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フェニルホスホン酸エステルからなる金属抽出剤
説明

フェニルホスホン酸エステルからなる金属抽出剤

【課題】金属、特に希土類金属を抽出又は選択分離するための溶媒抽出において、金属の分離係数が高く、水への溶解度が少ない金属抽出剤を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるフェニルホスホン酸エステルからなる、金属抽出剤。


(式中、R1は分岐炭素原子数が4〜6個であり且つ全炭素原子数が16〜20の炭化水
素基を表し、R2は水素原子、ハロゲン原子及び炭素原子数1〜3の炭化水素基からなる
群から選ばれる置換基を表し、mは1〜3の数を表し、ただしmが2〜3の場合にはR2
はそれぞれ同じでも異なっても良く、Mは水素原子又はアルカリ金属原子を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属抽出剤に関するものであり、より詳しくは、金属を抽出又は選択分離するための溶媒抽出剤として有用なフェニルホスホン酸エステルからなる金属抽出剤に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の溶媒抽出法は、水相と有機相のように互いに混じりあわない2液相間での金属の分配を利用した分離・濃縮技術である。溶媒抽出法による金属の抽出・分離法は、イオン交換による方法と比べて高濃度の金属の抽出が可能で、操業が簡便であるという特徴があり、金属の鉱石からの製錬や、種々の廃液等からの金属の回収・再使用のために用いられている。
溶媒抽出法による金属の抽出・分離法において、電荷を有し水和されている水相中の金属イオンを有機相に抽出させるための金属抽出剤の一種としてリン系の化合物が知られており、例えばジアルキルリン酸エステルであるジ−2−エチルヘキシルリン酸(D2EHPA)、ジアルキルホスホン酸エステルであるPC−88A(商品名、大八化学工業(株)製、2−エチルヘキシル−2−エチルヘキシルホスホン酸)、ジアルキルホスフィン酸エステルであるCyanex[登録商標]272(商品名、サイテック社製、ビス(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィン酸)等が工業的に用いられている。
これらリン系の化合物からなる金属抽出剤は、物理的、化学的性質が互いに似通っていることから相互分離が困難とされる希土類金属と呼ばれる元素群の抽出にも使用され得る。
【0003】
上記以外のリン系の化合物からなる抽出剤として、アルキルホスホン酸モノエステルを金属抽出剤として用いる金属の溶媒抽出が知られている(非特許文献1)。また、オクタデシル基等のアルキル基を有するフェニルホスホン酸エステルを用いた、ストロンチウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛向けの金属抽出剤が知られている(特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工業的な金属の溶媒抽出において、金属の水相から有機相への抽出工程や、有機相から水相への金属の逆抽出工程は、金属抽出剤を含む有機相を再使用することにより、繰り返し実施されている。従って金属抽出剤の水への溶解度が大きい場合、繰り返し使用時における金属抽出剤の損失が大きくなる。またこうした金属抽出剤を用いた抽出・分離工程における金属間の分離係数が小さい場合は、多段抽出操作を行うことにより高純度の金属が得られるが、抽出回数を減らすため、分離係数の大きい金属抽出剤の開発が望まれている。
上述のD2EHPAやPC−88A等の金属抽出剤は、希土類金属に対する抽出能、選択的分離能を有しているものの、抽出剤自身の水への溶解が少なくないなどの問題点がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、金属、特に希土類金属を抽出又は選択分離するための溶媒抽出において、金属の分離係数が高く、水への溶解度が少ない金属抽出剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、分岐炭素原子を含む長鎖炭化水素基を有するフェニルホスホン酸エステル系化合物が優れた金属抽出剤となることを見出し、本発明を完
成した。
【0007】
すなわち、本発明は、第1観点として、下記一般式(1)で表されるフェニルホスホン酸エステルからなる、金属抽出剤に関する。
【化1】

(式中、R1は分岐炭素原子数が4〜6個であり且つ全炭素原子数が16〜20の炭化水
素基を表し、R2はハロゲン原子及び炭素原子数1〜3の炭化水素基からなる群から選ば
れる置換基を表し、mは0〜2の数を表し、ただしmが2の場合にはR2は同じでも異な
っていても良く、Mは水素原子又はアルカリ金属原子を表す。)
第2観点として、前記mが0である、第1観点に記載の金属抽出剤に関する。
第3観点として、前記R1が下記式(2)で表される基であることを特徴とする、第1
観点に記載の金属抽出剤に関する。
【化2】

第4観点として、前記mが0である、第3観点に記載の金属抽出剤に関する。
第5観点として、前記金属抽出剤が、希土類金属用の金属抽出剤である、第1観点乃至第4観点のうち何れか一項に記載の金属抽出剤に関する。
第6観点として、前記希土類金属が、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)及びホルミウム(Ho)からなる群から選択される、第5観点に記載の金属抽出剤に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の金属抽出剤は、金属の分離係数が高く、金属の抽出能及び選択的分離能に優れた抽出剤である。
特に本発明の金属抽出剤は、互いに物理的・化学的性質が似通っていることから相互分離が困難とされる希土類金属に対しても、高い抽出能及び選択的分離能を発現することができる。
また本発明の金属抽出剤は、従来市販の金属抽出剤と比べて水溶性が低く、繰り返し使用が可能であり、工業的に非常に有利な金属抽出剤である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施例1で得られた本発明の金属抽出剤(PMF18)による希土類金属の抽出特性を示す図である。
【図2】図2は、従来品の金属抽出剤(PC−88A)による希土類金属の抽出特性を示す図である。
【図3】図3は、実施例1で得られた本発明の金属抽出剤(PMF18)による金属(マンガン、銅、コバルト、ニッケル)の抽出特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の希土類金属用金属抽出剤は、下記式(1)で表されるフェニルホスホン酸エステルより構成される。
【化3】

上記式中、R1は分岐炭素原子数が4〜6個であり且つ全炭素原子数が16〜20の炭
化水素基を表す。
2はハロゲン原子及び炭素原子数1〜3の炭化水素基からなる群から選ばれる置換基
を表す。ここで、mは0〜2の数を表し、mが2を表す場合にはR2は同じでも異なって
いてもよい。なおmは0であることが好ましい。
またMは水素原子又はアルカリ金属原子を表す。
【0011】
前記R1としては、下記式(2)で表される基であることが望ましい。
【化4】

【0012】
前記R2におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原
子が挙げられる。
2における炭素原子数1〜3の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロ
ピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基等が挙げられる。
【0013】
また、前記Mにおけるアルカリ金属原子としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)等が挙げられる。
【0014】
本発明の金属抽出剤は、上記式(1)で表されるフェニルホスホン酸エステルを非水溶性有機溶媒等の有機溶媒に溶解した溶液の形態としてもよい。すなわち、有機溶媒をさらに含む溶液形態にある金属抽出剤もまた、本発明の対象である。
この場合、使用可能な有機溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、アミルベンゼン、ジアミルベンゼン、アミルトルエン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、o−ジクロロベンゼン、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン等の芳香族系炭化水素化合物類;ケロシン、n−ペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、イソヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−デカン、n−ドデカン、シクロヘキサン、クロロホルム、テトラクロロメタン、クロロエタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、2−クロロプロパン、1,2−ジクロロプロパン、1,2,3−トリクロロプロパン、1−クロロヘキサン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、n−パラフィン等の脂肪族系炭化水素化合物類;アイソパー(エクソン モービル コーポレーション社登録商標)、ソルベッソ(エクソン モービル コーポレーション社登録商標)等の工業用希釈剤などが一例として挙げられる。また、これらの有機溶媒は1種類または2種類以上を混合して使用してもよい。
溶液形態における金属抽出剤において、フェニルホスホン酸エステルの濃度は、通常、0.05mol/L〜1.5mol/Lが好ましい。
また、有機相と水相との界面に第3相が生成したり、エマルジョンが生成したりすることを抑制するために、調節剤を添加してもよい。調節剤としては、ノニルフェノール、1−デカノール、イソデカノール、2−エチルヘキサノール、リン酸トリブチル(TBP)などが一例として挙げられる。調節剤の添加量は、通常、有機相の全量に対して3質量%〜8質量%が好ましい。
【0015】
<金属抽出剤の製造方法>
上記式(1)で表されるフェニルホスホン酸エステルは、例えばフェニルホスホン酸のジハロゲン化物と、基R1を有するアルコールとを、塩基の存在下で脱ハロゲン化するこ
とにより得られる。
上記ジハロゲン化物としては、ジフロリド、ジクロリド、ジブロミド等が挙げられるが、実用的な入手の容易性や経済性から、フェニルホスホン酸のジクロリド化合物を用いることが好ましい。
【0016】
脱ハロゲン化に際し、脱ハロゲン化水素化剤として塩基を存在させることが好ましく、例えば、トリメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン及びトリプロピルアミン等の鎖状アルキルアミン化合物;ピリジン、5−エチル−2−メチルピリジン、アニリン及びN−メチルアニリン等の芳香族アミン化合物;1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノ−5−ネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DBO)及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)等の環状アルキルアミン化合物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸水素カリウム等の金属炭酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物等が挙げられる。
【0017】
また、上記脱ハロゲン化反応では溶媒を使用するのが好ましい。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)等の脂肪族鎖状エーテル類;1,4−ジオキサン、12−クラウン−4−エーテル、15−クラウン−5−エーテル、18−クラウン−6−エーテル、ジベンゾ−18−クラウン−6−エーテル等の脂肪族環状エーテル類;アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトン化合物;酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル及びプロピオン酸エチル等の脂肪族エステル化合物;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル及びバレロニトリル等の脂肪族ニトリル化合物;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)等の脂肪族アミド化合物;ニトロメタン、ニトロエタン及びニトロプロパン等の脂肪族ニトロ化合物;ジメチルスルホキシド(DMSO)及びスルホラン等の脂肪族スルホン化合物;ヘプタン及びケロシン等の脂肪族炭化水素類;アイソパー(エクソン モービル コーポレーション社登録商標)、ソルベッソ(エクソン モービル コーポレーション社登録商標)等の工業用希釈剤などが一例として挙げられる。
上記ハロゲン化反応に際し、反応温度は−50〜150℃の範囲にて、反応時間は通常1〜30時間から適宜選択できる。
得られた生成物を適宜洗浄・精製を行い、回収する。
【0018】
<金属抽出剤の適用金属>
本発明の金属抽出剤が適用可能な金属種としては、マンガン(Mn)、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)などの金属や、希土類金属が挙げられる。
特に本発明の金属抽出剤は、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、及びランタノイドであるランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)の全17元素からなる希土類金属用の抽出剤として有用である。
上記希土類金属の中でも、本発明の金属抽出剤は、特にランタン(La)−セリウム(Ce)混合物、Ce−プラセオジム(Pr)混合物、Pr−ネオジム(Nd)混合物、ガドリニウム(Gd)−テルビウム(Tb)混合物の選択的分離能に優れるものである。
【0019】
<金属抽出剤の適用方法>
本発明の金属抽出剤を用いた金属の溶媒抽出操作は、任意の液液接触装置を用いて、水相と金属抽出剤を含む有機相とを適当な温度で一定時間、公知の手順で液液接触させ、次いで静置分離または遠心分離によって抽出剤相と水溶液相とに分離することにより行うことができる。また、有機相に抽出された金属イオンは、公知の逆抽出工程により回収することができる。液液接触装置としては、例えば多段式の液液接触装置、より具体的には向流のミキサーセトラーが挙げられ、連続法、回分法のいずれであってもよい。
また、処理温度は、抽出操作前の原料水溶液および抽出剤の温度を保持するように設定することが好ましいが、有機溶媒の引火点、相分離速度、抽出剤相の安定性などの点から、通常、20〜70℃に保つのが好ましい。
【実施例】
【0020】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0021】
[実施例1 金属抽出剤:PMF18及びPPA−(FO−180)2の合成]
2L反応フラスコにイソステアリルアルコール(日産化学工業(株)製、製品名:ファインオキソコール、グレード:FO−180、2−(4,4−ジメチルペンタン−2−イル)−5,7,7−トリメチルオクタン−1−オール、下記式(3)で表される化合物参照)を200.09g(740mmol)、5−エチル−2−メチルピリジンを94.45g(779mmol)仕込み、トルエン350mLを添加して内容物を溶解し、攪拌して0℃に冷却した。この反応溶液に、フェニルホスホニックジクロリド(日産化学工業(株)製)144.41g(741mmol)をトルエン25mLに溶解させた溶液を、氷水で0℃に冷却しながら90分かけて滴下した。その後、常温に戻しながら反応溶液を14時間間撹拌した。
その後、反応溶液を分液ロートに移し、水400mLを加え、有機相を2回洗浄した。残った有機相を2L反応フラスコに戻し、水酸化ナトリウム水溶液(6N)164gを添加し、12時間攪拌した。その後、ヘキサン400g、アセトニトリル200g、イオン交換水400gを投入して攪拌して静置し、水相を分取した。残った有機相に、ヘキサン800g、イオン交換水500gを投入して攪拌して静置し、水相を分取した。この2つの水相を混合し、ヘキサン200gを投入して攪拌して静置し、水相を分取した。残った有機相に水酸化ナトリウム水溶液(6N)12g、アセトニトリル200g、イオン交換水600gを投入して攪拌して静置し、水相を分取して、2つの水相を混合した。水相にヘキサン200g、アセトニトリル150gを加えて攪拌し、静置して水相を分取するという操作を5回繰り返して、水相Aを得た。
上記で分液した際の有機相を合わせて減圧濃縮し、ジエステル化合物であるPPA−(FO−180)2(黄色オイル)72.23g(14.7%、2−(4,4−ジメチルペ
ンタン−2−イル)−5,7,7−トリメチルオクタン−1−オール基準)を得た。
また、水相Aにトルエン650gと塩酸水溶液(6N)248gを加え、攪拌して中和し、有機相を分取した。ここにイオン交換水200gを加えて攪拌、静置、分液することで有機層を洗浄するという操作を10回繰り返し、最終的に得られた有機相を減圧濃縮して、PMF18(淡黄色オイル)214.24gを得た(収率70.6%)。
【化5】

【0022】
反応生成物のPMF18、約10mgを石英皿上に精秤し、ホットプレート上で段階的に加熱(350℃、約5分間 → 450℃、約5分間 → 540℃、約10分間)し
た後、放冷した。その後、電気炉にて550℃で約60分間熱処理した後、放冷した。ここに硝酸(関東化学製、ELグレード)を1mLと純水を適量加え、ホットプレート上にて200℃で加熱することでPMF18を溶解し、ポリプロピレン(PP)容器を用いて純水により合計量10gに希釈した。
この溶液のNa含有量について、ICP−OES装置(セイコーインスツル(株)製、Vista−PRO)により分析し、あらかじめナトリウムイオン標準液(和光純薬工業(株)製、(Naイオン:1,000mg/L))を希釈して調製した溶液で作成した検量線を用いて算出した。数回の定量分析の平均値として得られた反応生成物のPMF18のNa含有量は14ppmであった。同様に、Al、Ca、Co、Cr、Cu、Fe、K、Li、Mg、Mn、Ni、Pb、Ti、V、Znを定量したところ、いずれも10ppm以下であった。
【0023】
次に、反応生成物のPMF18、約10mgを試料ボート上に精秤し、燃焼管(三菱化学(株)製、自動試料燃焼装置:AQF−100)中で加熱(900℃)し、発生したガスを吸収液5mL(内部標準として臭化物イオン0.5ppm添加)に吸収させた。この溶液の塩化物イオン含有量について、イオンクロマト装置(ダイオネクス社製、ICS−1500)により分析し、あらかじめ塩化物イオン標準液を希釈して調製した溶液で作成した検量線を用いて算出した。数回の定量分析の平均値として得られた反応生成物のPMF18の塩化物イオン含有量は15ppm以下であった。
【0024】
得られたPMF18の1H−NMR測定結果を以下に示す。
[PMF18]
1H−NMR(300MHz,CDCl3,δppm):8.76(1H,s),7.80(2H,dd,J=6.6Hz、J=6.6Hz),7.55−7.39(3H,m),4.00−3.83(2H,m),1.81−1.62(1H,m),1.55−1.30(2H,m),1.28−0.91(8H,m),0.87−0.78(24H,m)
【0025】
得られたPPA−(FO−180)21H−NMR測定結果及び質量分析結果を以下に示す。
[PPA−(FO−180)2
1H−NMR(300MHz,CDCl3,δppm):7.84−7.77(2H,m),7.57−7.42(3H,m),4.06−3.82(4H,m),1.86−1.65(2H,m),1.55−1.33(4H,m),1.32−0.95(16H,m),0.90−0.82(48H,m)
・MS(CI) m/z:662.55
【0026】
[実施例2:水への溶解度]
実施例1で得られたPMF18と、比較としてPC−88A(大八化学工業(株)製)について、濃度が0.5mol/dm3となるようにケロシン(和光純薬工業(株)製)
を用いてそれぞれ希釈し、溶液形態の金属抽出剤を調製した。
金属抽出剤(有機相)と表1に示す所定濃度の硫酸(水相)をそれぞれ15cm3ずつ
栓付遠心分離管にいれて接触させ、縦型振盪機で15分間振盪して、遠心分離を行った。水相中の有機炭素濃度を全有機体炭素計((株)島津製作所製、TOC−VCSN)により測定した。
得られた結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
表1に示すとおり、実施例1で得られたPMF18を用いた金属抽出剤は、何れの硫酸濃度においても水相への溶解率が極めて低く、PC−88Aと比較するとその溶解率は10分の1以下であった。
【0029】
[実施例3:希土類金属の分離係数の測定]
<抽出試験方法>
PC−88A(大八化学工業(株)製)またはPMF18をケロシン(和光純薬工業(株)製)で希釈し、0.1mol/Lとなるように調製し、金属抽出剤(有機相)とした。
供試水相として、希土類酸化物を硫酸に溶解させたものを用いた。水相の初期の希土類金属イオン濃度は5×10-3mol/Lであった。
抽出操作は、10mLの供試水相と10mLの有機相とを栓付遠心分離管に採取し、縦型振盪機を用いて15分間、300rpmの振盪速度で振盪して行った。その後、遠心分離器を用いて10分間1,500rpmで両相を分離した。水溶液中に残存している金属イオン濃度は、ICP発光分析装置を用いて測定した。平衡時の有機相中の金属濃度は、初期水相金属イオン濃度と平衡水相金属イオン濃度の差として物質収支により求めた。
平衡時の有機相中の金属濃度をCMO、平衡時の水相中の金属濃度をCMAとし、各金属の分配比D(D=CMO/CMA)を用いて、各金属間の分離係数β(β=DA/DB;DA
属Aの分配比、DB 金属Bの分配比;分子及び分母はβ=1以上となるように決定)を
求めた。得られた結果を表2に示す。
また、図1に実施例1で得られたPMF18を用いた金属抽出剤による各希土類金属の抽出曲線を、図2にPC−88Aを用いた金属抽出剤による各希土類金属の抽出曲線を示す。
【0030】
【表2】

【0031】
表2に示すように、実施例1で得られたPMF18を用いた金属抽出剤は、特にランタン(La)−セリウム(Ce)混合物、Ce−プラセオジム(Pr)混合物、Pr−ネオジム(Nd)混合物、ガドリニウム(Gd)−テルビウム(Tb)混合物の分離において、PC−88Aよりも優れた分離能を有するとする結果が得られた。
【0032】
[実施例4:金属の分離係数の測定]
実施例3と同様の抽出試験方法を用いて、マンガン(Mn)、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)に関する分離係数を求めた。得られた結果を表3に示す。
また図3に、実施例1で得られたPMF18を用いた金属抽出剤による金属(マンガン、銅、コバルト、ニッケル)の抽出曲線を示す。
【0033】
【表3】

【0034】
[実施例5:Pr−Ndの分離係数の測定]
<抽出試験方法>
水相の希土類金属イオン濃度が5×10-3mol/dm3となるように、Pr611及びNd23を1mol/dm3の塩酸水溶液に溶解し、それぞれの単味溶液を供試水相とし
て用いて実験を行った。下記表4に示す抽出剤をケロシンを用いて0.1mol/dm3
に希釈したものを金属抽出剤(有機相)とした。供試水相は水酸化ナトリウム水溶液及び塩酸水溶液により種々のpHに調整した。供試水相のpHはpHメーター(堀場製作所(
株)F−54)により測定した。供試水相と有機相を遠心分離管に15cm3ずつ採取し
、縦型振盪機を用いて20分間、300rpmの振盪速度で振盪した。次いで、遠心分離機を用いて15分間、1500rpmで両相を分離した後、水相を採取し水相中の金属イオン濃度を誘導結合プラズマ発光分光光度計(ICPS−7000 ver.2、(株)島津製作所、以下ICP)により測定した。この測定値よりPr−Ndに関する分離係数βを求めた。得られた結果を表4に示す。
【0035】
【表4】

【0036】
表4に示すように、実施例1で得られたPMF18を用いた金属抽出剤は、プラセオジム(Pr)−ネオジム(Nd)の分離において、炭化水素基の全炭素原子数が18であるものの分岐炭素原子数が1個のフェニルホスホン酸エステル類、炭化水素基の全炭素原子数が8または13のフェニルホスホン酸エステル類、PC−88Aよりも優れた分離能を有するとする結果が得られた。
【0037】
[実施例6:Co−Niの分離係数の測定]
実施例5と同様の抽出試験方法を用いて、コバルト(Co)−ニッケル(Ni)に関する分離係数βを求めた。得られた結果を表5に示す。
【0038】
【表5】

【0039】
表5に示すように、実施例1で得られたPMF18を用いた金属抽出剤は、Co−Niの分離において、炭化水素基の全炭素原子数が18であるものの分岐炭素原子数が1個のフェニルホスホン酸エステル類、炭化水素基の全炭素原子数が8のフェニルホスホン酸エステル類よりも優れた分離能を有するとする結果が得られた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0040】
【特許文献1】米国特許第6,696,589号明細書
【非特許文献】
【0041】
【非特許文献1】Solvent Extraction and Ion Exchange (1990), 8(6), 759-81

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるフェニルホスホン酸エステルからなる、金属抽出剤。
【化1】

(式中、R1は分岐炭素原子数が4〜6個であり且つ全炭素原子数が16〜20の炭化水
素基を表し、R2はハロゲン原子及び炭素原子数1〜3の炭化水素基からなる群から選ば
れる置換基を表し、mは0〜2の数を表し、ただしmが2の場合にはR2は同じでも異な
っていても良く、Mは水素原子又はアルカリ金属原子を表す。)
【請求項2】
前記mが0である、請求項1に記載の金属抽出剤。
【請求項3】
前記R1が下記式(2)で表される基であることを特徴とする、請求項1に記載の金属抽
出剤。
【化2】

【請求項4】
前記mが0である、請求項3に記載の金属抽出剤。
【請求項5】
前記金属抽出剤が、希土類金属用の金属抽出剤である、請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の金属抽出剤。
【請求項6】
前記希土類金属が、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)及びホルミウム(Ho)からなる群から選択される、請求項5に記載の金属抽出剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−184503(P2012−184503A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−29500(P2012−29500)
【出願日】平成24年2月14日(2012.2.14)
【出願人】(399030060)学校法人 関西大学 (208)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】