説明

フェニルホスフェートの木炭による安定化

本発明は、可溶化フェニルホスフェート、好ましくはパラニトロフェニルホスフェート(PNPP)を、木炭を用いて安定化するための方法、組成物、及びキットを開示する。非酵素加水分解により、405nmで測定して、0.1未満の吸光度を有する可溶化フェニルホスフェート、好ましくはPNPPをリサイクルするための方法、組成物、及びキットも開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された安定性を有するホスフェート含有酵素基質組成物及びこれらの安定な酵素基質組成物を製造する方法に関する。酵素基質は、酵素活性度検定等のための試薬キット中に含有させることができる。好ましい例は、改良された安定性を有するp−ニトロフェニルホスフェート(PNPP)組成物及びPNPPを安定化及びリサイクルするための方法及び組成物である。
【背景技術】
【0002】
人間の体液中のヒドロラーゼ活性度、特にアルカリ性ホスファターゼ及び酸性ホスファターゼ活性度の決定は、臨床的に非常に重要である。芳香族有機基及び加水分解可能な燐酸エステルを含む基質は、これらのヒドロラーゼの基質として典型的に用いられているこれらの基質には、パラニトロフェニルホスフェート(PNPP)のようなフェニルホスフェート、4−メチルウンベリフェロン燐酸(4MUP)、o−クレゾールフタレインモノホスフェート二ナトリウム塩、フェニルフタレイン、及びそれらの異性体及び塩が含まれる。ヒドロラーゼ酵素、特にアルカリ性ホスファターゼ及び酸性ホスファターゼは、血清中に見ることができ、これらの酵素の測定は、種々の異常状態を検出するのに用いることができる。
【0003】
アルカリ性及び酸性ホスファターゼは、自然界に広く分布し、それらの性質は広範囲に亙って研究されている。この酵素は、燐酸モノエステルの加水分解に触媒作用を与える:
R−O−PO2−+HO→R−OH+HPO4−
【0004】
アルカリ性ホスファターゼは、全ての組織中に見出される酵素である。特に大きな濃度を有する組織には、肝臓、胆管、胎盤、及び骨が含まれる。これらの組織は血液中に酵素を遊離するので、アルカリ性ホスファターゼの量は、血清の試料で測定することができる。血清中のアルカリ性ホスファターゼのレベルが増大すると、骨及び肝臓疾患を含めた種々の症状を示すことがある。
【0005】
血清中の酸性ホスファターゼ酵素の測定も極めて有用である。酸性ホスファターゼは、主に前立腺中で生成し、通常血液中には極めて僅かな量でしか見られない。酸性ホスファターゼのレベルが増大すると、前立腺癌の兆候になることがある。
【0006】
アルカリ性ホスファターゼ及び酸性ホスファターゼのレベルは、マグネシウムイオンを存在させて基質パラニトロフェニルホスフェート(PNPP)を加水分解することに基づいて測定することができる。これらのホスファターゼは、PNPPを加水分解して着色最終生成物にする。加水分解速度は、約405nmで測定される吸光度の増大を追跡することにより決定することができる。
【0007】
更に、これらの酵素は、生物学的試料(例えば、血清、尿、及び血液)又は研究反応中に含まれるタンパク質及びペプチドを測定するために用いることができる。例えば、これらの化合物を用いて、試料又は反応中に存在するアナライト(即ち、マレイン酸、問題のタンパク質又はペプチド)の量を定量することができる。これらのホスファターゼ及びフェニルホスフェート基質を用いた検定には、サンドイッチ免疫検定、競合的免疫検定、免疫沈殿反応検定、及び酵素結合免疫吸着検定(ELISA)が含まれるが、それらに限定されるものではない。特に、ELISAは、血清、尿、培養上澄み液等の中のタンパク質及びペプチドの量を概算するのに役立つ有力な方法である。
【0008】
ホスファターゼ酵素は、これらの検定で特に有用である。なぜなら、それらは燐酸基に対する大きな親和力を有し、反応性燐酸基を有する基質を用いて容易に測定することができるからである。上で述べたように、芳香族有機基を含む基質及び加水分解可能な燐酸エステルは、ホスファターゼを測定するのに容易に用いることができる。特に、これらの酵素は、フェニルホスフェート基質を加水分解し、塩基性溶液中で着色する最終生成物を与える。
【0009】
【化1】

【0010】
加水分解速度は、PNPPの場合、約405nmでの吸光度の増大を追跡することにより決定することができる。PNPPの例で、与えられた時間枠内でホスファターゼ酵素との反応により生ずるp−ニトロフェノキシドによる吸光度増大の測定により、存在するアナライトの量のかなり正確な決定を与える。
【0011】
元々、多くの免疫検定は、問題のアナライトの放射能検出に依存していた。放射性同位元素を使用することに関する危険及びコスト(例えば、放射能汚染及び放射性廃棄物の生成)のため、フェニルホスフェート薬剤を用いた比色検定の使用に基づく酵素結合又は酵素に基づく検定技術が開発された。
【0012】
ELISAのために最初最も一般的に用いられていた比色系の一つは、p−ニトロフェニルホスフェート(PNPP)・アルカリ性ホスファターゼ反応であった。アルカリ性ホスファターゼは極めて安定な酵素であり、そのため商業的に極めて価値のあるものとされているが、PNPPは極めて不安定である。PNPPの燐酸基は極めて不安定であり、PNPPは、酵素が存在しなくても時間と共に加水分解して溶液中着色フェノキシドになるであろう。実際、透明容器の中に入れて明るくした部屋の中に室温で放置すると、PNPPは、僅か数時間以内で加水分解し、琥珀色の容器中に入れて低温で保存した場合でも、PNPPは、依然として時間と共に加水分解するであろう。溶液中でPNPPは不安定であるため、商業的に研究用には向かないものとされている。なぜなら、商業的には、長い時間に亙って酵素基質が安定なままでいることが望ましいからである。PNPP及び他のフェニルホスフェートで起きる問題の結果として、フェニルホスフェートを安定化する方法について膨大な研究が行なわれてきた。
【0013】
PNPPのようなフェニルホスフェートを安定化するために用いられている現在の商業的技術状態は、製薬、診断及び関連工業で、乾燥粉末を錠剤にするために用いられているような冷凍乾燥、乾式混合、或は固体マトリックス中に基質の化学構造を固定することによる化学的固定化により、それら化合物を固定マトリックス中に与えることである。しかし、これらの方法は高価であり、従って、商業的には実用的ではない。更に、乾燥した形でフェニルホスフェートを与えることにより、半製品が供給されている。最終的ユーザーは、フェニルホスフェートを再構成しなければならず、最終製品に品質制御の問題を引き起こし、再構成した時、フェニルホスフェート溶液が加水分解し、長い時間保存することができない。
【0014】
PNPPを含めた反応性燐酸有機診断試薬を溶液中で安定化するための方法を開発する試みが行われてきた。例えば、米国特許第4,132,598号明細書には、水溶液中のPNPPを含めた不安定な有機診断試薬を、フェニル及びフェニル系化合物、イミダゾール、及びニトロ脂肪族化合物から選択された安定化剤とその溶液とを混合することにより安定化する方法が記載されている。米国特許第4,372,874号明細書には、PNPPを含めた不安定な有機試薬を、水混和性有機溶媒中にその試薬を溶解し、不活性な高表面積粒状乾燥剤を少なくとも1重量%前記溶液と接触させて与えることにより、安定化する方法が記載されている。
【0015】
米国特許第5,895,819号明細書には、クエン酸及び/又は琥珀酸を用いて燐酸エステルを用いて安定化することが記載されている。酸性溶液中で燐酸エステルを安定化することは可能かも知れないが、ホスファターゼのための基質として溶液を用いるためには、その溶液は、塩基性pHに緩衝されていなければならず、その中では燐酸エステルは最早安定化されない。米国特許第5,948,631号明細書には、アルカリ性ホスファターゼを検出するためのN−メチルグルカミンと、o−クレゾールフタレインモノ燐酸のN−メチルグルカミン塩との混合物が記載されており、その混合物は非酵素加水分解に対しては、安定である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
これらの方法が開発されてきているが、これらの方法の中で、フェニルホスフェート溶液の出荷又は実験室で机上にフェニルホスフェート溶液が保存されている間に経験することがある4℃のような低下した温度又は上昇した温度で溶液中のフェニルホスフェートを長期間貯蔵することを可能にし、商業的に実行可能であることが証明されたものは一つもない。従って、診断試験で基質として用いるために溶液中でのフェニルホスフェートの貯蔵安定性を改良する必要性が依然として存在している。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(本発明の概要)
従って、従来文献で報告されてきたことでも拘わらず、既製品の形になっている可溶化フェニルホスフェートを安定化する改良された方法に対する必要性が存在する。更に、酵素が存在しない場合に着色生成物へ転化され、そのままでは商業的に役に立たない形の可溶化フェニルホスフェートになっていた可溶化フェニルホスフェートをリサイクルする方法が必要である。ここに記載するようなフェニルホスフェートを安定化し、リサイクルするための組成物及びキットは、フェニルホスフェート溶液を調製する必要性を除いているので、一層首尾一貫した実験室での結果を与えることができるであろう。更に、ここに記載するようなフェニルホスフェートを安定化及びリサイクルするための組成物及びキットは、一層一貫したバックグラウンド測定を可能にし、フェニルホスフェートの出荷及び取り扱いのコストを著しく減少するであろう。更に、ここに記載するようなフェニルホスフェートを安定化及びリサイクルするための組成物及びキットは、保存寿命を増大した既製品及び濃厚な形態でフェニルホスフェートを与えることを可能にする。本発明に従い、反応性燐酸基を効果的に安定化し、それにより着色生成物への非酵素加水分解又は転化から可溶化フェニルホスフェートを保護する試薬を存在させて、緩衝溶液中でフェニルホスフェートを保存することができることが判明している。特に、これらの安定化用試薬は、木炭、好ましくは活性炭である。PNPPは、ここで例示するフェニルホスフェートであるが、他のフェニルホスフェート、それらの塩及び異性体も、ここに記載する方法、組成物、及びキットで用いられるものと考えられている。従って、PNPPについての言及は全て、PNPP、他のフェニルホスフェート、それらの塩、及びそれらの異性体を包含するものである。
【0018】
本発明は、液体試薬溶液中で不安定な成分を効果的に「安定化」するか、又は約405nmで測定した時のそれらのバックグラウンド吸光度が0.1より小さく(0.1より小さい吸光度はバックグラウンドについて望ましい限界である)、許容可能な活性度を有する状態へ「リサイクル」されるように、独特に設計されている。OD/分に等しいか又はそれより大きな吸光度は、活性度を測定するための好ましい限界である。ここに記載するフェニルホスフェートを安定化するための手段は、液体媒体中での長期安定性を与える。更に、本発明によれば、高品質の生成物を製造する際に誤差の小さな制御を達成することができ、それにより堅い包装サイズの不便さ、及び包装、冷凍、冷凍乾燥、冷凍保存、及び試薬浪費の高いコストも無くなる。更に、ここに記載する組成物及び方法は、照明とは無関係に、また可溶化フェニルホスフェートが保存される容器の色とは無関係に、4℃以上の温度での長期保存を可能にし、それにより琥珀色の瓶の必要性を無くしている。
【0019】
従って、本発明の一つの態様は、可溶化フェニルホスフェートと、安定化量の木炭とを接触させることを含む可溶化フェニルホスフェートの安定化法を与える。好ましいフェニルホスフェートは、パラニトロフェニルホスフェート(PNPP)であるが、ここに論ずるように、他のホスフェートも考慮に入れられている。フェニルホスフェートは、約9.0より大きなpHを有する緩衝水溶液になっているのが好ましい。PNPPがフェニルホスフェートである場合、PNPPは3.0g/l以下のPNPP量で存在することができ、一層好ましくは約1.0〜1.5g/lのPNPP量で存在する。一方木炭は、約5〜15mg/ml(例えば、10mg/ml)の量で存在することができる。木炭は活性炭であるのが好ましい。
【0020】
本発明の別の態様は、ホスファターゼ及び安定化された可溶化フェニルホスフェートを含むホスファターゼ・フェニルホスフェートに基づく反応のためのキットを意図している。フェニルホスフェートはPNPPであるのが好ましいが、どのようなフェニルホスフェートでもよい。
【0021】
本発明の更に別の目的は、着色した可溶化フェニルホスフェートと、リサイクル量の木炭(例えば、活性炭)とを混合することを含む、可溶化フェニルホスフェート(例えば、PNPP)をリサイクルするための方法を与える。もしPNPPがリサイクルされるならば、可溶化PNPPの濃度は3.0g/l以下である。PNPPを安定化し、リサイクルするための木炭の量は、約5〜15mg/ml(例えば、10mg/ml)の量である。
【0022】
更に別の態様として、本発明は、木炭を溶液中に残留させるか、又はここに論ずる方法の何れか(例えば、遠心分離、化学的抽出等)を用いて溶液から除去してもよいことを考慮に入れている。
【0023】
本発明の更に別の態様は、緩衝剤、フェニルホスフェート、及び安定化量の木炭を含む安定化された可溶化フェニルホスフェート(例えば、PNPP)を考慮に入れている。木炭は活性炭であるのが好ましい。安定化された可溶化フェニルホスフェートがPNPPである場合、そのPNPPは3.0g/lより少ない量で存在する。フェニルホスフェートは、Na塩、Mg2+塩、NH4+塩又はそれらの異性体にすることができる。フェニルホスフェートを可溶化する緩衝剤は、塩基性緩衝剤(例えば、DEA、BIS−TRIS、TRIS、AMP、又はAMPD)であるのが好ましい。安定化された可溶化フェニルホスフェート組成物は、更にマグネシウム化合物を含むことができる。
【0024】
更に別の態様は、フェニルホスフェート(例えば、PNPP、又はフェニルホスフェート塩、又は異性体)、緩衝剤(例えば、ここに記載するものの何れかのような塩基性緩衝剤)、及び木炭(例えば、活性炭)を含む既製品酵素基質組成物を意図している。
【0025】
別の態様として、上で論じた既製品酵素基質組成物及び酵素を含む酵素活性度検定のための試薬キットが意図されている。酵素はアルカリ性ホスファターゼ又は酸性ホスファターゼであるのが好ましい。
【0026】
更に別の態様として、ホスファターゼ酵素決定で用いられる水溶液基質系を製造するための方法で;
(a)水性緩衝溶媒中にフェニルホスフェートを可溶化し、フェニルホスフェート溶液を与え;
(b)前記フェニルホスフェート溶液にマグネシウム化合物を添加し;
(c)前記溶液を安定化量の木炭と接触改させ;そして
(d)前記溶液を密封する;
ことを含む方法が意図されている。フェニルホスフェートはPNPPであるか、又は別のフェニルホスフェート塩又は異性体にすることができる。
【0027】
更に別の目的は、塩基性緩衝剤中に入れた可溶化フェニルホスフェートを入れるための容器で、可溶化フェニルホスフェートに露出される容器の表面に木炭を含む容器を与えることである。
【0028】
本発明の更に別の態様は、405nmで測定した時、非酵素加水分解により0.1ODを越える吸光度を有する可溶化フェニルホスフェートをリサイクルするためのキットで、安定化量の木炭を含むキットを与える。木炭は活性化されているのが好ましく、もしPNPPがリサイクルされるならば、10mg/ml±5mg/mlの量で存在するのが好ましい。このキットは、木炭が内蔵ユニット(self−contained unit)(例えば、ペレット、錠剤、発泡パックに入れた錠剤、透析管又はそれと同等のものの中に入れた錠剤、又は有孔カプセル)中にあることも考慮されている。
【0029】
(本発明の詳細な記事)
本発明は、一般に可溶化フェニルホスフェートを安定化する方法に関する。本発明によれば、可溶化フェニルホスフェートを安定化量の木炭と接触させる。可溶化フェニルホスフェートと木炭とを接触させることにより驚く程の安定性を、フェニルホスフェートの緩衝溶液に与えることができる。本発明の安定化した可溶化フェニルホスフェートは、緩衝溶液、好ましくは9.0より大きなpHを有する緩衝溶液として与えられる。本発明によれば、安定化量の木炭と接触させた可溶化フェニルホスフェートは安定で、そのためほぼ室温で光りに露出されて机上で保存された場合、30日以上、冷蔵庫中で4℃で保存された場合には2年以上、許容可能なバックグラウンド吸光度及び活性度を示すことができる。
【0030】
本発明は、非酵素加水分解により着色し、そのため商業的に役に立たなくなった可溶化フェニルホスフェートを、許容可能な活性度及びバックグラウンド吸光度を有する可溶化フェニルホスフェートへリサイクルする方法にも関する。非酵素加水分解により既に着色した可溶化フェニルホスフェートを木炭と接触させることにより、酵素検定で使用するのに許容可能なバックグラウンド吸光度及び許容可能な活性度を有する可溶化フェニルホスフェートを与えることができる。
【0031】
本発明により、優れた安定性を有する可溶化フェニルホスフェートを与え、既に着色した可溶化フェニルホスフェートをリサイクルするために、可溶化フェニルホスフェートを木炭と接触させる。可溶化フェニルホスフェートは、木炭と接触させて貯蔵するか、又は別法として、可溶化フェニルホスフェートを限定された時間木炭と接触させ、次に実質的に全ての木炭を除去した後、その可溶化フェニルホスフェートを長期間貯蔵することができる。
【0032】
次に、可溶化フェニルホスフェートを安定化し、且つ/又はリサイクルするための装置、組成物、及びキットも与える。
【0033】
(1.定義及び省略記号)
1.1定義
本明細書全体を通して用いられている用語は、当業者にとっては、通常の典型的な意味を有するものと解釈される。しかし、次の用語を下に詳細に論ずる。
【0034】
更に、本発明の目的から、不定冠詞“a”又は“an”のついた全体は、その全体の一つ以上を意味する。例えば、「分子」又は「緩衝剤」とは、それらの化合物又は緩衝剤の一つ以上を夫々意味している。そのようなものとして、不定冠詞“a”又は“an”、「一つ以上」、及び「少なくとも一つ」は、ここでは、互換性をもつものとして用いることができる。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」は、互換性のあるものとして用いることができることにも注意すべきである。
【0035】
「フェニルホスフェート」とは、ホスファターゼのための基質として働くことができるどのようなフェニルホスフェートでも意味する。恐らく、フェニルホスフェートには、Na塩、NH塩、Mg塩、ジシクロヘキシルアンモニウム塩、二(三)塩、及びジ[2−アミノ−2−エチル(1,3−プロパンジオール)]塩の他、それらの異性体も含まれるが、それらに限定されるものではない。好ましいフェニルホスフェートは、PNPPである。
【0036】
「PNPP」は、どのようなパラニトロフェニルホスフェート又はパラニトロフェニルホスフェート状化合物及びそれらの塩でも意味し、それらはアルカリ性及び酸性ホスファターゼのような酵素のための基質として働くことができる。PNPPには、Na及びNH4+塩のようなPNPPの塩及びそれらの異性体が含まれる。
【0037】
「可溶化フェニルホスフェート」とは、上で与えたようなフェニルホスフェートで、緩衝水溶液、好ましくは塩基性緩衝剤中で可溶化されたものを意味する。可溶化フェニルホスフェートは、例えば、メタノール、プロパンジオール等を含めた水溶液と混和できる他の溶媒を含んでいてもよい。可溶化フェニルホスフェートは、検定で基質として用いるため、可溶化フェニルホスフェートを更に希釈する必要のない既製品形のものにすることができる。別法として、「可溶化フェニルホスフェート」は、濃厚な形態(例えば、3.0g/l)のフェニルホスフェートを指すこともあり、それらは検定で用いる前に希釈すべきである。フェニルホスフェートは、適当な緩衝剤中約3g/l以下であるのが好ましい。一層好ましくは、可溶化フェニルホスフェートは約2g/l以下である。更に一層好ましくは、塩基性緩衝剤中の可溶化フェニルホスフェートは、約1.0〜約1.5g/lである(例えば1.1、1.2、1.3、及び1.4は、全て意図されている濃度である)。
【0038】
ここで用いられる「塩基性緩衝剤」又は「緩衝剤」とは、pHが7.0より大きい緩衝剤を意味する。一層好ましくは緩衝剤のpHは9.0より大きい。適当な緩衝剤には、MOPS、HEPES、TES、バルビタール(barbital)[バルビトンベロナール(barbitone veronal)としても知られている〕、TRICINE、TRIS、BICINE、グリシルグリシン、ボレート、CHES、エチルアミン、グリシン−NaOH、CAPS、トリエチルアミン、DEA、BIS、BIS−TRIS、AMP、AMPD(アミノメチルプロペンジオール)、又は9より大きなpHを有するどのような緩衝剤でも含まれるが、それらに限定されるものではない。一層好ましくは、適当な緩衝剤には、TRIS、DEA、BIS、BIS−TRIS、AMP、又はAMPDが含まれる。
【0039】
「木炭」とは、試薬級木炭を意味する。木炭は、「活性炭(activated charcoal)」又は「活性木炭(active charcoal)」であるのが好ましい。本発明で用いられる木炭は、単に「炭素」又は「活性炭素(activated carbon)」としても言及することができるので、用語「木炭」と「炭素」とは、互換性のあるものとして用いることができる。木炭は「活性炭」として購入するか、又は木炭は、使用する前に「活性化」してもよい。木炭は種々のメッシュサイズの粉末であるか、又はペレットの形態をしていてもよい。活性炭又は活性炭素は、炭素原子の間に何百万もの小さな気孔を開けるため、酸素で処理した木炭又は炭素である。従って、活性炭は、極めて大きな表面積を有する多孔質内部微細構造を有する。ここで用いるのに適した「活性炭」は、試薬級木炭である。活性炭は、約400〜1,200m/gの内部比表面積を有する特徴を有するのが好ましい。活性炭素は、例えば、酸により調製することができる。
【0040】
「安定化量の木炭(stabilizing amount of charcoal)」とは、可溶化フェニルホスフェートに、室温で光に照射した時少なくとも24時間、一層好ましくは光の中で、室温で30日間以上の許容可能な性能パラメーターを与えるのに必要な量の木炭のことである。許容可能な性能パラメーターには、405nmで約0.1より小さなバックグラウンド吸光度、及び約0.2OD/分の活性度が含まれる。安定化量の木炭は、フェニルホスフェートが、非酵素加水分解を防ぎながら、比色検定で反応できるようにする。安定化量の木炭は、好ましくはフェニルホスフェート溶液1ml当たり約20mg以下の木炭である。一層好ましくは、その量は、フェニルホスフェート溶液1ml当たり約15mg以下の木炭である。更に一層好ましくは、安定化量の木炭は、約10mg/ml±5mg/mlである。
【0041】
例として、安定化量の木炭は、約0.1より小さなバックグラウンド吸光度及び室温で光に露出して少なくとも24時間以上約0.2OD/分の活性度を有し、9.0より大きなpHを有するフェニルホスフェート緩衝溶液に対し1.5g/lを与えるのに必要な量の木炭である。この安定化量の木炭は、可溶化フェニルホスフェート中に維持される木炭の量にすることができ、或は限定された時間可溶化フェニルホスフェートと接触させ、次にその可溶化フェニルホスフェートから実質的に全ての木炭が除去されるように、除去される木炭の量にすることができる。
【0042】
「リサイクル」とは、非酵素加水分解により色が変わった可溶化フェニルホスフェートを処理する方法を意味する。リサイクルは、既に着色した可溶化フェニルホスフェートに、処理後、405nmで0.1OD/分より小さな吸光度及び処理後0.2OD/分の活性度を与える。
【0043】
「リサイクル量の木炭」とは、非酵素加水分解により着色した既に着色した可溶化フェニルホスフェートに、約0.1OD/分より小さな吸光度を与えるのに必要な量の木炭を意味する。リサイクル量の木炭は、基質1リットル当たり約5g〜約15gの木炭である。一層好ましくは、その量は約10g〜12.5g/lであるが、長期間(例えば、30日以上)加水分解にかけられていた材料について、405nmで測定してリサイクル処理後に約0.2OD/分の活性度を持つためには、更に多くの木炭が必要になることがある。
【0044】
「実質的に全てを除去する」とは、添加した木炭の75%以上が除去され、好ましくは80以上、一層好ましくは90%以上、更に一層好ましくは95%以上、更に一層好ましくは99%以上、或は80%〜100%の間のどの整数値でも、その木炭が除去されることを意味する。
【0045】
可溶化フェニルホスフェートに関する「バックグラウンド吸光度」とは、酵素が存在しない中で405nmで測定した時の可溶化フェニルホスフェートの吸光度を意味する。好ましくはバックグラウンド吸光度は0.1より小さい。バックグラウンド吸光度は、精製した水をブランクとした分光分析を用いて測定される。
【0046】
「既製品」とは、酵素検定で直ちに用いられるように配合され、可溶化フェニルホスフェートの更に一層の調整、希釈、又は処理を必要としない、フェニルホスフェートの形態を意味する。
【0047】
「濃厚フェニルホスフェート」とは、酵素検定で用いる前に希釈することができる可溶化フェニルホスフェートを意味する。
【0048】
「未木炭処理可溶化フェニルホスフェート」とは、未だ木炭に露出されておらず、約8時間室温で光に露出した時、未木炭処理可溶化フェニルホスフェートが非酵素加水分解を受け、それにより405nmで測定して0.1を越える吸光度値を有し、商業的には役に立たないであろうフェニルホスフェート溶液を与える、9.0より大きなpHを有するフェニルホスフェート緩衝溶液を意味する。可溶化フェニルホスフェートは、9.0より大きなpHを有するPNPP緩衝溶液については、約1.0〜約1.5g/lの量のPNPPであるのが好ましい。
【0049】
1.2省略記号
次のものは、一般に容認されている科学的省略記号及びそれに相当する省略しない名前のリストである。
AMP 2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール
AMPD 2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール
BICINE N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン
BIS ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノ
BIS−TRIS ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノ−トリス(ヒド
ロキシメチル)メタン、又は2[ビス(2−ヒドロキ
シエチル)アミノ]−2−(ヒドロキシメチル)−プ
ロパン−1,3−ジオール
CHES 2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸
DEA ジエチルアミン
ELISA 酵素結合免疫吸着検定
GlyGlyHCl グリシルグリシン塩酸塩
HEPES 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジン−エ
タンスルホン酸〔又はヘペス(Hepes)〕
MOPS 3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸
PNPP パラニトロフェニルホスフェート、又はp−ニトロフ
ェニルホスフェート
RT 室温
TES N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノ
エタンスルホン酸
TRICINE N−トリス[(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン、
又はN−[2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキ
シメチル)−エチル]グリシン
TRIS トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、又は2−
アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジ
オール、又はTHAM
【0050】
(2.フェニルホスフェートを製造及び保存する方法)
ここに記載するフェニルホスフェートを安定化し、リサイクルするための方法及び組成物より以前は、既製品フェニルホスフェート基質は、特別な包装(例えば、既製品フェニルホスフェートを光から遮蔽する琥珀色の瓶又は他の容器)を必要とし、限定された出荷及び貯蔵条件(例えば、4℃で貯蔵し、室温より高い温度には露出せず、冷凍せず、一晩での出荷)も必要としていた。例として、既製品フェニルホスフェートを出荷する場合、製造業者は適当な出荷用容器中に入れた冷凍ゲルパック又はウエットアイス中に既製品フェニルホスフェートを入れて出荷しなければならなかったが、その両方共、周囲又は室温でその商品を出荷する場合よりもかなり高価になるものである。更に、夏の月の間に出荷された場合、過度の熱に出荷フェニルホスフェートが曝されないと言う保証はなかった。更に、既製品フェニルホスフェートを用いた場合、実験室の机上に置いておくと、フェニルホスフェートが光及び4℃より高い温度に曝されるために、保存寿命が直ぐに低下していた。琥珀色の容器の中に入れてフェニルホスフェートを用いた場合でも〔即ち、K−ゴールド(K−Gold)(登録商標名)基質〕、その琥珀色容器中のフェニルホスフェート基質を4℃で貯蔵することが依然として推奨されており、実際に使う時には、非酵素加水分解に対する安定性が低下していた。
【0051】
ここに記載するように、既製品フェニルホスフェートを調製する方法は、出荷及び/又は貯蔵のために琥珀色の瓶及び/又は冷蔵を使用する必要はない。冷蔵及び/又は琥珀色の瓶のような光を遮る瓶を使用することは、ここに記載する既製品フェニルホスフェートが既に持つ驚く程長い保存寿命を更に一層増大するために、ここに記載する組成物及びキッドでも採用してもよい。
【0052】
例えば、どのような塩基性緩衝剤中でもPNPPを可溶化することにより、可溶化PNPPを調製することができる。可溶化PNPPは、約9.0より大きなpHを有する緩衝水溶液になっているのが好ましい。可溶化PNPPは、約2.0g/l以下のフェニルホスフェート濃度を有するのが好ましい。しかし、可溶化PNPPは、例えば、約3.0g/lの濃厚な形態のPNPPとして調製してもよい。
【0053】
可溶化フェニルホスフェートを、安定化量の木炭と接触させて、その可溶化フェニルホスフェートを安定化する。安定化量の木炭とは、可溶化フェニルホスフェートに、室温で光に露出した時、少なくとも24時間(一層好ましくは30日間以上安定である)許容可能な性能パラメーターを与えるのに必要な量の木炭のことである。許容可能な性能パラメーターには、405nmで約0.1より小さなバックグラウンド吸光度、及び約0.2OD/分の活性度が含まれる。安定化量の木炭は、好ましくはフェニルホスフェート溶液1ml当たり約20mg以下の木炭である。一層好ましくは、その量は、フェニルホスフェート溶液1ml当たり約15mg以下の木炭である。更に一層好ましくは、安定化量の木炭は、約10mg/ml±5mg/mlである。
【0054】
可溶化PNPPと木炭とを接触させること、即ち、木炭処理は、どのような手段によって行なってもよい。それらの手段の中には、次のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:
(1) 可溶化フェニルホスフェートと木炭とを接触させ、その可溶化フェニルホスフェート中に木炭を維持する(即ち、恒久的接触);
(2) 可溶化フェニルホスフェートと木炭とを限定された時間(例えば、5分〜48時間、それらの間のどのような長さの時間でも)接触させ、次にその可溶化フェニルホスフェートから木炭を除去する;及び
(3) 可溶化フェニルホスフェートを保持する容器中に入れた透析容器又は容器中に木炭が入っている状態で、可溶化フェニルホスフェートを木炭に露出する。
【0055】
可溶化フェニルホスフェートと木炭とを絶えず接触させるためには、木炭を可溶化フェニルホスフェートに添加してもよく、木炭をペレット、粒状木炭、粉末木炭等の形態にしてもよいことが考えられている。更に、恒久的接触のためには、フェニルホスフェートの入った包装器具に木炭を接着させてもよい(例えば、既製品フェニルホスフェートの入った瓶に付着させる)。木炭は、フェニルホスフェートを瓶から注ぐ時に通る瓶の口に接着させてもよく、瓶の側面の少なくとも一部分に接着させるか、且つ/又は瓶の底に接着してもよい。
【0056】
可溶化フェニルホスフェートと木炭とを限定された時間接触させる場合、可溶化フェニルホスフェートを木炭と約60分以上、好ましくは約60分〜約8時間、更に一層好ましくは60分から一晩接触させてたまま維持する。接触時間後、実質的に全ての木炭を、容器から木炭を除去する適当な手段により、その可溶化フェニルホスフェートから除去する。木炭を除去する手段は、用いた木炭の形態に依存するであろう。木炭を除去するのに適当な手段は、当業者には分かるであろう。例えば、粒状、ペレット、又は粉末の木炭を除去するためには、木炭を容器の底に沈降させた後、可溶化フェニルホスフェートをピペットでそれから取り出すか、化学的抽出(例えば、鉱油の使用)により、可溶化フェニルホスフェートを濾過して、実質的に全ての木炭を除去してもよく、木炭を遠心分離にかけてペレットにし、次に除去するか、又は当分野で知られている適当な手段により除去してもよい。
【0057】
更に、木炭を可溶化フェニルホスフェートへ添加する器具の中に入れることもできる。その器具には木炭が入っており、それを可溶化フェニルホスフェートに露出させることができるであろう。そのような器具には、例えば、有孔カプセル、発泡パック、及び小袋が含まれる。可溶化フェニルホスフェートと木炭との露出又は接触を可能にする他の機構も考慮に入れられており、本発明の中に含まれる。
【0058】
非酵素加水分解により着色し、商業的には役に立たなくなっている可溶化フェニルホスフェートを、リサイクル量の木炭を使用することを通してリサイクルすることができる。着色した可溶化フェニルホスフェートをリサイクルするため、可溶化フェニルホスフェートを木炭と接触させ、許容可能な活性度及びバックグラウンド吸光度を有する可溶化フェニルホスフェートを与える。非酵素加水分解により着色した可溶化フェニルホスフェートを木炭と接触させることにより、それまで着色していた可溶化フェニルホスフェートに、酵素検定で用いるのに許容可能なバックグラウンド吸光度及び許容可能な活性度を与えることができる。着色した可溶化フェニルホスフェートと木炭との接触、即ち、木炭処理は、どのような適当な手段によって行なってもよい。これらの手段には、未だ着色していない可溶化フェニルホスフェートについて上で述べたような方法が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0059】
既に着色した可溶化フェニルホスフェートの処理は、フェニルホスフェート1ml当たり約15mg以下の木炭を用いて約5分〜48時間以上の時間行うのが好ましい(即ち、処理は、酵素検定で可溶化フェニルホスフェートを使用するまで恒久的にしておくことができる)。更に好ましくは、可溶化フェニルホスフェートを木炭で約3時間から一晩処理する。更に一層好ましくは、可溶化フェニルホスフェートを、10mg/ml±5mg/mlの木炭で一晩処理する。未だ着色していない可溶化フェニルホスフェートについて上で述べたように、木炭は、例えば、ペレット、粉末、粒子、又は木炭及び活性炭の市販されている形態を含めたどのような形態になっていてもよい。
【0060】
2.1フェニルホスフェートを可溶化するための緩衝剤
可溶化フェニルホスフェートは、約9.0以上のpHを有する緩衝水溶液であるのが好ましい。本発明によれば、どのような塩基性緩衝剤でも、それが酵素検定で機能を果たす限り、フェニルホスフェートを可溶化するのに用いることができる。好ましい緩衝剤には、AMP、AMPD、BIS、BIS−TRIS、TRIS、及びDEAが含まれるが、それらに限定されるものではない。これらの緩衝剤を製造する方法は、当業者に知られている。
【0061】
例えば、可溶化フェニルホスフェートが可溶化PNPPであるならば、それは、緩衝剤1リットル当たり約2.0g以下のPNPPを含み、一層好ましくは1.0〜1.5g/lのPNPPを含む緩衝溶液になっている。
【0062】
2.2木炭
可溶化フェニルホスフェートを安定化及び/又はリサイクルするための本発明で用いられる木炭は、試薬級木炭である。木炭は、「活性炭」又は「活性木炭」であるのが好ましい。本発明で用いられる木炭は、単に「炭素」又は「活性炭素」と単に呼んでもよい;従って、用語「木炭」と「炭素」は互換性のあるものとして用いることができる。木炭は「活性炭」として購入してもよく、或は木炭を、使用する前に「活性化」してもよい。
【0063】
活性炭又は活性炭素は、炭素原子の間に何百万もの小さな気孔を開けるため酸素で処理された木炭又は炭素である。従って、活性炭は、極めて大きな比表面積を有する多孔質の内部微細構造を有する。ここで用いるのに適した「活性炭」は、試薬級の木炭である。活性炭は、約400〜1,200m/gの内部比表面積を有することを特徴とする。活性炭は、例えば、酸処理又は木炭を活性化するための他の方法により調製することができる。
【0064】
試薬級で、活性化又は活性化されていないどのような市販の木炭でも、可溶化フェニルホスフェートを処理するのに用いることができる。活性炭は商業的に得られてもよく、又は炭素を得て、当業者によく知られた方法に従って、活性化してもよい。例えば、酸処理又は他の活性化手段により活性炭を調製することができる。
【0065】
例として、木炭は次のように活性することができる:
● 850mlのHO及び150mlの12N HClを混合し、木炭を活性化するための酸性溶液を与える。
● 前記酸性溶液を200gの木炭へ添加し、その木炭を3時間を越えて活性化する。
● 前記活性化木炭を、逆浸透(RO)、又はRO HO過剰に匹敵する量の脱イオン水中で2〜3回濯ぐ。
● 木炭を一晩空気乾燥し、次にその木炭を37℃で更に一晩乾燥する。
【0066】
本発明に従い、安定化量又はリサイクル量の木炭を、可溶化フェニルホスフェートに添加する。木炭は、約5〜15mg/mlの量で添加するのが好ましく、更に一層好ましくは、約10mg/mlの量で添加する。可溶化フェニルホスフェートは、フェニルホスフェートと木炭とを接触させ、その可溶化フェニルホスフェートを木炭と接触させたまま維持することにより安定化してもよい。別法として、可溶化フェニルホスフェートは、そのフェニルホスフェートを安定化又はリサイクルするのに充分な時間(例えば、一晩)木炭と接触させ、次に実質的に全ての木炭をその可溶化フェニルホスフェートから除去してもよい。
【0067】
(3.キット及び既製品フェニルホスフェートのための包装)
既製品形態のフェニルホスフェート又は濃厚な可溶化フェニルホスフェートを、可溶化フェニルホスフェートの破壊又は漏洩を防ぐのに充分な出荷用容器中に詰めるが、本発明により安定化された可溶化フェニルホスフェートを出荷及び貯蔵するために必要になるような冷蔵もなく、貯蔵条件についての制限もない。
【0068】
既製品及び濃厚な形態のフェニルホスフェートは、液体に適したどのような気密な容器にでも入れることができ、それらには、ガラス、プラスチック、琥珀色の又は透明な容器等が含まれるが、それらに限定されるものではない。本発明によれば、木炭と接触させた可溶化フェニルホスフェートは、液体のための適当な光遮蔽、気密な容器を必要とせず、単に液体に適した容器が必要なだけである。
【0069】
既製品及び濃厚な可溶化フェニルホスフェートについては、液体に適した気密な容器の内側を、安定化量の木炭で被覆することができる。例えば、可溶化フェニルホスフェートと接触するようになる容器の表面に、木炭を接着させことができる。例として、容器の口、容器の側面、容器の底、及びそれらの組合せに木炭を接着させることができる。木炭を容器に接着させる方法は、当業者に知られている。木炭を接着させる方法は、木炭を不活性にすべきではなく、可溶化フェニルホスフェートを不安定にしてはならない。
【0070】
別法として、既製品及び濃厚な可溶化状態のフェニルホスフェートを、その可溶化フェニルホスフェートを木炭に曝す器具又は他の手段を有する容器中に入れて出荷することができる。そのような器具又は他の手段には、木炭被覆磁気撹拌棒、木炭の入った小袋、可溶化フェニルホスフェートが入った容器中の浸透膜中に含まれた木炭、多孔質カプセル中に入れた木炭、フェニルホスフェートの可溶化状態のものと接触させる容器中に入れた木炭が含まれ、それらは、例えば、可溶化フェニルホスフェートの入った容器から簡単に取り出すことができる。木炭は、ペレット、粒子、粉末等の形態で、既製品及び濃厚な状態の可溶化フェニルホスフェートに直接添加してもよい。
【0071】
容器中の可溶化フェニルホスフェートは、木炭と接触した状態に維持してもよい。別法として、可溶化フェニルホスフェートは、適切な時間木炭と接触させてその可溶化フェニルホスフェートを安定化し、次に実質的に全ての木炭を除去した後、容器中に可溶化フェニルホスフェートを密封してもよい。
【0072】
(4.フェニルホスフェートキット)
本発明による安定化フェニルホスフェートを含むキットが考慮されている。これらのキットは、ここに記載したように木炭で予め処理してあるか、又は可溶化フェニルホスフェートを木炭と接触させている場合の可溶化フェニルホスフェートを含む。更に別の態様として、フェニルホスフェートは処理されておらず、キットが、更にフェニルホスフェートリサイクルキットを含んでいてもよい。
【0073】
これらのキットは、酵素活性度検定のために適切なものでもよく、例えば、アルカリ性ホスファターゼ・フェニルホスフェート反応、又は酸性ホスファターゼ・フェニルホスフェート反応のために適切なものでもよい。従って、キットは、更に、適当な酵素、即ち、アルカリ性ホスファターゼ又は酸性ホスファターゼを含んでいてもよい。
【0074】
本発明によるキットは、フェニルホスフェートリサイクルのためのキットを含んでいてもよい。そのリサイクルキットは、非酵素加水分解により着色したフェニルホスフェートをリサイクルするのに適切なものである。非酵素加水分解により着色した可溶化フェニルホスフェートは、405nmで測定して、0.1OD/分を越える吸光度を示す。既に着色したフェニルホスフェートをリサイクルするためのキットは、非酵素加水分解により既に着色した可溶化フェニルホスフェートをリサイクルするのに充分な量の木炭、即ち、リサイクル量の木炭を含む。
【0075】
可溶化フェニルホスフェートをリサイクルするための木炭の量は、約10mg/ml±5mg/mlを可溶化フェニルホスフェートへ添加することができるような量である。木炭は、約100mgの木炭を内蔵するユニットになっているのが好ましい。従って、これらの内蔵ユニットを、必要に応じリサイクルする必要のある可溶化フェニルホスフェートに添加することができる。内蔵ユニットは、必要に応じ、可溶化フェニルホスフェートに対する木炭が、約10mg/ml±5mg/mlの量になるように添加される。例として、一つの内蔵ユニットに、10mlの可溶化フェニルホスフェートが添加されるであろう。
【0076】
木炭は、既に着色した可溶化フェニルホスフェートと絶えず接触させたまま維持してもよく、或は木炭を、可溶化フェニルホスフェートと接触させ、次に充分な時間、例えば一晩の後、除去してもよい。既に着色した可溶化フェニルホスフェートは、木炭と接触させた後、許容可能な(即ち、405nmで0.1より小さい)バックグラウンド吸光度及び酵素に露出した時許容可能な活性度(0.2OD/分以上)を示す。
【0077】
(5.フェニルホスフェートのリサイクル)
本発明の別の態様として、非酵素加水分解により既に着色した可溶化フェニルホスフェートをリサイクルする。フェニルホスフェートの溶液が非酵素加水分解により着色した後は、最早それを酵素活性度検出に用いることはできない。既に着色した可溶化フェニルホスフェートは、商業的に価値がない。この既に着色した可溶化フェニルホスフェートは、出荷中に経験される貯蔵問題(例えば、過度の熱)から生じ、机上で使用している間の保存からも生ずることがある。既に着色した可溶化フェニルホスフェートは、可溶化フェニルホスフェートが光に曝されるか、室温に露出されるか、4℃でも長期間貯蔵されるか、又はそれらの組合せの時に起きる非酵素加水分解から生ずる。非酵素加水分解により既に着色した可溶化フェニルホスフェートを、ここに記載した方法及び材料を用いて処理し、さもなくば商業的に価値のない可溶化フェニルホスフェートをリサイクルすることができる。リサイクル後、その可溶化フェニルホスフェートは、許容可能なバックグラウンド吸光度及び許容可能な活性度を示す。
【0078】
本発明の別の態様として、非酵素加水分解により着色した可溶化フェニルホスフェートをリサイクルするために、酵素活性度検定に適切なキットの一部分にすることができるキットの使用が考慮されている。例として木炭で処理されていない既製品フェニルホスフェートは、室温で机上の透明容器中に数時間保存されていると、非酵素加水分解により着色するであろう。着色後、そのフェニルホスフェートは、許容できない高いバックグラウンドのため酵素検定で最早用いることができない。本発明によるリサイクルキットを用いて、非酵素加水分解により着色したフェニルホスフェートをリサイクルして、許容可能なバックグラウンド吸光度(即ち、0.1未満)及び許容可能な活性度(0.2OD/分以上)を有する可溶化フェニルホスフェートにすることができる。リサイクルキットは、別々に市販されるようにしてもよく、元の既製品フェニルホスフェートキットの一部分として市販されるようにしてもよく、酵素活性度を検定するための元のキットの一部として市販されるようにしてよく、或はそれらの組合せでもよい、
【0079】
そのようなリサイクルキットは、非酵素加水分解により既に着色した可溶化フェニルホスフェートをリサイクルするのに充分な量の木炭、即ち、リサイクル量の木炭を含む。
【0080】
可溶化フェニルホスフェートをリサイクルするための木炭の量は、約10mg/ml±5mg/mlの木炭が可溶化フェニルホスフェートに添加されるような量である。キットの一部分として入手できる場合、木炭は約100mgの木炭を内蔵するユニットになっているのが好ましい。従って、これらの内蔵ユニットは、リサイクルするのが必要な可溶化フェニルホスフェートに、必要に応じ添加することができる。内蔵ユニットは、必要に応じ、可溶化フェニルホスフェートに対し木炭が約10mg/ml±5mg/ml得られるように添加する。例として一つの内蔵ユニットが10mlの可溶化フェニルホスフェートに添加されるであろう。
【0081】
可溶化フェニルホスフェートをリサイクルするために、木炭は、既に着色した可溶化フェニルホスフェートと常に接触させたまま維持してもよく、或は木炭を、可溶化フェニルホスフェートと接触させ、次に充分な時間、例えば、一晩の後、除去してもよい。既に着色した可溶化フェニルホスフェートは、木炭と接触させた後、許容可能な(即ち、0.1未満の)バックグラウンド吸光度及び酵素に露出した時、許容可能な活性度(例えば、0.2OD/分以上)を示す。
【0082】
一層好ましくは、リサイクルキット中の木炭は、再使用可能な形態(例えば、透析管のような小袋封入器具中に入れた木炭)になっていてもよい。例として、ここに記載するリサイクルキットは、リサイクル量の木炭を含み、リサイクル量の木炭のための封入手段(例えば、小袋、開くことができる密封パッケージ、及び可溶化フェニルホスフェート中へ入れた木炭内容物、封入器具の形態をした透析管又は他の透析部材)を含んでいてもよい。別法として、リサイクルキットは、木炭を付着させ、既に着色した可溶化フェニルホスフェートと接触した状態に置くことができる器具(例えば、表面に木炭を付着させた磁気撹拌器、内面に木炭を付着させた瓶等)を含んでいてもよい。
【0083】
本発明の方法及びキットは、非酵素加水分解により既に着色した可溶化フェニルホスフェートをリサイクルするのに用いることができることに注意することは重要である。既に着色した可溶化フェニルホスフェートをリサイクルする場合、その可溶化フェニルホスフェートを、許容可能なバックグラウンド吸光度及び許容可能な活性度へ戻す。本発明の方法及びキットを、酵素加水分解により着色した可溶化フェニルホスフェートと共に用いた場合、驚いたことにそのフェニルホスフェートが許容可能な活性度へ戻らないことが発見されている。従って、本発明の方法及びキットは、非酵素加水分解のため着色した可溶化フェニルホスフェートをリサイクルするのに驚く程有用である。
【0084】
(6.フェニルホスフェートの基質としての検定使用)
可溶化フェニルホスフェートは、一般にホスファターゼ酵素と組合せて用いられる。可溶化フェニルホスフェートは、基質としてホスファターゼ酵素と共に用いてもよい。なぜなら、フェニルホスフェートは、ホスファターゼ活性度を測定するのに容易に用いることができる加水分解可能な燐酸エステルを含んでいるからである。特に、ホスファターゼ酵素は、可溶化フェニルホスフェート、基質を加水分解し最終生成物にするが、それは塩基性溶液中で着色した最終生成物である。可溶化フェニルホスフェートは、溶液中にマグネシウムイオンを遊離するマグネシウム化合物も含むのが典型的である。
【0085】
可溶化フェニルホスフェート基質の加水分解速度は、約405nmでの吸光度の増大を追跡し、即ち、着色最終生成物の形成速度を測定することにより決定することができる。与えられた時間枠中でホスファターゼ酵素との反応により生成した着色p−ニトロフェノキシドによる吸光度増大の測定は、存在するアナライト量の正確な決定を与える。加水分解速度の指標になる色形成速度を時間と共に測定してもよく(即ち、酵素アルカリ性ホスファターゼを用いた場合)、或は終点検定として読取ることができる(即ち、酵素酸性ホスファターゼを用いた場合)。
【0086】
色形成速度を測定することができるように、可溶化フェニルホスフェートが許容可能なバックグラウンド吸光度を有することは必須である。もしバックグラウンド吸光度が高過ぎると、検定は、測定可能な量の色の形成を検出するのに充分な感度を持たなくなるであろう。許容可能なバックグラウンド吸光度は、405nmで測定して、0.1以下であるのが好ましい。
【0087】
可溶化フェニルホスフェートが、ホスファターゼ酵素の存在下で加水分解して測定可能な速度の色形成を与えるように、その可溶化フェニルホスフェートが許容可能な活性度を維持することも必須である。吸光度を2〜3分読取り、曲線の直線部分について増大速度を決定することができる。もし吸光度が2分の培養時間中、1.5を越えるならば、酵素を更に希釈することが必要であろう。別法として、例えば、酵素酸性ホスファターゼを用いた場合、終点検定として色形成を読取ることができる。なぜなら、塩基性pHへ緩衝した溶液中での色の形成を測定することが必要になるからである。可溶化フェニルホスフェートについての許容可能な活性度は、0.2OD/分以上であるのが好ましい。
【0088】
本発明により安定化された可溶化フェニルホスフェートは、酵素検定、特にホスファターゼ検定で用いるのに許容可能なバックグラウンド吸光度及び許容可能な活性度の両方を示す。
【0089】
本発明を下の実施例を参照して詳細に記述してあるが、本発明の本質から離れることなく種々の修正を行うことができ、当業者には容易に分かるであろうと言うことは理解される。
【実施例】
【0090】
(例1)
(室温でのPNPPの木炭安定化)
PNPP緩衝剤ロット0110602を、9.75から9.80へpH調節した。PNPPをその緩衝剤に1.5又は3.0g/lの量で添加し、混合した。シグマー(Sigma)(S)、NBC(N)、及びバイオシンス(Biosynth)(B)からのPNPPを用いた。次に10g/lの活性炭を試料の各々に添加した。それらロットを、室温に維持し、部屋の照明に当てた。
【0091】
【表1】

【0092】
3.0g/lのPNPP濃度は、通常可溶化される濃度よりも充分高い。なぜなら、PNPPのこの濃度は、直ぐに着色キノイド形のPNPPを形成するのが典型的だからである。それにも拘わらず、室温で光に曝されても、3.0g/lの試料を含む試料は、透明のままであり、405nmで0.1より小さい許容可能なバックグラウンド吸光度を示していた。
【0093】
(例2)
(木炭処理した可溶化PNPPの長期安定性)
例1からの夫々のバッチ30mlを元のバッチから取り出し、木炭の入っていない透明ナルゲン(Nalgene)瓶の中へ入れた。それら試料を4℃の冷蔵庫中に貯蔵した。これらの試料を、これらの条件で2年間維持した。2年間貯蔵した後、それら試料は、405nmで測定して0.1より小さな吸光度を示していた。
【0094】
2年貯蔵した後のこれらの試料を、次に37℃で光の中に2日間置いた。2日後でも400〜410nmで試験すると、それらの試料は驚いたことに1.0、1.5、及び3.0g/lのPNPPについて0.1OD/分より小さな吸光度値を示していたことは予想外であった。
【0095】
(例3)
(室温でのPNPPの木炭による安定化)
例1のバッチから更に30mlのバッチをとり、透明ナルゲン瓶中で光の中で室温で1時間混合した。これらのバッチの各々から試料をとり、次に室温で机上に放置した。3日、4日、5日、7日、及び10日で試料から50μlをとり、更に10日で一つの試料を取り、37℃で更に2日間貯蔵し、然る後、50μlの試料を取った。それら50μlの試料を吸光度について試験し、それらの時間貯蔵している間の試料の安定性を決定した。50μlの試料を水で1mlにし、295〜410nmの分光光度計UV走査を行い、原料の品質を評価した。従って、室温で日数が3、4、5、7、10で貯蔵した後の試料及び10日で更に37℃で2日間貯蔵した後の試料について吸光度を記録し、下の表IIに要約してある。下の表IIは、310nmで得られた吸光度値を要約したものである。
【0096】
【表2】

【0097】
表に特定化した日数貯蔵した後の試料について、405nmでのバックグラウンド吸光度を記録し、下の表IIIに要約してある。
【0098】
【表3】

【0099】
次に、これらの木炭処理した試料をアルカリ性ホスファターゼの存在下での活性度について試験した。活性度を試験するために、木炭試料した試料に酵素を、基質1ml当たり10μlの酵素濃度で添加した。色発生速度を周囲温度で決定した。405nmで吸光度を測定し、5つのバッチの各々について得られた結果を下の表IVに要約する。
【0100】
【表4】

【0101】
(例4)
(4℃でのPNPPの木炭による安定化)
上の例3で試験したように、日数の夫々についての試料を、試料バッチから取り出し、木炭を入れてない透明ナルゲン瓶中へ入れた。試料を4℃の冷蔵庫中に保存した。これらの試料をこれらの条件で2年間維持した。
【0102】
既に2年間木炭で処理し、次に溶液からその木炭を除去したこれらの試料(即ち、木炭ペレットを除去したが、試料は濾過しておらず、従って、木炭の破片は溶液中に残っていたかも知れない)を、上に記載したように貯蔵した。木炭による処理は、一晩から、使用する直前までであり、それは例3に従い試料を取った時に依存しており、その時に試料は木炭との接触から除かれた。次にそれら試料を約4℃に冷蔵して2年間貯蔵した。4℃の冷蔵庫中で2年間貯蔵した後、試料は、405nmで測定して0.1より小さい吸光度を示していた。
【0103】
次にそれらの試料(1.0、1.5、又は3.0g/l)を、光の中で37℃で2日間置いた。2日後でも、405nmで試験して、驚いたことに試料は0.1より小さい吸光度値を示し予想外であった。
【0104】
(例5)
(AMPD緩衝剤中のPNPP)
AMPD緩衝剤中に入れて次の濃度のPNPPを調製した。
それら溶液を室温で光から保護し4時間混合した。次にそれら溶液を4℃で一晩貯蔵した。調製された溶液を、下の表Vに要約する。
【0105】
【表5】

【0106】
一晩貯蔵した後、それら溶液の試料を405nmでのバックグラウンド吸光度について試験し、全て許容可能な吸光度(即ち、0.1未満)を示していた。
【0107】
(例6)
(木炭濾過試料)
AMP中に1.5g/lのPNPPを入れた試料に、10mg/mlの量の木炭を添加し、混合した。可溶化PNPP試料を、木炭と接触したままで少なくとも1時間放置し、次に濾過して木炭を除去し、ナルゲン瓶中に入れ、照明の付いた部屋の中で室温で一晩置いた。可溶化PNPPは、一晩中透明なままであった。
【0108】
3.0g/lのPNPPを用いて同じ実験を行なった。活性度は、1.5g/lの量の場合に観察されたものと同様であったが、予想通り、時間と共にバックグラウンドが増大した。
【0109】
(例7)
(リサイクルされたPNPP)
AMP及びAMPD緩衝剤中に入れたPNPP(即ち、1.5g/l)の試料を、その木炭未処理試料を室温で光の中に数時間置くことによる非酵素加水分解により変色させた。着色した可溶化PNPPの吸光度を405nmで測定し、2.8であることが判明した。
【0110】
次にその試料に10mg/mlの木炭を添加し、5〜20分間経過した時に吸光度を再び試験した。前に着色した可溶化PNPPの吸光度は、木炭と接触させた後、405nmで測定して0.1未満の値を示した。次にこれらの試料を酵素で試験し、非酵素加水分解による着色を前に受けていなかった可溶化PNPPのものと同様に、許容可能な検定活性度(0.2OD/分以上)を持つことが判明した。
【0111】
(比較例8)
(PNPPの酵素処理)
比較例として、PNPPの試料(DEA緩衝剤中に入れた1.5g/lのPNPP)を、アルカリ性ホスファターゼの存在下で酵素加水分解にかけた。ELISAのような検定は、アルカリ性ホスファターゼ及び基質、化合物(例えば、基質と結合したポリペプチド)の存在について試験する手段としてのPNPPを用いる。典型的には、検定中にPNPPが酵素に対し過剰の濃度で存在する。従って、405nmで試験して0.1より小さな吸光度を有する可溶化PNPPの試料を、アルカリ性ホスファターゼに露出した。
【0112】
その試料に酵素(即ち、アルカリ性ホスファターゼ)を、基質1ml当たり10μlの酵素濃度で添加した。PNPPの試料は、酵素加水分解により着色した。次に10mg/mlの木炭をその試料に添加し、5〜20分間経過した時に吸光度を再び試験した。前に着色した可溶化PNPPの吸光度は、木炭と接触させた後、405nmで測定して2.0ODより大きかった。予想されるように、木炭は、酵素反応試料から色を除去した。しかし、驚いたことに、これらの試料を次に酵素で活性度について試験すると、0.1OD/分より小さな検定活性度を有することが判明した。従って、木炭処理は、酵素加水分解により着色した可溶化PNPPに、許容可能な活性度を与えなかった。
【0113】
従って、可溶化PNPPの酵素反応させた試料は木炭で処理した後透明であるが、測定可能な機能性PNPP基質は持たず、そのことは第二の酵素反応を用いて検出することができた。このデーターからの予想外の結論は、PNPPの活性形は、本発明によるリサイクル条件で処理した時でも、酵素反応後に検出できるような仕方では最早存在していないことである。
【0114】
本発明を、その特別な態様に関連して詳細に記述してきたが、本発明の本質及び範囲から離れることなく、種々の変更及び修正を行うことができることは当業者に明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶化フェニルホスフェートと、安定化量の木炭とを接触させることを含む、可溶化フェニルホスフェートを安定化する方法。
【請求項2】
フェニルホスフェートがパラニトロフェニルホスフェートである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
可溶化パラニトロフェニルホスフェートが、約9.0より大きなpHを有する緩衝水溶液になっている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
可溶化パラニトロフェニルホスフェートが、3.0g/lより少ないパラニトロフェニルホスフェートを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
可溶化パラニトロフェニルホスフェートが、約1.0〜3.0g/lのパラニトロフェニルホスフェートを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
安定化量の木炭が、約5〜15mg/mlの量である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
安定化量の木炭が、約10mg/mlの量である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
木炭が活性炭である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
更に、可溶化パラニトロフェニルホスフェートから実質的に全ての木炭を除去することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
ホスファターゼ及び安定化した可溶化フェニルホスフェートを含む、ホスファターゼ・フェニルホスフェート反応のためのキット。
【請求項11】
フェニルホスフェートがパラニトロフェニルホスフェートである、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
ホスファターゼが、アルカリ性ホスファターゼ又は酸性ホスファターゼである、請求項10に記載のキット。
【請求項13】
着色した可溶化フェニルホスフェートと、リサイクル量の木炭とを混合することを含む、可溶化フェニルホスフェートをリサイクルする方法。
【請求項14】
フェニルホスフェートがパラニトロフェニルホスフェートである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
木炭が活性炭である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
可溶化パラニトロフェニルホスフェートが、約9.0より大きなpHを有する緩衝水溶液になっている、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
可溶化パラニトロフェニルホスフェートが、3.0g/l以下のパラニトロフェニルホスフェートを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
可溶化パラニトロフェニルホスフェートが、約1.0〜3.0g/lのパラニトロフェニルホスフェートを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
安定化量の木炭が、約5〜15mg/mlの量である、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
安定化量の木炭が、約10mg/mlの量である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
更に、可溶化パラニトロフェニルホスフェートから実質的に全ての木炭を除去することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
緩衝剤、フェニルホスフェート、及び安定化量の木炭を含む、安定化した可溶化フェニルホスフェート。
【請求項23】
フェニルホスフェートがパラニトロフェニルホスフェートである、請求項22に記載の安定化した可溶化フェニルホスフェート。
【請求項24】
木炭が活性炭である、請求項23に記載の安定化した可溶化フェニルホスフェート。
【請求項25】
パラニトロフェニルホスフェートが、約1.0〜3.0g/lの量で存在する、請求項23に記載の安定化した可溶化フェニルホスフェート。
【請求項26】
フェニルホスフェートが、フェニルホスフェートのNa塩、NH4+塩、Mg2+塩、又は異性体である、請求項22に記載の安定化した可溶化フェニルホスフェート。
【請求項27】
緩衝剤が塩基性緩衝剤である、請求項23に記載の安定化した可溶化フェニルホスフェート。
【請求項28】
塩基性緩衝剤が、DEA、BIS−TRIS、TRIS、AMP、又はAMPDである、請求項27に記載の安定化した可溶化フェニルホスフェート。
【請求項29】
更に、マグネシウム化合物を含む、請求項22に記載の安定化した可溶化フェニルホスフェート。
【請求項30】
フェニルホスフェート、緩衝剤、及び木炭を含む、既製品酵素基質組成物。
【請求項31】
フェニルホスフェートがパラニトロフェニルホスフェートである、請求項30に記載の既製品酵素基質組成物。
【請求項32】
木炭が、約5mg/ml〜15mg/mlの量で存在する、請求項30に記載の既製品酵素基質組成物。
【請求項33】
木炭が、約10mg/mlの量で存在する、請求項32に記載の既製品酵素基質組成物。
【請求項34】
酵素基質が、約1.0g/l〜3.0g/lの量のパラニトロフェニルホスフェートである、請求項31に記載の既製品酵素基質組成物。
【請求項35】
パラニトロフェニルホスフェートが、約1.5g/lの量で存在する、請求項34に記載の既製品酵素基質組成物。
【請求項36】
請求項31に記載の既製品酵素基質組成物及び酵素を含む、酵素活性度検定のための試薬キット。
【請求項37】
酵素がアルカリ性ホスファターゼ又は酸性ホスファターゼである、請求項31に記載の試薬キット。
【請求項38】
ホスファターゼ酵素決定で用いられる水性液体基質系を製造する方法において、
(a) 緩衝水性溶媒中にフェニルホスフェートを可溶化し、フェニルホスフェート溶液を与え、
(b) 前記フェニルホスフェート溶液にマグネシウム化合物を添加し、
(c) 前記溶液を、安定化量の木炭と接触させ、そして
(d) 前記溶液を密封する、
ことを含む製造方法。
【請求項39】
フェニルホスフェートがパラニトロフェニルホスフェートである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
更に、溶液を密封する前に、溶液から実質的に全ての木炭を除去することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
塩基性緩衝剤中に入れた可溶化フェニルホスフェートを入れるための容器において、前記容器の、前記可溶化フェニルホスフェートに曝される表面上に木炭を含む容器。
【請求項42】
フェニルホスフェートがパラニトロフェニルホスフェートである、請求項41に記載の容器。
【請求項43】
400〜410nmで測定して、非酵素加水分解により0.1ODより大きな吸光度を有する可溶化フェニルホスフェートをリサイクルするためのキットにおいて、安定化量の木炭を含むキット。
【請求項44】
フェニルホスフェートがパラニトロフェニルホスフェートである、請求項43に記載のキット。
【請求項45】
安定化量の木炭が、約10mg/ml±5mg/mlの量になっている、請求項43に記載のキット。
【請求項46】
木炭が、内蔵ユニットで、そのユニット当たり約100mgの炭素を内蔵するユニットになっており、前記内蔵ユニットを、リサイクルの必要に応じ、可溶化フェニルホスフェート1ml当たり約10±5mgの木炭を与えるのに充分な量で可溶化フェニルホスフェートへ添加することができる、請求項44に記載のキット。
【請求項47】
木炭の内蔵ユニットが、ペレット、錠剤、発泡パック中に入れた錠剤、又は有孔カプセルの形態になっている、請求項46に記載のキット。

【公表番号】特表2007−512843(P2007−512843A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542699(P2006−542699)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/040177
【国際公開番号】WO2005/056816
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(506190636)バイオエフエックス ラボラトリーズ、インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】