説明

フェニル安息香酸誘導体、その調製方法、この誘導体を含む医薬品組成物、およびその治療的使用

式(1)の化合物であって、R1、R2、X、Y、およびZが説明文中に定義された通りである化合物、これら化合物を調製するための方法、異脂肪血症、アテローム性動脈硬化症、および糖尿病を治療するためのこれら化合物の使用、およびこれら化合物を含む医薬品組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異脂肪血症、アテローム性動脈硬化症、および糖尿病の治療で使用することができるフェニル安息香酸誘導体に関する。また本発明は、これらの誘導体を含む医薬品組成物と、これらの化合物の調製方法にも関する。
【0002】
さらに本発明は、異脂肪血症、アテローム性動脈硬化症、および糖尿病を治療する薬剤を製造するための、これらの化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
カロリーの不均衡による慢性的な影響は、現代社会における代謝疾患の罹患率に急激な増加をもたらしている。その結果、世界保健機関は、2型糖尿病の世界的に見た罹患率が、2030年には3億人を超えると推定している。いくつかの治療の選択肢が存在するが、そのいずれも、この病気の進行を後退させるものではない。
【0004】
絶食状態での糖化ヘモグロビンおよび血漿性糖血症の管理は、依然として抗糖尿病治療の主な目的と見なされるが、糖尿病状態が広範な代謝障害を包含することを認識することによって、将来の治療の範囲がより広くなりかつその効果が期待される。この10年間で、高血糖症は、2型糖尿病患者に影響を及ぼす一連の異常の単なる1つの要素でないことが示されてきた。インスリン抵抗性、肥満、高血圧、および異脂肪血症を含む併発症は、これらが一緒にまたは部分的に存在する場合、代謝症候群またはX症候群と記述されるものを構成する。この数多くの様々な代謝障害は、これら患者の心血管疾患の罹患率をかなり上昇させる基盤を形成する。
【0005】
糖尿病患者のための、新規な改善された治療の選択肢の調査では、ペルオキシソーム増殖因子によって活性化される受容体のファミリー(「ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体」:PPAR)が、理想的な対象である可能性があるように見える。このリガンド活性化転写因子のファミリーは、脂質および炭水化物の代謝の数多くの態様を調節し、したがって糖尿病表現型のいくつかの面を攻撃する可能性がある。3つのタイプのPPAR、すなわちPPAR α、γ、およびδ(それぞれPPARα、PPARγ、およびPPARδ)がある。
【0006】
PPARαは、脂肪酸のβ酸化の刺激に関与する。げっ歯類の場合、脂肪酸代謝に関与する遺伝子の発現においてPPARαにより伝達される変化は、ペルオキシソーム増殖の現象の基本であり、主に、げっ歯類の肝臓癌形成に至る可能性がある肝臓および腎臓に限定された多面的細胞応答である。ペルオキシソーム増殖因子の現象は、人では生じない。PPARαは、げっ歯類でのペルオキシソーム増殖におけるその役割の他に、げっ歯類およびヒトでのHDLコレステロールレベルの制御にも関与する。この作用は、少なくとも部分的には、主要HDLアポリポタンパク質、アポA−IおよびアポA−IIのPPARαによって伝達される転写調節に基づいている。フィブラートおよび脂肪酸の低グリセリド化作用もPPARαを必要とし、下記のようにまとめることができる:(i)リポタンパク質リパーゼのレベルおよびアポC−IIIのレベルの変化に起因した、残存する粒子の脂肪分解およびクリアランスの増大、(ii)細胞による脂肪酸摂取の刺激、およびその後に行われる、脂肪酸とアシル−CoAシンターゼとの結合のためのタンパク質の導入によるアシル−CoA誘導体への変換、(iii)脂肪酸のβ酸化の誘導、(iv)脂肪酸およびトリグリセリドの合成の低減、および最後に(v)VLDLの生成の低減。その結果、トリグリセリドが豊富な粒子の高い異化作用と、VLDL粒子の低い分泌とは共に、フィブレートの低脂質化作用に貢献するメカニズムを構成する。
【0007】
それぞれがPPARαリガンドおよび/または活性化因子であるクロフィブラートやフェノフィブラート、ベンザフィブラート、シプロフィブラート、ベクロフィブラート、およびエトフィブラートなどのフィブリック酸誘導体とゲムフィブロジルも、血漿性トリグリセリドのかなりの減少をもたらし、またHDLにはある一定の増加をもたらす。LDLコレステロールに対する作用は相反するものであり、化合物および/または異脂肪血症表現型に左右される可能性がある。これらの理由により、この種類の化合物を、高トリグリセリド血症(すなわちフレドリクソンIVおよびV型)および/または混合型異脂肪血症の治療に最初に使用した。
【0008】
PPARδの活性化は、当初、グルコースのレベルまたはトリグリセリドのレベルの調節に関与しないことが報告された(Berger他,J.Biol.Chem.,(1999),Vol.274,第6718〜6725頁)。その後、PPARδの活性化は、dbldbマウスにおいて、より高いレベルのHDLコレステロールに至ることが示された(Leibowitz他,FEBS Letters,(2000),473,333〜336)。さらにPPARδ作用薬は、これを肥満の成体インスリン抵抗性アカゲザルに投与する間に、血清中のHDLコレステロールに劇的な用量依存的増加を引き起こしたが、それと同時に、トリグリセリドおよびインスリンを欠乏させることによって低密度LDLのレベルを減少させた(Oliver他,PNAS,(2001),98,5306〜5311)。同じ文献は、PPARδの活性化によって、コレステロールのATP逆輸送体に結合するAIカセットが増加し、アポタンパク質A1に特異的なコレステロールの流動を引き起こすことも示していた。総合すれば、これらの観察内容は、PPARδの活性化が治療に有用であり、アテローム性動脈硬化症、高トリグリセリド血症、および混合型異脂肪血症を含めた疾患および心血管状態を予防することを示唆している(PCT公開WO 01/00603(Chao他))。
【0009】
PPARγ受容体のサブタイプは、脂肪細胞分化のプログラムの活性化に関与し、肝臓のペルオキシソーム増殖の刺激には関与していない。PPARγタンパル質の2つの知られているアイソフォーム:PPARγ1およびPPARγ2が存在し、これらは、PPARγ2がアミノ末端に28の追加のアミノ酸を含有する点だけが異なっている。ヒトアイソタイプのDNA配列は、Elbrecht他,BBRC,224,(1996),431〜437により記述されている。マウスでは、PPARγ2が、脂肪細胞中で特異的に発現する。Tontonoz他,Cell,79,(1994),1147〜1156は、PPARγ2の1つの生理的役割が、脂肪細胞分化の誘発であることを示す証拠を提供する。核ホルモン受容体のスーパーファミリーのその他のメンバーと同様に、PPARγ2は、例えば応答遺伝子の5’側方領域での、その他のタンパク質との相互作用およびホルモン応答要素との結合を介して遺伝子の発現を調節する。PPARγ2応答遺伝子の例は、組織特異的なP2脂肪細胞遺伝子である。フィブラートおよび脂肪酸を含むペルオキシソーム増殖因子は、PPAR受容体の転写活性を活性化するが、プロスタグランジンJ2誘導体だけが、PPARγサブタイプの潜在的な天然リガンドであり、高親和性を有する抗糖尿病性チアゾリジンジオン剤を結合することも確認されている。
【0010】
一般に、グリタゾンは、上述の生物種に関するある転写要素を制御することにより、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)のファミリーの受容体に結合することによって、その効果を発揮すると考えられる。Hulin他,Current Pharm.Design,(1996),2,85〜102を参照されたい。特にPPARγは、グリタゾンクラスのインスリン感作物質の主要な分子標的と見なされている。
【0011】
PPAR作動薬であるグリタゾンタイプの多くの化合物は、糖尿病治療での使用が承認されている。これらは、全てがPPARγの主要なまたは排他的な作動薬であるトログリタゾン、ロシグリタゾン、およびピオグリタゾンである。
【0012】
これは、様々な程度のPPARα、PPARγ、およびPPARδの活性化を有する化合物の探索によって、2型糖尿病や異脂肪血症、X症候群(代謝症候群、すなわち低いグルコース耐性、インスリン抵抗性、高グリセリド血症、および/または肥満を含む)、心血管疾患(アテローム性動脈硬化症を含む)、および高コレステロール血症などの疾患の治療において大きな可能性を示す、トリグリセリドおよび/またはコレステロールおよび/またはグルコースを効率的に低下させる薬剤の発見に至る可能性があることを示している。
【0013】
最大規模で研究されているPPAR活性の組合せは、特にテサグリタザルとのPPARαおよびγの組合せ(デュアル作動薬)と、α、γ、およびδの3重の組合せ(PPARpan作動薬)である。
【0014】
グリタゾンはNIDDMの治療に有益であるが、これら化合物の使用に関連したいくつかの重篤な好ましくない副作用がわかっている。これらのうち最も重篤なものは、肝臓に対する毒性であり、ある程度の死亡をもたらすものであった。最も深刻な問題は、トログリタゾンを使用する際に生じ、最近ではその毒性が原因で市場から排除されている。
【0015】
グリタゾンの潜在的な肝毒性の他に、その他の有害な影響は、PPARγ完全作動薬に関連しており、例えば体重増加、貧血、および浮腫があり、したがってその使用が限定される(ロシグリタゾン、ピオグリタゾン)。
【0016】
グリタゾンで生じている問題が原因で、多くの研究室の研究者は、グリタゾンではなくかつ1,3−チアゾリジンジオン種を含有せずに、PPARの3種の既知のサブタイプを一緒にまたは別々に様々な程度に調節するPPAR作動薬の種類について研究してきた(内在する力、機能的応答の最大幅、または遺伝子発現における変化の範囲によって測定される)。
【0017】
このように、最近の研究では(WO 01/30343およびWO 02/08188参照)、ある化合物がPPAR作動薬または部分作動薬としての性質を有し、2型糖尿病の治療に有用であり、心重量および体重に対する副作用が低減されることが明らかにされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
そこで本発明者等は、PPARαおよび/またはPPARδの活性の程度が異なっている、PPARγの部分または完全作動薬である新規な種類の化合物を発見した。
【0019】
より具体的には、本発明は、下記の式(1)のフェニル安息香酸ベースの化合物、可能性あるその光学異性体、酸化物形態、および溶媒和物、さらに医薬品として許容される、酸または塩基とのその付加塩に関する
【0020】
【化1】

【0021】
(式中、R1は、−O−R’1または−NR’1R”1を表し、ただしR’1およびR”1は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、およびヘテロアリール基から選択され;
2は、
・アルキル、アルケニル、またはアルキニル基;
・任意選択で置換されたアリールアルキル基;および
・任意選択で置換されたヘテロシクリルアルキル基
から選択され;
[空白]は、酸素原子および硫黄原子から選択され;
X、Y、およびZは、同一でも異なっていてもよく、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、およびアルコキシ基から選択され;あるいはXおよびYは、これらが担持する炭素原子と一緒になって、ケトン官能基を含有する5員環を形成する)。
【0022】
式(1)の化合物の塩の形成に使用することができる酸は、鉱酸または有機酸である。得られる塩は、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、2水素リン酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、およびパラ−トルエンスルホン酸塩である。
【0023】
式(1)の化合物の塩の形成に使用することができる塩基は、有機塩基またはミネラル塩基である。得られる塩は、例えば金属で、特にアルカリ金属、アルカリ土類金属、および遷移金属(ナトリウムやカリウム、カルシウム、マグネシウム、またはアルミニウムなど)で、または塩基で、例えばアンモニアまたは第2級または第3級アミン(ジエチルアミンやトリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジン、またはモルホリンなど)で、または塩基性アミノ酸で、またはオサミン(メグルミンなど)で、またはアミノアルコール(3−アミノブタノールや2−アミノエタノールなど)で形成された塩である。
【0024】
本発明は特に、医薬品として許容される塩を包含するが、キラルアミンまたはキラル酸により得られた塩など、式(1)の化合物の適切な分離または結晶化を可能にする塩も包含する。
【0025】
使用することができるキラルアミンの例には、キニン、ブルシン、(S)−1−(ベンジルオキシメチル)プロピルアミン(III)、(−)−エフェドリン、(4S,5R)−(+)−1,2,3,4−テトラメチル−5−フェニル−1,3−オキサゾリジン、(R)−1−フェニル−2−p−トリルエチルアミン、(S)−フェニルグリシノール、(−)−N−メチルエフェドリン、(+)−(2S,3R)−4−ジメチル−アミノ−3−メチル−1,2−ジフェニル−2−ブタノール、(S)−フェニルグリシノール、および(S)−α−メチル−ベンジルアミン、またはこれらの2種以上の混合物が含まれる。
【0026】
使用することができるキラル酸の例には、(+)−d−ジ−O−ベンゾイル酒石酸、(−)−l−ジ−O−ベンゾイル酒石酸、(−)−ジ−O,O’−p−トルイル−l−酒石酸、(+)−ジ−O,O’−p−トルイル−d−酒石酸、(R)−(+)−リンゴ酸、(S)−(−)−リンゴ酸、(+)−カンファン酸、(−)−カンファン酸、R−(−)−1,1’−ビナフタレン−2,2’−ジイル水素ホスフェート、(S)−(+)−1,1’−ビナフタレン−2,2’−ジイル水素ホスフェート、(+)−樟脳酸、(−)−樟脳酸、(S)−(+)−2−フェニルプロピオン酸、(R)−(−)−2−フェニルプロピオン酸、d−(−)−マンデル酸、l−(+)−マンデル酸、d−酒石酸、およびl−酒石酸、またはこれらの2種以上の混合物が含まれる。
【0027】
キラル酸は、(−)−ジ−O,O’−p−トルイル−l−酒石酸、(+)−ジ−O,O’−p−トルイル−d−酒石酸、(R)−(−)−1,1’−ビナフタレン−2,2’−ジイル−水素ホスフェート、(S)−(+)−1,1’−ビナフタレン−2,2’−ジイル−水素ホスフェート、d−酒石酸、およびL−酒石酸、またはこれらの2種以上の混合物から選択することが好ましい。
【0028】
また本発明は、式(1)の化合物の、可能性ある光学異性体、特に、適切な場合には立体異性体およびジアステレオ異性体も包含し、ラセミ混合物を含めた任意の比率の光学異性体の混合物も包含する。
【0029】
置換基の性質に応じて、式(1)の化合物は、やはり本発明に含まれる様々な互変異性型を単独で有するものであり、またはこれらの2種以上をあらゆる比率で含む混合物として含むこともできる。
【0030】
上記式(1)の化合物は、これら化合物のプロドラッグも含む。
【0031】
「プロドラッグ」という用語は、患者に投与されると生体によって化学的および/または生物学的に式(1)の化合物に変換される化合物を意味する。
【0032】
上記定義された式(1)の化合物では、「アルキル基」という用語は、1から10個の炭素原子、さらに良好な場合には1から6個の炭素原子、例えば1から4個の炭素原子を含有する、直線状または分枝状の炭化水素ベースの鎖を意味する。
【0033】
アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、2−メチルブチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、ネオヘキシル、1−メチルペンチル、3−メチルペンチル、1,1−ジ−メチルブチル、1,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、1−メチル−1−エチルプロピル、ヘプチル、1−メチルヘキシル、1−プロピルブチル、4,4−ジメチルペンチル、オクチル、1−メチルヘプチル、2−メチルヘキシル、5,5−ジメチルヘキシル、ノニル、デシル、1−メチルノニル、3,7−ジメチル−オクチル、および7,7−ジメチルオクチルであり、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、2−メチルブチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、ネオヘキシル、1−メチルペンチル、3−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、1−メチル−1−エチルプロピルであり、より好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチルである。
【0034】
本発明による式(1)の化合物の置換基として存在するアルキル基は、任意選択で、
−ハロゲン原子;
− −O−アルキル基;
−アリール基;
−シクロアルキル基;および
−複素環基
から選択された1種または複数の化学種によって置換することができる。
【0035】
「アルコキシ」という用語は、基アルキル−O−を指し、ここで「アルキル」という用語は、上記定義された特徴の全てを有する。
【0036】
「アリールアルキル」という用語は、アルキル部分が上記定義された通りであり、アリール部分が、6から18個の炭素原子、好ましくは6から10個の炭素原子を含有する単環または多環式の炭素環式芳香族基を示す基を指す。挙げることができるアリール基には、フェニル、ナフチル、アントリル、およびフェナントリル基が含まれる。
【0037】
「アルケニル基」という用語は、2重結合の形をとる1つ、2つ、またはそれ以上の不飽和状態を含有する、2から10個の炭素原子、好ましくは2から8個の炭素原子、有利な場合には2から6個の炭素原子を含有する、直線状または分枝状の炭化水素ベースの鎖であって、ハロゲン原子、およびトリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、カルボキシル、およびオキソ基から選択された、同一でも異なっていてもよい1個または複数の置換基により任意選択で置換された鎖を意味する。
【0038】
挙げることができるアルケニル基の例には、エチレニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブト−2−エニル基、ペンテニル基、およびヘキセニル基が含まれる。
【0039】
「アルキニル基」という用語は、3重結合の形をとる1つ、2つ、またはそれ以上の不飽和状態を含有する、2から10個の炭素原子、好ましくは2から8個の炭素原子、有利な場合には2から6個の炭素原子を含有する、直線状または分枝状の炭化水素ベースの鎖であって、ハロゲン原子、およびトリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、カルボキシル、およびオキソ基から選択された、同一でも異なっていてもよい1個または複数の置換基により任意選択で置換された鎖を意味する。
【0040】
挙げることができるアルキニル基の例には、エチニル基、プロピニル基、ブト−2−イニル基、ペンチニル基、およびヘキシニル基が含まれる。
【0041】
本発明では、シクロアルキル基は、任意選択で2重および/または3重結合の形をとる1つまたは複数の不飽和状態を含有する、4から9個の炭素原子、好ましくは5、6、または7個の炭素原子、有利な場合には5または6個の炭素原子を含有する環状の炭化水素ベースの基であって、ハロゲン原子、およびアルキル、アルケニル、アルキニル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、カルボキシル、およびオキソ基から選択された、同一でも異なっていてもよい1個または複数の置換基により任意選択で置換されたシクロアルキル基を意味するように解釈される。
【0042】
シクロアルキル基の好ましい例は、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、およびシクロヘプタジエニルである。
【0043】
他に特に指示しない限り、ヘテロシクリルアルキル基の複素環部分は、一般にO、S、およびNから選択された1個または複数のヘテロ原子を含有して任意選択で酸化形態をとり(SおよびNの場合)、また任意選択で2重結合の形をとる1つまたは複数の不飽和状態を含有する、飽和、不飽和、または芳香族の5から8員複素環基に相当する。
【0044】
ヘテロ環を構成する単環の少なくとも1つは、1から4個の環内ヘテロ原子、さらに良好な場合には1から3個のヘテロ原子を含有することが好ましい。
【0045】
複素環は、それぞれが5から8員である1個または複数の単環からなることが好ましい。
【0046】
5から8員の単環の芳香族複素環基の例は、ピリジンやフラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、チアゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、フラザン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、チアジン、オキサゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、およびチアゾールなど、芳香族複素環からの水素原子の除去によって得られたヘテロアリール基である。
【0047】
挙げることができる好ましい芳香族複素環基には、ピリジル、ピリミジニル、トリアゾリル、チアジアゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、およびチエニル基が含まれる。
【0048】
各単環が5から8員である2環式ヘテロアリールの例は、インドリジン、インドール、イソインドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾフラザン、ベンゾチオフラザン、プリン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、ピラゾロトリアジン(ピラゾロ−1,3,4−トリアジンなど)、ピラゾロピリミジン、およびプテリジンから選択される。
【0049】
挙げることができる好ましいヘテロアリール基には、キノリル、ピリジル、ベンゾチアゾリル、およびトリアゾリル基が含まれる。
【0050】
各単環が5から8員である3環式ヘテロアリールは、例えばアクリジン、フェナジン、およびカルバゾールから選択される。
【0051】
飽和または不飽和の5から8員単環複素環は、上述の芳香族複素環の、飽和した、またはそれぞれが不飽和の誘導体である。
【0052】
より具体的には、モルホリン、ピペリジン、チアゾリジン、オキサゾリジン、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロフリル、ピロリジン、イソキサゾリジン、イミダゾリジン、およびピラゾリジンを挙げることができる。
【0053】
上記にて定義された基が、「任意選択で置換された」によって修飾される場合、この基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、スチリル、単環式、2環式、または3環式芳香族複素環基であってO、N、およびSから選択された1個または複数のヘテロ原子を含有する基から選択され、任意選択で、以下に定義される1個または複数の基T;基Het−CO−であって、Hetが、任意選択で1個または複数の基Tにより置換された上記にて定義された芳香族複素環基を表す基;C1〜C6アルキレン鎖;C1〜C6アルキレンジオキシ鎖;ニトロ;シアノ;(C1〜C10)アルキル;(C1〜C10)アルキルカルボニル;(C1〜C10)アルコキシカルボニル−A−であって、Aが、(C1〜C6)アルキレン、(C2〜C6)アルケニレン、または結合を表す基;(C3〜C10)シクロアルキル;トリフルオロメトキシ;ジ(C1〜C10)アルキルアミノ;(C1〜C10)アルコキシ(C1〜C10)アルキル;(C1〜C10)アルコキシ;1個または複数の基Tにより任意選択で置換された(C6〜C18)アリール;(C6〜C18)アリール(C1〜C10)アルコキシ(CO)n−であって、nが0または1であり、アリールが、任意選択で1個または複数の基Tにより置換された基;(C6〜C18)アリールオキシ−(CO)n−であって、nが0または1であり、アリールが、任意選択で1個または複数の基Tにより置換された基;(C6〜C18)アリールチオであって、アリールが任意選択で1個または複数の基Tにより置換された基;(C6〜C18)アリールオキシ(C1〜C10)アルキル(CO)n−であって、nが0または1であり、アリールが任意選択で1個または複数の基Tにより置換された基;任意選択で1個または複数の基Tにより置換された、O、N、およびSから選択された1個または複数のヘテロ原子を含有する飽和または不飽和の5から8員の単環式複素環またはヘテロシクリルアルキル基;任意選択で1個または複数の基Tにより置換された(C6〜C18)アリールカルボニル;(C6〜C18)アリールカルボニル−B−(CO)n−であって、nが0または1である基;Bは、(C1〜C6)アルキレンまたは(C2〜C6)アルケニレンを表し、アリールは任意選択で1個または複数の基Tにより任意選択で置換され;(C6〜C18)アリール−C−(CO)nであって、nが0または1であり、Cが、(C1〜C6)アルキレンまたは(C2〜C6)アルケニレンを表し、アリールが、任意選択で1個または複数の基Tにより選択された基;任意選択で1個または複数の基Tにより置換された、上記にて定義された飽和または不飽和複素環と縮合した(C6〜C18)アリール;および(C2〜C10)アルキニルにより置換された1個または複数の置換基を含有することができる。
【0054】
Tは、ハロゲン原子;(C6〜C18)アリール;(C1〜C6)アルキル;(C1〜C6)アルコキシ;(C1〜C6)アルコキシ(C6〜C18)アリール;ニトロ;カルボキシル;(C1〜C6)アルコキシカルボキシルから選択され;Tは、飽和または不飽和複素環で置換する場合にはオキソを表すことができ;あるいはTは、(C1〜C6)アルコキシカルボニル(C1〜C6)アルキル;または(C1〜C6)アルキルカルボニル((C1〜C6)アルキル)n−であってnが0または1である基を表す。
【0055】
「ハロゲン原子」という用語は、塩素、臭素、ヨウ素、またはフッ素原子を意味し、好ましくはフッ素または塩素である。
【0056】
式(1)の化合物の中で、好ましいものはR1が−O−R’1を表すものであり、最も好ましくはR1が−O−R’1を表し、R’1が水素原子またはアルキル基であるものである。
【0057】
本発明の化合物の第1の好ましい群は、下記の特徴、すなわち:
1が、−O−R’1を表し、R’1は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、およびヘテロアリール基から選択され;
2が、アルキル基、任意選択で置換されたベンジル基、および任意選択で置換されたヘテロシクリルアルキル基から選択され;
同一でも異なっていてもよいXおよびYが、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、およびアルコキシ基から選択され;あるいはXおよびYが、これらが担持する炭素原子と一緒になって、ケトン官能基を含有する5員環を形成し;
Zが、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、およびアルコキシ基から選択される
という特徴の、1つまたは複数を別々に有する化合物、あるいは上記の特徴の1つ、いくつか、または全ての組合せを有する化合物、可能性あるその光学異性体、酸化物形態、および溶媒和物、医薬品として許容される、酸または塩基とのその付加塩とからなる。
【0058】
本発明の化合物の、別のさらに好ましい群は、下記の特徴、すなわち:
1が、−O−R’1を表し、R’1は水素原子およびアルキル基から選択され;
2が、アルキル基、任意選択で置換されたベンジル基、および任意選択で置換されたヘテロシクリルアルキル基から選択され;
同一でも異なっていてもよいXおよびYが、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、およびアルコキシ基から選択され;あるいはXおよびYが、これらが担持する炭素原子と一緒になって、ケトン官能基を含有する5員環を形成し;
Zが、水素原子およびハロゲン原子から選択される
という特徴の、1つまたは複数を別々に有する化合物、あるいは上記の特徴の1つ、いくつか、または全ての組合せを有する化合物、可能性あるその光学異性体、酸化物形態、および溶媒和物、医薬品として許容される、酸または塩基とのその付加塩とからなる。
【0059】
本発明の化合物の、別の好ましい群は、下記の特徴、すなわち:
1が、−O−R’1を表し、R’1は水素原子、メチル基、およびエチル基から選択され;
2が、アルキル基、任意選択で置換されたベンジル基、および任意選択で置換されたヘテロシクリルアルキル基から選択され;
同一でも異なっていてもよいXおよびYが、互いに独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基、およびメトキシ基から選択され;あるいはXおよびYが、これらが担持する炭素原子と一緒になって、シクロペンテノン環を形成し;
Zが、水素原子、フッ素原子、および塩素原子から選択される
という特徴の、1つまたは複数を別々に有する化合物、あるいは上記の特徴の1つ、いくつか、または全ての組合せを有する化合物、可能性あるその光学異性体、酸化物形態、および溶媒和物、医薬品として許容される、酸または塩基とのその付加塩とからなる。
【0060】
式(1)の化合物に関し、上記にて定義された基における可能性ある置換基は、好ましくはハロゲン原子から選択され、好ましくはフッ素および/または塩素、およびメチル、エチル、メトキシ、フェニル、トリフルオロメチル、およびトリフルオロメトキシ基である。
【0061】
複素環基は、フリル、チエニル、ピロリル、ピリジル、トリアゾリル、オキサゾリジニル、チアゾリル、オキサジアゾリル、およびオキサゾリル基から優先的に選択される。
【0062】
より具体的には、好ましい式(1)の化合物は、
・ 4−[6−(5−メチル−2−フェニルオキサゾール−4−イルメトキシ)−1−オキソインダン−5−イル]安息香酸;
・ 4−[1−オキソ−6−(4−トリフルオロメチルベンジルオキシ)インダン−5−イル]安息香酸;
・ 4−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−1−オキソインダン−5−イル]安息香酸;
・ 5’−メトキシ−2’−(5−メチル−2−フェニルオキサゾール−4−イルメトキシ)ビフェニル−4−カルボン酸;
・ 5’−メチル−2’−(5−メチル−2−フェニルオキサゾール−4−イルメトキシ)ビフェニル−4−カルボン酸;
・ 4−[6−(5−メチルイソオキサゾール−3−イルメトキシ)−1−オキソインダン−5−イル]安息香酸;
・ 4−[6−(5−メチル−2−フェニル−2H−[1,2,3]トリアゾール−4−イルメトキシ)−1−オキソインダン−5−イル]安息香酸;
・ 4−[1−オキソ−6−(2−チオフェン−2−イルチアゾール−4−イルメトキシ)インダン−5−イル]安息香酸;および
・ 4−[6−(5−メチル−3−フェニルイソオキサゾール−4−イルメトキシ)−1−オキソインダン−5−イル]安息香酸;
から、およびこれら化合物の、可能性ある光学異性体、酸化物形態、および溶媒和物と、医薬品として許容される酸または塩基との付加塩から選択される。
【0063】
本発明は、医薬品として有効な量の、上記にて定義された式(1)の少なくとも1種の化合物を、1種または複数の医薬品として許容されるビヒクルと組み合わせて含んだ医薬品組成物にも関する。
【0064】
これらの組成物は、即時放出または制御放出を行うための錠剤、ゲルカプセル、または顆粒の形で経口的に、あるいは注射可能な溶液形で静脈内から、あるいは接着性経皮手段の形で経皮的に、あるいは溶液、クリーム、またはゲルの形で局所的に投与することができる。
【0065】
経口投与のための固体組成物は、活性成分に充填剤を添加することによって調製され、適切な場合には結合剤、崩壊剤、潤滑剤、染料、または調味料を添加することによって、またこの混合物を錠剤、コーティング付き錠剤、顆粒、粉末、またはカプセルに形成することによって調製される。
【0066】
充填剤の例には、ラクトース、コーンスターチ、スクロース、グルコース、ソルビトール、結晶セルロース、および二酸化ケイ素が含まれ、結合剤の例には、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルエーテル)、エチルセルロース、メチルセルロース、アカシア、トラガカントゴム、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、クエン酸カルシウム、デキストリン、およびペクチンが含まれる。潤滑剤の例には、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、および硬化植物油が含まれる。染料は、薬剤での使用が認められている任意の染料にすることができる。調味料の例には、ココアパウダー、ハーブの形をしたミント、芳香パウダー、油の形をしたミント、ボルネオール、およびシナモンパウダーが含まれる。言うまでもなく、錠剤または顆粒は、砂糖またはゼラチンなどで適切にコーティングすることができる。
【0067】
活性成分として本発明の化合物を含む注射可能な形態は、適切な場合、前記化合物とpH調節剤、緩衝液、懸濁剤、可溶化剤、安定剤、等張剤、および/または保存剤とを混合することによって、またこの混合物を、標準的なプロセスに従い静脈内、皮下、または筋肉内注射のための形態に変換することによって、調製することができる。適切な場合、得られた注射可能な形態は、標準的なプロセスを介して凍結乾燥することができる。
【0068】
懸濁剤の例には、メチルセルロース、ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセルロース、アカシア、粉末化トラガカントゴム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびポリエトキシル化モノラウリン酸ソルビタンが含まれる。
【0069】
可溶化剤の例には、ポリオキシエチレンで凝固されたヒマシ油、ポリソルベート80、ニコチンアミド、ポリエトキシル化モノラウリン酸ナトリウム、およびヒマシ油脂肪酸のエチルエステルが含まれる。
【0070】
さらに安定剤は、亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウム、およびエーテルを包含し、一方、保存剤は、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、およびクロロクレゾールを包含する。
【0071】
また本発明は、異脂肪血症、アテローム性動脈硬化症、および糖尿病を予防または治療する薬剤を調製するための、本発明の式(1)の化合物の使用にも関する。
【0072】
PPAR活性の調節によって引き起こされ、またはそのような調節に関連した疾患、状況、または状態の予防または治療が意図される、本発明の化合物の有効投与用量および薬量は、多数の要因、例えば作動薬の性質、患者のサイズ、望まれる治療目的、治療すべき病状の性質、使用される特定の医薬品組成物、治療する医師の知見および結論に左右される。
【0073】
例えば経口投与の場合、例えば錠剤またはゲルカプセルでは、式(1)の化合物の可能性ある適切な投薬量は、活性物質が1日当たり約0.1mg/kg体重から約100mg/kg体重の間であり、好ましくは1日当たり約0.5mg/kg体重から約50mg/kg体重の間であり、より優先的には1日当たり約1mg/kg体重から約10mg/kg体重の間であり、より好ましくは、1日当たり約2mg/kg体重から約5mg/kg体重の間である。
【0074】
使用することができかつ上述のような、1日の経口投薬量範囲を例示するのに10kgおよび100kgという代表的な体重が考えられる場合、式(1)の化合物の適切な投薬量は、好ましい化合物を含む活性物質が、1日当たり約1〜10mgおよび1000〜10000mgの間になり、好ましくは1日当たり約5〜50mgおよび500〜5000mgの間、より好ましくは1日当たり約10.0〜100.0mgおよび100.0〜1000.0mgの間、さらにより優先的には1日当たり約20.0〜200.0mgおよび約50.0〜500.0mgの間になる。
【0075】
これらの投薬量範囲は、所与の患者に対する1日当たりの活性物質の総量を表す。ある用量を投与する1日当たりの投与回数は、異化作用およびクリアランスの速度を反映する活性物質の半減期などの、薬物動態学的および薬理学的要素の関数として、また患者の血漿またはその他の体液中で到達されかつ治療効果に必要とされる、前記活性物質の最小および最適レベルの関数として、広い割合で変えることができる。
【0076】
多くのその他の要素も、毎日の投与回数および一度に投与すべき活性物質の量を決定するに際して考慮すべきである。これらのその他の要素には、治療すべき患者の個々の応答が含まれるが、これに留まるものではない。
【0077】
本発明は、式(2)の化合物から式(1)の化合物を調製するための、全体的な方法にも関し
【0078】
【化2】

【0079】
(式中、X、Y、およびZは上記にて定義した通りである)、
式(2)の化合物を、パラジウム(II)塩、例えば塩化ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)などの触媒の存在下、水酸化ヒドラジニウムおよびリン酸三ナトリウムの存在下で、極性プロトン性媒体中、例えば水中で、任意選択で共溶媒の存在下、例えばテトラヒドロフランの存在下で、式(3)のボロン酸の作用にかけることにより、
【0080】
【化3】

【0081】
式(4)の化合物が得られ
【0082】
【化4】

【0083】
(式中、X、Y、およびZは上記にて定義した通りである)、
式(4)の化合物のメトキシ基を、標準的な技法に従って、例えばルイス酸、例えば三塩化アルミニウムの存在下でアルコール官能基に変換することにより、式(5)の化合物が得られ
【0084】
【化5】

【0085】
(式中、X、Y、およびZは上記にて定義した通りである)、
次いで酸官能基を保護するために、例えばテトラヒドロフラン中、硫酸などの強酸の存在下で通常の手順に従って、式RA−OHのアルコール、すなわちRAが1から4個の炭素原子を含有する直線状または分枝状アルキル基、例えばメタノールを表すアルコールとエステル化することによって、式(6)のエステルが得られ
【0086】
【化6】

【0087】
(式中、RA、X、Y、およびZは上記にて定義した通りである)、
次いで式(6)の化合物を、極性非プロトン性媒体中、例えばアセトンまたはジメチルホルムアミド(DMF)溶媒中で、アルカリ金属炭酸塩、例えば炭酸カリウムまたは炭酸セシウムなどの塩基の存在下、任意選択でアルカリ金属ハロゲン化物、例えばヨウ化カリウムなどの活性化因子の存在下で、式Hal−R2のハロゲン化物、すなわちHalがハロゲン原子を表し、有利な場合には塩素、臭素、またはヨウ素を表し、好ましくは塩素を表し、かつR2が上記にて定義した通りであるハロゲン化物の作用にかけることによって、式(7)の化合物が得られ
【0088】
【化7】

【0089】
(式中、RA、R2、X、Y、およびZは上記にて定義した通りである)、
次いでその保護基RAを、当業者に知られている標準的な技法に従って除去することにより、R1がヒドロキシル基を表す式(1)の化合物の特殊な場合である式(1OH)の酸が得られ、
【0090】
【化8】

【0091】
この酸を、やはり標準的な技法に従って任意選択でエステル化しまたは対応するアミドに変換することにより、R1がヒドロキシル基以外のものである式(1)の化合物の組を形成する。
【0092】
上記式(7)の化合物は、Rがアルキル基を表す場合、本発明による式(1)の化合物の一部を形成することを理解すべきである。
【0093】
そのような化合物が望まれる場合、酸官能基の脱保護とその後のエステル化のステップは、不要である。
【0094】
1つの変形例によれば、上記にて定義された式(2)の化合物から、当業者に知られている標準的な方法に従って得ることができる式(2a)の化合物は
【0095】
【化9】

【0096】
(式中、X、Y、およびZは上記にて定義した通りである)、E.Negishi他,J.Org.Chem.,42,(1977),1821により記述される操作条件下、例えば極性溶媒中、好ましくはジメチルホルムアミド中で、触媒、例えば塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)の存在下で、上記にて定義された式(7)の化合物、次いで上記にて定義された式(1OH)の酸、および任意選択による対応するエステルおよびアミドを得るために、
まず、式(8)の中間体を得るために、ホスフィンの存在下、上記にて定義されたハロゲン化物Hal−R2あるいはアルコールOH−R2の作用の下で基R2を導入し
【0097】
【化10】

【0098】
(式中、R2、X、Y、およびZは上記にて定義した通りである)、
次いで式(9)の有機金属剤の作用の下、臭素原子を置換することによって、式(1)の化合物を形成するための出発化合物として働くことができる
【0099】
【化11】

【0100】
(式中、Halはハロゲン原子、例えば塩素、臭素、またはヨウ素を表し、好ましくはヨウ素であり、Mは、金属、好ましくは亜鉛を表し、RAは、上記にて定義した通りであり、例えばエチル基を表す)。
【0101】
1が−OHを表す式(1)の化合物は、有利な場合、R1がアルコキシ基を表す対応する式(1)の化合物の鹸化によって、あるいはRがアルキル基を表す式(7)の化合物で開始することによって、得ることができる。鹸化は、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、および炭酸カリウムから選択されたミネラル塩基などの塩基の作用を介して行うことができる。使用される塩基のモル量は、選択した塩基の強度に応じて、一般に1から20当量におよび、好ましくは1から12当量に及ぶ。
【0102】
反応は、極性プロトン性タイプの溶媒中で行うことが好ましく、エタノールと水、またはメタノールと水の混合物のような、低級(C1〜C4)アルカノールと水の混合物中がより好ましい。
【0103】
反応温度は、35°から120℃に及ぶことが有利であり、40°から100℃の間がさらに良好であり、例えば50℃から還流状態の間である。
【0104】
上述の方法では、調製することが望まれる式(1)の化合物中に存在する様々な置換基に応じて、操作条件を実質的に変えることができることを理解すべきである。そのような変形例および適応例は、当業者なら、例えば科学的考察、特許文献、ケミカルアブストラクト、およびインターネットも含めたコンピュータデータベースから容易に入手可能である。同様に出発材料は、市販されており、または例えば、上述の様々な文献およびデータベース中で当業者が容易に見出すことができる合成によって入手可能である。
【0105】
式(1)の化合物の光学異性体は、一方では、式(1)の化合物のラセミ混合物から開始して、当業者に知られている異性体の分離および/または精製のための標準的な技法を介して得ることができる。光学異性体は、光学的に活性な出発化合物の立体選択的合成を介して、あるいは式(1)の化合物の光学的に活性な塩、すなわちキラルアミンまたはキラル酸で得られた塩の、分離または再結晶を介して直接得ることもできる。
【0106】
同様に、可能性ある医薬品として許容される、酸または塩基との付加塩と、可能性ある酸化物形態、特にN−酸化物は、この分野で通常使用されている操作技法に従って、式(1)の化合物から容易に入手可能である。
【0107】
以下の実施例は、本発明をどのようにも限定することなく、本発明を例示する。これらの実施例およびプロトン核磁気共鳴データ(300MHz NMR)では、以下の略語を使用した:sは1重項、dは2重項、tは3重項、qは4重項、oは8重項、およびmは多重項。化学シフトδは、ppmで表す。
【0108】
実施例
実施例1:4−{6−[2−(4−クロロフェニル)チアゾ−ル−4−イルメトキシ]−1−オキソインダン−5−イル}安息香酸メチル
ステップ1
塩化ビス(トリシクロヘキシルイホスフィン)パラジウム(II)と水酸化ヒドラジニウム(0.194ml;4mmol)との混合物を、5分間撹拌する。反応は、発熱性が高く、黄色の媒体が黒色に変化する。次いでこの媒体を、水(37ml)に溶かしたNa3PO4・10H2O(22.8g;58.78mmol)の溶液に添加する。次いで得られた混合物を室温で5分間撹拌し、その後、5−ブロモ−6−メトキシインダン−1−オン(9.64g;40mmol)、4−カルボキシフェニルボロン酸(6.64g;40mmol)、およびテトラヒドロフラン(THF)(74ml)を添加する。反応媒体を、19時間撹拌しながら還流する。これを冷却し、1N塩酸で酸性化し、次いで酢酸エチルで抽出する(8.0g;71% 収率)。
【0109】
1H NMR(300MHz,DMSO−D6)δ ppm:2.7(dd,J=6.5,4.8Hz,2H)3.1(m,2H)3.8(s,3H)7.3(s,1H)7.5(s,1H)7.6(m,2H)8.0(m,2H)12.9(s,1H)。
【0110】
ステップ2
ステップ1で得られた化合物(200mg;0.708mmol)と三塩化アルミニウム(0.233g;1.75mmol)をトルエン(4ml)に溶かした混合物を、15分間撹拌しながら還流する。得られた褐色の溶液を室温まで冷却し、次いで氷上に注ぐ。不溶性の材料を濾別し(110mg)、次いで媒体を酢酸エチルで抽出する。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮することにより、さらに46mgの生成物が得られる(79% 全収率)。
【0111】
1H NMR(300MHz,DMSO−D6)δ ppm:2.6(m,2H)3.0(m,2H)7.1(s,1H)7.5(s,1H)7.7(d,J=8.2Hz,2H)8.0(d,J=8.2Hz,2H)10.1(s,1H)13.0(s,1H)。
【0112】
LC/MS ES− 267.3。
【0113】
ステップ3
ステップ2で得られた化合物(130mg;0.48mmol)、メタノール(5ml)、THF(1ml)、および濃硫酸(13μl)の混合物を、還流状態で撹拌する。媒体を水中に注ぎ、次いで酢酸エチルで抽出する。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮することによって、褐色の固体(140mg)が得られる。シリカ上でのフラッシュクロマトグラフィー(1/1 ヘプタン/酢酸エチル)による精製によって、黄色の固体が得られる(100mg;74% 収率)。
【0114】
1H NMR(300MHz,クロロホルム−D)δ ppm:2.8(m,2H)3.1(m,2H)4.0(s,3H)5.3(s,1H)7.3(s,1H)7.4(s,1H)7.6(d,J=7.6Hz,2H)8.2(d,J=7.2Hz,2H)。
【0115】
LC/MS ES− 281.3。
【0116】
ステップ4
ステップ3で得られた化合物(100mg;0.354mmol)、アセトン(5ml)、炭酸セシウム(127mg;0.39mmol)、および4−クロロメチル−2−(4−クロロフェニル)チアゾール(91mg;0.373mmol)の混合物を、55℃で9時間撹拌する。
【0117】
媒体を、乾燥するまで濃縮し、次いで水に吸収させ、塩化メチレンで抽出する。褐色の蒸発残留物(0.126g)を、シリカ上でのフラッシュクロマトグラフィー(1/1 ヘプタン/酢酸エチル)により精製することによって、期待される生成物が得られる(57mg;31% 収率)。
【0118】
1H NMR(300MHz,クロロホルム−D)δ ppm:2.8(m,2H)3.1(m,2H)4.0(s,3H)5.3(s,2H)7.1(s,1H)7.4(m,4H)7.7(m,2H)7.9(m,2H)8.1(m,2H)。
【0119】
LC/MS ES+ 490.1 492.1。
【0120】
実施例2:4−{6−[2−(4−クロロフェニル)チアゾール−4−イルメトキシ]−1−オキソインダン−5−イル}−安息香酸
実施例1の化合物(57mg;0.116mmol)、メタノール(2.5ml)、THF(5ml)、1N水酸化ナトリウム水溶液(0.15ml;0.15mmol)、および水(1.75ml)の混合物を、還流状態で2時間撹拌する。媒体を水中に注ぎ、次いでエーテルで抽出する。母液を濃塩酸で酸性化する。エチルエーテルで抽出し、硫酸ナトリウム上で乾燥した後、蒸発によって黄色の固体(20mg)が得られ、これを、シリカ上でのフラッシュクロマトグラフィー(98/2 塩化メチレン/メタノール)により精製することによって、期待される生成物が得られる(13mg;23% 収率)。
LC/MS ES−474.3 476.3 ES+476.3 478.2(1個の塩素原子)。
【0121】
実施例3:4−[6−(5−メチル−2−フェニルオキサゾール−4−イルメトキシ)−1−オキソインダン−5−イル]−安息香酸エチル
ステップ1
5−ブロモ−6−ヒドロキシインダン−1−オン(3.0g;13.2mmol)、アセトン(150ml)、炭酸セシウム(4.8g;14.7mmol)、および4−クロロメチル−5−メチル−2−フェニルオキサゾール(10.95g;52.7mmol)の混合物を、還流状態で6時間撹拌する。媒体を水中に注ぐ。形成された沈殿物を吸引濾過し、次いでエーテルで洗浄する(4.67g;90% 収率)。
【0122】
1H NMR(300MHz,クロロホルム−D)δ ppm:2.5(s,3H)2.7(m,2H)3.1(m,2H)5.1(s,2H)7.4(s,1H)7.4(m,3H)7.7(s,1H)8.0(m,2H)。
【0123】
ステップ2
ステップ1で得られた化合物(1.2g;3.01mmol)およびPd(PPh32Cl2(90mg)をジメチルホルムアミド(DMF)(16ml)に溶かした混合物を、+33℃に温め、次いでヨウ化4−(エトキシカルボニル)フェニル亜鉛をTHFに溶かした0.5N溶液(7.3ml;3.65mmol)を1滴ずつ添加する。媒体を室温で一晩撹拌し、次いで水と酢酸エチルの混合物中に注ぐ。Hyfloを通した濾過の後、有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮することによって、ペースト状の橙色の固体が得られ、これをエチルエーテル中で磨砕する。分散した沈殿物を吸引濾過する(704mg)。シリカ上でのフラッシュクロマトグラフィー(20/80 ヘプタン/塩化メチレン)による精製によって、期待される生成物が得られる(380mg;27% 収率)。
【0124】
1H NMR(300MHz,クロロホルム−D)δ ppm:1.4(t,J=7.1Hz,3H)2.2(s,3H)2.8(m,2H)3.1(m,2H)4.4(q,J=7.1Hz,2H)5.0(s,2H)7.4(m,4H)7.5(s,1H)7.6(m,2H)8.0(m,2H)8.0(m,2H)。
【0125】
実施例4:4−[6−(5−メチル−2−フェニルオキサゾール−4−イルメトキシ)−1−オキソインダン−5−イル]−安息香酸
実施例3で得られた化合物(1.7g;3.64mmol)、メタノール(42ml)、THF(85ml)、1N水酸化ナトリウム水溶液(3.4ml;3.4mmol)、および水(42ml)の混合物を、還流状態で1.25時間撹拌する。媒体を冷却し、水中に注ぎ、次いで濃塩酸で酸性化する。塩化メチレンで抽出し、硫酸ナトリウム上で乾燥した後、蒸発によってベージュ色の固体(1.56g)が得られる。シリカ上でのフラッシュクロマトグラフィー(95/5 塩化メチレン/メタノール)により精製することによって、期待される生成物が得られる(954mg;60% 収率)。
【0126】
1H NMR(300MHz,DMSO−D6)δ ppm:2.4(s,3H)2.7(m,2H)3.1(m,2H)5.1(s,2H)7.5(m,8H)7.9(m,4H)
LC/MS ES+ 440.1。
【0127】
実施例5:5’−フルオロ−2’−[2−(5−メチル−2−フェニルオキサゾール−4−イル)エトキシ]−ビフェニルカルボン酸エチルエステル
ステップ1
2−ブロモ−4−フルオロフェノール(0.5g;2.61mmol)、トリフェニルホスフィン(0.752g;2.87mmol)、および2−(5−メチル−2−フェニルオキサゾール−4−イル)エタノール(0.858g;2.87mmol)をトルエン(10ml)に混合し、54℃に予熱した混合物に、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(0.504ml;2.54mmol)をトルエン(10ml)に溶かした溶液を1滴ずつ添加する。赤色に変化する反応媒体を、さらに1時間、54℃で撹拌する。溶媒を、乾燥するまで濃縮し、蒸発残留物をシリカ上でのフラッシュクロマトグラフィー(85/15 ヘプタン/酢酸エチル)により精製する。期待される生成物0.8gが得られる(81% 収率)。
【0128】
1H NMR(300MHz,クロロホルム−D)δ ppm:2.4(s,3H)3.0(t,J=6.4Hz,2H)4.3(t,J=6.4Hz,2H)6.9(m,2H)7.3(m,1H)7.4(m,3H)8.0(m,2H)。
【0129】
ステップ2
ヨウ化4−(エトキシカルボニル)フェニル亜鉛(14ml;7mmol)をTHFに溶かした0.5N溶液を、ステップ1で得られた化合物(0.8g;2.126mmol)およびPd(PPh32Cl2(142mg)をDMF(34ml)に溶かした混合物に1滴ずつ添加する。温度を27℃まで上昇させる。媒体を3時間還流し、次いで水中に注ぐ。媒体を、エチルエーテルおよび酢酸エチルで抽出する。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮することによって、褐色の油(1.7g)が得られる。シリカ上でのフラッシュクロマトグラフィー(90/10 ヘプタン/酢酸エチル)による精製によって、期待される生成物が得られる(0.128mg;14% 収率)。
【0130】
LC/MS ES+446.4。
【0131】
実施例6:5’−フルオロ−2’−[2−(5−メチル−2−フェニルオキサゾール−4−イル)エトキシ]−ビフェニルカルボン酸
実施例5で得られた化合物(0.128g;0.287mmol)、メタノール(2.5ml)、THF(5ml)、1N水酸化ナトリウム水溶液(0.37ml;0.37mmol)、および水(2.5ml)の混合物を、還流状態で1時間撹拌する。次いで媒体を冷却し、水中に注ぐ。エチルエーテルで抽出した後、水相を濃塩酸で酸性化する。形成された白色の沈殿物を酢酸エチルに吸収させる。蒸発によってベージュ色の固体が得られる(76mg;63% 収率)。
【0132】
1H NMR(300MHz,DMSO−D6)δ ppm:2.1(s,3H)2.9(t,J=6.0Hz,2H)4.3(t,J=6.0Hz,2H)7.2(m,3H)7.5(m,5H)7.9(m,4H)13.0(s,1H)。
【0133】
LC/MS ES+ 418.3。
【0134】
化合物7から48を、上記実施例1から6の化合物の調製に関して述べたものと同様のプロトコルに従って調製した。
【0135】
化合物7から48の構造を、下記の表に順に列挙する。
表1
化合物7から48の構造
【0136】
【化12】

【0137】
【表1−1】

【0138】
【表1−2】

【0139】
【表1−3】

【0140】
【表1−4】

【0141】
【表1−5】

【0142】
【表1−6】

【0143】
合成された生成物7から48の分析結果を下記の表2に示し、表中、
−Mは、化合物の理論上のモル質量を表し;
−NMRは、300MHzでの磁気共鳴による、プロトンの化学シフトδ(単位 ppm)を示し;
−LC/MSは、液相クロマトグラフィーとを組み合わせた質量分析による分析結果を示す。
表2
【0144】
【表2−1】

【0145】
【表2−2】

【0146】
【表2−3】

【0147】
【表2−4】

【0148】
【表2−5】

【0149】
結果
PPAR活性化の測定は、Lehmann他(J.Biol.Chem.,270,(1995),12953〜12956)により記述される技法に従って行った。
【0150】
CV−1細胞(サル腎臓細胞)に、キメラタンパク質PPARγ−Gal4用の発現ベクターと、Gal4応答要素を含むプロモーターの制御下に置かれたルシフェラーゼ遺伝子を発現させる「レポーター」プラスミドとを同時トランスフェクトする。
【0151】
これらの細胞を96ウェルマイクロプレートに播き、市販の試薬を使用して、レポータープラスミド(pG5−tk−pGL3)とキメラタンパク質(PPARγ−Gal4)用の発現ベクターとを同時トランスフェクトする。4時間インキュベートした後、全培地(10%ウシ胎児血清を含む)をウェルに添加する。24時間後、培地を除去し、代わりに試験生成物を含む全培地を用いる。生成物を、細胞に18時間接触させたままにする。次いで細胞を溶解し、ルミノメータを使用してルシフェラーゼ活性を測定する。次いでPPARγ活性化因子を、生成物によって誘導されたレポーター遺伝子の発現の活性化により計算することができる(生成物が与えられていない対照細胞に対して)。
【0152】
PPARγリガンド結合ドメイン(Gal4のみ発現するベクター)が存在しない場合、この生成物の存在下で測定されたルシフェラーゼ活性は0である。
【0153】
下記のトランス活性化の結果は、PPARγに関して濃度が30μMの場合に得られた。
【0154】
【表3】

【0155】
部分作動薬の生物活性の例
トランス活性化試験
キメラタンパク質Gal−4−PPARγの発現を使用するトランス活性化試験では、この系において作動薬が「完全」作動薬として機能するのか、または「部分」作動薬として機能するのかを決定することも可能になる。
【0156】
作動薬は、「完全」作動薬であるロシグリタゾンよりも弱い応答を誘発する場合、すなわちより低い効力を有する場合に、この系では「部分」作動薬になる。具体的には、本発明者等の系では、部分作動薬の場合にプラトーで得られたトランス活性化は、ロシグリタゾンのプラトーの最大応答(効力)の20%から50%の間になる。
【0157】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)の化合物、可能である、その光学異性体、酸化物形態、および溶媒和物、さらに医薬品として許容される、酸または塩基とのその付加塩
【化1】

(式中、R1は、−O−R’1または−NR’1R”1を表し、ただしR’1およびR”1は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、およびヘテロアリール基から選択され;
2は、
・アルキル、アルケニル、またはアルキニル基;
・任意選択で置換されたアリールアルキル基;および
・任意選択で置換されたヘテロシクリルアルキル基
から選択され;
[空白]は、酸素原子および硫黄原子から選択され;
X、Y、およびZは、同一でも異なっていてもよく、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、およびアルコキシ基から選択され;あるいはXおよびYは、これらが担持する炭素原子と一緒になって、ケトン官能基を含有する5員環を形成する)。
【請求項2】
下記の特徴、すなわち:
1が、−O−R’1を表し、R’1は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、およびヘテロアリール基から選択され;
2が、アルキル基、任意選択で置換されたベンジル基、および任意選択で置換されたヘテロシクリルアルキル基から選択され;
同一でも異なっていてもよいXおよびYが、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、およびアルコキシ基から選択され;あるいはXおよびYが、これらが担持する炭素原子と一緒になって、ケトン官能基を含有する5員環を形成し;
Zが、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、およびアルコキシ基から選択される
という特徴の、1つまたは複数を別々に有し、あるいはこれらの特徴の1つ、いくつか、または全ての組合せを有する請求項1に記載の化合物、可能性あるその光学異性体、酸化物形態、および溶媒和物、さらに医薬品として許容される、酸または塩基とのその付加塩。
【請求項3】
下記の特徴、すなわち:
1が、−O−R’1を表し、R’1は水素原子およびアルキル基から選択され;
2が、アルキル基、任意選択で置換されたベンジル基、および任意選択で置換されたヘテロシクリルアルキル基から選択され;
同一でも異なっていてもよいXおよびYが、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、およびアルコキシ基から選択され;あるいはXおよびYが、これらが担持する炭素原子と一緒になって、ケトン官能基を含有する5員環を形成し;
Zが、水素原子およびハロゲン原子から選択される
という特徴の、1つまたは複数を別々に有し、あるいはこれらの特徴の1つ、いくつか、または全ての組合せを有する前記請求項のいずれかに記載の化合物、可能性あるその光学異性体、酸化物形態、および溶媒和物、さらに医薬品として許容される、酸または塩基とのその付加塩。
【請求項4】
下記の特徴、すなわち:
1が、−O−R’1を表し、R’1は水素原子、メチル基、およびエチル基から選択され;
2が、アルキル基、任意選択で置換されたベンジル基、および任意選択で置換されたヘテロシクリルアルキル基から選択され;
同一でも異なっていてもよいXおよびYが、互いに独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基、およびメトキシ基から選択され;あるいはXおよびYが、これらが担持する炭素原子と一緒になって、シクロペンテノン環を形成し;
Zが、水素原子、フッ素原子、および塩素原子から選択される
という特徴の、1つまたは複数を別々に有し、あるいはこれらの特徴の1つ、いくつか、または全ての組合せを有する前記請求項のいずれか一項に記載の化合物、可能性あるその光学異性体、酸化物形態、および溶媒和物、さらに医薬品として許容される、酸または塩基とのその付加塩。
【請求項5】
式(1)の化合物の前記基の置換基が、ハロゲン原子、好ましくはフッ素および/または塩素、およびメチル、エチル、メトキシ、フェニル、トリフルオロメチル、およびトリフルオロメトキシ基から選択されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の化合物、可能性あるその光学異性体、酸化物形態、および溶媒和物、さらに医薬品として許容される、酸または塩基とのその付加塩。
【請求項6】
複素環基が、フリル、チエニル、ピロリル、ピリジル、トリアゾリル、オキサゾリジニル、チアゾリル、オキサジアゾリル、およびオキサゾリル基から選択されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の化合物、可能性あるその光学異性体、酸化物形態、および溶媒和物、さらに医薬品として許容される、酸または塩基とのその付加塩。
【請求項7】
・ 4−[6−(5−メチル−2−フェニルオキサゾール−4−イルメトキシ)−1−オキソインダン−5−イル]安息香酸;
・ 4−[1−オキソ−6−(4−トリフルオロメチルベンジルオキシ)インダン−5−イル]安息香酸;
・ 4−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−1−オキソインダン−5−イル]安息香酸;
・ 5’−メトキシ−2’−(5−メチル−2−フェニルオキサゾール−4−イルメトキシ)ビフェニル−4−カルボン酸;
・ 5’−メチル−2’−(5−メチル−2−フェニルオキサゾール−4−イルメトキシ)ビフェニル−4−カルボン酸;
・ 4−[6−(5−メチルイソオキサゾール−3−イルメトキシ)−1−オキソインダン−5−イル]安息香酸;
・ 4−[6−(5−メチル−2−フェニル−2H−[1,2,3]トリアゾール−4−イルメトキシ)−1−オキソインダン−5−イル]安息香酸;
・ 4−[1−オキソ−6−(2−チオフェン−2−イルチアゾール−4−イルメトキシ)インダン−5−イル]安息香酸;および
・ 4−[6−(5−メチル−3−フェニルイソオキサゾール−4−イルメトキシ)−1−オキソインダン−5−イル]安息香酸;
から、およびこれら化合物の、可能性ある光学異性体、酸化物形態、および溶媒和物、さらに医薬品として許容される、酸または塩基との付加塩から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
式(2)の化合物から、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物を調製するための方法であって
【化2】

(式中、X、Y、およびZは、請求項1で定義した通りである)、
式(2)の化合物を、触媒の存在下、水酸化ヒドラジニウムおよびリン酸三ナトリウムの存在下で、極性プロトン性媒体中で式(3)のボロン酸の作用にかけることにより、
【化3】

式(4)の化合物が得られ
【化4】

(式中、X、Y、およびZは、請求項1で定義した通りである)、
式(4)の化合物のメトキシ基をアルコール官能基に変換することにより、式(5)の化合物が得られ
【化5】

(式中、X、Y、およびZは、請求項1で定義した通りである)、
次いで酸官能基を保護するために、強酸の存在下、アルコールRA−OH、すなわちRAが1から4個の炭素原子を含有する直線状または分枝状アルキル基を表すアルコールとエステル化することによって、式(6)のエステルが得られ
【化6】

(式中、RA、X、Y、およびZは請求項1で定義した通りである)、
次いで式(6)の化合物を、極性非プロトン性媒体中で、塩基の存在下、任意選択で活性化因子の存在下で、式Hal−R2のハロゲン化物、すなわちHalがハロゲン原子を表しかつR2が請求項1で定義した通りであるハロゲン化物の作用にかけることによって、式(7)の化合物が得られ
【化7】

(式中、R2、X、Y、およびZは請求項1で定義した通りであり、RAは、上記にて定義した通りである)、
次いでその保護基RAを除去することにより、R1がヒドロキシル基を表す式(1)の化合物の特殊な場合である式(1OH)の酸が得られ、
【化8】

前記酸を、任意選択でエステル化しまたは対応するアミドに変換することにより、R1がヒドロキシル基以外のものである式(1)の化合物の組を得る方法。
【請求項9】
前記式(2)の化合物から、請求項1から7のいずれか一項に記載される化合物を調製するための方法であって
【化9】

(式中、X、Y、およびZは、請求項1で定義した通りである)、
式(2)の化合物を、式(8)の中間体を得るために、ホスフィンの存在下で、ハロゲン化物Hal−R2、すなわちHalがハロゲン原子を表しかつR2が請求項1で定義した通りであるハロゲン化物、あるいはアルコールOH−R2、すなわちR2が請求項1で定義した通りであるアルコールの作用にかけ
【化10】

(式中、R2、X、Y、およびZは上記にて定義した通りである)、
次いで式(9)の有機金属剤の作用の下、臭素原子を置換し
【化11】

(式中、Halはハロゲン原子を表し、Mは金属を表し、RAは、1から4個の炭素原子を含有する直線状または分枝状のアルキル基を表す)、
それによって式(7)の化合物が得られ
【化12】

(式中、R2、X、Y、およびZは、請求項1で定義した通りであり、RAは上記にて定義した通りであり)、
次いでその保護基RAを除去することにより、R1がヒドロキシル基を表す式(1)の化合物の特殊な場合である式(1OH)の酸が得られ、
【化13】

前記酸を任意選択でエステル化し、または対応するアミドに変換することによって、R1がヒドロキシル基以外のものである式(1)の化合物の組を形成する方法。
【請求項10】
1種または複数の医薬品として許容されるビヒクルと組み合わせて、請求項1から7のいずれか一項に記載の、あるいは請求項8または請求項9に記載の方法を介して得られた、式(1)の化合物の少なくとも1種を医薬品として有効な量で含む、医薬品組成物。
【請求項11】
異脂肪血症、アテローム性動脈硬化症、および糖尿病を予防または治療する薬剤を調製するための、請求項1から7のいずれか一項に記載の、あるいは請求項8または請求項9に記載の方法を介して得られた、式(1)の化合物の使用。

【公表番号】特表2008−526903(P2008−526903A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550704(P2007−550704)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013856
【国際公開番号】WO2006/074796
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】