がテレオスチグループに含まれるものとする。可能性のある魚レシピエントにはとりわけ、サケ科、ハタ科(Serranidae family)、タイ科(Sparidae family)、カワスズメ科(Cichlidae family)、サンフィッシュ科、イサキ(Parapristipoma trilineatum)およびブルーアイプレコストムス(プレコストムス属)が含まれる。
【0091】
さらに、可能性のある魚レシピエントの例には、サケ科、ハタ科、タイ科、カワスズメ科、サンフィッシュ科、イサキ(Parapristipoma trilineatum)およびブルーアイプレコストムス(プレコストムス属)が含まれる。本発明の化合物で治療される他の魚を、単に説明のために、以下の一覧表で示す。
【0092】
【化33】

【0093】
【化34】

【0094】
【化35】

さらにその他の治療可能な魚には、これらに限定されないが、ナマズ、スズキ、マグロ、オヒョウ、ホッキョクイワナ、チョウザメ、ターボット、ヒラメ類、ソール、コイ、テラピア、シマスズキ、ウナギ、タイ、ブリ(yellowtail)、ヒラマサ(amberjack)、ハタ科の魚およびサバヒーが含まれる。
【0095】
有袋類(カンガルーなど)、は虫類(飼育されたカメなど)、甲殻類(ロブスター、カニ、エビおよびクルマエビなど)、軟体動物(タコや貝類など)、および感染症を治療および/または予防するのに本発明の方法が安全かつ/または効果的である他の経済的に重要な動物を含む他の動物も本発明の方法により利益を受けられると考えられる。
【0096】
他の実施形態では、対象はコンパニオンアニマルである。本発明のためには、「コンパニオン」アニマルという用語は、飼い猫(猫類)、イヌ(犬類)、ウサギ種、ウマ(馬類)、テンジクネズミ、齧歯類(例えば、リス、ラット、マウス、スナネズミおよびハムスター)、霊長類(例えば、サル)および飼いバト、野バト、オウム、インコ、コンゴウインコ、カナリア等の鳥類を含むものと理解されたい。
【0097】
医薬組成物
本発明の化合物、またはその化合物の生理学的に許容される溶媒和物は、それを必要とする動物にそれ自体として投与するか、あるいは上記材料を適切な賦形剤と混合した医薬組成物で投与することができる。薬物の処方および投与のための技術は、Remington’s Pharmacological Sciences、Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版に記載されている。Remingtonで論じられている処方および技術は、ヒトの患者に主として用いることに関連しているが、これらは、獣医技術分野の技術者に周知の技術によって、ヒト以外の患者で使用するために容易に改変することができる。
【0098】
本明細書で記載の本発明の化合物を動物の飼料の成分としてか、または飲用水中に溶解もしくは懸濁して投与する場合、組成物は、活性薬剤を不活性担体または希釈剤中に密に分散して提供される。不活性担体は、本発明の化合物と反応せず、かつ、動物に安全に投与することができるものである。好ましくは、飼料投与のための担体は、動物の食料の成分であるか、またはそれであってよい担体である。
【0099】
適切な組成物には、活性成分が比較的多量に存在し、かつ、動物に直接給餌するか、あるいは飼料に直接加えるか、または中間希釈もしくは配合段階の後に加えるのに適した飼料プレミックスまたは栄養補助飼料が含まれる。そうした組成物に適した一般的な担体または希釈剤には、例えば醸造用乾燥穀物、コーンミール、シトラスミール、発酵残渣、挽いたカキ殻、小麦ショーツ、糖蜜可溶分、コーンコブミール、食用ビーンミルフィード(edible bean mill feed)、大豆グリッツ、粉砕石灰石等が含まれる。本発明の化合物は、粉砕、攪拌、磨砕またはタンブリングなどの方法で担体全体に密に分散させる。飼料プレミックスとしては、約0.05〜約5.0%または約0.005〜約2.0重量%の本発明の化合物を含む組成物が特に適している。動物に直接給餌される栄養補助飼料は約0.0002〜0.3重量%の本発明の化合物を含む。
【0100】
そうした栄養補助飼料は、感受性微生物の処置および制御のために望ましい活性化合物濃度を、仕上がった飼料にもたらす量で動物用飼料に加える。本発明の化合物の所望濃度は、上記因子ならびに用いる具体的な誘導体に応じて変わるが、所望の抗菌結果を得るために、化合物は飼料中に通常、約0.0001〜0.02%または約0.00001〜約0.002%の濃度で供給される。
【0101】
投与経路
本明細書で用いる「投与する(administer)」または「投与(administration)」ということは、微生物感染症を治療または予防するために、本発明の化合物もしくは溶媒和物、または本発明の化合物を含む医薬組成物を有機体に送達することを指す。
【0102】
適切な投与経路には、これらに限定されないが、経口、経直腸、局所、経粘膜、筋肉内、皮下、髄内、髄腔内、直接脳室内、静脈内、硝子体内、腹腔内、鼻腔内、耳内または眼球内が含まれる。好ましい投与経路は経口および非経口である。
【0103】
あるいは、例えば、感染領域に直接施用される軟膏もしくは局所施用処方物として作製するか、または感染組織中に直接化合物を注入することによって、全身ではなく局所に化合物を投与することができる。どちらの場合も、持続放出処方物を用いることができる。
【0104】
したがって、本発明の化合物またはその薬剤として許容される溶媒和物の純粋な形態かまたは適切な医薬組成物での投与は、許容される投与方式か、または同様の有用性を供する薬剤によって実施することができる。投与経路は当業者に知られている任意のものであってよい。本発明の化合物は、当業界で認められている任意の形態、すなわち、例えば錠剤、坐薬、丸薬、軟質および硬質のゼラチンカプセル剤、粉剤、液剤、懸濁液もしくはエアロゾルなどの固体、半固体、凍結乾燥粉末または液体の剤形で、正確な用量の簡単な投与に適した単位または複数投与形態で、それを必要とするものに投与される。その組成物は、通常の薬剤用担体または賦形剤および活性薬剤としての本発明の化合物を含み、さらに他の医薬品、薬剤、担体、補助剤等を含むことができる。
【0105】
組成物/処方物
本発明の医薬組成物は、当業界でよく知られているプロセス、例えば、周知の様々な混合、溶解、顆粒化、糖衣錠形成、微粒子化、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥化のプロセスを用いて製造することができる。組成物は、薬剤として用いることができる製剤に活性化合物を加工するのを容易にする賦形剤や助剤を含む1種または複数の生理学的に許容される担体と合わせて処方することができる。適切な処方物は選択される投与経路に依存する。
【0106】
これらに限定されないが、静脈内、筋肉内および皮下注入を含む注入のためには、本発明の化合物は、これらに限定されないが、プロピレングリコール、ベンジルアルコールまたはエタノールなどのアルコール、ポリエチレングリコールおよびN−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、他のピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、トリアセチン、グリセロールホルマール、10%までの濃度での任意選択の水を含む極性溶媒、ならびに上記賦形剤または当業者に周知の他の材料のいずれかの組合せで処方することができる。経粘膜投与用には、処方物が浸透するそのバリアに適した浸透剤が用いられる。そうした浸透剤は一般に当業界で周知である。
【0107】
投薬量
治療有効量は、微生物感染症を予防および/または最少化し、かつ/または微生物感染症に起因する症状を治療、軽減および/または改善するのに効果的な化合物の量を指す。治療有効量の決定は、特に本明細書の開示に照らせば、当業者の能力の十分に範囲内である。
【0108】
本発明の方法で用いる任意の化合物のためには、治療有効量は、本発明のプロドラッグ化合物によって放出される抗生物質の既知の特性からまず推定することができる。次いで、従来当業者に知られている最小阻害濃度(「MIC」)以上の循環濃度範囲が達成されるように、動物モデルにおいて使用するために投薬量を処方することができる。次いでそうした情報を、患者において有用な投薬量をより正確に決定するために用いることができる。
【0109】
本明細書で説明する化合物の毒性および治療効力は、細胞培養または実験動物での標準的薬剤用手順によって決定することができる。例えば、特定の化合物についての最小阻害濃度(「MIC」)および処置グループの50%の致死量(「LD50」)は当業者によく知られている方法で決定することができる。例えば、MICは、Clinical and Laboratory Standards Institiute (CLSI)」に示されているガイドラインによって決定される。
【0110】
得られたデータは、患者における有用な投薬量の範囲を処方するのに用いることができる。投薬量は、もちろん、剤形や投与経路に応じて変えることができる。正確な処方、投与経路および投薬量は、患者の状態に応じて個々の臨床医が決定することができる(例えば、Finglら、1975年、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」の第1章、1頁を参照されたい)。概して、本発明の化合物は、感受性の感染性微生物を処置および排除するか、または、所望の目標を実現するのに十分な期間、新たな感染を阻止するために、その目的に効果的なレベルで、血漿および体内組織中の放出抗生物質濃度に到達し、かつ/またはそれを維持するのに効果的な用量でそうした治療を必要とする動物に投与する。当業者は、臨床的応答に基づいて、また、対応する各プロドラッグ化合物からのフェニコール抗生物質放出の相対量、ならびにプロドラッグ(モノ対ビス)カーボネート化合物当たりのフェニコールのモル比を考慮して、以下の推定用量範囲を調節することができることを理解されよう。例えば、皮下投与では、本発明の化合物は通常、約1mg〜約150mg/kg体重の範囲の用量で投与される。投与の頻度は、一日当たり1回投与から複数回投与の範囲であってもよい。経口投与では、用量は一日当たり1回の投与が好ましい。
【0111】
投薬の量および間隔は、MIC以上の濃度または他の任意の所望レベルに維持するのに十分な化合物の血漿レベルが提供されるように別々に調節することができる。そうした血漿レベルはしばしば最小有効濃度(MEC)と称される。MECは、それぞれの化合物で異なるが、インビトロでのデータ、例えば、微生物個体群の80%を超える阻害を達成するのに必要な濃度から推定することができる。MECは、本明細書に記載のアッセイを用いて確認することができる。MECを達成するのに必要な投薬量は、化合物の個々の特性および/または動物および/または投与経路によって変わることになる。HPLCアッセイまたはバイオアッセイを用いて、化合物および/またはその対応する活性生成物の血漿濃度を決定することができる。
【0112】
投薬間隔も、MEC値を用いて決定することができる。化合物は、その時間の10〜90%にわたる間、MECを超える血漿レベルを維持するレジメンを用いて投与しなければならない。
【0113】
局所投与または選択的摂取の場合、薬物の有効局所濃度は血漿濃度と関係しておらず、当業界で知られている他の手順を用いて正しい投薬量とその間隔を決定することができる。
【0114】
組成物は、1日に1回または複数用量に分割して投与することができる。1回量だけでその感染症を治療するのに十分なことがしばしばある。ある状況では、動物を治療するのに、1回用量に続いて48時間後に第2の用量が必要になることがある。当業者が理解されるように、正確な用量は、感染症の段階および重篤度、組成物に対する感染有機体の感受性および治療を受ける動物の個々の特徴に依存する。
【0115】
投与する組成物の量は、もちろん、治療を受ける患者、感染症を引き起こす病原体または細菌、感染症の重篤度、投与の仕方すなわち経口、静脈内、局所等、および処方医師、獣医等の判断に依存することになる。
【0116】
本発明の化合物は通常、ウシでは、皮下経路を用いる場合、約1mg〜約150mg/kg体重の用量範囲で投与する。約20mg〜約70mg/kg体重の用量範囲が好ましい。用量は約60mg/kgがより好ましい。しかし、本発明の化合物を筋肉内(IM)経路で投与する場合、用量は好ましくは2回で投与する。第2の用量は第1の用量の投与の約24〜約48時間後に投与する。
【0117】
ブタにおいては、本発明の化合物は通常、約10mg〜約150mg/kg体重の用量範囲で投与する。約20mg〜70mg/kg体重の用量範囲が好ましい。通常、第1の筋肉内注入に続いて、約24〜約48時間後に第2の注入を行う。
【0118】
家禽においては、本発明の化合物は通常、約10mg〜150mg/kg体重の用量範囲で投与する。経口では、臨床的に指示される期間、例えば約3〜約7日間プロドラッグを毎日飲料水に入れて投与する。
【0119】
水生動物への投与
本発明は、魚、任意選択で水生無脊椎動物の細菌性感染を排除する、低減するまたは予防する方法も提供する。そうした方法は、有効量の本発明の化合物を、それを必要とする水生動物に投与することを含む。投与は、有効量の本発明の化合物を動物に給餌するか、あるいは有効量の活性化合物を溶液で含む溶液の中に動物または動物個体群を浸すことによって実施される。本発明の化合物を、動物を含むプールまたは水保持領域に薬物を施用し、えらやその他の方法により、化合物を動物に吸収させることによって投与し、投薬量の本発明の化合物が取り込まれるようにすることができることをさらに理解されたい。例えば獣医または水族館の場におけるある魚等の特定の動物の個別の治療のためには、単独もしくは他の薬剤と併用した直接注入、または本発明の化合物を含む浸透圧放出装置による注入は本発明の化合物を投与するための任意選択の方法である。
【0120】
魚または他の水生種の細菌性感染症を低減する、排除するまたは予防するのに効果的な本発明の化合物の用量は、他の種類の動物について上記に論じたパラメータおよび方法を用いて獣医が通常の仕方で決定できるが、処置する魚の種、関与する具体的な微生物、および感染の程度に応じてそれを変えることができる。水産養殖への適用のためには、本発明の化合物は通常、約1mg/kg〜約70mg/kg、好ましくは10mg/kg〜30mg/kgの投薬量で投与する。適切な投与経路には、静脈内、皮下、筋肉内および/または必要に応じた水生種への噴霧もしくはその浸漬、および/または保持ボリューム中の水への化合物の直接添加によるものが含まれる。
【0121】
経口投与のためには、本発明の化合物は、上記に指定した用量で約10〜約15日間投与することが好ましい。
【0122】
活性成分は、食料とは別個に投与することができるが、好ましい態様では、有効成分を魚の飼料の中に混ぜ込むことが考えられる。所望の用量レベルが得られるように、薬物適用した(medicated)魚用飼料を、適切な量の本発明の化合物を市販の魚用飼料製品に混ぜ込んで調製することができる。魚の飼料中に混ぜ込む本発明の化合物の量は、魚に給餌する速度に依存する。バイオマスの約0.2%〜4%/日の速度で給餌される魚では、薬物適用した飼料は、kg飼料当たり約50〜10,000mg、より好ましくはkg飼料当たり約100〜2,000mgを含むことが好ましい。
【0123】
本発明の化合物は、ペレット化する前に飼料混合物中に混ぜ込むことができるが、薬物適用した飼料は、飼料ペレットを本発明の化合物でコーティングして形成することが好ましい。
【0124】
淡水魚および塩水魚の細かい品種、ならびに無脊椎動物水生種、上記に列挙したものを含む任意の魚種を、本発明の化合物で処置して細菌性感染症を治療または予防することができる。
【0125】
他の薬剤および治療法との併用
本発明のプロドラッグ化合物を、同時かまたは逐次的に(例えば、同一組成物中かまたは別の組成物中で)、当業界で既知の他の有用な医薬品と併用して投与することも考えられる。そうした医薬品には、栄養補給剤、飼料添加物等の中のものと同様に、例えば他の殺菌剤、例えば抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、寄生虫駆除剤などが含まれる。例えば、本発明の化合物と併用して、当業界で既知の任意の標準的(非プロドラッグ)フェニコールを投与することが考えられる。そうしたフェニコールには、D−(トレオ)−1−(4−メチルスルホニルフェニル)−2−ジクロロアセトアミド−3−フルオロ−1−プロパノールとしても知られているフロルフェニコールが含まれる。他の好ましい抗生化合物はD−(トレオ)−1−(4−メチルスルホニルフェニル)−2−ジフルオロアセトアミド−3−フルオロ−1−プロパノールである。他の有用な抗生物質はチアンフェニコールである。これらの抗生化合物の製造方法、およびそうした方法での有用な中間体は、米国特許第4,311,857号、同第4,582,918号、同第4,973,750号、同第4,876,352号、同第5,227,494号、同第4,743,700号、同第5,567,844号、同第5,105,009号、同第5,382,673号、同第5,352,832号および同第5,663,361号に記載されている。これらを参照により本明細書に組み込む。他のフロルフェニコール類似物および/またはプロドラッグが開示されており、そうした類似物も本発明の組成物および方法で用いることができる。[例えば、米国特許出願公開番号2004/0082553および同2005/0182031を参照されたい。その両方を参照により本明細書に組み込む]。抗生化合物がフロルフェニコールである場合、フロルフェニコールの濃度は一般に約10%〜約50重量/容積%であり、好ましいレベルは約20%〜約40重量/容積%であり、より好ましくは少なくとも約30重量/容積%である。
【0126】
本発明の化合物と併用して用いるための他の有用な抗生化合物はチルミコシンである。チルミコシンは、化学的には20−ジヒドロ−20−デオキシ−20−(シス−3,5−ジメチルピペリジン−1−イル)−デスミコシンと規定されるマクロライド抗生物質であり、これは米国特許第4,820,695号に開示して報告されている。これを参照により本明細書に組み込む。米国特許第4,820,695号には、50%(容積)のプロピレングリコール、4%(容積)のベンジルアルコールおよび50〜500mg/mlの活性成分を含む注入可能な水系処方物も開示されている。チルミコシンはその塩基としてまたはリン酸塩として存在することができる。4日間の処置期間にわたって注入により投与した場合、チルミコシンは呼吸器系感染症、特にウシのパスツレラヘモリチカ感染症の治療に有用であることが分かっている。したがって、チルミコシンは、例えば、新生子ウシ肺炎およびウシ呼吸器系疾患の治療に用いることができる。チルミコシンが存在する場合、それは、約1%〜約50%、好ましくは10%〜約50%、特定の実施形態では30%の量で存在する。
【0127】
本発明の化合物と併用して用いるための他の有用な抗生物質はツラスロマイシンである。ツラスロマイシンは、米国特許公開番号2003/0064939A1(この全体を参照により本明細書に組み込む)に示されている手順によって調製することができる。ツラスロマイシンは、注入可能な剤形中に約5.0%〜約70重量%の範囲の濃度レベルで存在することができる。ツラスロマイシンは、単一用量または分割用量(例えば1日当たり1〜4用量)で1日当たり約0.2mg/kg体重(mg/kg/日)〜約200mg/kg/日の範囲、より好ましくは週に1回または2回1.25、2.5もしくは5mg/kgの投薬量で投与するのが最も望ましいが、治療を受ける対象の種、体重および状態に応じて変更が必要となる。ツラスロマイシンは、注入可能な剤形中に約5.0%〜約70重量%の範囲の濃度レベルで存在することができる。
【0128】
本発明の化合物と併用して用いるための他の有用な抗生物質は、フルオロキノロン系統群の抗生物質、例えばエンロフロキサシン、ダノフロキサシン、ジフロキサシン、オルビフロキサシンおよびマルボフロキサシンである。エンロフロキサシンの場合、約100mg/mlの濃度で投与することができる。ダノフロキサシンは約180mg/mlの濃度で存在することができる。
【0129】
本発明の化合物と併用して用いるための他の有用なマクロライド抗生物質には、ケトリドの部類の化合物、より具体的にはアザリドが含まれる。そうした化合物は、例えば米国特許第6,514,945号、同第6,472,371号、同第6,270、768号、同第6,437,151号および同第6,271,255号、ならびに米国特許第6,239,112号、同第5,958,888号、ならびに米国特許第6,339,063号および同第6,054,434号に記載されている。そのすべてを参照により本明細書に組み込む。
【0130】
本発明の化合物と併用して用いるための他の有用な抗生物質には、テトラサイクリン、具体的にはクロルテトラサイクリンおよびオキシテトラサイクリンが含まれる。
【0131】
他の抗生物質には、ペニシリンのうちの1つ、例えば、ペニシリンG、ペニシリンK、アンピシリン、アモキシシリン、またはアモキシシリンとクラブラン酸もしくは他のβラクタマーゼ阻害剤の組合せなどのβラクタムが含まれる。他の具体的なβラクタムには、例えば、セフチオファー、セフキノム等のセファロスポリンが含まれる。本発明の処方物中のセファロスポリンの濃度は、任意選択で約1mg/ml〜500mg/mlの範囲である。
【0132】
さらに、本発明は、本発明の化合物と混合され、かつ/または併用された上記の抗生物質の1つまたは複数、および任意選択の担体および/または賦形剤を含む、動物の微生物感染症および寄生虫による感染症を治療するための組成物を任意選択で含む。
【0133】
本明細書で記述するすべての方法および本発明の化合物について、特定した化合物を、本明細書で記載の外部および内部寄生虫のすべてを含む様々な寄生虫を死滅させるかまたは制御するための1種または複数の当業界で既知の薬剤と併用して容易に用いることも考慮する。したがって、本発明の化合物および方法は、従来の既知の薬剤、および従来の既知の薬剤を用いた方法より好ましいが、特定の任意選択の実施形態では、これらを、様々な種類の害虫を死滅させるかまたは制御するために用いられる他の当業界で既知の薬剤、または当業界で既知の薬剤のそうした組合せと併用するか、同時にまたは逐次的に(例えば、同一組成物中または別個の組成物中で)用いることを考慮する。
【0134】
本発明の化合物と併用して用いるためのこれらの追加の薬剤には、例えば、当業界で既知の駆虫剤、例えばアベルメクチン(例えば、イベルメクチン、モキシデクチン、ミルベマイシン)、ベンズイミダゾール(例えば、アルベンダゾール、トリクラベンダゾール)、サリチルアニリド(例えば、クロサンテル、オキシクロザニド)、置換フェノール(例えば、ニトロキシニル)、ピリミジン(例えば、ピランテル)、イミダゾチアゾール(例えば、レバミゾール)およびプラジカンテルが含まれる。
【0135】
本発明の化合物と併用して用いる、害虫を死滅させるかまたは制御するための他の当業界で既知の薬剤には、有機リン殺虫剤が含まれる。この部類の殺虫剤は非常に幅広い活性(例えば殺昆虫剤として)を有し、またある場合は駆虫活性を有する。有機リン殺虫剤には、そうした化合物を若干挙げるとすれば、例えば、ジクロトホス、テルブホス、ジメトエート、ダイアジノン、ジスルホトン、トリクロルホン、アジンホス−メチル、クロルピリホス、マラチオン、オキシデメトン−メチル、メタミドホス、アセフェート、エチルパラチオン、メチルパラチオン、メビンホス、ホレート、カルボフェンチオン、ホサロンが含まれる。本発明の方法および化合物と、例えばカルバリル、カルボフラン、アルジカルブ、モリネート、メトミル等を含むカルバメート系殺虫剤との組合せ、ならびに有機塩素系殺虫剤との組合せも考慮する。例えば忌避剤、ピレトリン(ならびにその合成改変体、例えばアレスリン、レスメトリン、ペルメトリン、トラロメトリン)、およびダニ駆除剤としてしばしば用いられるニコチンを含む生物殺虫剤との併用を含むこともさらに考慮する。考えられる他の組合せは、バチルスチューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)、クロルベンジレート、ホルムアミジン(例えば、アムチタズ(amtitaz))、銅化合物、例えば水酸化銅、キュプリックオキシクロリド゛サルフェート(cupric oxychloride sulfate)、サイフルトリン、シペルメトリン、ジコホル、エンドスルファン、エセンフェンバレレート(esenfenvalerate)、フェンバレレート、ラムダサイハルロスリン、メトキシクロルおよびイオウを含む多種多様な殺虫剤との併用である。
【0136】
さらに、本明細書で記載する方法および新規な化合物のすべてについて、特定した化合物は、ピペロニルブトキシド(PBO)およびリン酸トリフェニル(TPP)などの共力剤;および/またはジフルベンズロン、シロマジン、メトプレン等の昆虫成長調整剤(IGR)および幼若ホルモン類似物(JHA)と組み合わせて容易に用いられ、それによって、対象動物に対して、また対象動物の環境内において、寄生虫の初期制御および継続的制御(卵を含む昆虫のすべての発育段階で)を提供できることをさらに考慮する。
【0137】
シクロジエン、リアニア(ryania)、KT−199、および/またはアベルメクチン(例えば、イベルメクチン、モキシデクチン、ミルベマイシン)、ベンズイミダゾール(例えば、アルベンダゾール、トリクラベンダゾール)、サリチルアニリド(例えば、クロサンテル、オキシクロザニド)、置換フェノール(例えば、ニトロキシニル)、ピリミジン(例えば、ピランテル)、イミダゾチアゾール(例えば、レバミゾール)、プラジカンテル、ならびにナフタロホスおよびピラクロホスなどのいくつかの有機リンなどの旧来の当業界で既知の抗寄生虫剤との併用もそうした組合せにおいて用いるものとする。
【0138】
特に、本発明の範囲内で有用な他の抗寄生虫化合物は、アベルメクチン化合物の部類を含むことが好ましい。上記したように、アベルメクチン系統群の化合物は、哺乳動物中の広範囲の内部寄生虫および外部寄生虫に対して有用であることが知られている一連の非常に強力な抗寄生虫剤である。
【0139】
本発明の範囲内で本発明の化合物と併用して用いるのに好ましい化合物はイベルメクチンである。イベルメクチンはアベルメクチンの半合成誘導体であり、少なくとも80%の22,23−ジヒドロアベルメクチンB1と20%未満の22,23−ジヒドロアベルメクチンB1の混合物として通常生産される。イベルメクチンは米国特許第4,199,569号に開示されている。これを参照により本明細書に組み込む。イベルメクチンは1980年代半ば以来、様々な動物寄生虫および寄生虫症を処置するための抗寄生虫剤として用いられている。
【0140】
アバメクチンは米国特許第4,310,519号(その全体を参照により本明細書に組み込む)にアベルメクチンB1/B1として開示されているアベルメクチンである。アバメクチンは少なくとも80%のアベルメクチンB1と20%未満のアベルメクチンB1を含む。
【0141】
他の好ましいアベルメクチンは25−シクロヘキシル−アベルメクチンBとしても知られているドラメクチンである。ドラメクチンの構造と調製法は米国特許第5,089,480号に開示されている。その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0142】
他の好ましいアベルメクチンはモキシデクチンである。LL−F28249アルファとしても知られているモキシデクチンは、米国特許第4,916,154号に記載されている。その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0143】
他の好ましいアベルメクチンはセラメクチンである。セラメクチンは25−シクロヘキシル−25−デ(1−メチルプロピル)−5−デオキシ−22,23−ジヒドロ−5−(ヒドロキシイミノ)−アベルメクチンBモノサッカリドである。
【0144】
ミルベマイシンすなわちB41は、ストレプトミセス株を産生するミルベマイシンの発酵もろみ液から単離される物質である。微生物、発酵条件および単離手順は、米国特許第3,950,360号および同第3,984,564号により完全に記載されている。
【0145】
米国特許第5,288,710号または同第5,399,717号に記載されているようにして調製できるエマメクチン(4”−デオキシ−4”−エピ−メチルアミノアベルメクチンB)は、2つの相同物、4”−デオキシ−4”−エピ−メチルアミノアベルメクチンB1aと4”−デオキシ−4”−エピ−メチルアミノアベルメクチンB1bの混合物である。エマメクチンの塩を用いることが好ましい。本発明で用いることができるエマメクチンの塩の非限定的な例には、米国特許第5,288,710号に記載の塩、例えば、安息香酸、置換安息香酸、ベンゼンスルホン酸、クエン酸、リン酸、酒石酸、マレイン酸等から誘導される塩が含まれる。より好ましくは、本発明で用いるエマメクチン塩はエマメクチン安息香酸塩である。
【0146】
エプリノメクチンは化学的には4”−エピ−アセチルアミノ−4”−デオキシアベルメクチンBとして知られている。エプリノメクチンは、すべての部類および年齢層のウシにおいて用いるように特に開発されてきた。それは、内部寄生虫と外部寄生虫の両方に対して広範囲の活性を示し、他方、肉や乳汁中に最小限の残留物しか残さない最初のアベルメクチンであった。これは、局所的に送達した場合に非常に強力であるという他の利点も有する。
【0147】
本発明の組成物は、以下の抗寄生虫化合物のうちの1つまたは複数の組合せを任意選択で含む。
【0148】
米国特許出願公開番号:2005/0182059(これを参照により本明細書に組み込む)に記載されているような抗寄生虫のイミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物。米国特許出願公開番号:2005/0182139(これを参照により本明細書に組み込む)に記載されているような抗寄生虫の1−(4−モノおよびジハロメチルスルホニルフェニル)−2−アシルアミノ−3−フルオロプロパノール化合物。米国特許出願公開番号:2006/0063841(これを参照により本明細書に組み込む)に記載されているような抗寄生虫のトリフルオロメタンスルホンアニリドオキシムエーテル誘導体化合物。米国特許出願公開番号:2006/0128779(これを参照により本明細書に組み込む)に記載されているような抗寄生虫のフェニル−3−(1H−ピロール−2−イル)アクリロニトリル化合物。2006年6月7日出願の米国特許出願番号11/448,421(これを参照により本明細書に組み込む)に記載されているような抗寄生虫のN−[(フェニルオキシ)フェニル]−1,1,1−トリフルオロメタンスルホンアミドおよびN−[(フェニルスルファニル)フェニル]−1,1,1−トリフルオロメタンスルホンアミド誘導体。2006年4月10日出願の米国仮出願番号60/790,893(これを参照により本明細書に組み込む)に記載されているような抗寄生虫のN−フェニル−1,1,1−トリフルオロメタンスルホンアミドヒドラゾン化合物。
【0149】
本発明の組成物は殺吸虫剤と併用して用いることもできる。適切な殺吸虫剤には、例えばトリクラベンダゾール、フェンベンダゾール、アルベンダゾール、クロルスロンおよびオキシベンダゾールが含まれる。上記の組合せは、抗生物質、抗寄生虫化合物および抗吸虫活性化合物との併用をさらに含むことができることを理解されよう。
【0150】
上記の組合せに加えて、本明細書で記載する本発明の方法および化合物と、他の動物用健康治療薬、例えば微量元素、抗炎症薬、抗感染症薬、ホルモン、防腐剤および殺菌剤を含む皮膚用薬剤、ならびに疾患予防用のワクチンおよび抗血清などの免疫生物学的薬物との併用も提供されるものとする。
【0151】
例えば、そうした抗感染症薬には、本発明の化合物または方法を用いた治療の際に、例えば混合した組成物および/または別個の剤形で、任意選択で同時投与される1種または複数の抗生物質が含まれる。この目的に適した当業界で既知の抗生物質には、例えば上記に挙げたものが含まれる。
【0152】
さらに、本発明の方法および化合物を、当業界で既知の動物用健康治療薬、例えば微量元素、ビタミン、抗炎症薬、抗感染症薬等と、同一組成物または異なる組成物中で、同時にまたは逐次的に併用して有利に用いることも考慮する。
【0153】
適切な抗炎症薬には、ステロイド系と非ステロイド系抗炎症薬の両方が含まれる。そのラセミ混合物または個々の鏡像異性体を含む非ステロイド系抗炎症薬は、適切な場合、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、アクロフェナック、ジクロフェナク、アロキシプリン、アプロキセン、アスピリン、ジフルニサル、フェノプロフェン、インドメタシン、メフェナム酸、ナプロキセン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、サリチルアミド、サリチル酸、スリンダク、デスオキシスリンダク、テノキシカム、トラマドール、ケトララック(ketoralac)、フルフェニサル、サルサラート、サリチル酸トリエタノールアミン、アミノピリン、アンチピリン、オキシフェンブタゾン、アパゾン、シンタゾン、フルフェナム酸、クロニキセリル、クロニキシン、メクロフェナム酸、フルニキシン、コルヒチン、デメコルシン、アロプリノール、オキシプリノール、塩酸ベンジダミン、ジメファダン、インドキソール、イントラゾール、塩酸ミムバン、塩酸パラニレン、テトリダミン、塩酸ベンズインドピリン(benzindopyrine hydrochloride)、フルプロフェン、イブフェナック、ナプロキソール、フェンブフェン、シンコフェン、ジフルミドンナトリウム、フェナモル、フルチアジン、メタザミド、塩酸レチミド、塩酸ネキセリジン、オクタザミド、モリナゾール(molinazole)、ネオシンコフェン、ニマゾール(nimazole)、クエン酸プロキサゾール、テシカム、テシミド、トルメチンおよびトリフルミデートを含むことができる。
【0154】
特定の実施形態では、本発明の化合物をフルニキシンと併用して用いる[例えば米国特許第6,790,867B2号を参照させたい。その全体を参照により本明細書に組み込む]。関連する実施形態では、本発明は、本発明の化合物およびフルニキシンを含む医薬組成物を提供する。
【0155】
ステロイド系抗炎症薬には、例えば、デキサメタゾン、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、フルニソリド、メチルプレドニゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、アルクロメタゾン、アムシノニド、クロベタゾール、フルドロコルチゾン、二酢酸ジフルロゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオロメタロン(fluoromethalone)、フルランドレノリド、ハルシノニド、メドリゾン、モメタゾンなどのグルココルチコイド剤、および薬剤として許容されるその塩および混合物が含まれる。
【0156】
包装
組成物は、望むなら、活性成分を含む1つまたは複数の単位剤形を含むことができるFDA承認のキットなどのパックまたは分注装置で存在することができる。パックは、例えばブリスターパックなどの金属またはプラスチックのホイルを含むことができる。パックまたは分注装置には投与のための指図書を添付することができる。パックまたは分注装置には、調合薬の製造、使用または販売を管轄する政府機関によって規定された形態の容器に付随した通知書を添付することもできる。その通知書は、組成物の形態またはヒトへの投与もしくは獣医用投与についての機関による承認を反映するものである。そうした通知書は、例えば、処方薬のための米国食品医薬品局によって承認されたラベリングの通知書であっても、承認された製品の折り込み通知書であってもよい。適合する薬剤用担体中に処方された本発明の化合物を含む組成物を調製し、適切な容器中に入れ、かつ指示された状態の治療のためのラベリングをすることもできる。任意選択の実施形態では、包装品は、複数用量を含むガラスまたはプラスチックのバイアルまたは他の容器を含む。
【実施例】
【0157】
本発明の具体的な実施形態を示すために以下の実施例を提供するが、いかなる形でも、本発明の範囲を限定しようとするものでなく、かつそのように解釈されるべきではない。
【0158】
(実施例1〜25)
フロルフェニコールカーボネートプロドラッグの調製
フロルフェニコールおよびその類似物のカーボネートプロドラッグの合成
図4を参照して、窒素雰囲気下、0℃で、無水テトラヒドロフラン中の出発アルコールA(0.68M、1.78モル当量)およびトリエチルアミン(0.68M、1.78モル当量)の溶液を、無水テトラヒドロフラン中のトリホスゲン(0.48M、0.64モル当量)の溶液に滴下した。得られた混合物を0℃で30分間攪拌し、次いでろ紙で迅速にろ過してアンモニウム塩を除去した。クロロホーメート溶液Bのろ液をさらに精製することなく、以下の炭酸化反応で用いた。
【0159】
新規に調製したクロロホーメートBの溶液、または市販のクロロホーメートB(0.34M、1.78モル当量)の無水テトラヒドロフラン溶液を滴下漏斗に移し、その溶液の2/3を、対応するフェニコールC(0.64M、1モル当量、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(0.5モル当量)およびトリエチルアミン(1.5モル当量)を含む無水テトラヒドロフラン溶液に、窒素雰囲気下、0℃で滴下した。混合物を0℃で30分間攪拌し、反応の進行を薄層クロマトグラフィーでモニターした。薄層クロマトグラフィーでみて反応が完了していないことが確認されたら、追加のクロロホーメート溶液を加え、出発原料が消失するまで反応を続行した。得られた溶液をろ紙で迅速にろ過してアンモニウム塩を除去した。ろ液を濃縮し、酢酸エチルを加えて粗生成物を溶解させた。得られた溶液を1M HCl(水溶液)、飽和NaHCO3(水溶液)および飽和NaCl(水溶液)で逐次洗浄し、続いてシリカゲルとNaSOの充填物を通して急速ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた粗生成物を、フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーまたは再結晶化(表5に挙げた溶媒を用いて)により精製して純粋なカーボネートプロドラッグDを得た。上記方法によって以下の実施例番号の化合物を得た。
【0160】
【表2−1】

【0161】
【表2−2】

(実施例1)
【0162】
【化36】

(1R,2S)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−フルオロ−1−(4−(メチルスルホニル)フェニル)プロピルメチルカーボネート。
【0163】
粗生成物をメタノール/水から結晶化させて93%の収率で標記生成物を白色固体として得た。
【0164】
【化37】

(実施例2)
【0165】
【化38】

(1R,2S)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−フルオロ−1−(4−(メチルスルホニル)フェニル)プロピルエチルカーボネート。
【0166】
1.2Lのテトラヒドロフラン中のフロルフェニコール(250g、0.7モル)、4−ジメチルアミノピリジン(42g、0.35モル)、トリエチルアミン(130mL、0.91モル)の溶液を0〜5℃で攪拌しながら、添加漏斗を用いて生のエチルクロロホーメート(80mL、0.83モル)を滴下した。反応の進行は、トリエチルアミン塩酸塩の沈澱によって示された。混合物を室温で30分間攪拌させ、混合物をろ別した。ろ液を濃縮し、600mLの酢酸エチルを加え、溶液を1M HCl(2×200mL)で洗浄し、続いて飽和NaCl(200mL)で洗浄し、NaSO/シリカゲルの層を通してろ過した。ろ液を濃縮し、粗油状物を450mLのイソプロパノールから結晶化させて、純粋な標記生成物(286g)を得た。m.p.110〜112℃;
【0167】
【化39】

(実施例3)
【0168】
【化40】

(1R,2S)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−フルオロ−1−(4−(メチルスルホニル)フェニル)プロピルプロピルカーボネート。
【0169】
粗生成物をイソプロパノールから結晶化させて91%の収率で標記生成物を白色固体として得た。
【0170】
【化41】

(実施例4)
【0171】
【化42】

(1R,2S)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−フルオロ−1−(4−(メチルスルホニル)フェニル)プロピルイソプロピルカーボネート。
【0172】
粗生成物をイソプロパノールから結晶化させて92%の収率で標記生成物を白色固体として得た。
【0173】
【化43】

(実施例5)
【0174】
【化44】

(1R,2S)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−フルオロ−1−(4−(メチルスルホニル)フェニル)プロピルイソブチルカーボネート。
【0175】
粗生成物をイソプロパノール/エタノールから結晶化させて92%の収率で標記生成物を白色固体として得た。
【0176】
【化45】

(実施例6)
【0177】
【化46】

シクロプロピルメチル(1R,2S)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−フルオロ−1−(4−(メチルスルホニル)フェニル)プロピルカーボネート。
【0178】
粗生成物をゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、続いて酢酸エチル/ヘキサンから結晶化させて72%の収率で標記生成物を白色固体として得た。
【0179】
【化47】

(実施例7)
【0180】
【化48】

(1R,2S)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−フルオロ−1−(4−(メチルスルホニル)フェニル)プロピル3−メチルブタ−2−エニルカーボネート。
【0181】
粗生成物をゲルカラムクロマトグラフィーで精製して80%の収率で標記生成物を白色泡状物として得た。
【0182】
【化49】

(実施例8)
【0183】
【化50】

(1R,2S)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−フルオロ−1−(4−(メチルスルホニル)フェニル)プロピルイソペンチルカーボネート。
【0184】
粗生成物を酢酸エチル/ヘキサンから結晶化させて85%の収率で標記生成物を白色固体として得た。
【0185】
【化51】

(実施例9)
【0186】
【化52】

(1R,2S)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−フルオロ−1−(4−(メチルスルホニル)フェニル)プロピルペンタン−3−イルカーボネート。
【0187】
粗生成物をゲルカラムクロマトグラフィーで精製して73%の収率で標記生成物を白色固体として得た。
【0188】
【化53】

(実施例10)
【0189】
【化54】

シクロヘキシル(1R,2S)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−フルオロ−1−(4−(メチルスルホニル)フェニル)プロピルカーボネート。
【0190】
粗生成物をゲルカラムクロマトグラフィーで精製して75%の収率で標記生成物を白色固体として得た。
【0191】
【化55】

(実施例11)
【0192】
【化56】

(1R,2S)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−フルオロ−1−(4−(メチルスルホニル)フェニル)プロピル2−メトキシエチルカーボネート。
【0193】
粗生成物をゲルカラムクロマトグラフィーで精製して78%の収率で標記生成物を白色半固体として得た。
【0194】
【化57】

(実施例12)
【0195】
【化58】

(1R,2S)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−フルオロ−1−(4−(メチルスルホニル)フェニル)プロピル2−エトキシエチルカーボネート。
【0196】
粗生成物をゲルカラムクロマトグラフィーで精製して33%の収率で標記生成物を白色半固体として得た。
【0197】
【化59】

(実施例13)
【0198】
【化60】

(1R,2S)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−フルオロ−1−(4−(メチルスルホニル)フェニル)プロピル2−ブトキシエチルカーボネート
粗生成物をゲルカラムクロマトグラフィーで精製して93%の収率で標記生成物を白色半固体として得た。
【0199】
【化61】

(実施例14)
【0200】
【化62】

ベンジル(1R,2S)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−フルオロ−1−(4−(メチルスルホニル)フェニル)プロピルカーボネート。
【0201】
粗生成物をイソプロパノール/エタノールから結晶化させて88%の収率で標記生成物を白色固体として得た。
【0202】
【化63】

(実施例15)
【0203】
【化64】

(1R,2S)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−フルオロ−1−(4−(メチルスルホニル)フェニル)プロピル4−メチルベンジルカーボネート。
【0204】
粗生成物をゲルカラムクロマトグラフィーで精製して73%の収率で標記生成物を白色泡状物として得た。
【0205】
【化65】

(実施例16)
【0206】
【化66】

(1R,2S)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−フルオロ−1−(4−(メチルスルホニル)フェニル)プロピル4−メトキシベンジルカーボネート。
【0207】
粗生成物をゲルカラムクロマトグラフィーで精製して41%の収率で標記生成物を白色半固体として得た。
【0208】
【化67】

(実施例17)
【0209】
【化68】

(S)−エチル2−(1R,2S)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−フルオロ−1−(4−(メチルスルホニル)フェニル)プロポキシ)カルボニルオキシ)プロパノエート。
【0210】
粗生成物をゲルカラムクロマトグラフィーで精製して71%の収率で標記生成物を白色半固体として得た。
【0211】
【化69】

(実施例18)
【0212】
【化70】

(1R,2S)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−フルオロ−1−(4−(メチルスルホニル)フェニル)プロピルドデシルカーボネート。
【0213】
粗生成物をゲルカラムクロマトグラフィーで精製して35%の収率で標記生成物を白色半固体として得た。
【0214】
【化71】

(実施例19)
【0215】
【化72】

(1R,2S)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−フルオロ−1−(4−(メチルスルホニル)フェニル)プロピルオクタデシルカーボネート。
【0216】
粗生成物をゲルカラムクロマトグラフィーで精製して42%の収率で標記生成物を白色固体として得た。
【0217】
【化73】

(実施例20)
【0218】
【化74】

(1R,2S)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−フルオロ−1−(4−(メチルスルホニル)フェニル)プロピル−(3R,S)−3,7−ジメチルオクト−6−エニルカーボネート。
【0219】
粗生成物をゲルカラムクロマトグラフィーで精製して30%の収率で 標記生成物を白色固体として得た。得られた構造はこれが異性体の混合物であることを示している。
【0220】
【化75】

(実施例21)
【0221】
【化76】

(1R,2S)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−フルオロ−1−(4−(メチルスルホニル)フェニル)プロピル2−(2−メトキシエトキシ)エチルカーボネート。
【0222】
粗生成物をゲルカラムクロマトグラフィーで精製して標記生成物を白色固体として得た。
【0223】
【化77】

(実施例22)
【0224】
【化78】

(1R,2S)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−フルオロ−1−(4−(メチルスルホニル)フェニル)プロピルオクチルカーボネート。
【0225】
粗生成物を所望の生成物を得るためにゲルカラムクロマトグラフィーで精製して44%の収率で標記生成物を白色固体として得た。
【0226】
【化79】

(実施例23)
【0227】
【化80】

(1R,2S)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−フルオロ−1−(4−(メチルスルホニル)フェニル)プロピル2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エチルカーボネート。
【0228】
粗生成物をゲルカラムクロマトグラフィーで精製して31%の収率で標記生成物を白色半固体物質として得た。
【0229】
【化81】

(実施例24)
【0230】
【化82】

(1R,2S)−1−(4−(6−シアノピリジン−3−イル)フェニル)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−フルオロプロピルエチルカーボネート。
【0231】
粗生成物をゲルカラムクロマトグラフィーで精製して97%の収率で標記生成物を白色泡状物として得た。
【0232】
【化83】

(実施例25)
【0233】
【化84】

(1R,2S)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−フルオロ−−1−(4−フルオロメチルスルホニル)フェニル)プロピルエチルカーボネート。
【0234】
粗生成物をゲルカラムクロマトグラフィーで精製して定量的収率の標記生成物を白色泡状物として得た。
【0235】
【化85】

(実施例26)
ジオールのビス−クロロホーメートとの反応によるフロルフェニコールおよびその類似物のプロドラッグの合成。
【0236】
図5を参照して、ビス−クロロホーメートE(1モル当量、0.34M)の無水テトラヒドロフラン溶液を滴下漏斗に入れ、窒素雰囲気下、0℃で、基質C(2.2モル当量、0.64M)、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(0.5モル当量)およびトリエチルアミン(2.2モル当量)を含む無水テトラヒドロフラン溶液に滴下した。混合物を0℃で30分間攪拌し、次いで室温で終夜攪拌した。得られた溶液をろ紙で迅速にろ過してアンモニウム塩を除去した。ろ液を濃縮し、酢酸エチルを加えて粗生成物を溶解させた。得られた溶液を1M HCl(水溶液)、飽和NaHCO3(水溶液)および飽和NaCl(水溶液)で逐次洗浄し、続いてシリカゲルとNaSOの充填物を通して急速ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた粗生成物を、フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して純粋なカーボネートプロドラッグFを得た。
【0237】
上記方法により以下の化合物を得た。
【0238】
(実施例26)
【0239】
【化86】

ビス((1R,2S)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−フルオロ−1−(4(メチルスルホニル)フェニル)プロピル)エタン−1,2−ジイルジカーボネート。
【0240】
粗生成物をゲルカラムクロマトグラフィーで精製して62%の収率で標記生成物を白色半固体として得た。
【0241】
【化87】

(実施例27〜30)
クロラムフェニコール型フェニコールのベンジル型カーボネートプロドラッグ(HおよびI)の合成
図6を参照して以下の方法を用いた。
【0242】
方法I
エチルクロロホーメートB(2.2モル当量、0.34M)の無水テトラヒドロフラン溶液を滴下漏斗に入れ、窒素雰囲気下、0℃で、基質G(1モル当量、0.64M)、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(0.5モル当量)およびトリエチルアミン(2.4モル当量)を含む無水テトラヒドロフラン溶液に滴下した。混合物を0℃で30分間攪拌し、次いで室温で終夜攪拌した。得られた溶液をろ紙で迅速にろ過してアンモニウム塩を除去した。ろ液を濃縮し、酢酸エチルを加えて粗生成物を溶解させた。得られた溶液を1M HCl(水溶液)、飽和NaHCO3(水溶液)および飽和NaCl(水溶液)で逐次洗浄し、続いてシリカゲルとNaSOの充填物を通して急速ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた生成物を減圧下で乾燥して純粋なカーボネートプロドラッグHを得た。
【0243】
方法II
エチルクロロホーメートB(1モル当量、0.34M)の無水テトラヒドロフラン溶液を滴下漏斗に入れ、窒素雰囲気下、0℃で、基質G(1モル当量、0.64M)、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(0.5モル当量)およびトリエチルアミン(2.4モル当量)を含む無水テトラヒドロフラン溶液に滴下した。混合物を0℃で30分間攪拌し、次いで室温で終夜攪拌した。得られた溶液をろ紙で迅速にろ過してアンモニウム塩を除去した。ろ液を濃縮し、酢酸エチルを加えて粗生成物を溶解させた。得られた溶液を1M HCl(水溶液)、飽和NaHCO3(水溶液)および飽和NaCl(水溶液)で逐次洗浄し、続いてシリカゲルとNaSOの充填物を通して急速ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた粗生成物を、フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して純粋なカーボネートプロドラッグHおよびIを得た。
【0244】
上記方法により以下の化合物を得た。
【0245】
【化88】

(実施例27)
【0246】
【化89】

(1R,2S)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−1−(4−ニトロフェニル)プロパン−1,3−ジイルジエチルジカーボネート。
【0247】
上記の方法Iにより生成物を88%の収率で標記生成物を白色泡状物として得た。この生成物は方法IIによっても得られ、25%の収率で標記生成物を白色泡状物として得た。
【0248】
【化90】

(実施例28)
【0249】
【化91】

(1R,2R)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−ヒドロキシ−1−(4−ニトロフェニル)プロピルエチルカーボネート。
【0250】
上記の方法IIにより生成物を19%の収率で標記生成物を白色泡状物として得た。
【0251】
【化92】

(実施例29)
【0252】
【化93】

(1R,2R)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−1−(4−(メチルスルホニル)フェニル)プロパン−1,3−ジイルジエチルジカーボネート。
【0253】
上記の方法IIにより粗生成物がもたらされ、19%の収率で標記生成物を白色泡状物として得た。
【0254】
【化94】

(実施例30)
【0255】
【化95】

(1R,2R)−2−(2,2−ジクロロアセトアミド)−3−ヒドロキシ−1−(4−(メチルスルホニル)フェニル)プロピルエチルカーボネート。
【0256】
上記の方法IIにより粗生成物がもたらされ、20%の収率で標記生成物を白色泡状物として得た。
【0257】
【化96】

(実施例31〜35)
フロルフェニコールベンジル型カーボネートプロドラッグの有用性の評価
(実施例31)
組成物の粘度
以下の表4は、300mg/mlフロルフェニコール(30%重量/容積)と同等の濃度での選択されたフロルフェニコールベンジル型カーボネートプロドラッグの薬注溶液の注入可能性の評価を示す。
【0258】
【表4−1】

【0259】
【表4−2】

考察
所望の量のうちの必要量の抗生物質を好都合に投与するためには、フェニコールプロドラッグ中に高濃度のフェニコールまたはフェニコール薬物が含まれることがしばしば必要である。注入可能な処方物に許容される有機溶媒または溶媒混合物中へのフェニコールの溶解度が限られているため、非常に高濃度のフロルフェニコール溶液を調製するために選択される溶媒は限られている。その結果、有機溶媒または溶媒混合物中のフェニコール薬物の高濃度溶液は非常に高粘度になることがあり、注射器で投与するのが困難になる。したがって、フェニコールベンジル型カーボネートプロドラッグが、注入可能な処方物に許容されるより広範な有機溶媒または溶媒混合物中に溶解できるということは、より低い粘度で注入するための非常に高濃度溶液を調製できる可能性を提供する。表4は、注入可能な皮下または筋肉内投与に通常許容される有機溶媒の混合物の例における、フロルフェニコールベンジル型カーボネートプロドラッグの高濃度溶液の注入可能性の比較を示す。Nuflor(登録商標)製剤中に存在する濃度と同等のフロルフェニコールの濃度(mg/mL)を含むフロルフェニコールベンジル型カーボネートの試験溶液を調製した。溶液の注入可能性を「注射器液だれ(dripping syringe)」法により評価した。その方法では、自由重力流れの条件下での、垂直に立てた注射器からの等容積の溶液の液だれ時間(秒)を15℃で測定した。5mlのポリエチレン製使い捨て注射器から(5ml Luer,Norm−Ject Zentrish/Henke Saas Wolf GMBH)プランジャーを取り外し、注射器に使い捨て注射針(B−D(登録商標)16G1 Precision Glide/BentonDickinson & CO)を取り付けた後、試験溶液をその頂部から注射器の中に入れ、2mLの溶液(3mlと1mlの印の間)の自由流れに要する時間を3回記録した。Nuflor(登録商標)に対する注入可能性を、試験溶液(エントリー1〜12)についての液だれ時間を、Nuflor(登録商標)製剤の市販のサンプル(エントリー13)についての液だれ時間で除して算出した。表4の結果から明らかなように、粘度希釈剤としてベンジルアルコールを含む試験溶液の注入可能性は、相対注入可能性<1.00を有し、したがって、Nuflor(登録商標)(プロピレングリコール/ポリエチレングリコール300/2−メチルピロリドン中に30%重量/容積のフロルフェニコール溶液)より良好であった。その良好な注入可能性のため、この溶液は、フロルフェニコールの注入可能な送達のためのより好ましい処方物であることが示された。ベンジルアルコール粘度希釈剤が入っていない、トリアセチン/2−ピロリドン−1/1中の実施例2のフロルフェニコールベンジル型カーボネートの溶液は、Nuflor(登録商標)(エントリー5)のそれより劣る注入可能性を有する唯一の溶液であった。Nuflor(登録商標)より高い濃度のフロルフェニコールを有する実施例2のフロルフェニコールベンジル型カーボネートの溶液(エントリー2;35重量/容積%対30重量/容積%)も優れた注入可能性を有していた。興味深いことには、遊離フロルフェニコールとフロルフェニコールベンジル型カーボネートプロドラッグを混合した形態で(エントリー11〜12)30重量/容積%に相当するフロルフェニコール濃度を含む溶液も、Nuflor(登録商標)製剤より優れた注入可能性を示した。
【0260】
(実施例32)
融点および水溶解度比較
フェニコールのカーボネートプロドラッグまたはフェニコールのベンジル型カーボネートプロドラッグ(フェニコールの類似物)を用いて実現できる物理化学的特性の改変は、動物投与のための所望の有機溶媒をベースとした処方物が得られるようにするために重要である。フェニコールベンジル型カーボネートプロドラッグの特定の有機溶媒または有機溶媒の混合物中への溶解度が親フェニコールと比較して高いことは、そのようなカーボネートプロドラッグの融点が親薬物と比較して低いことに一部起因している。これらのより低い融点は、カーボネートプロドラッグの結晶格子のエネルギーが低いこと(これは高い溶解度に関与している)を反映している。フロルフェニコールプロドラッグの種々の実施例の利用可能な結晶形態のフロルフェニコールの融点の比較を以下の表5に示す。
【0261】
ある治療用途では、フロルフェニコールを、循環系への薬物の所望の持続放出をもたらす薬物の局所デポーを形成することが知られている皮下に濃厚な有機溶液で投与する。そうした場合、水性媒体中でのフロルフェニコールの水溶解度は、持続放出の速度を決める重要な因子の1つである。皮下デポー部位からのフロルフェニコールの持続放出に影響を及ぼす他の重要な因子は、投薬溶液の濃度と処方物の溶媒組成である。フロルフェニコールベンジル型カーボネートプロドラッグの許容される処方物のために使用できるより広範囲の溶媒の他に、これらのプロドラッグは広い範囲の水溶解度も可能にする。いくつかのフロルフェニコールベンジル型カーボネートプロドラッグについて測定した水溶解度を表5に示す。これらのプロドラッグで達成される溶解度は、フロルフェニコールの溶解度より若干低い程度から著しく低い溶解度の範囲である。そうしたプロドラッグの水溶解度が小さいことは、皮下デポー部位でのプロドラッグの溶解速度を制御するのに有用であり、親薬物の最適持続放出の実現を可能にすることができる。
【0262】
【表5】

(実施例33)
有機溶媒中での溶解度の比較
(トリアセチン/ベンジルアルコール2:1混合物)
以下の表6は、低粘度成分としてベンジルアルコールを用いた、実施例の溶媒混合物トリアセチン/ベンジルアルコール2:1(容積/容積)において、選択されたベンジル型カーボネートフロルフェニコールプロドラッグで得られた、フロルフェニコール同等物の溶解度を示す。ベンジル型カーボネートフロルフェニコールプロドラッグで30%(重量/容積)以上の所望の濃度が達成された。フロルフェニコール親薬物は、10%(重量/容積)という低い濃度でもトリアセチン/ベンジルアルコール2:1(容積/容積)中に溶解しなかった。興味深いことに、フロルフェニコールのベンジル型カーボネートプロドラッグも合わせて存在する場合、フロルフェニコールはトリアセチン/ベンジルアルコール2:1(容積/容積)中によりよく溶解した。275mg/mlの実施例14のプロドラッグと100mg/mlのフロルフェニコールの組合せは、トリアセチン/ベンジルアルコール2:1(容積/容積)中に可溶性であり、30%(重量/容積)含量のフロルフェニコールで安定した溶液が提供された(上記表4、エントリー12)。
【0263】
【表6】

(実施例34)
ベンジル型カーボネートプロドラッグからの親フロルフェニコールのインビトロでの酵素放出
親薬物分子のプロドラッグ誘導体がインビボで遊離親薬物の供給源としてとして効果的に作用する能力は、治療のための特定のプロドラッグの有用性を決定する。内生酵素の存在下における、プロドラッグのインビボでの親薬物放出能力は、動物にプロドラッグを投与した後の親薬物の全身濃度を測定することによって決定することができる。放出能は、動物の全血、血漿または血清と混合した後、親薬物の放出を測定することによってインビトロで評価することもできる。フロルフェニコールの選択されたベンジル型カーボネートプロドラッグをインビトロでウシ血清と混合した後、フロルフェニコールの放出について試験した。以下の表7に示すように、試験した化合物は好ましい親薬物放出プロファイルを示した。実施例8および14の化合物は血清中における最も速いフロルフェニコール放出速度を示した。試験した化合物の中で、より親油性のフロルフェニコールのカーボネートは、より速い分解および放出速度を示す一般的傾向があるようである。興味のある例外が実施例26で見られた(ビス−フロルフェニコールカーボネート)。
【0264】
【表7】

50μlのカーボネートプロドラッグのストック溶液(DMSO中に10mg/mL)を5mLのドナーウシの血清に加え、混合した。得られた溶液の400μl分量を1.5mLプラスチック遠心分離管に移した。インキュベーションするために各プラスチック管を37℃水浴に入れた。0、1、2、4、8および24時間で試料を取り出し、400μlのアセトニトリルを加えて反応を停止させた後、30秒間急速に攪拌した。Eppendorf 5415Gを用いて14000rpmで5分間遠心分離にかけて沈殿物を除去した。HPLC分析用に透明な上澄み溶液をサンプリングした。フロルフェニコールのピーク面積をプロドラッグの転換率を計算するために用いた。
【0265】
HPLCの条件は以下の通りである。
【0266】
装置: Agilent1100シリーズ
カラム: Varian Microsorb−5μ、C18、150mm×2.1mm
カラム温度: 30℃
流速: 0.5mL/分
注入容量: 40μl
有機物: アセトニトリル
水系: 水の中に0.1%のギ酸
稼働時間: 20分
勾配は以下の通りとした:
【0267】
【化97】

表7に示した、ウシ血清における選択プロドラッグの安定性の試験結果により、インビトロで血清酵素を用いて処理した場合、フロルフェニコールのベンジル型カーボネートは親薬物を放出することが確認された。これらの結果は、フロルフェニコールのベンジル型カーボネートが、ウシ血清中に存在する加水分解酵素の基質であることの証拠を示している。
【0268】
(実施例35)
ベンジル型カーボネートプロドラッグからのインビボでの親フロルフェニコールの放出
プロドラッグ投与後のインビボでの活性抗生物質の薬物動態学的プロファイルを以下のようにして試験した。
【0269】
1.2つの異なる動物種において確認された活性抗生物質のインビボでの放出:
実施例18のプロドラッグ化合物を静脈内(「IV」)経路で対象のラットとウシに投与し、続いて、経時的に集めた血漿中のフロルフェニコール濃度を測定した。
【0270】
以下の表8のデータは、実施例18のプロドラッグ化合物をラットとウシの両方にIV投与して得られたフロルフェニコールの血漿濃度を示す。
【0271】
【表8】

2.プロドラッグの投与経路に関係なく、活性抗生物質はプロドラッグから放出される:
以下の表9のデータは、実施例2のプロドラッグ化合物を、2つの異なる経路、すなわちIVおよび皮下(「SC」)で投与して得られたフロルフェニコールの血漿濃度を示す。
【0272】
【表9】

3.活性部分の放出における用量依存的増大:
以下の表10のデータにより、投薬量を増大させて実施例2のプロドラッグ化合物を投与すると、活性抗生物質(フロルフェニコール)の血漿濃度が用量依存的に増大することが確認される。
【0273】
【表10】

4.活性部分の放出の時間:
a.以下の表11および12のデータにより、活性抗生物質(フロルフェニコール)は、その種に関係なく、実施例2のプロドラッグ化合物の放出後0.5時間未満内に放出されていることが確認される。
【0274】
【表11−1】

【0275】
【表11−2】

【0276】
【表12】

b.以下の表13および14のデータにより、ウシにおいてIVおよびSC経路で投与した場合、活性抗生物質は、実施例2のプロドラッグ化合物から急速に放出されていることが確認される。
【0277】
【表13】

【0278】
【表14−1】

【0279】
【表14−2】

5.処方物の効果:
フェニコールカーボネートプロドラッグのトリアセチン/ベンジルアルコール処方物の利点。
【0280】
実施例2の化合物の放出の動態を、トリアセチン/ベンジルアルコール(2:1重量/容積の比)を用いた処方での投与と、トリアセチン/2−ピロリジノン(2:1重量/容積の比)の処方での投与で比較した。検討はウシ(n=3)で実施した。
【0281】
トリアセチン/2−ピロリジノン中に20mg/kgの用量で投与した、実施例2の化合物のSC投与後の平均AUC値は42.6時間mg/Lであった。
【0282】
トリアセチン/ベンジルアルコールに40mg/kgの用量で投与した、実施例2の化合物のSC投与後の平均AUC値は152.1時間mg/Lであった。
【0283】
2つの検討で用いた用量が異なっていたので、用量を正規化した値を算出した。それらは、トリアセチン/2−ピロリジノンおよびトリアセチン/ベンジルアルコールについて、それぞれ2.13時間/L(42.6/20)および3.8時間/L(152.1/40)であった。
【0284】
6.実施例2のベンジル型カーボネートプロドラッグを皮下投与した後でのウシにおけるフロルフェニコールの生物学的利用能。
【0285】
実施例2の化合物についての薬物動態的データの算出:
総平均活性部分(フロルフェニコール)AUC=152.11時間mg/L
実施例2の化合物の総平均AUC=38.04、これは30.43時間mg/Lフロルフェニコール相当物に等しい。
【0286】
SC部位から吸収されると、MC−9148の83.5%はフロルフェニコールに転換された。
【0287】
実施例2の化合物を用いた効力の検討
自然発生的なウシ呼吸器系疾患(BRD)に苦しむウシにSC投与した後での、Nuflor(登録商標)(Schering−Plough Animal Health)の単回投与の治療効力を、実施例2のプロドラッグ化合物の単回投与のそれと比較した。結果は以下である。
【0288】
【表15】

結論的に、実施例2のプロドラッグから放出されたフロルフェニコールで観測された効力は、市販のフロルフェニコール(Nuflor(登録商標))に匹敵するものである。
【0289】
結論
したがって、本発明により、フェニコール抗生物質の新規なプロドラッグ、および動物またはヒトの細菌性感染症の治療または予防におけるその使用方法が提供されることを理解されよう。
【0290】
本発明を説明するために特定の実施形態および実施例を用いたが、本発明の範囲を逸脱することなく、示した実施形態および実施例を変更することができることは当業者に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0291】
【図1−A】図1Aは、クロロホーメートを用いたフロルフェニコールおよびフロルフェニコール類似物のベンジル型(benzylic)カーボネートプロドラッグの合成のための反応スキーム1を示す。
【図1−B】図1Bは、(クロラムフェニコール型の)ジヒドロキシフェニコールからのベンジル型カーボネートプロドラッグエステルの合成のための反応スキーム2を示す。
【図2−A】図2Aは、1当量未満のクロロホーメート試薬を用いてジヒドロキシフェニコールからベンジル型カーボネートプロドラッグエステルを合成するための反応スキーム3(ジヒドロキシ型フェニコール、方法A)を示す。
【図2−B】図2Bは、保護基の手法を用いて(クロラムフェニコール型の)ジヒドロキシフェニコールのベンジル型モノカーボネートプロドラッグを合成するための反応スキーム4(ジヒドロキシ型フェニコール、方法B)を示す。
【図3−A】図3Aは、選択的加水分解の手法を用いて(クロラムフェニコール型の)ジヒドロキシフェニコールのベンジル型モノカーボネートプロドラッグを合成するための反応スキーム5(ジヒドロキシ型フェニコール、方法5C)を示す。
【図3−B】図3Bは、クロロホーメート以外のX−(O)C−O−R試薬を用いてフロルフェニコールおよびフロルフェニコール類似物ベンジル型カーボネートプロドラッグを合成するための反応スキーム6を示す。「X」の値の範囲を以下の表1に示す。
【図4】図4は、出発アルコールAとトリエチルアミンを反応させてクロロホーメートBを生成し、これをフェニコールCと反応させて化合物Dを得ることによるフェニコールカーボネート化合物Dの合成を示す。
【図5】図5は、ビス−クロロホーメートEを基質Cと反応させてフェニコールカーボネート化合物Fを生成することによるビスカーボネートフェニコール化合物Fの合成を示す。
【図6】図6は、エチルクロロホーメートBを、基質Gおよびトリエチルアミン(示していない)と反応させてベンジル型ビスカーボネートフェニコール化合物H、ベンジル型カーボネートIおよび第一カーボネートを生成することによるフェニコールカーボネート化合物Hの合成を示す。
【図7−A】図7aは、RがRと異なるビスカーボネートの合成のための反応スキーム7aを示す。
【図7−B】図7bは、RがRと異なるビスカーボネートの代替の合成のための反応スキーム7bを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iのフェニコールカーボネートまたはその溶媒和物
【化1】

(式中、R
【化2】

からなる群から選択され、
は、ジクロロメチル、ジフルオロメチル、クロルフルオロメチル、クロロメチルおよびメチルからなる群から選択され、
は、ヒドロキシメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチルおよびCHO−C(O)O−Rからなる群から選択され、
およびRは、置換または非置換C1〜10直鎖、分枝鎖または環状アルキル、置換または非置換C1〜10アルコキシアルキル、C1〜10アリール、C1〜10アリールアルキル、置換または非置換C1〜10直鎖、分枝鎖または環状アルケニルからなる群から独立に選択される)。
【請求項2】
がNOであり、RがCHO−C(O)O−Rではない、請求項1に記載のフェニコールカーボネート。
【請求項3】
およびRが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−オクタデシル、2−メチル−ブチル、1−エチル−プロピル、3−メチル−プロプ−2−エニル、2−メトキシ−エチル、2−エトキシ−エチル、2−プロポキシ−エチル、2−ブトキシ−エチル、1−メチル−2−メトキシ−エチル、シクロプロピル−メチル、シクロペンチル−メチル、シクロヘキシル−メチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、3,7−ジメチルオクト−6−エニル、ベンジル、2−メチル−ベンジル、3−メチル−ベンジル、4−メチル−ベンジル、2−メトキシ−ベンジル、3−メトキシ−ベンジル、4−メトキシ−ベンジル、メチル−2−フリル、2−(メトキシ−エトキシ)−エチル、2−(エトキシ−エトキシ)−エチル、2−[2−(メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチル、2−[2−(エトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチル、2−(ヒドロキシ−エトキシ)−エチル、2−[2−(ヒドロキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチル、2−アセトキシ−エチル、2−(アセトキシ−エトキシ)−エチル、3−アセトキシ−プロピル、2−カルボキシ−エチル、3−カルボキシ−プロピル、4−カルボキシ−ブチル、2−メトキシカルボニル−エチル、3−メトキシカルボニル−プロピル、4−メトキシカルボニル−ブチル、2−メトキシカルボニル−ベンジル、3−メトキシカルボニル−ベンジル、4−メトキシカルボニル−ベンジル、1−エトキシカルボニル−エチル、1−メトキシカルボニル−エチル、フェニル、4−メチル−フェニル、4−メトキシ−フェニル、4−カルボキシ−フェニル、2−カルボキシ−フェニル、4−メトキシカルボニル−フェニル、2−メトキシカルボニル−フェニルおよび4−アセチルアミノ−フェニルからなる群から独立に選択される、請求項1に記載のフェニコールカーボネート。
【請求項4】
およびRが、メチル、メトキシ、カルボキシ、カルボアルコキシおよびアシルオキシからなる群から選択される部分で独立に置換されている、請求項3に記載のフェニコールカーボネート。
【請求項5】
が、
【化3】

からなる群から選択され、Rがジクロロメチルまたはジフルオロメチルであり、Rが、ヒドロキシメチル、フルオロメチルおよびCHO−C(O)O−Rからなる群から選択される、請求項3に記載のフェニコールカーボネート。
【請求項6】
がCHSOであり、RがCHClであり、RがCHFである、請求項1に記載のフェニコールカーボネート。
【請求項7】
が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−オクタデシル、2−メチル−ブチル、1−エチル−プロピル、3−メチル−プロプ−2−エニル、2−メトキシ−エチル、2−エトキシ−エチル、2−プロポキシ−エチル、2−ブトキシ−エチル、1−メチル−2−メトキシ−エチル、シクロプロピル−メチル、シクロペンチル−メチル、シクロヘキシル−メチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、3,7−ジメチルオクト−6−エニル、ベンジル、2−メチル−ベンジル、3−メチル−ベンジル、4−メチル−ベンジル、2−メトキシ−ベンジル、3−メトキシ−ベンジル、4−メトキシ−ベンジル、メチル−2−フリル、2−(メトキシ−エトキシ)−エチル、2−(エトキシ−エトキシ)−エチル、2−[2−(メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチル、2−[2−(エトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチル、2−(ヒドロキシ−エトキシ)−エチル、2−[2−(ヒドロキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチル、2−アセトキシ−エチル、2−(アセトキシ−エトキシ)−エチル、3−アセトキシ−プロピル、2−カルボキシ−エチル、3−カルボキシ−プロピル、4−カルボキシ−ブチル、2−メトキシカルボニル−エチル、3−メトキシカルボニル−プロピル、4−メトキシカルボニル−ブチル、2−メトキシカルボニル−ベンジル、3−メトキシカルボニル−ベンジル、4−メトキシカルボニル−ベンジル、1−エトキシカルボニル−エチル、1−メトキシカルボニル−エチル、フェニル、4−メチル−フェニル、4−メトキシ−フェニル、4−カルボキシ−フェニル、2−カルボキシ−フェニル、4−メトキシカルボニル−フェニル、2−メトキシカルボニル−フェニルおよび4−アセチルアミノ−フェニルからなる群から選択される、請求項6に記載のフェニコールカーボネート。
【請求項8】
がCHFである、請求項1に記載のフェニコールカーボネート。
【請求項9】
がCHSOまたはNOであり、RがCHClであり、RがOHであり、Rがエチルである、請求項1に記載のフェニコールカーボネート。
【請求項10】
がCHSOまたはNOであり、RがCHClであり、R
【化4】

であり、Rがエチルである、請求項1に記載のフェニコールカーボネート。
【請求項11】
【化5】

からなる群から選択される、請求項1に記載のフェニコールカーボネート。
【請求項12】
表2に挙げる化合物からなる群から選択される、請求項1に記載のフェニコールカーボネート。
【請求項13】
式IIの化合物を含むフェニコールカーボネート
【化6】

(式中、R
【化7】

からなる群から選択され、
a、cおよびeは独立に0〜4の範囲の値の整数であり、
bおよびdは独立に0〜2の範囲の値の整数であり、
但し、整数a、b、c、dおよびeの合計は2〜8の範囲の値の整数であり、
51およびR52は、H、メチル、ヒドロキシ、メトキシおよびアセトキシからなる群から独立に選択される)。
【請求項14】
a、b、c、dおよびeの合計が2〜4の範囲の値である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
が、
【化8】

である、請求項13に記載の化合物。
【請求項16】
【化9】

【化10】

からなる群から選択される構造を有する、請求項13に記載の化合物。
【請求項17】
薬剤として許容される賦形剤または溶媒と合わせて、有効量の請求項1に記載のフェニコールカーボネートを含む医薬組成物。
【請求項18】
薬剤として許容される賦形剤または溶媒と合わせて、有効量の請求項13に記載のフェニコールカーボネートを含む医薬組成物。
【請求項19】
薬剤として許容される賦形剤または溶媒と合わせて、有効量の請求項6に記載のフェニコールカーボネートを含む医薬組成物。
【請求項20】
フルニキシンをさらに含む、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項21】
インビボでフェニコールカーボネートによって放出されるフェニコールと同一のフェニコールである対応するフェニコールをさらに含む、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
フルニキシンをさらに含む、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項23】
フルニキシンをさらに含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項24】
インビボでフェニコールカーボネートによって放出されるフェニコールと同一のフェニコールである対応するフェニコールをさらに含む、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
薬剤として許容される賦形剤または溶媒と合わせて請求項1に記載の有効量のフェニコールカーボネートを含み、かつ、インビボでフェニコールカーボネートによって放出されるフェニコールと同一のフェニコールである対応するフェニコールを含む医薬組成物。
【請求項26】
薬剤として許容される賦形剤または溶媒と合わせて請求項13に記載の有効量のフェニコールカーボネートを含み、かつ、インビボでフェニコールカーボネートによって放出されるフェニコールと同一のフェニコールである対応するフェニコールを含む医薬組成物。
【請求項27】
少なくとも1つの追加の治療薬をさらに含む、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項28】
少なくとも1つの追加の治療薬をさらに含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項29】
フロルフェニコールをさらに含む、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項30】
フロルフェニコールをさらに含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記追加の治療薬が内部外部寄生虫殺虫性化合物である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記追加の治療薬が内部外部寄生虫殺虫性化合物である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記内部外部寄生虫殺虫性化合物が、イベルメクチン、ドラメクチン、アバメクチン、セラメクチン、エマメクチン、エプリノメクチン、モキシデクチン、ミルベマイシンおよびその組合せからなる群から選択されるアベルメクチンである、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項34】
式IIIのフェニコール化合物
【化11】

(式中、式Iのフェニコールカーボネートと式IIIのフェニコールは、重量で50:1〜1:50の範囲の比で存在し、RはCHSOであり、RはCHClであり、RはOHまたはFである)
と合わせて請求項1に記載のフェニコールカーボネートを含む医薬組成物。
【請求項35】
前記フェニコールカーボネートが組成物の約80重量%〜約5重量%を構成する、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記アベルメクチン化合物が約0.03重量/容積%〜約20重量/容積%の範囲の量で存在する、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項37】
殺吸虫剤をさらに含む、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記溶媒が少なくとも1つの薬剤として許容されるアルコールを含む、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記アルコールがベンジルアルコールである、請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記医薬組成物のアルコール含量が前記組成物の約5重量%〜約98重量%の範囲である、請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記医薬組成物のアルコール含量が前記組成物の約20重量%〜約45重量%の範囲である、請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項42】
薬剤として有効量の請求項1に記載のフェニコールカーボネートを投与することを含む、疾患または障害の治療または予防を必要とする動物における疾患または障害を治療または予防するための方法。
【請求項43】
薬剤として有効量の請求項13に記載のフェニコールカーボネートを投与することを含む、疾患または障害の治療または予防を必要とする動物の疾患または障害を治療または予防するための方法。
【請求項44】
投与される前記フェニコールカーボネートの量が約1〜約150mg/kg動物の範囲である、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記動物が、哺乳動物、鳥類、魚類、は虫類または無脊椎動物である、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
少なくとも1種の追加の治療薬が、それを必要とする動物にフェニコールカーボネートの前か、後かまたはそれと同時に投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記追加の薬剤が内部外部寄生虫殺虫性化合物である、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
前記内部外部寄生虫殺虫性化合物が、イベルメクチン、ドラメクチン、アバメクチン、セラメクチン、エマメクチン、エプリノメクチン、モキシデクチンおよびミルベマイシンからなる群から選択されるアベルメクチンである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
実施例1〜30の化合物およびその組合せからなる群から選択される薬剤として有効量の化合物を投与することを含む、動物の疾患または障害の治療または予防を必要とする動物の疾患または障害を治療または予防するための方法。
【請求項50】
適切な溶媒中でフェニコール化合物を対応するクロロホーメートと反応させることを含む、請求項1に記載の化合物の合成方法。
【請求項51】
前記溶媒が、塩素化溶媒、エステル溶媒、ポリエーテル溶媒、ホルムアルデヒドアセタールエーテル、環状エーテル、ケトン、混合エーテルエステル溶媒およびジエチレングリコールエーテルからなる群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記溶媒がテトラヒドロフランを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記反応を触媒の存在下で実施する、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記触媒が、4−ジメチルアミノ−ピリジン、4−メチルピリジン、ピリジンおよびその組合せからなる群から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記反応が酸捕捉剤の存在下で実施される、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
前記酸捕捉剤が、トリエチルアミン、ピリジン、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよびその組合せからなる群から選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記クロロホーメートが
【化12】

(式中、Rはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−オクタデシル、2−メチル−ブチル、1−エチル−プロピル、3−メチル−プロペン−2−イル、2−メトキシ−エチル、2−エトキシ−エチル、2−プロポキシ−エチル、2−ブトキシ−エチル、1−メチル−2−メトキシ−エチル、シクロプロピル−メチル、シクロペンチル−メチル、シクロヘキシル−メチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、3,7−ジメチルオクト−6−イル、ベンジル、2−メチル−ベンジル、3−メチル−ベンジル、4−メチル−ベンジル、2−メトキシ−ベンジル、3−メトキシ−ベンジル、4−メトキシ−ベンジル、メチル−2−フリル、2−(メトキシ−エトキシ)−エチル、2−(エトキシ−エトキシ)−エチル、2−[2−(メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチル、2−[2−(エトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチル、2−(ヒドロキシ−エトキシ)−エチル、2−[2−(ヒドロキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチル、2−アセトキシ−エチル、2−(アセトキシ−エトキシ)−エチル、3−アセトキシ−プロピル、2−カルボキシ−エチル、3−カルボキシ−プロピル、4−カルボキシ−ブチル、2−メトキシカルボニル−エチル、3−メトキシカルボニル−プロピル、4−メトキシカルボニル−ブチル、2−メトキシカルボニル−ベンジル、3−メトキシカルボニル−ベンジル、4−メトキシカルボニル−ベンジル、1−エトキシカルボニル−エチル、1−メトキシカルボニル−エチル、フェニル、4−メチル−フェニル、4−メトキシ−フェニル、4−カルボキシ−フェニル、2−カルボキシ−フェニル、4−メトキシカルボニル−フェニル、2−メトキシカルボニル−フェニルおよび4−アセチルアミノ−フェニルからなる群から選択される)
である、請求項50に記載の方法。
【請求項58】
前記フェニコール化合物が以下の構造
【化13】

(式中、Rは、
【化14】

からなる群から選択され、
は、ジクロロメチル、ジフルオロメチル、クロルフルオロメチル、クロロメチルおよびメチルからなる群から選択される)
を有する、請求項50に記載の方法。
【請求項59】
反応時に、前記クロロホーメートがフェニコール化合物に対して過剰モル存在する、請求項50に記載の方法。
【請求項60】
フェニコール化合物を対応するビス−クロロホーメートと適切な溶媒中で反応させることを含み、前記フェニコール化合物がクロロホーメートに対して過剰モル存在する、請求項13に記載の化合物の合成方法。
【請求項61】
前記フェニコールが、
【化15】

であり、前記ビス−クロロホーメートが、
【化16】

であり、但し、Rは、
【化17】

からなる群から選択され、
は、ジクロロメチル、ジフルオロメチル、クロルフルオロメチル、クロロメチルおよびメチルからなる群から選択される、請求項60に記載の方法。

【図1−A】
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【図1−B】
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【図2−A】
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【図2−B】
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【図3−A】
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【図3−B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−A】
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【図7−B】
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【公表番号】特表2009−522270(P2009−522270A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548643(P2008−548643)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/048929
【国際公開番号】WO2007/079010
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(503442097)シェーリング−プラウ・リミテッド (47)
【住所又は居所原語表記】Weystrasse20,Lucerne6,CH−6000,Switzerland
【Fターム(参考)】