説明

フェニル尿素の新規誘導体である、SOAT−1酵素阻害剤ならびにそれらを含む医薬組成物および化粧用組成物

本発明は、式(I)の化合物、ならびにそのような化合物を含む化粧用および医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェニル尿素の新規誘導体である、SOAT-1酵素(「ステロール-O-アシルトランスフェラーゼ-1」の略語で、「アシル補酵素Aコレステロールアシルトランスフェラーゼ」からACAT-1とも呼ばれる)の阻害剤に関する。本発明は、また、人間医学もしくは動物医学における適用を目的とした医薬組成物または化粧用組成物および治療以外の適用におけるそれらの利用にも関する。
【背景技術】
【0002】
SOAT-1阻害型の活性を有する化合物は、コレステロールおよびその誘導体が関与する生物学的プロセスの制御において活性を有するとして、文献に幅広く記述されている。これらの特性によって、このクラスの化合物は、非常に多くの病変、より具体的には、皮膚科学および心臓血管疾患または中枢神経系の疾患における治療または予防において相当な可能性を有する。SOAT-1の阻害剤の生物学的作用のほとんどは、SOAT-1酵素によるコレステロールエステルの合成の防止により媒介される。SOAT-1阻害分子を記載した先行技術の文書としては、例えば、動脈硬化症またはコレステロール血症の治療のための化合物を記述したWO96/10559、EP0370740、EP0424194、US4623663、EP0557171、US5003106、EP0293880、EP0433662、US5106873が挙げられる。心臓血管疾患、特に、コレステロール血症および動脈硬化症の治療におけるSOAT-1の阻害剤の治療可能性も、Kharbanda R. K.らによるCirculation、2005、11、804頁に記載されている。アルツハイマー病の治療のためのSOAT-1の阻害剤の可能性についても、例えば、Puglielli, L.らによるNature Neurosciences 2003、6(4)、345頁等の文献に報告されている。
【0003】
一方で、特許、US613326、US6271268およびWO2005034931には、皮脂の産生を阻害可能なSOAT-1阻害化合物が記述されている。特に皮膚科学の分野では、皮脂の過剰産生およびそれに関連する全ての疾患を予防することが特に有益である。
【0004】
皮脂は皮脂腺により産生される。皮脂腺が最も集中しているのは顔面、肩、背中および頭皮である。皮脂は皮膚の表面で分泌され、表皮バリアおよび微環境の維持に関連して、非常に重要な生理的役割を果たし、皮膚の細菌叢および真菌フローラの抑制を可能にする。
【0005】
皮脂の過剰産生は、一般に、脂っぽい見かけの皮膚または頭皮と関連し、不快感および悪い見た目の原因となる。さらに、皮脂の過剰産生は、脂漏性皮膚炎を引き起こす可能性があり、にきびの発生もしくは重度の増加に関連している。SOAT-1により皮脂腺で産生されるコレステロールエステルは、Nikkari, T.によってJ Invest Derm 1974、62、257頁に記述されたように、トリグリセリド、ワックスのエステルおよびスクアレンを含め、複数の脂質のクラスの中の皮脂成分の1つである。したがって、この酵素または他のアシルトランスフェラーゼの阻害は、皮脂の産生を阻害することが可能であり得る。特許US6133326には、特に、ACAT-1(SOAT-1とも呼ばれる)の阻害剤による、皮脂の阻害が記述されている。しかし、今日まで、前記阻害剤を利用する治療は市販されていない。過剰脂漏症に関連する疾患の治療または軽減を提供する唯一の治療は、全身的ホルモン療法または13-シスレチノイン酸を使った全身療法であるが、これらの治療は副作用があるため、適用分野が大幅に制限されている。したがって、皮脂の過剰産生に関連する疾患および病変の治療のための医薬的および美容的必要性が存在していることは明白である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO96/10559
【特許文献2】EP0370740
【特許文献3】EP0424194
【特許文献4】US4623663
【特許文献5】EP0557171
【特許文献6】US5003106
【特許文献7】EP0293880
【特許文献8】EP0433662
【特許文献9】US5106873
【特許文献10】US613326
【特許文献11】US6271268
【特許文献12】WO2005034931
【特許文献13】US6133326
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kharbanda R. K.ら、「Circulation」、2005、11、804頁
【非特許文献2】Puglielli, L.ら、「Nature Neurosciences」、2003、6(4)、345頁
【非特許文献3】Nikkari, T.、「J Invest Derm」、1974、62、257頁
【非特許文献4】O'Brien, P. M.ら、J Med Chem 1994、37(12)、1810〜1822頁
【非特許文献5】Suzukiら、Synth. Commun. 1981、11、513頁
【非特許文献6】Sharp, M. J.、Tet. Lett. 1985、26、5997頁
【非特許文献7】Littke, A.F.ら、J Am Chem Soc 2000、122(17)、4020〜4028頁
【非特許文献8】Lin, W.-W.ら、J Org Chem 2001、66(6)、1984〜1991頁
【非特許文献9】Schneider, R.ら、J Heterocycl Chem 1994、31(4)、797〜803頁
【非特許文献10】Hegedus, L S.、Perry, R. J.、J Org Chem 1984、49(14)、2570頁
【非特許文献11】Sakamoto, T.ら、Heterocycles 1988、27、1353頁
【非特許文献12】「Protective Groups in Organic Chemistry」、McOmie J.W.F.編集、Plenum Press、1973
【非特許文献13】「Protective Groups in Organic Synthesis」、第2版、Greene T.W.およびWuts P.G.M.、John Wiley and Sons刊、1991
【非特許文献14】「Protecting Groups」、Kocienski P. J.、1994、Georg Thieme Verlag
【非特許文献15】「Identification of ACAT1- and ACAT2-specific inhibitors using a novel, cell based fluorescence assay: individual ACAT uniqueness」、J.lipid.Res (2004) vol 45、378〜386頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これを背景として、本発明は、SOAT-1酵素に対する阻害作用を示す、フェニル尿素の新規誘導体を提供することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の一般式(I)に対応するフェニル尿素の新規誘導体である、SOAT-1酵素の阻害剤
およびこれらの製薬学的に許容される塩、溶媒和物または水和物に関する:
【0010】
【化1】

【0011】
[式中、
- Yは、OまたはS(O)pを表し、
- pは、0または2に等しく、
- nは、0、1または2に等しく、
- Rは、水素原子、(C1〜C6)アルキル基、-CH2-NR6R7基、-C(O)-NR6R7基または-C(S)-NR6R7基を表し(ただし、R6は、水素原子または(C1〜C4)アルキル基を表し、R7は、水素原子、フェニルまたはシクロアルキル基を表す)、
- R1は、水素原子、(C1〜C6)アルキル基または塩素、臭素もしくはフッ素の原子を表し、
- R2は、(C1〜C6)アルキル基を表し、
- R3は、水素原子または(C1〜C6)アルキル基を表し、
- R4およびR'4は同一であり、(C1〜C6)アルキル基を表すか、またはR4およびR'4は、一緒になって結合し、これらが結合している炭素原子と共に、シクロアルキル基、インダニル基またはピペリジン、テトラヒドロピラン、ピロリジン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロフランおよびアゼチジン基から選択される飽和ヘテロ環基を形成し、さらに、ピペリジン、ピロリジンおよびアゼチジン基は、R8、-C(O)R8または-SO2R8基(ただし、R8は、(C1〜C4)アルキル基を表す)によって窒素原子上で場合によって置換でき、
- R5は、未置換のフェニル基または塩素、臭素もしくはフッ素の原子、(C1〜C6)アルキル、シクロアルキル、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、フェニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、(C1〜C6)アルコキシ、フェノキシ、(C1〜C6)アルキルチオ、トリフルオロメトキシまたは-NR9R10基(ただし、R9およびR10は、同一であっても異なってもよく、それぞれ独立に水素原子または(C1〜C4)アルキル基を表す)から選択される、同一であっても異なってもよい1から3個の置換基によって置換されたフェニル基を表す]。
【0012】
「アルキル基」は、飽和、直鎖状または分枝状の炭化水素鎖を意味する。(C1〜C6)アルキルは、炭素原子を1から6個有するアルキル鎖を意味する。(C1〜C6)アルキルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、ペンチルおよびヘキシル基を挙げることができる。(C1〜C4)アルキルは、炭素原子を1から4個有するアルキル鎖を意味する。(C1〜C4)アルキルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチルおよびsec-ブチル基を挙げることができる。
【0013】
(C1〜C6)アルコキシは、-O-(C1〜C6)アルキル基を表す。
【0014】
(C1〜C6)アルキルチオは、-S-(C1〜C6)アルキル基を表す。
【0015】
フェノキシは、-O-フェニル基を表す。
【0016】
「シクロアルキル基」は、炭素原子を3から7個有する、飽和環状の炭化水素鎖である。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル基を挙げることができる。
【0017】
上で定義した式(I)の化合物、およびこれらの製薬学的に許容される塩、溶媒和物または水和物が好ましい:
[式中、
- Yは、O、S(O)pを表し、
- pは、0または2に等しく、
- nは、0、1または2に等しく、
- Rは、水素原子を表し、
- R1は、メチル、エチル、イソプロピルまたはtert-ブチル基を表し、
- R2は、メチル、エチル、イソプロピルまたはtert-ブチル基を表し、
- R3は、水素原子を表し、
- R4およびR'4は、同一であり、エチル基を表すか、またはR4およびR'4は、一緒になって結合し、これらが結合している炭素原子と共に、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルもしくはインダニル基、またはテトラヒドロピラン基、ピペリジン基、またはR8、-C(O)R8、もしくは-SO2R8基(ただし、R8は、(C1〜C4)アルキル基を表す)によって窒素原子上で置換されたピペリジン基を形成し、
- R5は、o-、m-もしくはp-ビフェニル、o-、m-もしくはp-ヨードフェニル、o-、m-もしくはp-(2-ピリジル)フェニル、o-、m-もしくはp-(3-ピリジル)フェニルまたはo-、m-もしくはp-(4-ピリジル)フェニル基、未置換のフェニル基、メチル、エチル、トリフルオロメチル、フッ素、塩素、ヒドロキシから選択される、同一または異なる1から3個の置換基によって置換されたフェニル基を表す]。
【0018】
本発明では、上で定義した式(I)の化合物の中で、相互に排他的でないとき、以下の特性の1つまたは複数の組合せを備えた化合物が特に好ましい:
- nは、0または1であり、
- Rは、水素原子を表し、
- R1は、イソプロピル基を表し、
- R2は、イソプロピル基を表し、
- R3は、水素原子を表し、
- R4およびR'4は、一緒になって結合し、これらが結合している炭素原子と共に、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはインダニル基を形成し、
- R5は、不飽和のフェニル基またはメチル基によって、例えば、パラ位で置換されたフェニル基またはフェニル基によって、例えば、オルト位で置換されたフェニル基を表す。
【0019】
以下に示す式(I)の化合物、およびこれらの製薬学的に許容される塩、溶媒和物または水和物は、特に好ましい:
【0020】
-1-(1-ベンゼンスルホニル-シクロペンチルメチル)-3-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-尿素、化合物(I.1)、ただし、Y=-S(O)p、p=2、n=0、R=H、R1=R2=iPr;R3=H;R4およびR'4は一緒になって、シクロペンチルを形成する;R5=Ph
【0021】
【化2】

【0022】
-1-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-3-[1-(トルエン-4-スルホニル)-シクロペンチルメチル]-尿素、化合物(I.2)、ただし、Y=-S(O)p、p=2、n=0、R=H、R1=R2=iPr;R3=H;R4およびR'4は一緒になって、シクロペンチルを形成する;R5=p-トリル
【0023】
【化3】

【0024】
-1-(2-ベンゼンスルホニル-インダン-2-イルメチル)-3-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-尿素、化合物(I.3)、ただし、Y=-S(O)p、p=2、n=0、R=H、R1=R2=iPr;R3=H;R4およびR'4は一緒になって、インダニルを形成する;R5=Ph
【0025】
【化4】

【0026】
-1-(1-ベンジルスルファニル-シクロヘキシルメチル)-3-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-尿素、化合物(I.4)、ただし、Y=S、p=0、n=1、R=H、R1=R2=iPr;R3=H;R4およびR'4は一緒になって、シクロヘキシルを形成する;R5=Ph
【0027】
【化5】

【0028】
-1-(1-ベンジルオキシ-シクロヘキシルメチル)-3-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-尿素、化合物(I.5)、ただし、Y=O、p=0、n=1、R=H、R1=R2=iPr;R3=H;R4およびR'4は一緒になって、シクロヘキシルを形成する;R5=Ph
【0029】
【化6】

【0030】
-1-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-3-(1-フェノキシ-シクロヘキシルメチル)-尿素、化合物(I.6)、ただし、Y=O、p=0、n=0、R=H、R1=R2=iPr;R3=H;R4およびR'4は一緒になって、シクロヘキシルを形成する;R5=Ph
【0031】
【化7】

【0032】
-1-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-3-(1-フェニルスルファニル-シクロヘキシルメチル)-尿素、化合物(I.7)、ただし、Y=S、p=0、n=0、R=H、R1=R2=iPr;R3=H;R4およびR'4は一緒になって、シクロヘキシルを形成する;R5=Ph
【0033】
【化8】

【0034】
-1-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-3-(1-p-トリルスルファニル-シクロヘキシルメチル)-尿素、化合物(I.8)、ただし、Y=S、p=0、n=0、R=H、R1=R2=iPr;R3=H;R4およびR'4は一緒になって、シクロヘキシルを形成する;R5=p-トリル
【0035】
【化9】

【0036】
-1-[1-(ビフェニル-2-イルスルファニル)-シクロヘキシルメチル]-3-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-尿素、化合物(I.9)、ただし、Y=S、p=0、n=0、R=H、R1=R2=iPr;R3=H;R4およびR'4は一緒になって、シクロヘキシルを形成する;R5=o-BiPh
【0037】
【化10】

【0038】
-1-[1-(ビフェニル-2-イルスルファニル)-シクロペンチルメチル]-3-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-尿素、化合物(I.10)、ただし、Y=S、p=0、n=0、R=H、R1=R2=iPr;R3=H;R4およびR'4は一緒になって、シクロペンチルを形成する;R5=o-BiPh
【0039】
【化11】

【0040】
-1-[1-(ビフェニル-2-イロキシ)-シクロヘキシルメチル]-3-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-尿素、化合物(I.11)、ただし、Y=O、n=0、R=H、R1=R2=iPr;R3=H;R4およびR'4は一緒になって、シクロヘキシルを形成する;R5=o-BiPh
【0041】
【化12】

【0042】
本発明に従う化合物の塩は、当業者によって周知の方法に従って調製される。本発明に従う式(I)の化合物の塩には、式(I)の化合物の便利な分離または結晶化を可能にする有機酸または鉱酸、ならびに製薬学的に許容される塩が含まれる。適切な酸としては、ピクリン酸、シュウ酸または酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、マンデル酸もしくはカンホスルホン酸等の光学的に活性な酸、および塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸二水素塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、2-ナフタレンスルホナート、パラトルエンスルホナート等の生理的に許容できる塩を形成する酸が挙げられ、塩酸塩が好ましい。
【0043】
溶媒和物または水和物は、合成工程の最後に直接得ることができ、化合物(I)は水和物、例えば、一水和物もしくは半水和物の形態、または反応もしくは精製の溶媒の溶媒和物の形態で単離される。
【0044】
式(I)の化合物は、従来の任意の精製方法、例えば、カラムクロマトグラフィーによる結晶化または精製により、精製することができる。
【0045】
本発明に従う式(I)の化合物に1つまたは複数の不斉炭素があるとき、この化合物の光学異性体は、本発明の不可欠な要素を形成する。したがって、式(I)の化合物は、全ての特性において、純粋な異性体または複数の異性体の混合物の形とすることができる。
【0046】
本発明に従う式(I)の化合物は、下記のスキーム1に従って調製することができ、スキーム中、R、R1、R2、R3、R4、R'4、Yおよびnは、式(I)の化合物に対する定義の通りであり、R'5基は、R5基またはR5基の前駆体である基を表す:
【0047】
【化13】

【0048】
例えば、J Med Chem 1994、37(12)、1810〜1822頁にO'Brien, P. M.らにより記述された反応に従って、一般式(1)の1級または2級アミンを、対応する尿素の前駆体、例えば、イソシアン酸塩(2)に添加することで、一般式(I)の化合物を調製することができる。式(1)の化合物は、式(I)の所望の最終化合物のR5=R'5基を直接有することができ、この場合、化合物(I')は、所望の化合物(I)に相当し、それは、例えば、R5=o、mまたはp-ヨードフェニルのときがそうである。場合によっては、R5の前駆体であるR'5基を有する式(1)の化合物を使って、添加を実行し、中間体(I')を形成し、その後それを変換して所望のR5基を得なければならない。例えば、R5=o、mもしくはp-ビフェニルまたはフェニルピリジンの任意の異性体である式(I)の化合物の調製において、使用される式(1)の化合物が基R'5=o、mもしくはp-ヨードフェニルを含み、ヨウ素は所望のフェニルまたはピリジル基に相当する位置にある。R'5=o、mまたはp-ヨードフェニルが中間体として形成される式(I)の化合物に相当する式(I')の化合物は、続いて、例えば、SuzukiらによるSynth. Commun. 1981、11、513頁またはSharp, M. J.によるTet. Lett. 1985、26、5997頁に記述された従来の条件、または必要であれば、最適化された条件(Littke, A.F.ら、J Am Chem Soc 2000、122(17)、4020〜4028頁)に従って、対応するフェニルボロン酸またはピリジルボロン酸のカップリング相手と一緒に、Suzuki型のカップリング反応またはその類似反応に供される。
【0049】
R3=Hの一般式(1)の1級アミンは、下記のスキーム2に従って調製することができ、スキーム中、R4、R'4、Yおよびnは式(I)の化合物に対する定義の通りであり、R'5がR5基またはR5の前駆体である基を表す:
【0050】
【化14】

【0051】
Y=OまたはSの場合、式(3)のケトンを塩基性媒体中のニトロメタンと反応させた後、式(4)の求核試薬のチオール(Y=S)またはアルコール(Y=O)を、例えば、Lin, W.-W.らによるJ Org Chem 2001、66(6)、1984〜1991頁およびSchneider, R.らによるJ Heterocycl Chem 1994、31(4)、797〜803頁に記述されているように、Mickael型の反応により添加し、式(5)のニトロ化合物を得る。次いで、例えば、Hegedus, L S.;Perry, R. J.;J Org Chem 1984、49(14)、2570頁に記述されているように、LiAlH4による反応により、式(5)の化合物のニトロ官能基を還元して、1級アミン(1)を得ることができる。
【0052】
Y=SO2の場合、例えば、Sakamoto, T.ら、Heterocycles 1988、27、1353頁に記述された条件に従って、式(7)のニトリルは、式(6)の化合物の酸性メチレンの脱プロトン化に続き、求電子試薬R4-X(=R'4-X)によって置換することにより得られる。ただし、Xは、塩素等の脱離基(2当量、またはR4およびR'4が一緒になって環を形成する場合は1当量)である。ここでも、前述のように、例えば、水素化物による反応を利用して、式(7)の化合物のニトロ官能基を還元することで、式(1)の1級アミンを得ることができる。
【0053】
式(2)のイソシアン酸塩は、市販の化合物であるか、または当業者に周知の技法を使って調製可能である。
【0054】
本方法で使用される反応中間体中に、場合によって存在する官能基は、期待される化合物の確かな合成を確実にする保護基により、永久的または一時的に保護することができる。保護および脱保護の反応は、当業者に周知の技法に従って、実施される。アミン、アルコールまたはカルボン酸の一時的な保護基とは、「Protective Groups in Organic Chemistry」、McOmie J.W.F.編集、Plenum Press、1973、「Protective Groups in Organic Synthesis」、第2版、Greene T.W.およびWuts P.G.M.、John Wiley and Sons刊、1991および「Protecting Groups」、Kocienski P. J.、1994、Georg Thieme Verlagに記載された基等の保護基を意味する。
【0055】
本発明に従う化合物(I)ならびにこれらの製薬学的に許容される塩、溶媒和物および/または水和物は、SOAT-1酵素阻害特性を示す。SOAT-1酵素に対するこの阻害作用は、後述するように、1級HepG2酵素テストで測定する。本発明に従う好ましい化合物は、酵素反応の50%阻害を可能にする(IC50)が1200nM以下、好ましくは、500nM以下、有益には、100nM以下の濃度を有する。
【0056】
本発明は、また、医薬品として、前述の式(I)の化合物ならびにこれらの製薬学的に許容される塩、製薬学的に許容される溶媒和物および/または水和物に関する。
【0057】
本発明は、過剰脂漏症、にきび、脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎または酒さ等の皮脂腺の疾患、眼球酒さ(ocular rosacea)等の眼球の病変、眼瞼炎、マイボーム腺炎、霰粒腫、ドライアイ、結膜炎または角結膜炎等のマイボーム腺の疾患、コレステロール血症、動脈硬化症またはアルツハイマー病等のその他の病変の予防および/または治療を目的とした医薬品の製造のための式(I)の少なくとも1つの化合物ならびにその塩、製薬学的に許容される溶媒和物および/または水和物の使用に関する。本発明に従う化合物は、にきびの治療を目的とした医薬組成物の製造に特に適している。したがって、本発明に従う化合物は、上に挙げた病変に使用するのにも適している。
【0058】
本発明は、また、生理的に許容される媒体に、前述の式(I)の少なくとも1つの化合物もしくはその塩の1つ、製薬学的に許容される溶媒和物および/または水和物を含む医薬または化粧用組成物に関する。したがって、本発明に従う組成物は、所望の化粧または医薬形態および選ばれた投与方法に従って選択された生理的に許容された担体または少なくとも1つの生理的もしくは製薬学的に許容された賦形剤を含む。
【0059】
生理的に許容される担体または媒体とは、皮膚、粘膜および/または外皮付属器官と適合性のある担体を意味する。
【0060】
本発明に従う組成物は、腸内、非経口、直腸、局所または眼球経路で投与することができる。好ましくは、医薬組成物は局所適用に適した形でパッケージされる。
【0061】
腸内経路による投与では、組成物、より具体的には、医薬組成物は、制御放出を可能にする、錠剤、カプセル、糖衣錠、シロップ、懸濁液、溶液、粉末、顆粒、乳剤、微小球もしくはナノ粒子または脂質またはポリマーベシクルの形態とすることができる。非経口投与の場合、組成物は、封入または注入用の溶液または懸濁液の形態にすることができる。
【0062】
本発明に従う組成物は、所望の化粧、予防または治療の効果を得るために十分な量で、本発明に従う化合物を含む。本発明に従う化合物は、一般に、1回から3回の投与量で、体重1kgにつき約0.001mgから100mgの1日量で投与される。化合物は、一般に、組成物の重量に対し、0.001から10重量%、好ましくは、0.01から2重量%の濃度で全身的に使用される。
【0063】
局所投与の場合、本発明に従う医薬組成物は、より具体的には、皮膚および粘膜の治療向けであり、膏薬、クリーム、ミルク、軟膏、粉末、含浸したタンポン、合成洗剤、溶液、ゲル、スプレー、ムース、懸濁液、スティックローション、シャンプーまたは洗浄ベースの形態とすることができる。また、制御放出を可能にする、微小球もしくはナノ粒子の懸濁液または脂質もしくはポリマーベシクルまたはポリマーパッチおよびヒドロゲルの形態とすることもできる。局所投与のためのこの組成物は、無水形態、水性形態または乳剤の形態とすることができる。
【0064】
該化合物は、一般に、組成物の総重量に対し、0.001重量%から10重量%、好ましくは0.01から2重量%の濃度で、局所的に使用される。
【0065】
本発明に従う式(I)の化合物、それらの塩、製薬学的に許容される溶媒和物および/または水和物は、化粧分野で、特に身体および毛髪の衛生に、そしてより具体的には、脂性の皮膚、脂性の毛髪または脂性の頭髪の克服または予防にも、適用される。
【0066】
したがって、本発明は、また、生理的に許容される担体に、式(I)の化合物の少なくとも1つを、任意選択で、身体または毛髪の衛生のために、塩、製薬学的に許容される溶媒和物および/または水和物の形態で含む組成物の美容的使用にも関する。
【0067】
化粧用に許容される担体に、式(I)の少なくとも1つの化合物またはその塩の1つ、製薬学的に許容される溶媒和物および/または水和物を含む、本発明に従う化粧用組成物は、特に、クリーム、ミルク、ローション、ゲル、膏薬、軟膏、微小球もしくはナノ粒子の懸濁液、または脂質もしくはポリマーベシクル、含浸したタンポン、溶液、スプレー、ムース、スティック、石鹸、シャンプーまたは洗浄ベースの形態とすることができる。
【0068】
化粧組成物における式(I)の化合物の濃度は、組成物の総重量に対し、0.001から3重量%である。
【0069】
前述した医薬および化粧用組成物は、不活性の添加剤(医薬組成物の場合は、薬力学的に活性の添加剤も可)またはそれらの添加剤の組合せを追加で含むことができ、特に以下が挙げられる:
- 湿潤剤、
- 香味増強剤、
- 防腐剤、例えば、パラヒドロキシ安息香酸エステル等、
- 安定剤、
- 湿気調節剤、
- pH調節剤、
- 浸透圧改変剤、
- 乳化剤、
- UV-AおよびUV-Bフィルター、
- 抗酸化剤、例えば、α-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソールもしくはブチル化ヒドロキシトルエン、スーパーオキシドジスムターゼ、ユビキノールまたは特定の金属キレート剤、
- ヒドロキノン、アゼライン酸、コーヒー酸またはコウジ酸等の脱色剤(depigmenting agent)、
- 皮膚軟化剤、
- 加湿剤、例えば、グリセロール、PEG400、チアモルホリノンおよびそれらの誘導体または尿素等、
- カロテノイド、特にβ-カロチン、
- α-ヒドロキシ酸およびα-ケト酸またはそれらの誘導体、例えば、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、マンデル酸、酒石酸、グリセリン酸およびアスコルビン酸、ならびにそれらの塩、アミドもしくはエステル、あるいはβ-ヒドロキシ酸もしくはその誘導体、例えば、サリチル酸、ならびにそれらの塩、アミドもしくはエステル。
【0070】
もちろん、当業者は、本発明に固有の有益な特性が、想定される添加によって変質されないまたは大幅には変質されないように、これらの組成物に添加する1つまたは複数の化合物を注意して選択する。
【0071】
さらに、一般的に、式(I)の化合物について既に言及した好ましい事柄は、必要に応じて変更を加えて、本発明の化合物を利用する医薬品、化粧用および医薬組成物ならびにそれらの応用にも適用される。
【発明を実施するための形態】
【0072】
例示のために、及び制限的な意図を一切することなく、本発明に従う式(I)の活性化合物の調製ならびに該化合物の生物学的活性の結果の複数例を以下に示す。
【0073】
以下の略語が用いられる:
【0074】
iPr=イソプロピル、Ph=フェニル、P-トリル=4-メチルフェニル、p=パラ、m=メタ、o=オルト、BiPh=ビフェニル、Me=メチル、
【0075】
【化15】

【実施例1】
【0076】
1-(1-ベンゼンスルホニル-シクロペンチルメチル)-3-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-尿素、化合物(I.1)
式中、Y=-S(O)p、p=2、n=0、R=H、R1=R2=iPr;R3=H;R4およびR'4は一緒になって、シクロペンチルを形成する;R5=pH
【0077】
【化16】

【0078】
a/ 1-ベンゼンスルホニル-シクロペンタンカルボニトリル
ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド629mg(2.8mmol)を50%ソーダ水溶液50ml中ベンゼンスルホニルアセトニトリル5g(27.6mmol)および1,4-ジブロモブタン6.55g(30.3mmol)に添加する。反応混合物を室温で3時間撹拌する。次いで水で希釈し、酢酸エチルで抽出する。有機相を合わせ、水で洗浄する。硫酸マグネシウムの上で乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発させる。残渣をシリカゲル(ヘプタン/酢酸エチル、50/50、v/v)上で精製する。1-ベンゼンスルホニル-シクロペンタンカルボニトリル6.35gをベージュの粉末の形態で得た。(収率=98%)。
【0079】
b/ C-(1-ベンゼンスルホニル-シクロペンチル)-メチルアミン
水素化アルミニウムリチウム194mg(5.1mmol)を、テトラヒドロフラン20ml中1-ベンゼンスルホニル-シクロペンタンカルボニトリル1g(4.2mmol)溶液に添加する。反応混合物を室温(RT)で20時間撹拌する。次いで、水194μl、15%ソーダ溶液194μl、次に水582μlで加水分解し、5分間撹拌した後、濾過する。濾液を蒸発させ、残渣を、シリカゲル上でクロマトグラフィー分析にかける(ジクロロメタン、次にジクロロメタン/メタノール、90/10、v/v)。C-(1-ベンゼンスルホニル-シクロペンチル)-メチルアミン420mgを、無色の油の形態で得た。(収率=42%)。
【0080】
c/ 1-(1-ベンゼンスルホニルシクロペンチルメチル)-3-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-尿素
管の中に、窒素下で2-イソシアナート-1,3-ジイソプロピルベンゼン157mg(0.77mmol)を、ジクロロメタン3.5ml中C-(1-ベンゼンスルホニル-シクロペンチル)-メチルアミン168mg(0.7mmol)溶液に添加する。反応混合物を室温(RT)で3時間撹拌する。溶媒を窒素流で蒸発させる。得られたペーストを、結晶化のために、ヘプタン(5mL)に取り込む。得られた白色粉末をシリカゲル上でクロマトグラフィー分析にかける(ジクロロメタン、次にジクロロメタン/メタノール、98/2、v/v)。得られた油をヘプタンから結晶化する。濾過および乾燥後、1-(1-ベンゼンスルホニルシクロペンチルメチル)-3-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-尿素135mgを白色粉末の形態で得た(m.p.=124℃、収率44%)。
1H NMR (CDCl3, 400MHz): 1.19〜1.33 (m, 12H)、1.56 (m, 2H)、1.66 (m, 4H)、2.41 (m, 2H)、3.29 (m, 2H)、3.4 (d, J=4.8Hz, 2H)、5.46 (br, 〜1H)、6.06 (br, 1H)、7.23〜7.26 (m, 2H)、7.37 (t, J=7.6Hz, 1H)、7.46〜7.50 (m, 2H)、7.6〜7.66 (m, 3H)。
【0081】
[実施例2]
1-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-3-[1-(トルエン-4-スルホニル)-シクロペンチルメチル]-尿素、化合物(I.2)
式中、Y=-S(O)p、p=2、n=0、R=H、R1=R2=iPr;R3=H;R4およびR'4は一緒になってシクロペンチルを形成する;R5=p-トリル
【0082】
【化17】

【0083】
a/ (トルエン-4-スルホニル)-アセトニトリル
ブロモアセトニトリル3.37g(28mmol)およびベンジルトリエチルアンモニウムクロリド640mg(2.8mmol)を、トルエン50mlおよびジメチルホルムアミド50ml中ナトリウム4-メチル-ベンゼンスルフィネート5g(28mmol)溶液に添加する。反応混合物を室温で24時間撹拌する。不均一の混合物を濾過する。濾液を蒸発させた後、シリカゲル上で精製する(ヘプタン、次にヘプタン/酢酸エチル、60/40 v/v)。生成物をヘプタン中で粉砕した後、濾過し、乾燥させる。(トルエン-4-スルホニル)-アセトニトリル2.95gを薄黄色粉末の形態で得た。(収率=54%)。
【0084】
b/ 1-(トルエン-4-スルホニル)-シクロペンタンカルボニトリル
実施例1の段落a)と同様、(トルエン-4-スルホニル)-アセトニトリル2g(10.2mmol)を、1,4-ジブロモブタン1.35ml(11.3mmol)、ソーダ水溶液50ml、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド233mg(1mmol)と反応させることにより、1-(トルエン-4-スルホニル)シクロペンタンカルボニトリル2.14gを褐色粉末の形態で得た。(収率=84%)。
【0085】
c/ C-[1-(トルエン-4-スルホニル)-シクロペンチル]-メチルアミン
実施例1のb)と同様、1-(トルエン-4-スルホニル)-シクロペンタンカルボニトリル1.1g(4.4mmol)を、水素化アルミニウムリチウム200mgと反応させることにより、C-[1-(トルエン-4-スルホニル)-シクロペンチル]-メチルアミン400mgを橙色の固体の形態で得た。(収率=36%)。
【0086】
d/ 1-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-3-[1-(トルエン-4-スルホニル)-シクロペンチルメチル]-尿素
実施例1のc)と同様、C-[1-(トルエン-4-スルホニル)-シクロペンチル]-メチルアミン200mg(0.8mmol)を、2-イソシアナート-1,3-ジイソプロピル-ベンゼン177mg(0.87mmol)と反応させることにより、1-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-3-[1-(トルエン-4-スルホニル)シクロペンチルメチル]-尿素276mgを灰色がかった白色の粉末の形態で得た。(収率=77%)。
1H NMR (CDCl3, 400MHz): 1.19〜1.32 (m, 12H)、1.53〜1.67 (m, 6H)、2.11〜2.18 (m, 2H)、2.42 (s, 3H)、3.29 (m, 2H)、3.40 (d, J=5.2Hz, 2H)、5.51 (br, 1H)、5.78 (br, 1H)、7.23〜7.28 (m, 4H)、7.37 (t, J=8.0Hz, 1H)、7.52 (br, 2H)。
【0087】
[実施例3]
1-(2-ベンゼンスルホニル-インダン-2-イルメチル)-3-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-尿素、化合物(I.3)
式中、Y=-S(O)p、p=2、n=0、R=H、R1=R2=iPr;R3=H;R4およびR'4は一緒になって、インダニルを形態成する;R5=Ph
【0088】
【化18】

【0089】
a/ 2-ベンゼンスルホニル-インダン-2-カルボニトリル
実施例1のa)と同様、ベンゼンスルホニル-アセトニトリル5g(27.6mmol)を、a,a'-ジブロモ-o-キシレン8g(30.4mmol)、ソーダ水溶液50ml、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド629mg(2.8mmol)と反応させることにより、2-ベンゼンスルホニル-インダン-2-カルボニトリル2.1gを白色固体の形態で得た。(収率=27%)。
【0090】
b/ C-(2-ベンゼンスルホニル-インダン-2-イル)-メチルアミン
実施例1のb)と同様、2-ベンゼンスルホニル-インダン-2-カルボニトリル1g(3.5mmol)を、水素化アルミニウムリチウム161mg(4.2mmol)と反応させることにより、C-(2-ベンゼンスルホニル-インダン-2-イル)-メチルアミン168mgを褐色の油の形態で得た。(収率=17%)。
【0091】
c/ 1-(2-ベンゼンスルホニル-インダン-2-イルメチル)-3-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-尿素
実施例1のc)と同様、C-(2-ベンゼンスルホニル-インダン-2-イル)-メチルアミン168mg(0.6mmol)を、2-イソシアナート-1,3-ジイソプロピル-ベンゼン131mg(0.64mmol)と反応させることにより、1-(2-ベンゼンスルホニル-インダン-2-イルメチル)-3-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-尿素106mgを白色固体の形態で得た。(収率=36%)。
1H NMR (CDCl3, 400MHz): 1.2〜1.38 (m, 12H)、2.96 (d, J=16.7Hz, 2H)、3.31 (m, 2H)、3.55 (d, J=16.8Hz, 2H)、3.64 (d, J=5.2Hz, 2H)、〜5.55 (br, 1H)、5.80 (br, 1H)、7.05 (m, 4H)、7.26 (s, 2H)、7.43 (m, 3H)、7.6 (m, 1H)、7.65 (br, 2H)。
【0092】
[実施例4]
1-(1-ベンジルスルファニル-シクロヘキシルメチル)-3-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-尿素、化合物(I.4)
式中、Y=S、p=0、n=1、R=H、R1=R2=iPr;R3=H;R4およびR'4は一緒になってシクロヘキシルを形成する;R5=Ph
【0093】
【化19】

【0094】
a/ (1-ニトロメチル-シクロヘキシルスルファニルメチル)-ベンゼン
シクロヘキサノン1.05ml(10mmol)、ニトロメタン5.5ml(101mmol)、ピペリジン2.1ml(21mmol)を、アセトニトリル20ml中ベンジルメルカプタン5ml(42mmol)溶液に添加する。溶液を4時間還流する。室温で、混合物を蒸発させ、残渣をシリカゲル上でクロマトグラフィー分析にかける(ヘプタン、次にヘプタン/酢酸エチル、50/50、v/v)。(1-ニトロメチル-シクロヘキシルスルファニルメチル)-ベンゼン600mgを無色の油の形態で得た。(収率=22%)。
【0095】
b/ C-(1-ベンジルスルファニル-シクロヘキシル)-メチルアミン
エチルエーテル20ml中、(1-ニトロメチル-シクロヘキシル-スルファニルメチル)-ベンゼン500mg(1.88mmol)溶液を、0℃で、エチルエーテル10ml中水素化アルミニウムリチウム86mg(2.26mmol)に滴下添加する。0℃で2時間撹拌する。水100μl、15%ソーダ100μl、次に水500μlを添加することにより、反応を停止させる。次いで、混合物をセライトで濾過し、濾液を蒸発させる。残渣をシリカゲル上で精製する(ヘプタン/酢酸エチル、50/50、v/v、次に酢酸エチル、次に酢酸エチル/メタノール、50/50、v/v)。C-(1-ベンジルスルファニル-シクロヘキシル)-メチルアミン125mgを無色の油の形態で得た。(収率=28%)。
【0096】
c/ 1-(1-ベンジルスルファニル-シクロヘキシルメチル)-3-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-尿素
実施例1のc)と同様、C-(1-ベンジルスルファニル-シクロヘキシル)-メチルアミン120mg(0.51mmol)を、2,6-ジイソプロピルフェニルイソシアナート125μl(0.61mmol)と反応させることにより、1-(1-ベンジルスルファニル-シクロヘキシルメチル)-3-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-尿素101mgを、白色固体の形態で得た(m.p.=156℃、収率45%)。
質量(MASS): 439。HPLC: 96.6%。
1H NMR (CDCl3, 400Mz): 1.18 (s, 6H); 1.23 (s, 6H); 1.41〜1.65 (m, 10H); 3.24〜3.24 (d, 2H); 3.26〜3.36 (m, 2H); 3.43 (s, 2H); 4.75 (s, 1H); 5.70 (s, 1H); 7.01 (s, 2H); 7.17 (d, 3H); 7.25〜7.28 (m, 2H); 7.38〜7.42 (m, 1H)。
【0097】
[実施例5]
生物学的テスト
本発明に従う式(I)の化合物を、酵素ACAT-1に関する阻害活性を評価するために、以下の研究に基づいてテストした:「Identification of ACAT1- and ACAT2-specific inhibitors using a novel, cell based fluorescence assay: individual ACAT uniqueness」、J.lipid.Res (2004) vol 45、378〜386頁。このテストの原理は、その環境に応じて、蛍光発光するコレステロール類似体であるNBD-コレステロールを使用することに基づく。NBD-コレステロールは、極性環境では、弱く蛍光を発し、非極性環境では、強く蛍光を発する。遊離NBD-コレステロールは、細胞膜に局在し、この極性環境で弱く蛍光を発する。NBD-コレステロールがACATによってエステル化されると、NBD-コレステロールのエステルは、非極性脂肪滴に局在し、強く蛍光を発する。
【0098】
以下の方法が使用される:NBD-コレステロール(1μg/ml)および式(I)のテスト化合物の存在下で、1ウェルにつき30000細胞の割合で、HepG2細胞をインキュベートする。5%CO2のもと、37℃で6時間インキュベートした後、混合物を反転により除去し、細胞を2x100μlのPBCにより洗浄する。溶解バッファ(NaPO4 10mM、Igepal 1%) 50μlを添加した後、プレートを5分間激しく揺すり、FUSION計器(Perkin Elmer)で、蛍光を測定する(励起490nm、発光540nm)。例えば、化合物(I.4)のIC50は、71nMと求められた。
【0099】
[実施例6]
処方の例
本発明に従う化合物をベースとする様々な実際の処方を以下に示す。
A- 経口投与
(a) 0.2gの錠剤
- 化合物(I.3) 0.001g
- 澱粉 0.114g
- 第二リン酸カルシウム 0.020g
- シリカ 0.020g
- ラクトース 0.030g
- タルク 0.010g
- ステアリン酸マグネシウム 0.005g
(b) 5mlアンプル中経口懸濁液
- 化合物(I.1) 0.001g
- グリセロール 0.500g
- 70%ソルビトール 0.500g
- サッカリンナトリウム 0.010g
- パラヒドロキシ安息香酸メチル 0.040g
- 香味料 qs
- 純水 q.s. 5ml
B- 局所投与
(a) 膏薬
- 化合物(I.2) 0.300g
- 白色ワセリンゼリーコーデックス(codex) q.s. 100g
(d) ローション
- 化合物(I.4) 0.100g
- ポリエチレングリコール(PEG 400) 69.900g
- 95%エタノ-ル 30.000g
(e) 疎水性膏薬
- 化合物(I.1) 0.300g
- ミリスチン酸イソプロピル 36.400g
- シリコーン油(「Rhodorsil 47 V 300」) 36.400g
- 蜜蝋 13.600g
- シリコーン油(「Abil 300,000 cSt」) q.s. 100g
(f) 非イオン性水中油型クリ-ム
- 化合物(I.2) 1.000g
- セチルアルコール 4.000g
- モノステアリン酸グリセロール 2.500g
- PEG50のステアリン酸塩 2.500g
- シアバター 9.200g
- プロピレングリコール 2.000g
- パラヒドロキシ安息香酸メチル 0.075g
- パラヒドロキシ安息香酸プロピル 0.075g
- 滅菌脱塩水 q.s. 100g

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】

[式中、
Yは、OまたはS(O)pを表し、
pは、0または2に等しく、
nは、0、1または2に等しく、
Rは、水素原子、(C1〜C6)アルキル基、-CH2-NR6R7基、-C(O)-NR6R7基または-C(S)-NR6R7基を表し(ただし、R6は、水素原子または(C1〜C4)アルキル基を表し、R7は、水素原子、フェニルまたはシクロアルキル基を表す)、
R1は、水素原子、(C1〜C6)アルキル基または塩素、臭素もしくはフッ素の原子を表し、
R2は、(C1〜C6)アルキル基を表し、
R3は、水素原子または(C1〜C6)アルキル基を表し、
R4およびR'4は同一であり、(C1〜C6)アルキル基を表すか、またはR4およびR'4は、一緒になって結合し、これらが結合している炭素原子と共に、シクロアルキル基、インダニル基またはピペリジン、テトラヒドロピラン、ピロリジン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロフランおよびアゼチジン基から選択される飽和ヘテロ環基を形成し、さらに、ピペリジン、ピロリジンおよびアゼチジン基は、R8、-C(O)R8または-SO2R8基(ただし、R8は、(C1〜C4)アルキル基を表す)によって窒素原子上で場合によって置換でき、
R5は、未置換のフェニル基または塩素、臭素もしくはフッ素の原子、(C1〜C6)アルキル、シクロアルキル、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、フェニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、(C1〜C6)アルコキシ、フェノキシ、(C1〜C6)アルキルチオ、トリフルオロメトキシまたは-NR9R10基(ただし、R9およびR10は、同一であっても異なってもよく、それぞれ独立に水素原子または(C1〜C4)アルキル基を表す)から選択される、同一であっても異なってもよい1から3個の置換基によって置換されたフェニル基を表す]、
およびこれらの製薬学的に許容される塩、溶媒和物または水和物。
【請求項2】
下記:
Yは、O、S(O)pを表し、
Pは、0または2に等しく、
nは、0、1または2に等しく、
Rは、水素原子を表し、
R1は、メチル、エチル、イソプロピルまたはtert-ブチル基を表し、
R2は、メチル、エチル、イソプロピルまたはtert-ブチル基を表し、
R3は、水素原子を表し、
R4およびR'4は、同一であり、エチル基を表すか、またはR4およびR'4は、一緒になって結合し、これらが結合している炭素原子と共に、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルもしくはインダニル基、またはテトラヒドロピラン基、ピペリジン基、またはR8、-C(O)R8、もしくは-SO2R8基(ただし、R8は、(C1〜C4)アルキル基を表す)によって窒素原子上で置換されたピペリジン基を形成し、
R5は、o-、m-もしくはp-ビフェニル、o-、m-もしくはp-ヨードフェニル、o-、m-もしくはp-(2-ピリジル)フェニル、o-、m-もしくはp-(3-ピリジル)フェニルまたはo-、m-もしくはp-(4-ピリジル)フェニル基、未置換のフェニル基、メチル、エチル、トリフルオロメチル、フッ素、塩素、ヒドロキシから選択される、同一または異なる1から3個の置換基によって置換されたフェニル基を表す
ことを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
nが0または1に等しいことを特徴とする、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
Rが水素原子を表すことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
R1がイソプロピル基を表すことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
R2がイソプロピル基を表すことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R3が水素原子を表すことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
R4およびR'4が一緒になって結合し、これらが結合している窒素原子と共に、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはインダニル基を形成することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
R5が未置換のフェニル基、またはメチル基もしくはフェニル基によって置換されたフェニル基であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
以下の化合物、これらの製薬学的に許容される塩、溶媒和物および水和物から選択される、請求項1に記載の化合物:
1-(1-ベンゼンスルホニル-シクロペンチルメチル)-3-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-尿素、
1-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-3-[1-(トルエン-4-スルホニル)-シクロペンチルメチル]-尿素、
1-(2-ベンゼンスルホニル-インダン-2-イルメチル)-3-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-尿素、
1-(1-ベンジルスルファニル-シクロヘキシルメチル)-3-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-尿素、
1-(1-ベンジルオキシ-シクロヘキシルメチル)-3-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-尿素、
1-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-3-(1-フェノキシ-シクロヘキシルメチル)-尿素、
1-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-3-(1-フェニルスルファニル-シクロヘキシルメチル)-尿素、
1-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-3-(1-p-トリルスルファニル-シクロヘキシルメチル)-尿素、
1-[1-(ビフェニル-2-イルスルファニル)-シクロヘキシルメチル]-3-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-尿素、
1-[1-(ビフェニル-2-イルスルファニル)-シクロペンチルメチル]-3-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-尿素、
1-[1-(ビフェニル-2-イルオキシ)-シクロヘキシルメチル]-3-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-尿素。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の、医薬品としての化合物。
【請求項12】
生理的に許容される担体に、請求項1から10のいずれか一項に記載の少なくとも1つの化合物を含む医薬組成物。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物の濃度が、組成物の総重量に対して、0.001から10重量%であることを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物の濃度が、組成物の総重量に対して、0.01から2重量%であることを特徴とする、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
生理的に許容される担体に、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物を少なくとも1つ含んでいることを特徴とする、化粧用組成物。
【請求項16】
請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物の濃度が、組成物の総重量に対して、0.001から3重量%であることを特徴とする、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
局所適用に適した形態であることを特徴とする、請求項12から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
クリーム、ミルク、ローション、ゲル、膏薬、軟膏、微小球もしくはナノ粒子の懸濁液または脂質もしくはポリマーベシクル、含浸したタンポン、溶液、スプレー、ムース、スティック、石鹸、シャンプーまたは洗浄用ベースの形態であることを特徴とする、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
身体または毛髪の衛生のための、請求項15または16に記載の組成物の美容的使用。
【請求項20】
過剰脂漏症、にきび、脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、酒さ等の皮脂腺の疾患、眼球酒さ、眼瞼炎、マイボーム腺炎、霰粒腫、ドライアイ、結膜炎または角結膜炎、コレステロール血症、動脈硬化症およびアルツハイマー病の予防および/または治療用の、医薬品の製造における、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項21】
にきびの治療用の、医薬品の製造のための、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項22】
以下の段階を含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の製造方法:
[式(1)の1級または2級アミン:
【化2】

(式中、R3、R4、R'4、nおよびYは、請求項1における定義の通りであり、R'5は、請求項1で定義されたR5基またはR5基の前駆体を表す)、
を、式(2)の化合物:
【化3】

(式中、R、R1、およびR2は、請求項1における定義の通りである)
と反応させ、式(I')の化合物を得る:
【化4】

(式中、R、R1、R2、R3、R4、R'4、Yおよびnは、請求項1における定義の通りであり、R'5は、請求項1で定義されたR5基またはR5基の前駆体を表す)
次いで、R'5がR5と異なるとき、R'5基を、所望のR5基を得られるように変換する]。

【公表番号】特表2010−538047(P2010−538047A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523514(P2010−523514)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/061779
【国際公開番号】WO2009/030752
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(599045604)ガルデルマ・リサーチ・アンド・デヴェロップメント (117)
【Fターム(参考)】