説明

フェニル酢酸化合物

【課題】医薬、農薬、又はその中間体等として有用な、新規なフェニル酢酸化合物を提供する。
【解決手段】本発明のフェニル酢酸化合物は、下記式(1)で表される。式中、R1は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、R2は水素原子又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基、R3は酸素原子を含有していてもよい炭素数4〜10の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を示す。AはO又はSを示し、nは0又は1を示す。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、農薬、又はその中間体等として有用なフェニル酢酸化合物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェニル酢酸化合物は、医薬、農薬、又はその中間体等として有用であることが知られている(特許文献1、2等)。
【0003】
例えば、5−メチル−2−(ハロゲン化アニリノ)フェニル酢酸は、シクロオキシゲナーゼ2を選択的に阻害する作用を有し、非ステロイド性抗炎症剤として有用であることが知られている(特許文献3)。また、特許文献4には、医薬として有用なインダゾール誘導体の中間体として、o−アミノフェニル酢酸誘導体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−302220号公報
【特許文献2】特開2010−31027号公報
【特許文献3】特表2009−541487号公報
【特許文献4】特開2003−238537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、医薬、農薬、又はその中間体等として有用な、新規なフェニル酢酸化合物を提供することにある。
本発明の他の目的は、新規なフェニル酢酸化合物の製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、前記新規なフェニル酢酸化合物の製造中間体とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、塩基の存在下、アルキル置換ベンジルアルコール、アルキル置換フェノール、アルキル置換ベンジルチオール、若しくはアルキル置換ベンゼンチオールにハロゲン化アルキルを反応させて得られる化合物に、フリーデル・クラフツ反応によりアシル化を行い、続いて転位及び加水分解を行うと、新規なフェニル酢酸化合物が得られることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0007】
すなわち、本発明は下記式(1)
【化1】

(式中、R1は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、R2は水素原子又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基、R3は酸素原子を含有していてもよい炭素数4〜10の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を示す。AはO又はSを示し、nは0又は1を示す)
で表されるフェニル酢酸化合物を提供する。
【0008】
本発明は、また、下記式(2)
【化2】

(式中、R1は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、R2は水素原子又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基、R3は酸素原子を含有していてもよい炭素数4〜10の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基、R4は炭素数1〜9の2価の脂肪族炭化水素基を示す。Xはハロゲン原子、AはO又はSを示し、nは0又は1を示す)
で表されるアセタール保護されたハロアセチルベンゼン化合物を塩基の存在下で加熱し、加水分解することにより、下記式(1)
【化3】

(式中、R1、R2、R3、A、nは上記に同じ)
で表されるフェニル酢酸化合物を得るフェニル酢酸化合物の製造方法を提供する。
【0009】
本発明は、さらに、下記式(2)
【化4】

(式中、R1は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、R2は水素原子又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基、R3は酸素原子を含有していてもよい炭素数4〜10の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基、R4は炭素数1〜9の2価の脂肪族炭化水素基を示す。Xはハロゲン原子、AはO又はSを示し、nは0又は1を示す)
で表されるアセタール保護されたハロアセチルベンゼン化合物を提供する。
【0010】
本発明は、さらにまた、下記式(7)
【化5】

(式中、R1は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、R2は水素原子又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基、R3は酸素原子を含有していてもよい炭素数4〜10の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を示す。Xはハロゲン原子、AはO又はSを示し、nは0又は1を示す)
で表されるハロアセチルベンゼン化合物を、下記式(8)
HO−R4−OH (8)
(式中、R4は炭素数1〜9の2価の脂肪族炭化水素基を示す)
で表されるジオール化合物と反応させて、下記式(2)
【化6】

(式中、R1、R2、R3、R4、X、A、nは前記に同じ)
で表されるアセタール保護されたハロアセチルベンゼン化合物を得るアセタール保護されたハロアセチルベンゼン化合物の製造方法を提供する。
【0011】
本発明は、また、下記式(7a)
【化7】

(式中、R1は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、R2は水素原子又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基、R3'は酸素原子を含有していてもよい炭素数5〜10の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を示す。Xはハロゲン原子、AはO又はSを示し、nは0又は1を示す)
で表されるハロアセチルベンゼン化合物を提供する。
【0012】
本発明は、さらに、下記式(5)
【化8】

(式中、R1は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、R2は水素原子又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基、R3は酸素原子を含有していてもよい炭素数4〜10の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を示す。AはO又はSを示し、nは0又は1を示す)
で表されるベンゼン誘導体を、酸触媒の存在下、下記式(6)
X−CH2C(=O)−X'' (6)
(式中、X、X''は、同一又は異なって、ハロゲン原子を示す)
で表されるハロアセチルハライドと反応させて、下記式(7)
【化9】

(式中、R1、R2、R3、X、A、nは前記に同じ)
で表されるハロアセチルベンゼン化合物を得るハロアセチルベンゼン化合物の製造方法を提供する。
【0013】
上記製造方法において、反応は、脂肪族炭化水素及び脂環式炭化水素から選択された少なくとも1種の溶媒中で行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるフェニル酢酸化合物の製造方法によれば、効率よく且つ簡便に、目的とする上記式(1)で表される新規なフェニル酢酸化合物を合成することができる。そして、得られた上記式(1)で表されるフェニル酢酸化合物は、医薬、農薬、又はその中間体、電子材料の中間体等として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[フェニル酢酸化合物]
本発明にかかるフェニル酢酸化合物は上記式(1)で表される。式中、R1は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、R2は水素原子又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基、R3は酸素原子を含有していてもよい炭素数4〜10の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を示す。AはO又はSを示し、nは0又は1を示す。
【0016】
1は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の直鎖状又は分岐鎖状のC1-3アルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、アリル基等の直鎖状又は分岐鎖状のC2-3アルケニル基;エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基等の直鎖状又は分岐鎖状のC2-3アルキニル基等が挙げられる。本発明におけるR1としては、なかでも直鎖状又は分岐鎖状のC1-3アルキル基が好ましい。
【0017】
2は水素原子又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を示す。炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基の例としては上記R1における炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基の例と同様の例を挙げることができる。また、炭素数1〜3の脂環式炭化水素基の例としては、シクロプロピル基、シクロプロペニル基等を挙げることができる。本発明におけるR2としては、なかでも炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基が好ましく、特に、直鎖状又は分岐鎖状のC1-3アルキル基が好ましい。
【0018】
3は酸素原子を含有していてもよい炭素数4〜10の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を示す。炭素数4〜10の脂肪族炭化水素基としては、例えば、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、1,2,3−トリメチルブチル、アミル、イソアミル、ヘキシル、イソヘキシル、2−エチルヘキシル、3−エチルヘキシル、4−エチルヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、オクチル、イソオクチル、カプリル、ノニル、デシル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチルアリル、1−メチル−1−プロペニル、1−メチルアリル、1,1−ジメチルビニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、3−メチル−1−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、3−メチル−3−ブテニル、2−メチル−1−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、2−メチル−3−ブテニル、1−メチル−1−ブテニル、1−メチル−2−ブテニル、1−メチル−3−ブテニル、1,1−ジメチルアリル、1,2−ジメチル−1−プロペニル、1,2−ジメチル−2−プロペニル、1−エチル−1−プロペニル、1−エチル−2−プロペニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、3−メチル−1−ブテニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル、1,1−ジメチル−1−ブテニル、1,1−ジメチル−2−ブテニル、1,1−ジメチル−3−ブテニル、3,3−ジメチル−1−ブテニル、1−メチル−1−ペンテニル、1−メチル−2−ペンテニル、1−メチル−3−ペンテニル、1−メチル−4−ペンテニル、4−メチル−1−ペンテニル、4−メチル−2−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基等を挙げることができる。
【0019】
3における炭素数4〜10の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などの4〜10員(好ましくは5〜6員)のシクロアルキル基;シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル基などの4〜10員(好ましくは5〜6員)のシクロアルケニル基などの単環の脂環式炭化水素基;アダマンタン環、パーヒドロインデン環、デカリン環、トリシクロデカン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環など2〜3環程度の有橋脂環などを有する有橋脂環式炭化水素基(橋かけ環炭化水素基)等を挙げることができる。
【0020】
3における酸素原子を含有する炭素数4〜10の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基から選択される2個以上の基が、酸素原子を介して結合してなる総炭素数が4〜10の基等を挙げることができる。このような基として、下記式(a)
【化10】

(式中、R31は、1価の脂肪族炭化水素基又は1価の脂環式炭化水素基、R32は2価の脂肪族炭化水素基又は2価の脂環式炭化水素基を示す。R32の右端が前記Aと結合している。R31とR32の総炭素数は4〜10である)
で表される基が挙げられる。
【0021】
前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、前記脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基が好ましい。
【0022】
前記炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、1,2,3−トリメチルブチル、アミル、イソアミル、ヘキシル、イソヘキシル、2−エチルヘキシル、3−エチルヘキシル、4−エチルヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、オクチル、イソオクチル、カプリル、ノニル、デシル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;ビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチルアリル、1−メチル−1−プロペニル、1−メチルアリル、1,1−ジメチルビニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、3−メチル−1−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、3−メチル−3−ブテニル、2−メチル−1−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、2−メチル−3−ブテニル、1−メチル−1−ブテニル、1−メチル−2−ブテニル、1−メチル−3−ブテニル、1,1−ジメチルアリル、1,2−ジメチル−1−プロペニル、1,2−ジメチル−2−プロペニル、1−エチル−1−プロペニル、1−エチル−2−プロペニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、3−メチル−1−ブテニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル、1,1−ジメチル−1−ブテニル、1,1−ジメチル−2−ブテニル、1,1−ジメチル−3−ブテニル、3,3−ジメチル−1−ブテニル、1−メチル−1−ペンテニル、1−メチル−2−ペンテニル、1−メチル−3−ペンテニル、1−メチル−4−ペンテニル、4−メチル−1−ペンテニル、4−メチル−2−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基等を挙げることができる。
【0023】
前記炭素数3〜10の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などの3〜10員(好ましくは5〜6員)のシクロアルキル基、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル基などの3〜10員(好ましくは5〜6員)のシクロアルケニル基などの単環の脂環式炭化水素基;アダマンタン環、パーヒドロインデン環、デカリン環、トリシクロデカン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環など2〜3環程度の有橋脂環などを有する有橋脂環式炭化水素基(橋かけ環炭化水素基)等を挙げることができる。
【0024】
本発明におけるR3としては、なかでも、総炭素数4〜10の脂肪族炭化水素基又は酸素原子を含有する総炭素数4〜10の脂肪族炭化水素基が好ましく、特に、炭素数4〜10の分岐鎖状アルキル基、又は炭素数3〜9の分岐鎖状アルキル基と炭素数1〜7(特に、炭素数1〜4)の直鎖状アルキル基が酸素原子を介して結合して成る総炭素数4〜10の基[前記式(a)において、R31が炭素数1〜7(特に、炭素数1〜4)の直鎖状アルキル基であり、R32が炭素数3〜9の分岐鎖状アルキレン基である基]が好ましい。
【0025】
本発明における式(1)で表されるフェニル酢酸化合物の具体例としては、下記化合物を挙げることができる。
【化11】

【0026】
【化12】

【0027】
[フェニル酢酸化合物の製造方法]
式(1)で表されるフェニル酢酸化合物は、式(2)で表される化合物(アセタール保護されたハロアセチルベンゼン化合物)を塩基の存在下で加熱し、加水分解することにより合成される。
【化13】

【0028】
上記式(2)中、R1は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、R2は水素原子又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基、R3は酸素原子を含有していてもよい炭素数4〜10の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基、R4は炭素数1〜9(好ましくは、炭素数2〜7)の2価の脂肪族炭化水素基を示す。Xはハロゲン原子、AはO又はSを示し、nは0又は1を示す。
【0029】
式(2)中のR1、R2、R3、A、nは、上記式(1)中のR1、R2、R3、A、nに対応する。
【0030】
4は炭素数1〜9の2価の脂肪族炭化水素基を示し、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン基等の直鎖状アルキレン基;メチルメチレン、ジメチルメチレン、エチルメチレン、ジエチルメチレン、1−メチルエチレン、1,1−ジメチルエチレン、1−エチルエチレン、1,1−ジエチルエチレン、1−メチルトリメチレン、2−メチルトリメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、2−エチルトリメチレン、2,2−ジエチルトリメチレン、1−メチルテトラメチレン基等の分岐鎖状アルキレン基等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、汎用性に優れ、原料の入手が容易な点、及び反応性に優れる点で、炭素数2〜7の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基が好ましく、特に、エチレン、1−メチルエチレン、トリメチレン、2−メチルトリメチレン、2−エチルトリメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、2,2−ジエチルトリメチレン基等の、C1-2アルキル基を有していてもよいC2-3アルキレン基が好ましい。
【0031】
Xはハロゲン原子を示し、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の何れかである。
【0032】
塩基としては、例えば、アルカリ金属のギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、リン酸塩、炭酸塩、又は炭酸水素塩等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のアルカリ金属の酢酸塩等の弱塩基を使用することが好ましい。塩基の使用量としては、例えば、上記式(2)で表される化合物1モルに対して、0.1〜5モル程度、好ましくは0.5〜2モル程度である。また、前記弱塩基と共に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの強塩基を使用してもよい。水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの強塩基を併用する場合、その使用量としては、上記式(2)で表される化合物1モルに対して、0.1〜5モル程度、好ましくは0.5〜3モル程度である。
【0033】
加熱温度としては、例えば、100〜250℃、好ましくは100〜180℃程度である。反応時間は、例えば、0.5〜30時間程度である。
【0034】
また、加水分解反応は公知慣用の方法により行うことができ、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ性条件下、又は塩酸等の酸性条件下で行うことができる。
【0035】
上記反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行われる。前記溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のジオール;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等のポリオール等の極性プロトン性溶媒を挙げることができる。これらの溶媒は単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0036】
上記反応は常圧で行ってもよく、減圧又は加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されないが、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気が、安全性の点で好ましい。
【0037】
反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0038】
また、上記式(2)で表される化合物は、例えば下記工程1〜3を経て合成される。
【化14】

【0039】
工程1:式(3)で表される化合物に、式(4)
3−X’ (4)
(式中、R3は酸素原子を含有していてもよい炭素数4〜10の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を示し、X’はハロゲン原子を示す)
で表されるハロゲン化アルキルを反応させて式(5)で表される化合物を得る。
工程2:前工程で得られた式(5)で表される化合物に酸触媒の存在下で、式(6)
X−CH2C(=O)−X'' (6)
(式中、X、X''は、同一又は異なって、ハロゲン原子を示す)
で表されるハロアセチルハライドを反応させて式(7)で表される化合物(ハロアセチルベンゼン化合物)を得る。
工程3:前工程で得られた式(7)で表される化合物に式(8)
HO−R4−OH (8)
(式中、R4は炭素数1〜9の2価の脂肪族炭化水素基を示す)
で表されるジオール化合物を反応させて式(2)で表される化合物(アセタール保護されたハロアセチルベンゼン化合物)を得る。
【0040】
上記式(3)中、R1は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、R2は水素原子又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を示す。AはO又はSを示し、nは0又は1を示す。R1、R2、A、nは、上記式(2)中のR1、R2、A、nに対応する。
【0041】
式(3)で表される化合物のうち、AがO(酸素原子)である化合物としては、例えば、2,5−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルベンジルアルコール、3−メチルフェノール、3−メチルベンジルアルコール等を挙げることができる。また、AがS(イオウ原子)である化合物としては、例えば2,5−ジメチルチオフェノール、2,5−ジメチルベンジルチオアルコール、3−メチルチオフェノール、3−メチルベンジルチオアルコール等を挙げることができる。
【0042】
上記式(4)中、R3は酸素原子を含有していてもよい炭素数4〜10の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を示し、上記式(2)中のR3に対応する。X’はハロゲン原子を示し、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の何れかである。
【0043】
式(4)で表される化合物の具体例としては、下記化合物を挙げることができる。下記式中、X’は上記に同じ。
【化15】

【0044】
上記式(5)中、R1は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、R2は水素原子又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基、R3は酸素原子を含有していてもよい炭素数4〜10の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を示す。AはO又はSを示し、nは0又は1を示す。R1、R2、R3、A、nは上記式(2)中のR1、R2、R3、A、nに対応する。
【0045】
上記式(6)中、X、X”は、同一又は異なって、ハロゲン原子を示し、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の何れかである。上記式(6)中のXは、上記式(2)中のXに対応する。上記式(6)で表されるハロアセチルハライドの具体例としては、クロロアセチルクロライド、クロロアセチルブロミド、ブロモアセチルクロライド、ブロモアセチルブロミド等を挙げることができる。
【0046】
上記式(7)中、R1は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、R2は水素原子又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基、R3は酸素原子を含有していてもよい炭素数4〜10の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を示す。Xはハロゲン原子、AはO又はSを示し、nは0又は1を示す。R1、R2、R3、A、n、Xは上記式(2)中のR1、R2、R3、A、n、Xに対応する。
【0047】
上記式(8)中、R4は炭素数1〜9のアルキレン基(好ましくは、炭素数2〜7の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、特に好ましくは、エチレン、1−メチルエチレン、トリメチレン、2−メチルトリメチレン、2−エチルトリメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、2,2−ジエチルトリメチレン基等の、C1-2アルキル基を有していてもよいC2-3アルキレン基)を示し、上記式(2)中のR4に対応する。上記式(8)で表されるジオール化合物の具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等を挙げることができる。
【0048】
上記工程1は、上記式(3)で表される化合物に、上記式(4)で表されるハロゲン化アルキルを反応させて上記式(5)で表される化合物を得る工程である。
【0049】
式(4)で表されるハロゲン化アルキルの使用量としては、上記式(3)で表される化合物1モルに対して、例えば1〜3モル程度である。
【0050】
工程1の反応は塩基の存在下で行うことが、反応を促進することができる点で好ましい。前記塩基には無機塩基及び有機塩基が含まれる。無機塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等のアルカリ金属炭酸水素塩等を挙げることができる。
【0051】
有機塩基としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム等のアルカリ金属有機酸塩(特に、アルカリ金属酢酸塩);酢酸マグネシウム等のアルカリ土類金属有機酸塩;リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;ナトリウムフェノキシド等のアルカリ金属フェノキシド等を挙げることができる。
【0052】
本発明においては、なかでも、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩(特に、炭酸カリウム)を使用することが好ましい。
【0053】
塩基の使用量は、式(3)で表される化合物1モルに対して、例えば0.001〜7モル、好ましくは0.3〜4モル程度である。
【0054】
工程1の反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行われる。前記溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド;ジメチルスルホキシド(DMSO);メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類等を挙げることができる。これらの溶媒は単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0055】
工程1の反応温度は、例えば、0〜200℃、好ましくは10〜150℃程度である。反応時間は、例えば、0.5〜24時間、好ましくは、0.5〜18時間である。反応は常圧で行ってもよく、減圧又は加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの何れであってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法で行うこともできる。
【0056】
反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0057】
上記工程2は、前工程で得られた上記式(5)で表される化合物に酸触媒の存在下で上記式(6)で表されるハロアセチルハライドを反応させて、フリーデル・クラフツアシル化反応により、上記式(7)で表される化合物を得る工程である。
【0058】
酸触媒としては、従来のフリーデル・クラフツアシル化反応で用いられている酸触媒を使用することができ、なかでもルイス酸を使用することが好ましい。ルイス酸としては、例えば、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三塩化ホウ素、三塩化鉄、二塩化亜鉛、四塩化スズ、四塩化チタン、三フッ化ホウ素等を挙げることができる。本発明においては、なかでも三塩化アルミニウムを使用することが好ましい。
【0059】
酸触媒の使用量としては特に制限はなく、例えば、上記式(5)で表される化合物1モルに対して0.5〜20モル程度(好ましくは、0.5〜5モル)である。
【0060】
また、上記式(6)で表されるハロアセチルハライドの使用量としては、上記式(5)で表される化合物1モルに対して、例えば1〜3モル程度である。
【0061】
工程2の反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行われる。前記溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;o−ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。これらの溶媒は単独で又は2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、収率、溶解性等の点で、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素が特に好ましい。
【0062】
工程2の反応温度は、例えば、0〜100℃、好ましくは0〜80℃程度である。反応時間は、例えば、0.5〜10時間、好ましくは、1〜8時間である。反応は常圧で行ってもよく、減圧又は加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの何れであってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法で行うこともできる。
【0063】
反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0064】
上記工程3は、前工程で得られた上記式(7)で表される化合物に上記式(8)で表されるジオール化合物を反応させて上記式(2)で表される化合物を得る工程である。
【0065】
式(8)で表されるジオール化合物の使用量としては、上記式(7)で表される化合物1モルに対して、例えば1〜3モル程度である。
【0066】
工程3の反応は、酸触媒の存在下で行うことが好ましい。酸触媒としては、例えば、塩化水素酸、硫酸、リン酸、メチルスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酸性イオン交換樹脂等を挙げることができ、なかでも、塩化水素酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸等の強酸を使用することが好ましい。また、反応により生じる水を系外に除去しながら反応を行うことが好ましい。
【0067】
工程3の反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行われる。前記溶媒としては、上記工程1で使用することができる溶媒と同様の例を挙げることができ、なかでも、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素を使用することが好ましい。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0068】
工程3の反応温度は、溶媒の種類に応じて適宜選択でき、例えば、70〜150℃程度である。例えば、トルエン溶媒を使用する場合、100〜120℃である。反応は、溶媒の還流下に行ってもよい。反応時間は、例えば、0.5〜12時間程度である。反応は常圧で行ってもよく、減圧又は加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの何れであってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法で行うこともできる。
【0069】
反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0070】
本発明にかかるフェニル酢酸化合物の製造方法によれば、上記式(1)で表されるフェニル酢酸化合物を簡便、且つ効率よく合成することができる。
【0071】
なお、工程1において、反応生成物を抽出する際、抽出溶媒としてシクロヘキサン等の脂環式炭化水素を用い、工程2において、反応溶媒としてシクロヘキサン等の脂環式炭化水素を用い、工程3において、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素を用いる場合には、工程1の抽出工程から工程3の反応工程まで抽出溶媒及び反応溶媒を統一できるため、工程間で必ずしも溶媒をすべて留出させなくてもよく、溶液のまま、各工程の生成物(中間体)を単離精製することなく次工程に移行できるので、工業的に極めて有利である。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0073】
実施例1
工程1
【化16】

上記式(9)で表される2,5−ジメチルフェノール 5.0g(0.041mol)、炭酸カリウム 11.3g(0.082mol)、及びN,N−ジメチルホルムアミド25gを混合し、そこへ室温(25℃)下、2−エチルヘキシルブロミド 9.48g(0.049mol)を滴下した。系内の温度を120℃まで上げて反応させ、2,5−ジメチルフェノールがなくなるまで2−エチルヘキシルブロミドと炭酸カリウムを追加した。
反応開始後7時間で2,5−ジメチルフェノールがほぼなくなったため室温(25℃)まで冷却した。
そこへ、tert−ブチルメチルエーテル 25gと水 55gを添加し、析出している炭酸カリウムと臭化カリウムを溶解した。
分液した有機層を水 30gで3回洗浄し、エバポレーターにてtert−ブチルメチルエーテルを留去し、上記式(10)で表される2,5−ジメチル−1−(2−エチルヘキシルオキシ)ベンゼンを10.2g得た(収率:94%)。
【0074】
工程2
【化17】

上記式(10)で表される2,5−ジメチル−1−(2−エチルヘキシルオキシ)ベンゼン 5.62g、塩化アルミニウム 3.13g(0.023mol)、及びo−ジクロロベンゼン 10gを混合し、そこへクロロアセチルクロライド 2.65g(0.023mol)を滴下し、30℃で3時間反応した。
反応終了後、エチルメチルケトン 15gを滴下し、その溶液を希塩酸(0.4%)67gに滴下した。分液して水層を除去した後、有機層を水 25gで2回洗浄し、エチルメチルケトン、o−ジクロロベンゼンを留去して、上記式(11)で表される4−クロロアセチル−2,5−ジメチル−1−(2−エチルヘキシルオキシ)ベンゼンを6.3g得た(収率:49%)。
【0075】
工程3
【化18】

上記式(11)で表される4−クロロアセチル−2,5−ジメチル−1−(2−エチルヘキシルオキシ)ベンゼン 5.44g、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール 1.88g(0.018mol)、p−トルエンスルホン酸1水和物 0.17g(0.0009mol)、及びトルエン 14gを混合して還流下で脱水しながら反応を行った。
反応開始から3時間経過した時点で原料消失を確認し、5%炭酸カリウム水溶液 6.5gを添加した。
有機層を分液したのち、水洗を3回行い、トルエンをエバポレーターで留去して、上記式(12)で表される2−クロロメチル−2−[2,5−ジメチル−4−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニル]−5,5−ジメチル−1,3−ジオキサンを6.0g得た(収率:85%)。
【0076】
工程4
【化19】

上記式(12)で表される2−クロロメチル−2−[2,5−ジメチル−4−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニル]−5,5−ジメチル−1,3−ジオキサン 5.0gに、酢酸ナトリウム 0.65g、エチレングリコール 13gを加え、120℃に加熱した。21時間反応後、140℃に温度を上げてさらに4時間反応し、原料の消失を確認後、温度を100℃まで下げた。そこへ30%水酸化ナトリウム水溶液 3.2gを添加し、3時間反応させた。
温度を室温(25℃)まで下げてトルエン 30g、水 25gを添加した。分液して水層に塩酸 1.9gを滴下し、酢酸エチル 25gで抽出した。
有機層を2回水洗し、酢酸エチルをエバポレーターで留去した。粗液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=15/1(v/v))にて単離し、上記式(13)で表される2,5−ジメチル−4−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニル酢酸を0.42g得た。
1H-NMR(500MHz CDCl3) δ0.85(6H,m), δ1.2〜1.4(8H,m), δ1.64(1H,m), δ2.09(3H,s), δ2.20(3H,s), δ3.49(2H,s), δ3.75(2H,d), δ6.56(1H,s), δ6.87(1H,s)
13C-NMR(500MHz CDCl3) δ11.2, δ14.0, δ15.6, δ19.6, δ23.1, δ24.1, δ29.1, δ30.7, δ38.0, δ39.6, δ70.0, δ112.8, δ123.0, δ124.4, δ132.4, δ135.1, δ156.7, δ177.9
【0077】
実施例2
工程1
【化20】

上記式(14)で表される2,5−ジメチルベンゼンチオール 150.0g(1.09mol)、炭酸カリウム 300.0g(2.17mol)、及びN,N−ジメチルホルムアミド 750gを混合し、5〜10℃に冷却した。そこへ、2−エチルヘキシルブロミド 209.6g(1.09mol)を内温10±5℃の範囲で滴下した。滴下終了後、温度を20〜25℃にし、1時間反応させた。反応液中の2,5−ジメチルベンゼンチオールの消失を確認した後、シクロヘキサン 750gと水 600gを添加し、生成物を抽出した。分液した有機層に水 600gを加え、水層のpHが6〜7となるように塩酸を添加し、洗浄した。さらに、分液した有機層を水 600gで洗浄し、エバポレーターにてシクロヘキサンを留出することで、上記式(15)で表される2,5−ジメチル−1−(2−エチルヘキシルチオ)ベンゼンを269.6g得た[GC(ガスクロマトグラフィー)純度97%、収率:96%]。
【0078】
工程2
【化21】

塩化アルミニウム 146.4g(1.10mol)、シクロヘキサン 500gを混合し、10〜15℃に冷却した。そこへ、上記の式(15)で表される2,5−ジメチル−1−(2−エチルヘキシルチオ)ベンゼン 258.8g(純度97%、1.00mol)をゆっくり滴下しながら内温を0〜5℃にした。次に、クロロアセチルクロライド 124.0g(1.10mol)を内温0〜5℃になるように滴下した。滴下終了後、内温を55〜60℃にして反応させた。1.5時間経過した時点で冷却し、エチルメチルケトン 500gを内温が15℃以下になるように滴下した。次に、得られた溶液を希塩酸(0.4重量%)1280gに、内温20℃以下になるように滴下した。有機層を水 1250gで2回洗浄し、エチルメチルケトン、シクロヘキサンを留去して、上記式(16)で表される4−クロロアセチル−2,5−ジメチル−1−(2−エチルヘキシルチオ)ベンゼンを317.1g得た(GC純度69%、収率:67%)。なお、溶媒としてシクロヘキサンの代わりに、o−ジクロロベンゼンを用いたこと以外は上記と同様の操作を行ったところ、4−クロロアセチル−2,5−ジメチル−1−(2−エチルヘキシルチオ)ベンゼンの収率は37%であった。
【0079】
上記で得られた4−クロロアセチル−2,5−ジメチル−1−(2−エチルヘキシルチオ)ベンゼンをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:n−ヘキサン:酢酸エチル=20:1(v/v))にて精製して、生成物を単離し、NMRの測定を行った。
1H-NMR(500MHz CDCl3) δ0.92(6H, m), δ1.30〜1.33(4H, m), δ1.40〜1.57(4H, m), δ1.67(1H, m), δ2.34(3H, s), δ2.55(3H, s), δ2.95(2H, d), δ4.63(2H, s), δ7.04(1H, s), δ7.41(1H, s)
【0080】
工程3
【化22】

上記式(16)で表される4−クロロアセチル−2,5−ジメチル−1−(2−エチルヘキシルチオ)ベンゼン 261.5g(純度69%、0.55mol)と、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール 114.7g(1.10mol)、p−トルエンスルホン酸1水和物 10.5g(0.055mol)、及びシクロヘキサン 900gを混合して還流下で脱水しながら反応を行った。4−クロロアセチル−2,5−ジメチル−1−(2−エチルヘキシルチオ)ベンゼンの転化率が98%を超えたところで冷却し、5重量%炭酸カリウム水溶液540gを添加した。有機層を分液した後、水 900gで洗浄を3回行い、シクロヘキサンをエバポレーターで留去して、上記式(17)で表される2−クロロメチル−2−[2,5−ジメチル−4−(2−エチルヘキシルチオ)フェニル]−5,5−ジメチル−1,3−ジオキサンを305.9g得た(GC純度73%、収率:98%)。
【0081】
上記で得られた2−クロロメチル−2−[2,5−ジメチル−4−(2−エチルヘキシルチオ)フェニル]−5,5−ジメチル−1,3−ジオキサンをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:n−ヘキサン:酢酸エチル=50:1〜40:1(v/v))にて精製して、生成物を単離し、NMRの測定を行った。
1H-NMR(500MHz CDCl3) δ0.62(3H,s), δ0.88〜0.94(6H,m), δ1.30(4H,m), δ1.35(3H,s), δ1.41〜1.55(4H,m), δ1.64(1H,m), δ2.32(3H,s), δ2.36(3H,s), δ2.90(2H,d), δ3.50(4H,m), δ3.56(2H,s), δ7.00(1H,s), δ7.23(1H,s)
【0082】
工程4
【化23】

上記式(17)で表される2−クロロメチル−2−[2,5−ジメチル−4−(2−エチルヘキシルチオ)フェニル]−5,5−ジメチル−1,3−ジオキサン 109.7g(純度73%、0.19mol)に、酢酸ナトリウム 19.9g(0.24mol)、1,3−ブタンジオール 416gを加え、内温150〜160℃で23時間反応させた。この時の原料の転化率は94%であった。温度を30〜40℃にし、そこへ、30重量%水酸化ナトリウム水溶液 77.5gを添加し、2時間反応させた。温度を室温まで下げて、トルエン 860g、1,3−ブタンジオール 50g、水 950gを添加し、さらに塩酸を加えて水層のpHを4にした。分液した有機層に1,3−ブタンジオール 430g、5重量%水酸化ナトリウム水溶液 86g、水 1075gを加え、撹拌し、さらに1,3−ブタンジオール 84gを添加して、分液したトルエン層を除去した。水層にトルエン 860gを添加し、よく混合した後、分液してトルエン層を除去した。次に、水層に塩酸 30gを室温下で滴下し、pHを4にした後、酢酸エチルを添加し、生成物を抽出した。有機層を水 800gで2回洗浄し、酢酸エチルをエバポレーターにて留去して、上記式(18)で表される2,5−ジメチル−4−(2−エチルヘキシルチオ)フェニル酢酸を56.0g得た(GC純度95%、収率:89%)。
【0083】
上記で得られた2,5−ジメチル−4−(2−エチルヘキシルチオ)フェニル酢酸をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:n−ヘキサン:酢酸エチル=50:1〜2:1(v/v))にて精製して、生成物を単離し、NMRの測定を行った。
1H-NMR(500MHz CDCl3) δ0.90(6H,m), δ1.2〜1.5(8H,m), δ1.60(1H,m), δ2.27(3H,s), δ2.31(3H,s), δ2.85(2H,d), δ3.58(2H,s), δ6.98(1H,s), δ7.06(1H,s)
13C-NMR(500MHz CDCl3) δ10.8, δ14.0, δ19.2, δ19.7, δ23.0, δ25.7, δ28.8, δ32.5, δ37.3, δ38.3, δ38.8, δ128.8, δ129.3, δ131.8, δ134.7, δ134.9, δ136.2, δ177.5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(式中、R1は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、R2は水素原子又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基、R3は酸素原子を含有していてもよい炭素数4〜10の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を示す。AはO又はSを示し、nは0又は1を示す)
で表されるフェニル酢酸化合物。
【請求項2】
下記式(2)
【化2】

(式中、R1は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、R2は水素原子又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基、R3は酸素原子を含有していてもよい炭素数4〜10の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基、R4は炭素数1〜9の2価の脂肪族炭化水素基を示す。Xはハロゲン原子、AはO又はSを示し、nは0又は1を示す)
で表されるアセタール保護されたハロアセチルベンゼン化合物を塩基の存在下で加熱し、加水分解することにより、下記式(1)
【化3】

(式中、R1、R2、R3、A、nは上記に同じ)
で表されるフェニル酢酸化合物を得るフェニル酢酸化合物の製造方法。
【請求項3】
下記式(2)
【化4】

(式中、R1は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、R2は水素原子又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基、R3は酸素原子を含有していてもよい炭素数4〜10の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基、R4は炭素数1〜9の2価の脂肪族炭化水素基を示す。Xはハロゲン原子、AはO又はSを示し、nは0又は1を示す)
で表されるアセタール保護されたハロアセチルベンゼン化合物。
【請求項4】
下記式(7)
【化5】

(式中、R1は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、R2は水素原子又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基、R3は酸素原子を含有していてもよい炭素数4〜10の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を示す。Xはハロゲン原子、AはO又はSを示し、nは0又は1を示す)
で表されるハロアセチルベンゼン化合物を、下記式(8)
HO−R4−OH (8)
(式中、R4は炭素数1〜9の2価の脂肪族炭化水素基を示す)
で表されるジオール化合物と反応させて、下記式(2)
【化6】

(式中、R1、R2、R3、R4、X、A、nは前記に同じ)
で表されるアセタール保護されたハロアセチルベンゼン化合物を得るアセタール保護されたハロアセチルベンゼン化合物の製造方法。
【請求項5】
下記式(7a)
【化7】

(式中、R1は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、R2は水素原子又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基、R3'は酸素原子を含有していてもよい炭素数5〜10の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を示す。Xはハロゲン原子、AはO又はSを示し、nは0又は1を示す)
で表されるハロアセチルベンゼン化合物。
【請求項6】
下記式(5)
【化8】

(式中、R1は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、R2は水素原子又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基、R3は酸素原子を含有していてもよい炭素数4〜10の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を示す。AはO又はSを示し、nは0又は1を示す)
で表されるベンゼン誘導体を、酸触媒の存在下、下記式(6)
X−CH2C(=O)−X'' (6)
(式中、X、X''は、同一又は異なって、ハロゲン原子を示す)
で表されるハロアセチルハライドと反応させて、下記式(7)
【化9】

(式中、R1、R2、R3、X、A、nは前記に同じ)
で表されるハロアセチルベンゼン化合物を得るハロアセチルベンゼン化合物の製造方法。
【請求項7】
反応を、脂肪族炭化水素及び脂環式炭化水素から選択された少なくとも1種の溶媒中で行う請求項6記載のハロアセチルベンゼン化合物の製造方法。

【公開番号】特開2012−87113(P2012−87113A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165174(P2011−165174)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】