説明

フェニルアラニン誘導体の徐放性経口投与製剤

【課題】式(1)で表されるフェニルアラニン化合物またはその医薬的に許容される塩を、血漿中に長く存在させることができる徐放性経口投与製剤を提供すること。
【解決手段】式(1)で表されるフェニルアラニン化合物またはその医薬的に許容される塩を有効成分とする徐放性経口投与製剤であって、該有効成分を含有する核部を、アクリル酸誘導体、セルロース誘導体、ビニル誘導体、天然高分子及び糖類群から選ばれる少なくとも1種の水溶性コーティング基剤でコーティングしたコーティング製剤の形態にある徐放性経口投与製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α4インテグリン阻害作用を有し、炎症性腸疾患等の治療剤として有用なフェニルアラニン誘導体またはその医薬的に許容される塩の徐放性経口投与製剤に関する。特に、コーティング製剤、マトリクス製剤のいずれかに関する。
【背景技術】
【0002】
式(1)で表される化合物またはその医薬的に許容される塩は、α4インテグリン阻害作用を有し、炎症性腸疾患等の治療薬として有用な化合物であり、特許文献1の記載に従って製造することができる。この公報には式(1)で表される化合物またはその医薬的に許容される塩を配合した通常の錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、カプセル剤、糖衣剤に関する記載があるが、徐放性経口投与製剤については開示されていない。この式(1)で表される化合物またはその医薬的に許容される塩は、血漿中からの消失半減期が比較的短いため、上記薬物の服用回数を減少させることにより患者のQOL(クオリティー・オブ・ライフ)やコンプライアンスを改善する余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第02/16329号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、式(1)で表される化合物またはその医薬的に許容される塩を、血漿中に長く存在させることができる徐放性経口投与製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を製剤学的観点から解決しようと種々検討した結果、式(1)で表される化合物またはその医薬的に許容される塩を水溶性コーティング基剤若しくは水不溶性コーティング基剤を用いてコーティング製剤とすること、若しくは水溶性マトリクス基剤を用いてマトリクス製剤とすることにより、薬剤を徐放化できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、式(1)
【化1】

[式中、Aは下記式(2)、(3)、(3−1)又は(3−2)で表される基のいずれかを表し、
【0006】
【化2】

【0007】
(式中Armは酸素原子、硫黄原子または窒素原子より選ばれるヘテロ原子を0、1、2、3または4個含んだ環状アルキル基または芳香環である。式(3-2)中の実線と点線の複合線は、単結合、または二重結合をあらわす。また、U、V、XはC(=O)、S(=O)2、C(-R5)(-R6)、C(=C(R5)(R6))、C(=S)、S(=O)、P(=O)(-OH)、P(-H)(=O)のいずれかを表し、WはC(-R7)、窒素原子のいずれかを表し、
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7はそれぞれ同じでも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、低級アルキル基、置換された低級アルキル基、低級アルケニル基、置換された低級アルケニル基、低級アルキニル基、置換された低級アルキニル基、環状アルキル基(環中にヘテロ原子を含んでも良い)、アリール基、ヘテロアリール基、環状アルキル基(環中にヘテロ原子を含んでも良い)で置換された低級アルキル基、アリール基で置換された低級アルキル基、ヘテロアリール基で置換された低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、環状アルキル基(環中にヘテロ原子を含んでも良い)で置換された低級アルコキシ基および低級アルキルチオ基、アリール基で置換された低級アルコキシ基および低級アルキルチオ基、ヘテロアリール基で置換された低級アルコキシ基および低級アルキルチオ基、環状アルキル(環中にヘテロ原子を含んでも良い)オキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、ヒドロキシ低級アルキル基、ヒドロキシ低級アルケニル基、ヒドロキシ低級アルコキシ基、ハロゲノ低級アルキル基、ハロゲノ低級アルコキシ基、ハロゲノ低級アルキルチオ基、ハロゲノ低級アルケニル基、ニトロ基、シアノ基、置換または無置換アミノ基、カルボキシル基、低級アルキルオキシカルボニル基、置換または無置換のカルバモイル基、低級アルカノイル基、アロイル基、低級アルキルスルホニル基、置換または無置換スルファモイル基、アンモニウム基のいずれかを表し、また、R5及びR6は結合して環を形成してもよく、場合により、環中に1または2個の酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてよく、
【0008】
Bはヒドロキシル基、低級アルコキシ基、ヒドロキシルアミノ基のいずれかを表し、
Eは水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、環状アルキル基(環中にヘテロ原子を含んでも良い)で置換された低級アルキル基、アリール基で置換された低級アルキル基、ヘテロアリール基で置換された低級アルキル基のいずれかを表し、
Dは低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、環状アルキル基(環中にヘテロ原子を含んでも良い)、アリール基、ヘテロアリール基、環状アルキル基(環中にヘテロ原子を含んでも良い)で置換された低級アルキル基、アリール基で置換された低級アルキル基、ヘテロアリール基で置換された低級アルキル基、低級アルコキシ基、環状アルキル基(環中にヘテロ原子を含んでも良い)で置換された低級アルコキシ基、アリール基で置換された低級アルコキシ基、ヘテロアリール基で置換された低級アルコキシ基、環状アルキル(環中にヘテロ原子を含んでも良い)オキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、ヒドロキシ低級アルキル基、ヒドロキシ低級アルケニル基、ヒドロキシ低級アルコキシ基、ハロゲノ低級アルキル基、ハロゲノ低級アルコキシ基、ハロゲノ低級アルケニル基、ニトロ基、シアノ基、置換または無置換アミノ基、カルボキシル基、低級アルキルオキシカルボニル基、置換または無置換のカルバモイル基、低級アルカノイル基、アロイル基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルホニル基、置換または無置換スルファモイル基のいずれかを表す。
また、E及びDは結合して環を形成してもよく、場合により、環中に1または2個の酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよい。
Tは原子間結合、C(=O)、C(=S)、S(=O)、S(=O)2、N(H)-C(=O)、N(H)-C(=S)のいずれかを表し、
J及びJ'はそれぞれ同じでも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルキルオキシ基、ニトロ基のいずれかを表す。]
で表されるフェニルアラニン化合物[以下、単に化合物(I)という]またはその医薬的に許容される塩を有効成分とする徐放性経口投与製剤に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】試験例1に係る溶出試験結果を示す。横軸は各例を、縦軸は製剤からの化合物(A)の2時間後の溶出率(重量%)をそれぞれ表す。
【図2】試験例2に係る溶出試験結果を示す。横軸は時間(分)を、縦軸は製剤からの化合物(A)の溶出率(重量%)をそれぞれ表す。
【図3】試験例2に係る溶出試験結果を示す。横軸は時間(分)を、縦軸は製剤からの化合物(A)の溶出率(重量%)をそれぞれ表す。
【図4】試験例3に係る溶出試験結果を示す。横軸は時間(分)を、縦軸は製剤からの化合物(A)の溶出率(重量%)をそれぞれ表す。
【図5】試験例4に係る溶出試験結果を示す。横軸は各例を、縦軸は製剤からの化合物(A)の2時間後の溶出率(重量%)をそれぞれ表す。
【図6】試験例4に係る溶出試験結果を示す。横軸は時間(分)を、縦軸は製剤からの化合物(A)の溶出率(重量%)をそれぞれ表す。
【図7】試験例5に係る溶出試験結果を示す。横軸は時間(分)を、縦軸は製剤からの化合物(A)の溶出率(重量%)をそれぞれ表す。
【図8】試験例6に係る溶出試験結果を示す。横軸は時間(分)を、縦軸は製剤からの化合物(A)の溶出率(重量%)をそれぞれ表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書中の式(1)、(2)、(3−1)及び(3−2)の各基の定義において、低級アルキル基等の「低級」という語は、炭素数が1〜6の基を意味し、好ましくは炭素数1〜4である。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルカノイル基、アルキルアミノ基等の成分としてのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基は直鎖若しくは分岐鎖状であることができる。アルキル基の例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられ、炭素数1〜6が好ましく、より好ましくは、1〜4である。アルケニル基はビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等が挙げられ、炭素数2〜6が好ましく、より好ましくは、2〜4である。アルキニル基としてはエチニル基、プロピニル基、ブチニル基等が挙げられ、炭素数2〜8が好ましく、より好ましくは、2〜4である。環状アルキル基は、置換または無置換の環状アルキル基を意味し、例としてはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、シクロヘキセニル基等が挙げられ、炭素数3〜8が好ましく、より好ましくは、3〜5である。アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基等が挙げられ、炭素数1〜6が好ましく、より好ましくは、1〜4である。
【0011】
ヘテロ原子としては窒素、酸素、イオウ等が挙げられる。ハロゲン原子はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を示している。ハロゲノアルキル基としてはクロロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオルエチル基、ペンタフルオロメチル基等が挙げられる。ハロゲノアルコキシ基としてはトリクロロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基等が挙げられる。環中にヘテロ原子を含んでも良い環状アルキル基は、置換または無置換のどちらでもよく、例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、ピロリジニル基、テトラヒドロフラニル基、ウラシル基等の4〜8員環が好ましく、より好ましくは5〜7員環である。
【0012】
アリール基は、置換または無置換のアリール基を意味し、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基及び置換されたフェニル基であり、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、水酸基、ハロゲノアルキル基、ハロゲノアルコキシ基が特に置換基として好ましい。ヘテロアリール基は置換または無置換のヘテロアリール基を意味し、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピラゾリル基、ピロリル基、トリアジル基、フリル基、チエニル基、イソキサゾリル基、イソチアゾリル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾリル基等が挙げられ、好ましくはピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基及び置換されたピリジル基、フリル基、チエニル基等であり、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、水酸基、ハロゲノアルキル基、ハロゲノアルコキシ基が特に置換基として好ましい。アリール基で置換された低級アルキル基はたとえば、置換または無置換のベンジル基、置換または無置換のフェネチル基等があげられ、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、水酸基、ハロゲノアルキル基、ハロゲノアルコキシ基が特に置換基として好ましい。ヘテロアリール基で置換された低級アルキル基の例としては例えばピリジルメチル基が挙げられハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、水酸基、ハロゲノアルキル基、ハロゲノアルコキシ基が特に置換基として好ましい。
【0013】
アルカノイル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ピバロイル基等が挙げられる。アロイル基としてはそれぞれ置換または無置換のベンゾイル基、ピリジルカルボニル基等が挙げられ、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、水酸基、ハロゲノアルキル基、ハロゲノアルコキシ基が特に置換基として好ましい。ハロゲノアルカノイル基としては、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基等が挙げられる。アルキルスルホニル基としては、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等があげられる。アリールスルホニル基としてはベンゼンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基等が挙げられる。ヘテロアリールスルホニル基としては、ピリジルスルホニル基等があげられる。ハロゲノアルキルスルホニル基としては、トリフルオロメタンスルホニル基等が挙げられる。アルキルオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ターシャリーブトキシカルボニル基等、またアリール置換アルコキシカルボニル基としてはベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基等があげられる。
【0014】
置換カルバモイル基としては、メチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、置換フェニルカルバモイル基、等が挙げられ、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、水酸基、ハロゲノアルキル基、ハロゲノアルコキシ基が特に置換基として好ましい。置換チオカルバモイル基としては、メチルチオカルバモイル基、フェニルチオカルバモイル基、置換フェニルチオカルバモイル基等が挙げられハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、水酸基、ハロゲノアルキル基、ハロゲノアルコキシ基が特に置換基として好ましい。本明細書において置換アミノ基とは、モノ置換あるいは、ジ置換アミノ基を示し、その置換基としては、低級アルキル基、アリール基で置換された低級アルキル基、ヘテロアリール基で置換された低級アルキル基、低級アルカノイル基、アロイル基、ハロゲノ低級アルカノイル基、低級アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、ハロゲノアルキルスルホニル基、低級アルキルオキシカルボニル基、アリール置換低級アルキルオキシカルボニル基、置換または無置換のカルバモイル基、置換または無置換のチオカルバモイル基が挙げられる。アンモニウム基としては例えばトリアルキルアンモニウム基が挙げられる。
【0015】
また本発明の式(1)で示されるフェニルアラニン化合物は、不斉炭素を含む為、光学異性体も考えられるが、本発明で示している化合物はこの光学異性体も含んでいる。ただし、L体が好ましい。
また、ジアテステレマーが存在する化合物については、そのジアステレオマー及びジアステレオマー混合物も含まれる。また、本発明の式(1)で示されるフェニルアラニン化合物は移動性の水素原子を含む為、種々の互変異性体も考えられるが、本発明で示している化合物はこの互変異性体も含んでいる。また、本発明化合物におけるカルボキシル基は、生体内でカルボキシル基に変換される適当な置換基により置換されていてもよく、そのような置換基としては、例えば低級アルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0016】
本発明の式(1)で示される化合物が塩の形態を成し得る場合、その塩は医薬的に許容しうるものであればよく、例えば、式中のカルボキシル基等の酸性基に対しては、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム、アンモニウム等)との塩、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)との塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、有機アミン(トリエチルアミン、エタノールアミン、モルホリン、ピペリジン、ジシクロへキシルアミン等)との塩、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン等)との塩を挙げることができる。
また、式中に塩基性基が存在する場合の塩基性基に対しては、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸など)との塩、有機カルボン酸(酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸等)との塩、有機スルホン酸(メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等)との塩を挙げることができる。塩を形成する方法としては、式(1)の化合物と必要な酸または塩基とを適当な量比で溶媒、分散剤中で混合することや、他の塩の形より陽イオン交換または陰イオン交換を行うことによっても得られる。
また、本発明の化合物は式(1)で示される化合物の溶媒和物、例えば水和物、アルコール付加物等も含んでいる。
化合物(I)またはその医薬的に許容される塩は、WO02-16329(特許文献1)記載の方法により製造することができる。また、化合物(I)の具体例としては、WO02-16329(特許文献1)記載の実施例1〜213が挙げられる。WO02-16329公報の記載内容は、本明細書の記載に含まれるものとする。
式(1)で表されるフェニルアラニン化合物として、R1がメチル基あるいはエチル基を表し、R2、R3、R4が、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換された低級アルキル基、置換された低級アルケニル基、置換された低級アルキニル基、ヘテロアリール基、ヒドロキシ低級アルキル基、低級アルキル基で置換されたアミノ基、低級アルキル基で置換されたカルバモイル基のいずれかを表す(ここで、置換された低級アルキル基、置換された低級アルケニル基、置換された低級アルキニル基における置換基としては、アミノ基、低級アルキル基で置換されたアミノ基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、シアノ基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルホニル基が挙げられる)化合物が好ましい。
化合物(I)またはその医薬的に許容される塩において、好適には、WO02-16329(特許文献1)記載の実施例1、108、162、169、122、66、91、99、89、75、147、148、202、201、196、193、198、197が挙げられる。これらを以下に示す。
【0017】
【化3】

【0018】
【化4】

【0019】
【化5】

最適にはWO02-16329(特許文献1)記載の実施例196である。本化合物[以下、単に化合物(A)という]を下記に示す。
【0020】
【化6】

【0021】
本発明における「徐放性経口投与製剤」は、いわゆる「徐放(sustained release)型の経口投与製剤」に加えて、「遅延放出(delayed release)型の経口投与製剤」も含まれる。
上記「徐放型の経口投与製剤」は、一般的には胃内であるか腸管内であるかを問わず、消化管内で製剤からの薬物の放出が徐々に行われるように設計された製剤であり、薬物の一定の血漿中濃度を維持して作用の持続化を期待する制御放出(controlled release)型、および薬物の血漿中の濃度は一定に維持できないが作用の持続化を期待し得る持続放出(prolonged release)型のいずれも本発明に含まれる。
また、上記「遅延放出型の経口投与製剤」は、胃から小腸への製剤の移行時間を遅延させるか、又は製剤からの薬物の放出を胃よりもむしろ腸管部位で行わせるように設計された製剤であり、腸溶性製剤も本発明に含まれる。
本発明における徐放性経口投与製剤としては、放出制御膜法、マトリクス法、大粒化法、毛細管現象法、化学的溶解速度低下法、蒸発溶解速度低下法の徐放化技術を用いた徐放性製剤が挙げられる。このうち、放出制御膜法としては、コーティング法、マイクロカプセル法、フィルム・チューブ法、多孔質膜法、シクロデキストリン法、リポソーム法が挙げられる。本発明の製剤においては、上記徐放化技術を用いた徐放性製剤が含まれ、中でも放出制御膜法、マトリクス法、大粒化法を用いた徐放性製剤が好ましく、放出制御膜法の中ではコーティング法が好ましい。
コーティング法を用いた徐放性製剤としては、コーティング製剤が挙げられ、マトリクス法を用いた徐放性製剤としては、マトリクス製剤が挙げられ、本発明における徐放性経口投与製剤としては、コーティング製剤、マトリクス製剤が好ましい。
【0022】
本発明における「コーティング製剤」は、薬物(化合物(I)若しくは化合物(A)、またはそれらの医薬的に許容される塩)を含有する核の部分が、コーティング基剤(水溶性コーティング基剤若しくは水不溶性コーティング基剤)でコーティングされているものである。
「水溶性コーティング基剤」を用いたコーティング製剤において、薬物は、当該コーティング剤が消化管内で徐々に溶けるか、崩壊することによって、薬物が露出し外部に放出される。または、薬物は、当該コーティング剤が胃内で溶解することなく、腸に移動したとき腸内で溶けるか、崩壊することによって、薬物が露出し外部に放出される。本製剤はこの「水溶性コーティング基剤」の溶解または崩壊速度により、製剤からの薬物の放出を制御することができる。水溶性コーティング基剤でコーティングされた製剤としては、例えば、腸溶性コーティング錠(例えば錠剤、丸錠)、腸溶性顆粒剤、腸溶性細粒剤、腸溶性カプセル剤、または腸溶性基剤でコーティングされた薬物を含有する懸濁剤若しくは乳剤が挙げられる。
例えば、水溶性コーティングを施したコーティング製剤の場合においては、製剤中の化合物(1)の溶出率が、pHに依存し、1時間の溶出率においてpH1.2(第14改正日本薬局方 崩壊試験第1液)での溶出率に対し20%未満であるのが好ましい。
【0023】
「水溶性コーティング基剤」としては、消化管内溶液に溶けかつ医薬的に許容される物質であり、例えば、次の化合物を挙げることができる。
1.アクリル酸誘導体
メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーS、メタアクリル酸コポリマーLD、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE等。
2.セルロース誘導体
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートカルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、オパドライ、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム等。
3.ビニル誘導体
ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等。
4.天然高分子及び糖類
セラック、ゼラチン、寒天、アラビアゴム、プルラン、ケラチン等。
【0024】
これら「水溶性コーティング基剤」は、1または2以上用いることができる。
好適には、メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーS、メタアクリル酸コポリマーLD、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、セラック、ゼラチン、寒天が挙げられる。
特に好適には、メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーS、メタアクリル酸コポリマーLD、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートが挙げられる。
【0025】
一方、「水不溶性コーティング基剤」を用いたコーティング製剤において、薬物は、当該コーティング剤を介して徐々に外部に放出される。本製剤はこの「水不溶性コーティング基剤」の障害により、薬物の放出を制御することができる。水不溶性コーティング基剤でコーティングされた製剤としては、例えば、徐放性コーティング錠(例えば錠剤、丸錠)、徐放性顆粒剤、徐放性細粒、徐放性カプセル剤、または徐放性基剤でコーティングされた薬物を含有する懸濁剤若しくは乳剤が挙げられる。
例えば、水不溶性コーティングを施したコーティング製剤の場合においては、1時間後の化合物(1)の製剤中からの溶出率が、pH6.8(5%(W/V)ドデシル硫酸ナトリウムを含有した1/4希釈したMcIlvaien緩衝液)で50%未満であることが好ましい。
上記溶出率は、日本薬局方第14改正第2法に準じ、パドル回転数:50rpm、試験液量:900mL、試験液:1/4希釈したMcIlvaien緩衝液(pH6.8) + 5%(W/V)ドデシル硫酸ナトリウム、試験液温度:37±0.5℃で溶出試験を行って求めることができる。
【0026】
「水不溶性コーティング基剤」としては、消化管内溶液にほとんど溶けずかつ医薬的に許容される物質であり、例えば、次の化合物を挙げることができる。
1.セルロース誘導体
エチルセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、ブチルセルロース等。
2.アクリル酸誘導体
アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRL、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマー・エマルション等。
3.ビニル誘導体
ポリビニルアセテート、ポリビニルブチレート等。
4.エステル類
動植物由来の脂肪酸のグリセライド及びその混合物、動植物由来のグリセライドの硬化油(例えば、硬化ヒマシ油、硬化ナタネ油)、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リノシン酸等の脂肪酸のグリセライド及びその混合物、コレステリルパルミテート、植物ステロールのパルミテート等。
5.脂肪酸類
ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、ナノデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、カプリン酸、カプロン酸等。
6.アルコール類
ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ナノデカノール、エイコサノール、羊毛アルコール、コレステロール等。
7.界面活性剤
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、30、ショ糖脂肪酸エステル、トリ脂肪酸ソルビタン、セスキ脂肪酸ソルビタン、モノ脂肪酸ソルビタン、モノ脂肪酸グリセリン等。
【0027】
これら「水不溶性コーティング基剤」は、1または2以上用いることができる。
好適には、水不溶性コーティング基剤が、エチルセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRL、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマー・エマルション、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチレート、動植物由来の脂肪酸のグリセライド及びその混合物、動植物由来のグリセライドの硬化油(例えば、硬化ヒマシ油、硬化ナタネ油)、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リノシン酸等の脂肪酸のグリセライド及びその混合物が挙げられる。
【0028】
水溶性コーティング基剤もしくは水不溶性コーティング基剤のコーティング量は、製剤の固形分被覆率が、例えば錠剤では1〜50重量%、好適には2〜30重量%、さらに好適には5〜30重量%であり、顆粒剤では、1〜100重量%、好適には2〜50重量%、さらに好適には5〜50重量%である。ここで、固形分被覆率は、コーティング前の粗錠100重量部当たりの、コーティングしたコーティング剤の固形分の量(重量部)を意味する(以下同じ)。
本発明のコーティング製剤は、コーティングされる核部(コア部分)に、速放部として、例えば、「化合物(I)若しくは化合物(A)、またはそれらの医薬的に許容される塩」そのもの、又は「化合物(I)若しくは化合物(A)、またはそれらの医薬的に許容される塩」と医薬的に許容される添加剤との混合物を有していてもよい。なかでも、核部(コア部分)は、化合物(I)、化合物(A)またはそれらの医薬的に許容される塩が非晶質状態で水溶性高分子物質中に分散されている固体分散体で形成するのが好ましい。
このような、固体分散体は、上記水溶性高分子物質を用い、上記化合物(I)またはその医薬的に許容される塩を、(i) 水溶性高分子物質と共に有機溶媒に溶解または分散させた後、有機溶媒を除去するか、(ii) 加熱下で水溶性高分子物質に溶解または分散させた後、冷却するか、(iii)加熱及び加圧下で水溶性高分子物質に溶解または分散させた後、冷却するか、または、(iv) 水溶性高分子物質と共に混合した後、粉砕するか、のいずれかの工程を採用することにより調製することができる。
また、本発明のコーティング製剤のコーティング部には、「化合物(I)若しくは化合物(A)、またはそれらの医薬的に許容される塩」そのものを含有していてもよい。
本発明のコーティング製剤は、常法の通り、薬物を含む核に、例えば、流動層造粒コーティング装置、遠心流動コーティング装置、通気式乾燥コーティング装置を用いて、エタノールなどの有機溶媒や水に溶解または分散させた上記水溶性コーティング基剤を噴霧することにより製造することができる。
【0029】
本発明における「マトリクス製剤」は、薬物(化合物(I)若しくは化合物(A)、またはそれらの医薬的に許容される塩)と水溶性マトリクス基剤とを含有したものであり、薬物と水溶性マトリクス基剤が混ぜ合わさってマトリクス構造をとる製剤である。
「水溶性マトリクス基剤」を用いたマトリクス製剤において、薬物は、当該水溶性マトリクス基剤が外側から溶け出し、薬物が露出すると共に溶け出すことによって外部に徐々に放出される。本製剤はこの「水溶性マトリクス基剤」の溶解または崩壊速度により、製剤からの薬物の放出を制御することができる。水溶性マトリクス基剤を用いたマトリクス製剤としては、例えば、マトリクス錠、スパンタブ錠(二重錠)、ロンタブ型錠(有核錠)、三重錠(内核錠)が挙げられる。
例えば、マトリクス製剤の場合においては、1時間後の化合物(1)の製剤中からの溶出率が、pH6.8(5%(W/V)ドデシル硫酸ナトリウムを含有した1/4希釈したMcIlvaien緩衝液)で50%未満であることが好ましい。
上記溶出率は、日本薬局方第14改正第2法に準じ、パドル回転数:50rpm、試験液量:900mL、試験液:1/4希釈したMcIlvaien緩衝液(pH6.8) + 5%(W/V)ドデシル硫酸ナトリウム、試験液温度:37±0.5℃で溶出試験を行って求めることができる。
「水溶性マトリクス基剤」としては、消化管内溶液に溶けかつ医薬的に許容される物質であり、例えば、次の化合物を挙げることができる。
【0030】
1.アクリル酸誘導体
メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーS、メタアクリル酸コポリマーLD、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE等。
2.セルロース誘導体
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、オパドライ、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム等。
3.ビニル誘導体
ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等。
4.天然高分子及び糖類
セラック、ゼラチン、寒天、アラビアゴム、プルラン、ケラチン等。
【0031】
これら「水溶性マトリクス基剤」は、1または2以上用いることができる。
好適には、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、オパドライ、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、セラック、ゼラチン、寒天、アラビアゴム、プルランが挙げられる。
さらに好適には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースが挙げられる。
【0032】
「化合物(I)若しくは化合物(A)、またはそれらの医薬的に許容される塩」と水溶性マトリクス基剤との重量比は、1:0.1〜1:20の範囲が好ましく、1:0.5〜1:10の範囲が特に好ましい。
本発明のマトリクス製剤は、速放部として、例えば、「化合物(I)若しくは化合物(A)、またはそれらの医薬的に許容される塩」そのもの、又は「化合物(I)若しくは化合物(A)、またはそれらの医薬的に許容される塩」と医薬的に許容される添加剤との混合物を有していてもよい。なかでも、マトリクス製剤中において、化合物(I)、化合物(A)またはそれらの医薬的に許容される塩が非晶質状態で水溶性高分子物質中に分散されている固体分散体を形成する場合が好ましい。このような製剤としては例えば、(i)薬物を含む固体分散体を一旦顆粒化し、この顆粒とマトリクス基剤とを混ぜて打錠した製剤、若しくは(ii)固体分散体を形成するための水溶性高分子物質と薬物を含む液をマトリクス基剤に吹きつけ、乾燥させ、打錠した製剤が挙げられる。
上記固体分散体は、上記水溶性高分子物質を用い、上記化合物(I)またはその医薬的に許容される塩を、(i) 水溶性高分子物質と共に有機溶媒に溶解または分散させた後、有機溶媒を除去するか、(ii) 加熱下で水溶性高分子物質に溶解または分散させた後、冷却するか、(iii)加熱及び加圧下で水溶性高分子物質に溶解または分散させた後、冷却するか、または、(iv) 水溶性高分子物質と共に混合した後、粉砕するか、のいずれかの工程を採用することにより調製することができる。
また、本発明のマトリクス製剤は、前記水溶性コーティング基剤や前記水不溶性コーティング基剤でさらにコーティングされていてもよい。その場合、水溶性コーティング基剤や水不溶性コーティング基剤には、「化合物(I)若しくは化合物(A)、またはそれらの医薬的に許容される塩」そのものを含有していてもよい。
【0033】
本発明のマトリクス製剤は、常法の通り、薬物と水溶性マトリクス基剤とを含む混合物を直接圧縮して錠剤とすることにより、また薬物と水溶性マトリクス基剤とを含む押し出し造粒装置により、造粒操作を行い、顆粒状とし又はその顆粒を圧縮して錠剤とすることにより製造することができる。
本発明の徐放性経口投与製剤を製剤化するにあたっては、必要に応じて、賦形剤(糖類(例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、還元麦芽糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース)、デンプン類およびその誘導体(例えば、部分α化デンプン、デキストリン、プルラン、トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン)、セルロース類(例えば、結晶セルロース、微結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース)、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、アミノ酸等)、着色剤、矯味剤(例えば、ショ糖、アスパルテーム、マンニトール、デキストラン、サッカリン、メントール、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、アマチャ、ウイキョウ、エタノール、果糖、キシリトール、グリチルリチン酸、精製白糖、L-グルタミン酸、シクロデキストリン)、崩壊剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、α化デンプン、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、カルボキシルメチルスターナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム)、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン)等の添加剤を加えることができる。
【0034】
特に、マトリクス製剤にさらにコーティングをするに際しては、例えば、可塑剤(例えば、ポリエチレングリコール、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール、クエン酸トリエチル、ヒマシ油、トリアセチン)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、酸化チタン、軽質無水ケイ酸)を併用するのが一般的である。
本製剤は、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤、丸剤、散剤、細粒剤等のいずれの製剤形態もとることができるが、特に、錠剤、顆粒剤、カプセル剤であるのが好ましい。
本製剤において、造粒する場合には、例えば、撹拌造粒装置、流動層造粒装置、押し出し造粒装置、ボーレコンテナミキサー、V型混合装置、スプレードライ装置等を用いて、撹拌造粒、流動層造粒、押し出し造粒、噴霧乾燥(スプレードライ)造粒するのが好ましい。
投与量は、目的とする治療効果、治療期間、年齢、体重などにより決定されるが、「化合物(I)若しくは化合物(A)、またはそれらの医薬的に許容される塩」の用量として、例えば、成人一日あたり、1μg〜5g経口投与である。
【0035】
本発明には、化合物(I)またはその医薬的に許容される塩を、小腸下部で放出させることが可能なコーティング製剤、またはマトリクス製剤を含む。
本発明の経口投与製剤は、優れた徐放性を有し、効果の持続の観点で優れているため、薬物の服用回数を減少させることにより患者のQOL(クオリティー・オブ・ライフ)やコンプライアンスを改善させることができる点で有用である。
本発明の徐放性経口投与製剤につき、実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、比較例として、徐放化のなされていない固体分散製剤を示す。また、下記において化合物(A)は、WO02-16329(特許文献1)の実施例196である。また、下記において希釈錠とは、不活性な賦形剤(例えば造粒乳糖)を用いて打錠した錠剤をいう。
【0036】
(比較例1)錠剤(非徐放性)
メチルセルロース(SM4:信越化学工業)216.0gにメタノール 792.0gを入れてメチルセルロース全体を湿潤し、これにジクロロメタン3169.0gを入れて、攪拌し溶解後、化合物(A) 144.0g添加し、攪拌して溶解させた。ここで調製された溶液を後述のスプレー液とした。流動層造粒機(FLO-1:フロイント産業)の槽内に、部分α化デンプン(PCS PC-10:旭化成工業)56.0g、クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol:旭化成工業)44.8g、結晶セルロース(アビセルPH-102:旭化成工業(株))84.0g、マンニトール(Parteck M200:MERCK)22.4gを仕込み、吸気温度90℃で混合および乾燥後スプレーエアー圧0.15Mpa、スプレー速度 30g/minでスプレー液 4230gを噴霧して流動層造粒し、噴霧終了後、流動層造粒機で乾燥して顆粒を得た。得られた顆粒は、0.5%ステアリン酸マグネシウムを添加して打錠し、素錠を得た。また、得られた素錠はヒドロキシプロピルメチルセルロース(TC-5R:信越化学(株))にてフィルムコーティングし、固体分散製剤(非徐放性)を得た。
【0037】
(比較例2)顆粒剤(非徐放性)
メチルセルロース(SM4:信越化学工業)216.0gにメタノール792.9gを入れてメチルセルロース全体を湿潤し、これにジクロロメタン3207.5gを入れて、攪拌し溶解後、化合物(A) 144.0gを添加し、攪拌して溶解させた。ここで調製された溶液を後述のスプレー液とした。流動層造粒機(FLO-1:フロイント産業)の槽内に、精製球形白糖(ノンパレル103:フロイント産業)337.5gを仕込み、吸気温度90℃で混合および乾燥後スプレーエアー圧0.15Mpa、スプレー速度30g/minでスプレー液2730gを噴霧して流動層造粒し、噴霧終了後、流動層造粒機で乾燥した。さらに500μm〜850μmに篩い分けし顆粒を得た。
【0038】
(比較例3)錠剤(非徐放性)
メチルセルロース(SM4:信越化学工業)225.1gにメタノール825.0gを入れてメチルセルロース全体を湿潤し、これにジクロロメタン3300gを入れて、攪拌し溶解後、化合物(A)150.1g添加し、攪拌して溶解させた。ここで調製された溶液を後述のスプレー液とした。流動層造粒機(FLO-1:フロイント産業)の槽内に、部分α化デンプン(PCS PC-10:旭化成工業(株))56.0g、クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol:旭化成工業(株))44.8g、結晶セルロース(アビセルPH-102:旭化成工業(株))84.0g、マンニトール(マンニットP:東和化成(株))22.4gを仕込み、吸気温度90℃で混合および乾燥後スプレーエアー圧0.15Mpa、スプレー速度 30g/minでスプレー液 4230gを噴霧して流動層造粒し、噴霧終了後、流動層造粒機で乾燥して顆粒を得た。得られた顆粒は、0.5%ステアリン酸マグネシウムを添加して打錠し、素錠を得た。また、得られた素錠はヒドロキシプロピルメチルセルロース(TC-5R:信越化学(株))にてフィルムコーティングし、固体分散製剤(非徐放性)を得た。
【0039】
(実施例1) メタアクリル酸コポリマーLを水溶性コーティング基剤に用いたコーティング製剤
メタアクリル酸・アクリル酸エチル・コポリマー(オイドラギッドL100-55:樋口商会(株)(Rohm GmbH))35.0gをエタノール350.1gに溶解した溶液にマクロゴール6000(日本油脂(株))3.5g、精製水94.0gを加え攪拌・溶解し、さらにタルク(松村産業(株))17.5gを加え、攪拌し分散させコーティング溶液を作成した。比較例1で得られた素錠60g及び希釈錠240gを上記コーティング溶液150.0gにてコーティング装置(ハイコーターHCT-MINI:フロイント産業(株))を用いてフィルムコーティングを行い、オイドラギッドL100-55コーティング錠(固形分被覆率10%)を作製した。
(実施例2) メタアクリル酸コポリマーSを水溶性コーティング基剤に用いたコーティング製剤
メタアクリル酸・アクリル酸メチル・コポリマー(オイドラギッドS100:樋口商会(株)(Rohm GmbH))35.0gをエタノール350.0gに溶解した溶液にマクロゴール6000(日本油脂(株))3.5g、精製水94.0gを加え攪拌・溶解し、さらにタルク(松村産業(株))17.5gを加え、攪拌し分散させコーティング溶液を作成した。比較例1で得られた素錠60g及び希釈錠240gを上記コーティング溶液295.7gにてコーティング装置(ハイコーターHCT-MINI:フロイント産業(株))を用いてフィルムコーティングを行い、オイドラギッドS100コーティング錠(固形分被覆率10%)を作製した。
【0040】
(実施例3) ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートを水溶性コーティング基剤に用いたコーティング製剤
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HP-55:信越化学工業(株))35.0gをエタノール350.0g及び精製水91.5gの混合溶媒に溶解した溶液にマクロゴール6000(日本油脂(株))3.5gを加え攪拌・溶解し、さらにタルク(松村産業(株))5.0gを加え、攪拌し分散させ、コーティング溶液を作成した。比較例1で得られた素錠60g及び希釈錠240gを上記コーティング溶液332.4gにてコーティング装置(ハイコーターHCT-MINI:フロイント産業(株))を用いてフィルムコーティングを行い、HP-55コーティング錠(固形分被覆率10%)を作製した。
(実施例4) エチルセルロースを水不溶性コーティング基剤に用いたコーティング製剤
エチルセルロース(エトセルSTD-7P:Dow Chem.)30.0gをエタノール425.2gに溶解した溶液にクエン酸トリエチル(カルター・フードサイエンス(株))3.0g、精製水75.0gを加え攪拌・溶解し、さらにタルク(松村産業(株))15.0gを加え、攪拌し分散させコーティング溶液を作成した。比較例1で得られた素錠60g及び希釈錠240gを上記コーティング溶液295.0gにて、コーティング装置(ハイコーターHCT-MINI:フロイント産業(株))を用いてフィルムコーティングを行い、エトセル STD-7P錠(固形分被覆率10%)を作製した。
【0041】
(実施例5) メタアクリル酸コポリマーLを水溶性コーティング基剤に用いたコーティング製剤
メタアクリル酸・アクリル酸エチル・コポリマー(オイドラギッドL100-55:樋口商会(株)(Rohm GmbH))35.0gをエタノール350.0gに溶解した溶液にマクロゴール6000(日本油脂(株))3.5g、精製水94.0gを加え攪拌・溶解し、さらにタルク(松村産業(株))17.5gを加え、攪拌し分散させコーティング溶液を作成した。比較例1で得られた素錠60g及び希釈錠240gを上記コーティング溶液321.4gにて、コーティング装置(ハイコーターHCT-MINI:フロイント産業(株))を用いてフィルムコーティングを行い、オイドラギッドL100-55コーティング錠(固形分被覆率15%)を作製した。
(実施例6) メタアクリル酸コポリマーSを水溶性コーティング基剤に用いたコーティング製剤
メタアクリル酸・アクリル酸メチル・コポリマー(オイドラギッドS100:樋口商会(株)(Rohm GmbH))35.0gをエタノール350.0gに溶解した溶液にマクロゴール6000(日本油脂(株))3.5g、精製水94.0gを加え攪拌・溶解し、さらにタルク(松村産業(株))17.5gを加え、攪拌し分散させコーティング溶液を作成した。実施例2で得られたオイドラギッドS100コーティング錠(固形分被覆率10%)30g及び希釈錠270gを上記コーティング溶液85.0gにて、コーティング装置(ハイコーターHCT-MINI:フロイント産業(株))を用いてフィルムコーティングを行い、オイドラギッドS100コーティング錠(固形分被覆率15%)を作製した。
【0042】
(実施例7) ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートを水溶性コーティング基剤に用いたコーティング製剤
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HP-55:信越化学工業(株))35.0gをエタノール350.0g及び精製水91.5gの混合溶媒に溶解した溶液にマクロゴール6000(日本油脂(株))3.5gを加え攪拌・溶解し、さらにタルク(松村産業(株))5.0gを加え、攪拌し分散させコーティング溶液を作成した。実施例3で得られたHP-55コーティング錠(固形分被覆率10%)30g及び希釈錠240gを上記コーティング溶液104.9gにて、コーティング装置(ハイコーターHCT-MINI:フロイント産業(株))を用いてフィルムコーティングを行い、HP-55コーティング錠(固形分被覆率15%)を作製した。
(実施例8) エチルセルロースを水不溶性コーティング基剤に用いたコーティング製剤
エチルセルロース(エトセルSTD-7P:Dow Chem.)30.0gをエタノール425.0gに溶解した溶液にクエン酸トリエチル(カルター・フードサイエンス(株))3.0g、精製水75.0gを加え攪拌・溶解し、さらにタルク(松村産業(株))17.5gを加え、攪拌し分散させコーティング溶液を作成した。実施例4で得られたエトセル STD-7P錠(固形分被覆率10%)30g及び希釈錠240gを上記コーティング溶液140.0gにて、コーティング装置(ハイコーターHCT-MINI:フロイント産業(株))を用いてフィルムコーティングを行い、エトセル STD-7P錠(固形分被覆率15%)を作製した。
【0043】
(実施例9) ヒドロキシプロピルメチルセルロースを水溶性マトリクス基剤に用いたマトリクス製剤
メチルセルロース(SM4:信越化学工業)180.0gにメタノール665.9gを入れてメチルセルロース全体を湿潤し、これにジクロロメタン2640.7gを入れて、攪拌し溶解後、化合物(A) 120.1gを添加し、攪拌して溶解させた。ここで調製された溶液を後述のスプレー液とした。流動層造粒機(FLO-1:フロイント産業)の槽内に、部分α化デンプン(PCS PC-10:旭化成工業(株))44.8g、クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol:旭化成工業)35.8g、結晶セルロース(アビセルPH-102:旭化成工業(株))84.0g、マンニトール(Parteck M200:MERCK)17.4g及びヒドロキプロピルメチルセルロース2906(メトローズ65SH-4000:信越化学工業(株))112.0gを仕込み、吸気温度90℃で混合および乾燥後スプレーエアー圧0.15Mpa、スプレー速度30g/minでスプレー液3404.9gを噴霧して流動層造粒し、噴霧終了後、流動層造粒機で乾燥して顆粒を得た。得られた顆粒は、0.5%ステアリン酸マグネシウムを添加して打錠し、素錠を得た。また、得られた素錠はフィルムコーティングして、ヒドロキプロピルメチルセルロース2906(メトローズ65SH-4000)を用いたマトリクス製剤を得た。
【0044】
(実施例10) ヒドロキシプロピルメチルセルロースを水溶性マトリクス基剤に用いたマトリクス製剤-2
メチルセルロース(SM4:信越化学工業)180.0gにメタノール664.5gを入れてメチルセルロース全体を湿潤し、これにジクロロメタン2645.7gを入れて、攪拌し溶解後、化合物(A) 120.0gを添加し、攪拌して溶解させた。ここで調製された溶液を後述のスプレー液とした。流動層造粒機(FLO-1:フロイント産業)の槽内に、部分α化デンプン(PCS PC-10:旭化成工業(株))44.8g、クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol:旭化成工業(株))35.8g、結晶セルロース(アビセルPH-102:旭化成工業(株))84.0g、マンニトール(マンニットP:東和化成(株))17.4g及びヒドロキプロピルメチルセルロース2208(メトローズ90SH-4000SR:信越化学工業(株))112.0gを仕込み、吸気温度90℃で混合および乾燥後スプレーエアー圧0.15Mpa、スプレー速度30g/minでスプレー液3390.0gを噴霧して流動層造粒し、噴霧終了後、流動層造粒機で乾燥して顆粒を得た。得られた顆粒は、0.5%ステアリン酸マグネシウムを添加して打錠し、ヒドロキプロピルメチルセルロース2208(メトローズ90SH-4000SR)を用いたマトリクス製剤を得た。
【0045】
(実施例11) ヒドロキシプロピルメチルセルロースを水溶性マトリクス基剤に用いたマトリクス製剤-3(ヒドロキシプロピルメチルセルロース2倍量)
メチルセルロース(SM4:信越化学工業)180.0gにメタノール660.1gを入れてメチルセルロース全体を湿潤し、これにジクロロメタン2639.6gを入れて、攪拌し溶解後、化合物(A) 120.0gを添加し、攪拌して溶解させた。ここで調製された溶液を後述のスプレー液とした。流動層造粒機(FLO-1:フロイント産業)の槽内に、部分α化デンプン(PCS PC-10:旭化成工業(株))35.8.g、クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol:旭化成工業(株))28.7g、結晶セルロース(アビセルPH-102:旭化成工業(株))53.8g、マンニトール(マンニットP:東和化成(株))13.4g及びヒドロキプロピルメチルセルロース2906(メトローズ65SH-4000:信越化学工業(株))179.2gを仕込み、吸気温度90℃で混合および乾燥後スプレーエアー圧0.15Mpa、スプレー速度30g/minでスプレー液3390.0gを噴霧して流動層造粒し、噴霧終了後、流動層造粒機で乾燥して顆粒を得た。得られた顆粒は、0.5%ステアリン酸マグネシウムを添加して打錠し、ヒドロキプロピルメチルセルロース2906(メトローズ65SH-4000)を用いたマトリクス製剤を得た。
【0046】
(実施例12) ヒドロキシプロピルメチルセルロースを水溶性マトリクス基剤に用いたマトリクス製剤-4(ヒドロキシプロピルメチルセルロース3倍量)
メチルセルロース(SM4:信越化学工業)180.0gにメタノール660.8gを入れてメチルセルロース全体を湿潤し、これにジクロロメタン2643.3gを入れて、攪拌し溶解後、化合物(A) 120.0gを添加し、攪拌して溶解させた。ここで調製された溶液を後述のスプレー液とした。流動層造粒機(FLO-1:フロイント産業)の槽内に、部分α化デンプン(PCS PC-10:旭化成工業(株))35.8g、クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol:旭化成工業(株))28.7.g、結晶セルロース(アビセルPH-102:旭化成工業(株))53.8g、マンニトール(マンニットP:東和化成(株))13.0g及びヒドロキプロピルメチルセルロース2906(メトローズ65SH-4000:信越化学工業(株))268.8gを仕込み、吸気温度90℃で混合および乾燥後スプレーエアー圧0.15Mpa、スプレー速度30g/minでスプレー液3390.0gを噴霧して流動層造粒し、噴霧終了後、流動層造粒機で乾燥して顆粒を得た。得られた顆粒は、0.5%ステアリン酸マグネシウムを添加して打錠し、素錠を得た。また、得られた素錠はフィルムコーティングして、ヒドロキプロピルメチルセルロース2906(メトローズ65SH-4000)を用いたマトリクス製剤を得た。
【0047】
(実施例13) ヒドロキシプロピルメチルセルロースを水溶性マトリクス基剤に用いたマトリクス製剤-5(ヒドロキシプロピルメチルセルロース外添加)
メチルセルロース(SM4:信越化学工業)216.0gにメタノール792.0gを入れてメチルセルロース全体を湿潤し、これにジクロロメタン3169.8gを入れて、攪拌し溶解後、化合物(A) 144.0gを添加し、攪拌して溶解させた。ここで調製された溶液を後述のスプレー液とした。流動層造粒機(FLO-1:フロイント産業)の槽内に、部分α化デンプン(PCS PC-10:旭化成工業(株))56.0g、クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol:旭化成工業(株))44.8g、結晶セルロース(アビセルPH-102:旭化成工業(株))84.0g、マンニトール(マンニットP:東和化成(株))22.4gを仕込み、吸気温度90℃で混合および乾燥後スプレーエアー圧0.15Mpa、スプレー速度30g/minでスプレー液4230gを噴霧して流動層造粒し、噴霧終了後、流動層造粒機で乾燥して顆粒を得た。得られた顆粒を0.5%ステアリン酸マグネシウム及び化合物(A)に対して等倍量及び3倍量のヒドロキシプロピルメチルセルロース2208(メトローズ90SH-4000SR)を添加し、打錠を行い、ヒドロキプロピルメチルセルロース2208(メトローズ90SH-4000SR)を用いた外添加マトリクス製剤を得た。
【0048】
(実施例14) ポリビニルアルコールを水溶性マトリクス基剤に用いたマトリクス製剤
メチルセルロース(SM4:信越化学工業)216.0gにメタノール792.0gを入れてメチルセルロース全体を湿潤し、これにジクロロメタン3169.8gを入れて、攪拌し溶解後、化合物(A) 144.0gを添加し、攪拌して溶解させた。ここで調製された溶液を後述のスプレー液とした。流動層造粒機(FLO-1:フロイント産業)の槽内に、部分α化デンプン(PCS PC-10:旭化成工業(株))56.0g、クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol:旭化成工業(株))44.8g、結晶セルロース(アビセルPH-102:旭化成工業(株))84.0g、マンニトール(マンニットP:東和化成(株))22.4gを仕込み、吸気温度90℃で混合および乾燥後スプレーエアー圧0.15Mpa、スプレー速度30g/minでスプレー液4230gを噴霧して流動層造粒し、噴霧終了後、流動層造粒機で乾燥して顆粒を得た。得られた顆粒を、0.5%ステアリン酸マグネシウム及び化合物(A)に対し等倍量及び2倍量のポリビニルアルコール(ゴーセノールEG-25:日本合成化学(株))を添加後、打錠を行い、ポリビニルアルコール(ゴーセノールEG-25:日本合成化学(株))を用いた外添加マトリクス製剤を得た。
【0049】
(実施例15) メタアクリル酸コポリマーLを水溶性コーティング基剤に用いたコーティング顆粒製剤
メタアクリル酸・アクリル酸エチル・コポリマー(オイドラギッドL100-55:樋口商会(株)(Rohm GmbH))210.3gをエタノール2100.6gに溶解した溶液にマクロゴール6000(日本油脂(株))21.0g、精製水572.7gを加え攪拌・溶解し、さらにタルク(松村産業(株))105.0gを加え、攪拌し分散させコーティング溶液を作成した。比較例2で得られた球形顆粒120gを上記コーティング溶液1287.1gにて流動層造粒機(FLO-1:フロイント産業(株))を用いて行い、オイドラギッドL100-55コーティング顆粒(固形分被覆率61%)を作製した。
【0050】
(実施例16) ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートカプセルを用いたカプセル製剤
下記顆粒A93.2mg、炭酸水素ナトリウム(特級:和光純薬(株))46.6mg及びL-酒石酸(特級:和光純薬(株))46.6mgをヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートカプセル(信越化学工業(株))に詰め、アセトンにて溶解したヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(信越化学工業(株))にてシールを行い、カプセルを作製した。
下記顆粒Aは以下のように製造した。
タンクに塩化メチレン252kgとメタノール63kgを投入し、メチルセルロース(SM-4:信越化学工業(株))30kgを溶解後,クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol:旭化成工(株))10kg投入した。別のタンクに塩化メチレン252kg及びメタノール63kgを投入し、化合物(A)30kgを溶解後,上記の分散液と混合させた。
スプレードライヤ―(富士化学工業(株))にて、入熱温度約100℃、フィード流量40kg/hr、ノズル圧0.5Mpaにて全量噴霧し、60℃にて20時間乾燥し、得たれた顆粒をナウタ型混合機((自転50rpm、公転2rpm)にて5分間混合し,固体分散顆粒62.71kgを得た。得られた顆粒をコーミルにて圧密化,スピードミル及びコーミルにて粉砕し、顆粒(A)を得た。
【0051】
本発明の徐放製剤の効果について試験例で説明する。
(試験例1)コーティング製剤
実施例1〜3、5〜7で得られた本発明のコーティング製剤と比較例1で得られた製剤の溶出試験を行った。溶出試験は、化合物(A)の40mg相当量を、日本薬局法第14局第2法に準じ、パドル回転数:50rpm、試験液:USP(米国薬局方)24、1.2液を用い、液温:37±0.5℃で2時間後の溶出率により耐酸性の評価を実施した。
(試験例2)コーティング製剤
実施例1〜4で得られた本発明のコーティング製剤と比較例1で得られた製剤の溶出試験を行った。溶出試験は、化合物(A)の40mg相当量を、日本薬局法第14局第2法に準じ、パドル回転数:50rpm、試験液:1/4希釈したMcIlvaine緩衝液(pH6.8)+5%(W/W)ドデシル硫酸ナトリウムを用い、液温:37±0.5℃で実施した。
同様に、実施例5〜8で得られた本発明のコーティング製剤と比較例1で得られた製剤の溶出試験も行った。
【0052】
図1、図2、図3に示すように、比較例1の製剤からの化合物(A)の放出は速やかであったのに対し、実施例1〜4、5〜8で得られた本発明の製剤は化合物(A)の放出が緩やかであった。特に、水溶性コーティング基剤を用いた、実施例1〜3、5〜7で得られた本発明の製剤には耐酸性が確認された。
以上のことから、本発明のコーティング製剤からの化合物(A)の放出は十分制御されていることがわかる。
【0053】
(試験例3)マトリクス製剤
実施例9で得られた本発明のマトリクス製剤と比較例1で得られた製剤の溶出試験を行った。溶出試験は、化合物(A)の40mg相当量を、日本薬局法第14局第2法に準じ、パドル回転数:50rpm、試験液:1/4希釈したMcIlvaine緩衝液(pH6.8)+5%SDSを用い、液温:37±0.5℃で実施した。
図4に示すように、比較例1の製剤からの化合物(A)の放出は速やかであったのに対し、実施例9で得られた本発明の製剤は化合物(A)の放出が緩やかであり、本発明のマトリクス製剤からの化合物(A)の放出は十分制御されていることがわかる。
【0054】
(試験例4)マトリクス溶出試験
実施例9、実施例10〜13で得られた本発明のマトリクス製剤と比較例1の製剤の溶出試験を行った。溶出試験は、化合物(A)の40mg相当量を、日本薬局法第14局第2法に準じ、パドル回転数:50rpm、試験液:1/4希釈したMcIlvaine緩衝液(pH6.8)+5%SDSを用い、液温:37±0.5℃で実施した。
(試験例5)耐酸性試験
実施例15及び実施例16で得られた本発明のコーティング製剤と比較例2で得られた製剤の溶出試験を行った。溶出試験は、化合物(A)の40mg相当量を、日本薬局法第14局第2法に準じ、パドル回転数:50rpm、試験液:JP1.2液を用い、液温:37±0.5℃で2時間後の溶出率により耐酸性の評価を実施した。
【0055】
(試験例6)外添加マトリクス溶出試験(PVA)
実施例14で得られた本発明のマトリックス製剤と比較例1で得られた製剤の溶出試験を行った。溶出試験は、化合物(A)の40mg相当量を、日本薬局法第14局第2法に準じ、パドル回転数:50rpm、試験液:1/4希釈したMcIlvaine緩衝液(pH6.8)+5%SDSを用い、液温:37±0.5℃で実施した。
(試験例7)薬物動態的パラメータ(Tmax)
実施例3、実施例15、16で得られた本発明製剤及び比較例1、比較例2及び3をビーグル犬(オス)に絶食下で40mg相当量を経口投与し、投与前、投与開始0.25、0.5、1、2、4、6、8、12及び24時間の血漿サンプルを採取し、薬物動態学的パラメーターとして最高血中濃度(Tmax)を表1に示した。ここで記載するTmaxは最高血中濃度に到達するまでの時間を示す。
【0056】
表1 薬物動態学的パラメーター(Tmax)
Tmax(hr)
比較例2 0.5
比較例3 1.3
実施例3 3.7
実施例15 1.2
実施例16 4.0
【0057】
(試験例8)pH6.8での溶出試験
実施例15及び16で得られた本発明製剤(腸溶性製剤)の溶出試験を行った。溶出試験は、化合物(A)の40mg相当量を、日本薬局法第14局第2法に準じ、パドル回転数:50rpm、試験液:1/4希釈したMcIlvaine緩衝液(pH6.8)+5%SDSを用い、液温:37±0.5℃で実施した。pH6.8での良好な薬物放出を確認した。
【0058】
本発明により、「化合物(I)若しくは化合物(A)、またはそれらの医薬的に許容される塩」の徐放性経口投与製剤が提供される。本発明の徐放性経口投与製剤は、α4インテグリン阻害作用を有し、α4インテグリン依存性の接着過程が病態に関与する炎症性疾患、リウマチ様関節炎、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、シェーグレン症候群、喘息、乾せん、アレルギー、糖尿病、心臓血管性疾患、動脈硬化症、再狭窄、腫瘍増殖、腫瘍転移、移植拒絶いずれかの治療剤または予防剤として有用である。
【0059】
次に本発明の態様を示す。
1. 式(1)

[式中、Aは下記式(2)、(3)、(3−1)又は(3−2)で表される基のいずれかを表し、

(式中Armは酸素原子、硫黄原子または窒素原子より選ばれるヘテロ原子を0、1、2、3または4個含んだ環状アルキル基または芳香環である。式(3-2)中の実線と点線の複合線は、単結合、または二重結合をあらわす。また、U、V、XはC(=O)、S(=O)2、C(-R5)(-R6)、C(=C(R5)(R6))、C(=S)、S(=O)、P(=O)(-OH)、P(-H)(=O)のいずれかを表し、WはC(-R7)、窒素原子のいずれかを表し、
【0060】
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7はそれぞれ同じでも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、低級アルキル基、置換された低級アルキル基、低級アルケニル基、置換された低級アルケニル基、低級アルキニル基、置換された低級アルキニル基、環状アルキル基(環中にヘテロ原子を含んでも良い)、アリール基、ヘテロアリール基、環状アルキル基(環中にヘテロ原子を含んでも良い)で置換された低級アルキル基、アリール基で置換された低級アルキル基、ヘテロアリール基で置換された低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、環状アルキル基(環中にヘテロ原子を含んでも良い)で置換された低級アルコキシ基および低級アルキルチオ基、アリール基で置換された低級アルコキシ基および低級アルキルチオ基、ヘテロアリール基で置換された低級アルコキシ基および低級アルキルチオ基、環状アルキル(環中にヘテロ原子を含んでも良い)オキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、ヒドロキシ低級アルキル基、ヒドロキシ低級アルケニル基、ヒドロキシ低級アルコキシ基、ハロゲノ低級アルキル基、ハロゲノ低級アルコキシ基、ハロゲノ低級アルキルチオ基、ハロゲノ低級アルケニル基、ニトロ基、シアノ基、置換または無置換アミノ基、カルボキシル基、低級アルキルオキシカルボニル基、置換または無置換のカルバモイル基、低級アルカノイル基、アロイル基、低級アルキルスルホニル基、置換または無置換スルファモイル基、アンモニウム基のいずれかを表し、また、R5及びR6は結合して環を形成してもよく、場合により、環中に1または2個の酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてよく、
Bはヒドロキシル基、低級アルコキシ基、ヒドロキシルアミノ基のいずれかを表し、
Eは水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、環状アルキル基(環中にヘテロ原子を含んでも良い)で置換された低級アルキル基、アリール基で置換された低級アルキル基、ヘテロアリール基で置換された低級アルキル基のいずれかを表し、
【0061】
Dは低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、環状アルキル基(環中にヘテロ原子を含んでも良い)、アリール基、ヘテロアリール基、環状アルキル基(環中にヘテロ原子を含んでも良い)で置換された低級アルキル基、アリール基で置換された低級アルキル基、ヘテロアリール基で置換された低級アルキル基、低級アルコキシ基、環状アルキル基(環中にヘテロ原子を含んでも良い)で置換された低級アルコキシ基、アリール基で置換された低級アルコキシ基、ヘテロアリール基で置換された低級アルコキシ基、環状アルキル(環中にヘテロ原子を含んでも良い)オキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、ヒドロキシ低級アルキル基、ヒドロキシ低級アルケニル基、ヒドロキシ低級アルコキシ基、ハロゲノ低級アルキル基、ハロゲノ低級アルコキシ基、ハロゲノ低級アルケニル基、ニトロ基、シアノ基、置換または無置換アミノ基、カルボキシル基、低級アルキルオキシカルボニル基、置換または無置換のカルバモイル基、低級アルカノイル基、アロイル基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルホニル基、置換または無置換スルファモイル基のいずれかを表す。
また、E及びDは結合して環を形成してもよく、場合により、環中に1または2個の酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよい。
Tは原子間結合、C(=O)、C(=S)、S(=O)、S(=O)2、N(H)-C(=O)、N(H)-C(=S)のいずれかを表し、
J及びJ'はそれぞれ同じでも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルキルオキシ基、ニトロ基のいずれかを表す。]
で表されるフェニルアラニン化合物またはその医薬的に許容される塩を有効成分とする徐放性経口投与製剤。
【0062】
2. 上記1記載の式(1)で表される化合物またはその医薬的に許容される塩を有効成分とするコーティング製剤又はマトリクス製剤のいずれかの形態にある徐放性経口投与製剤。
3. 徐放性経口投与製剤が、コーティング製剤である上記2記載の徐放性経口投与製剤。
4.コーティング製剤が、上記2記載の有効成分を含有する核部を、水溶性コーティング基剤でコーティングしたものである上記3記載の徐放性経口投与製剤。
5. 水溶性コーティング基剤が、アクリル酸誘導体、セルロース誘導体、ビニル誘導体、天然高分子及び糖類の少なくともいずれか1つでコーティングされたものである上記4記載の徐放性経口投与製剤。
6. 水溶性コーティング基剤が、メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーS、メタアクリル酸コポリマーLD、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、セラック、ゼラチン、寒天の少なくともいずれか1つでコーティングされたものである上記4記載の徐放性経口投与製剤。
【0063】
7. 水溶性コーティング基剤が、メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーS、メタアクリル酸コポリマーLD、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートの少なくともいずれか1つでコーティングされたものである上記4記載の徐放性経口投与製剤。
8. 固形分被覆率が、錠剤では1〜50重量%であり、顆粒剤では、1〜100重量%である上記4〜7のいずれか1項記載の徐放性経口投与製剤。
9. 固形分被覆率が、錠剤では2〜30重量%であり、顆粒剤では、2〜50重量%である上記4〜7のいずれか1項記載の徐放性経口投与製剤。
10. コーティング製剤が、上記2記載の有効成分を含有する核部を、水不溶性コーティング基剤でコーティングしたものである上記3記載の徐放性経口投与製剤。
11. 水不溶性コーティング基剤が、セルロース誘導体、アクリル酸誘導体、ビニル誘導体、エステル類、脂肪酸類、アルコール類、界面活性剤の少なくともいずれか1つでコーティングされたものである上記10記載の徐放性経口投与製剤。
12. 水不溶性コーティング基剤が、エチルセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRL、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマー・エマルション、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチレート、動植物由来の脂肪酸のグリセライド及びその混合物、動植物由来のグリセライドの硬化油、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リノシン酸等の脂肪酸のグリセライド及びその混合物の少なくともいずれか1つでコーティングされたものである上記10記載の徐放性経口投与製剤。
【0064】
13. 固形分被覆率が、錠剤では1〜50重量%であり、顆粒剤では、1〜100重量%である上記10〜12のいずれか1項記載の徐放性経口投与製剤。
14. 固形分被覆率が、錠剤では2〜30重量%であり、顆粒剤では、2〜50重量%である上記10〜12のいずれか1項記載の徐放性経口投与製剤
15. 徐放性経口投与製剤が、マトリクス製剤である上記2記載の徐放性経口投与製剤。
16. マトリクス製剤が、上記2記載の有効成分と水溶性マトリクス基剤とを含有したものである上記15記載の徐放性経口投与製剤。
17. 水溶性マトリクス基剤が、アクリル酸誘導体、セルロース誘導体、ビニル誘導体、天然高分子及び糖類の少なくともいずれか1つである上記16記載の徐放性経口投与製剤。
18. 水溶性マトリクス基剤が、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、オパドライ、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、セラック、ゼラチン、寒天、アラビアゴム、プルランの少なくともいずれか1つである上記16記載の徐放性経口投与製剤。
【0065】
19. 水溶性マトリクス基剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースの少なくともいずれか1つである上記16記載の徐放性経口投与製剤。
20. 上記2記載の有効成分と水溶性マトリクス基剤との重量比が1:0.1〜1:20である上記16〜19のいずれか1項記載の徐放性経口投与製剤。
21. 上記2記載の有効成分と水溶性マトリクス基剤との重量比が1:0.5〜1:10である上記16〜19のいずれか1項記載の徐放性経口投与製剤。
22. 式(1)で表されるフェニルアラニン化合物またはその医薬的に許容される塩が、式(1)において、
R1がメチル基あるいはエチル基を表し、
R2、R3、R4が、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換された低級アルキル基、置換された低級アルケニル基、置換された低級アルキニル基、ヘテロアリール基、ヒドロキシ低級アルキル基、低級アルキル基で置換されたアミノ基、低級アルキル基で置換されたカルバモイル基のいずれかを表す(ここで、置換された低級アルキル基、置換された低級アルケニル基、置換された低級アルキニル基における置換基としては、アミノ基、低級アルキル基で置換されたアミノ基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、シアノ基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルホニル基が挙げられる)、
化合物またはその医薬的に許容される塩である上記1〜21のいずれか1項記載の徐放性経口投与製剤。
【0066】
23. 式(1)で表されるフェニルアラニン化合物またはその医薬的に許容される塩が、式(A)で表される化合物またはその医薬的に許容される塩である上記1〜21のいずれか1項記載の徐放性経口投与製剤。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

[式中、Aは下記式(2)で表される基を表し、
【化2】

(式中Armは酸素原子、硫黄原子または窒素原子より選ばれるヘテロ原子を0、1、2、3または4個含んだ環状アルキル基または芳香環である。式(3-2)中の実線と点線の複合線は、単結合、または二重結合をあらわす。また、U、VはC(=O)、S(=O)2、C(-R5)(-R6)、C(=C(R5)(R6))、C(=S)、S(=O)、P(=O)(-OH)、P(-H)(=O)のいずれかを表し、
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7はそれぞれ同じでも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、低級アルキル基、置換された低級アルキル基、低級アルケニル基、置換された低級アルケニル基、低級アルキニル基、置換された低級アルキニル基、環状アルキル基(環中にヘテロ原子を含んでも良い)、アリール基、ヘテロアリール基、環状アルキル基(環中にヘテロ原子を含んでも良い)で置換された低級アルキル基、アリール基で置換された低級アルキル基、ヘテロアリール基で置換された低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、環状アルキル基(環中にヘテロ原子を含んでも良い)で置換された低級アルコキシ基および低級アルキルチオ基、アリール基で置換された低級アルコキシ基および低級アルキルチオ基、ヘテロアリール基で置換された低級アルコキシ基および低級アルキルチオ基、環状アルキル(環中にヘテロ原子を含んでも良い)オキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、ヒドロキシ低級アルキル基、ヒドロキシ低級アルケニル基、ヒドロキシ低級アルコキシ基、ハロゲノ低級アルキル基、ハロゲノ低級アルコキシ基、ハロゲノ低級アルキルチオ基、ハロゲノ低級アルケニル基、ニトロ基、シアノ基、置換または無置換アミノ基、カルボキシル基、低級アルキルオキシカルボニル基、置換または無置換のカルバモイル基、低級アルカノイル基、アロイル基、低級アルキルスルホニル基、置換または無置換スルファモイル基、アンモニウム基のいずれかを表し、また、R5及びR6は結合して環を形成してもよく、場合により、環中に1または2個の酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてよく、
Bはヒドロキシル基、低級アルコキシ基、ヒドロキシルアミノ基のいずれかを表し、
Eは水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、環状アルキル基(環中にヘテロ原子を含んでも良い)で置換された低級アルキル基、アリール基で置換された低級アルキル基、ヘテロアリール基で置換された低級アルキル基のいずれかを表し、
Dは低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、環状アルキル基(環中にヘテロ原子を含んでも良い)、アリール基、ヘテロアリール基、環状アルキル基(環中にヘテロ原子を含んでも良い)で置換された低級アルキル基、アリール基で置換された低級アルキル基、ヘテロアリール基で置換された低級アルキル基、低級アルコキシ基、環状アルキル基(環中にヘテロ原子を含んでも良い)で置換された低級アルコキシ基、アリール基で置換された低級アルコキシ基、ヘテロアリール基で置換された低級アルコキシ基、環状アルキル(環中にヘテロ原子を含んでも良い)オキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、ヒドロキシ低級アルキル基、ヒドロキシ低級アルケニル基、ヒドロキシ低級アルコキシ基、ハロゲノ低級アルキル基、ハロゲノ低級アルコキシ基、ハロゲノ低級アルケニル基、ニトロ基、シアノ基、置換または無置換アミノ基、カルボキシル基、低級アルキルオキシカルボニル基、置換または無置換のカルバモイル基、低級アルカノイル基、アロイル基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルホニル基、置換または無置換スルファモイル基のいずれかを表す。
また、E及びDは結合して環を形成してもよく、場合により、環中に1または2個の酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよい。
Tは原子間結合、C(=O)、C(=S)、S(=O)、S(=O)2、N(H)-C(=O)、N(H)-C(=S)のいずれかを表し、
J及びJ'はそれぞれ同じでも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルキルオキシ基、ニトロ基のいずれかを表す。]
で表されるフェニルアラニン化合物またはその医薬的に許容される塩を有効成分とする徐放性経口投与製剤であって、該有効成分を含有する核部を、アクリル酸誘導体、セルロース誘導体、ビニル誘導体、天然高分子及び糖類群から選ばれる少なくとも1種の水溶性コーティング基剤でコーティングしたコーティング製剤の形態にあることを特徴とする徐放性経口投与製剤。
【請求項2】
水溶性コーティング基剤が、メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーS、メタアクリル酸コポリマーLD、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、セラック、ゼラチン、寒天の少なくともいずれか1つでコーティングされたものである請求項1記載の徐放性経口投与製剤。
【請求項3】
水溶性コーティング基剤が、メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーS、メタアクリル酸コポリマーLD、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートの少なくともいずれか1つでコーティングされたものである請求項1記載の徐放性経口投与製剤。
【請求項4】
固形分被覆率が、錠剤では1〜50重量%であり、顆粒剤では、1〜100重量%である請求項1〜3のいずれか1項記載の徐放性経口投与製剤。
【請求項5】
固形分被覆率が、錠剤では2〜30重量%であり、顆粒剤では、2〜50重量%である請求項1〜3のいずれか1項記載の徐放性経口投与製剤。
【請求項6】
コーティング製剤が、請求項1記載の有効成分を含有する核部を、セルロース誘導体、アクリル酸誘導体、ビニル誘導体、エステル類、脂肪酸類、アルコール類及び界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の水不溶性コーティング基剤でコーティングしたものである徐放性経口投与製剤。
【請求項7】
水不溶性コーティング基剤が、エチルセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRL、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマー・エマルション、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチレート、動植物由来の脂肪酸のグリセライド及びその混合物、動植物由来のグリセライドの硬化油、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リノシン酸等の脂肪酸のグリセライド及びその混合物の少なくともいずれか1つでコーティングされたものである請求項6記載の徐放性経口投与製剤。
【請求項8】
固形分被覆率が、錠剤では1〜50重量%であり、顆粒剤では、1〜100重量%である請求項6又は7記載の徐放性経口投与製剤。
【請求項9】
固形分被覆率が、錠剤では2〜30重量%であり、顆粒剤では、2〜50重量%である請求項6又は7記載の徐放性経口投与製剤
【請求項10】
式(1)で表されるフェニルアラニン化合物またはその医薬的に許容される塩が、式(A)で表される化合物またはその医薬的に許容される塩である請求項1〜9のいずれか1項記載の徐放性経口投与製剤。
【化3】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−148832(P2011−148832A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102694(P2011−102694)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【分割の表示】特願2005−515474(P2005−515474)の分割
【原出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】